特許第6234765号(P6234765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234765
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】検体検査自動分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   G01N35/02 H
   G01N35/02 G
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-216601(P2013-216601)
(22)【出願日】2013年10月17日
(65)【公開番号】特開2015-78923(P2015-78923A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077816
【弁理士】
【氏名又は名称】春日 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100156524
【弁理士】
【氏名又は名称】猪野木 雄一
(72)【発明者】
【氏名】濱野 吏弘
(72)【発明者】
【氏名】杉目 和之
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−037346(JP,A)
【文献】 特開平08−015276(JP,A)
【文献】 特開2010−236962(JP,A)
【文献】 特開2010−281634(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/039965(WO,A1)
【文献】 特開2011−153941(JP,A)
【文献】 特開2002−090374(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0300789(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象である検体を収容する検体容器と、
前記検体容器に収容された検体を分析可能な状態とする前処理を行う前処理機構と、
前記検体の分析を行う複数の分析装置と、
前記複数の分析装置のそれぞれに搭載された試薬の種類に関する情報を少なくとも含む試薬架設情報を記憶する試薬架設情報記憶部と、
前記試薬架設情報に基づいて、前記複数の分析装置において分析可能な分析項目をそれぞれ判定する分析項目判定部と、
前記検体に対して設定された検査項目のうち緊急性の高い検査項目として緊急指定された検査項目が少なくとも2つ以上の前記分析装置に跨っている場合前記緊急指定された検査項目の分析を行う2つ以上の前記分析装置のそれぞれに対応して前記検体を子検体容器に分注するように分注指示を作成する分注指示作成部と、
前記前処理機構で前処理を施された検体を、前記分注指示に従って前記検体容器から子検体容器に分注する検体分注機構と、
前記複数の分析装置が沿うように配置された搬送ラインであって前記検体分注機構が配置された上流側から下流側に向かって前記子検体容器を搬送し、搬送指示に基づいて前記分析装置との間で前記子検体容器の授受を行う送りラインと、前記送りラインの下流側まで搬送された前記子検体容器を前記送りラインの上流側まで搬送して前記送りラインに搬入する戻りラインと、を有する搬送機構と、
前記搬送機構における前記子検体容器の搬送を制御するための搬送指示であって、前記複数の子検体容器のそれぞれに設定された複数の検査項目にそれぞれ対応する少なくとも1つの前記分析装置のうち緊急指定された検査項目に対応する前記分析装置に前記子検体容器をそれぞれ優先して搬送するように前記搬送指示を作成する搬送指示作成部と、
前記搬送機構の送りラインに沿って配置された前記複数の分析装置の上流側にそれぞれ配置され、前記送りラインで搬送されてきた前記子検体容器を搬入して分析装置に搬入する前に待機させ、前記送りラインを介して前記分析装置に搬入する複数の容器待機バッファ機構と、
緊急指定情報設定部による緊急指定に基づいて、前記容器待機バッファ機構から前記搬送ラインに搬出して下流側に隣接する前記分析装置に搬入する前記子検体容器の順序を入れ替えるように制御するバッファ機構制御部と
を備えたことを特徴とする検体検査自動分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿などの生体サンプルの定性・定量分析を行うための検体の前処理を行う検体検査自動分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院や検査機関などにおいては、採血や採尿などにより患者から得られた血液や尿などの生体試料(以下、検体と称する)を分析し、各検査項目に対応する分析結果に基づいて患者の状態を把握している。一般に、検体の分析は、検査項目に対応する分析処理を自動で行う自動分析装置(以下、単に分析装置と称する)により行われる。
【0003】
分析装置により得られる分析結果(すなわち検査結果)は、疾病の診察、治療方針の決定の基準となるため、患者にとっては非常に重要な情報であり、したがって、分析結果の迅速な報告が必要とされている。そこで、分析結果の迅速な報告を行うことを目的として、例えば特許文献1(特開2011−153941号公報)には、予め検査項目に優先順位を付け、全ての項目の分析ができないと判断した場合、前処理装置にて優先順位の高い項目から順に分析に必要な生体サンプル量をサンプル容器に分注し、分析装置では優先順位の高い項目から分析する分析装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−153941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては次のような問題点がある。
【0006】
すなわち、検体検査自動分析システムでは、予め前処理装置によって検体に遠心分離などの前処理を実施し、血清と血餅とに分離したものをそのまま、或いは、血清だけを分析試料として別の容器(以下、子検体容器と称する)に分注したものを分析装置に搬送して分析処理に用いている。したがって、上記従来技術においては、複数の分析装置が接続されて用いられ、かつ、優先順位の高い検査項目に対応した試薬ボトルが別々の分析装置に架設された状況下では、各分析装置間におけるサンプル容器の搬送経路に無駄が生じることによって分析が実施されるまでに多くの時間を要してしまい、結果として分析結果の報告に遅延が生じてしまうことが懸念される。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、複数の分析装置が接続されて用いられる場合においても迅速な分析結果の報告を可能とする検体検査自動分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、分析対象である検体を収容する検体容器と、前記検体容器に収容された検体を分析可能な状態とする前処理を行う前処理機構と、前記検体の分析を行う複数の分析装置のそれぞれに搭載された試薬の種類に関する情報を少なくとも含む試薬架設情報を記憶する試薬架設情報記憶部と、前記試薬架設情報に基づいて、前記複数の分析装置において分析可能な分析項目をそれぞれ判定する分析項目判定部と、前記検体に対して設定された検査項目のうち緊急性の高い検査項目として緊急指定された検査項目が少なくとも2つ以上の前記分析装置に跨っている場合、前記分析装置のそれぞれに対応して前記検体を前記子検体への分注を行うように分注指示を作成する分注指示作成部と、前記前処理機構で前処理を施された検体を、前記分注指示に従って前記検体容器から子検体容器に分注する検体分注機構と、前記子検体容器を前記分析装置に搬送する搬送機構を制御するための搬送指示であって、前記複数の子検体容器をそれぞれ対応する前記分析装置に搬送するように搬送指示を作成する搬送指示作成部とを備えたものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の分析装置が接続されて用いられる場合においても迅速な分析結果の報告を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る検体検査自動分析システムの全体構成を概略的に示す図である。
図2】本実施の形態に係る検体検査自動分析システムの機能ブロック図である。
図3】検体前処理装置における中央制御部の処理機能を示す機能ブロック図である。
図4】出力装置であるモニタに表示される検査依頼項目情報の設定画面を示す図である。
図5】本実施の形態の検体検査自動分析システムおける分析全体の流れを示すフローチャートである。
図6】分析動作における検体分注処理の詳細を示すフローチャートである。
図7】分析装置周辺における検体容器の搬送経路を概略的に示す図である。
図8】本実施の形態における検体容器の搬送経路の通過順序と比較例における検体容器の搬送経路の通過順序とを比較して示す図である。
図9】本実施の形態の検体収納部における検体容器の搬出順序の入れ替えを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る検体検査自動分析システムの全体構成を概略的に示す図であり、図2はその機能ブロック図である。また、図3は、検体前処理装置における中央制御部101の処理機能を示す機能ブロック図である。
【0013】
図1及び図2において、検体検査自動分析システムは、検体に対して前処理を実施する検体前処理装置100と、前処理により得られた分析試料に対して分析処理を実施する複数(例えば2つ)の分析装置210,220と、検体検査自動分析システム全体の動作を制御するホストシステム300とから概略構成されている。
【0014】
検体前処理装置100は、分析対象である検体を収容する検体容器1を1つ以上(例えば本実施の形態では5つ)収容した検体ラック1aを検体検査自動分析装置に投入するための投入部102と、検体容器1に収容された検体を分析可能な状態とする前処理を行う前処理機構103と、検体容器1の開栓を行う開栓機構104と、検体容器1に収容された検体の液量を測定する液量測定機構105と、前処理機構103で前処理を実施された検体を検体容器1から子検体容器2に分注する検体分注機構106と、検体前処理装置100における検体容器1(又は、子検体容器2)の搬送を行う搬送ライン(搬送機構)107と、検体前処理装置100全体の動作を制御する中央制御部101とを備えている。
【0015】
中央制御部101と、前処理機構103、開栓機構104、液量測定機構105、及び検体分注機構106とは、通信ケーブルなどの通信路101cによって接続されており、中央制御部101によって検体前処理装置100内における各種情報の交換や、検体容器1又は子検体容器2の搬送制御などが制御される。また、中央制御部101は、ホストシステム300とも同様に通信路300aによって接続されており、ホストシステム300に記憶された検査依頼項目情報(後述する検査項目情報や緊急指定情報を含む)や試薬架設情報などの情報の取得を行っている。
【0016】
図3において、中央制御部101は、検体の分析を行う複数(本実施の形態では2つ)の分析装置210,220のそれぞれに搭載された試薬の種類に関する情報を少なくとも含む試薬架設情報をホストシステム300から取得して記憶する試薬架設情報記憶部101aと、試薬架設情報に基づいて、分析装置210,220において分析可能な分析項目をそれぞれ判定する分析項目判定部101bと、検体分注機構106における分注内容の指示である分注指示を作成する分注指示作成部101cと、搬送ライン107における搬送内容の指示である搬送指示を作成する搬送指示作成部101dとを備えている。
【0017】
試薬架設情報記憶部101aは、検体検査自動分析システムを構成する複数の分析装置210,220のそれぞれに関する試薬架設情報をホストシステム300から取得して記憶している。試薬架設情報は、分析装置210,220に搭載された試薬の種類の情報を各分析装置210,220のそれぞれに関して持っている。
【0018】
分析項目判定部101bは、試薬架設情報記憶部101aに記憶された試薬架設情報を読み出し、この試薬架設情報に基づいて、各分析装置210,220で分析可能な分析項目を判定する。各分析装置210,220に架設されている試薬の種類と分析項目、及び、分析項目と検査項目は対応しており、分析項目の可否の判定は検査項目の可否の判定である。
【0019】
分注指示作成部101cは、ホストシステム300を介して得られる検体の検査項目に関する情報(検査依頼項目情報)や、分析装置210,220における試薬架設情報、検体前処理装置100で得られる検体の液量に関する情報などに基づいて分注指示を作成する分注指示作成処理を行う。分注指示には、1つの検体容器1から分注する子検体容器2の個数などの情報が含まれている。例えば、検体に対して設定された検査項目のうち緊急性の高い検査項目として緊急指定された検査項目が少なくとも2つ以上(本実施の形態では2つ)の分析装置210,220に跨っている場合、分析装置210,220のそれぞれに対応して検体を子検体容器に分注するように分注指示を作成する。
【0020】
搬送指示作成部101dは、検体分注機構106により分注された子検体容器2を対応する分析装置に搬送するように搬送指示を作成する搬送指示作成処理を行う。搬送指示には、検体容器1又は子検体容器2(以下、特に区別する必要の無い場合は、単に検体容器1,2と記載する)の搬送先の情報が含まれている。例えば、検体に対して設定された検査項目のうち緊急性の高い検査項目として緊急指定された検査項目が少なくとも2つ以上(本実施の形態では2つ)の分析装置210,220に跨っている場合、分析装置210,220のそれぞれに対応して検体容器1,2を搬送するように搬送指示を作成する。搬送指示作成部101bで作成された搬送指示は、ホストシステム300等を介して検体検査自動分析装置全体に送られる。
【0021】
投入部102には、検体容器1に収容された検体を識別する識別子(例えば、バーコード)を読み取るID読取部102aが設けられており、読み取られた検体識別情報は中央制御部101を介してホストシステム300に送られ記憶される。
【0022】
前処理機構103では、検体容器1に収容された検体に前処理を実施する。本実施の形態では、前処理として検体の遠心分離を実施する遠心分離機構を前処理機構103の一例として示している。
【0023】
液量測定機構105では、検体容器1に収容された検体の量を測定しており、例えば、カメラ等により検体容器1の画像を取得し、画像処理等を行って血清や分離剤、血餅等の階調の違いなどから各々の境界面位置を割り出し、その境界面位置と検体容器1の形状の情報(例えば、直径や断面積等)から血清等の液量を求める方法を用いる。液量測定機構105により求められた各液量に関する情報は、中央制御部101を介してホストシステム300に送られ記憶される。
【0024】
検体分注機構106は、中央制御部101の分注指示作成部101cで作成される分注指示に基づいて、前処理機構103で前処理を実施され開栓機構104により開栓された検体容器1から子検体容器2に分注する。
【0025】
搬送ライン107は、検体前処理装置100の投入部102、前処理機構103、開栓機構104、液量測定機構105、検体分注機構106に接続されるとともに、後述する検体容器収納部230を介して分析装置210に接続されており、中央制御部101の搬送指示作成部101dで作成される搬送指示に基づいて、検体容器1,2の検体前処理装置100での搬送を行う。
【0026】
検体容器収納部230は、検体前処理装置100による前処理の終了した検体容器1,2を分析装置240に搬送する前に一端収納して保持し、分析装置240への検体容器1,2の搬送量を調整する機能と、分析装置240へ搬送する検体容器1,2の順番を入れ替える機能とを有している。
【0027】
分析装置210は、検体容器収納部212と、分析部213と、制御部211と、搬送ライン(搬送機構)241,242とから構成されている。
【0028】
搬送ライン(搬送機構)241,242は、検体前処理装置100から検体容器収納部230を介して搬送される検体容器1,2を分析装置210において搬送するとともに、分析装置220へ搬送する。
【0029】
分析部213は、搬送ライン242により搬送される検体容器1,2に収容された検体の分析処理を行う。
【0030】
検体容器収納部212は、搬送ライン241,242を介して分析部213に搬送される検体容器1,2を一端収納して保持し、分析部213への検体容器1,2の搬送量を調整する機能と、搬送ライン242に送り出す検体容器1,2の順番を入れ替えることによって分析部213へ搬送される検体容器1,2の順番を入れ替える機能とを有している。
【0031】
制御部211と、検体容器収納部212及び分析部213とは、通信ケーブルなどの通信路211cによって接続されている。また、制御部211とホストシステム300とも同様に通信路300bによって接続されている。
【0032】
制御部211は、分析装置210の動作を制御するものであり、検体容器収納部212による検体容器1,2の搬送ライン242からの取り込み(搬入)の制御や搬送ライン242への検体容器1,2の搬出順序の制御、分析部213への検体容器1,2の搬入搬出の制御などを行う。
【0033】
分析装置220も分析装置210と同様の構成を備えている。
【0034】
すなわち、分析装置220は、検体容器収納部222と、分析部223と、制御部221と、搬送ライン(搬送機構)243,244とから構成されている。
【0035】
搬送ライン(搬送機構)243,244は、分析装置210を介して搬送される検体容器1,2を分析装置220において搬送するとともに、搬送ライン(搬送機構)245を介して検体容器収納部250へ搬送する。
【0036】
分析部223は、搬送ライン244により搬送される検体容器1,2に収容された検体の分析処理を行う。
【0037】
検体容器収納部222は、搬送ライン243,244を介して分析部223に搬送される検体容器1,2を一端収納して保持し、分析部223への検体容器1,2の搬送量を調整する機能と、分析装置223へ搬送する検体容器1,2の順番を入れ替える機能とを有している。
【0038】
制御部221と、検体容器収納部222及び分析部223とは、通信ケーブルなどの通信路221cによって接続されている。また、制御部221とホストシステム300とも同様に通信路300cによって接続されている。
【0039】
制御部221は、分析装置220の動作を制御するものであり、検体容器収納部222による検体容器1,2の搬送ライン244からの取り込み(搬入)の制御や搬送ライン244への検体容器1,2の搬出順序の制御、分析部223への検体容器1,2の搬入搬出の制御などを行う。
【0040】
検体容器収納部250は、分析装置210,220による分析処理の終了した検体容器1,2を搬送ライン245を介して収納し、保持するものである。
【0041】
ホストシステム300は、各検体容器1,2に収容された検体に対して設定された検査項目や緊急指定の情報(検査依頼項目情報)や分析結果等の情報を一括して管理するものである。ホストシステム300への検査項目や各種情報の入力、分析結果(検査結果)等の出力は、ホストシステム300に接続された入出力端末310により行われる。入出力端末は310は、例えば、PC等であり、入力装置であるキーボードやマウス、出力装置であるモニタ、プリンタ等を有している(図示せず)。
【0042】
図4は、出力装置であるモニタに表示される検査依頼項目情報の設定画面を示す図である。
【0043】
図4において、検査依頼項目情報設定画面302は、検体識別情報であるIDや、これと対応した患者名などの各種情報を設定する患者情報設定部302aと、検体に対して依頼される検査項目に関する情報(検査項目情報)を入力して設定する検査項目情報設定部302bと、各検査項目を緊急指定するかどうかに関する情報(緊急指定情報)を設定する緊急指定情報設定部302cとを有している。図4では、検査項目に緊急指定をする場合に「Yes」を入力し、緊急指定をしない場合に「No」を入力する場合を例示している。例えば、図4においては、番号1の検査項目として設定した「項目1」と、番号3の検査項目として設定した「項目3」とを緊急指定している。
【0044】
図5は、本実施の形態の検体検査自動分析システムおける分析全体の流れを示すフローチャートであり、図6は分析動作における検体分注処理の詳細を示すフローチャートである。
【0045】
図5に示すように、まず、基本情報として試薬ボトルの架設情報(試薬架設情報)が入出力端末310を介してホストシステム300に登録される。また、試薬架設情報は、中央制御部101に読み出されて試薬架設情報記憶部101aに記憶される(ステップS100)。この状態で、医師等による患者の診察情報に基づいて、当該患者に対する検査項目情報および緊急指定情報を含む検査依頼項目情報が入出力端末310を介してホストシステム300に登録される(ステップS200)。その後、検査対象である検体を収容した検体容器1が検体ラック1aに保持されて投入口102から投入される(ステップS300)。投入口102に投入された検体容器1の検体には、検体分注処理(ステップS400)、検体の入れ替え処理(ステップS500)、及び分析処理(ステップS600)が実施される。
【0046】
図6に示すように、検体分注処理(ステップS400)では、まず、検体容器1に配置された識別子(検体ID:検体識別情報)がID読取部102aにより読み取られる(ステップS401)。このとき、読み取られた検体識別情報は、中央制御部101を介してホストシステム300に送られ記憶される。
【0047】
中央制御部101は、ホストシステム300で受信された検体識別情報に基づいて送信される検体依頼項目情報を取得し(ステップS402)、前処理機構103により前処理を実施する(ステップS403)。
【0048】
続いて、分注指示作成部101cは、緊急指定の検査項目が有るかどうかを判定し(ステップS404)、判定結果がNOの場合には、検体容器1から1つの子検体容器2に検体を分注する検体分注指示(標準)を作成し(ステップS409)、その検体分注指示を検体分注機構106に送信する(ステップS410)。
【0049】
また、ステップS404での判定結果がYESの場合には、分析項目判定部101bは、試薬架設情報記憶部101aに記憶された試薬架設情報に基づいて、分析装置210,220において分析可能な分析項目をそれぞれ判定し(ステップS405)、分注指示作成部101cは、検査項目情報において検査項目が複数の分析装置210,220に跨っているかどうかを判定する(ステップS406)。ステップS406での判定結果がYESの場合には、検体容器1から1つの子検体容器2に検体を分注する標準的な検体分注指示を作成し(ステップS408)、その検体分注指示を検体分注機構106に送信する(ステップS410)。また、ステップS406での判定結果がNOの場合には、分析項目が跨っている分析装置のそれぞれに対応して検体容器1から検体を子検体容器へ分注する特別な検体分注指示を作成し(ステップS407)、その検体分注指示を検体分注機構106に送信する(ステップS410)。なお、このときに作成される特別な検体分注指示とは、それぞれの分析装置210,220で緊急指定情報のある検査項目を並行して分析できるようにするものである。
【0050】
そして、検体分注機構106は、分注指示作成部101cにおいてステップS407〜S409の何れかで作成された検体分注指示に基づいて、検体容器1から子検体容器2への検体の分注処理を実施すする(ステップS411)。
【0051】
検体の入れ替え処理(ステップS500)では、検体容器収納部230において、検体前処理装置100による前処理の終了した検体容器1,2を分析装置240に搬送する前に一端収納して保持し、緊急指定のある検体容器1,2については、分析装置240へ搬送する順番を入れ替えて優先的に搬送する。
【0052】
分析処理(ステップS600)では、検体容器1,2に収容された検体に対し、検査項目情報に基づいた種々の分析が実施される。分析結果(検査結果)等はホストシステム300に送られて記憶されるとともに入出力端末310のモニタに表示される。
【0053】
図7は、分析装置周辺における検体容器の搬送経路を概略的に示す図である。また、図8は、本実施の形態における検体容器の搬送経路の通過順序と比較例における検体容器の搬送経路の通過順序とを比較して示す図である。
【0054】
図7及び図8においては、検体容器に収容された検体に「検査項目1」、「検査項目2」、及び「検査項目5」が依頼され、そのうち「検査項目1」と「検査項目5」とが緊急指定されている場合の搬送経路を例示して説明する。また、分析装置210では、「検査項目1」〜「検査項目3」が分析可能な項目であり、分析装置220では、「検査項目4」〜「検査項目5」が分析可能な項目である場合を例示して説明する。
【0055】
図7に示すように、本実施の形態の検体容器1,2の搬送経路としては、搬送ライン241〜244の送りラインから上流側の分析装置210の検体容器収納部212に搬入する搬送経路11と、検体容器収納部212から送りラインに搬出して分析部213に搬入する搬送経路12と、分析部213から送りラインに搬出する搬送経路13と、送りラインから下流側の分析装置220の検体容器収納部222に搬入する搬送経路14と、検体容器収納部222から送りラインに搬出して分析部223に搬入する搬送経路15と、分析部223から送りラインに搬出する搬送経路16と、分析装置220の下流側において送りラインから戻りラインに搬出する搬送経路17と、戻りラインに搬出された検体容器1,2を分析装置210の戻りラインにおける下流側(言い換えると、送りラインにおける上流側)まで搬送する搬送経路18と、分析装置220の戻りラインにおける下流側において戻りラインから送りラインに搬入する搬送経路19と、送りラインにおいて、上流側の分析装置210の上流側から下流側(言い換えると、下流側の分析装置の上流側)に搬送する搬送経路10とがある。
【0056】
まず、比較例における検体容器の搬送経路について説明する。試薬ボトルの架設情報を用いない比較例においては、図8の上段に示すように、各分析装置の分析項目に関わらず、前処理装置において検体容器から1つの検体容器(子検体容器)Aに分注され分析装置側に送られる。
【0057】
前処理装置から搬出された検体容器Aは、緊急指定されている「検査項目1」を分析するために分析装置210に送られる。検体容器Aは、分析装置210に搬送される前に一度、分析装置210の検体容器収納部212に搬送される(搬送経路11)。続いて、検体容器Aは、送りラインを経由して分析装置210の検体容器収納部212から分析部213に搬送されて「検査項目1」の分析が実施され(搬送経路12)、分析が終了すると送りラインに搬出される(搬送経路13)。続いて、検体容器Aは、緊急指定されている「検査項目5」を分析するために分析装置220に送られる。検体容器Aは、分析装置220に搬送される前に一度、分析装置220の検体容器収納部222に搬送される(搬送経路14)。続いて、検体容器Aは、送りラインを経由して分析装置220の検体容器収納部222から分析部223に搬送されて「検査項目5」の分析が実施され(搬送経路15)、分析が終了すると送りラインに搬出される(搬送経路16)。そして、緊急指定されていない残りの「検査項目2」を分析するため、送りラインから戻りラインに搬出され(搬送経路17)、戻りラインを介して送りラインの上流側まで搬送され(搬送経路18,19)、検体容器収納部212を介して分析部213に搬送され(搬送経路11,12)、「検査項目2」の分析が終了すると送りラインに搬出され(搬送経路13)、分析を終了する。
【0058】
続いて、本実施の形態における検体容器の搬送経路について説明する。試薬ボトルの架設情報を用いる本実施の形態においては、図8の下段に示すように、各分析装置210,220の分析可能な項目に基づいて、前処理装置100において検体容器から複数(本実施の形態では2つ)の検体容器(子検体容器)A,Bに分注され分析装置210,220側に送られる。
【0059】
前処理装置100から搬出された検体容器Aは、緊急指定されている「検査項目1」及び、緊急指定されていない「検査項目2」を分析するために分析装置210に送られる。また、検体容器Bは、緊急指定されている「検査項目5」を分析するために分析装置220に送られる。
【0060】
検体容器Aは、分析装置210に搬送される前に一度、分析装置210の検体容器収納部212に搬送される(搬送経路11)。ことのき、検体容器Bは、送りラインを介して分析装置220側に搬送される(搬送経路10)。
【0061】
続いて、検体容器Aは、送りラインを経由して分析装置210の検体容器収納部212から分析部213に搬送されて「検査項目1」及び「検査項目2」の分析が実施され(搬送経路12)、分析が終了すると送りラインに搬出され(搬送経路13)、分析を終了する。このとき、検体容器Bは、分析装置220に搬送される前に一度、分析装置220の検体容器収納部222に搬送され(搬送経路14)、送りラインを経由して分析装置220の検体容器収納部222から分析部223に搬送されて「検査項目5」の分析が実施され(搬送経路15)、分析が終了すると送りラインに搬出され(搬送経路16)、分析を終了する。
【0062】
このように、本実施の形態においては、試薬ボトルの架設情報をもとに作成した分注指示に従って前処理装置における分注の制御を行うので、緊急指定された検査項目に対応する試薬が複数の分析装置に跨って架設されている場合においても、搬送経路に無駄が生じず、目的とする分析装置に検体容器を搬送することができる。また、緊急指定された検査項目の分析を別々の分析装置で並行し分析できるため、所望する検査項目の結果を迅速に報告することが可能である。
【0063】
続いて、本実施の形態において、検体容器収納部212,222から分析部213,223に搬送される検体(検体容器)の順番の入れ替え処理について説明する。
【0064】
本実施の形態においては、分析部213,223で分析する前に、検体容器を検体容器収納部212,222待機部に搬入する。検体容器収納部212,222では、分析部213,223で分析される複数の検体容器を一旦収納することで順番待ちをすることができる。
【0065】
検体容器収納部212,222から分析部213,223に搬出される検体容器の順番は、緊急指定の有無によって異なる。例えば、緊急指定のなされていない通常の検体容器の場合、検体容器収納部212,222への到着順に分析部213,223に搬出される。また、検体容器収納部212,222に複数の検体容器が収納されている場合に緊急指定のなされた検査項目を有する検体容器が搬入された場合は、検体容器の搬出順序の入れ替えを行い、緊急指定のなされた検体容器を優先的に搬出する。
【0066】
図9は、本実施の形態の検体収納部における検体容器の搬出順序の入れ替えを説明する図である。
【0067】
図9においては、複数の検体容器を収納した検体収納部212から「検査項目1」〜「検査項目3」に対応する試薬容器が架設されてる分析部213を例に取り説明する(前述の図7等参照)。本例では、検体容器収納部212には複数の検体容器a,b,c,d,・・・が分析部213での分析待ちをしている。検体容器は、検体容器a,b,c,d,・・・の順番で検体容器収納部212に搬入されており、その中で検体容器bには「検査項目1」に、検体容器dには「検査項目2」に緊急指定がなされている場合を考える。
【0068】
検体容器収納部212では、緊急指定のある検査項目をもった検査容器b,dを他の検体容器a,cより優先して搬出するように、搬出順序の入れ替えを実施する。ともに緊急指定のある検査項目を持った検体容器bと検体容器dとでは、検体容器収納部212への搬入順が搬出順となる。すなわち、検体容器bを先に搬出するように入れ替える。また、緊急指定のない検査項目のみを有する検体容器aと検体容器cとにおいても、検体容器収納部212への搬入順が搬出順となるすなわち、検体容器aを先に搬出するように入れ替える。
【0069】
従って、検体容器収納部212から分析部213への検体容器の搬入順番が検体容器a、検体容器b、検体容器c、検体容器d、・・・である場合には、搬出順番は、検体容器b、検体容器d、検体容器a、検体容器c、・・・の順番となる。
【0070】
検体容器収納部212から搬出された検体容器は分析部213に搬送され、分析可能な検査項目の分析を行う。分析部213においては、前述のように、緊急指定された検査項目から分析を始める。分析部213における分析では、検体容器に収容された検体と試薬とが混合され、その混合液の吸光度や発光量などを光学的な測定手段によって測定し、その測定結果に基づいて、検体に含まれる成分濃度を測定する。検体容器は分析が終了するまで検体待機部に移動し待機する。分析が終了すると、分析ユニットからホストシステムへ、ホストシステムから入出力端末へと分析結果を報告し、再検指示を問い合わせる。分析結果の報告は、依頼した検査項目全ての分析結果が揃った時点、もしくは、各検査項目の結果が出た時点、どちらのタイムミングでも可能とする。分析結果を受けた入出力端末、または、ホストシステムにおいて再検の判断をし、再分析が必要と判断した場合は、再度、中央制御部からの搬送指示のもと、分析装置へと搬送し再検を実施する。再検時にも、初回検査と同様、検体待機部における検体容器の搬出順序の制御を可能とする。再検実施後、検体容器は検体収納部へ移動され回収される。なお、再検を必要としない検体容器は1回目の分析終了時に検体収納部へ移動され回収される。
【0071】
以上のように、本実施の形態においては、分析部213,223における分析待ちの検体容器が検体容器収納部212,222に数多くあっても、緊急指定がなされた検査項目をもつ検体容器であれば、優先的に分析部に搬入されて分析が実施されるため、分析の待ち時間を短縮することができる。
【0072】
なお、検体容器収納部212,222における検体容器の搬出順番の入れ替えの制御は、それぞれ、分析装置210,220の制御部211,221により行われる。
【0073】
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
【0074】
従来技術の検体検査自動分析システムでは、予め前処理装置によって検体に遠心分離などの前処理を実施し、血清と血餅とに分離したものをそのまま、或いは、血清だけを分析試料として別の容器(以下、子検体容器と称する)に分注したものを分析装置に搬送して分析処理に用いている。したがって、上記従来技術においては、複数の分析装置が接続されて用いられ、かつ、優先順位の高い検査項目に対応した試薬ボトルが別々の分析装置に架設された状況下では、各分析装置間におけるサンプル容器の搬送経路に無駄が生じることによって分析が実施されるまでに多くの時間を要してしまい、結果として分析結果の報告に遅延が生じてしまうことが懸念される。
【0075】
これに対して本実施の形態においては、検体に設定された検査項目に関する情報と試薬架設情報とを用いた分注制御を行うように構成した。すなわち、本実施の形態においては、試薬架設情報に基づいて複数の分析装置において分析可能な分析項目をそれぞれ判定し、検体に対して設定された検査項目のうち緊急性の高い検査項目として緊急指定された検査項目が少なくとも2つ以上の分析装置に跨っている場合、分析装置のそれぞれに対応して検体の子検体への分注を行うように分注指示を作成するように構成したので、複数の分析装置が接続されて用いられる場合においても迅速な分析結果の報告を可能とすることができる。
【0076】
また、分析装置においては、緊急指定情報をもとにした搬送制御を行うように構成したので、入出力端末での検査項目依頼時に緊急指定された検査項目の分析が優先して実施され、したがって、該当する検査項目の分析結果を迅速に報告することが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
1 検体容器
1a 検体ラック
2 子検体容器
100 検体前処理装置
101 中央制御部
101a 試薬架設情報記憶部
101b 分析項目判定部
101c 分注指示作成部
101d 搬送指示作成部
102 投入部
103 前処理機構
104 開栓機構
105 液量測定機構
106 検体分注機構
107 搬送ライン(搬送機構)
210,220 分析装置
211,221 制御部
212,222 検体容器収納部
213,223 分析部
241,・・・,245 搬送ライン(搬送機構)
300 ホストシステム
310 入出力端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9