(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234890
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】無線LANシステム、無線LAN基地局装置および無線LAN制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 28/06 20090101AFI20171113BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20171113BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20171113BHJP
【FI】
H04W28/06 110
H04W84/12
H04W72/04 136
H04W72/04 131
H04W72/04 111
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-144089(P2014-144089)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2016-21625(P2016-21625A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 匡史
(72)【発明者】
【氏名】岸田 朗
(72)【発明者】
【氏名】新宅 俊之
(72)【発明者】
【氏名】鬼沢 武
(72)【発明者】
【氏名】阪田 徹
(72)【発明者】
【氏名】蛭川 明則
(72)【発明者】
【氏名】井上 保彦
(72)【発明者】
【氏名】篠原 笑子
【審査官】
相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−502453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの電波を検知できる範囲に複数の無線LAN基地局(以下、基地局)が存在し、各基地局は、所定のプライマリチャネルが未使用のときに無線端末が該基地局との接続処理に用いる管理フレームを該プライマリチャネルで送信し、該プライマリチャネルが未使用のときに該無線端末とのデータ通信に用いるデータフレームを該プライマリチャネルと未使用のセカンダリチャネルを結合して送信する無線LANシステムにおいて、
前記基地局は、前記プライマリチャネルを用いて前記管理フレームを送信する期間に、未使用の前記セカンダリチャネルを用いて1以上の前記データフレームを送信する制御手段を備えた
ことを特徴とする無線LANシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線LANシステムにおいて、
前記制御手段は、前記未使用のセカンダリチャネルが複数あれば、未使用のセカンダリチャネルを結合するか、前記プライマリチャネルからチャネルが連続する範囲で未使用のセカンダリチャネルを結合し、前記データフレームを送信する制御を行う
ことを特徴とする無線LANシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線LANシステムにおいて、
前記制御手段は、前記管理フレームと前記データフレームを分割し、前記プライマリチャネルおよび前記セカンダリチャネルで分割したフレームを同時送信する制御を行う
ことを特徴とする無線LANシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線LANシステムにおいて、
前記制御手段は、前記管理フレームと前記データフレームを結合し、前記プライマリチャネルと前記セカンダリチャネルを結合し、結合したチャネルで結合したフレームを送信する制御を行う
ことを特徴とする無線LANシステム。
【請求項5】
互いの電波を検知できる範囲に存在する複数の無線LAN基地局であって、所定のプライマリチャネルが未使用のときに無線端末が接続処理に用いる管理フレームを該プライマリチャネルで送信し、該プライマリチャネルが未使用のときに該無線端末とのデータ通信に用いるデータフレームを該プライマリチャネルと未使用のセカンダリチャネルを結合して送信する無線LANシステムの無線LAN基地局装置において、
前記プライマリチャネルを用いて前記管理フレームを送信する期間に、未使用の前記セカンダリチャネルを用いて1以上の前記データフレームを送信する制御手段を備えた
ことを特徴とする無線LAN基地局装置。
【請求項6】
互いの電波を検知できる範囲に複数の無線LAN基地局(以下、基地局)が存在し、所定のプライマリチャネルが未使用のときに無線端末が該基地局との接続処理に用いる管理フレームを該プライマリチャネルで送信し、該プライマリチャネルが未使用のときに該無線端末とのデータ通信に用いるデータフレームを該プライマリチャネルと未使用のセカンダリチャネルを結合して送信する無線LAN制御方法において、
前記基地局は、前記プライマリチャネルを用いて前記管理フレームを送信する期間に、未使用の前記セカンダリチャネルを用いて1以上の前記データフレームを送信する制御を行う
ことを特徴とする無線LAN制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の無線LAN制御方法において、
前記基地局は、前記未使用のセカンダリチャネルが複数あれば、そのセカンダリチャネルを結合するか、前記プライマリチャネルからチャネルが連続する範囲でそのセカンダリチャネルを結合し、前記データフレームを送信する制御を行う
ことを特徴とする無線LAN制御方法。
【請求項8】
請求項6に記載の無線LAN制御方法において、
前記基地局は、前記管理フレームと前記データフレームを分割し、前記プライマリチャネルおよび前記セカンダリチャネルで分割したフレームを同時送信する制御を行う
ことを特徴とする無線LAN制御方法。
【請求項9】
請求項6に記載の無線LAN制御方法において、
前記基地局は、前記管理フレームと前記データフレームを結合し、前記プライマリチャネルと前記セカンダリチャネルを結合したチャネルで結合したフレームを送信する制御を行う
ことを特徴とする無線LAN制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャネルボンディング機能を有する無線LANシステム、無線LAN基地局装置および無線LAN制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANシステムでは、1チャネル当り20MHzの周波数帯域を用いて通信を行う。IEEE802.11n以降の規格では、複数のチャネルを束ねて通信を行うチャネルボンディング機能が規定されている(非特許文献1)。IEEE802.11n規格では、チャネルの利用状況に応じて最大2チャネルを束ねて40MHzの周波数帯域を用いて通信を行うことができる。IEEE802.11ac規格では、最大8チャネルを束ねて 160MHzの周波数帯域を用いて通信を行うことができる。
【0003】
非特許文献1では、
図10に示すように、送信局はプライマリチャネルと呼ばれるチャネルを設定し、その他の束ねて用いるチャネルをセカンダリチャネルとして設定する。ここでは、40chがプライマリチャネル、36,44,48,52,56,60,64chがセカンダリチャネルの例を示す。セカンダリチャネルが利用可能か否かは、他の送信局によってチャネルが使用中か否かで決定される。
【0004】
ここで、プライマリチャネル(40ch)のみが未使用であれば、20MHzの周波数帯域を用いて通信を行う。プライマリチャネル(40ch)とセカンダリチャネル(36ch)が未使用であれば、チャネルボンディングにより40MHzの周波数帯域を用いて通信を行う。同様に、他のセカンダリチャネルが未使用であれば、プライマリチャネルとセカンダリチャネルを束ねて80MHzや 160MHzの周波数帯域を用いて送信することができる。プライマリチャネルが使用中であれば、送信局は通信を行うことができない。
【0005】
このようなチャネルボンディング機能が適用されるのは、主にデータフレームの送信に対してであり、ビーコンやプローブ等の管理フレームはプライマリチャネルのみを用いて送信される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】IEEE Standard for Local and Metropolitan Area Networks Part 11: Wireless LAN MAC and PHY Specifications, 2012.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図11は、チャネルボンディング機能を適用した従来の管理フレームとデータフレームの送信例を示す。ここでは、簡単のために1chがプライマリチャネルであり、2〜4chがセカンダリチャネルである。
【0008】
無線LAN基地局(以下、基地局)は、プライマリチャネルを用いて管理フレームを送信する。ここで、管理フレームとはビーコンやプローブ応答である。ビーコンは定期的に送信される信号であり、プローブ応答は端末からのプローブ要求に対して送信される信号である。管理フレームの送信はチャネルボンディングを行わず、プライマリチャネルのみで通信が行われる。ここで、複数の基地局が同一のプライマリチャネルを設定し、その1つの基地局が使用している場合、他の基地局は管理フレームを送信することはできない。すなわち、その1つの基地局がプライマリチャネルで管理フレームを送信している間は、セカンダリチャネル(2〜4ch)が未使用となってしまう。
【0009】
一方、データフレームは、プライマリチャネル(1ch)と、他のセカンダリチャネル(2〜4ch)が未使用であれば、チャネルボンディングして送信される。ここでは、プライマリチャネル(1ch)およびセカンダリチャネル(2〜4ch)が未使用であり、80MHzの周波数帯域を用いて送信される状態を示す。なお、各チャネルが使用中か否かの判定は、各チャネルのキャリアセンスの他に、RTS(Request-to-Send )/CTS(Clear-to-Send )の仕組みを利用し、基地局が送信するRTSに対して空チャネルであれば端末から送信されるCTSを受信するので、CTSを受信したチャネルを空チャネルと判定する方法を利用してもよい。
【0010】
IEEE802.11ac規格では、基地局が使用するプライマリチャネルは、既に存在している他の基地局のプライマリチャネルを使用することが推奨されている。基地局は必ずプライマリチャネルを用いて送信を行うため、複数の基地局が異なるプライマリチャネルを設定することにより、チャネルボンディング機能が働きづらくなることを避けるためである。この推奨規定に基づくと、同一および近隣エリアに多数の基地局が配置された場合、各基地局は同一のチャネルをプライマリチャネルとして用いることになる。このとき、各基地局はプライマリチャネルを用いて自身の管理フレームを送信するため、プライマリチャネルで送信する管理フレーム数は基地局数に比例して多くなる。また、非特許文献1に記載されているように、実装される機能が多いほど管理フレームに含まれる情報量が増加する。加えて、管理フレームの情報は受信環境が悪い端末に対しても通知できるように、低速レートで送信される場合が多い。その結果、プライマリチャネルにおける管理フレームの時間占有率が大きくなる。
【0011】
以上から、同一のプライマリチャネルを利用する基地局が増えると、管理フレームを送信するプライマリチャネルの時間占有率が増し、一方でプライマリチャネルの使用中はセカンダリチャネルが使用されないため、セカンダリチャネルのチャネル利用効率が低下し、ひいてはシステム全体のチャネル利用効率が低下する課題がある。
【0012】
本発明は、管理フレームを送信するプライマリチャネルの時間占有率が増しても、セカンダリチャネルのチャネル利用効率を高め、さらにシステム全体のチャネル利用効率を改善することができる無線LANシステム、無線LAN基地局装置および無線LAN制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明は、互いの電波を検知できる範囲に複数の無線LAN基地局(以下、基地局)が存在し、各基地局は、所定のプライマリチャネルが未使用のときに無線端末が該基地局との接続処理に用いる管理フレームを該プライマリチャネルで送信し、該プライマリチャネルが未使用のときに該無線端末とのデータ通信に用いるデータフレームを該プライマリチャネルと未使用のセカンダリチャネルを結合して送信する無線LANシステムにおいて、基地局は、
プライマリチャネルを用いて管理フレームを送信する期間に、未使用のセカンダリチャネルを用いて1以上のデータフレームを送信する制御手段を備える。
【0014】
第1の発明の無線LANシステムにおいて、制御手段は、未使用のセカンダリチャネルが複数あれば、未使用のセカンダリチャネルを結合するか、プライマリチャネルからチャネルが連続する範囲で未使用のセカンダリチャネルを結合し、データフレームを送信する制御を行う。
【0015】
第1の発明の無線LANシステムにおいて、制御手段は、管理フレームとデータフレームを分割し、プライマリチャネルおよびセカンダリチャネルで分割したフレームを同時送信する制御を行う。
【0016】
第1の発明の無線LANシステムにおいて、制御手段は、管理フレームとデータフレームを結合し、プライマリチャネルとセカンダリチャネルを結合し、結合したチャネルで結合したフレームを送信する制御を行う。
【0017】
第2の発明は、互いの電波を検知できる範囲に存在する複数の無線LAN基地局であって、所定のプライマリチャネルが未使用のときに無線端末が接続処理に用いる管理フレームを該プライマリチャネルで送信し、該プライマリチャネルが未使用のときに該無線端末とのデータ通信に用いるデータフレームを該プライマリチャネルと未使用のセカンダリチャネルを結合して送信する無線LANシステムの無線LAN基地局装置において、
プライマリチャネルを用いて管理フレームを送信する期間に、未使用のセカンダリチャネルを用いて1以上のデータフレームを送信する制御手段を備える。
【0018】
第3の発明は、互いの電波を検知できる範囲に複数の無線LAN基地局(以下、基地局)が存在し、所定のプライマリチャネルが未使用のときに無線端末が該基地局との接続処理に用いる管理フレームを該プライマリチャネルで送信し、該プライマリチャネルが未使用のときに該無線端末とのデータ通信に用いるデータフレームを該プライマリチャネルと未使用のセカンダリチャネルを結合して送信する無線LAN制御方法において、基地局は、
プライマリチャネルを用いて管理フレームを送信する期間に、未使用のセカンダリチャネルを用いて1以上のデータフレームを送信する制御を行う。
【0019】
第3の発明の無線LAN制御方法において、基地局は、未使用のセカンダリチャネルが複数あれば、そのセカンダリチャネルを結合するか、プライマリチャネルからチャネルが連続する範囲でそのセカンダリチャネルを結合し、データフレームを送信する制御を行う。
【0020】
第3の発明の無線LAN制御方法において、基地局は、管理フレームとデータフレームを分割し、プライマリチャネルおよびセカンダリチャネルで分割したフレームを同時送信する制御を
行ってもよい。第3の発明の無線LAN制御方法において、基地局は、管理フレームとデータフレームを結合し、プライマリチャネルとセカンダリチャネルを結合したチャネルで結合したフレームを送信する制御を行ってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、プライマリチャネルで管理フレームを送信する期間に、未使用のセカンダリチャネルがあればデータフレームも送信する制御を行うことにより、セカンダリチャネルが未使用となる期間が低減し、システム全体のチャネル利用効率を向上させることができる。例えば、セカンダリチャネルとして3チャネル確保でき、プライマリチャネルを含めて4チャネルが使用可能である場合、プライマリチャネルを占める管理フレームの占有率が 100%であったとき、本発明により従来のチャネル利用効率と比較して約4倍の改善効果を得ることができ、また、管理フレームの占有率が30%であっても、本発明により従来のチャネル利用効率と比較して約1.3 倍の改善効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の無線LANシステムの構成例を示す図である。
【
図2】本発明の基地局1のフレーム送信例1を示す図である。
【
図3】本発明の基地局1のフレーム送信例2を示す図である。
【
図4】本発明の基地局1のフレーム送信例3を示す図である。
【
図5】管理フレームとデータフレームを分割して同時送信する形態を示す図である。
【
図6】管理フレームとデータフレームを結合して送信する形態を示す図である。
【
図7】分割したフレームを同時送信する基地局の構成例を示す図である。
【
図8】結合したフレームを送信する基地局の構成例を示す図である。
【
図9】新規端末のプローブ要求に対する基地局の処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】プライマリチャネルとセカンダリチャネルの一例を示す図である。
【
図11】従来の管理フレームとデータフレームの送信例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の無線LANシステムの構成例を示す。
図1において、本発明の基地局1と他の基地局2は、互いの電波を検知できる範囲に存在し、それぞれ配下の端末3,4と通信する。ここで、本発明の基地局1は、端末3に対してプライマリチャネル(1ch)で管理フレームを送信する期間に、セカンダリチャネル(2〜4ch)でデータフレームを送信する機能を有する。他の基地局2は、本発明の基地局1と同じ機能を備えていてもよいし、端末4に対してプライマリチャネル(1ch)で管理フレームを送信しているときは、セカンダリチャネル(2〜4ch)でデータフレームを送信しない従来の基地局であってもよい。
【0024】
また、管理フレームを送信しない期間にデータフレームを送信する場合は、本発明の基地局1と他の基地局2は同じ処理を行い、プライマリチャネルが使用中であればデータフレームを送信せず、プライマリチャネルが未使用のときに、未使用のセカンダリチャネルと束ねてデータフレームが送信される。
【0025】
なお、チャネルが使用中か、未使用かの判断は、フレームの送信直前に各チャネルのキャリアセンスにより行う。キャリアセンスにより検知された電波強度が一定値以上であれば使用中、そうでなければ未使用と判断する。当該動作は、非特許文献1に記載の動作と同じパラメータを用いた動作でもよいし、異なるパラメータを用いた動作でもよい。また、上記のようにRTS/CTSを用いてチャネルが使用中か否かを判断してもよい。
【0026】
(本発明によるフレーム送信例)
以下、
図1の無線LANシステムにおいて、本発明の基地局1が管理フレームおよびデータフレームを送信する例について説明する。
【0027】
図2は、本発明の基地局1のフレーム送信例1を示す。ここでは、プライマリチャネル(1ch)およびセカンダリチャネル(2〜4ch)が未使用とする。
図2において、基地局1は、管理フレームを送信する際にプライマリチャネル(1ch)を用いる。このとき、基地局1に送信すべきデータがあり、かつ、未使用のセカンダリチャネル(2〜4ch)を確認した場合、基地局1は管理フレームと同時に、未使用のセカンダリチャネル(2〜4ch)を用いてデータフレームを送信する。データフレームには、ユニキャストで送信されるフレームと、マルチキャストで送信されるフレームとを含む。管理フレームとデータフレームを同時に送信するための方法の詳細については後述する。
【0028】
また、基地局1が管理フレームを送信しない期間にデータフレームを送信する場合は、未使用のプライマリチャネルとセカンダリチャネルを用いてデータフレームを送信する。このとき、基地局2が従来の基地局であって、プライマリチャネル(1ch)で管理フレームを送信していれば、基地局1はデータフレームを送信せず、セカンダリチャネル(2〜4ch)は未使用のままとなる。
【0029】
図3は、本発明の基地局1のフレーム送信例2を示す。ここでは、4chが使用中とする。例えば、基地局2が4chをプライマリチャネルに設定し、管理フレームを送信しているような場合に相当する。
【0030】
図3において、基地局1がプライマリチャネル(1ch)で管理フレームを送信するときに、セカンダリチャネル(2〜4ch)のうち4chが使用中であることを検知すると、4chを用いず、2〜3chを用いてデータフレームを同時送信する。また、基地局1が管理フレームを送信しない期間にデータフレームを送信する場合は、未使用のプライマリチャネル(1ch)と未使用のセカンダリチャネル(2〜3ch)を用いてデータフレームを送信する。
【0031】
図4は、本発明の基地局1のフレーム送信例3を示す。ここでは、3chが使用中とする。
図4において、基地局1がプライマリチャネル(1ch)で管理フレームを送信するときに、セカンダリチャネル(2〜4ch)のうち3chが使用中であることを検知すると、3chを用いず、2,4chを用いてデータフレームを同時送信する。あるいは、プライマリチャネル(1ch)から連続するチャネルのみを使用して送信してもよい。この場合、基地局1は4chを用いることはできず、2chを用いてデータフレームを同時送信する。
【0032】
また、基地局1が管理フレームを送信しない期間にデータフレームを送信する場合は、未使用のプライマリチャネル(1ch)と、未使用のセカンダリチャネル(2,4chまたは2ch)を用いてデータフレームを送信する。
【0033】
(管理フレームとデータフレームの関係)
ビーコンやプローブといった管理フレームは、端末が確実に受信できるように、低速レートで送信されることが多い。一方、データフレームは短期間で多くの情報を通信できるように、環境に応じてできる限り高速レートで送信される。管理フレームとデータフレームを異なるチャネルで同時に送信する場合、各チャネルで送信するフレーム長の差が大きいと、チャネル利用効率の改善量は少ない。
【0034】
そこで、管理フレームとデータフレームを同時送信する場合には、基地局は管理フレーム長に合わせて、複数のデータフレームを結合(アグリゲーション)する。結合するデータフレーム数は、管理フレーム長とデータフレーム長(データフレームの情報量/データフレームの伝送レート)に応じて変更されるが、以下の関係は満たすものとする。
(管理フレーム長)≧(データフレーム長)×(結合するデータフレーム数)
【0035】
管理フレームとともに自身宛のデータフレームを受信した端末は、データフレームが送信された全てのチャネルで応答フレームを送信する。例えば、
図2〜
図4に示すように、非特許文献1に記載の方式におけるBlock ACK に相当する信号を送信する。ただし、データフレームがユニキャストでない場合、応答フレームの送信は行われない。
【0036】
(管理フレームとデータフレームの送信形態)
図5は、管理フレームとデータフレームを分割して同時送信する形態を示す。
図5において、管理フレームはプライマリチャネル(1ch)で送信し、データフレームはセカンダリチャネル(2〜4ch)を結合して送信する。プライマリチャネルとセカンダリチャネルとの間には、管理フレームとデータフレームを独立の受信処理で復調可能な程度のガードバンドを設ける。
【0037】
図6は、管理フレームとデータフレームを結合して送信する形態を示す。
図6において、プライマリチャネル(1ch)とセカンダリチャネル(2〜4ch)を結合し、さらに管理フレームとデータフレームを結合して1つのフレームとして送信する。
【0038】
管理フレームとデータフレームは結合した1つのフレームとして送信されるため、受信局においては一連のデータ列として復調される。したがって、管理フレームとデータフレームを分離可能にする処理が必要となる。そのためには、管理フレームの最後に、管理フレームとデータフレームの結合点を示すビットもしくはビット列が追加される。
【0039】
受信側では、このビットもしくはビット列を目印に管理フレームとデータフレームを分離することができる。分離後に自局宛のフレームでなければ、そのフレームを破棄する。
【0040】
また、管理フレームとデータフレームの分離は、その他の処理によって行われてもよい。例えば、前回送信した管理フレームと同一の管理フレームを、データフレームと同時に送信する場合に、送信側で管理フレームとデータフレームのビット列の排他的論理和をとったビット列を送信信号として送信する。受信側では、受信し復調したビット列と前回受信した管理フレームのビット列との排他的論理和を計算することにより、管理フレームとデータフレームを分離することができる。
【0041】
ところで、
図6に示す結合したフレームでは、新規に参入した端末は管理フレームを認識することができない。これは、新規端末は1チャネル毎に管理フレームのスキャンを行うため、初期状態で結合したチャネルに対応しないためである。この機能を利用し、初期は
図5に示す分割したフレームで送信し、その後、一定数以上の端末が基地局に接続され、それ以上の端末が接続されることを制限したい場合に、
図6に示す結合したフレームで送信して新規端末を排除する、という切替動作を行ってもよい。あるいは、後述するように、端末が送信するプローブ要求に対してプローブ応答を送信しない対応でもよい。
【0042】
(基地局の構成)
図7は、
図5に示す管理フレームとデータフレームを分割したフレームを同時送信する基地局の構成例を示す。
【0043】
管理フレームとデータフレームを2つのOFDM信号で送信する場合には、管理フレームから1chを用いるOFDM信号を生成し、データフレームから2〜4chを用いるOFDM信号を生成し、同時に送信することになる。
【0044】
図7において、基地局は、アクセス制御部11、管理フレーム信号処理部12、データフレーム信号処理部13、プライマリチャネルRF部14、セカンダリチャネルRF部15およびアンテナ16により構成される。アクセス制御部11は、上位層から渡された送信フレームを無線通信システムのアクセス制御方式に従って、送信するか否かの判断、送信スケジューリングが行われる。例えば、非特許文献1に記載の無線LANシステムにおいては、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれるアクセス制御方式に基づいて、送信フレームの送信タイミングが制御される。
【0045】
管理フレーム信号処理部12では、管理フレームの情報を含むOFDM信号を生成する。生成されたOFDM信号は、プライマリチャネルRF部14を通して1chを用いるRF信号となる。データフレーム信号処理部13では、データフレームの情報を含むOFDM信号を生成する。生成された信号は、セカンダリチャネルRF部15を通して2〜4chを用いるRF信号となる。各RF部から出力されたRF信号は、同時にアンテナ16から送信される。
【0046】
図8は、
図6に示す管理フレームとデータフレームを結合したフレームを送信する基地局の構成例を示す。
図8において、基地局は、アクセス制御部21、信号処理部22、RF部23およびアンテナ24により構成される。アクセス制御部21は、
図7に示すアクセス制御部11と同じ処理を行う。信号処理部22は、
図6に示す管理フレームとデータフレームを結合したフレームから1つのOFDM信号を生成し、RF部23は生成されたOFDM信号を1〜4chを用いるRF信号に変換し、アンテナ24から送信する。
【0047】
また、
図8に示す基地局は、
図5に示す管理フレームとデータフレームを分割したフレームを1つのOFDM信号で送信する場合にも対応できる。信号処理部22は、1chに対応するサブキャリアに管理フレームの情報のみを配置し、2〜4chに対応するサブキャリアにデータフレームの情報を含むように各情報を配置する。プライマリチャネルとセカンダリチャネルの間のガードバンドは、1〜4chに渡る1つのOFDM信号のサブキャリアのうち、ガードバンドに位置するサブキャリアをヌル信号とすることにより生成する。生成されたOFDM信号は、RF部23で1〜4chを用いるRF信号となり、アンテナ24から送信される。
【0048】
なお、OFDM信号生成の際に周波数軸上でインターリーブ処理を行う場合、管理フレームの信号は1chに相当する周波数、データフレームの信号は2〜4chに相当する周波数内に限定されるようにインターリーブ処理を行う。受信側の端末は、このインターリーブ処理に対応したデインターリーブ処理が可能な機能を有する。
【0049】
このように、
図8に示す基地局の構成では、
図6に示す管理フレームとデータフレームを結合したフレームを1つのOFDM信号として送信する場合と、
図5に示す管理フレームとデータフレームを分割したフレームを1つのOFDM信号として送信する場合に対応できる。すなわち、基地局は、
図5に示す分割したフレームを受信可能な端末と、
図6に示す結合したフレームを受信可能な端末の比率に応じて、以下に説明するように使い分けることもできる。
【0050】
図9は、新規端末のプローブ要求に対する基地局の処理手順を示す。ここで、新規端末は、プライマリチャネルで送信された管理フレームを受信し、自端末が
図6に示す結合したフレームを受信可能か否かを記載したプローブ要求を送信するものとする。
【0051】
図9において、基地局は新規端末からのプローブ要求を受信すると、まず、基地局に接続されている総接続端末数が一定数未満か否かを判定する(S1)。ここで、総接続端末数が一定数以上であれば、プローブ要求を送信した新規端末を受け入れないようにプローブ応答を送信せずに終了する(S2)。
【0052】
総接続端末数が一定数未満であれば、新規端末のプローブ要求から結合したフレームを受信可能か否かを判断し(S3)、結合したフレームを受信可能であれば、結合したフレームを受信可能な端末が一定数以上あるか否かを判断する(S4)。一方、結合したフレームを受信不能であれば、結合したフレームを受信不能な端末が一定数以上あるか否かを判断する(S5)。結合したフレームを受信可能な端末が一定数以上、または結合したフレームを受信不能な端末が一定数未満であれば、
図6に示す結合したフレームを使用するように対応する(S6)。結合したフレームを受信可能な端末が一定数未満、または結合したフレームを受信不能な端末が一定数以上であれば、
図5に示す分割したフレームを使用するように対応する(S7)。このような使用するフレーム形態を記載したプローブ応答を作成し、プライマリチャネルで送信して終了する(S8)。
【0053】
このように、基地局は、接続している端末について、結合したフレームを受信可能な端末数と受信不能な端末数の状況に応じて、管理フレームとデータフレームの送信形態を選択して新規端末に通知する。例えば、結合したフレームを受信不能な端末が少数のときに、結合したフレームを受信不能な端末に対して、結合したフレームを使用することを通知すると、当該端末は管理フレームを受信できず、結果的に接続できないことになる。
【0054】
なお、ステップS4,S5における判定条件として、伝送レート、通信品質(平均再送回数、スループット、遅延時間)の閾値を条件として加えてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 本発明の基地局
2 他の基地局
3,4 無線端末
11,21 アクセス制御部
12 管理フレーム信号処理部
13 データフレーム信号処理部
14 プライマリチャネルRF部
15 セカンダリチャネルRF部
16,24 アンテナ
22 信号処理部
23 RF部