(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術によれば、光触媒機能により有機物や無機ガスが分解されるので、ハンドレールに防汚機能や殺菌機能を付与できると考えられる。しかしながら、ハンドレールの表面に光触媒機能を有する被覆層を形成した場合には、当該被覆層とハンドレールの本体とが常時接触していることになるため、光触媒の分解機能が外界からハンドレール表面に付着する汚れに対してだけでなく、ゴム材や有機高分子材によって構成されるハンドレール本体にも作用し、ハンドレールの劣化を促進することが懸念される。
【0008】
そこで本発明は、光触媒による防汚作用や殺菌作用をハンドレールに適用しながらも、光触媒の作用によるハンドレールの劣化を抑制することが可能な、乗客コンベアのハンドレール殺菌装置を提供することを課題とする。また、該ハンドレール殺菌装置をそなえた乗客コンベアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、乗客コンベアのステップと同期して周回移動する無端状のハンドレールを殺菌するための装置であって、
水および/または水性媒体並びに該水および/または水性媒体中に分散した光触媒粒子を含むスラリー液を前記ハンドレールの表面に付着させる、スラリー塗布手段と、
光触媒を励起する波長の紫外線を発光する紫外発光ダイオードを1つ以上備え、スラリー液が付着したハンドレールの表面に紫外発光ダイオードから発せられる紫外光を照射することにより前記光触媒を励起させる、光触媒励起手段と、
前記光触媒励起手段を経た前記ハンドレールの表面から前記スラリー液を除去する、スラリー除去手段とを有することを特徴とする、乗客コンベアのハンドレール殺菌装置である。
【0010】
本発明の第1の態様において、殺菌作用を有する深紫外線を発光する深紫外発光ダイオードを更に備え、(1)スラリー液が付着したハンドレールの表面に該深紫外発光ダイオードから発せられる深紫外線を照射するか、または(2)スラリー除去手段よりスラリーが除去された後のハンドレールの表面に該紫外線発光ダイオードから発せられる深紫外線を照射することが好ましい。
【0011】
本発明の第1の態様において、スラリー除去手段によりハンドレールの表面から除去されたスラリー液を受け容れて回収する受け器をさらに有することが好ましい。
【0012】
本発明の第1の態様において、スラリー除去手段が、ハンドレールの表面を水で洗浄する水洗手段を含むことが好ましい。かかる形態において、水洗手段が、ハンドレールの表面に加圧された水を噴射することによりハンドレールの表面を洗浄することが好ましい。
【0013】
本発明の第1の態様において、水洗手段による洗浄の後にハンドレールの表面に残留している水を、ハンドレールの表面から除去する水切り手段をさらに有することが好ましい。かかる形態において、水切り手段は、ハンドレールの表面に接触するように配置されたスクレイパーを有し得る。
【0014】
本発明の第1の態様において、乗客コンベアに乗り込む乗客を検知するセンサと、乗客コンベアの動作を開始および終了させる制御部とをさらに有し、制御部は、センサが乗客を検知することによりハンドレール殺菌装置の動作を開始させ、センサが所定の時間にわたって乗客を検知しないときにハンドレール殺菌装置の動作を停止させる形態を、好ましく採用することができる。かかる形態において、所定の時間とは、無端状のハンドレールが少なくとも一周分周回移動するのに要する時間であることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様は、乗客を載せて移動するステップと、ステップの両側に配置され、ステップと同期して周回移動する、一対の無端状のハンドレールと、本発明の第1の態様に係るハンドレール殺菌装置とを有することを特徴とする、乗客コンベアである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、光触媒による防汚および抗菌作用をハンドレールに適用しながらも、光触媒の作用によるハンドレールの劣化を抑制することが可能な、乗客コンベアのハンドレール清浄化装置を提供することができる。
【0017】
本発明の第2の態様に係る乗客コンベアは、本発明の第1の態様に係るハンドレール殺菌装置を有することにより、光触媒による防汚および抗菌作用をハンドレールに適用しながらも、光触媒の作用によるハンドレールの劣化を抑制することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の上記した作用および利得は、以下に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。なお、図では、一部の符号を省略することがある。
【0020】
図1は、本発明の一の実施形態に係るハンドレール殺菌装置40が適用される乗客コンベア100の概略構成図である。乗客コンベア100は、上層階と下層階との間で乗客を輸送するエスカレータである。乗客コンベア100は、乗客コンベア全体を下方から支持する、例えば金属板製の支持構造部11を備える。支持構造部11は、上層階の乗降口12aに配設される上部支持構造部11a、下層階の乗降口12bに配設される下部支持構造部11b、及び、上部支持構造部11aと下部支持構造部11bとの間を傾斜した状態で連結する傾斜支持構造部11cとを有している。
【0021】
支持構造部10内には、連なった状態で上層階と下層階との間を移動する多数のステップ13、13、…(以下において単に「ステップ13」ということがある。)が配設されている。ステップ13は、乗客を載せて移動する部材であり、乗客がその上に乗る踏板面を有している。ステップ13が上方に露出する往路領域では、各ステップ13は階段状をなして移動する。他方、支持構造部11内に位置する下方の復路領域では、各ステップ13の踏板面がそれぞれ略同一面をなした状態で移動する。
【0022】
上部支持構造部11a内には、モータ及び減速機等を含む駆動ユニット(不図示)が配設されている。駆動ユニットには、ステップ13の幅方向(
図1の紙面垂直方向)両側に、一対の駆動スプロケット14、14が連結されており、一対の駆動スプロケット14、14は駆動ユニットに駆動されることにより回転する。また、上部支持構造部11a内には、駆動ユニットを含む乗客コンベア全体を制御する乗客コンベア制御盤20が配置されている。
【0023】
他方、下部支持構造部11b内には、ステップ14の幅方向両側に一対の従動スプロケット15、15が配設されている。そして、上部支持構造部11a内の一対の駆動スプロケット14、14と、下部支持構造部11b内の一対の従動スプロケット15、15とに、一対の無端状のステップチェーン16、16が巻き掛けられている。これら一対のステップチェーン16、16に、各ステップ13の幅方向両側端部がそれぞれ連結されている。駆動ユニットが一対の駆動スプロケット14、14を駆動することにより、ステップ13、13、…は階段状をなしながら上層階と下層階との間を下り移動または上り移動する。なお、以下においては、乗客コンベア100が下り運転されている場合、すなわち階段状をなすステップ13、13、…が矢印Aの方向に移動している場合を想定して説明する。
【0024】
支持構造部11の上には、ステップ13の両側に、一対の側壁17、17が立設されている。一対の側壁17、17は、金属板または樹脂板によって形成されている。一対の欄幹部17、17の該周縁部にはガイドレール(不図示)が設けられており、このガイドレールに沿って無端状のハンドレール30が、ステップ13、13、…の移動と同期して周回移動する。乗客はハンドレール30を手でつかんだ状態でステップ13に立って乗客コンベア100を利用することが、安全面から望ましい。
【0025】
ハンドレール30は、上部支持構造部11aの上部に形成された上部ハンドレール入り込み口18aから支持構造部11外に出て、上層階の乗降口12aにおいてUターンして側壁17の上縁部に沿って矢印A方向に移動し、下層階の乗降口12bにおいて再びUターンして、下部支持構造部11bの上部に形成された下部ハンドレール入り込み口18bから支持構造部11内に進入し、支持構造部11内を通って上層階の乗降口12aの上部ハンドレール入り込み口18aへと移動する。
なお、乗客コンベア100は、移動方向切替えスイッチ(不図示)より移動方向を逆転させることができるようになっている。
【0026】
上部支持構造部11a内であって上部ハンドレール入り込み口18aの近傍には、ハンドレール殺菌装置40が配設されている。また、下部支持構造部11b内であって下部ハンドレール入り込み口18bの近傍にも、ハンドレール殺菌装置40が配設されている。上記2つのハンドレール殺菌装置40は、前記移動方向切替えスイッチと連動して、ハンドレール30が矢印Aの方向に移動するときに一方が作動し、ハンドレール30が矢印Aとは反対の方向に移動するときに他方が作動するようになっている。そして各ハンドレール殺菌装置40における各要素が配置される順番(配列)は、ハンドレール30の移動方向に沿って同じ配列となるようにされている。ハンドレール30の移動方向に応じてどちらのハンドレール殺菌装置40を作動させるようにしてもよいが、殺菌作用を有する深紫外線を発光する深紫外発光ダイオードを備える深紫外光照射手段を更に付設し、スラリー除去手段によりスラリーが除去された後のハンドレールの表面に該紫外線発光ダイオードから発せられる深紫外線を照射するときに、深紫外光照射手段の設置スペースを確保しやすいという観点からは、ハンドレール30が矢印A方向に移動するときは下部ハンドレール入り込み口18b近傍のハンドレール殺菌装置40を作動させ、ハンドレール30が矢印Aと反対方向に移動するときは上部ハンドレール入り込み口18a近傍のハンドレール殺菌装置40を作動させるようにすることが好ましい。
【0027】
上層階の乗降口12aおよび下層階の乗降口12bには、乗客が乗降口に来たことを検知する人感センサ19a、19bが配設されている。人感センサ19a、19bはそれぞれ、乗降口12a、12bを挟んだ両側に配設された一対の支柱を有してなり、該一対の支柱の一方には発光器が、他方には受光器が、それぞれ配設されている。受光器は発光器から発せられる光信号を受信可能に配置されている。人感センサ19a、19bは、発光器から受光器に向けて発せられた光信号が遮られたときに、乗客が乗降口に来たことを検知する。
【0028】
図2は、乗客コンベア100が備えるハンドレール30の、ハンドレール30の移動方向に対して垂直方向の断面の模式図である。
図2に示すように、ハンドレール30は、側壁17の周縁部に配設されたガイドレール31に沿って移動する無端状のハンドレール基材32と、ハンドレール基材32の表面に形成されたバリアコート層33とを有する。ハンドレール基材32は、ハンドレール30の形状を維持する十分な強度と可撓性を有する樹脂によって形成されている。バリアコート層33は、ハンドレール30の防汚性を高めつつ、光触媒の酸化作用からハンドレール基材31を保護する層であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂等のフッ素樹脂により形成されている。
【0029】
図3は、乗客コンベア100の下層階の乗降口12b近傍に配設されたハンドレール殺菌装置40を模式的に説明する図である。
図3に示すように、ハンドレール殺菌装置40は、スラリー塗布手段41と、光触媒励起手段42と、スラリー除去手段43と、水切り手段44と、受け器45と、スラリー再生手段46と、
図3には表れていない制御手段50(後述)を有している。受け器45に受け容れられた水および光触媒粒子は、配管49aを通じてスラリー再生手段46に導かれ、水の一部が分離されて配管49bを通じてスラリー除去手段41の水タンク431に送られ、残部が配管49cを通じてスラリー塗布手段41のスラリータンク411に送られる。下層階の乗降口12b近傍に配設されたハンドレール殺菌装置40においては、
図1の矢印Aの方向に周回移動するハンドレール30が、スラリー塗布手段41と、光触媒励起手段42と、スラリー除去手段43と、水切り手段44とをこの順に通過するように、スラリー塗布手段41、光触媒励起手段42、スラリー除去手段43、及び水切り手段44が配置されている。
【0030】
図4は、ハンドレール殺菌装置40を模式的に説明する図である。なお
図4には、殺菌ユニット41とともに、後述する水受け器45の底部45aおよび一対の側壁45d、45eも表れている。
図4において、紙面左右方向がハンドレール30の移動方向であり、
図3においてハンドレール30が矢印Aの方向に移動するとき、
図4においてハンドレール30は矢印Aの方向に移動する。
図4を参照しつつ、ハンドレール殺菌装置40についてさらに説明する。
【0031】
スラリー塗布手段41は、水および/または水性媒体ならびに当該水および/または水性媒体中に分散した光触媒粒子を含むスラリー液417をハンドレール30の表面に付着させる。
図4に示すように、スラリー塗布手段41は、スラリー液417を貯蔵するスラリータンク411と、不図示のモータによって駆動され、スラリータンク411からスラリー液417をくみ出して送液するスラリー送液ポンプ412と、配管414を介して第1のスラリーポンプ412に接続されたノズル413とを有する。配管414の途中にはバルブ415が設けられており、ハンドレール殺菌装置40の動作が停止しているときには配管414を遮断する。スラリータンク411にはスラリー撹拌装置416が設けられており、スラリー撹拌装置416はスラリー液417の濃度に不均一が生じないよう、スラリータンク411内のスラリー液417を撹拌する。スラリータンク411からスラリー送液ポンプ412によって送出されたスラリー液417はノズル413からハンドレール30の表面に向けて吐出され、ハンドレール30の表面に付着する。スラリー送液ポンプ412としては、スラリーの送液に用いられるものとして公知の構成のポンプを特に制限なく採用でき、例えばギヤポンプ、ホースポンプ、一軸ネジポンプ等を好ましく用いることができる。ノズル413としては、スラリー液417による目詰まりを起こさない程度の径の開口部を有するノズルを特に制限なく採用できる。またスラリー撹拌装置416としては、スラリー液417の濃度の均一性を保つ程度の撹拌が可能な撹拌装置を特に制限なく採用できる。
【0032】
スラリー液417は、水および/または水性媒体と、当該水および/または水性媒体中に分散した光触媒粒子とを含んでなる。スラリー液417に含有させる光触媒粒子としては、安全性の観点から酸化チタンを好ましく用いることができる。酸化チタンはルチル型およびアナターゼ型のいずれでもよいが、一般に光触媒活性が高いことからアナターゼ型を好ましく採用できる。光触媒粒子は、酸化チタン等の光触媒材料からなる粒子であってもよく、酸化チタン等の光触媒材料が例えばシリカ等の担体に担持された構造を有する粒子であってもよい。光触媒粒子の粒子サイズは、分散の容易性の点で、レーザー回折法により測定される体積粒度分布の中間値を与える球相当直径(平均粒子径D50)として好ましくは1μm以下であり、より好ましくは50nm以下である。下限は特に限定されるものではないが、入手の容易性等の観点からは例えば5nm以上とすることができる。スラリー液417中の光触媒粒子の含有量は、光触媒作用によるハンドレール30の表面の殺菌効果を高めやすくする観点から好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、送液および噴出等の容易性の点で好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは70重量%以下である。このようなスラリー液としては、たとえば特開2001−303434号公報、特開2007−330953号公報、特開2012−166193号公報などに記載されたスラリー液を挙げることができる。
【0033】
光触媒励起手段42は、スラリー液417に含まれる光触媒を励起する波長の紫外線、例えば250〜400nm、好ましくは300〜400nm、特に好ましくは360〜400nmの波長の紫外線を発光する紫外発光ダイオードを1つ以上備え、スラリー液417が付着したハンドレール30の表面に該紫外発光ダイオードから発せられた波長360〜400nmの紫外光を照射することにより、スラリー液417に含まれる光触媒を励起させる。
図5は、光触媒励起手段42を模式的に説明する断面図である。
図5において、紙面に垂直な方向がハンドレール30の移動方向である。
図5に示すように、光触媒励起手段42は、ハンドレール30の表面を取り囲むように、光軸をハンドレール30の表面に向けて並べて配置された、スラリー液417に含まれる光触媒を励起する波長の紫外線を発光する紫外発光ダイオード421、421、…と、該紫外発光ダイオード421、421、…を支持する紫外LED支持部材422とを有する。なお
図5には表れていないが、紫外LED支持部材422は、受け器45の側壁45d、45e(後述)に固定されて保持されている。紫外発光ダイオード421、421、…は不図示の電源に接続されており、紫外発光ダイオード421、421、…から発せられた紫外光がスラリー液417が付着したハンドレール30の表面に照射されることにより、ハンドレール30の表面に付着したスラリー液417に含まれる光触媒が励起される。紫外発光ダイオード421、421、…としては、スラリー液417に含まれる光触媒を励起する波長の紫外線、例えば250〜400nm、好ましくは300〜400nm、特に好ましくは360〜400nmの波長の紫外線を発光する公知の紫外LEDを特に制限なく採用できる。光触媒励起手段42において、光触媒の励起光の光源として紫外発光ダイオード421、421、…を用いることにより、低圧水銀ランプ等の放電管光源を用いた場合と比較して消費電力を低減できるだけでなく、光源寿命が長いことにより運用コストも低減できる。さらに、低圧水銀ランプ等の放電管光源は電源投入から紫外光の強度が十分な値に安定するまで、或る時間のウォーミングアップ運転(光源によって長さは異なる)が必要であるのに対し、紫外発光ダイオードは電源投入から直ちに強度の安定した紫外光を照射できるので、後述する人感センサ19a、19bとの組み合わせによる乗客コンベアの運転および停止の制御に十分に追従することができる。
【0034】
酸化チタン等の光触媒は、励起光の照射を受けることにより、水や酸素等からヒドロキシラジカル(・OH)やスーパーオキサイドアニオン(・O
2−)等の活性酸素種を生じる。これらの中でも水から生じるヒドロキシラジカルは酸化力が大であり、ハンドレール30に付着する汚れの主成分である有機化合物の分子中の結合を容易に切断するので、光触媒による分解作用および殺菌作用への寄与は大きいと考えられる。ハンドレール30がその表面にスラリー液417が付着した状態で、すなわちハンドレール30表面に水および光触媒粒子が共存する状態で光触媒励起手段42からの励起光の照射を受けることにより、分解機能および殺菌機能に大きく寄与するヒドロキシラジカルが効率的に生成するので、光触媒の分解作用および殺菌作用をより効果的に発揮させることが可能になる。
【0035】
スラリー除去手段43は、光触媒励起手段42を経たハンドレール30の表面からスラリー液417を除去する。スラリー除去手段43は、ハンドレールの表面を水で洗浄する水洗手段であり、ハンドレール30の表面に加圧された水(高圧水)を噴射することによりハンドレール30の表面を洗浄し、ハンドレール30の表面からスラリー液417を除去する、高圧水洗浄手段である。
図6は、
図4のB−B断面図であって、スラリー除去手段43を模式的に説明する図である。なお
図6には、受け器45の底部45aおよび一対の側壁45d、45eも表れている。スラリー除去手段43は、水タンク431と、不図示のモータによって駆動される送水ポンプ432と、配管435を介して送水ポンプ432に接続されたノズル433とを有する。水タンク431からくみ出された水は、送水ポンプ432によって加圧されて高圧水となり、その高圧水が配管435を通じてノズル433に導かれ、ノズル433の開口部からハンドレール30の表面に向けて吐出される。高圧水がノズル433の開口部から高圧水流434として扇形状(平面的放射状)に広がるように吐出されることにより、ハンドレール30の表面からスラリー液417が洗い落とされる。なお送水ポンプ432からノズル433に至る配管435の途中にはバルブ436が設けられており、ハンドレール殺菌装置40の動作が停止しているときには配管435を遮断する。スラリー除去手段(水洗手段)43の送水ポンプ432及びノズル433としては、高圧水洗浄装置に用いられるものとして公知の構成のポンプ及びノズルを特に制限なく採用することができる。
【0036】
受け器45は、除去されたスラリーおよび洗浄水(以下において「廃スラリー」ということがある。)を受け容れて回収する容器であり、底部45aと、スラリー塗布手段41のノズル413から吐出されたスラリー液417の外部への飛散を防ぐように底部45aから立設された前方壁45bと、底部45の前方壁45bとは反対側の端部に立設された後方壁45cと、ガイドレール30の幅方向への水および光触媒粒子の漏出を防ぐように底部45aから立設された一対の側壁45d、45e(
図4には表れていない)とを有してなる。
図7は
図4のC−C矢視図であり、受け器45の前方壁45bの形状が表れている。
図8は
図4のD−D矢視図であり、受け器45の後方壁45cの形状が表れている。受け器45の底部45aには、底部45aの他の箇所より窪んだ集水部45fが設けられており、底部45aの内面は集水部45fに廃スラリーを集めるため、集水部45fに向けて傾斜している。集水部45fの底部には配管49aの一方の端部が開口しており、集水部45fに集められた廃スラリーは配管49aを通じて廃スラリータンク(不図示)またはスラリー再生手段46に導かれる。廃スラリータンク(不図示)に導かれた廃スラリーは、定期的に取り出し外部で再生処理してもよいが、スラリー液が水と光触媒との混合物からなり、更にハンドレールの汚れが少ない場合には、スラリー再生手段46を付設し、これにより分離された光触媒を再利用してもよい。
【0037】
図9は
図4のE−E矢視図であり、受け器45の一対の側壁45d、45e、後方壁45c、底部45a、及び水切り手段44が表れている。水切り手段44は、スラリー除去手段(水洗手段)43による高圧水洗浄の後にハンドレール30の表面に残留している水を、ハンドレール30の表面から除去する。水切り手段44は、先端がハンドレール30の表面に接触するように設けられたスクレイパーであり、受け器45の一対の側壁45d、45eに固定されている。スクレイパーである水切り手段44の、ハンドレール30と接触する先端部は、ハンドレール30の表面を傷つけないように、例えばシリコーン樹脂等の軟質の樹脂によって構成されている。スラリー除去手段43を経た後にハンドレール30の表面に残留している水は、スクレイパーである水切り手段44により掃き取られてハンドレール30の表面から除去され、スクレイパー表面を流れ落ちて水受け器45の集水部45fに集められる。
【0038】
図3及び
図4を再度参照する。スラリー再生手段46は、受け器45に回収された廃スラリーの少なくとも一部をスラリー塗布手段41に供給する。スラリー再生手段46は、受け器45に回収された廃スラリーから水および/または水性媒体の一部を除去する濃縮手段461を含んでなる。濃縮手段461は、受け器45に回収された廃スラリーから除去した水および/または水性媒体をスラリー除去手段(水洗手段)43に供給する。受け器45に回収された廃スラリーは、配管49aを通じて濃縮手段461に導かれる。
図4に示すように、濃縮手段461は、フィルタ462と、フィルタ462によって隔てられた第1の部屋461a及び第2の部屋461bと、第1の部屋461aに設けられた撹拌装置463と、配管49bを介して第2の部屋に接続された送水ポンプ464と、配管49cを介して第1の部屋に接続されたスラリー送液ポンプ465とを有している。配管49aを通じて導かれた廃スラリーは、スラリー塗布手段41から吐出された初期のスラリー液417に含まれていた水および/または水性媒体ならびに光触媒粒子に加えて、スラリー除去手段(水洗手段)43に由来する水を含むので、初期のスラリー液417よりも濃度が低い、希釈されたスラリー液となっている。当該廃スラリーは濃縮手段461の第1の部屋461aに導入され、撹拌装置463により撹拌されてフィルタ462に対して平行な流れを発生する。第2の部屋461bに接続された送水ポンプ464が作動することにより、第1の部屋461aと第2の部屋461bとの間にフィルタ462を隔てて圧力差が発生し、クロスフロー濾過により水および/または水性媒体のみがフィルタ462を通過して第1の部屋461aから第2の部屋461bに移動する。第2の部屋461bに移動した水および/または水性媒体は送水ポンプ464によって配管49bを通じてスラリー除去手段(水洗手段)43の水タンク431に移送される。これにより、第1の部屋461aには水および/または水性媒体の含有量が減少した(すなわち濃縮された)スラリー液が残される。第1の部屋461aに残される濃縮されたスラリーは、スラリー送液ポンプ465によって配管49cを通じてスラリー塗布手段41のスラリータンク411に移送される。この一連のスラリー再生プロセスにより、スラリー塗布手段43が吐出するスラリー液417の濃度は一定の範囲内に保たれる。また、スラリー除去手段(水洗手段)43の水タンク431内の水および/または水性媒体が枯渇することもない。
【0039】
フィルタ462としては、スラリー液417に含まれる光触媒粒子を濾別可能なフィルタを特に制限なく採用できる。撹拌装置463としては、クロスフロー濾過ができる程度にスラリー液417を十分に撹拌可能な能力を有する、羽根車等の公知の回転式の撹拌装置を特に制限なく採用できる。送水ポンプ464としては、クロスフロー濾過ができる程度の圧力差を発生することが可能な公知の水ポンプを特に制限なく採用できる。スラリー送液ポンプ465としては、スラリー液417を送液可能な公知のポンプを特に制限なく採用できる。
【0040】
上記したように光触媒を用いることにより、ハンドレールの汚れ除去と共に殺菌を行うことができる。殺菌効果をより高めるためには、本発明の第1の態様において、殺菌作用を有する深紫外線(好ましくは波長200〜350nmの紫外線、より好ましくは波長260〜320nmの紫外線)を発光する一以上の深紫外発光ダイオードを更に備え、(1)スラリー液417が付着したハンドレール30の表面に該深紫外発光ダイオードから発せられる深紫外線を照射するか、または(2)スラリー除去手段43によりスラリー液417が除去された後のハンドレール30の表面に該紫外線発光ダイオードから発せられる深紫外線を照射することが好ましい。より確実な殺菌を行うことができるという観点から、上記(2)の形態を採用することが特に好ましい。
上記(1)の形態を採用する場合には、
図5に示す光触媒励起手段42において、ハンドレール30の表面を取り囲むように配置された、紫外発光ダイオード421、421、…の一部を、上記深紫外発光ダイオードに置換すればよい。
また、上記(2)の形態を採用する場合には、
図10に示すような深紫外光照射手段47を水切り手段44の下流側に設置すればよい。この場合、深紫外光照射手段47の設置場所は、受け器45の内部であっても外部であってもよい。
図10は、深紫外光照射手段47を模式的に説明する断面図である。
図10において、紙面に垂直な方向がハンドレール30の移動方向である。
図10に示すように、深紫外光照射手段47は、ハンドレール30の表面を取り囲むように、光軸をハンドレール30の表面に向けて並べて配置された、発光波長260〜320nmの深紫外発光ダイオード471、471、…と、該深紫外発光ダイオード471、471、…を支持する深紫外LED支持部材472とを有する。深紫外発光ダイオード471、471、…は不図示の電源に接続されており、深紫外発光ダイオード471、471、…から発せられた深紫外光がハンドレール30の表面に照射されることにより、ハンドレール30の表面が殺菌される。深紫外発光ダイオード471、471、…としては、発光波長が260〜320nmである公知の深紫外LEDを特に制限なく採用することができる。
【0041】
図11及び
図12を参照して、ハンドレール殺菌装置40の運転制御について説明する。
図11は、
図4において、制御部50を省略せずに表した図である。制御部50は、乗客コンベア制御盤20の一部であり、例えば、制御プログラムを実行する中央演算装置(CPU)、制御プログラム等を記憶するメモリ等を含むマイクロコンピュータにより好ましく構成することができる。制御部50は、乗客コンベア制御盤20の一部として、乗客コンベア100の運転状態に関する情報や、人感センサ19a、19bによる検出結果等を取得することができ、かつ、乗客コンベア100の運転開始指令および運転停止指令を発信することができる。また制御部50はタイマの機能を備えている。また、制御部50は、スラリー塗布手段41のスラリー送液ポンプ412、バルブ415、及びスラリー撹拌装置416;光触媒励起手段42;スラリー除去手段(水洗手段)43の送水ポンプ432及びバルブ436;並びにスラリー再生手段46の撹拌装置463、送水ポンプ464、及びスラリー送液ポンプ465と電気的に接続されており、これらの動作を制御する指令を送信することができる。なお、制御部50は、乗客コンベア制御盤20とは別個の要素として構成されていてもよい。
【0042】
図12は、ハンドレール殺菌装置40の運転を制御する処理ルーチンS10を説明するフローチャートである。処理ルーチンS10は、制御手段50において所定時間毎にメモリから読み出されてCPUにより実行される。
図12に示すように、処理ルーチンS10はステップS11〜S16を有している。
【0043】
まず、上層階の乗降口12a(
図1参照。)に乗客が来たか否かが判断される(ステップS11)。この判定は、人感センサ19bの検出信号に基づいて行われる。ステップS11において否定判断がなされた場合、すなわち上層階の乗降口12aに乗客が来ていない場合には、そのまま処理を終了する。ステップS11において肯定判断がなされた場合、すなわち上層階の乗降口12aに乗客が来ている場合には、運転休止状態にあった乗客コンベア100の下り運転動作を開始させ(ステップS12)、次いでハンドレール殺菌装置40によるハンドレール30の殺菌を行う(ステップS13)。具体的には、スラリー塗布手段41のバルブ415を開き、スラリー送液ポンプ412を作動させてスラリー液417をノズル413からハンドレール30表面へ吐出させ;光触媒励起手段42の紫外発光ダイオード421、421、…を点灯させ;スラリー除去手段(水洗手段)43のバルブ436を開き、送水ポンプ432を作動させて高圧水をノズル433からハンドレール30の表面へ噴出させ;スラリー再生手段46の撹拌装置463、送水ポンプ464、及びスラリー送液ポンプ465を作動させて、水受け器45の集水部45fに集められた廃スラリーの再生を開始する。
【0044】
続くステップS14において、最後の乗客検知から所定時間が経過したか否かが判断される。この判断は、制御部50に含まれるタイマのカウント値に基づいて行われる。制御部50に含まれるタイマは、上層階の乗降口12aにおいて人感センサ19aにより新たな乗客が検知される度にカウント値を初期化してカウントを開始する。これにより制御部50に含まれるタイマのカウント値は、最後の乗客検知から経過した時間を表している。ステップS14における所定時間とは、無端状のハンドレール30が少なくとも1周分周回移動するのに要する時間に設定されており、このような一周分の周回移動に要する時間は乗客コンベア100について既知の情報として制御部50のメモリにあらかじめ記憶されている。ただし、ステップS14における所定時間は、ハンドレール30が1周分以上周回移動する時間であってもよい。
【0045】
上記ステップS14において最後の乗客検知から所定時間が経過するまでハンドレール殺菌装置40の動作を継続するので、無端状のハンドレール30の全周の表面がハンドレール殺菌装置40により殺菌される。そしてステップS16において最後の乗客検知から所定の時間が経過したという肯定判断がなされると、ハンドレール殺菌装置40によるハンドレール30の殺菌が停止される。具体的には、スラリー塗布手段41のスラリー送液ポンプ412を停止して、バルブ415を閉じ;光触媒励起手段42の紫外発光ダイオード421、421、…を消灯させ;スラリー除去手段(水洗手段)43の送水ポンプ432を停止させて、バルブ436を閉じ;スラリー再生手段46の撹拌装置463、送水ポンプ464、及びスラリー送液ポンプ465を停止させて、廃スラリーの再生を停止する。そして乗客コンベア100の駆動ユニットの作動が停止されて運転休止状態に入る(ステップS16)。
【0046】
上記説明した処理ルーチンS10においては、乗客コンベア100の運転が必要とされる時のみに乗客コンベア100を運転し、同時にハンドレール30の殺菌を行う。このとき、ハンドレール殺菌装置40は光触媒励起手段42において紫外発光ダイオード421、421、…を用いているので、ステップS13におけるハンドレール殺菌開始の指令に直ちに追従して、安定した強度の励起光をスラリー液417が付着したハンドレール30の表面に照射することができる。
【0047】
本発明に関する上記説明では、スラリー塗布手段41が単一のノズル413を有する形態のハンドレール殺菌装置40を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。スラリー塗布手段が有するノズル(吐出口)の数および配置は、ハンドレールの形状や大きさに応じて適宜選択することが可能である。
【0048】
本発明に関する上記説明では、スラリー塗布手段41のノズル413から吐出されたスラリー液417が直接ハンドレール30の表面に付着する形態のハンドレール殺菌装置40を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、ロールコーターやグラビアコーター等のようにハンドレールの表面に接触して回転するローラを備え、該ローラの表面にスラリー液を供給し、該ローラを回転させることによってローラ表面のスラリー液をハンドレール表面に付着させる形態のスラリー塗布手段を備えるハンドレール殺菌装置とすることも可能である。さらには、例えばスロットダイコーターなどをスラリー塗布手段として備える形態のハンドレール殺菌装置とすることも可能である。
【0049】
本発明に関する上記説明では、水洗手段であるスラリー除去手段43が単一のノズル433を有する形態のハンドレール殺菌装置40を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。水洗手段が有するノズル(吐出口)の数および配置は、ハンドレールの形状や大きさに応じて適宜選択することが可能である。
【0050】
本発明に関する上記説明では、スラリー除去手段43が高圧水洗浄手段である形態のハンドレール殺菌装置40を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、スラリー除去手段が加圧されていない水の流れによってハンドレール表面からスラリー液を除去する形態のハンドレール殺菌装置とすることも可能である。また例えば、スラリー除去手段が圧縮空気によってハンドレール表面からスラリー液を吹き飛ばして除去する形態のハンドレール殺菌装置とすることも可能である。また例えば、スラリー除去手段がハンドレール表面からスラリー液を吸引除去する形態のハンドレール殺菌装置とすることも可能である。また、複数の除去方法を組み合わせたスラリー除去手段を備える形態のハンドレール殺菌装置とすることも可能である。
【0051】
本発明に関する上記説明では、表面にバリアコート層33が形成されたハンドレール30を備える乗客コンベア100にハンドレール殺菌装置40が適用される形態を例示して説明したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば
図2においてバリアコート層33を有しない形態のハンドレールを備える乗客コンベアに対して本発明のハンドレール殺菌装置を適用することも可能である。
【0052】
本発明に関する上記説明では、スクレイパーである水切り手段43を備える形態のハンドレール殺菌装置40を例示して説明したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、スクレイパーに代えて、圧縮空気を吹き付けることによってハンドレール表面の水を吹き飛ばして除去する形態の水切り手段を採用することも可能である。また、圧縮空気の吹き付けとスクレイパーによる掃き取りを組み合わせて用いることも可能である。また、水の除去は下部ハンドレール入り込み口近傍に設けられたハンドレール殺菌装置を経た後、上部ハンドレール入り込み口から出てくるまでの時間を利用した自然乾燥に任せ、水切り手段は備えない形態のハンドレール殺菌装置とすることも可能である。
【0053】
本発明に関する上記説明では、受け器45によって回収された廃スラリーを再利用するためのスラリー再生手段46が、回収された廃スラリーから水および/または水性媒体の一部を除去する濃縮手段461を含み、濃縮手段461が廃スラリーから除去した水および/または水性媒体をスラリー除去手段(水洗手段)43に供給する形態のハンドレール殺菌装置40を例示して説明したが、本発明は当該形態に限定されない。当該形態のハンドレール殺菌装置40によれば、水道水の利用が難しい場所に設置された乗客コンベアのハンドレールに対しても水洗または高圧水洗浄によるスラリー除去を行うことが可能であるが、乗客コンベアが水道水を利用できる場所に設置されている場合には、上水道からスラリー除去手段としての水洗手段に直接水を供給し、回収された廃スラリーから濃縮手段が除去した水はそのまま排水として下水道に排出する形態のハンドレール殺菌装置とすることも可能である。またスラリー除去手段が水洗手段を含まない形態においては、受け器によって回収された廃スラリーは初期のスラリー液と同等の濃度を有しているので、濃縮手段を経ることなくそのままスラリー塗布手段に再供給することも可能である。
【0054】
本発明に関する上記説明では、乗降口を挟んで設けられた一対の支柱と、該一対の支柱の一方に設けられた発光器と、他方に設けられた受光器とを有する人感センサ19a、19bを備える実施形態を例示して説明したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。本発明のハンドレール殺菌装置および乗客コンベアにおいては、人感センサとして、例えば天井等に設けられた赤外線センサを採用することも可能であり、また、撮像カメラを用いて画像解析により利用者を検知する装置を用いることも可能である。
【0055】
本発明に関する上記説明では、上層階と下層階とを結ぶエスカレータである乗客コンベア100、及び該乗客コンベア100に設置されるハンドレール殺菌装置40を例示して説明したが、本発明は当該形態に限定されない。本発明のハンドレール殺菌装置は、エスカレータ以外の乗客コンベア(例えば、乗客を水平方向に移動させるいわゆる動く歩道等。)にも適用可能であり、本発明の乗客コンベアは、エスカレータ以外の乗客コンベアであってもよい。