特許第6235765号(P6235765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6235765紫外線蛍光色検出装置及び紫外線蛍光色検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6235765
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】紫外線蛍光色検出装置及び紫外線蛍光色検出方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/121 20160101AFI20171113BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G07D7/121
   G06T1/00 400E
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-528591(P2017-528591)
(86)(22)【出願日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】JP2017011802
【審査請求日】2017年5月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510192019
【氏名又は名称】株式会社ヴィーネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(72)【発明者】
【氏名】七尾 勉
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−9445(JP,A)
【文献】 特開2016−15031(JP,A)
【文献】 特開2008−187531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/121
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光源から媒体に紫外光を照射し、媒体から生じる蛍光色発光を受光部で検出する紫外線蛍光色検出装置であって、
蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる白色LED光源と、
前記受光部に設けられ、少なくとも1色以上の可視光カラーフィルタを透過した光が入射する複数の受光素子と、
前記白色LED光源からの白色光が照射された白基準物からの光が前記可視光カラーフィルタを介して前記複数の受光素子に入射することにより得られる各受光素子からの出力信号に基づいて、前記紫外光源からの紫外光が照射された媒体からの蛍光が前記可視光カラーフィルタを介して前記複数の受光素子に入射することにより得られる各受光素子からの出力信号を補正する補正処理部とを備えることを特徴とする紫外線蛍光色検出装置。
【請求項2】
前記白色LED光源の出力が10%から90%に立ち上がるまでの時間、及び、90%から10%に立ち下がるまでの時間のそれぞれが、2μ秒以下であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線蛍光色検出装置。
【請求項3】
前記複数の受光素子は、主走査方向に沿って直線状に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線蛍光色検出装置。
【請求項4】
紫外光源から媒体に紫外光を照射し、媒体から生じる蛍光色発光を受光部で検出する紫外線蛍光色検出装置を用いた紫外線蛍光色検出方法であって、
前記紫外線蛍光色検出装置は、
蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる白色LED光源と、
前記受光部に設けられ、少なくとも1色以上の可視光カラーフィルタを透過した光が入射する複数の受光素子とを備え、
前記白色LED光源からの白色光が照射された白基準物からの光が前記可視光カラーフィルタを介して前記複数の受光素子に入射することにより得られる各受光素子からの出力信号に基づいて、前記紫外光源からの紫外光が照射された媒体からの蛍光が前記可視光カラーフィルタを介して前記複数の受光素子に入射することにより得られる各受光素子からの出力信号を補正することを特徴とする紫外線蛍光色検出方法。
【請求項5】
前記白色LED光源の出力が10%から90%に立ち上がるまでの時間、及び、90%から10%に立ち下がるまでの時間のそれぞれが、2μ秒以下であることを特徴とする請求項4に記載の紫外線蛍光色検出方法。
【請求項6】
前記複数の受光素子は、主走査方向に沿って直線状に配列されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の紫外線蛍光色検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ラインセンサ装置に関し、特に有価証券や紙幣等の鑑別を目的とする鑑別用途光学ラインセンサ装置に関するもので、紫外線照射時に有価証券や紙幣などに含まれる蛍光体の蛍光色発光を精度良く検出する紫外線蛍光色検出装置及び紫外線蛍光色検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の印刷技術や複写技術の目覚ましい性能向上に伴い、紙幣、有価証券等の偽造がますます精巧になってきており、これらを的確に判別して排除することが国家の社会秩序を維持するために重要視されている。特にATMや紙幣処理機など紙幣を取り扱う機器において、より高速で高性能な真偽判定目的の鑑別システムが強く求められてきている。
【0003】
これら紙幣や有価証券(以下、「媒体」と略す)の鑑別方法として、セルフォックレンズアレイ(登録商標:日本板硝子製)などの等倍光学系を用いた密着光学ラインセンサ装置が広く使われてきている。
【0004】
上記光学ラインセンサ装置に関しては、媒体の偽造がますます巧妙化していることにより高精度の鑑別方法が求められており、対象媒体の表・裏・透過の3方位から可視光あるいは赤外光を発光する光源を用いて、複数の波長毎の画像を取り込んで媒体の鑑別を実施している。
【0005】
このため、光学ラインセンサ装置の光源部は、それぞれの波長を発光することができるように複数種類のLEDを装備し、観測ラインごとに、これらのLEDを順次切り替えて発光させる。そして、受光部にてそれぞれの観測ラインごとの光出力信号を重ね合わせて画像データとし、これをもとに媒体の鑑別を実施している。
【0006】
さらには、紫外光LEDの性能向上に伴い、反射光源に紫外光LEDを搭載して、媒体及び媒体表面印刷インクの紫外線励起による蛍光像を識別する手段も新たに採用されてきている。
本発明は、紫外線により媒体の蛍光を鑑別するセンサに関すものである。
【0007】
従来の紫外線による媒体の鑑別方法では、紫外光を照射し、それにより蛍光した媒体表面の反射像の可視光あるいは赤外光を、紫外線を遮蔽した状態で、光センサ上に受光してその出力を判別する手段が取られている。しかしながら、この識別方法は出力がモノトーンで検出されるため、実際に肉眼で蛍光を識別する際とイメージが大きく異なり、さらには媒体基材の蛍光による阻害などに起因して、目的とする蛍光対象を十分なコントラストで得られないという問題点を有している。
【0008】
このような問題点を解決する目的で、ラインセンサの画素上に少なくとも1色以上の可視光カラーフィルタ膜を設けて、媒体の蛍光色を直接検出する試みが、本発明者を含め、提案されてきている。これにより、媒体に紫外光照射した際、媒体の蛍光色を直接検出することが可能となって、さらなる鑑別精度の向上が期待されている。
【0009】
しかしながら、上記手段において、紫外線照射時の媒体蛍光の色の読み取り精度を肉眼での識別と同様なカラーバランスで検出するには、種々の課題があることが判ってきた。
【0010】
すなわち、従来の鑑別センサでは、赤、緑、青などの可視光LED単色光を順次点灯し、それぞれの媒体の出力画像の濃淡バランスを補正して適正なカラー出力画像に合成することができるが、センサ画素毎にカラーフィルタを設けて蛍光色を検出するには、カラーフィルタ毎の出力バランスが補正できず、所望する紫外線照射時の蛍光色の濃淡を正確に検出できない問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−39996号公報
【特許文献2】特開2001−229722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点の解決に鋭意取り組んだ結果、新たな手段を見出し、到達したものである。
【0013】
センサの画素上にカラーフィルタを設けることを特徴とする光学ラインセンサ装置を用いることで、紫外光照射時の媒体の蛍光色を検出することが可能であるが、正確な色調を得ようとする場合、以下に記す問題点がある。
【0014】
例えば、従来技術のように可視光光源、例えば赤、緑、青のLEDを順次点灯してさらに紫外光LEDを点灯して媒体の蛍光を検出する場合、可視光LEDそれぞれの波長の出力信号を調整して白バランスを補正することで、実態に即した可視光像を得ることができるものの、カラーフィルタの白バランスが検出できないために、紫外光照射時の蛍光色の色調は別の手段を採用しないと正確な情報が得られない。さらに、赤、緑、青のLEDを同時点灯して白色光源としてカラーフィルタの濃度バランスを補正することを検討したが、赤、緑、青のLEDそれぞれについて、素子毎の温度−出力特性、経時変化の補正、さらにはLED発光の狭い波長域のためのカラーフィルタの透過特性の補正を実施することが煩雑であることが判明した。
【0015】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、紫外光照射時の媒体の可視蛍光の色の読み取り精度を簡便かつ正確に検出できる紫外線蛍光色検出装置及び紫外線蛍光色検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記課題を解決すべく種々検討し、可視光域全てに出力がある白色光源を用い、カラーフィルタ毎の白基準出力を検出し、これによりカラーフィルタ毎の感度補正を実施することで紫外光照射時の媒体の蛍光色を色バランス良く取り出すことを試み、目的を達成できることが判明した。
【0017】
さらに、上記センサにおいて、可視光光源であるRGBなどの可視光単体波長のLED(RGB各色LEDは温度特性や経時変化が異なり、カラーバランスを安定させることが困難であるので)を用いる代わりに、LEDに蛍光体を覆った特定の白色系LEDを用いることで、この光源にて白色媒体を基準として読み出し、各色フィルター毎の出力補正することにより、紫外光照射時の媒体の可視蛍光の色の読み取り精度を簡便かつ正確に検出できることを見出した。
【0018】
本発明に係る紫外線蛍光色検出装置は、紫外光源から媒体に紫外光を照射し、媒体から生じる蛍光色発光を受光部で検出する紫外線蛍光色検出装置であって、白色LED光源と、複数の受光素子と、補正処理部とを備える。前記白色LED光源は、蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる。前記複数の受光素子は、前記受光部に設けられ、少なくとも1色以上の可視光カラーフィルタを透過した光が入射する。前記補正処理部は、前記白色LED光源からの白色光が照射された白基準物からの光が前記可視光カラーフィルタを介して前記複数の受光素子に入射することにより得られる各受光素子からの出力信号に基づいて、前記紫外光源からの紫外光が照射された媒体からの蛍光が前記可視光カラーフィルタを介して前記複数の受光素子に入射することにより得られる各受光素子からの出力信号を補正する。
【0019】
このような構成によれば、蛍光体を蛍光させることにより白色LED光源から白色光を発生させ、その白色光を白基準物に照射することにより、白基準物からの光が可視光カラーフィルタを介して複数の受光素子に入射する。このとき得られる各受光素子からの出力信号を基準画素出力値として用いることにより、紫外光照射時の媒体の可視蛍光の色の読み取り精度を簡便かつ正確に検出できる。
【0020】
具体的には、有価証券や紙幣などの媒体の鑑別時に、紫外光源から媒体に紫外光を照射し、媒体からの蛍光が可視光カラーフィルタを介して複数の受光素子に入射することにより、各受光素子からの出力信号が得られる。この出力信号に対して、上記基準画素出力値を用いて補正を行うことにより、紫外光照射時の蛍光色のカラーバランスを取ることができるため、所望のカラーバランスが取れた上質な画質を得ることができる。
【0021】
前記紫外光源は、例えば波長400nm以下、特に好ましくは300〜400nmの紫外光を照射する。前記紫外光源は、特に組成及び構造に制限はないが、発光効率及び出力が大きく、かつ、阻害要因となる可視光副波長がないことが好ましい。例えば、窒化ガリウムを主体とする半導体系の紫外光LEDを紫外光源として用いることが好ましい。
【0022】
前記白色LED光源の出力が10%から90%に立ち上がるまでの時間、及び、90%から10%に立ち下がるまでの時間のそれぞれが、2μ秒以下であることが好ましい。一般的に、照明用LEDは、通常ペロブスカイト系の蛍光体を用いており、図9に比較例として記載したごとく、この蛍光体は応答速度が遅く、立ち上がり時間Tr2及び立ち下り時間Tf2が1m秒以上の場合があり、事前に応答速度を評価する必要がある。
【0023】
このような構成によれば、応答性の高い白色LED光源を用いることにより、紫外光照射時に所望のカラーバランスが取れたさらに上質な画質を得ることができる。すなわち、短時間で媒体の識別を行うためには高速での読み取りが必要である上、短時間で多数の波長を切り替えるため、応答性の高い白色LED光源を用いることが好ましい。
【0024】
例えば、多波長で、媒体の表面と裏面の反射及び透過を1波長あたり100μ秒以下、好ましくは50μ秒以下の読取時間で読み取ることが必要であり、このため、白色LED光源の出力が10%から90%に立ち上がるまでの時間、及び、90%から10%に立ち下がるまでの時間のそれぞれが、2μ秒以下、特に0.5μ秒以下であることが好ましい。
例えば、LED素子(図示せず)が紫又は青色であり、素子上に蛍光体が覆われた構造を有する。前記蛍光体に黄色発光するYAG:Ce(セリウムドープ酸化イットリウム、アルミニウムガーネット焼結体)を用いれば、応答速度が速い白色LED光源とすることができる。
【0025】
前記複数の受光素子は、主走査方向に沿って直線状に配列されていてもよい。このような構成によれば、1ラインの観測ライン上において紫外光照射時の媒体の可視蛍光色を高速で検出できる。
【0026】
本発明に係る紫外線蛍光色検出方法は、紫外光源から媒体に紫外光を照射し、媒体から生じる蛍光色発光を受光部で検出する紫外線蛍光色検出装置を用いた紫外線蛍光色検出方法であって、前記紫外線蛍光色検出装置は、蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる白色LED光源と、前記受光部に設けられ、少なくとも1色以上の可視光カラーフィルタを透過した光が入射する複数の受光素子とを備える。前記紫外線蛍光色検出方法では、前記白色LED光源からの白色光が照射された白基準物からの光が前記可視光カラーフィルタを介して前記複数の受光素子に入射することにより得られる各受光素子からの出力信号に基づいて、前記紫外光源からの紫外光が照射された媒体からの蛍光が前記可視光カラーフィルタを介して前記複数の受光素子に入射することにより得られる各受光素子からの出力信号を補正する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、蛍光体を蛍光させることにより白色LED光源から白色光を発生させ、その白色光を白基準物に照射することにより得られる各受光素子からの出力信号を基準画素出力値として用いることにより、紫外光照射時の媒体の可視蛍光の色の読み取り精度を簡便かつ正確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態における光ラインセンサユニットの構成を概略的に示す断面図である。
図2】光ラインセンサユニットの付加的な構成を概略的に示す断面図である。
図3】ライン光源の斜視図である。
図4】ライン光源の各構成部材を示す分解斜視図である。
図5】ライン光源の側面図である。
図6】受光部の素子配列を示す模式図である。
図7】受光部における受光素子と各色フィルタの配列例を示す図である。
図8】補正処理部により補正を行う際の態様について説明するための概略図である。
図9】白色LED光源の応答速度の実施例及び比較例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<光ラインセンサユニット>
図1は、本発明の実施の形態における光ラインセンサユニットの構成を示す概略断面図である。
【0030】
この光ラインセンサユニットは、筐体16と、紙葉類を照明するためのライン光源10と、そのライン光源10から焦点面20に向けて出射され紙葉類で反射した光を導くためのレンズアレイ11と、基板13に実装されレンズアレイ11により導かれた透過光を受光する受光部12とを備えている。紙葉類は焦点面20に沿って一方向x(副走査方向)に搬送される。
これらの筐体16、ライン光源10、受光部12、レンズアレイ11は、y方向(主走査方向)、すなわち図1における紙面に対して垂直な方向に延びていて、図1はその断面を示している。
【0031】
ライン光源10は、焦点面20にある紙葉類に向けて光を出射するユニットである。出射される光の種類は可視光、白色光及び紫外光であり、さらに赤外光が出射されることもある。
この紫外光は波長ピークが300nm〜400nmを有するもので、赤外光は波長ピークが1500nmまで有するものである。
これらの光のうち少なくとも紫外光は、他の光と時間的に重ならないようにして(すなわち時間的にスイッチングされながら)発光される。赤外光は、可視光と時間的に重なって発光されることもあり、時間的に重ならないようにして発光されることもある。
【0032】
ライン光源10から出射された光は、保護ガラス14を透過して焦点面20に集光される。保護ガラス14は、必ずしも必要ではなく省略することもできるが、使用中(使用時)のごみ(紙葉類の搬送時に発生する紙粉等のダスト)の飛散や傷つきからライン光源10やレンズアレイ11を保護するために設置することが望ましい。
保護ガラス14の材質はライン光源10から出射される光を透過させるものであれば良く、例えばアクリル樹脂やシクロオレフィン系樹脂などといった透明の樹脂であってもよい。ただし、本発明の実施の形態では、白板ガラス、ホウケイ酸ガラスなど特に紫外光を透過させるものを使用するのが好ましい。
【0033】
ライン光源10の底面に対向して、ライン光源10の両端に設置された第2の光源部3、第1の光源部4(図4図5参照)を固定するための基板5が設置されている。この基板5はフェノール、ガラスエポキシなどで形成された薄い絶縁板であり、その裏面に銅箔からなる配線パターンが形成されている。第2の光源部3、第1の光源部4の端子を基板5の各所に形成された孔に挿入し、基板の裏面において半田などで配線パターンと接合することにより、第2の光源部3及び第1の光源部4を基板5に搭載し固定することができるとともに、所定の駆動電源(図示せず)から基板裏面の配線パターンを通して第2の光源部3及び第1の光源部4に電力を供給してその発光を駆動・制御することができる。
【0034】
レンズアレイ11は、紙葉類で反射された光を受光部12に結像する光学素子であり、セルフォックレンズアレイ(登録商標:日本板硝子製)などのロッドレンズアレイを用いることができる。本発明の実施の形態では、レンズアレイ11の倍率は1(正立)に設定されている。
焦点面20から受光部12までの任意の位置に、受光部12に紫外光が入らないように、紫外光を反射又は吸収することにより遮断する「第3の光学フィルタ」としての紫外光遮断フィルタ膜15を設けることが好ましい。本発明の実施の形態では、レンズアレイ11の表面に紫外光遮断フィルタ膜15を取り付け、紫外光を遮断する機能を持たせている。本明細書で「光を遮断する」とは、光を反射又は吸収して、透過させないことをいう。
【0035】
この紫外光遮断フィルタ膜15は、特に限定されるものではなく、紫外光が、受光部12へ入るのを防止することができれば、材質・構造を問わない。例えば有機系の紫外光吸収剤を透明フィルムに混入あるいはコーティングした紫外光吸収フィルム、ガラス表面に酸化チタン、酸化珪素など透過率や屈折率の異なる金属酸化物もしくは誘電体の薄膜を多層蒸着することで得られる干渉フィルタ(バンドパスフィルタ)などが好ましい。
【0036】
なお、紫外光遮断フィルタ膜15はレンズアレイ11の出射面に取り付けていたが、レンズアレイ11の入射面又は中間部に取り付けてもよく、保護ガラス14の内面に直接蒸着又は塗布して用いてもよい。要するに、紙葉類で反射された紫外光が、受光部12へ入るのを防止することができればよい。
受光部12は基板13に実装され、反射光を受けて光電変換により電気出力として画像を読み取る受光素子を含んで構成されている。受光素子の材質・構造は特に規定されるものではなく、アモルファスシリコン、結晶シリコン、CdS、CdSeなどを用いたフォトダイオードやフォトトランジスタを配置したものであってもよい。またCCD(Charge Coupled Device)リニアイメージセンサであってもよい。さらに受光部12として、フォトダイオードやフォトトランジスタ、駆動回路及び増幅回路を一体としたIC(Integrated Circuit)を複数個並べた、いわゆるマルチチップ方式のリニアイメージセンサを用いることもできる。また、必要に応じて基板13上に駆動回路、増幅回路などの電気回路、あるいは信号を外部に取り出すためのコネクタなどを実装することもできる。さらに基板13上にA/Dコンバータ、各種補正回路、画像処理回路、ラインメモリ、I/O制御回路などを同時に実装してデジタル信号として外部に取り出すこともできる。
【0037】
なお、前述した光ラインセンサユニットは、ライン光源10から紙葉類に向けて出射され紙葉類で反射した光を受光する反射型の光ラインセンサユニットであったが、図2に示すように、焦点面20を基準にして、ライン光源10を受光部12と反対の位置に置いて、ライン光源10から紙葉類に向けて出射され紙葉類を透過した光を受光する、透過型の光ラインセンサユニットであってもよい。この場合、ライン光源10の位置が焦点面20の下側になるところが図1の配置と異なるのみで、ライン光源10自体の構造は、今まで説明したものと異なるところはない。また反射型の光ラインセンサユニットと透過型の光ラインセンサユニットを両方含んでいてもよい。
【0038】
<ライン光源>
図3は、図1に示される光ラインセンサユニットにおけるライン光源10の外観を概略的に示す斜視図である。図4はライン光源10の各構成部材の分解斜視図、図5はライン光源10の側面図である。なお図5ではカバー部材2の図示は省略している。
ライン光源10は、長手方向Lに沿って延びる透明な導光体1と、長手方向Lの一方の端面付近に設けられた第2の光源部3と、長手方向Lの他方の端面付近に設けられた第1の光源部4と、導光体1の各側面(底側面1a及び左右側面1b,1c)を保持するためのカバー部材2と、底側面1aと左右側面1bとの間に斜めに形成された光拡散パターン形成面1gに形成され、第2の光源部3及び第1の光源部4から導光体1の端面1e,1fに入射され導光体1の中を進む光を拡散・屈折させて、導光体1の光出射側面1dから出射させるための光拡散パターンPとを有している。また好ましくは、導光体1の端面1e,1fにそれぞれ形成された第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7を有している。
【0039】
導光体1は、アクリル樹脂などの光透過性の高い樹脂、あるいは光学ガラスで形成してもよいが、本発明の実施の形態では、紫外光を発光する第1の光源部4を用いるので、導光体1の材料として、紫外光に対する減衰が比較的少ないフッ素系樹脂あるいはシクロオレフィン系樹脂が好ましい(特許文献2参照)。
導光体1は、細長い柱状であり、その長手方向Lに直交する断面は、長手方向Lのどの切り口においても、実質的に同じ形状、同じ寸法をしている。また導光体1のプロポーション、すなわち導光体1の長手方向Lの長さと、その長手方向Lに直交する断面の高さHとの比率は10よりも大きく、好ましくは30よりも大きい。例えば導光体1の長さが200mmであれば、その長手方向Lに直交する断面の高さHは5mm程度である。
【0040】
導光体1の側面は、光拡散パターン形成面1g(図4において導光体1の斜めカット面に相当)、底側面1a、左右側面1b,1c、光出射側面1d(図4において導光体1の上面に相当)の5つの側面からなる。底側面1a、左右側面1b,1cは平面形状であり、光出射側面1dはレンズの集光効果を持たせるために外向きに滑らかな凸の曲線状に形成されている。しかし光出射側面1dは必ずしも凸状に形成されていなくてもよく、平面形状であってもよい。この場合、光出射側面1dに対向するように、導光体1から出射した光を集光するレンズを配置するとよい。
【0041】
光拡散パターン形成面1g上の光拡散パターンPは、一定の幅を維持して、導光体1の長手方向Lに沿って一直線状に延びている。この光拡散パターンPの長手方向Lに沿った寸法は、イメージセンサの読取長(つまり受光部12の読取領域の幅)よりも長くなるように形成されている。
この光拡散パターンPは、導光体1の光拡散パターン形成面1gに彫刻された複数のV字状の溝により構成されている。この複数のV字状の溝の各々は、導光体1の長手方向Lに直交する方向に延びるよう形成されており、互いに同じ長さを有している。複数のV字状の溝は、断面が例えば二等辺三角形状を有していてもよい。
【0042】
この光拡散パターンPにより、導光体1の端面1e,1fから入射され、導光体1の内部を長手方向Lに伝搬する光を屈折・拡散させ、長手方向Lに沿ってほぼ一様の明るさで光出射側面1dから照射することができる。これにより、導光体1の長手方向Lの全体において紙葉類に照射される光をほぼ一定とすることができ、照度むらを無くすことができる。
【0043】
なお、光拡散パターンPの溝のV字形状は一例であり、照度むらが顕著にならない限り、V字形に代えてU字形にするなど任意に変更することができる。光拡散パターンPの幅も一定の幅を維持する必要はなく、導光体1の長手方向Lに沿って幅が変化するものであってもよい。溝の深さや溝の開口幅についても、適宜変更することができる。
カバー部材2は、導光体1の長手方向Lに沿った細長い形状であり、導光体1の底側面1a及び左右側面1b,1cを覆うことができるように、導光体1の光拡散パターン形成面1gに対向する底面2a、導光体1の右側面1bに対向する右側面2b、及び導光体1の左側面に対向する左側面2cを有している。これらの3つの側面はそれぞれ平面をなしており、これらの3つの内面で断面がほぼU字状の凹部を形成するので、導光体1をこの凹部の中に挿入することができる。この覆った状態で、カバー部材2の底面2aが導光体1の底側面1aに密着し、カバー部材2の右側面2bが導光体1の右側面1bに密着し、左側面2cが導光体1の左側面1cに密着する。このため、カバー部材2で導光体1を保護することができる。
【0044】
なお、カバー部材2は透明なカバーに限定されず、半透明、又は不透明なものであってもよい。例えばカバー部材2は、導光体1の光出射側面以外の側面より漏れ出す光を再び導光体1内に反射させるために、反射率の高い白色樹脂の成形品、又はその白色樹脂を塗布した樹脂の成形品であってもよい。または、カバー部材2をステンレスやアルミニウムなどの金属体で形成してもよい。
【0045】
第2の光源部3は可視光、又は可視から赤外にわたる波長の光を発光する光源3aと、白色光を発光する光源3bとを含む。光源3aは、例えば近赤外、赤、緑、青の各波長の光を発する複数のLED(Light Emitting Diode)を有する。光源3bは、蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる白色LED光源であり、例えば青色又は紫色のLEDで蛍光体を蛍光させて白色光を発生させる白色LED光源や、紫外域LEDで蛍光体を蛍光させて白色光を発生させる白色LED光源などが用いられる。蛍光体は、LED素子上にコーティング又は封止剤に混入され、LEDからの光に蛍光体の発光を付加させることにより、可視光域全てに出力がある白色LED光源となる。
【0046】
白色LED光源としての光源3bは、応答性が高いことが好ましく、図9に実施例として記載したごとく、例えば出力(相対発光強度)が10%から90%に立ち上がるまでの応答時間(立ち上がり時間Tr1)、及び、90%から10%に立ち下がるまでの応答時間(立ち下がり時間Tf1)が、2μ秒以下、特に好ましくは0.5μ秒以下である。蛍光体を蛍光させて白色光を発生させる白色LED光源は、蛍光体を使用していることに起因して応答性が阻害されているため、特定の蛍光体を採用することが好ましい。例えば、光源3bのLED素子(図示せず)が紫又は青色であり、素子上に蛍光体が覆われた構造を有する。前記蛍光体に黄色発光するYAG:Ce(セリウムドープ酸化イットリウム、アルミニウムガーネット焼結体)を用いれば、応答速度が速い白色LED光源とすることができる。
【0047】
第1の光源部4は、導光体1に対して紫外光を発光する紫外光源であり、300nm〜400nmの紫外光LED光源等が使用可能である。好ましくは330nm〜380nmの範囲にピーク発光波長を有する紫外発光ダイオードが用いられる。
【0048】
第2の光源部3と第1の光源部4には、基板5に実装されるための端子31が形成されていて、この端子31を基板5に差込み、半田付けなどで接合することにより、それぞれ駆動電源(図示せず)に電気的に接続される。駆動電源は、第2の光源部3に電圧を印加する電極端子と第1の光源部4に電圧を印加する電極端子とを選択することにより、第2の光源部3及び第1の光源部4を同時に、若しくは時間的に切り替えて発光させることができる回路構成となっている。また第2の光源部3に内蔵された複数のLEDのうち任意のLEDを選択して同時に、若しくは時間的に切り替えて発光させることもできる。
【0049】
以上の構成により、コンパクトな構成で、第2の光源部3(光源3a)が設置される端面1eから可視光又は可視光から赤外光までを含む波長範囲の光を導光体1に入射することができ、第1の光源部4が設置される端面1fから紫外光を導光体1に入射することができる。これにより、前記第1の光源部4から発光される光、又は前記第2の光源部3から発光される光を、前記導光体1の光出射側面1dから出射することができる。また、光源3aが設置される側と同じ端面1eから、光源3bにより白色光を導光体1に入射し、導光体1の光出射側面1dから出射することができる。
【0050】
好ましくは、導光体1の第2の光源部3が設置される端面1eには、420nm以上の赤外光及び可視光を透過させ、400nm未満の紫外光を反射又は吸収することにより遮断する第2の光学フィルタ6が設けられている。また導光体1の第1の光源部4が設置される端面1fには、400nm未満の紫外光を透過させ、420nm以上の赤外光及び可視光を反射又は吸収することにより遮断する第1の光学フィルタ7が設けられている。
【0051】
第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7は、特に限定するものではなく、目的とする波長域を遮断するものであれば材質・構造を問わない。例えば反射させる光学フィルタであれば、ガラス表面に透過率や屈折率の異なる金属酸化物もしくは誘電体の薄膜を多層蒸着することで得られる干渉フィルタ(バンドパスフィルタ)が好ましい。
反射させる干渉フィルタとしては、例えば、酸化珪素と五酸化タンタルなどを採用し、それぞれの透過率や屈折率及び膜厚を調整して多層蒸着することにより所望のバンドパスフィルタ特性を確保することで得られる。なお、当然ながら通常の光学関連産業用に従来から生産されているバンドパスフィルタで、要求性能を満足するものであれば、採用に際して特に制限はない。
【0052】
第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7に干渉フィルタを用いる場合、前記干渉フィルタのみでは目的とする透過域を調整出来ない場合は、さらにその上に金属又はその酸化物、窒化物、フッ化物の薄膜を用いたフィルムを重ねることで所望の波長特性を確保することが可能である。
第2の光学フィルタ6が紫外光を吸収する光学フィルタであれば、有機系の紫外光吸収剤を透明フィルムに混入あるいはコーティングした紫外光吸収フィルムであってもよい。また、干渉フィルタで、例えば、酸化珪素と酸化チタンなどを採用し、それぞれの透過率や屈折率及び膜厚を調整して多層蒸着することにより紫外光を反射、吸収両機能により遮断することで所望波長特性を確保してもよい。
【0053】
また第1の光学フィルタ7が可視光、赤外光を吸収する光学フィルタであれば、紫外光を通過させ可視光、赤外光をカットする物質をフィルムの中に添加してもよい。
なお、第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7の導光体1への設置方法は任意であり、導光体1の端面1e,1fに塗布又は蒸着により被覆してもよい。またフィルム状もしくは板状の第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7を用意し、導光体1の端面1e,1fに密着させて、もしくは端面1e,1fから一定の距離をおいて取り付けてもよい。
また、第2の光学フィルタ6、第1の光学フィルタ7を導光体1の端面1e,1fに設けるのではなく、第2の光源部3、第1の光源部4に設けることも可能である。この場合、各光源部3,4に光学フィルタ6,7を塗布又は蒸着により被覆してもよいし、フィルム状もしくは板状の光学フィルタ6,7を用意し、各光源部3,4に密着させて取り付けてもよい。あるいは、第2の光源部3の封止剤に、可視光、又は可視光から赤外光までを含む波長範囲の光を透過させ、紫外光を遮断する物質を添加することにより、第2の光学フィルタ6を構成してもよい。同様に、第1の光源部4の封止剤に、紫外光を透過させ、可視光、又は可視光から赤外光までを含む波長範囲の光を遮断する物質を添加することにより、第1の光学フィルタ7を構成してもよい。
【0054】
第1の光学フィルタ7が、紫外光を透過させ、赤外光及び可視光を反射又は吸収する光学フィルタであれば、次のような利点がある。第1の光源部4が酸化アルミニウム・セラミックス焼結体など、紫外光が当たった時に波長690nm付近の蛍光を発する実装基体を採用している場合を想定する。紫外光が第1の光源部4から照射されるときに、その照射光が第1の光源部4の実装基体に当たり690nm付近の蛍光が二次照射されて導光体1の中に入ることを防止する必要がある。そこで、第1の光学フィルタ7を、赤外光及び可視光を反射又は吸収するように設計することにより、二次照射された蛍光が導光体1の中に入らないようにすれば、導光体1の光出射側面1dからの不要な蛍光の出射を防止することができ、紙葉類の紫外蛍光のコントラストを良くすることができる。なお、紫外光が蛍光するものは酸化アルミニウム・セラミックス焼結体だけでなく、封止樹脂が蛍光する場合についても同様に二次照射を防ぐことができる。
【0055】
第2の光学フィルタ6が、赤外光及び可視光を透過させ、紫外光を反射又は吸収する光学フィルタであれば、次のような利点がある。第2の光源部3が酸化アルミニウム・セラミックス焼結体など、紫外光が当たった時に波長690nm付近の蛍光を発する実装基体を採用している場合を想定する。第1の光源部4から照射された紫外光が導光体1の端面1eを通過して第2の光源部3に当たると、690nm付近の蛍光が第2の光源部3から二次照射されて導光体1の中に入って来るので、これを防止する必要がある。そこで、第2の光学フィルタ6を、紫外光を反射又は吸収するように設計することにより、紫外光が導光体1の端面1eから外に出ないようにすれば第2の光源部3に当たることがない。したがって、導光体1の光出射側面1dからの不要な蛍光の出射を防止することができる。その結果、紙葉類の紫外蛍光のコントラストを良くすることができる。
【0056】
本発明の実施の形態では、第2の光学フィルタ6が赤外光及び可視光を透過させ、紫外光を反射する光学フィルタの方が好ましく、次のような利点がある。第1の光源部4から導光体1に入射され第2の光学フィルタ6で反射し導光体1に戻る紫外光の光量が増加するので、結果として、導光体1の光出射側面1dからの紫外光の出射光量が増大するという効果が得られる。この場合、第2の光学フィルタ6は第2の光源部3から照射される赤外光及び可視光を透過させるので、第2の光源部3からの赤外光及び可視光が導光体1に入るのを妨げることもない。
【0057】
また第1の光学フィルタ7が紫外光を透過させ、可視光、赤外光を反射する光学フィルタであれば、第2の光源部3から照射され、導光体1に入射され第1の光学フィルタ7で反射し導光体1に戻る可視光、赤外光の光量が増加するので、結果として、導光体1の光出射側面1dからの可視光、赤外光の出射光量が増大するという効果が得られる。また第1の光学フィルタ7は第1の光源部4から照射される紫外光を透過させるので、導光体1の光出射側面1dからの紫外光の出射も可能になる。
【0058】
第1の光源部4から発光される紫外光は、第1の光学フィルタ7を介して導光体1に入射し、光拡散パターン形成面1gにより拡散・屈折して、光出射側面1dから焦点面20にある紙葉類(媒体)に照射される。これにより、紙葉類から蛍光が生じ、その蛍光色発光が受光部12で検出されることにより、紫外光を用いた紙葉類の識別を行うことができる。
第2の光源部3の光源3aから発光される可視光又は可視光から赤外光までを含む波長範囲の光は、第2の光学フィルタ6を介して導光体1に入射し、光拡散パターン形成面1gにより拡散・屈折して、光出射側面1dから焦点面20にある紙葉類(媒体)に照射される。これにより、可視光又は赤外光を用いた紙葉類の識別を行うことができる。
【0059】
<受光部>
図6は、受光部12の素子配列を示す模式図である。受光部12は、y方向に直線状に並べられた複数の受光素子(それぞれフォトダイオード、フォトトランジスタなどで構成される)と信号処理部21とドライバ22とを一体化させたセンサICチップを配列し、各受光素子をカラーフィルタで覆い、これを基板上に実装したものである。ドライバ22は受光素子を駆動するためのバイアス電流を作成し供給する回路部分であり、信号処理部21は受光素子の光検出信号を読み取り処理する回路部分である。受光素子の種類は、限定されないが、例えばシリコンPNダイオード若しくはPINダイオードが用いられる。
【0060】
紙葉類がx方向(副走査方向)に移動する間に、一列に並べられた受光素子を露光することによって、紙葉類の面上にy方向(主走査方向)に沿った所定幅の観測ラインを設定することができる。紙葉類のライン情報を読み取る露光時間(光学読取時間という)は、光源の強度、センサの波長感度などに応じて任意に設定できる。例えば紙葉類のx方向の移動速度はATMや紙幣処理機などでは1500〜2000mm/秒であり、光学読取時間として0.5〜1.0ミリ秒を採用すれば、観測ラインのx方向の幅は0.75〜2mmとなる。
【0061】
本発明の実施の形態では、図6に示すように、受光部12の一画素(画素とは、画像データを読み取り処理する空間的単位を言う)あたり複数、例えば4つの受光素子が直線状に並んで構成されている。図6では、4つの受光素子のうち、1番目の受光素子が赤い(R)カラーフィルタで覆われ、2番目の受光素子が緑の(G)カラーフィルタで覆われ、3番目の受光素子が青い(B)カラーフィルタで覆われている。そして、4番目の受光素子は透明(W)フィルタで覆われているか、若しくは各色フィルタで覆われていない。なお前記カラーフィルタ(R,G,B)は通常、300〜400nmの紫外光に対しては不透明であり、波長800nm以上の赤外光に対しては透過性を有する。
このように、受光部12には、各画素に対応付けて可視光カラーフィルタ(R,G,B)が設けられ、このカラーフィルタを透過した光が各受光素子に入射する。ただし、カラーフィルタは、各画素につき3色に限らず、1色以上のカラーフィルタが設けられていればよい。
なお、図6では1素子のみが同一色のカラーフィルタで覆われていたが、2つ以上の受光素子が同一色のカラーフィルタで覆われていてもよい。
【0062】
透明(W)フィルタは、いかなる着色もない「透明な」フィルタである。例えば全てのカラーフィルタの光透過率を加算した光透過率を持つことが望ましい。例えばRフィルタの光透過帯域と、Gフィルタの光透過帯域と、Bフィルタの光透過帯域とをつないで包絡線を作ったときの、この包絡線と同様の光透過率を持つことが望ましい。このような「透明フィルタ」を形成する膜の材料は、有機材料では透明なアクリル樹脂、シクロオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂の中から選ばれ、また無機系では窒化シリコン膜、酸化シリコン膜の中から選ばれる。
【0063】
これらの各色フィルタ材料は、300〜400nmの紫外光に対しても透明である。これらの光学フィルタ材料は、波長800nm以上の赤外光に対しても透過性を有する。
なお、有機材料においては、液晶用途に用いられる紫外光吸収剤を含んだ透明材料は、紫外光に対して透明でないので、採用することは好ましくない。
このように、受光部12は、一画素に複数の受光素子とそれらを覆う各色のカラーフィルタが搭載されているため、光源の波長を切り替えないで、それぞれが所望の波長領域の光を単独で照射できる複数の発光素子を同時に点灯させて、紙葉類の色情報を1本の観測ラインで一度に出力することが可能となる。
【0064】
このような構成の受光部12の光検出信号は、各受光素子の光検出信号を同時に取得した信号であり、これらは信号処理部21に入力される。信号処理部21は、受光部12のR,G,Bの各カラーフィルタを透過した受光素子の信号強度に基づいて、紙葉類の色情報を判別するとともに、透明(W)フィルタを透過し、若しくは、前記各色フィルタを透過しない信号強度に基づいて、当該画素に入ってくる全体光量を算出する。これにより、全体光量を分母(リファレンス)とした、各色信号の正確な光量に基づく画像データを得ることができる。
【0065】
信号処理部21からの信号は、制御部100に入力される。制御部100は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む構成であり、CPUがプログラムを実行することにより、判定部101及び補正処理部102などとして機能する。
判定部101は、受光素子で読み取った紙葉類の画像データを、それぞれ例えばマスタデータと比較して真偽、金種及び汚損等を判別する。補正処理部102は、信号処理部21から入力される信号を補正することにより、補正された画像データを生成する。判定部101は、補正処理部102により補正された画像データに基づいて判定を行う。
【0066】
ただし、受光部12の素子配列は前記の形態に限定されるものではない。例えば、受光部12の受光素子は図7(a)に示したように、RGBWRGBW・・・というように一列に配列されているとは限らず、二列以上に配列されたものであってもよい。図7(b)は、前記受光素子が一画素あたり2×2に配列されたものであり、2列のうち1つの列(例えば下の列)の一隅に、透明(W)フィルタ又は各色フィルタ無の第二の受光素子が配列されている例を示す。図7(c)は前記受光素子が一画素あたり4列に配列されたものであり、それらの4列のうち最も1つの列(例えば下の列)に、透明(W)フィルタ又は各色フィルタ無の第二の受光素子が配列されている例を示す。これらの場合でも、一画素内において、透明(W)フィルタを通して又は各色フィルタ無の受光素子で検出された光信号を記録するとともに、各カラーフィルタ(R,G,B)を透過した各受光素子の信号強度を検出することができる。
また、透明(W)フィルタの代わりに、緑(G)のカラーフィルタを設けることにより、RGBGRGBG・・・というような配列にしてもよい。このように、各画素に設けられるカラーフィルタの種類及び数は任意であり、各画素に少なくとも1色以上の可視光カラーフィルタが設けられていればよい。
【0067】
<補正処理>
図8は、補正処理部102により補正を行う際の態様について説明するための概略図である。本発明の実施の形態では、第2の光源部3の光源3bから発光される白色光を用いて補正を行うことにより、紫外光照射時の蛍光色のカラーバランスを取ることができるようになっている。
【0068】
具体的には、焦点面20に沿ってx方向に白基準物200を搬送する。白基準物200は、例えば反射率の高い白色のシートからなる。白基準物200の搬送時には、第2の光源部3の光源3bから白色光が発光され、その白色光が導光体1の光出射側面1dから出射して白基準物200に照射される。白色光が照射された白基準物200からの反射光は、レンズアレイ11を透過して受光部12に入射し、受光部12の各カラーフィルタを介して複数の受光素子で受光される。これにより、各受光素子からの出力信号の信号強度が検出される。
このようにして白色光から得られた各画素におけるRGB各色に対応する信号強度の値が、各画素において最も小さい値で除算されることにより、RGB各色の規格化出力の比(Rn:Gn:Bn)が基準画素出力値として画素ごとに算出される。
【0069】
その後、焦点面20に沿ってx方向に紙葉類(媒体)を搬送する。紙葉類の搬送時には、第1の光源部4から紫外光が発光され、その紫外光が導光体1の光出射側面1dから出射して紙葉類に照射される。紫外光が照射された紙葉類からは蛍光が生じ、その蛍光がレンズアレイ11を透過して受光部12に入射し、受光部12の各カラーフィルタを介して複数の受光素子で受光される。これにより、各受光素子からの出力信号の信号強度Rf,Gf,Bfが検出される。
このようにして蛍光から得られた各画素におけるRGB各色に対応する信号強度の値Rf,Gf,Bfが、各画素において予め算出されたRGB各色の規格化出力の比(Rn:Gn:Bn)でそれぞれ除算されることにより、補正後の信号強度の値Rfc,Gfc,Bfcが画素ごとに算出される。
【0070】
すなわち、各画素における赤色(R)に対応する補正後の信号強度の値Rfcは下記式(1)により算出され、各画素における緑色(G)に対応する補正後の信号強度の値Gfcは下記式(2)により算出され、各画素における青色(B)に対応する補正後の信号強度の値Bfcは下記式(3)により算出される。
Rfc=Rf/Rn ・・・(1)
Gfc=Gf/Gn ・・・(2)
Bfc=Bf/Bn ・・・(3)
【0071】
<作用効果>
本発明の実施の形態では、本発明の白色LED光源(第2の光源部3の光源3b)即ち、励起光源を、紫、青のLED上を蛍光体で覆い、LED素子の発光と蛍光体の蛍光を合成した白色光を白基準物200に照射することにより、白基準物200からの光が可視光カラーフィルタを介して複数の受光素子に入射する。このとき得られる各受光素子からの出力信号を基準画素出力値Rn,Gn,Bnとして用いることにより、紫外光照射時の紙葉類の可視蛍光の色の読み取り精度を簡便かつ正確に検出できる。
【0072】
具体的には、有価証券や紙幣などの紙葉類(媒体)の鑑別時に、紫外光源(第1の光源部4)から紙葉類に紫外光を照射し、紙葉類からの蛍光が可視光カラーフィルタを介して複数の受光素子に入射することにより、各受光素子からの出力信号Rf,Gf,Bfが得られる。この出力信号Rf,Gf,Bfに対して、基準画素出力値Rn,Gn,Bnを用いて上記式(1)〜(3)により補正が行われる。これにより、紫外光照射時の蛍光色のカラーバランスを取ることができるため、所望のカラーバランスが取れた上質な画質を得ることができる。
【0073】
特に、上記実施の形態のように、立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短く応答性の高い白色LED光源(第2の光源部3の光源3b)を用いることにより、紫外光照射時に所望のカラーバランスが取れたさらに上質な画質を得ることができる。すなわち、短時間で紙葉類の識別を行うためには高速での読み取り(例えば1ラインの読み取り速度が100μ秒以下)が必要である上、短時間で多数の波長を切り替えるため、応答性の高い白色LED光源を用いることが好ましい。
【0074】
さらに、本発明の実施の形態では、受光部12において複数の受光素子がy方向(主走査方向)に沿って直線状に配列されている。これにより、1ラインの観測ライン上において紫外光照射時の紙葉類の可視蛍光色を高速で検出できる。
【0075】
<変形例>
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、以上の形態に限定されるものではない。例えば本発明では、第2の光源部3の光源3aは可視光、又は可視から赤外にわたる波長の光を発光する光源であったが、可視光のみを発光する光源であってもよい。第2の光源部3の光源3aを省略し、白色LED光源としての光源3bのみを設けてもよい。また、光拡散パターンPの形成面を、導光体1の光出射側面1dを除く任意の面に配置することができる。例えば光拡散パターンを底側面1aに形成して、これを光拡散パターンPの形成面としてもよい(この場合底側面1aと左右側面1bとの間に斜めに面を形成する必要はない)。
【0076】
補正処理では、第1の光源部4からの紫外光が照射された紙葉類からの蛍光が受光部12に入射することにより得られる各受光素子からの出力信号ではなく、第2の光源部3の光源3aからの可視光、又は可視から赤外にわたる波長の光が照射された紙葉類からの光が受光部12に入射することにより得られる各受光素子からの出力信号が、基準画素出力値Rn,Gn,Bnを用いて補正されてもよい。
【0077】
ライン光源10は、導光体1に対して長手方向Lの一方又は両方の端面から光を入射させ、光拡散パターンPで光を拡散・屈折させるような構成に限らず、導光体1の底側面1a側から光出射側面1dを介して焦点面20に光を直接照射するような構成(いわゆる直下型)であってもよい。これにより、安価で出力が比較的小さいLEDを光源として用いた場合であっても、直下型に配列することによって所望の光量を確保することができる。このような直下型の構成の場合、導光体1を省略することも可能である。
【0078】
また、観測ラインは1ラインに限られるものではなく、それぞれy方向(主走査方向)に沿って延びる複数の観測ラインが、x方向(副走査方向)に並べて設定されていてもよい。この場合、x方向の同一列の画素における出力信号の平均値を算出し、その平均値を用いて補正処理が行われてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 導光体
2 カバー部材
3 第2の光源部
3a 光源
3b 光源(白色LED光源)
4 第1の光源部
6 第2の光学フィルタ
7 第1の光学フィルタ
10 ライン光源
11 レンズアレイ
12 受光部
20 焦点面
100 制御部
101 判定部
102 補正処理部
200 白基準物
【要約】
紫外光照射時の媒体の可視蛍光の色の読み取り精度を簡便かつ正確に検出できる紫外線蛍光色検出装置及び紫外線蛍光色検出方法を提供する。紫外光源(第1の光源部(4))から媒体に紫外線を照射する。白色LED光源(第2の光源部(3)に含まれる光源)が、蛍光体を蛍光させることにより白色光を発生させる。受光部に設けられた複数の受光素子には、少なくとも1色以上の可視光カラーフィルタを透過した光が入射する。白色LED光源からの白色光が照射された白基準物(200)からの光が可視光カラーフィルタを介して複数の受光素子に入射することにより得られる各受光素子からの出力信号に基づいて、紫外光源からの紫外光が照射された媒体からの蛍光が可視光カラーフィルタを介して複数の受光素子に入射することにより得られる各受光素子からの出力信号を補正する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9