(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情の下で考え出されたものであって、圧力変動吸着法を利用して行うアルゴンの精製において、オフガス量の変動があってもより低い圧力まで低下させて、高純度なアルゴンを高収率で得るのに適した方法および装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供されるアルゴン精製方法は、アルゴンを含む混合ガスからアルゴンを精製するための方法であって、吸着剤が充填された吸着塔を用いて行う圧力変動吸着法により、上記吸着塔が相対的に高圧である状態にて、上記吸着塔に上記混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を上記吸着剤に吸着させ、当該吸着塔からアルゴンが富化されたガスを導出する吸着工程と、上記吸着塔を減圧して上記吸着剤から不純物を脱着させ、当該吸着塔からガスを導出する向流減圧工程と、を含むサイクルを繰り返し行い、上記向流減圧工程にある上記吸着塔から導出されるガスを容量が変化するガスホルダに導入しつつ、上記ガスホルダ内の圧力を実質的に一定に保ちながら当該ガスホルダ内のガスを導出することを特徴としている。
【0007】
好ましくは、上記ガスホルダは、大気との接触を遮断するようにガスを収容し、当該ガスの量に応じて変位する遮断部を備え、上記ガスホルダの容量は、上記遮断部の外側から内側に向けて作用する荷重と、内部のガスの圧力により上記遮断部の内側から外側に向けて作用する力とが均衡を保ちながら変化する。
【0008】
好ましくは、上記遮断部は、膜状部材、または蓋形状の金属部材を含む。
【0009】
好ましくは、上記ガスホルダは、上記遮断部に支持され、または包含された錘部を備える。
【0010】
好ましくは、上記圧力変動吸着法における上記サイクルは、上記吸着塔内を減圧して当該吸着塔からガスを導出する、上記吸着工程の後の並流減圧工程と、上記吸着塔に洗浄ガスを導入し、且つ当該吸着塔からガスを導出する、上記向流減圧工程の後の洗浄工程と、を含み、上記洗浄工程の上記洗浄ガスは、上記並流減圧工程にある上記吸着塔から導出されたガスであり、上記洗浄工程は、当該洗浄工程の開始から途中までにおいて上記吸着塔から第1ガスを導出する第1洗浄工程と、当該吸着塔から第2ガスを導出する、上記第1洗浄工程の後の第2洗浄工程とを含み、上記第1ガスを上記ガスホルダに導入し、且つ上記第2ガスを系外に排出し、上記ガスホルダから導出されるガスを、上記吸着塔に導入される前の上記混合ガスに添加する。
【0011】
好ましくは、上記混合ガスを上記吸着塔に導入する前に、上記混合ガスに対して当該混合ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するための前処理を施し、上記ガスホルダから導出されるガスは、上記前処理を経たガスに添加される。
【0012】
圧力変動吸着方法(PSA法)において、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素、窒素、メタンなどを不純物として含む、アルゴンを主成分とする混合ガスから、高純度のアルゴンを得るには、一般に、酸素は水素や一酸化炭素と触媒反応させ水や二酸化炭素に変換するための前処理を施す。前処理を施した後、圧力変動吸着法(PSA法)によって、二酸化炭素、一酸化炭素、水、窒素などの不純物が吸着塔内にて吸着除去され、アルゴンが精製される。精製アルゴンをより高い回収率で得るために、例えば、吸着塔から導出されるガス(オフガス)の一部を、吸着塔に導入される前の混合ガスに添加してリサイクルさせる。PSA法において吸着塔内を減圧して脱着させるときに、真空ポンプを用いると、吸着塔内からオフガスが流れる流路にかけて減圧されるため空気が漏れ込む可能性があり、空気が漏れ込むとリサイクルさせるガスの不純物濃度が上がってしまう。このような事態を避けるために、真空ポンプを用いずに排出圧力を利用して脱着させることが好ましく、その手段においては、オフガスが流れる流路の圧力をより速く、しかもより低圧にすればその回収率を上昇させることは知られていたが、具体的な対策が講じられていなかった。
【0013】
本発明者は、このような問題を解決するために、次のような分析を行った。脱着操作時のガス圧とガスの量については、脱着操作時に吸着塔内の圧力を低下させていくと、吸着塔から導出されるガス(オフガス)の量は、脱着操作時の初期に多く、末期に近づくにつれて減少していく。そのため、オフガスが流れるための空間が固定されていると、吸着塔からのガス量が多くなることによってガス流れの抵抗が大きくなり、当該オフガスが流れる空間の圧力は脱着操作時に一旦上昇する。一方、脱着操作が進んで吸着塔からのガス量が減少すると、ガス流れ抵抗が小さくなるので、上記空間の圧力は低下していく。
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、真空ポンプを使用せずに、脱着圧力を一気に低下させたり、あるいはこの圧力を大気圧レベルにまで速く近づけるためには、オフガスが流れる流路の空間を固定せず容量可変させることで脱着圧力を一気に低下させ、且つこの圧力を大気圧レベルまで小さくできることを見出した。具体的には、吸着塔に近い位置に、ガスの容量を変化させることができる容量可変式のガスホルダを設置し、吸着塔からのオフガスを当該ガスホルダに導入することにより、この効果を実現することを見出した。
【0015】
また、吸着塔からのオフガスの流路が低圧で安定した状態になると、吸着塔内のガス圧力がより速い速度で低下し、吸着剤から吸着した不純物がより速く脱着し減圧再生効果が高まることも見出された。すなわち、オフガスが流れる空間(ガスホルダ)を、オフガス量に応じて大気圧とバランスさせながら増減させれば、オフガスの流路を限りなく大気圧に近い圧力で一定化でき、圧力変動吸着法による分離性能を高めることができる。
【0016】
本発明の第2の側面によって提供されるアルゴン精製装置は、アルゴンを含む混合ガスからアルゴンを精製するための装置であって、吸着剤が充填された吸着塔を用いて行う圧力変動吸着法により、上記吸着塔に上記混合ガスを導入して当該混合ガス中の不純物を上記吸着剤に吸着させ、当該吸着塔からアルゴンを導出し、且つ、上記吸着塔を減圧して上記吸着剤から不純物を脱着させ、当該吸着塔からオフガスを導出するための、圧力変動吸着式ガス分離装置と、上記吸着塔に上記混合ガスを供給するための第1のガスラインと、上記吸着塔から導出される上記オフガスを導入し、且つ、導出するための容量可変式のガスホルダと、上記吸着塔から導出される上記オフガスを上記ガスホルダに供給するための第2のガスラインと、を備えることを特徴としている。
【0017】
好ましくは、容器状に構成された本体部と、上記本体部の内部に収容され、上記本体部との間のガスシール状態を維持しつつ変位可能な遮断部と、を備え、上記遮断部の変位にともない、上記本体部および上記遮断部によって区画されたガス収容部に収容されるガスの量が変化する。
【0018】
好ましくは、上記遮断部は、膜状部材、または蓋形状の金属部材を含む。
【0019】
好ましくは、上記ガスホルダは、上記遮断部に支持され、または包含された錘部を備える。
【0020】
好ましくは、上記ガスホルダから導出されるガスを上記第1のガスラインに添加供給が可能なように上記ガスホルダおよび上記第1のガスラインの間を連結する第3のガスラインと、上記第2のガスラインに連結し、上記吸着塔から導出されるガスを系外に排出するための第4のガスラインと、を備える。
【0021】
好ましくは、上記混合ガスに含まれる不純物の少なくとも一部を除去または変成するための前処理を実行するための前処理系が上記第1のガスラインに設けられており、上記第3のガスラインは、上記第1のガスラインにおける上記前処理系の後段部分に連結されている。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明の効果】
【0023】
アルゴンを含む混合ガスからの圧力変動吸着法を利用したアルゴンの精製において、吸着塔から導出されるオフガスを貯蔵し、排出する空間(ガスホルダ)がオフガス量の変動に合わせて容量可変される。これにより、オフガスが流れる空間全体の圧力変動がなくなり一定の低圧で保持されるので、減圧再生効果が高まりアルゴン回収率が向上する。また、その結果、リサイクルされるオフガス量は変動がなく安定して原料系にリサイクル混合でき全系のアルゴン回収率も向上する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0026】
図1は、本発明に係るアルゴン精製装置の概略構成を示している。アルゴン精製装置Xは、前処理系1と、圧力変動吸着式ガス分離装置2(以下、PSA装置2という。)と、ガスホルダ3とを備え、アルゴンを含む原料ガスを回収しつつ連続的にアルゴンを精製することが可能なように構成されている。
【0027】
原料ガスは、シリコン結晶引き上げ炉や、セラミック焼結炉、太陽電池用シリコンプラズマ溶解炉などにおける炉内雰囲気ガスとして使用されて不純物が混入しているアルゴンであり、少なくとも一つの所定の炉(図示略)から、例えば真空ポンプを用いて連続的に又は断続的に排出されたものである。原料ガスは、例えば、主成分としてアルゴンを含み、且つ、不純物として水素、窒素、一酸化炭素、および酸素等を含む。主たる不純物は例えば水素である。原料ガスは、後述の吸着塔20A,20B,20Cにガスを供給するためのガスライン41に導入される。
【0028】
前処理系1は、後段のPSA装置2において実行される圧力変動吸着法(PSA法)によっては除去しにくい不純物を原料ガスから除去するためのものである。PSA法によってアルゴンを精製する際に当該PSA法によっては除去しにくい不純物としては、酸素および水素が挙げられる。また、酸素は、精製後のアルゴンを炉内雰囲気ガスとして再利用する際に有害であることが多いので、除去の必要性が高い。前処理系1は、
図1に示すように、フィルタ11、ブロア12、ヒータ13、反応器14A,14B、酸素供給器15、一酸化炭素供給器16、およびクーラ17,18を備えてなる。フィルタ11、ブロア12、ヒータ13、反応器14A,14B、およびクーラ17,18は、ガスライン41に設けられ、ガス経路上、直列に連結されている。
【0029】
フィルタ11は、炉からの排ガスである原料ガスに含まれることの多い粉塵や金属粉等の固形成分を、原料ガスから除去するためのものである。炉から排出されてガスライン41に導入される原料ガスは、フィルタ11にて除塵された後、ブロア12で昇圧されてヒータ13に導入される。ヒータ13では、水素と一酸化炭素の酸化反応がおこりやすいようにガスが250℃付近まで加熱される。
【0030】
次に、反応器14Aにガスが導入される。反応器14Aは、原料ガス中の水素や一酸化炭素を触媒反応で変成して実質的に除去するための反応容器である。ここで、反応器14Aの入口部に、酸素供給器15を通じて例えば水素や一酸化炭素との反応当量の約1.1倍の酸素が添加される。すなわち、反応器14Aに対して酸素が過剰に添加される。反応器14Aには、水素や一酸化炭素の酸化反応を促進する触媒が充填されている。そのような触媒としては、例えばパラジウム触媒やルテニウム触媒を採用することができる。反応器14Aでは、水素と一酸化炭素が燃焼して水蒸気と二酸化炭素になる。
【0031】
反応器14Aを経たガスは、クーラ17において150℃以下程度まで冷却され、反応器14Bに導入される。反応器14Bは、当該反応器14Bに導入されるガス中の酸素を触媒反応で変成して実質的に除去するための反応容器である。ここで、反応器14Aにおいて過剰に添加された酸素を除去するため、反応器14Bの入口部に、一酸化炭素供給器16を通じて例えば酸素との反応当量の約1.05倍の一酸化炭素が添加される。すなわち、反応器14Bに対して一酸化炭素が過剰に添加される。反応器14Bには、酸素と一酸化炭素の反応を促進する触媒が充填されている。そのような触媒としては、貴金属触媒、例えばアルミナに担持されたパラジウム触媒やルテニウム触媒を採用することができる。反応器14Bでは、酸素と一酸化炭素が反応して二酸化炭素になる。その結果、過剰な酸素は二酸化炭素となって、反応器14Bを経たガスは、一酸化炭素や窒素とともに例えば後述のゼオライトが充填された吸着塔を用いて行う圧力変動吸着法により除去されやすいものとなる。次いで、反応器14Bを経たガスは、クーラ18において常温まで冷却される。次に、クーラ18を経たガスには、後述のガスライン46を通じてPSA装置2からのオフガスの一部がリサイクル混合される。
【0032】
PSA装置2は、
図1および
図2に示すように、例えば吸着塔20A,20B,20Cと、ガス圧縮機21と、クーラ22と、ドレンタンク23と、ガス流路をなすライン41〜47と、を備え、前処理系1からのガス(アルゴンが主成分)から圧力変動吸着法(PSA法)を利用して連続的にアルゴンを濃縮精製することが可能なように構成されている。
【0033】
ガス圧縮機21は、ガスライン41に設けられている。ガス圧縮機21は、前処理系1を経たガスを吸着塔20A,20B,20Cに向けて送り出すためのものである。当該前処理系1を経たガスは、ガス圧縮機21により例えば約850kPaGまで圧縮させて、圧縮熱をクーラ22で冷却除去する。次いで、ドレンタンク23で水分を排出し、ガスを常温とする。
【0034】
このようにドレンタンク23を経てPSA法に供されるガス(混合ガス)は、主成分たるアルゴンの他に、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等が不純物として含まれる。混合ガスの組成の一例を挙げると、アルゴンが99.5モル%、二酸化炭素が0.3モル%、一酸化炭素が0.02モル%、窒素が0.18モル%である。
【0035】
吸着塔20A,20B,20Cの各々は、両端にガス通過口201,202を有し、ガス通過口201,202の間において、混合ガスに含まれる不純物(二酸化炭素、一酸化炭素、窒素)を選択的に吸着するための吸着剤が充填されている。そのような吸着剤としては、例えば、ゼオライト、カーボンモレキュラシーブ、アルミナなどが挙げられ、これらは単独で使用しても複数種を併用してもよい。吸着塔20A,20B,20C内に充填する吸着剤の種類や数については、吸着塔20A,20B,20Cにて除去すべき不純物の種類および量に応じて決定する。
【0036】
ガスライン41は、混合ガスを吸着塔20A,20B,20Cに供給するためのものであり、主幹路41’、および、吸着塔20A〜20Cの各ガス通過口201側に各々が接続された分枝路41A,41B,41Cを有する。分枝路41A〜41Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁41a,41b,41cが設けられている。
【0037】
ガスライン42は、各吸着塔20A〜20Cから導出される製品ガス(アルゴンが富化されたガス)の流路であり、主幹路42’、および、吸着塔20A〜20Cの各ガス通過口202側に各々が接続された分枝路42A,42B,42Cを有する。分枝路42A〜42Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁42a,42b,42cが設けられている。
【0038】
ガスライン43は、ガスライン42(主幹路42’)を通流する製品ガスの一部を吸着塔20A〜20Cに供給するためのものであり、ガスライン42の主幹路42’に接続された主幹路43’、および、吸着塔20A〜20Cの各ガス通過口202側に各々が接続された分枝路43A,43B,43Cを有する。主幹路43’には、流量調整弁431が設けられている。分枝路43A〜43Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁43a,43b,43cが設けられている。
【0039】
ガスライン44は、吸着塔20A〜20Cのいずれか2つを互いに接続するためのものであり、ガスライン43の主幹路43’に接続された主幹路44’、および、吸着塔20A〜20Cの各ガス通過口202側に各々が接続された分枝路44A,44B,44Cを有する。主幹路44’には、流量調整弁441が設けられている。分枝路44A〜44Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁44a,44b,44cが設けられている。
【0040】
ガスライン45は、各吸着塔20A〜20Cのガス通過口201から導出されるガス(オフガス)をガスホルダ3に導入するためのものであり、ガスホルダ3に接続された主幹路45’、および、吸着塔20A〜20Cの各ガス通過口201側に各々が接続された分枝路45A,45B,45Cを有する。分枝路45A〜45Cには、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁45a,45b,45cが設けられている。主幹路45’には、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁451が設けられている。
【0041】
ガスライン46は、ガスホルダ3から導出されるオフガスの流路であり、一端がガスホルダ3に接続されている。ガスライン46の他端は、ガスライン41の途中である、クーラ18およびガス圧縮機21の間に接続されている。すなわち、ガスライン46は、ガスライン41における前処理系1の後段に対して連結している。
【0042】
ガスライン47は、各吸着塔20A〜20Cのガス通過口201から導出されるガス(オフガス)を系外に排出するためのものである。ガスライン47には、開状態と閉状態との間を切り替わることが可能な自動弁471が設けられている。
【0043】
ガスホルダ3は、吸着塔20A〜20Cからのガス(オフガス)を収容可能な容量可変式のガスホルダである。本実施形態において、
図3に示すように、ガスホルダ3は、本体部31と、ダイヤフラム32と、ピストン33とを備え、ピストン式として構成されたものである。
【0044】
本体部31は、例えば鉄もしくはステンレスなどの金属製であり、円筒容器状とされている。本体部31は、下部本体311および上部本体312を有し、上下に分離可能であるとともに、下部本体311および上部本体312のフランジどうしをボルト313によって接合することにより一体に組み合わされる。下部本体311の適所には、ガス導入口314およびガス導出口315が設けられている。ガス導入口314には、ガスライン45の主幹路45’が接続されており、ガス導出口315には、ガスライン46が接続されている。
【0045】
ダイヤフラム32は、繊維で補強された合成ゴムによって成型されており、一連の膜体とされている。ダイヤフラム32は、円環状の鍔部321と、鍔部321の内周縁に一端側がつながって延びる円筒状部322と、円筒状部322の他端側を塞ぐ底部323とを有する。ダイヤフラム32は、鍔部321が下部本体311および上部本体312のフランジ間に密封状態で挟まれたまま本体部31の内部に収容されている。ダイヤフラム32は、下部本体311(本体部31)との間のガスシール状態を維持したまま昇降可能(変位可能)とされており、本発明でいう遮断部に相当する。そして、ダイヤフラム32と下部本体311(本体部31)とで区画された領域は、吸着塔20A〜20Cからのガス(オフガス)を収容するためのガス収容部34とされている。
【0046】
ピストン33は、例えば鉄もしくステンレスなどの金属製であり、ダイヤフラム32の円筒状部322の内側に配置されている。ピストン33は、上下方向に延びる円筒状のピストン筒部331と、ピストン筒部331の下端につながるピストン底部332とを有する。ピストン33は、ピストン底部332がダイヤフラム32の底部323に対して位置合わせされた状態にて、ダイヤフラム32に支持されている。
【0047】
ピストン筒部331の上端近傍には、取付具334を介してガイドローラ335が設けられている。ガイドローラ335は少なくとも3つ設けられており、これらガイドローラ335は、ピストン筒部331における周方向の異なる位置に配されている。ガイドローラ335は、好ましくは、ピストン筒部331の周方向において一定間隔を隔てて配される。各ガイドローラ335は、上部本体312の内周面に接触するとともに水平軸周りに回転自在とされている。ピストン筒部331の外径寸法は、例えば約1000mmである。ピストン筒部331の外周面と上部本体312の内周面との間の隙間は、例えば50〜200mmとされ、好ましくは60〜150mmとされる。詳細は後述するが、ダイヤフラム32およびこのダイヤフラム32に支持されたピストン33は、ガイドローラ335によって略一定姿勢を維持しながら、上下動する。
【0048】
詳細は後述するが、吸着塔20A〜20Cからのガス(オフガス)がガス導入口314を介してガス収容部34(ガスホルダ3内)に導入されると、ガス収容部34のガス量が変化(増加)し、そのガス量の変化に応じて、ピストン33はダイヤフラム32に支持されたまま上昇する。ガス収容部34の圧力(内圧)は、ピストン33の重量に応じて決定し、最も低い圧力では1kPaG以下(Gはゲージ圧を意味する。以下同じ)にまで設定することができる。
【0049】
本実施形態においては、以上のような構成を有するアルゴン精製装置Xを用いて本発明に係るアルゴン精製方法を実行することができる。前処理系1では、ブロア12が稼働してガスが昇圧される。そして、反応器14A,14Bを順次経て、混合ガスがPSA装置2(吸着塔20A,20B,20C)に供給される。
【0050】
PSA装置2の稼動時において、自動弁41a〜41c,42a〜42c,43a〜43c,44a〜44c,45a〜45c,451,471、および流量制御弁431,441を適宜切り替えることにより、装置内において所望のガス流れ状態を実現し、以下のステップ1〜12からなる1サイクルを繰り返すことができる。本方法の1サイクルにおいては、吸着塔20A,20B,20Cの各々にて、吸着工程、並流減圧工程、均圧(減圧)工程、向流減圧工程、洗浄(第1洗浄)工程、洗浄(第2洗浄)工程、均圧(昇圧)工程、および昇圧工程が行われる。本実施形態では、各吸着塔20A〜20Cの内部において、下部には吸着剤としてのアルミナが、上部には吸着剤としてのLiX型ゼオライトが、積層充填されている。
図4、
図5は、ステップ1〜12におけるPSA装置2でのガスの流れ状態を模式的に表したものである。
【0051】
ステップ1では、
図4(a)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔20Aにて吸着工程が、吸着塔20Bにて洗浄(第1洗浄)工程が、吸着塔20Cにて並流減圧工程が行われる。ステップ1の各工程の操作時間は、例えば60秒とされる。
【0052】
図2および
図4(a)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ1では、ガス(混合ガス)が、ガスライン41を介して吸着塔20Aのガス通過口201側に導入される。吸着工程にある吸着塔20A内は所定の高圧状態に維持されており、混合ガス中の不純物(二酸化炭素、一酸化炭素、窒素など)が吸着塔20A内の吸着剤に吸着され、且つ、吸着塔20Aのガス通過口202側からアルゴンガス濃度の高い製品ガス(アルゴン富化ガス)が導出される。この製品ガスは、ガスライン42を介して装置外へ回収される。吸着塔20Aの内部圧力(吸着圧力)は、例えば800kPaG程度である。
【0053】
これとともに、吸着塔20Cのガス通過口202から導出された吸着塔20C内のガス(洗浄ガス)がガスライン44を介して吸着塔20Bのガス通過口202側に導入され、吸着塔20Bの内部を洗浄しつつ塔内に残留するガスがガス通過口201側からオフガスとして導出される。なお、並流減圧工程では、
図2、
図4(a)から理解されるように、吸着塔(20C)内のガスはガス通過口202からガスが導出されており、吸着工程にある吸着塔(20A)内のガスが導出されるのと同方向のガス流れ(並流)でガスが導出される。
【0054】
ここで、吸着塔20Bのガス通過口201側から導出されるガス(オフガス)は、後のステップ2の洗浄(第2洗浄)工程に比べて、不純物濃度が相対的に低いので、ガスライン45を介してガスホルダ3に導入される。
【0055】
ステップ1ではまた、ガスホルダ3において、ガス量が増加するのにしたがって、ダイヤフラム32が上昇しながら、内部のオフガスをガスライン46に導出していく。そして、ガスライン46を流れるガスは、当該ガスライン46に連結するガスライン41に流れ込み、混合ガスに合流してリサイクルされる。
【0056】
ステップ2では、
図4(b)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔20Aにて引き続き吸着工程が、吸着塔20Bにて洗浄(第2洗浄)工程が、吸着塔20Cにて引き続き並流減圧工程が行われる。ステップ2の各工程の操作時間は、例えば55秒とされる。
【0057】
図2および
図4(b)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ2では、ステップ1から引き続いて、混合ガスがガスライン41を介して吸着塔20Aのガス通過口201側に導入されて、吸着塔20Aから製品ガスが導出される。製品ガスは、ステップ1と同様にして回収される。これとともに、ステップ2では、ステップ1から引き続いて、吸着塔20Cのガス通過口202から導出された吸着塔20C内のガス(洗浄ガス)がガスライン44を介して吸着塔20Bのガス通過口202側に導入され、吸着塔20Bの内部を洗浄しつつ塔内に残留するガスがガス通過口201側からオフガスとして導出される。
【0058】
ここで、ステップ2において吸着塔20Bから導出されるガス(オフガス)は、ステップ1において吸着塔20Bから導出されるガス(オフガス)に比べて、不純物濃度が相対的に高いので、ガスライン47を介して系外に排出される。
【0059】
ステップ2ではまた、ガスホルダ3において、内部のオフガスのガスライン46への導出を続ける。そして、ガスライン46を流れるガスはガスライン41に流れ込み、混合ガスに合流してリサイクルされる。なお、ステップ2では、ガスホルダ3に向かってガスの導入はなされないので、ガスホルダ3内のガス量は減少する。
【0060】
ステップ3では、
図4(c)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔20Aにて引き続き吸着工程が、吸着塔20Bにて均圧(昇圧)工程が、吸着塔20Cにて均圧(減圧)工程が行われる。ステップ3の各工程の操作時間は、例えば15秒とされる。
【0061】
図2および
図4(c)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ3では、ステップ2から引き続いて、混合ガスがガスライン41を介して吸着塔20Aのガス通過口201側に導入されて、吸着塔20Aから製品ガスが導出される。製品ガスは、ステップ1と同様にして回収される。これとともに、ステップ3では、吸着塔20Cのガス通過口202から導出された吸着塔20C内の不純物濃度が相対的に低いガスがガスライン44を介して吸着塔20Bのガス通過口202側に導入される。
【0062】
ステップ3ではまた、ガスホルダ3において、内部のオフガスをガスライン46に導出していく。そして、ガスライン46を流れるガスはガスライン41に流れ込み、混合ガスに合流してリサイクルされる。なお、ステップ3では、ガスホルダ3に向かってガスの導入はなされないので、ガスホルダ3内のガス量は引き続き減少する。
【0063】
ステップ4では、
図4(d)に示すようなガス流れ状態が達成されて、吸着塔20Aにて引き続き吸着工程が、吸着塔20Bにて昇圧工程が、吸着塔10Cにて向流減圧工程が行われる。ステップ4の各工程の操作時間は、例えば70秒とされる。
【0064】
図2および
図4(d)を併せて参照するとよく理解できるように、ステップ4では、ステップ3から引き続いて、混合ガスがガスライン41を介して吸着塔20Aのガス通過口201側に導入されて、吸着塔20Aから製品ガスが導出される。製品ガスは、ステップ1〜3と同様にして回収されるが、その一部がガスライン43を介して吸着塔20Bに導入され、吸着塔20Bの昇圧が行われる。吸着塔20Cについては、向流方向で減圧することにより吸着剤から不純物が脱着され、吸着塔20Cのガス通過口201側から塔内のガス(オフガス)が導出される。なお、向流減圧工程では、
図2、
図4(d)から理解されるように、吸着塔(20C)内のガスはガス通過口201から導出されており、吸着工程にある吸着塔(20A)内のガスが導出されるのと逆方向のガス流れ(向流)でガスが導出される。
【0065】
ここで、吸着塔20Cは、ステップ1〜3において続けて減圧され、ステップ4の開始時に吸着塔20C内の圧力はかなり低くなっているが、さらに大気圧付近まで減圧されながら吸着塔20Cのガス通過口201側から導出されたオフガスは、ガスライン45を介してガスホルダ3に導入される。
【0066】
ステップ4ではまた、ガスホルダ3において、ガス量が増加するのにしたがって、ダイヤフラム32が上昇しながら、内部のオフガスをガスライン46に導出していく。そして、ガスライン46を流れるガスはガスライン41に流れ込み、混合ガスに合流してリサイクルされる。
【0067】
ステップ1〜4は、ステップ1〜12により構成される1サイクルの1/3に相当し、そのステップ1〜4の工程時間は、合計200秒である。
【0068】
ステップ5〜8においては、
図4(e)、(f)および
図5(g)、(h)に示したように、吸着塔20Aでは、ステップ1〜4における吸着塔20Cと同様にして並流減圧工程、均圧(減圧)工程、向流減圧工程が行われる。吸着塔20Bでは、ステップ1〜4における吸着塔20Aと同様にして吸着工程が行われる。吸着塔20Cでは、ステップ1〜4における吸着塔20Bと同様にして洗浄(第1洗浄)工程、洗浄(第2洗浄)工程、均圧(昇圧)工程、昇圧工程が行われる。
【0069】
ステップ9〜12においては、
図5(i)〜(l)に示したように、吸着塔20Aでは、ステップ1〜4における吸着塔20Bと同様にして洗浄(第1洗浄)工程、洗浄(第2洗浄)工程、均圧(昇圧)工程、昇圧工程が行われ、吸着塔20Bでは、ステップ1〜4における吸着塔20Cと同様にして並流減圧工程、均圧(減圧)工程、向流減圧工程が行われる。吸着塔20Cでは、ステップ1〜4における吸着塔20Aと同様にして吸着工程が行われる。
【0070】
そして、以上に説明したステップ1〜12が吸着塔20A〜20Cの各々において繰り返し行われることにより、吸着塔20A〜20Cのいずれかに混合ガスが連続的に導入され、且つ、アルゴンガス濃度の高い製品ガスが連続的に取得される。
【0071】
本実施形態において、
図4、
図5に示す操作工程(ステップ1〜12)によって、洗浄(第1洗浄)工程、向流減圧工程のいずれかにある、吸着塔20A(20B,20C)からガス(オフガス)が導出されると、当該オフガスはガスライン45、ガス導入口314を介してガスホルダ3に導入されつつガス導出口315から導出される。ここで、ガスホルダ3は容量可変式であるため、吸着塔20A〜20Cから導出されるオフガスのガス量に応じて、ガスが流れる空間(ガスホルダ3)の容量が増減する。
【0072】
例えば、
図3を参照すると理解されるように、ガスホルダ3に導入されるガス量が多くなると、ガスホルダ3内においてダイヤフラム32と下部本体311(本体部31)とで囲まれた領域(ガス収容部34)の内部圧力が上昇しようとする。そうすると、ピストン33の重量(荷重)に抗して、ダイヤフラム32およびダイヤフラム32に支持されたピストン33が押し上げられ、ガスが蓄えられる。
図3においては、ピストン33が上昇した状態を仮想線で表す。一方、ガスホルダ3に導入されるガス量が減少、或いは無くなると、ガス導出口315からガスが導出されることによってピストン33が下降する。なお、
図3において、ピストン33が最も下位にある実線で示す状態でのガス収容部34の容積と、ピストン33が最も上位にある仮想線で示す状態でのガス収容部34の容積との差が、ガスホルダ3(ガス収容部34)における増減可能な容量になる。
【0073】
このようなことから理解されるように、ガスホルダ3においては、ダイヤフラム32に対して下向きに作用するピストン33の荷重と、ガス収容部34のガスの圧力によりダイヤフラム32に対して上向きに作用する力とが均衡を保ちながら、ガスホルダ3(ガス収容部34)の容量が変化する。これにより、吸着塔20A〜20Cから導出されるガス(オフガス)のガス量が変動しても、当該オフガス量に応じてガスホルダ3の容量が増減し、ガスホルダ3内の圧力が変化せずに実質的に一定に保たれる。
【0074】
本実施形態と異なり、容量固定式のガスタンクにオフガスを蓄える場合には、吸着塔からのオフガスのガス量の変動によりガスタンク内の圧力が変動する。この場合、脱着操作時に吸着塔内を減圧して当該吸着塔からのオフガスのガス量が多くなると、ガスタンク内の圧力が上昇するので、脱着操作時の当該吸着塔におけるガス圧(脱着圧力)を低下させ難い。これに対し、本実施形態では、上述のように吸着塔20A〜20Cからのオフガスのガス量が多くなってもガスホルダ3内の圧力は実質的に一定に維持されるため、脱着操作時における吸着塔20A〜20Cの減圧の速度が速くなるといった効果を得ることができる。その結果、吸着塔20A〜20Cの減圧再生効果が高まり、製品ガスの取得量が増えるとともにアルゴン回収率が高まる。
【0075】
また、本実施形態と異なり、容量固定式のガスタンクにオフガスを蓄える場合、内部の空間容量が固定されている。このため、吸着塔からのオフガスのガス量の変動について、ガスタンク内の圧力変化を伴うことによって吸収される。したがって、容量固定式ガスタンクでは、ガス量の変動を適切に吸収するには、比較的に大きな空間容量が必要になり、例えば吸着塔の容量の8.6倍程度の空間容量を要する。これに対し、本実施形態のような容量可変式のガスホルダ3にオフガスを蓄える場合、圧力変化を伴わずに、変動したガス量に応じてダイヤフラム32(遮断部)を変位させることで、新しい空間を形成したり無くしたりすることができる(すなわち、ガスホルダ3の容量を増減できる)。これにより、ガスホルダ3においては、最大の空間容量として吸着塔20A〜20Cの容量の2.2倍程度確保しておけばよく、ガス貯蔵空間の無駄をなくすことができる。
【0076】
また、上述のようにガスホルダ3内の圧力が実質的に一定に保たれると、ガス導出口315を介して導出されるオフガス量も実質的に一定となる。そして、本実施形態において、ガスホルダ3から導出されるオフガスは、ガスライン46を介してガスライン41中の混合ガスに添加されてリサイクルされる。したがって、かかる方法は、オフガスを一定流量で安定的にリサイクルすることが可能であるとともに、アルゴンの回収率を高めることができる。
【0077】
PSA法によるガス分離において、洗浄工程にある吸着塔20A,20B,20Cから導出されるオフガスのうち、洗浄工程の開始から途中までの第1洗浄工程において導出されるガス(第1ガス)と向流減圧工程において導出されるガスについてはガスホルダ3に導入してリサイクルされる一方、第1洗浄工程の後の第2洗浄工程において導出されるガス(第2ガス)については系外に排出される。このような方法によれば、上述のように不純物濃度が相対的に低いオフガスがリサイクル回収され、不純物濃度が相対的に高いオフガスが系外に排出されるため、アルゴンの回収率を高めるのに適している。
【0078】
本実施形態では、ガスホルダ3から導出されるオフガスは、前処理系1を経た、吸着塔20A,20B,20Cに供給される前の混合ガスに添加される。ガスホルダ3から導出されるオフガスは、酸素および水素を実質的に含まないので、当該オフガスを混合ガスに添加してリサイクルするに際し、前処理を施す必要がないからである。そして、このように前処理を経た混合ガスに対してオフガスを添加する方法によれば、前処理が施される前のガス(原料ガス)にオフガスを添加する場合と比べて、前処理が施されるガスの組成が変化しないので、前処理自体が安定する。
【0079】
図6は、3塔の吸着塔を用いて混合ガスからアルゴンを精製するための圧力変動吸着操作において、オフガス用のガスラインに容量可変式ガスホルダを取り付けた場合と、容量固定式ガスタンクを取り付けた場合の圧力プロファイルを示す。容量可変式ガスホルダは
図3に示されたピストン式のガスホルダ3を用い、ガスホルダ3(ガス収容部34)の容量を吸着塔の容量の約2.2倍とした。一方、容量固定式ガスタンクの容量は吸着塔容量の約8.6倍とした。混合ガスとしては、アルゴンが99.5モル%、二酸化炭素が0.3モル%、一酸化炭素が0.02モル%、窒素が0.18モル%の組成のものを用いた。吸着圧力は800kPaG、脱着圧力は1kPaGになるようにした。
【0080】
図6に示した容量可変式ガスホルダの内部圧力は、上述のステップ1〜12のうちステップ1〜4について表し、容量固定式ガスタンクの内部圧力についても、ステップ1〜4について表す。吸着塔内の圧力(脱着圧力)については、ステップ1〜4における吸着塔20Cについて表す。
【0081】
図6から理解されるように、容量固定式ガスタンクの内部圧力は、ステップ1,4の開始後に当該ガスタンク内にオフガスが導入されるとこれに伴って上昇し、ステップ1では100kPaG(
図6における約45秒経過時)に達し、ステップ4では94kPaG(
図6における約133秒経過時)に達した。一方、容量可変式ガスホルダの内部圧力は、ステップ1〜4を通じて約1kPaGであり、実質的に一定に保たれた。
【0082】
また、
図6から理解されるように、吸着塔内の圧力(脱着圧力)については、容量固定式ガスタンクの場合には、ステップ3からステップ4に切り替わる時点(
図6における130秒経過時)から緩やかに低下し、最低圧力まで低下するのに約40秒間を要した。その一方、容量可変式ガスホルダの場合、吸着塔内の圧力(脱着圧力)は、ステップ3からステップ4に切り替わる時点から一気に低下して20秒以内のかなり速い速度で最低圧力まで低下した。
【0083】
図7および
図8は、容量可変式のガスホルダの他の例を示す。
【0084】
図7に示すガスホルダ3Aは、胴体31Aと、胴体31Aの内部に収容されたバルーン32Aと、錘33Aとを備え、バルーン式として構成されたものである。胴体31Aは、例えば鉄もしくはステンレスなどの金属製であり、全体として円筒状とされ、且つ上部に形成された開口を塞ぐための屋根板316を有する。胴体31Aの下部の適所には、入口ガスノズル317および出口ガスノズル318が設けられている。入口ガスノズル317には、ガスライン45の主幹路45’が接続されており、出口ガスノズル318には、ガスライン46が接続されている。バルーン32Aは、繊維で補強された合成ゴムによって成型されており、半球状の膜体とされている。バルーン32Aの周縁部は、胴体31Aの内面に設けられた取付金具319に固定されている。バルーン32Aは、胴体31Aとの間のガスシール状態を維持したまま上下動可能(変位可能)とされており、本発明でいう遮断部に相当する。そして、バルーン32Aと胴体31Aの下部とで区画された領域は、吸着塔20A〜20Cからのガス(オフガス)を収容するためのガス収容部34とされている。錘33Aは、ガスホルダ3Aの内部圧力を調整するためのものであり、バルーン32Aの中央上面に固定されている。ガス収容部34の圧力(内圧)は、錘33Aの重量に応じて決定し、最も低い圧力では1kPaG以下にまで設定することができる。
【0085】
入口ガスノズル317を介してガスホルダ3Aに導入されるガス量が多くなると、ガスホルダ3A内においてバルーン32Aと胴体31Aとで囲まれた領域(ガス収容部34)の内部圧力が上昇しようとする。そうすると、錘33Aの重量(荷重)に抗して、バルーン32Aが上方に膨らみ、ガスが蓄えられる。
図7においては、バルーン32Aが膨らんだ状態を仮想線で表す。一方、ガスホルダ3Aに導入されるガス量が減少、或いは無くなると、出口ガスノズル318からガスが導出されることによってバルーン32Aが下方に萎む。なお、
図7において、バルーン32Aが最も萎んだ実線で示す状態でのガス収容部34の容積と、バルーン32Aが最も膨らんだ仮想線で示す状態でのガス収容部34の容積との差が、ガスホルダ3A(ガス収容部34)における増減可能な容量になる。
【0086】
このような構成のガスホルダ3Aにおいては、バルーン32Aに対して下向きに作用する錘33Aの荷重と、オフガスの圧力によりバルーン32Aに対して上向きに作用する力とが均衡を保ちながら、ガスホルダ3A(ガス収容部34)の容量が変化する。これにより、吸着塔20A〜20Cから導出されるオフガスのガス量が変動しても、当該ガス量に応じてガスホルダ3Aの容量が増減し、ガスホルダ3A内の圧力が変化せずに実質的に一定に保たれる。
【0087】
図8に示すガスホルダ3Bは、円筒容器状の胴体35と、胴体35の内側に収容されたドラム36とを備える。胴体35は、例えば鉄もしくはステンレスなどの金属製であり、この胴体35の内部には、水、或いは活性の低い有機液体(オイル)などの液体37が充填されている。液体37は、胴体35に設けられた給水ノズル351から導入されつつオーバーフローノズル352から連続的に外部に排出され、例えば液体37である水が蒸発しても減少分が補充されるようになっている。液体37が汚れた場合には、排出ノズル353から排出して入れ替えることができる。
【0088】
ドラム36は、例えば鉄もしくはステンレスなどの金属製であり、頂部が覆われた円筒状とされている。ドラム36は、液体37に浸かっており、当該液体37によって内部空間と外部とが遮断されている。ドラム36は、蓋形状を有する遮断部の一例である。ドラム36の下部および上部には、複数ずつのローラ361,362が設けられている。各ローラ361は、胴体35の内周面に接触するとともに上下に移動する。各ローラ362は、胴体35の外周部に分散して配置された複数の柱状のサポート部材38をガイドレールとして上下に移動する。これにより、ドラム36は、ローラ361,362によって略一定姿勢を維持しながら、上下動する。
【0089】
胴体35の下部の適所には、入口ガスノズル354および出口ガスノズル355が設けられている。入口ガスノズル354には、ガスライン45の主幹路45’が接続されており、出口ガスノズル355には、ガスライン46が接続されている。入口ガスノズル354および出口ガスノズル355は、それぞれ、ドラム36の内側において立ち上がり、上端が液体37の液面より上位において開口している。
【0090】
ドラム36は、液体37によって当該液体37の液面との間の内部空間のガスシール状態を維持したまま上下動可能とされている。そして、ドラム36と液体37とで区画された空間は、吸着塔20A〜20Cからのガス(オフガス)を収容するためのガス収容空間39とされている。ドラム36は、ガスホルダ3Bの内部圧力を調整する機能を有する。ガス収容空間39の圧力(内圧)は、液体37に浮かぶドラム36の重量に応じて決定し、最も低い圧力では1kPaG以下にまで設定することができる。
【0091】
入口ガスノズル354を介してガスホルダ3Bに導入されるガス量が多くなると、ガスホルダ3B内においてドラム36と液体37とで囲まれた領域(ガス収容空間39)の内部圧力が上昇しようとする。そうすると、ドラム36の重量(荷重)に抗して、ドラム36が上昇し、ガスが蓄えられる。
図8においては、ドラム36が上昇した状態を仮想線で表す。一方、ガスホルダ3Bに導入されるガス量が減少、或いは無くなると、出口ガスノズル355からガスが導出されることによってドラム36が下降する。なお、
図8において、ドラム36が最も下位にある実線で示す状態でのガス収容空間39の容積と、ドラム36が最も上位にある仮想線で示す状態でのガス収容空間39の容積との差が、ガスホルダ3B(ガス収容空間39)における増減可能な容量になる。
【0092】
このような構成のガスホルダ3Bにおいては、ドラム36に対して下向きに作用するドラム36の荷重と、オフガスの圧力によりドラム36に対して上向きに作用する力とが均衡を保ちながら、ガスホルダ3B(ガス収容空間39)の容量が変化する。これにより、吸着塔20A〜20Cから導出されるオフガスのガス量が変動しても、当該ガス量に応じてガスホルダ3Bの容量が増減し、ガスホルダ3B内の圧力が変化せずに実質的に一定に保たれる。
【0093】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本発明に係るアルゴン精製装置におけるガス流路をなすガスラインの構成については、上記実施形態と異なる構成を採用してもよい。吸着塔の数については上記実施形態で示した3塔式だけに限定されるものではなく、2塔以下、或いは4塔以上の場合でも同様の効果が期待できる。
【実施例】
【0094】
次に、本発明の有用性を実施例および比較例により説明する。
【0095】
〔実施例1〕
図1、
図2に示す概略構成を有するアルゴン精製装置Xを使用して、
図4、
図5に示す吸着工程、並流減圧工程、均圧(減圧)工程、向流減圧工程、洗浄(第1洗浄)工程、洗浄(第2洗浄)工程、均圧(昇圧)工程、および昇圧工程からなる1サイクル(ステップ1〜12)を吸着塔20A,20B,20Cにおいて繰り返すことにより、所定の混合ガスから、アルゴンを濃縮精製した。
【0096】
本実施例において使用した吸着塔20A,20B,20Cの各々は、ステンレス製で円筒形状(内径37mm,内寸高さ1,000mm)を有し、容量が約1Lであった。各吸着塔内には、吸着剤としてLiX型ゼオライトを1L充填した。ガスホルダについては、
図7に示したバルーン式(容量可変式)のガスホルダ3Aを使用し、容量が約2.2Lのものを使用した。吸着塔20A,20B,20Cに供給される混合ガスの組成は、アルゴンが99.5モル%、一酸化炭素が0.02モル%、二酸化炭素が0.3モル%、窒素が0.18モル%であった。この混合ガスを、PSA装置2に対して1,030NL/hの流量で供給し続けた。本実施例では、吸着塔20A,20B,20Cの各々において、ステップ1,2,3,4がそれぞれ60秒間、55秒間、15秒間、70秒間でステップ1〜4の合計が200秒間であり、ステップ1〜12からなる1サイクルのサイクルタイムは、600秒間であった。吸着工程における吸着塔20A〜20Cの内部の最高圧力は800kPaGとし、脱着操作時における吸着塔20A〜20Cの内部の最低圧力(脱着圧力)は1kPaGとなるように調整した。
【0097】
このような条件で行った本実施例においてアルゴンが濃縮精製された製品ガスについて、アルゴン純度は99.999モル%であった。製品ガス中の不純物たる一酸化炭素および二酸化炭素の含有率について、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−FID)を用いてメタナイザーを介して測定したところ、一酸化炭素が1モルppm未満、二酸化炭素が1モルppm未満であった。製品ガス中の不純物たる窒素の含有率について、ラウンドサイエンス社製微量窒素分析計で測定したところ、0.6モルppmであった。取得された製品ガス量は739NL/hであり、取得ガスにおけるアルゴンの回収率は、72.1%であった。本実施例において、ガスホルダ3Aの内部圧力は、ほぼ1kPaGで一定となり変動しなかった。本実施例では、ガスホルダ3Aから導出されたオフガスを1kPaGの圧力で系外へ排出した。特に洗浄(第2洗浄)工程(ステップ2,6,10)において吸着塔20A,20B,20Cから導出されるオフガス量を測定すると146NL/hであり、そのガス分析値はアルゴンが98.0モル%、一酸化炭素が0.10モル%、二酸化炭素が1.10モル%、窒素が0.80モル%であった。本実施例の結果を表1に示した。
【0098】
〔実施例2〕
本実施例では、PSA装置およびPSA法の操作条件は実施例1と同様にしたが、洗浄(第2洗浄)工程において吸着塔20A,20B,20Cから導出されるオフガスは、系外へ排出し、その残りのオフガス{洗浄(第1洗浄)工程(ステップ1,5,9)および向流減圧工程(ステップ4,8,12)において吸着塔20A,20B,20Cから導出されるオフガス}は、すべて吸着塔20A,20B,20Cに導入される前の前処理した混合ガスに添加してリサイクルさせた。このときのリサイクルガスのガス量は145NL/hで、リサイクルガスの組成は、アルゴンが98.47モル%、一酸化炭素が0.05モル%、二酸化炭素が1.02モル%、窒素が0.47モル%であった。リサイクルガスが添加された混合ガス(新規前処理後ガス885NL/hとリサイクルガス145NL/h)を、PSA装置2に対して1,030NL/hの流量で供給し続けた。
【0099】
本実施例においてアルゴンが濃縮精製された製品ガスのアルゴン純度は99.999モル%であった。製品ガス中の不純物の含有率について実施例1と同様の分析装置で測定したところ、一酸化炭素が1モルppm未満、二酸化炭素が1モルppm未満、窒素が0.6モルppmであった。取得された製品ガス量は731NL/hであり、取得ガスにおけるアルゴンの回収率は、71.4%であった。本実施例において、ガスホルダ3Aの内部圧力は、ほぼ1kPaGで一定となり変動しなかった。本実施例では、オフガスがリサイクルされる前の混合ガスの流量は、1,030NL/hからリサイクルした145NL/hを差し引いた885NL/hになるので、アルゴン精製装置X全系でのアルゴン回収率は83.0%となった。本実施例の結果を表1に示した。
【0100】
〔比較例1〕
上記実施例1で使用したアルゴン精製装置Xのガスホルダ3Aを容量固定式のガスタンクに代え、圧力吸着変動法により、
図4、
図5に示す各工程からなる操作(ステップ1〜12)を繰り返すことにより、所定の混合ガスからアルゴンを濃縮精製した。ガスタンクに関する相違点を除いた本比較例使用の精製装置の構成は、アルゴン精製装置Xと同様である。
【0101】
本比較例において、3塔の各吸着塔内には、LiX型ゼオライトを1L充填した。容量固定式ガスタンクとしては、容量が約8.6Lのものを使用した。混合ガスの組成およびガス供給態様は、上記実施例1と同様とした。本比較例では、
図4、
図5に示す各工程からなる操作(ステップ1〜12)を繰り返し、各ステップの切り替えのタイミングは上記実施例1と同様とした。本比較例において、吸着工程における吸着塔の内部の最高圧力は800kPaGとし、脱着操作時における吸着塔の内部の最低圧力(脱着圧力)は1kPaGとなるように調整した。
【0102】
本比較例において濃縮精製された製品ガスについて、アルゴン純度は99.999モル%であった。製品ガス中の不純物の含有率について実施例1と同様の分析装置で測定したところ、一酸化炭素が1モルppm未満、二酸化炭素が1モルppm未満、窒素が0.8モルppmであった。取得された製品ガス量は712NL/hであり、取得ガスにおけるアルゴンの回収率は、69.5%であった。本比較例において、ガスタンクの内部圧力は、
図6のように最小値1kPaGから最大値100kPaGの範囲で変動した。本比較例では、ガスタンクから導出されたオフガスを系外へ排出した。特に洗浄(第2洗浄)工程(ステップ2,6,10)において吸着塔から導出されるオフガス量を測定すると159NL/hであり、そのガス分析値はアルゴンが98.00モル%、一酸化炭素が0.10モル%、二酸化炭素が1.10モル%、窒素が0.80モル%であった。本比較例の結果を表1に示した。
【0103】
〔比較例2〕
本比較例では、PSA装置およびPSA法の操作条件は比較例1と同様にしたが、洗浄(第2洗浄)工程において吸着塔から導出されるオフガスは、系外へ排出し、その残りのオフガス{洗浄(第1洗浄)工程(ステップ1,5,9)および向流減圧工程(ステップ4,8,12)において吸着塔から導出されるオフガス}は、すべて吸着塔に導入される前の前処理後混合ガスに添加してリサイクルさせた。リサイクルガスのガス量は159NL/hで、リサイクルガスの組成は、アルゴンが98.76モル%、一酸化炭素が0.03モル%、二酸化炭素が0.84モル%、窒素が0.37モル%であった。この混合ガス(新規前処理後ガス871NL/hとリサイクルガス159NL/h)を、PSA装置に対して1,030NL/hの流量で供給し続けた。
【0104】
本比較例においてアルゴンが濃縮精製された製品ガスのアルゴン純度は99.999モル%であった。製品ガス中の不純物の含有率について実施例1と同様の分析装置で測定したところ、一酸化炭素が1モルppm未満、二酸化炭素が1モルppm未満、窒素が0.8モルppmであった。取得された製品ガス量は693NL/hであり、取得ガスにおけるアルゴンの回収率は、67.7%であった。特に本比較例では、オフガスがリサイクルされる前の混合ガスの流量は、1,030NL/hからリサイクルした159NL/hを差し引いた871NL/hになるので、アルゴン精製装置全系でのアルゴン回収率は79.9%となった。本比較例の結果を表1に示した。
【0105】
【表1】
【0106】
比較例1,2では、タンク容量が吸着塔の容量の8.6倍の容量固定式ガスタンクを用いたが、脱着圧力を低く安定させることはできなかった。これに対し、実施例1,2においては、容量が吸着塔の2.2倍の容量可変式のガスホルダを用いることにより、ガスホルダ内部の圧力変動をなくすことができ、脱着圧力をより低い圧力(1kPaGレベル)まで下げることが可能となった。その結果、アルゴン回収率については、比較例1では69.5%であったのに対し、実施例1では72.1%に向上した。また、不純物濃度が相対的に低いオフガスを原料系にリサイクル混合させることにより、全系でのアルゴン回収率について、72.1%から83.0%に改善された。