(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
照明系と、基板(22)上に投影光を用いてパターンを結像するように構成された投影対物レンズ(26)とを備えるマイクロリソグラフィ装置であって、前記装置(10)は波面補正装置を備え、該波面補正装置は、
a)ミラー(M2)であって、
前側表面(46)、後ろ側表面(48)、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面(50)を有するミラー基板(44)と、
前記ミラー基板(44)の前記前側表面(46)によって支持される、衝突する投影光(PL)を反射するように構成されている反射性コーティング(47)と、
を有するミラー(M2)と、
b)第1加熱光(HL1)を前記周縁表面(50)の第1の部分に向けて、少なくとも一部の前記第1加熱光が前記ミラー基板(44)に入射するようにする第1光学系(OS1)と、
c)第2加熱光(HL2)を前記周縁表面(50)の前記第1の部分とは異なる第2の部分に向けて、少なくとも一部の前記第2加熱光が前記ミラー基板(44)に入射するようにする第2光学系(OS2)と、
d)第1及び第2加熱光ビームの全てが前記ミラー基板(44)を伝播した後に当たる少なくとも一つの吸収体(57,78)と、
を備え、
前記第1及び第2加熱光(HL1、HL2)が前記ミラー基板(44)により部分的に吸収されることに起因する温度分布は、結果的にミラー(M2)を変形させ、かかる変形により、特に、少なくとも部分的には波面誤差が補正され、さらに、
少なくとも前記第1光学系(OS1)が、前記第1加熱光を焦点領域(56)にて集束させて、前記焦点領域(56)から出た前記第1加熱光を前記周縁表面の前記第1の部分に衝突させるように構成された集束光学素子(55)を含むことを特徴とする、
マイクロリソグラフィ装置。
前記周縁表面(50)の第1の部分は、少なくとも、該第1の部分を含む湾曲面となっており、前記ミラー(M2)の対称軸を含む、請求項1〜4の何れか一項に記載の装置。
前記波面補正装置(42)は、加熱光を発するように構成された光源(LS)と、前記光源から発せられた前記加熱光を前記第1加熱光(HL1)及び前記第2加熱光(HL2)とに分割するビームスプリッター(72)とを備える、請求項1〜5の何れか一項に記載の装置。
前記第1光学系が、前記第1加熱光を生成するように構成された一つの第1光源を備え、第2光学系が前記第2加熱光を生成するように構成された一つの第2光源を備える、請
求項1〜5の何れか一項に記載の装置。
少なくとも前記第1光学系(OS1)は、前記第1加熱光(HL1)の輝度を空間分解的な態様で変更するように構成された空間光変調器(74,80)を備え、該空間光変調器によりそれぞれ輝度が変更された、複数の第1加熱光ビーム(HLB1)を生成可能である、請求項1〜7の何れか一項に記載の装置。
前記空間光変調器は、ビーム偏向素子(76)の配列を備え、各ビーム偏向素子は、衝突した第1加熱光(HL1)を制御信号に応じて変更可能な偏向角度にて偏向させるように構成されている、請求項8に記載の装置。
前記空間光変調器が、大きさ及び/又は透過率が制御信号に応じて独立して変更可能な複数の開口(82)を有する可変ブラインド(80)を備える、請求項8又は9に記載の装置。
少なくとも前記第1光学系は、前記ミラー基板を通過した加熱光の少なくとも70%を反射して、前記ミラー基板を再度通過させる反射表面(66)を備える、請求項1〜10の何れか一項に記載の装置。
少なくとも一つの面において、前記集束光学素子(55)及び前記ミラー基板(44)は、双方とも正レンズとしての光学効果を有する、請求項1〜13の何れか一項に記載の装置。
前記第1光学系(OS1)は、前記ミラー基板を出た後の第1加熱光ビーム(HLB1)の光量変化を測定するように構成されている第1光検出器(140)を含み、前記第2光学系(OS2)は、前記ミラー基板(44)を出た後の前記第2加熱光ビーム(HLB2)の光量変化を測定するように構成されている第2光検出器(140)を含む、請求項1〜16の何れか一項に記載の装置。
前記第1及び第2光検出器(140)により検出された光量変化に応じて、前記第1光学系(OS1)及び前記第2光学系(OS2)を制御するように構成された制御ユニット(148)を備える、請求項17に記載の装置。
【背景技術】
【0002】
マイクロリソグラフィ(フォトリソグラフィ又は単純にリソグラフィとも称される)は、集積回路、液晶ディスプレイ、及び他の微細構造デバイスを製造するための技術である。マイクロリソグラフィ処理は、エッチング処理との併用で、基板、例えば、シリコンウェーハ上に形成された薄膜積層体内に構造をパターニングするために用いられる。まず、製造された各層において、ウェーハは、最初に深紫外光(DUV)、真空紫外光(VUV)、極端紫外光(EUV)のような照射に対して感光性の材料であるフォトレジストで被覆される。次に、上面にフォトレジストを有するウェーハは、投影露光装置内のマスクを通過した投影光に対して露光される。ここで、マスクは、フォトレジスト上に投影されるべき回路パターンを含んでいる。露光の後にフォトレジストは現像されて、マスク内に含まれる回路パターンに対応する像が生成される。次に、エッチング処理により、回路パターンをウェーハ上の薄膜積層体へと転写する。最後に、フォトレジストが除去される。かかる処理を異なるマスクを用いて繰返すことで、多層微細構造部品を製造することができる。
【0003】
一般的に、マイクロリソグラフィ投影露光装置は、照明系、マスクを整列させるためのマスク整列台、投影対物レンズ、及びフォトレジストで被覆したウェーハを整列させるためのウェーハ整列台を含む。照明系は、例えば、矩形スリット又は幅狭なリングセグメントの形状を有しうるマスク上の視野を照明する。
【0004】
投影露光装置の開発における基本的な目的の1つは、リソグラフィによってより小さい寸法を有する構造をウェーハ上に生成できるようにすることである。小さい構造は、高い集積密度をもたらし、この密度は、そのような装置を利用して製造される微細構造部品の性能に対して一般的に好ましい効果を有する。さらに、一つのウェーハ上により多くの構造を実装して、装置のスループットを向上させることができる。
【0005】
生成することができる構造のサイズは、主に、用いられる投影対物レンズの分解能に依存する。投影対物系の分解能は、投影光の波長に反比例するので、分解能を高める1つの手法は、より短い波長を有する投影光を用いることである。現在用いられている最短波長は、真空紫外(VUV)紫外スペクトル域の193nmである。その一方で、波長が約13.5nmであるEUV光を用いる装置も市販されている。将来的な装置では、使用波長は約6.8nmまで下がることが想定される。EUV投影光に対して透過性が十分に高い光学材料は存在しないので、そのような装置は反射光学型、すなわち、ミラーのみを含み、レンズ又はその他の屈折性光学素子を含まない装置であることが想定される。
【0006】
像誤差(すなわち、収差)の修正は、超高解像度投影対物レンズにおける重要性を増している。像誤差の種類が異なれば、必要とされる修正方途も異なる。
【0007】
回転対称像誤差の補正は、比較的容易である。投影対物レンズの射出瞳内の波面誤差が回転対称である場合には、像誤差は、回転対称であるといえる。波面誤差という用語は、収差のない理想的な波面からの光学波面の偏位を意味する。回転対称像誤差は、例えば、個々の光学素子を光軸に沿って移動することによって少なくとも部分的に補正することができる。
【0008】
回転対称ではない像誤差の補正は、より困難である。そのような像誤差は、例えば、レンズ及びミラーが回転非対称に加熱されることによって発生する。この種の1つの像誤差は、非点収差である。
【0009】
回転非対称像誤差の主要原因は、光学素子が回転非対称に加熱されることにある。
【0010】
例えば、スキャナ型の投影露光装置では、マスク上の照明視野は、通常、スリット形状である。スリット形の照明視野により、視野平面の近くに配置された光学素子が不均一に加熱される。同様に、かかるスリット形状の照明視野により、視野平面の近くに配置された光学素子も不均一に加熱される。この加熱により、光学素子が変形し、レンズ及び屈折型の他の素子の場合には、屈折率が変化する。屈折光学素子の材料又はミラー基板の材料は、高エネルギーの投影光に対して繰返し露光されると、恒久的な材料変化も生じうる。例えば、場合によっては投影光に露光された材料の圧密化が発生する。屈折性光学素子の場合には局所的且つ恒久的な屈折率の変化が生じ、ミラー基板の場合には基板の表面形状が局所的且つ恒久的に変化しうる。これとは別に、非常に複雑且つ高価な、EUVミラーの反射性多層コーティングが、局所的な高輝度により損傷を受けて、反射率が局所的に変更されうる。同様のことが、レンズ及びその他の屈折性光学素子の光学表面に対して一般的に適用される反射防止コーティングについてもいえる。
【0011】
回転非対称加熱に対する別の主要原因は、照明系の瞳平面が、回転非対称方式で照明される特定の非対称照明設定である。そのような設定における重要な例は、瞳平面内で2つの極のみが照明される双極設定である。そのような双極設定では、投影対物系における瞳平面も同様に2つの強く照明される照明領域を含む。従って、瞳平面内又はその近くに配置されたレンズ又はミラーは、回転非対称な強度分布に晒され、それによって回転非対称像誤差が増大する。同様に四重極設定も、双極設定よりも弱い程度にではあるが、多くの場合に回転非対称像誤差を生じる。
【0012】
概して、熱による変形、屈折率及び反射率の変化、並びにコーティングの損傷により、光学素子の光学特性が変更されて、像誤差の原因となる。場合によっては、熱により引き起こされた像誤差は、二回転対称である。しかし、例えば、三回転対称、四回転対称のような他の対象性を有する像誤差も投影対物レンズ内において頻繁に観察される。
【0013】
米国特許第6,338,823号では、回転非対称像誤差を補正するために、レンズの外周に沿って配置された複数のアクチュエータを利用して選択的に変形することができるレンズが提案されている。レンズの変形は、熱誘起の像誤差が少なくとも部分的に補正されるように決定される。しかし、レンズが変形された場合、必然的に、レンズの両光学表面が変形されることを伴う。通常、各レンズ表面によって引き起こされる影響は、ある程度相殺し合い、有意な変形のみが像誤差を所望の通りに補正する。
【0014】
このような理由のために、像誤差を修正するために変形可能なミラーを用いることが提案されてきた。屈折性光学素子を使用できないEUV装置では、いずれにせよ、全ての変形可能な光学素子はミラーでなければならない。マイクロリソグラフィ装置用の変形可能なミラーは、例えば、米国特許第6,897,940号や第5,986,795号に開示されている。
【0015】
米国特許出願公開第2010/0201958号、及び米国特許出願公開第2009/0257032号は、液体層により相互に分離した2つの透過性光学素子を備える補正装置を開示している。上述した米国特許第7,830,611号とは対照的に、光学素子の変形によらず、屈折率を局所的に変更することで、波面補正を実施する。このために、縞状の加熱領域が光学表面の全域に渡って設けられている。液体により、光学素子の平均温度が確実に一定に保持される。また、ミラーの反射表面上又は後部に加熱素子を設けても良い。このような装置は高次の波面誤差を良好に補正することができるが、構造が非常に複雑であり、従って高価である。
【0016】
国際公開第2004/092843号は、補正光をミラーの反射表面に方向づけるEUV投影対物レンズ用の補正装置を開示する。補正光は、反射表面付近における温度を、ミラー表面の熱膨張係数がゼロとなる温度に近づけるように調節される。
【0017】
欧州特許出願公開第0 532 236号は、EUV投影対物レンズ用の他の補正装置を開示する。一つの実施形態では、赤外線照射を対物レンズのミラーのうちの一つに向ける。赤外光は、高エネルギーEUV投影光が衝突した後であっても、ミラーの形状が略変形しないように調節される。他の実施形態では、加熱又は冷却素子をミラー支持に統合して、同様の効果を生じさせている。
【0018】
米国特許第6,504,597号は、レンズ又はミラーの周縁表面を経て、すなわち、円周面を経て、加熱光がかかるレンズ又はミラーに対して入射(couple)する補正装置を提案している。単一の光源によって生成された加熱光を、光学素子の周縁上の様々な位置に誘導するために、光ファイバを用いることができる。また、かかる装置は光学素子の温度分布を均一化するためだけにではなく、他の光学素子で引き起こされる波面誤差を修正するために用いることができる。かかる装置により、非常に密に積層された光学素子をも加熱することが可能になるが、かかる装置では、比較的粗い温度分布を達成できるに過ぎない。非常に僅かであると共に、強く発散した加熱光ビームを光学素子に対して入射させることができるに過ぎないため、より複雑な温度分布を達成することはできない。
【発明の概要】
【0020】
1.集束光学素子
従って、構造がシンプルであるにもかかわらず、より高次の波面誤差を補正することが可能な、変形可能ミラーを有する補正装置を備えるリソグラフィ装置が必要とされている。
【0021】
本発明によれば、かかる課題は、照明系と、基板上に投影光を用いてパターンを結像するように構成された投影対物レンズとを備えるマイクロリソグラフィ装置により解決することができる。かかる装置、特にその投影対物レンズは、波面補正装置を備え、該波面補正装置は、前側表面、後ろ側表面、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面を有するミラー基板を含むミラーを備える。更に、かかるミラーは、前記ミラー基板の前記前側表面によって支持される反射性コーティングを備え、前記反射性コーティングは衝突する投影光を反射するように構成されている。波面補正装置は、更に、第1加熱光を前記周縁表面の第1の部分に向けて、少なくとも一部の前記第1加熱光が前記ミラー基板に入射するようにする第1光学系と、第2加熱光を前記周縁表面の前記第1の部分とは異なる第2の部分に向けて、少なくとも一部の前記第2加熱光が前記ミラー基板に入射するようにする第2光学系と、を備える。前記第1及び第2加熱光が前記ミラー基板により部分的に吸収されることに起因する温度分布は、結果的にミラーを変形させ、かかる変形により、特に、少なくとも部分的には波面誤差が補正される。そして、少なくとも前記第1光学系が、前記第1加熱光を焦点領域にて集束させて、前記焦点領域から出た前記第1加熱光を前記周縁表面の前記第1の部分に衝突させるように構成された集束光学素子を含む。
【0022】
本発明は加熱光を用い、ミラー基板内において温度分布を生成するために電線又は液体を使用しないので、本発明による装置は、寄生効果を生じさせ得るいかなる素子も必要としない。そして、加熱光は周縁方面を介してミラー基板に入射されるため、入射角を小さく保つとともに周縁表面上に反射防止コーティングを適用することが可能となるので、加熱光の大部分をミラー基板に入射させることが可能となる。
【0023】
ミラー基板に複雑な変形を生じさせることもできるようにするため、(少なくとも時間平均において)輝度を個別に調節することができる多くの加熱光ビームを生成することが必要である。各加熱光ビームの数が大きくなるほど、ミラー基板内にて加熱光源に戻る経路上で内部反射又は散乱する加熱光が多くなる。しかし、例えば、レーザ、レーザダイオード、又はLEDの様な、多くの適切な種類の光源の操作及び安定性は、照射された光が反射されて光源に戻る場合に明らかに低くなる。これにより、光源が損傷を受けるか、或いは完全に故障することさえある。
【0024】
発射された加熱光のうちの有意な量が反射されて光源に戻ることを予防するために、本発明による補正装置は、収束光学素子を備えて、これにより、ミラー基板に入射する加熱光が焦点領域から出るようにする。このことにより、焦点領域を通過した光のみを確実に光源に戻すことができるようになる。散乱又は内部反射された加熱光は、通常、焦点領域を通過するようにミラー基板を出ることができないため、光源を反射された加熱光から非常に効果的に保護することができる。
【0025】
焦点領域を設けることで、光学特性がよく定義されている点又はライン光源を得ることができる。これらの有効な光源は、ミラー基板の非常に近くに配置することが可能であり、補正装置に必要な空間体積を小さくすることができる。さらに、そのような点又はライン光源から発せられた加熱光は扇状に広がる加熱光ビームを生成する。2つ、2つ、又はそれ以上の扇状の加熱光ビームがミラー基板内で重なりあえば、加熱光ビームによりミラー基板の中心部分が非常に良好に被覆されうる。
【0026】
最初に広がった扇状の加熱光ビームが円柱状の周縁表面によりコリメートされれば、より一般的には、ミラー基板が配置された位置の面にて周縁表面の第一部分が凸状であれば、被覆が良好となる。このことは、少なくとも第1加熱光がミラー基板に入射した後にミラー基板内をコリメート光として伝播さえすれば、達成することができる。このことは、ミラー基板の中心部分を確実に加熱光ビームにより均一にカバーすることができるので、多くの場合有利である。
【0027】
少なくとも第1光学系が、焦点領域が位置する開口を有するブラインドを備えれば、反射又は散乱した加熱光から光源を一層良好に保護することができる。そして、反射又は散乱された加熱光を遮断するのは、収束素子(或いは厳密にいえばその周縁又は台(マウント))ではなく(だけでなはく)、ブラインドである。
【0028】
加熱光が入射する、周縁表面の少なくとも第1の部分は、少なくとも、該第1の部分を含む湾曲面となっており、ミラーの対称軸を含む。そして、周縁表面は、例えば、かかる面にて加熱光をコリメートするために用いられうる、かかる面における光パワーを有する。特に、周縁表面はトロイド状の表面であってもよく、この場合、ミラー基板は、例えば、バレル状である。また、周縁表面は、複数の平坦な表面から構成されていてもよく、この場合、ミラー基板の断面は矩形又は多角形となる。
【0029】
補正装置は、加熱光を発するように構成された光源と、前記光源から発せられた前記加熱光を前記第1加熱光及び前記第2加熱光とに分割するビームスプリッターとを備えてもよい。換言すれば、加熱光をミラー基板の周縁表面に向ける2つ又はそれ以上の光学系に対する加熱光の供給には、1つの光源を用いることができる。そのような実施形態では、レーザを光源として用いることができる。
【0030】
第1、第2、及び更なる光学系についてそれぞれ光源を設けることも想定できる。この場合、第1光学系が、前記第1加熱光を生成するように構成された一つの第1光源を備え、第2光学系が前記第2加熱光を生成するように構成された一つの第2光源を備える。
【0031】
光学系が専用の光源を有するか共通の光源を共有するかにかかわらず、少なくとも第1光学系が前記第1加熱光の輝度を空間分解的な態様で(好ましくは連続的に)変更するように構成された空間光変調器を備え、該空間光変調器によりそれぞれ輝度が変更された、複数の第1加熱光ビームを生成可能であれば、有利である。第1加熱光を複数の第1加熱光ビームに分割することで、光ビームの数を光学系の数に等しい数だけでなく、かかる数を相当大きく、数倍にすることが可能となる。例えば、空間光変調器が10又は100、或いは1000の個別の加熱光ビームを生成した場合、3つの光学系を備える補正装置は、それぞれ、30、300、又は3000の加熱光ビームを生成することができ、各加熱光ビームは種々の方向に沿ってミラー基板を通過する。従って、非常に複雑な温度分布を生成することが可能となる。
【0032】
一実施形態では、空間光変調器はビーム偏向素子の配列を備え、各ビーム偏向素子は、衝突した第1加熱光を制御信号に応じて変更可能な偏向角度にて偏向させるように構成されている。そのようなビーム偏向素子は、傾斜可能なマイクロミラー又は光音響効果を利用した透明素子により形成することができる。
【0033】
他の実施形態では、空間光変調器は大きさ及び/又は透過率が制御信号に応じて独立して変更可能な複数の開口を有する可変ブラインドを備える。
【0034】
さらに他の実施形態では、空間光変調器は反射表面と、反射表面の空間方向を変更するように構成されたドライバを備える。この場合、複数の第1加熱光は同時に生成されず、一種の走査構成において連続的に生成される。
【0035】
1つの光源及び空間光変調器を設けることに変えて、それぞれが第1加熱光ビームを生成するように構成されている複数の光源を備える第1光学系を有するようにすることも可能である。
【0036】
少なくとも1つの第一光源は、輝度を独立して変更可能なLEDである。
【0037】
前記少なくとも一つの第1光源は、レーザダイオードである。さらに、前記第1光学系は、第1光源により発せられた前記第1加熱光ビームの輝度を独立して変更するように構成されている光変調器を備える。
【0038】
少なくとも第1光学系は、第1加熱光がミラー基板を通過した後に反射する反射表面を備えることができる。かかる反射表面は、周縁表面に適用された多層コーティング、ミラー基板から離間して配置された基板に対して適用された多層コーティング、又はプリズムの表面により形成可能である。加熱光をミラー基板に戻すように導くことで、光損失を低減して、これにより補正装置の効率を向上させることができる。
【0039】
反射表面にて反射される加熱光が光源に戻らないようにするために、反射表面を反射光の方向が入射光の方向とは異なるように配置することができる。このことは、例えば、湾曲した反射表面か、或いは平坦な表面に対して加熱光が垂直に入射しないように僅かに傾斜された平坦な表面により達成することができる。
【0040】
反射光の方向は入射光の方向とは、非常に小さな角度で、例えば、180.05°〜185°の範囲(角度180°は反射表面における光伝播方向の反転である)の角度で異なりうる。
【0041】
第1光学系は、第1加熱光を偏向させるように構成されたビーム偏向素子を備え、前記集束光学素子が前記ミラー基板の周縁表面の完全に上又は完全に下に配置することができる。このことは、光偏向素子に加熱光が入射した際に加熱光が伝播する面は、加熱光がミラー基板内を伝播する際の面に対して平行であることを示唆しうる。例えば、ビーム偏向素子は、光学軸に対する角度が45°である傾斜表面を有するプリズムにより形成されうる。ミラー基板の周縁表面が円錐角45°の円錐状である場合には、加熱光の伝播経路は、全内部反射により2回ほど90°屈折されるので、伝播経路を軸方向から移動させることができる。
【0042】
集束素子及びミラー基板は、特に、円柱レンズの場合、面において、両方とも正レンズとしての光学効果を有する。ミラーが投影対物レンズ内に配置された場合、ミラー基板は2つの光学系、特に、投影光を導光する投影対物レンズ及び加熱光が通過する補正装置の一部を構成する。
【0043】
その場合、収束素子の全体積は、ミラー基板の全体積よりも小さく、例えば、少なくとも1/100、好ましくは少なくとも1/300である。
【0044】
第1加熱光は、第1の面を伝播し、前記第2加熱光は、第2の面を伝播し、前記第1及び第2の面は、同一であるか、相互に平行である。これらの面が別の配置であることも可能であり、例えば、これらの面が互いに交差する、又は交差しない傾斜配置であってもよい。
【0045】
集束光学素子がただ一つの方向において集束力を有するか、或いは2つの直交する方向において集束力を有するかに応じて、焦点領域は、それぞれ、焦点又は焦線となりうる。集束素子が1つの方向のみにて集束力を有する場合には、円柱レンズ又は円柱ミラーとして集束素子を形成することができる。
【0046】
第1加熱光及び第2加熱光(HL2)は、中心波長が0.4μm〜3μmであり、投影光の中心波長は5nm〜50nmである。ガラスが有意量のチタンを含有する場合、すなわち、例えばZerodur(登録商標)又はULE(登録商標)がミラー基板に用いられる場合、第1加熱光及び第2加熱光は中心波長が0.4μm〜0.8μmである。これらの波長では、ミラー基板用のTiドープ材料の透過率係数が低く、十分な割合の加熱光が吸収される。
【0047】
Ti濃度が十分に均一ではない場合、その変動を考慮して第1及び第2加熱光の輝度を決定することができる。
【0048】
一般に、第1加熱光及び第2加熱光は、中心波長が異なるが、多くの場合、中心波長が等しい第1及び第2加熱光を使用することが好ましい。
【0049】
第1及び第2の加熱光を部分的に吸収することによるミラー基板の変形は、概して、波面誤差が少なくとも部分的には補正されるように決定する。波面誤差の補正は、波面誤差を表現するために用いたゼルニケ係数の自乗平均根(RMS)が小さくなるようにすることを意味する。しかし、いくつかの場合には、RMSを低減するのではなく、他のマニピュレータ又は補正装置により、比較的容易に補正可能なように波面誤差を変更することが賢明でありうる。そのような波面誤差の変更は、結果的にRMSを大きくすることもあるが、他の手段により波面誤差をさらに低減することができるようになる。例えば、非常に非対称的な波面誤差のRMSが小さい場合に、RMSは大きいが、ミラー全体を移動させることができるマニピュレータにより容易に補正可能な、回転対称の波面誤差に変換する。
【0050】
一実施形態では、第1光学系は前記ミラー基板を出た後の第1加熱光ビームの光量変化を測定するように構成されている第1光検出器を含む。同様に、前記第2光学系は、前記ミラー基板を出た後の前記第2加熱光ビームの光量変化を測定するように構成されている第2光検出器を含む。これにより、第1及び第2の加熱光ビームを生成する光源が正常に機能していることをモニタリングすることが可能となる。
【0051】
この場合、装置は、前記第1及び第2検出器により検出された光量変化に応じて、前記第1光学系及び前記第2光学系を制御するように構成された制御ユニットも備えることができる。これにより、ミラー基板内にて所望の温度分布を一層正確に生成することが可能となる。
【0052】
他の実施形態では、少なくとも前記第1光学系は、投影対物レンズの外部に配置された第1光源からの前記第1加熱光を前記集束光学素子に導くように構成された光ファイバを備える。このように、第1光源が投影対物レンズの外部には位置されていれば、投影対物レンズ内に配置された故障した光源を取り外す必要が無く交換ができるようになるため、有利である。
【0053】
さらに他の実施形態では、補正装置は、前記ミラー基板を能動的に冷却するように構成された冷却システムを備える。これにより、中立的な熱バランスを維持することができ、ミラー基板内部における熱分布を迅速に変化させることができるようになる。
【0054】
基本的に、ミラーは投影対物レンズにより表面上に結像されるパターンを支持している。そして、マスク自体が補正装置を形成する。かかる観点によれば、本発明の要旨構成は、反射性マスクであって、前側表面、後ろ側表面、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面を有するミラー基板を含むミラーと、前記ミラー基板の前記前側表面によって支持され、投影対物レンズの結像面上に結像されるべきパターンを形成する反射性コーティングとを有するマイクロリソグラフィ装置に関するものである。光源は、加熱光を発するように構成されており、光学系がかかる加熱光を周縁表面の一部分へと導く。
【0055】
2.浸漬ミラー基板
本発明の主題は、マイクロリソグラフィ装置の投影対物レンズであって、当該投影対物レンズは、投影光を用いて投影対物レンズの結像面上にマスクを結像するように構成されていることを特徴とする。投影対物レンズは、波面補正装置であって、前側表面、後ろ側表面、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面を有するミラー基板を含むミラーと、かかるミラー基板の前側表面によって支持される、衝突する投影光を反射するように構成された反射性コーティングとを備える。波面補正装置は、更に、加熱光を発して、周縁表面上に加熱光を衝突させるように構成された光源を備える。ミラー基板と光源との間の空間は液体、固体、又はゲル又はペーストの様な固体である光学媒体により充填される。かかる光学媒体はミラー基板と屈折率が近いことが好ましい。特に、光学媒体とミラー基板との屈折率比は22℃で0.80〜1.1である。
【0056】
例えば、光学接着材により形成されうる光学媒体にミラー基板を浸漬することで、周縁表面における屈折を抑制、或いは少なくとも顕著に低減することができる。これにより、特に、周縁表面が円柱状である場合に、加熱光をミラー基板に入射させることが簡易になる。例えば、複数のLED又はレーザダイオードを備える真っすぐなバーは、平行な加熱光ビームを発するが、これらの加熱光ビームは本質的にコリメート光であるため、かかる性質はこれらがミラー基板に入射した後も維持される。
【0057】
3.フレネルレンズ周縁部
本発明の主題は、マイクロリソグラフィ装置の投影対物レンズであって、当該投影対物レンズは、投影光を用いて投影対物レンズの結像面上にマスクを結像するように構成されていることを特徴とする。投影対物レンズは、波面補正装置であって、前側表面、後ろ側表面、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面を有するミラー基板を含むミラーと、かかるミラー基板の前側表面によって支持される、衝突する投影光を反射するように構成された反射性コーティングとを備える。波面補正装置は、更に、加熱光を発して、周縁表面上に加熱光を衝突させるように構成された光源を備える。加熱光が衝突する周縁表面の一部分は、少なくとも一方向に沿って屈折力を有するフレネルレンズとして形成されている。
【0058】
かかる方途によれば、加熱光をミラー基板に入射させることが容易となる。周縁表面上に直接形成された従来のレンズとは対照的に、フレネルレンズは、光パワーを有意に強化することができる。
【0059】
4.ミラー基板内の凹部又は孔
本発明の主題は、マイクロリソグラフィ装置の投影対物レンズであって、当該投影対物レンズは、投影光を用いて投影対物レンズの結像面上にマスクを結像するように構成されていることを特徴とする。投影対物レンズは、波面補正装置であって、前側表面、後ろ側表面、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面を有するミラー基板を含むミラーと、かかるミラー基板の前側表面によって支持される、衝突する投影光を反射するように構成された反射性コーティングとを備える。波面補正装置は、更に、加熱光を発して、周縁表面上に加熱光を衝突させるように構成された光源を備える。ミラー基板は、内部に光源を配置することができる、孔、穴、又は凹部を有し、これにより、加熱光がミラー基板に垂直に入射することができるようになる。
【0060】
かかるアプローチによれば、周縁表面における光損失を最小化し、反射防止コーティングを適用することを省略することさえできる。さらに、少なくとも40°の角度範囲で加熱光ビームを発するように構成された光源を用いることが可能となる。
【0061】
5.空間光変調器
本発明の主題は、マイクロリソグラフィ装置の投影対物レンズであって、当該投影対物レンズは、投影光を用いて投影対物レンズの結像面上にマスクを結像するように構成されていることを特徴とする。投影対物レンズは、波面補正装置であって、前側表面、後ろ側表面、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面を有するミラー基板を含むミラーと、かかるミラー基板の前側表面によって支持される、衝突する投影光を反射するように構成された反射性コーティングとを備える。波面補正装置は、更に、加熱光を発して、周縁表面上に加熱光を衝突させるように構成された光源を備える。波面補正装置は、更に、光源により生成された加熱光を周縁表面上の異なる位置に向けるように構成された空間光変調器を備える。
【0062】
空間光変調器を備えることで、LEDやレーザダイオードの様な多数の個別光源の設置を省略することができるようになる。代わりに、ただ1つ或いは非常に少ない数の強力な光源を用いて、空間光変調器を用いて加熱光を個々の加熱光ビームに分割するような構成とする。このような構成は、例えば、走査設定において、種々の加熱光ビームが空間光変調器によって同時にではなく連続的に生成されるような場合を包含する。このような場合に、空間光変調器は、反射表面と、かかる反射表面の空間方向を変更するように構成されたドライバとを備える。
【0063】
6.ミラー基板周縁上の反射表面
また、本発明の主題は、マイクロリソグラフィ装置の投影対物レンズであって、当該投影対物レンズは、投影光を用いて投影対物レンズの結像面上にマスクを結像するように構成されていることを特徴とする。投影対物レンズは、波面補正装置であって、前側表面、後ろ側表面、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面を有するミラー基板を含むミラーと、かかるミラー基板の前側表面によって支持される、衝突する投影光を反射するように構成された反射性コーティングとを備える。波面補正装置は、更に、加熱光を発して、周縁表面上に加熱光を衝突させるように構成された光源を備える。反射表面は、ミラー基板を通過した加熱光の少なくとも70%を反射し、かかる加熱光を再度ミラー基板に通過させる。
【0064】
これにより、より多くの加熱光がミラー基板により吸収されるようにして、波面補正装置の効率を向上させることができる。
【0065】
反射表面は周縁表面上の反射コーティングとして形成されるか、或いはミラー基板の外部に配置される。
【0066】
7.熱膨張による影響の低減
ここまで、特に、波面誤差を補正するために、いかにしてミラー基板内において特定の温度分布を生成するのかということについて説明してきた。しかし、ミラー基板の周縁表面に向けられた加熱光によりミラー基板の内部に2D又は3Dの温度分布を生成する性能は、前段でも述べたかもしれないが、望ましい場合、熱に起因する波面誤差の発生を全体的に予防するために役立つ。初めに述べたように、熱に起因する波面誤差は、ミラーの反射コーティングにて投影光が吸収された結果として主に生じるものである。従って、ミラー基板内においてあらゆる任意の温度分布を生成することができるという性能は、ミラーによってどのくらいの投影光がどの位置にて吸収されたかということに関わらず、一定の温度分布を維持するために用いることができる。
【0067】
従来、ミラー基板材料としてはガラスが用いられてきた。これらのガラスは、ミラーの動作波長では熱膨張係数が非常に小さいか又はゼロである。このようなガラスは、多様な供給元から市販されている。例えば、コーニング社からはULE(登録商標)というブランド名で、スコット社からはZerodur(登録商標)というブランド名でそれぞれ販売されている。これらのガラスは、ミラーの動作波長にてちょうど熱膨張係数がゼロとなるように製造されている。そして、僅かな温度変化によって熱膨張や収縮が生じることは無い。これにより、温度変化が特定の限界値を超えない限りにおいて、ミラー基板の形状を確実に変更させないようにすることができる。
【0068】
しかし、そのようなガラスメーカーによる考慮に値する努力にもかかわらず、完全に均一な特性を有するガラスブランクを製造することは難しい。特に、熱膨張係数がゼロとなる、或いは熱膨張係数が略最小となる温度は、ガラスブランクの体積にわたり僅かに変化する。そのようなブランクをミラー基板の製造に用いれば、ミラー基板全体に同じ温度が印加されたとしても、温度変化により局所変形が生じる虞がある。
【0069】
従って、本発明の目的は、不均一なガラス特性により生じる、熱に起因する不所望な変形をいかに回避しうるかという方法を提供することにある。
【0070】
本発明によれば、かかる目的は以下のステップを含むマイクロリソグラフィ装置の操作方法により達成することができる。それらのステップは、
a)ミラー基板及びかかるミラー基板に適用された衝突した投影光を反射するように構成された反射性コーティングを有するミラーを備える投影対物レンズを準備するステップ、
b)ミラー基板の第1の位置にて、熱膨張係数の絶対値が最小となる第1の温度を測定するステップ、
c)熱膨張係数の絶対値が最小である、(第1の温度とは一般的に異なる温度である)第2の温度を、ミラー基板上における、第1の位置とは異なる第2の位置にて測定するステップ、及び
d)ミラー基板内における温度分布を変化させて、第1の位置における温度が第1の温度に等しくなるようにして、第2の位置における温度が第2の温度に等しくなるようにするステップである。
【0071】
本発明は、熱膨張係数の絶対値が最小である温度分布を測定することができる場合に、好ましくはミラー基板を加熱光によって照射して少なくとも熱膨張係数の絶対値が最小となる温度の分布と少なくとも実質的に一致する温度分布を生成することができるという認識に基づくものである。そして、ミラー基板内の各点において、温度変化に起因する変形が確実に最小限となるように温度が広がるので、反射コーティングによって吸収された投影光により温度分布が変化した場合に、ミラー基板が変形しないか、或いは少なくとも変形が最小限に抑えられる。ミラー基板が熱膨張係数がゼロとなる温度を有する場合、温度変化を所定範囲に維持することができれば、全く変形が生じないようにすることすら可能である。特筆すべきは、熱膨張係数がゼロとなる温度が、ミラー基板の体積にわたって変化するような場合であっても、このことが成り立つことである。
【0072】
上述したように、温度分布は、好ましくは、上記ステップd)にてミラー基板を加熱光により照射することにより変更される。しかし、原理的には、冷却手段或いはその他の加熱手段により加熱を実現するように構成することも可能であり、例えば、ミラー基板内に設けられた孔を通じて延在する加熱ワイヤによって加熱するように構成することができる。加熱光は、好ましくは中心波長が投影光の中心波長とは異なり、上記ステップd)において反射コーティングを支持するミラー基板の前側表面と後ろ側表面との間に延在するミラー基板の周縁表面上に向けられることが好ましい。
【0073】
3D温度分布をミラー基板内で生成可能とするために、第1のセットの加熱光ビームを周縁表面に向けて、第1の面にて加熱光にミラー基板を通過させることができる。第2のセットの加熱光ビームを周縁表面に向けて、第1の面とは異なる第2の面にて加熱光にミラー基板を通過させることができる。換言すれば、加熱光ビームを異なる面に配置することで、ミラー基板内の単一の面のみにおいて加熱するのではなく、より大きな部分、或いは全体すら加熱することができるようになる。
【0074】
上記ステップd)に定義したような温度分布を生成するために、ステップc)及びd)の間にミラー基板の温度分布を測定することが好ましい。これは、第1及び第2の温度が実際に達成されているか否かを確認することができなければ、ステップd)において特定の温度分布を設定することが困難となりうるからである。3D温度分布を測定するためには、例えば、1台又は複数台の熱カメラを用いることができる。反射コーティングの熱画像から、ミラー基板内における3D温度分布を導きだすことができる。
【0075】
[定義]
用語「光」は、電磁放射、具体的には、可視光、UV光り、DUV光、VUV光、及びEUV光を意味する。
【0076】
用語「光線」は、本明細書では伝播パスを線で表現可能な光を意味する。
【0077】
用語「光ビーム」は、本明細書では、実質的にコリメートされている複数の光線を意味する。光線は、通常、ビームの径方向において実質的に連続的な輝度プロファイルを有する。
【0078】
用語「表面」は、本明細書では、三次元空間内にて平坦又は湾曲した表面を意味する。表面は、本体の一部として、或いは本体からは完全に分離して存在しうる。
【0079】
用語「光学的に共役」は、本明細書では、2つの点又は2つの表面の間における結像関係を意味する。結像関係とは、ある点から発せられた光束が光学的に共役な点にて集束することを意味する。
【0080】
用語「視野面」は、本明細書では、マスク面に対して光学的に共役な平面を意味する。
【0081】
用語「瞳面」は、本明細書では、マスク平面又はその他の視野面を通過する周辺光線が交差する面を意味する。本技術分野では、用語「瞳面」は、実際に数学的な意味における平面ではなく、僅かに湾曲しており、厳密な意味では、瞳表面として称されるべきものである。
【0082】
用語「光パワー」は、本明細書では、光に対する拡散又は集束効果を有する光学素子の性能を表現するために用いる。光パワーが正である光学素子は、集束効果を有し、光パワーが負である光学素子は拡散効果を有する。光パワーを有する光学素子は屈折型、反射型、或いは回折型でありうる。
【0083】
本発明の様々な特徴及び利点の理解を容易にするために、添付の図面を参照して以下において詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0085】
[I.投影露光装置の概略構成]
図1は、本発明に従う投影露光装置10の斜視図であり、高度に概略化した図である。装置10は、マスク14の下側に配置された反射構造12のパターンを、例えば、フォトレジストにより形成された感光層16上に結像するように機能する。感光層16は、ウェハーステージ(
図1には示さない)により保持されている、ウェーハ18或いはその他の適切な基板によって支持されている。
【0086】
投影露光装置10は、中心波長域が5nm〜30nmである投影光PLを生成するように構成されている光源LSを備える。図示した実施形態では、投影光PLの中心波長は約13.5nmであり、従って、極端紫外波長域(EUV)内である。具体的には、6.6nm〜6.8nmの間の波長域のような、その他の中心波長域を採用することも可能である。
【0087】
光源は、例えば、国際公開第2009/121438号に記載された自由電子レーザ(FEL)、又はレーザプラズマ源であり得る。投影露光装置10は、更に、照明システム20を備え、光源LSにより生成された投影光PLをマスク14の下側に導き、以下において照明視野24として称される視野を照明する。かかる視野は、図示した実施形態では、環状セグメントの形状を有している。
【0088】
投影露光装置10は、一定の時間に照明視野24内に配置される構造12を、感光層16上に結像する投影対物レンズ26を更に備える。投影対物レンズ26は、絶対値|β|<1である倍率βを有し、照明視野24の領域に配置された構造12の縮小像24’を感光層16上に形成する。
【0089】
投影露光装置10は、走査動作用に設計されており、走査中、感光層16を露光する間、マスク14はウェーハ18と同期して移動される。マスク14及びウェーハ18の移動動作は、それぞれ、
図1では矢印A1及びA2により示される。ウェーハ18のマスク14に対する速度比は、投影レンズ26の倍率βに等しい。図示の実施形態では、像24は正立(β>0)であるので、マスク14及びウェーハ19は露光走査中同じ方向に移動する。露光走査中、照明視野24は、走査のような方法でマスク14上を通過し、照明視野よりも僅かに広い領域が感光層16に対して転写されうる。
【0090】
図1では、照明視野24内の一点から発せられる光束28を示す。光束28は投影対物レンズ26に入射し、投影対物レンズ26は感光層16が配置された投影対物レンズ26の像面内の一点上に光束28を集束させる。構造12が配置された投影対物レンズ26の対物面内の視野点と、感光層16が配置された像面内の視野点との関係は、通常、結像関係或いは光学的共役関係として称される。
【0091】
光束28の投影対物レンズ26に入射する際の開口角は、対物側の開口数NAの指標である。倍率|β|<1であるので、投影対物レンズ26の像側開口数NAは倍率|β|の逆数だけ大きくなる。
【0092】
図2は、
図1に示す投影露光装置の部分の子午断面の概略図である。マスクステージ32は、マスクを保持し、投影対物レンズ26の対物面30内においてマスクを正確に移動させる。投影光PLは、照明システム20により導光され(本例では、斜入射ミラー34を介する)、マスク14で反射され、投影対物レンズ26に入射する。投影対物レンズ26には、6つのミラーM1〜M6が備えられており、投影光PLを感光層16に向けて反射させる。感光層は、投影対物レンズ26の像面36内に配置されると共に、ウェーハステージ38によって保持され、移動させられる。
【0093】
かかる実施形態では、ミラーM2は投影対物レンズ26の2つの瞳平面40、41のうちの最初の瞳平面内又はその付近に配置されている。かかる2つの瞳平面40、41は、相互に光学的に共役であり、さらに、照明システム20の瞳面とも光学的に共役である。瞳面40、41における角度は、像面36や、中間像面39のような他の視野面内における位置に変換される。同様に、瞳面40、41内における位置は、像面における角度に変換される。第2の瞳面41内には、開口絞りASが配置されている。
【0094】
[II.補正装置]
投影対物レンズ26は、波面誤差を補正するための補正装置42を含み、かかる補正装置42は、第1瞳面40内に配置されると共に、ミラーM2を含んでいる。補正装置42を通るXY面に対して並行である断面を
図3に示す。
図4に示す線IV−IVに沿う断面に良好に図示されているように、補正装置42を形成するミラーM2は、反射性多層コーティング47を支持する前側表面46と、かかる前側表面46の反対側に延在する後ろ側表面48とを有するミラー基板44を備えている。ミラー基板44は、2つの表面46、48の間に延在する周縁表面50を有している。かかる実施形態では、ミラーM2の光学特性の大部分を決定する前側表面46は、凸状に湾曲しており、後ろ側表面は平坦であり、更に、周縁表面50はトロイド状である。
【0095】
補正装置42は、更に、第1加熱光HL1を周縁表面50の第1の部分に対して導くように構成されている第1光学系OS1を備え、第1加熱光HL1の少なくとも一部をミラー基板44に入射させる。第2光学系OS2も、第2加熱光HL2を周縁表面50の異なる部分に対して導くように構成されており、第2加熱光HL2の少なくとも一部をミラー基板44に入射させる。補正装置42は、
図3の断面図にのみ図示する第3光学系OS3も有する。
【0096】
光学システムOS1、OS2、及びOS3は、光学系OS1、OS2、及びOS3による加熱光HL1、HL2、及びHL3の照射を制御する制御ユニット52(
図2参照)と通信する。
【0097】
図3に示す断面図を参照すると、第1光学系OSは、複数の第1加熱ビームHLB1を生成するように構成された第1光源54を含み、かかる複数の第1加熱光ビームHLB1の強度は、制御ユニット52から第1光学系OS1に対して適切な制御コマンドを供給することによって個別に変更することができる。このため、第1光源は、それぞれ一つの加熱光ビームHLB1を生成する複数の個別の光源を備えることができる。或いは、第1光源54は、単一の光照射装置と、かかる光照射装置によって照射された光を個別の加熱光ビームに分割する光分割手段を含んでも良い。各加熱光ビームHLB1は、例えば、一種の走査設定を用いて一つの光照射装置によって連続的に生成されても良い。
【0098】
第1光学システムOS1は、更に、光源54とミラー基板44との間の光路内に配置された円柱レンズ55を更に備える。円柱レンズ55は、XY平面内のみにおいて正の光パワーを有する。第1加熱光ビームHLB1は、光源54から並行光ビームとして照射され、円柱レンズ55の後ろ側焦点面内に配置された焦線(焦点領域)56において集束する。
【0099】
焦線56から出た第1加熱光ビームHLB1は、ミラー基板44の周縁表面50の一部分に衝突する。
図4に示すように、周縁面50は湾曲しているので、後ろ側表面48に直交する全ての面において正の屈折力を有する。反射防止コーティングを周縁表面50に塗布して、第1加熱光ビームHLB1が周縁表面50に当った際の反射を低減しても良い。
【0100】
周縁表面50では、第1加熱光ビームHLB1は、XY平面と、後ろ側表面48に直交する平面との両方において屈折する。XY平面における屈折を考慮すると、ミラー基板44の周縁表面50は、円柱レンズ55の円柱表面と同様の集束効果を有する。しかし、周縁表面50のXY平面における曲率は、円柱レンズ55の曲率よりも小さいため、ミラー基板44の正の屈折力も、円柱レンズ55の性の屈折力よりも小さい。円柱レンズの屈折力及び位置を厳密に選択することにより、ミラー基板44を通過した第1加熱光ビームHLB1が延在する角度を正確に定義することができる。
【0101】
図4に示すように、周縁表面50の後ろ側表面48に直交する平面における屈折力を用いて、僅かに拡散する各加熱光ビームHLB1をそれぞれの平面内においてコリメートすることができる。
【0102】
第1加熱光HL1の波長をミラー基板44の光学材料に適合させて、第1加熱光HL1のかなりの部分が光学材料により吸収されるようにする。吸収された加熱光HL1は、局所的な温度上昇につながり、さらには、ミラー基板44の変形を引き起こす。従って、ミラーM2に当った投影光PLは、加熱光HL1の吸収前の状態と比較して位相変化を伴う。かかる位相変化は、波面誤差を補正するために利用することができる。
【0103】
第1加熱光ビームHLB1、厳密には、ミラー基板44により吸収されなかったこれらの光線の一部分は、反対側の周縁表面50に当たり、再度反射される。第1加熱光HL1のこのような一部分は、外部的に冷却された吸収体プレート57により吸収されうる。或いは、第1加熱光HL1のこのような一部分は、透明窓(図示しない)を経て投影対物レンズ26外へと出て、投影対物レンズ26の熱平衡に寄与しない。
【0104】
反射防止コーティングが周縁表面50に塗布された場合であっても、第1加熱光HL1の一部分は、常に、後ろ側周縁表面50にて内部的に反射される。入射角に応じて、かかる一部分を考慮することができる。また、かかる内部的に反射された第1加熱光HL1は、ミラー基板44を再度通過する際に次第に吸収される。第1加熱光HL1の内部的に反射された部分は、第1加熱光HL1の一部分が内部的に反射された周縁表面50の他の部分に再度入射するなどする。また、材料内の不純物や欠陥において散乱が生じることで、第1過熱光の僅かな一部分が、ミラー基板44を通じて様々な未知の方向に伝播しうる。
【0105】
しかし、レーザ、レーザダイオード、又はLEDのような典型的な光源54は、照射窓を介してコンポーネント内に入射する光に対して非常に感受性が高い。そのような光の輝度が非常に低い場合であっても、短期的又は長期的に、コンポーネントの機能を深刻に損ない、或いは、コンポーネントに損傷を与える虞がある。
【0106】
円柱レンズ55や焦線56を備えることで、内部反射又は散乱した第1加熱光HL1が光源54内へと戻ることを効果的に抑制することができる。これは、狭い焦線56を通過することができる光線のみしか、光源54に入射することができないからである。
【0107】
基本的に、円柱レンズ55の大きさは可能な限り小さくて足る。しかし、円柱レンズ55の後ろ側焦点面内に、焦線56に対応する形状の開口を有する追加のブラインド58を配置することが、通常、より効果的である。ブラインド58は、焦線56を通過しない全ての光線を遮断する。このようにして、周縁表面50において散乱又は内部的に反射された加熱光から、光源54を非常に効果的に保護することができる。
【0108】
他の2つの光学系OS2及びOS3も同様に構成することができる。すなわち、これらは双方とも、光源54、円柱レンズ55、及びブラインド58を備える。これらの3つの光学系OS1、OS2、及びOS3は第1瞳面40内にて三回対称性を有するように配置されるので、相互に120°離間して配置されている。かかる構成により、ミラー基板44内の中心部60において、光学系OS1、OS2、及びOS3によりミラー基板44へと導かれた加熱光HL1、HL2、及びHL3の扇状部分が完全に重複する。従って、かかる中心部60では、当該中心部60を通過する各加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3の輝度を個別に制御することで、広域の温度分布を生成することができる。
【0109】
本実施形態では、ミラー基板44は、小さなギャップにより、装置10の動作中に冷媒が中を誘導される複数の冷却チャネルを含む冷却体59から分離されている。冷却体59は、銅のような金属製であり、相当量の加熱光が吸収された場合であっても、ミラー基板44の平均温度(すなわち、正味の熱平衡)をほぼ一定に維持することを確実にするヒートシンクとして機能する。
【0110】
補正装置42の組み立て中に、上述した光学部品の調整を容易にするために、光学部品が可視スペクトル域である調整波長に対して収色性となるように設計することが好ましい。配置された光源により生成された可視光を用いた調整中、加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3の経路は、例えば、加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3がミラー基板44から出る位置にてテストされる。
【0111】
より簡易であるが利便性の低い方法としては、調整プロセスにて、加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3の影響下で色が変わる特別なフィルムを用いることが挙げられる。
【0112】
[III.補正装置の制御]
第1のステップでは、補正装置42を用いて補正すべき波面誤差は、シミュレーション及び/又は測定により決定される。測定は、投影対物レンズ26の像面36内に形成された空中像を、干渉波面測定装置により検出することを含む。測定された波面の理想的な波面からのずれは、補正対象となる波面誤差として考慮される。
【0113】
補正装置42は、第1瞳面40内に配置されているので、異なる視野点に関連する波面にも同様に影響する。視野に依存する波面誤差を補正することが望ましい場合、補正装置42を瞳面40、41の外部に配置するか、或いは、第2の補正装置を視野面内又は視野面に近接して、例えば、中間視野面39に設けることが必要である。
【0114】
波面誤差及び必要な補正を決定したら、既に確率されている最適化アプローチを用いて各加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3の輝度を計算することができる。この点に関して、以下のステップが実行されうる。
【0115】
第1のステップでは、加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3がミラー基板44の中心部60を通過する場所を決定しなくてはならない。
【0116】
第2のステップでは、第1、第2、及び第3加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3についての吸収を測定する必要がある。通常、加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3は、3つの光学系OS1、OS2及びOS3によってそれぞれ生成され、中心波長は同一である。この場合、ミラー基板44の材料の吸収係数は、全ての加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3について等しくなる。同一種類のガラスからなるガラスブランクでさえ、僅かに異なる成分を含有し、それにより、加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3に対する吸収係数が僅かに異なるため、吸収係数は特定のミラー基板44について測定されることが好ましい。ミラー基板がガラス製又はULE(登録商標)のようなガラスセラミック製の場合、吸収係数はチタン濃度に強く依存する。かかる濃度は、ブランク内にて完全に均一ではないので、様々な光線経路について吸収係数を測定して、それらの測定値を保存して後の計算ステップにて使用できるようにすることさえ必要となる。
【0117】
次のステップでは、例えば、65×65、201×201、又は1001×1001(平方)ピクセル等の、ピクセル配列によって形成される計算フィールドを定義する。ミラー基板44の中心を通る一つのピクセル(列)を計算により配置することができるので、X及びY方向のピクセル数が奇数であることが有利である。ピクセル数が多くなる程、光学波面に対するミラー基板44の影響の計算の確度を高めることができる。しかし、ピクセル数が多くなるにつれて、計算に要する時間が長くなり、さらにはノイズに対する感受性のような安定性の問題さえ発生しうる。従って、ピクセルフィールド内のピクセル数に関して合理的な折衷案を見出すことが必要である。
【0118】
かかるピクセルフィールドでは、ミラー基板44の円周(circular circumference)は、計算により配置される。かかる計算上の周縁表面では、各加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3がミラー基板44に入射する位置と、反射性光学素子44内における伝播方向とが決定される。
【0119】
ここで、各加熱光ビームHLB1,HLB2、及びHLB3を、ミラー基板44の中心部60を通過する波面に影響を与えるマニピュレータとして考える。そして、既に確立されている最適化手法を用いて、各加熱光ビームの輝度を決定して、光学波面に対して所望の影響を与える。このために、各加熱光ビームについて以下の手順を実行する。
【0120】
まず、基本の輝度及びかかる輝度が維持される基本時間を、出発点として決定する。そして、ピクセルフィールドのいずれのピクセルについて完全に又は部分的に特定の加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3を作用させるかを決定する。加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3を作用させる各ピクセルについて、加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3の残留輝度を計算する。かかる残留輝度は、初期輝度、ミラー基板44の吸収係数、及びミラー基板44内における幾何学的な経路長に依存する。上述したように、吸収係数は、加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3に関連する特定の光線経路に依存しうる。かかる残留輝度及び吸収係数に基づいて、特定のピクセルにおいて熱として放熱されるエネルギー量が計算される。
【0121】
ここで、特定の加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3によって生成される温度プロファイルは、特定のピクセルにおいて吸収される熱量に基づいて計算する。ミラー基板44を常に冷却して、平均温度を一定に保った場合、かかる冷却効果も考慮する。また、時間に依存する効果(特にミラー基板44内における熱伝導)も考慮する。
【0122】
かかる温度プロファイルから、ミラー表面変形を計算し、特定の加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3に割り当てることができる。所望の態様で光学波面に作用するために必要な温度変化は、各加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3に関連した変形を計算するために線形モデルを利用可能な程度に小さいので、このようなことが可能である。かかるミラー表面変形に基づいて、光学設計プログラムを用いて特定の加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3の光学波面に対する影響を計算することができる。これに関連して、内挿計算によりピクセルフィールドの解像度を向上させることが有利でありうる。
【0123】
初歩的なマニピュレータとして見做すことができる各加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3による光学波面への影響を決定した後、最適化問題を解決して全ての加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3(及び、可能であれば、投影対物レンズ26に含まれる追加のマニピュレータ)の相互作用により波面誤差を所望に補正する必要がある。そのような最適化問題は既知である。例えば、この点について、特異値分解(SVD)又はチコノフ正則化(Tikhonov regularization)を用いることができる。凸形計画法に基づく他の手法は、国際公開第2010/034674号に開示されている。
【0124】
加熱光ビームの輝度を制御するための改変手法は、特定の変形をもたらすために必要な加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3の必要輝度のオフラインを決定するステップを含みうる。これらの特定の変形は、例えば、波面誤差を表現するためによく用いられる特定のゼルニケ多項式によって表現することができる。そのような変形のそれぞれについて、上述したような態様、例えば特異値分解又はチコノフ正則化を用いて、必要な輝度が決定される。
【0125】
投影露光装置10の操作中、所望の変形を特定の(ゼルニケ)変形の線形重畳に分解し、これらに関連して、加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3の必要輝度をオフラインで決定する。よって、各加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3について結果的に得られた輝度は、特定の変形に関連する輝度の単純な和であるが、重畳係数によって重み付けされる。これにより、通常、各加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3について必要な輝度をより迅速に決定することができる。
【0126】
[IV.変形実施形態]
以下、
図5〜10を参照して、種々の変形実施形態について説明する。
【0127】
図5及び
図6は、それぞれ、第2実施形態に従う補正装置42のXY及びYZ平面における断面図である。同一または対応する構成要素については、同一の参照符号を用いて示す。
【0128】
また、補正装置42の特定の特徴は、第1光学系OS1を参照してのみ説明する。他の2つの光学系OS2及びOS3は、同様の構成要素を有するが、XY平面において異なる角度方向に配置されている。
【0129】
この第2実施形態では、光源54は、それぞれが第1加熱光ビームHLB1のうちの一つを生成するように構成されている複数の第1光源を備える。各第1光源は、LED62により形成されており、それぞれについて、微小なマイクロレンズ(図示しない)が取り付けられており、LEDにより放射された光をコリメートする。各第1加熱光ビームHLB1の輝度は、制御ユニット52によって電子的に制御される。
【0130】
図3及び
図4に示した第1実施形態とは対照的に、第1光学系OS1は、ミラー基板44に入射した後に平衡又は略平衡に進行する第1加熱光ビームHLB1を生成する。これにより、ミラー基板44の中心部60内にて加熱光ビームHLB1を規則的に配置することができ、よって、かかる部分における所望の温度分布を正確に生成することが容易となり、ミラー基板44を出た後に加熱光ビームHLB1を容易に集束させることができるようになる。加熱光ビームHLB1の規則的な配置は、主に、XY平面上における周縁表面50の曲率に対して、円柱レンズ55の屈折力及びミラー基板44からの距離を適切にあわせることによって達成される。
【0131】
大切なことを一つ言い残したが、第1光学系OS1は、ミラー基板44を横断した後に第1加熱光HL1を反射する反射表面66を有するミラー64を備える。換言すれば、周縁表面50にて内部反射されなかった第1加熱光ビームHLB1の一部は、周縁表面50にて屈折されて、円柱レンズ55’の前焦点面配置された焦線56’にて集束する。従って、第1加熱光ビームHLB1は、再び相互に並行となって、反射表面66に入射する。よって、第1加熱光ビームHLB1は、反射表面66から同じ経路を通って光源54に向かって戻る。これにより、加熱光の損失量が低減し、補正装置42の効率が向上する。
【0132】
第1加熱光ビームHLB1がミラー64から反射されてLED62に入射することを防ぐために、ミラー64は、
図5の矢印68で示すように、僅かに傾斜した反射表面66を備える。かかる傾斜構成により、第1加熱光ビームHLB1は、光源54に向かって戻る際に僅かに異なる経路をとるようになる。第1加熱光ビームのうちの一つについて、光源54に向かって戻る経路を破線70で示す。反射された加熱光ビーム70が焦線56をちょうど通過せず、従って、ブラインド58によって吸収されるため、光源54のLEDの一つに入射することができない。
【0133】
幾つかの場合には、投影光PLの伝播経路内のミラー基板を正確に調整するために必要とされる取付台によって妨げられているため、ミラー基板40の周縁表面50には、容易に近づくことができない。
【0134】
図
7は、ミラー基板44の周縁表面50の部分拡大断面図である。図
7では、加熱光ビームHLB1が入射する少なくとも周縁表面50の一部は、ミラー基板44の後ろ側表面48に対して45°の角度を形成している。
【0135】
取付台構造94は、一方の側にミラー基板44の前側表面46を支持するウェブ96を有する。取付台構造94の他方の側には、円柱レンズ55、ブラインド58、及びプリズムにより形成される光分散素子98が配置されている。光分散素子98は、光学軸OAに対して傾斜されている表面100を有する。光軸OAに対する傾斜角も45°であれば、光分散素子98に対して入射する第1加熱光ビームHLB1は、光分散素子98の傾斜表面100にて全内部反射されて、ビーム方向が90°変更される。そして、第1加熱光ビームHLB1は、ミラー基板44に入射して、その傾斜周縁表面50にて再び全内部反射する。これにより、2度目にまたビーム方向が90°変更されて、第1加熱光ビームHLB1は、ミラー基板44を経て、最終的に後ろ側表面48に対して再び並行となる。
【0136】
よって、加熱光ビームHLB1が光分散素子98に入射する際に伝播する面は、ミラー基板44を伝播する際の面に対して並行である。これにより、円柱レンズ55に加えて、ブラインド58もミラー基板44の周縁表面50の完全に上又は完全に下に配置することが可能となる。このようにして、Z位置が異なる平面において、光学系OS1、OS2、及びOS3の様々な構成要素により、利用可能な面積に関するあらゆる制約も緩めることができる。
【0137】
図示しない変形実施形態では、加熱光HL1の経路は、2つの折り返しミラ
ーにより切替させて、加熱光HL1はミラー基板44の前側表面46を越えて導かれ、反射コーティング47により反射された投影光の経路を横断する。このことは、周縁表面50のすぐ隣に光源54及び円柱レンズ55を収容するのに十分な空間が無い場合に有利である。更に他の変形実施形態(
これも図示しない)では、冷却体59及びミラー基板44の間の空間を
、加熱光HL1がミラー基板44の前側表面46を越えて誘導されないが、後ろ側表面48は越える程度に拡大することができる。
【0138】
図8は、第三実施形態による補正装置42の第1瞳面40における断面図である。同一の又は対応する構成要素については、同一の参照符号を用いて示す。
【0139】
第3実施形態の補正装置42は、加熱光を照射するように構成された単一の光源LS、及び加熱光を第1加熱光HL1及び第2加熱光HL2に分割するビームスプリッター72を備える。本実施形態では、光源LSは加熱光の単独ビームを生成するレーザとして実装する。
【0140】
それぞれの輝度を独立して変更することができる複数の第1及び第2加熱光ビームHLB1、HLB2、及びHLB3を生成できるようにするために、各光学システムOS1及びOS2は、図示の実施形態では傾斜可能なミラーの配列として実装される空間光変調器74を備える。ここで、各傾斜可能なミラー76は、入射した加熱光を各加熱光ビームHLB1、HLB2、又はHLB3としてミラー基板44に向けて出射する「オン」状態を有する。ミラー76が「オフ」状態であれば、第1光学システムOS1の1つのミラー76’について図示したように、当った加熱光がミラー基板44に当らないように反射される。
【0141】
ミラー基板44を経た加熱光ビームHLB1及びHLB2は吸収体78に入射する。例えば、一般的な光学ガラスにおける波長約1450nmの加熱光について当てはまるように、ミラー基板44が加熱光ビームHLB1及びHLB2の僅かな一部のみを吸収する場合には、吸収体を能動的又は受動的に冷却することは特に重要である。加熱光ビームHLB1及びHLB2の輝度は最大値〜0の間でのみ変更可能であるが、加熱光ビームの伝播経路沿いのミラー基板44によって吸収されるべきエネルギー量は、ミラー76が「オン」状態である時間と、ミラー76が「オフ」状態である時間との比率によって調整される必要がある。
【0142】
図9は、第四実施形態に従う補正装置42の
図8と同様の断面図である。本実施形態では、空間変調装置は、ミラー配列ではなく、種々のブラインド80によって形成されている。
図10に示すブラインド80のうちの一つの正面図からも明らかなように、各ブラインド80は制御ユニット52から供給される制御信号に応じて個別に変更可能なサイズの複数の開口82を有している。各開口82は、加熱光ビームHLB1及びHLB2のうちの一つに関連する。
【0143】
このため、様々なブラインド80は、アクチュエータ(図示しない)を用いて移動させて開口82に部分的又は完全に重複させることができるシャッター素子84を備える。
【0144】
当然、他のタイプの様々なブラインドも考慮することができる。例えば、LED素子を含むブラインドであって、加熱光に対して透過性である「オン」状態と、加熱光を遮断する「オフ」状態との間で切替可能なブラインドを用いることも可能である。この場合、関連する加熱光の輝度は、LED素子が「オン」状態である時間とLED素子が「オフ」状態である時間との間の比率を適切に設定することにより、時間平均で調節可能である。
【0145】
当然、第三の、或いはそれ以上の光学系を、
図8及び9に示した光学系OS1及びOS2に追加して設けることができる。
【0146】
[V.他の補正装置]
図11は、空間光変調器がポリゴンミラー88の一部である反射表面86を備える補正装置42の実施形態を示す。ポリゴンミラー88は回転軸90について駆動装置92により回転することができ、これにより反射表面86の空間方向を連続的に変更することができる。例えば、レーザダイオードにより形成された光源LSから放射された加熱光ビームHLB1が、反射表面86に導かれれば、第1加熱光ビームHLB1をミラー基板44の周縁表面50上の様々な位置に様々な角度で導くことができる。従って、本実施形態では、複数の加熱光ビームを同時に生成するのではなく、操作設定の一種を用いて連続的に生成する。
【0147】
上述した実施形態と同様に、他の2つの光学系OS2及びOS3も光学系OS1と同様の構成を有する。
【0148】
図12及び13に、それぞれ、更なる実施形態による補正装置について、反射コーティング47に面する底面図と、線XIII−XIIIに従う断面図とをそれぞれ示す。本実施形態では第1光学系OS1は基本的に複数のLEDを備えるバー101と、これらに関連するLEDによって並行光として照射された第1加熱光ビームHLB1をコリメートするマイクロレンズ(図示しない)とを有する。第2のバー102は、同様の構造の第2光学系OS2を形成しているが、
図13に示した断面から明らかなように、(第1光学系OS1とは)異なる平面に配置されている。第3のバーが設けられる場合も、他の2つの平面とはZ軸方向に離間して配置された第3平面内に配置される。
【0149】
ミラー基板44の周縁表面50における屈折を抑制するために、第3のバー及びバー101、102は、ミラー基板44と屈折率が略等しい光学接着剤104に含浸される。このような光学接着剤104は、それ自体既知であり、例えば、UV光の作用により硬化しうる。周縁表面50における屈折がなければ、
図5及び6に示した実施形態と同様に、バー101、102から照射された加熱光ビームHLB1、HLB2はミラー基板44を並行して横断する。他の実施形態では、光学接着剤104を水のような液体に置き換えることができる。
【0150】
図14は、ミラー基板44が光学接着剤に含浸されていない実施形態に従う補正装置の平面図である。バー101、102はLEDを含み、バー101及び102のLEDからそれぞれ照射された加熱光ビームHLB1、HLB2がミラー基板44の中心部60にて相互にオーバーラップするように配置されている。バー101、102は湾曲しているので、加熱光ビームHLB1、HLB2が並行には照射されずに、扇形に広がるようになる。ミラー基板44の周縁表面50による集束効果にもかかわらず、加熱光ビームHLB1及びHLB2の各扇形の広がりにより中心部60がカバーされるほど、扇形の発散は大きい。それにもかかわらず、バー101及び102は、一つの面内に配置可能な程度に短い。
【0151】
図15及び16は、それぞれ、本発明の更なる実施形態に従う補正装置42の、反射コーティングに面する底面図と、瞳面40内の線XVI−XVIに従う断面図である。かかる補正装置42では、2本のみではなく、15本のバー101〜115を同じ平面内でミラー基板44の周囲に配置する。このようにして、ミラー基板44の中心部60において非常に高密度に加熱光ビームを重畳させることができる。
【0152】
Z方向に沿う集束効果も達成するために、本実施形態にてミラー基板44の周縁表面50は後側表面48に対して垂直な平面にて湾曲している。
図16の断面図に最も明確に示すように、バー101〜115のLEDから照射された発散光は、コリメートされる。
【0153】
図17に示す平面図に係る補正装置42では、微小なバー101,102は、加熱光の扇形の広がりがミラー基板44の非常に大きな部分をカバーするように大きく湾曲した複数のLEDをそれぞれ備える。バー101,102は、ミラー基板44の周縁表面50にて円柱状の凹部119,121内に設けられている。凹部119,121の直径はLEDにより生成された各加熱光HLB1,HLB2がミラー基板44に対して垂直に入射して屈折が生じず、反射も最小限となるように調節されている。
【0154】
周縁表面50にて設けられた凹部119,121は、
図18の底面図に示すような環状のLED装置を収容する孔(ボア)又は他のタイプの穴によって代替することもできる。穴120,122内に配置されたバー101,102は、扇形の広がりが比較的小さい加熱光ビームを生成するが、これらの扇形の光は依然として、投影露光装置10の動作中に投影光が当たるミラー基板の中心部分60を完全にカバーするために十分である。
【0155】
図19は、更なる実施形態に従うミラー基板44の詳細構成を示す図である。
図17に示す実施形態と同様に、扇形に広がる各加熱光ビームを生成する光源101はミラー基板44の周縁表面50に非常に近接して配置されている。ここで、周縁表面50にて形成された凹部は円柱形状ではなく、YZ平面において分割フレネルレンズを形成している。したがって、光源101から照射された元の扇形の加熱光ビームHLB1は、より角度範囲が広い扇形の広がりを持つ光へと拡張される。
【0156】
図20は、レーザダイオードを備えるバー101の概略正面図である。レーザダイオードの射出窓126(或いは、射出窓の前に配置されたブラインド)は、平行変形の形状を有する。隣接する射出窓126の間の間隙128は、周縁方向(
図20ではX軸方向に一致する方向)に沿って、レーザダイオードによって照射された加熱光がミラー基板44に当たらない座標位置が無くなるように大きさが調節されており、これにより、矩形のギャップにより隔てられた矩形の射出窓が並んで配置された場合と比較してミラー基板44をより均一に加熱することができる。
【0157】
図21は、本発明の他の実施形態に従う補正装置42のXY平面の概略断面図である。かかる実施形態は、
図5及び6に示した実施形態とは、主に、各加熱光HLB1,HLB2、及びHLB3を生成するLED62が投影対物レンズ26の内部に配置されておらず、投影対物レンズ26の外部のいずれかの位置に配置されたLEDパッケージ130内に結合されている点で異なる。LEDパッケージは、光出力ファイバ131、及びLED62から照射された加熱光ビームHLB1,HLB2、及びHLB3を光出力ファイバ131にカップリングさせる光カップリング光学系(図示しない)を含む。各LEDパッケージは、更に着脱可能なマルチファイバーコネクタ132を備え、かかるコネクタは光出力ファイバ131の束を入力ファイバ134の束に連結する。後者において、加熱光ビームHLB1,HLB2、及びHLB3は出力光学系136へと導光され、かかる出力光学系136は、加熱光ビームHLB1,HLB2、及びHLB3を各光学系OS1,OS2、及びOS3の収束レンズ55へと向ける。
【0158】
投影対物レンズ26の外部にLEDパッケージ130を配置する構成は、LED62の交換が格段に容易になる点で有利である。1つ又は複数のLED62が機能不全となるか寿命が尽きることにより光を照射することが完全にできなくなった場合に、単純に光入力ファイバ131の束からLEDパッケージ130を丸ごと取り外し、マルチファイバーコネクタ132を用いて新たなパッケージにより置き換えることができる。LEDパッケージ130が投影光学レンズ26の外部に配置されているので、投影対物レンズ26のいかなる部品も取り外すことなく、この取り換えを完了することができる。
【0159】
他の利点としては、投影対物レンズ26の外部において、加熱光ビームの生成に伴うパワーの消費が生じない点が挙げられる。このことは、投影対物レンズ26を一定温度に維持するために役立つ。
【0160】
図21に示す実施形態では、加熱光ビームHLB1,HLB2、及びHLB3がミラー基板44を通過した後のこれらの光の光量、或いは少なくとも照射態様を同様に投影対物レンズ26の外部に配置された検出器140により測定する。このため、加熱光ビームHLB1,HLB2、及びHLB3は、ミラー基板44を経てレンズ55’を通過した後にカップリング光学系144により光ファイバ142にカップリングされる。後者は、それぞれ加熱光ビームHLB1,HLB2、及びHLB3を検出器140の内部には位置されたフォトダイオード146又はその他の感光性素子へと導く。検出器140もまた、投影光学レンズの外部に配置されているので、フォトダイオード146にて消費される熱は投影光学レンズ26の熱収支に影響を与えることはできない。
【0161】
加熱光ビームHLB1,HLB2、及びHLB3の光量の測定によりLED62の正常な機能をモニタリングすることが可能である。さらに、LEDパッケージ130内のLED62が検出器140により検出された光量に応じて制御される閉ループ制御を確立することが可能である。このため、LEDパッケージ130及び検出器140は、電気信号ラインにより制御ユニット148に対して接続され、かかる制御ユニットは投影露光装置10全体の機能を制御する全システム制御装置150に対して接続されている。第III部において説明したように、検出器により検出されたあらゆる照射態様は、各加熱光ビームに関連するマニピュレータに影響を及ぼす。このことは、各加熱光ビームの照射を常に調節することが必要となることを意味する。
【0162】
加熱光の(未知の)一部しか光ファイバ142に対してカップリングされず、最終的にフォトダイオード146に当たらない場合、フォトダイオード146により生成される電気信号は、厳密な意味では、ミラー基板44を出る際の加熱光ビームの光量ではなく、かかる光量の変化のみを示す。しかし、LED62の性状な動作をモニタリングし、及び/又は、閉ループ制御を実施するためにはこれで十分である。
【0163】
[VI.熱膨張の影響低減]
投影対物レンズ26における熱に起因する結像誤差は、主に、熱膨張により生じるミラー基板44の変形により引き起こされる。通常、ミラー基板44はガラス又は装置10の動作波長において熱膨張係数がゼロである材料により形成される。そして、温度変化が所定範囲内に維持されていれば、温度変化によりミラー基板44の変形が生じることはない。
【0164】
本技術分野にて既に知られているように、熱膨張係数は温度Tに依存する。
図22は、ミラー基板44用材料として使用されうるコーニング社製ULE(登録商標)ガラスブランクについてこの依存性を示すグラフである。以下においてゼロクロス温度(ZCT:熱膨張係数がゼロになる温度)と称する特定の温度(場合によっては2つ以上の異なる温度)において、熱膨張係数がゼロとなっている。図示した特定のガラスブランクでは、熱膨張係数αは、かかるZCTの付近の約15℃〜45℃の範囲で非常に小さいが、ゼロではない。Zerodur(登録商標)のような他のガラスについては、温度依存性は異なりうるが、少なくとも一つの熱膨張係数がゼロになる温度、すなわちZCTを有する。
【0165】
ゼロクロス温度ZCTは、ある程度はガラスブランクの製造工程において調節することができる。したがって、ミラーの動作温度にほぼ等しい温度をZCTとするガラスブランクを製造することも可能である。そして、装置10の動作中に必然的に生じる温度変化により、ミラー基板44の熱収縮又は熱膨張を生じないようにして、反射性コーティング47を支持する光学表面の形状が変化しないようにするか、少なくともかかる変化を非常に小さく維持するようにする。
【0166】
しかし、ミラー基板44の製造に用いるガラスブランクは、通常、完全に均一ではない。したがって、屈折率及びゼロクロス温度ZCTは、ガラスブランクの体積にわたって非常にわずかではあるが変動する。
【0167】
図23はゼロクロス温度ZCTの位置依存性を例示的に表すグラフである。ここでは、横座標は、ある対象物がガラスブランク内で特定の線上を移動したと仮定した場合のデカルト座標を表す。
図23より、ゼロクロス温度ZCTは略一定であるが、符号160’を付して示す特定の位置にて僅かに変動する。
【0168】
図24及び25は、基板44の体積にわたるゼロクロス温度の不均一な分布に関する影響を示す図である。
図24は、基板44の大部分のゼロクロス温度ZCTに等しい温度である温度T1に基板44の全体を維持したものを示す。しかし、
図23にて符号160’で示した領域に対応する符号160で示す部分にて、ミラー基板44はゼロクロス温度ZCTが比較的高い。結果的に、この部分160では、温度がT1からT2>T1に上昇した場合には熱膨張が生じ、
図25に示したような状態となる。
図25より、部分160における熱膨張により、表面変形162が生じて、ミラーM2の光学特性が変化し、熱に起因する結像誤差を引き起こしうることがわかる。
【0169】
本発明によれば、ミラー基板44の周縁表面50に向けて加熱光を照射することにより温度分布を生じさせて、ミラー基板44の各点がゼロクロス温度ZCTとなるようにすることで、このような表面変形162を回避することができる。そして、少なくとも僅かな温度変化では、ミラー基板44の熱変形が生じないようにすることができる。
【0170】
図26は、補正装置42の一実施形態を示す図であり、かかる補正装置42は、
図3及び4に示した補正装置に類似する。しかし、これらの実施形態とは対照的に加熱光HL1は、本例では加熱光源54から、より大きな広がりをもって照射される。従って、加熱光源54も、
図3に示したような扇形に広がる加熱光ビームHLB1を再び生成するが、加熱光ビームHLB1がミラー基板44を通過する平面はより大きく離間する。従って、加熱光ビームHLB1はミラー基板44のほぼ体積全体にわたって延在する。
【0171】
図3及び4に示した実施形態と同様に、5つの異なる平面において、同様に扇形にひろがる加熱光ビームHLB1,HLB2を生成する2つの異なる光学系OS2及びOS3が備えられる。
【0172】
従って、
図3及び4を参照して上述してきたように、光学系OS1,OS2,及びOS3により、あらゆる任意の温度分布をミラー基板44上において生成することが可能となる。
【0173】
ゼロクロス温度ZCTの分布に等しい温度分布を生成するためには、ZCTの分布をあらかじめ測定しておくことが必要である。ゼロクロス温度ZCTは、あるタイプの材料について屈折率の分布に直接関連するので、ミラー基板44内における三次元屈折率分布を測定すれば十分である。
【0174】
そのための1つの方法としては、ミラー基板44の製造に使用するガラスブランクをガラスブランクと屈折率がほぼ等しい液体に浸漬することが挙げられる。そして、屈折率分布は、コンピュータ断層撮影により測定することができる。このことは、光路長差を、特定の方向に沿ってガラスブランクを通過する光学光線の位相を比較し、さらに、それをガラスブランクを通過していない参照光線の位相と比較することにより、測定することが可能であることを意味する。各光路長差は、ブランクを通過した際の各光線の屈折率の積分値に対応する。ラドン変換を適用することにより、測定された光路長差からガラスブランクにおける三次元の屈折率分布を割り出すことができる(例えば、F. Natterer著、「コンピュータ断層撮影の数学」、Siam社、2001年)。
【0175】
かかる屈折率分布より、ガラスブランクの製造に使用する特定タイプの校正測定に基づいてゼロクロス温度ZCTの分布を得ることができる。
【0176】
上述したように、光学系OS1,OS2,及びOS3を用いて、ゼロクロス温度ZCTの分布と同様の温度分布をミラー基板44内で生成する。かかる温度分布は、装置10の動作中にわたって維持されることが好ましい。そして、ミラー基板44内における僅かな温度変化により、ミラー44が変形しないようにする。
【0177】
特定の三次元温度分布を維持するにあたり、通常、ミラー基板44内における実際の温度分布を頻繁に測定する。このために、熱カメラ164は反射性コーティング47上における温度分布を測定する。かかる温度分布により、熱伝達方程式に基づいて、ミラー基板M2内部における三次元温度分布を得ることができる。そして、各加熱光ビームHLB1,HLB2、及びHLB3の輝度を閉ループ制御スキームに従って調節して、ミラー基板44内におけるオリジナルの温度分布をZCT分布に等しく維持することができる。
【0178】
以下、かかる観点に従う本発明における重要な方法のステップについて、
図27に示すフローチャートを参照して説明する。
【0179】
第1ステップS1では、ミラー基板及び反射性コーティングを有するミラーを備える投影対物レンズを準備する。
【0180】
第2ステップS2では、ミラー基板の第1の位置にて、熱膨張係数の絶対値が最小となる第1の温度を測定する。
【0181】
第3ステップS3では、熱膨張係数の絶対値が最小である、第1の温度とは一般的に異なる温度である第2の温度を、ミラー基板上における、第1の位置とは異なる第2の位置にて測定する。
【0182】
そして、第4ステップS4では、ミラー基板内における温度分布を変化させて、第1の位置における温度が第1の温度に等しくなるようにして、第2の位置における温度が第2の温度に等しくなるようにする。
【0183】
[VII.本発明の他の重要な観点の概要]
以下に、本発明の他の重要な観点について要約する。
【0184】
1.マイクロリソグラフィ装置の投影対物レンズであって、前記投影対物レンズ(26)は、投影光を用いてマスク(16)を結像面上に結像するように構成されており、さらに、前記対物レンズ(26)は、波面補正装置(42)であって、
a)前側表面(46)、後ろ側表面(48)、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面(50)を有するミラー基板と、前記ミラー基板の前記前側表面によって支持される反射性コーティング(44)とを備え、前記反射性コーティングは衝突する(当たった)投影光を反射するように構成されている、ミラーと、
b)加熱光を照射して、かかる加熱光を前記周縁表面に衝突させる、光源(101,102)と、を備え、
前記ミラー基板(44)により画定される体積と、前記光源(101,102)は液体、固体、又は液体と固体の混合物である光学媒体(104)により充填されていることを特徴とする、波面補正装置(42)を備える、投影対物レンズ。
【0185】
2.前記光学媒体(104)と前記ミラー基板(44)との屈折率比は22℃において0.80〜1.1である、前記1.に記載の投影対物レンズ。
【0186】
3.マイクロリソグラフィ装置の投影対物レンズであって、前記投影対物レンズ(26)は、投影光を用いてマスク(16)を結像面上に結像するように構成されており、さらに、前記対物レンズ(26)は、波面補正装置(42)であって、
a)前側表面(46)、後ろ側表面(48)、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面(50)を有するミラー基板と、前記ミラー基板の前記前側表面によって支持される反射性コーティング(44)とを備え、前記反射性コーティングは衝突する投影光を反射するように構成されている、ミラーと、
b)加熱光を照射して、かかる加熱光を前記周縁表面に衝突させる、光源(101,102)と、を備え、
前記加熱光が衝突する前記周縁表面の一部分は、少なくとも一つの方向に沿って屈折力を有するフレネルレンズとして形成されている、投影対物レンズ。
【0187】
4.マイクロリソグラフィ装置の投影対物レンズであって、前記投影対物レンズ(26)は、投影光を用いてマスク(16)を結像面上に結像するように構成されており、さらに、前記対物レンズ(26)は、波面補正装置(42)であって、
a)前側表面(46)、後ろ側表面(48)、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面(50)を有するミラー基板と、前記ミラー基板の前記前側表面によって支持される反射性コーティング(44)とを備え、前記反射性コーティングは衝突する投影光を反射するように構成されている、ミラーと、
b)加熱光を照射する光源と、を備え、
前記ミラー基板は、前記加熱光が前記ミラー基板に対して垂直に入射するように内部に光源を配置した孔(120、122)、穴、又は凹部を有する、投影対物レンズ。
【0188】
5.前記光源(101,102)は加熱光ビームを少なくとも40°の角度範囲にわたり照射するように構成されている、前記4.に記載の投影対物レンズ。
【0189】
6.マイクロリソグラフィ装置の投影対物レンズであって、前記投影対物レンズ(26)は、投影光を用いてマスク(16)を結像面上に結像するように構成されており、さらに、前記対物レンズ(26)は、波面補正装置(42)であって、
a)前側表面(46)、後ろ側表面(48)、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面(50)を有するミラー基板と、前記ミラー基板の前記前側表面によって支持される反射性コーティング(44)とを備え、前記反射性コーティングは衝突する投影光を反射するように構成されている、ミラーと、
b)加熱光を照射する光源と、
c)前記光源により生成された前記加熱光を前記周縁表面の異なる部分に向けるように構成されている空間光変調器(74,80,88)とを備える、投影対物レンズ。
【0190】
7.前記空間光変調器は、反射表面(86)と、前記反射表面の空間方向を変更するように構成された駆動装置(92)とを備える、上記6.に記載の投影対物レンズ。
【0191】
8.マイクロリソグラフィ装置の投影対物レンズであって、前記投影対物レンズ(26)は、投影光を用いてマスク(16)を結像面上に結像するように構成されており、さらに、前記対物レンズ(26)は、波面補正装置(42)であって、
a)前側表面(46)、後ろ側表面(48)、及び前記前側表面及び後ろ側表面の間に延在する周縁表面(50)を有するミラー基板と、前記ミラー基板の前記前側表面によって支持される反射性コーティング(44)とを備え、前記反射性コーティングは衝突する投影光を反射するように構成されている、ミラーと、
b)加熱光(HLB1,HLB2,HLB3)を照射する光源(54)と、
c)加熱光を周縁表面(50)の部分に向ける光学系(OS1,OS2)と、
d)ミラー基板(44)を通過した前記加熱光の少なくとも70%を反射して、かかる加熱光を再度前記ミラー基板(44)に通過させる、反射表面(66)と、を備える投影対物レンズ。
【0192】
9.前記反射表面(66)は前記ミラー基板の外部に配置されている、上記8.に記載の投影対物レンズ。
【0193】
10.マイクロリソグラフィ装置の操作方法であって、
a)ミラー基板(44)及び該ミラー基板上に適用された反射性コーティング(47)を有するミラー(M2)を備え、前記反射性コーティングは衝突する投影光を反射するように構成されている、ミラー(M2)を準備するステップと、
b)熱膨張係数の絶対値が最小となる第一の温度を、前記ミラー基板の第一の位置にて測定するステップと、
c)前記熱膨張係数の前記絶対値が最小である第二の温度を、前記ミラー基板上における、前記第一の位置とは異なる第二の位置にて測定するステップと、
d)前記ミラー基板(44)内における温度分布を変化させて、前記第一の位置における温度が前記第一の温度に等しくなるようにするとともに、前記第二の位置における温度が前記第二の温度に等しくなるようにするステップと
を含む、方法。
【0194】
11.ステップd)の後に投影光がマスクに照射される、上記10.に記載の方法。
【0195】
12.前記温度分布は、ステップd)において加熱光を前記ミラー基板に対して照射することで、変更される、上記10.又は11.に記載の方法。
【0196】
13.前記加熱光の中心波長は、前記投影光の中心波長とは異なる、上記12.に記載の方法。
【0197】
14.前記ミラー基板は前記反射性コーティングを支持する前側表面(46)、後ろ側表面(48)、及び前記前側表面及び前記後ろ側表面の間に延在する周縁表面(50)を有し、ステップd)において前記加熱光が前記ミラー基板の前記周縁表面上に向けられる、上記12.又は13.に記載の方法。
【0198】
15.ミラー基板内を第1の面で通過する加熱光の第1のセットが、前記周縁表面上に向けられ、ミラー基板内を前記第1の面とは異なる第2の面で通過する加熱光の第2のセットが、前記周縁表面上に向けられる、上記14.に記載の方法。
【0199】
16.前記ミラー基板の前記温度分布は、ステップc)及びd)の間で測定される、上記10.〜15.の何れかに記載の方法。
【0200】
17.前記温度分布は、少なくとも一台の熱カメラ(164)を用いて測定される、上記16.に記載の方法。