(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜8のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔がキャリアの一方の面に極薄銅層を有する場合において、前記極薄銅層側及び前記キャリア側の少なくとも一方の表面、又は、両方の表面に、または、
請求項1〜8のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔がキャリアの両方の面に極薄銅層を有する場合において、当該一方または両方の極薄銅層側の表面に、
粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔。
前記粗化処理層、前記耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層の上に樹脂層を備える請求項9に記載のキャリア付銅箔。
請求項1〜13のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔と樹脂とを含む積層体であって、前記キャリア付銅箔の端面の一部または全部が前記樹脂により覆われている積層体。
一つの請求項1〜13のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔を前記キャリア側又は前記極薄銅層側から、もう一つの請求項1〜13のいずれか一項に記載のキャリア付銅箔の前記キャリア側又は前記極薄銅層側に積層した積層体。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<キャリア付銅箔>
本発明のキャリア付銅箔は、キャリア、中間層、極薄銅層をこの順に有する。また、中間層、極薄銅層をキャリアの一方の面または両方の面に設けてもよく、さらに当該一方の面の極薄銅層と他方の面のキャリアまたは当該両方の面の極薄銅層に対して粗化処理等の表面処理を行ってもよい。キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、液晶ポリマー、フッ素樹脂等の絶縁基板またはフィルムに貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的に積層体(銅張積層体等)、又は、プリント配線板等を製造することができる。
【0034】
本発明のキャリア付銅箔は、JIS C 6471 8.1に準拠の90°剥離法でキャリアを引き剥がすときの剥離強度が10N/m以下に制御されている。このように、JIS C 6471 8.1に準拠の90°剥離法でキャリアを引き剥がすときの剥離強度が10N/m以下に制御することで、極薄銅層の厚みが0.9μm以下であるいわゆるキャリア付超極薄銅箔においてキャリア引き剥がし時に生じるピンホールの発生を良好に抑制することができる。JIS C 6471 8.1に準拠の90°剥離法でキャリアを引き剥がすときの剥離強度が10N/mを超えると、キャリア引き剥がし時に、極薄銅層の一部がキャリアに引っ張られてしまい、当該箇所が極薄銅層においてピンホールとなってしまう。一方、キャリアと極薄銅層との剥離強度が小さすぎると、両者の接着性が不良となるおそれがある。これらの点から、本発明のキャリア付銅箔は、JIS C 6471 8.1に準拠の90°剥離法でキャリアを引き剥がすときの剥離強度が3〜10N/mに制御されているのが好ましく、3〜9N/mに制御されているのがより好ましく、3〜8N/mに制御されているのがより好ましく、3〜5N/mに制御されているのが更により好ましい。
【0035】
<キャリア>
本発明に用いることのできるキャリアは金属箔または樹脂フィルムであり、例えば銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、鉄箔、鉄合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、絶縁樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、LCP(液晶ポリマー)フィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、PETフィルムの形態で提供される。本発明に用いることのできるキャリアは典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供される。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としてはタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)や無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020またはJIS H3510 合金番号C1011)といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0036】
本発明に用いることのできるキャリアの厚さについても特に制限はないが、キャリアとしての役目を果たす上で適した厚さに適宜調節すればよく、例えば5μm以上とすることができる。但し、厚すぎると生産コストが高くなるので一般には35μm以下とするのが好ましい。従って、キャリアの厚みは典型的には8〜70μmであり、より典型的には12〜70μmであり、より典型的には18〜35μmである。また、原料コストを低減する観点からはキャリアの厚みは小さいことが好ましい。そのため、キャリアの厚みは、典型的には5μm以上35μm以下であり、好ましくは5μm以上18μm以下であり、好ましくは5μm以上12μm以下であり、好ましくは5μm以上11μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm以下である。なお、キャリアの厚みが小さい場合には、キャリアの通箔の際に折れシワが発生しやすい。折れシワの発生を防止するため、例えばキャリア付銅箔製造装置の搬送ロールを平滑にすることや、搬送ロールと、その次の搬送ロールとの距離を短くすることが有効である。
【0037】
キャリアとして電解銅箔を使用する場合の製造条件の一例は、以下に示される。
<電解液組成>
銅:90〜110g/L
硫酸:90〜110g/L
塩素:50〜100ppm
レべリング剤1(ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド):10〜30ppm
レべリング剤2(アミン化合物):10〜30ppm
上記のアミン化合物には以下の化学式のアミン化合物を用いることができる。
なお、本発明において記載されている、電解液、めっき液等は、特に記載が無い限り残部は水である。
【0038】
【化1】
(上記化学式中、R
1及びR
2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリール基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、アルキル基からなる一群から選ばれるものである。)
【0039】
<製造条件>
電流密度:70〜100A/dm
2
電解液温度:50〜60℃
電解液線速:3〜5m/sec
電解時間:0.5〜10分間
【0040】
<中間層>
キャリアの片面又は両面上には中間層を設ける。銅箔キャリアと中間層との間に他の層を設けてもよい。本発明で用いる中間層は、キャリア付銅箔が絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離し難い一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能となるような構成であれば特に限定されない。例えば、本発明のキャリア付銅箔の中間層はCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Zn、これらの合金、これらの水和物、これらの酸化物、有機物からなる群から選択される一種又は二種以上を含んでも良い。また、中間層は複数の層であっても良い。
【0041】
また、例えば、中間層はキャリア側からCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種の元素からなる単一金属層、或いは、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素からなる合金層、或いは、有機物層を形成し、その上にCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素の水和物または酸化物または有機物からなる層を形成することで構成することができる。
【0042】
また、例えば中間層は、キャリア側からCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群の内何れか一種の元素からなる単一金属層、あるいはCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群から選択された一種以上の元素からなる合金層あるいは有機物からなる層、その次にCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群の内何れか一種の元素からなる単一金属層、あるいはCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znの元素群から選択された一種以上の元素からなる合金層で構成することができる。また、他の層には中間層として用いることができる層構成を用いてもよい。
【0043】
中間層を片面にのみ設ける場合、キャリアの反対面には粗化処理層やNiめっき層などの防錆層を設けることが好ましい。なお、中間層をクロメート処理や亜鉛クロメート処理やめっき処理で設けた場合には、クロムや亜鉛など、付着した金属の一部は水和物や酸化物となっている場合があると考えられる。
【0044】
また、例えば、中間層は、キャリア上に、ニッケル、ニッケル−リン合金又はニッケル−コバルト合金と、クロム含有層とがこの順で積層されて構成することができる。ニッケルと銅との接着力はクロムと銅の接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とクロムとの界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。クロム含有層はクロメート処理層またはクロム層またはクロム合金層であることが好ましい。ここでクロメート処理層とは無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩または二クロム酸塩を含む液で処理された層のことをいう。クロメート処理層はCo、Fe、Ni、Mo、Zn、Ta、Cu、Al、P、W、Mn、Sn、AsおよびTi等の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物等どのような形態でもよい)を含んでもよい。クロメート処理層の具体例としては、純クロメート処理層や亜鉛クロメート処理層等が挙げられる。本発明においては、無水クロム酸または二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層を純クロメート処理層という。また、本発明においては無水クロム酸または二クロム酸カリウムおよび亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層を亜鉛クロメート処理層という。中間層におけるニッケルの付着量は好ましくは100μg/dm
2以上40000μg/dm
2以下、より好ましくは200μg/dm
2以上30000μg/dm
2以下、より好ましくは300μg/dm
2以上20000μg/dm
2以下、より好ましくは400μg/dm
2以上15000μg/dm
2未満であり、中間層におけるクロムの付着量は5μg/dm
2以上150μg/dm
2以下であることが好ましく、5μg/dm
2以上100μg/dm
2以下であることが好ましい。
また、中間層が含む有機物は窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸からなる群から選択される一種以上の有機物であることが好ましい。具体的な窒素含有有機化合物としては、置換基を有するトリアゾール化合物である1,2,3−ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア、1H−1,2,4−トリアゾール及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール等を用いることが好ましい。
硫黄含有有機化合物には、メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、チオシアヌル酸及び2−ベンズイミダゾールチオール等を用いることが好ましい。
カルボン酸としては、特にモノカルボン酸を用いることが好ましく、中でもオレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等を用いることが好ましい。
前述の有機物は厚みで5nm以上80nm以下含有するのが好ましく、10nm以上70nm以下含有するのがより好ましい。中間層は前述の有機物を複数種類(一種以上)含んでもよい。
有機物の厚みは以下の様に測定することが可能である。
【0045】
<中間層の有機物厚み>
キャリア付銅箔の極薄銅層をキャリアから剥離した後に、露出した極薄銅層の中間層側の表面と、露出したキャリアの中間層側の表面をXPS測定し、デプスプロファイルを作成する。そして、極薄銅層の中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをA(nm)とし、キャリアの中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをB(nm)とし、AとBとの合計を中間層の有機物の厚み(nm)とすることができる。
上記XPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10
-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar
+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.8nm/min(SiO
2換算)
【0046】
<極薄銅層>
中間層の上には極薄銅層を設ける。中間層と極薄銅層との間には他の層を設けてもよい。極薄銅層はキャリアの両面に設けてもよい。極薄銅層は電解銅層であってもよい。ここで、当該電解銅層とは、電気めっき(電解めっき)により形成された銅層のことをいう。極薄銅層は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気めっきにより形成することができ、一般的な電解銅層で使用され、高電流密度での銅箔形成が可能であることから硫酸銅浴が好ましい。なお、極薄銅層を形成するために用いるめっき液に光沢剤を添加してもよい。極薄銅層の厚みは、0.9μm以下に制御されている。このような構成により、当該極薄銅層を用いて極めて微細な回路を形成することが可能となる。極薄銅層の厚みは、薄いほど回路形成性が向上しやすいため、0.85μm以下であるのが好ましく、0.80μm以下であるのがより好ましく、0.75μm以下であるのが更により好ましく、0.70μm以下であるのが更により好ましく、0.65μm以下であるのが更により好ましく、0.60μm以下であるのが更により好ましく、0.50μm以下であるのが更により好ましく、0.45μm以下であるのが更により好ましく、0.40μm以下であるのが更により好ましく、0.35μm以下であるのが更により好ましく、0.32μm以下であるのが更により好ましく、0.30μm以下であるのが更により好ましく、0.25μm以下であるのが更により好ましい。極薄銅層の厚みは小さすぎると取り扱いが困難になるという問題が生じるおそれがあるため、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることが好ましく、0.10μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であるのがより好ましい。極薄銅層の厚みは、典型的には0.01〜0.9μmであり、典型的には0.05〜0.9μmであり、より典型的には0.1〜0.9μmであり、更により典型的には0.15〜0.9μmである。
極薄銅層のピンホールの発生は、回路の断線を引き起こすおそれがある。そのため、極薄銅層のピンホール個数を低減することが望ましい。
極薄銅層の単位面積(m
2)当たりのピンホール個数(個/m
2)は20個/m
2以下であることが好ましく、15個/m
2以下であることが好ましく、11個/m
2以下であることが好ましく、10個/m
2以下であることが好ましく、8個/m
2以下であることが好ましく、6個/m
2以下であることが好ましく、5個/m
2以下であることが好ましく、3個/m
2以下であることが好ましく、1個/m
2以下であることが好ましく、1個/m
2以下であることが好ましく、0個/m
2であることが好ましい。
【0047】
<粗化処理及びその他の表面処理>
極薄銅層の表面またはキャリアの表面のいずれか一方または両方には、例えば絶縁基板との密着性を良好にすること等のために粗化処理を施すことで粗化処理層を設けてもよい。粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理は微細なものであっても良い。粗化処理層は、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層などであってもよい。また、銅又は銅合金で粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。その後に、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層および/または防錆層を形成しても良く、更にその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。または粗化処理を行わずに、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層および/又は防錆層を形成し、さらにその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。すなわち、粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよく、極薄銅層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。なお、上述の耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層はそれぞれ複数の層で形成されてもよい(例えば2層以上、3層以上など)。
ここでクロメート処理層とは無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩または二クロム酸塩を含む液で処理された層のことをいう。クロメート処理層はコバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタン等の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物等どのような形態でもよい)を含んでもよい。クロメート処理層の具体例としては、無水クロム酸または二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層や、無水クロム酸または二クロム酸カリウムおよび亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層等が挙げられる。
【0048】
なお、キャリアの極薄銅層を設ける側の表面とは反対側の表面に粗化処理層を設けることは、キャリアを当該粗化処理層を有する表面側から樹脂基板などの支持体に積層する際、キャリアと樹脂基板が剥離しにくくなるという利点を有する。上述のように極薄銅層又はキャリアの表面の粗化処理層上にさらに耐熱層等の表面処理層を形成することで、積層させる樹脂基材に極薄銅層またはキャリアからの銅等の元素が拡散することを良好に抑制することができ、樹脂基材との積層の際の熱圧着による密着性が向上する。
【0049】
耐熱層、防錆層としては公知の耐熱層、防錆層を用いることが出来る。例えば、耐熱層および/または防錆層はニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素を含む層であってもよく、ニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素からなる金属層または合金層であってもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素を含む酸化物、窒化物、珪化物を含んでもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル−亜鉛合金を含む層であってもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル−亜鉛合金層であってもよい。前記ニッケル−亜鉛合金層は、不可避不純物を除き、ニッケルを50wt%〜99wt%、亜鉛を50wt%〜1wt%含有するものであってもよい。前記ニッケル−亜鉛合金層の亜鉛及びニッケルの合計付着量が5〜1000mg/m
2、好ましくは10〜500mg/m
2、好ましくは20〜100mg/m
2であってもよい。また、前記ニッケル−亜鉛合金を含む層または前記ニッケル−亜鉛合金層のニッケルの付着量と亜鉛の付着量との比(=ニッケルの付着量/亜鉛の付着量)が1.5〜10であることが好ましい。また、前記ニッケル−亜鉛合金を含む層または前記ニッケル−亜鉛合金層のニッケルの付着量は0.5mg/m
2〜500mg/m
2であることが好ましく、1mg/m
2〜50mg/m
2であることがより好ましい。耐熱層および/または防錆層がニッケル−亜鉛合金を含む層である場合、銅箔と樹脂基板との密着性が向上する。
【0050】
例えば耐熱層および/または防錆層は、付着量が1mg/m
2〜100mg/m
2、好ましくは5mg/m
2〜50mg/m
2のニッケルまたはニッケル合金層と、付着量が1mg/m
2〜80mg/m
2、好ましくは5mg/m
2〜40mg/m
2のスズ層とを順次積層したものであってもよく、前記ニッケル合金層はニッケル−モリブデン、ニッケル−亜鉛、ニッケル−モリブデン−コバルト、ニッケル−スズ合金のいずれか一種により構成されてもよい。また、耐熱層および/または防錆層は、ニッケルまたはニッケル合金とスズとの合計付着量が2mg/m
2〜150mg/m
2であることが好ましく、10mg/m
2〜70mg/m
2であることがより好ましい。また、前述の耐熱層および/または防錆層は、[ニッケルまたはニッケル合金中のニッケル付着量]/[スズ付着量]=0.25〜10であることが好ましく、0.33〜3であることがより好ましい。当該耐熱層および/または防錆層を用いるとキャリア付銅箔をプリント配線板に加工して以降の回路の引き剥がし強さ、当該引き剥がし強さの耐薬品性劣化率等が良好になる。
【0051】
なお、シランカップリング処理層を設けるために用いられるシランカップリング剤には公知のシランカップリング剤を用いてよく、例えばアミノ系シランカップリング剤又はエポキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤を用いてよい。また、シランカップリング剤にはビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4−グリシジルブチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を用いてもよい。
【0052】
前記シランカップリング処理層は、公知のシランカップリング剤を使用して形成してもよく、エポキシ系シラン、アミノ系シラン、メタクリロキシ系シラン、メルカプト系シラン、ビニル系シラン、イミダゾール系シラン、トリアジン系シランなどのシランカップリング剤などを使用して形成してもよい。なお、このようなシランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。中でも、アミノ系シランカップリング剤又はエポキシ系シランカップリング剤を用いて形成したものであることが好ましい。
【0053】
ここで言うアミノ系シランカップリング剤とは、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル−3−アミノプロピル)トリス(2−エチルヘキソキシ)シラン、6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−(1−アミノプロポキシ)−3,3−ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ω−アミノウンデシルトリメトキシシラン、3−(2−N−ベンジルアミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N−ジメチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択されるものであってもよい。
【0054】
シランカップリング処理層は、ケイ素原子換算で、0.05mg/m
2〜200mg/m
2、好ましくは0.15mg/m
2〜20mg/m
2、好ましくは0.3mg/m
2〜2.0mg/m
2の範囲で設けられていることが望ましい。前述の範囲の場合、基材と表面処理銅箔との密着性をより向上させることが出来る。
【0055】
また、極薄銅層、粗化処理層、耐熱層、防錆層、シランカップリング処理層またはクロメート処理層の表面に、国際公開番号WO2008/053878、特開2008−111169号、特許第5024930号、国際公開番号WO2006/028207、特許第4828427号、国際公開番号WO2006/134868、特許第5046927号、国際公開番号WO2007/105635、特許第5180815号、特開2013−19056号に記載の表面処理を行うことができる。
【0056】
また、本発明のキャリア付銅箔は前記極薄銅層上、あるいは前記粗化処理層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいはクロメート処理層、あるいはシランカップリング処理層の上に樹脂層を備えても良い。前記樹脂層は絶縁樹脂層であってもよい。
【0057】
前記樹脂層は接着剤であってもよく、接着用の半硬化状態(Bステージ状態)の絶縁樹脂層であってもよい。半硬化状態(Bステージ状態)とは、その表面に指で触れても粘着感はなく、該絶縁樹脂層を重ね合わせて保管することができ、更に加熱処理を受けると硬化反応が起こる状態のことを含む。
【0058】
また前記樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでもよい。その種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルスルホン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、カルボキシル基変性アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、熱硬化性ポリフェニレンオキサイド樹脂、シアネートエステル系樹脂、多価カルボン酸の無水物、架橋可能な官能基を有する線状ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、リン含有フェノール化合物、ナフテン酸マンガン、2,2−ビス(4−グリシジルフェニル)プロパン、ポリフェニレンエーテル−シアネート系樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、シアノエステル樹脂、フォスファゼン系樹脂、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂、イソプレン、水素添加型ポリブタジエン、ポリビニルブチラール、フェノキシ、高分子エポキシ、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、ビスフェノール、ブロック共重合ポリイミド樹脂およびシアノエステル樹脂の群から選択される一種以上を含む樹脂を好適なものとしてあげることができる。
【0059】
また前記エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであって、電気・電子材料用途に用いることのできるものであれば、特に問題なく使用できる。また、前記エポキシ樹脂は分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましい。また、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ブロム化(臭素化)エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N-ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン化合物、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル化合物、リン含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、の群から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができ、又は前記エポキシ樹脂の水素添加体やハロゲン化体を用いることができる。
前記リン含有エポキシ樹脂として公知のリンを含有するエポキシ樹脂を用いることができる。また、前記リン含有エポキシ樹脂は例えば、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0060】
前記樹脂層は公知の樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体(無機化合物及び/または有機化合物を含む誘電体、金属酸化物を含む誘電体等どのような誘電体を用いてもよい)、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材、前述の樹脂、前述の化合物等を含んでよい。また、前記樹脂層は例えば国際公開番号WO2008/004399号、国際公開番号WO2008/053878、国際公開番号WO2009/084533、特開平11−5828号、特開平11−140281号、特許第3184485号、国際公開番号WO97/02728、特許第3676375号、特開2000−43188号、特許第3612594号、特開2002−179772号、特開2002−359444号、特開2003−304068号、特許第3992225、特開2003−249739号、特許第4136509号、特開2004−82687号、特許第4025177号、特開2004−349654号、特許第4286060号、特開2005−262506号、特許第4570070号、特開2005−53218号、特許第3949676号、特許第4178415号、国際公開番号WO2004/005588、特開2006−257153号、特開2007−326923号、特開2008−111169号、特許第5024930号、国際公開番号WO2006/028207、特許第4828427号、特開2009−67029号、国際公開番号WO2006/134868、特許第5046927号、特開2009−173017号、国際公開番号WO2007/105635、特許第5180815号、国際公開番号WO2008/114858、国際公開番号WO2009/008471、特開2011−14727号、国際公開番号WO2009/001850、国際公開番号WO2009/145179、国際公開番号WO2011/068157、特開2013−19056号に記載されている物質(樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等)および/または樹脂層の形成方法、形成装置を用いて形成してもよい。
【0061】
(樹脂層が誘電体(誘電体フィラー)を含む場合)
前記樹脂層は誘電体(誘電体フィラー)を含んでもよい。
上記いずれかの樹脂層または樹脂組成物に誘電体(誘電体フィラー)を含ませる場合には、キャパシタ層を形成する用途に用い、キャパシタ回路の電気容量を増大させることができるのである。この誘電体(誘電体フィラー)には、BaTiO
3、SrTiO
3、Pb(Zr−Ti)O
3(通称PZT)、PbLaTiO
3・PbLaZrO(通称PLZT)、SrBi
2Ta
2O
9(通称SBT)等のペブロスカイト構造を持つ複合酸化物の誘電体粉を用いる。
【0062】
前述の樹脂層に含まれる樹脂および/または樹脂組成物および/または化合物を例えばメチルエチルケトン(MEK)、トルエンなどの溶剤に溶解して樹脂液とし、これを前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート皮膜層、あるいは前記シランカップリング剤層の上に、例えばロールコータ法などによって塗布し、ついで必要に応じて加熱乾燥して溶剤を除去しBステージ状態にする。乾燥には例えば熱風乾燥炉を用いればよく、乾燥温度は100〜250℃、好ましくは130〜200℃であればよい。
【0063】
前記樹脂層を備えたキャリア付銅箔(樹脂付きキャリア付銅箔)は、その樹脂層を基材に重ね合わせたのち全体を熱圧着して該樹脂層を熱硬化せしめ、ついでキャリアを剥離して極薄銅層を表出せしめ(当然に表出するのは該極薄銅層の中間層側の表面である)、そこに所定の配線パターンを形成するという態様で使用される。
【0064】
この樹脂付きキャリア付銅箔を使用すると、多層プリント配線基板の製造時におけるプリプレグ材の使用枚数を減らすことができる。しかも、樹脂層の厚みを層間絶縁が確保できるような厚みにしたり、プリプレグ材を全く使用していなくても銅張り積層板を製造することができる。またこのとき、基材の表面に絶縁樹脂をアンダーコートして表面の平滑性を更に改善することもできる。
【0065】
なお、プリプレグ材を使用しない場合には、プリプレグ材の材料コストが節約され、また積層工程も簡略になるので経済的に有利となり、しかも、プリプレグ材の厚み分だけ製造される多層プリント配線基板の厚みは薄くなり、1層の厚みが100μm以下である極薄の多層プリント配線基板を製造することができるという利点がある。
【0066】
この樹脂層の厚みは0.1〜80μmであることが好ましい。樹脂層の厚みが0.1μmより薄くなると、接着力が低下し、プリプレグ材を介在させることなくこの樹脂付きキャリア付銅箔を内層材を備えた基材に積層したときに、内層材の回路との間の層間絶縁を確保することが困難になる場合がある。
【0067】
一方、樹脂層の厚みを80μmより厚くすると、1回の塗布工程で目的厚みの樹脂層を形成することが困難となり、余分な材料費と工数がかかるため経済的に不利となる。更には、形成された樹脂層はその可撓性が劣るので、ハンドリング時にクラックなどが発生しやすくなり、また内層材との熱圧着時に過剰な樹脂流れが起こって円滑な積層が困難になる場合がある。
【0068】
更に、この樹脂付きキャリア付銅箔のもう一つの製品形態としては、前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート処理層、あるいは前記シランカップリング処理層の上に樹脂層で被覆し、半硬化状態とした後、ついでキャリアを剥離して、キャリアが存在しない樹脂付き銅箔の形で製造することも可能である。
【0069】
以下に、本発明に係るキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造工程の例を幾つか示す。
【0070】
本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を極薄銅層側が絶縁基板と対向するように積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、モディファイドセミアディティブ法、パートリーアディティブ法及びサブトラクティブ法の何れかの方法によって、回路を形成する工程を含む。絶縁基板は内層回路入りのものとすることも可能である。
【0071】
本発明において、セミアディティブ法とは、絶縁基板又は銅箔シード層上に薄い無電解めっきを行い、パターンを形成後、電気めっき及びエッチングを用いて導体パターンを形成する方法を指す。
【0072】
従って、セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0073】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0074】
本発明において、モディファイドセミアディティブ法とは、絶縁層上に金属箔を積層し、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けを行った後、レジストを除去し、前記回路形成部以外の金属箔を(フラッシュ)エッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する方法を指す。
【0075】
従って、モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した極薄銅層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
【0076】
モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0077】
本発明において、パートリーアディティブ法とは、導体層を設けてなる基板、必要に応じてスルーホールやバイアホール用の孔を穿けてなる基板上に触媒核を付与し、エッチングして導体回路を形成し、必要に応じてソルダレジストまたはメッキレジストを設けた後に、前記導体回路上、スルーホールやバイアホールなどに無電解めっき処理によって厚付けを行うことにより、プリント配線板を製造する方法を指す。
【0078】
従って、パートリーアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
【0079】
本発明において、サブトラクティブ法とは、銅張積層板上の銅箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。
【0080】
従って、サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0081】
サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されいない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0082】
スルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、及びその後のデスミア工程は行わなくてもよい。
【0083】
本発明のプリント配線板の製造方法は、本発明のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面又は前記キャリア側表面に回路を形成する工程、前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面または前記キャリア側表面に樹脂層を形成する工程、前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させる工程、及び、前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させた後に、前記極薄銅層又は前記キャリアを除去することで、前記極薄銅層側表面又は前記キャリア側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程
を含んでもよい。また、本発明のプリント配線板の製造方法は、本発明のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側又は前記キャリア側表面に回路を形成する工程、前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面又は前記キャリア側に樹脂層を形成する工程、前記樹脂層上に回路を形成する工程、前記樹脂層上に回路を形成した後に、前記キャリア又は前記極薄銅層を剥離させる工程、及び、前記キャリア又は前記極薄銅層を剥離させた後に、前記極薄銅層又は前記キャリアを除去することで、前記極薄銅層側表面又は前記キャリア側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程を含んでもよい。また、前記樹脂層上に回路を形成する工程が、前記樹脂層上に別のキャリア付銅箔を極薄銅層側又はキャリア側から貼り合わせ、前記樹脂層に貼り合わせたキャリア付銅箔を用いて前記回路を形成する工程であってもよい。また、前記樹脂層上に貼り合わせる別のキャリア付銅箔が、本発明のキャリア付銅箔であってもよい。
【0084】
ここで、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例を図面を用いて詳細に説明する。なお、ここでは極薄銅層表面に粗化処理層が形成されたキャリア付銅箔を例にして説明しているが、粗化処理層は形成されていなくてもよい。
まず、
図1−Aに示すように、表面に粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔(1層目)を準備する。
次に、
図1−Bに示すように、極薄銅層の粗化処理層上にレジストを塗布し、露光・現像を行い、レジストを所定の形状にエッチングする。
次に、
図1−Cに示すように、回路用のめっきを形成した後、レジストを除去することで、所定の形状の回路めっきを形成する。
次に、
図2−Dに示すように、回路めっきを覆うように(回路めっきが埋没するように)極薄銅層上に埋め込み樹脂を設けて樹脂層を積層し、続いて別のキャリア付銅箔(2層目)を極薄銅層側から接着させる。
次に、
図2−Eに示すように、2層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、
図2−Fに示すように、樹脂層の所定位置にレーザー穴あけを行い、回路めっきを露出させてブラインドビアを形成する。
次に、
図3−Gに示すように、ブラインドビアに銅を埋め込みビアフィルを形成する。
次に、
図3−Hに示すように、ビアフィル上に、上記
図1−B及び
図1−Cのようにして回路めっきを形成する。
次に、
図3−Iに示すように、1層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、
図4−Jに示すように、フラッシュエッチングにより両表面の極薄銅層を除去し、樹脂層内の回路めっきの表面を露出させる。
次に、
図4−Kに示すように、樹脂層内の回路めっき上にバンプを形成し、当該はんだ上に銅ピラーを形成する。このようにして本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板を作製する。
なお、上述のプリント配線板の製造方法で、「極薄銅層」をキャリアに、「キャリア」を極薄銅層に読み替えて、キャリア付銅箔のキャリア側の表面に回路を形成して、樹脂で回路を埋め込み、プリント配線板を製造することも可能である。
【0085】
本発明のキャリア付銅箔を用いて上述のような埋め込み法を行うと、極薄銅層が薄いため、埋め込み回路を露出させるためのエッチングが短時間で完了し、生産性が飛躍的に向上する。
【0086】
上記別のキャリア付銅箔(2層目)は、本発明のキャリア付銅箔を用いてもよく、従来のキャリア付銅箔を用いてもよく、さらに通常の銅箔を用いてもよい。また、
図3−Hに示される2層目の回路上に、さらに回路を1層或いは複数層形成してもよく、それらの回路形成をセミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって行ってもよい。
【0087】
本発明のキャリア付銅箔を用いてセミアディティブ法やモディファイドセミアディティブ法を行うと、極薄銅層が薄いため、フラッシュエッチングが短時間で完了し、生産性が飛躍的に向上する。
【0088】
また、前記1層目に用いられるキャリア付銅箔は、当該キャリア付銅箔のキャリア側表面に基板を有してもよい。当該基板を有することで1層目に用いられるキャリア付銅箔は支持され、しわが入りにくくなるため、生産性が向上するという利点がある。なお、前記基板には、前記1層目に用いられるキャリア付銅箔を支持する効果を有するものであれば、全ての基板を用いることが出来る。例えば前記基板として本願明細書に記載のキャリア、プリプレグ、樹脂層や公知のキャリア、プリプレグ、樹脂層、金属板、金属箔、無機化合物の板、無機化合物の箔、有機化合物の板、有機化合物の箔を用いることができる。
【0089】
キャリア側表面に基板を形成するタイミングについては特に制限はないが、キャリアを剥離する前に形成することが必要である。特に、前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程の前に形成することが好ましく、キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に回路を形成する工程の前に形成することがより好ましい。
【0090】
なお、埋め込み樹脂(レジン)には公知の樹脂、プリプレグを用いることができる。例えば、BT(ビスマレイミドトリアジン)レジンやBTレジンを含浸させたガラス布であるプリプレグ、味の素ファインテクノ株式会社製ABFフィルムやABFを用いることができる。また、前記埋め込み樹脂は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記埋め込み樹脂は熱可塑性樹脂を含んでもよい。前記埋め込み樹脂の種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ブロック共重合ポリイミド樹脂、ブロック共重合ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルスルホン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、カルボキシル基変性アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、熱硬化性ポリフェニレンオキサイド樹脂、シアネートエステル系樹脂、多価カルボン酸の無水物などを含む樹脂や、紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、フッ素樹脂フィルムなどを好適なものとしてあげることができる。また、前記埋め込み樹脂(レジン)には本明細書に記載の樹脂層および/または樹脂および/またはプリプレグおよび/またはフィルムを使用することができる。
【0091】
更に、本発明のプリント配線板に電子部品類を搭載することで、プリント回路板が完成する。本発明において、「プリント配線板」にはこのように電子部品類が搭載されたプリント配線板およびプリント回路板およびプリント基板も含まれることとする。
また、当該プリント配線板を用いて電子機器を作製してもよく、当該電子部品類が搭載されたプリント回路板を用いて電子機器を作製してもよく、当該電子部品類が搭載されたプリント基板を用いて電子機器を作製してもよい。
【0092】
また、本発明のプリント配線板の製造方法は、本発明のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面または前記キャリア側表面と樹脂基板とを積層する工程、前記樹脂基板と積層した極薄銅層側表面または前記キャリア側表面とは反対側のキャリア付銅箔の表面に、樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を形成した後に、前記キャリア付銅箔から前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させる工程を含むプリント配線板の製造方法(コアレス工法)であってもよい。当該コアレス工法について、具体的な例としては、まず、本発明のキャリア付銅箔の極薄銅層側表面またはキャリア側表面と樹脂基板とを積層して積層体(銅張積層板、銅張積層体ともいう)を製造する。その後、樹脂基板と積層した極薄銅層側表面または前記キャリア側表面とは反対側のキャリア付銅箔の表面に樹脂層を形成する。キャリア側表面又は極薄銅層側表面に形成した樹脂層には、さらに別のキャリア付銅箔をキャリア側又は極薄銅層側から積層してもよい。
また、樹脂基板を中心として当該樹脂基板の両表面側に、キャリア/中間層/極薄銅層の順あるいは極薄銅層/中間層/キャリアの順でキャリア付銅箔が積層された構成を有する積層体あるいは「キャリア/中間層/極薄銅層/樹脂基板/極薄銅層/中間層/キャリア」の順に積層された構成を有する積層体あるいは「キャリア/中間層/極薄銅層/樹脂基板/キャリア/中間層/極薄銅層」の順に積層された構成を有する積層体あるいは「極薄銅層/中間層/キャリア/樹脂基板/キャリア/中間層/極薄銅層」の順に積層された構成を有する積層体を上述のプリント配線板の製造方法(コアレス工法)に用いてもよい。
そして、両端の極薄銅層あるいはキャリアの露出した表面には、別の樹脂層を設け、さらに銅層又は金属層を設けた後、当該銅層又は金属層を加工することで回路を形成してもよい。さらに、別の樹脂層を当該回路上に、当該回路を埋め込むように設けても良い。また、このような回路及び樹脂層の形成を1回以上行ってもよい(ビルドアップ工法)。そして、このようにして形成した積層体(以下、積層体Bとも言う)について、それぞれのキャリア付銅箔の極薄銅層またはキャリアをキャリアまたは極薄銅層から剥離させてコアレス基板を作製することができる。なお、前述のコアレス基板の作製には、2つのキャリア付銅箔を用いて、後述する極薄銅層/中間層/キャリア/キャリア/中間層/極薄銅層の構成を有する積層体や、キャリア/中間層/極薄銅層/極薄銅層/中間層/キャリアの構成を有する積層体や、キャリア/中間層/極薄銅層/キャリア/中間層/極薄銅層の構成を有する積層体を作製し、当該積層体を中心に用いることもできる。これら積層体(以下、積層体Aとも言う)の両側の極薄銅層またはキャリアの表面に樹脂層及び回路の2層を1回以上設け、樹脂層及び回路の2層を1回以上設けた後に、それぞれのキャリア付銅箔の極薄銅層またはキャリアをキャリアまたは極薄銅層から剥離させてコアレス基板を作製することができる。前述の積層体は、極薄銅層の表面、キャリアの表面、キャリアとキャリアとの間、極薄銅層と極薄銅層との間、極薄銅層とキャリアとの間には他の層を有してもよい。他の層は樹脂層や樹脂基板であってもよい。なお、本明細書において「極薄銅層の表面」、「極薄銅層側表面」、「キャリアの表面」、「キャリア側表面」、「積層体の表面」、「積層体表面」は、極薄銅層、キャリア、積層体が、極薄銅層表面、キャリア表面、積層体表面に他の層を有する場合には、当該他の層の表面(最表面)を含む概念とする。また、積層体は極薄銅層/中間層/キャリア/キャリア/中間層/極薄銅層の構成を有することが好ましい。当該積層体を用いてコアレス基板を作製した際、コアレス基板側に極薄銅層が配置されるため、モディファイドセミアディティブ法を用いてコアレス基板上に回路を形成しやすくなるためである。また、極薄銅層の厚みは薄いため、当該極薄銅層の除去がしやすく、極薄銅層の除去後にセミアディティブ法を用いて、コアレス基板上に回路を形成しやすくなるためである。
なお、本明細書において、「積層体A」または「積層体B」と特に記載していない「積層体」は、少なくとも積層体A及び積層体Bを含む積層体を示す。
【0093】
なお、上述のコアレス基板の製造方法において、キャリア付銅箔または積層体(積層体A)の端面の一部または全部を樹脂で覆うことにより、ビルドアップ工法でプリント配線板を製造する際に、中間層または積層体を構成する1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔の間のへの薬液の染み込みを防止することができ、薬液の染み込みによる極薄銅層とキャリアの分離やキャリア付銅箔の腐食を防止することができ、歩留りを向上させることができる。ここで用いる「キャリア付銅箔の端面の一部または全部を覆う樹脂」または「積層体の端面の一部または全部を覆う樹脂」としては、樹脂層に用いることができる樹脂を使用することができる。また、上述のコアレス基板の製造方法において、キャリア付銅箔または積層体において平面視したときにキャリア付銅箔または積層体の積層部分(キャリアと極薄銅層との積層部分、または、1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔との積層部分)の外周の少なくとも一部が樹脂又はプリプレグで覆ってもよい。また、上述のコアレス基板の製造方法で形成する積層体(積層体A)は、一対のキャリア付銅箔を互いに分離可能に接触させて構成されていてもよい。また、当該キャリア付銅箔において平面視したときにキャリア付銅箔または積層体の積層部分(キャリアと極薄銅層との積層部分、または、1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔との積層部分)の外周の全体にわたって樹脂又はプリプレグで覆われてなるものであってもよい。また、平面視した場合に樹脂又はプリプレグはキャリア付銅箔または積層体または積層体の積層部分よりも大きい方が好ましく、当該樹脂又はプリプレグをキャリア付銅箔または積層体の両面に積層し、キャリア付銅箔または積層体が樹脂又はプリプレグにより袋とじ(包まれている)されている構成を有する積層体とすることが好ましい。このような構成とすることにより、キャリア付銅箔または積層体を平面視したときに、キャリア付銅箔または積層体の積層部分が樹脂又はプリプレグにより覆われ、他の部材がこの部分の側方向、すなわち積層方向に対して横からの方向から当たることを防ぐことができるようになり、結果としてハンドリング中のキャリアと極薄銅層またはキャリア付銅箔同士の剥がれを少なくすることができる。また、キャリア付銅箔または積層体の積層部分の外周を露出しないように樹脂又はプリプレグで覆うことにより、前述したような薬液処理工程におけるこの積層部分の界面への薬液の浸入を防ぐことができ、キャリア付銅箔の腐食や侵食を防ぐことができる。なお、積層体の一対のキャリア付銅箔から一つのキャリア付銅箔を分離する際、またはキャリア付銅箔のキャリアと銅箔(極薄銅層)を分離する際には、樹脂又はプリプレグで覆われているキャリア付銅箔又は積層体の積層部分(キャリアと極薄銅層との積層部分、または、1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔との積層部分)が樹脂又はプリプレグ等により強固に密着している場合には、当該積層部分等を切断等により除去する必要が生じる場合がある。
【0094】
本発明のキャリア付銅箔をキャリア側又は極薄銅層側から、もう一つの本発明のキャリア付銅箔のキャリア側または極薄銅層側に積層して積層体を構成してもよい。また、前記一つのキャリア付銅箔の前記キャリア側表面又は前記極薄銅層側表面と前記もう一つのキャリア付銅箔の前記キャリア側表面又は前記極薄銅層側表面とが、必要に応じて接着剤を介して、直接積層させて得られた積層体であってもよい。また、前記一つのキャリア付銅箔のキャリア又は極薄銅層と、前記もう一つのキャリア付銅箔のキャリア又は極薄銅層とが接合されていてもよい。ここで、当該「接合」は、キャリア又は極薄銅層が表面処理層を有する場合は、当該表面処理層を介して互いに接合されている態様も含む。また、当該積層体の端面の一部または全部が樹脂により覆われていてもよい。
【0095】
キャリア同士、極薄銅層同士、キャリアと極薄銅層、キャリア付銅箔同士の積層は、単に重ね合わせる他、例えば以下の方法で行うことができる。
(a)冶金的接合方法:融接(アーク溶接、TIG(タングステン・イナート・ガス)溶接、MIG(メタル・イナート・ガス)溶接、抵抗溶接、シーム溶接、スポット溶接)、圧接(超音波溶接、摩擦撹拌溶接)、ろう接;
(b)機械的接合方法:かしめ、リベットによる接合(セルフピアッシングリベットによる接合、リベットによる接合)、ステッチャー;
(c)物理的接合方法:接着剤、(両面)粘着テープ
【0096】
一方のキャリアの一部若しくは全部と他方のキャリアの一部若しくは全部若しくは極薄銅層の一部若しくは全部とを、上記接合方法を用いて接合することにより、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層を積層し、キャリア同士またはキャリアと極薄銅層を分離可能に接触させて構成される積層体を製造することができる。一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが弱く接合されて、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが積層されている場合には、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層との接合部を除去しないでも、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とは分離可能である。また、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが強く接合されている場合には、一方のキャリアと他方のキャリアとが接合されている箇所を切断や化学研磨(エッチング等)、機械研磨等により除去することにより、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層を分離することができる。
【0097】
また、このように構成した積層体に樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を少なくとも1回形成した後に、前記積層体のキャリア付銅箔から前記極薄銅層又はキャリアを剥離させる工程を実施することでプリント配線板を作製することができる。なお、当該積層体の一方または両方の表面に、樹脂層と回路との2層を設けてもよい。
前述した積層体に用いる樹脂基板、樹脂層、樹脂、プリプレグは、本明細書に記載した樹脂層であってもよく、本明細書に記載した樹脂層に用いる樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでもよい。なお、キャリア付銅箔は平面視したときに樹脂又はプリプレグより小さくてもよい。
【0098】
<キャリア付銅箔の製造方法>
次に、本発明に係るキャリア付銅箔の製造方法を説明する。本発明に係るキャリア付銅箔を製造するためには、以下の製造条件を満たしている必要がある。
(1)キャリアをドラムで支持しつつ、ロール・ツウ・ロール搬送方式で搬送しながら、中間層(剥離層とも言う)、極薄銅層を電解めっきにより形成するか、または極薄銅層を形成する際の製造装置において、搬送ロールと搬送ロールとの間を短くし、さらに、搬送張力を通常の3〜5倍程度として極薄銅層を形成する。
なお、本発明の超極薄銅箔の厚みを0.9μm以下とするために、めっき時の電流密度を上昇する目的で、めっき時の電流密度を10A/dm
2以上とする事が特徴として挙げられる。電流密度が10A/dm
2以下であると、粉状めっきとなり、良好なめっき表面を得る事が出来ない。電流密度は10A/dm
2以上が好ましく、12A/dm
2以上がより好ましく、15A/dm
2以上が更により好ましい。
また、本発明の超極薄銅箔の剥離強度を10N/m以下とするために、中間層形成時の処理液の温度(例えばCr、Ni、Co−Moめっき等のめっき液温度やクロメート処理液や有機物層を形成するための処理液の温度)の範囲を45〜70℃とする事が特徴として挙げられる。中間層形成時のめっき液温度または処理液温度が45℃よりも低いと、反応速度が低下し、剥離強度が上昇しやすくなってしまい、10N/m以下に制御する事が困難となる。一方、中間層形成時のめっき液温度または処理液温度が70℃を超えてしまうと、めっきまたは処理層が不均一になり、外観上問題となってしまう。中間層形成時のめっき液温度または処理液温度は45〜70℃が好ましく、50〜65℃がより好ましく、55〜60℃が更により好ましい。
【0099】
(1)について:
本発明の実施形態に係るキャリア付銅箔の製造方法は、ロール・ツウ・ロール搬送方式により長さ方向に搬送される長尺状のキャリアの表面を処理することで、キャリアと、キャリア上に積層された中間層と、中間層上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔を製造する。本発明の実施形態に係るキャリア付銅箔の製造方法は、搬送ロールで搬送されるキャリアをドラムで支持しながら、めっき(例えば電解めっき、無電解めっき等の湿式めっきまたはスパッタリング、CVD、PVD等による乾式めっき)によりキャリア表面に中間層を形成する工程と、中間層が形成されたキャリアをドラムで支持しながら、めっき(例えば電解めっき、無電解めっき等の湿式めっきまたはスパッタリング、CVD、PVD等による乾式めっき)により中間層表面に極薄銅層を形成する工程と、キャリアをドラムで支持しながら、めっき(例えば電解めっき、無電解めっき等の湿式めっきまたはスパッタリング、CVD、PVD等による乾式めっき)により極薄銅層表面に粗化処理層を形成する工程とを含む。例えば各工程ではドラムにて支持されているキャリアの処理面がカソードを兼ねており、このドラムと、ドラムに対向するように設けられたアノードとの間のめっき液中で各電解めっきが行われる。このように、キャリアをドラムで支持しつつ、ロール・ツウ・ロール搬送方式で搬送しながら、中間層、極薄銅層をめっき(例えば電解めっき、無電解めっき等の湿式めっきまたはスパッタリング、CVD、PVD等による乾式めっき)により形成することにより、めっきにおけるアノード−カソード間の極間距離が安定する。このため、形成する層の厚みのバラツキが良好に抑制され、本発明のような超極薄銅層を精度良く作製することが可能となる。また、めっきにおけるアノード−カソード間の極間距離が安定することで、キャリア表面に形成される中間層の厚みバラツキが良好に抑制されると、キャリアから極薄銅層へのCuの拡散も一様に抑制される。このため、極薄銅層におけるピンホールの発生が良好に抑制される。
また、ドラムで支持する以外の方法としては、極薄銅層を形成する際の製造装置において、搬送ロールと搬送ロールとの間を短くし、さらに、搬送張力を通常の3〜5倍程度として極薄銅層を形成するという方策もある。サポートロール等を導入することにより搬送ロールと搬送ロールとの間を短くし(例えば800〜1000mm程度)、さらに、搬送張力を通常の3〜5倍程度とすることで、キャリアの位置が安定し、アノード−カソード間の極間距離が安定するためである。極間距離が安定することにより、アノードとカソードの距離を通常よりも小さくすることができる。
なお、ドラム方式ではなく、スパッタリングや無電解めっきで形成すると、装置を維持するためのランニングコストや、スパッタリングターゲット、めっき液の薬液等のコストが高いため、製造コストが高い場合があるという問題がある。
【実施例】
【0100】
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0101】
1.キャリア付銅箔の製造
キャリアとして、表1に記載の厚みの銅箔を準備した。表中の「電解銅箔」はJX日鉱日石金属社製の電解銅箔を用い、「圧延銅箔」はJX日鉱日石金属社製タフピッチ銅箔(JIS−H3100−C1100)を用いた。
【0102】
この銅箔のシャイニー面に対して、以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続ラインで以下の条件で表に記載の中間層、極薄銅層及び粗化処理層の各形成処理を行った。
【0103】
(中間層形成)
中間層形成条件は表1に記載の通りとした。
−中間層形成時電流密度−
表1の中間層形成時電流密度の条件を以下に示す。
◎:15A/dm
2以上
〇:10A/dm
2以上15A/dm
2未満
×:10A/dm
2未満
【0104】
−中間層形成時温度−
表1の中間層形成時の処理液温度の条件を以下に示す。
◎:50℃以上65℃以下
〇:40℃以上50℃未満または65℃超70℃以下
×:40℃未満または70℃超
【0105】
−中間層形成方法−
表1の中間層形成方法の条件を以下に示す。
(A)ドラムによる運箔方式
・アノード:不溶解性電極
・カソード:直径100cmドラムに支持されたキャリア表面
・極間距離:10mm
・キャリア搬送張力:0.05kg/mm
(B)改良した九十九折による運箔方式
・アノード:不溶解性電極
・カソード:キャリア処理面
・極間距離:10mm
・キャリア搬送張力:0.20kg/mm
・サポートロールを搬送ロール間に設けて、極薄銅層形成時のロール間距離を通常の1/2(800〜1000mm程度)とした。
【0106】
なお、表中の「中間層」の欄の記載は以下の処理をしたことを意味する。また、例えば「Ni/有機物」は、ニッケルめっき処理を行った後に、有機物処理を行ったことを意味する。
【0107】
・「Ni」:ニッケルめっき
(液組成)硫酸ニッケル:270〜280g/L、塩化ニッケル:35〜45g/L、酢酸ニッケル:10〜20g/L、クエン酸三ナトリウム:15〜25g/L、光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等、ドデシル硫酸ナトリウム:55〜75ppm
(pH)4〜6
(通電時間)1〜20秒
【0108】
・「クロメート」:電解純クロメート処理
(液組成)重クロム酸カリウム:1〜10g/L
(pH)7〜10
(クーロン量)0.5〜90As/dm
2
(通電時間)1〜30秒
【0109】
・「有機物」:有機物層形成処理
濃度1〜30g/Lのカルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)を含む、液温40℃、pH5の水溶液を、20〜120秒間シャワーリングして噴霧することにより行った。
【0110】
・「Ni−Mo」:ニッケルモリブデン合金めっき
(液組成)硫酸Ni六水和物:50g/dm
3、モリブデン酸ナトリウム二水和物:60g/dm
3、クエン酸ナトリウム:90g/dm
3
(通電時間)3〜25秒
【0111】
・「Cr」:クロムめっき
(液組成)CrO
3:200〜400g/L、H
2SO
4:1.5〜4g/L
(pH)1〜4
(通電時間)1〜20秒
【0112】
・「Co−Mo」:コバルトモリブデン合金めっき
(液組成)硫酸Co:50g/dm
3、モリブデン酸ナトリウム二水和物:60g/dm
3、クエン酸ナトリウム:90g/dm
3
(通電時間)3〜25秒
【0113】
・「Ni−P」:ニッケルリン合金めっき
(液組成)Ni:30〜70g/L、P:0.2〜1.2g/L
(pH)1.5〜2.5
(通電時間)0.5〜30秒
【0114】
(極薄銅層形成)
表1の極薄銅層形成方法の条件を以下に示す。
(A)ドラムによる運箔方式
・アノード:不溶解性電極
・カソード:直径100cmドラムに支持されたキャリア表面
・極間距離:10mm
・電解液組成:銅濃度80〜120g/L、硫酸濃度80〜120g/L
・電解めっきの浴温:50〜80℃
・電解めっきの電流密度:90A/dm
2
・キャリア搬送張力:0.05kg/mm
(B)改良した九十九折による運箔方式
・アノード:不溶解性電極
・カソード:キャリア処理面
・極間距離:10mm
・電解液組成:銅濃度80〜120g/L、硫酸濃度80〜120g/L
・電解めっきの浴温:50〜80℃
・電解めっきの電流密度:90A/dm
2
・キャリア搬送張力:0.20kg/mm
・サポートロールを搬送ロール間に設けて、極薄銅層形成時のロール間距離を通常の1/2(800〜1000mm程度)とした。
【0115】
(粗化処理層形成)
表1の粗化処理層形成方法の条件を以下に示す。
(A)ドラムによる運箔方式
・アノード:不溶解性電極
・カソード:直径100cmドラムに支持されたキャリア表面
・極間距離:10mm
・キャリア搬送張力:0.05kg/mm
(B)改良した九十九折による運箔方式
・アノード:不溶解性電極
・カソード:キャリア処理面
・極間距離:10mm
・キャリア搬送張力:0.20kg/mm
・サポートロールを搬送ロール間に設けて、極薄銅層形成時のロール間距離を通常の1/2(800〜1000mm程度)とした。
【0116】
表の「粗化処理形成条件」の「1」及び「2」は以下の処理条件を示す。
(1)粗化処理条件「1」
(液組成)
Cu:10〜20g/L
Ni:5〜15g/L
Co:5〜15g/L
(電気めっき条件)
温度:25〜60℃
電流密度:35〜55A/dm
2
粗化クーロン量:5〜50As/dm
2
めっき時間:0.1〜1.4秒
【0117】
(2)粗化処理条件「2」
・電解めっき液組成(Cu:10g/L、H
2SO
4:50g/L)
・電解めっきの浴温:40℃
・電解めっきの電流密度:20〜40A/dm
2
・粗化クーロン量:2〜56As/dm
2
・めっき時間:0.1〜1.4秒
【0118】
(耐熱層形成)
「Cu-Zn」:銅−亜鉛合金メッキ
(液組成)
NaOH:40〜200g/L
NaCN:70〜250g/L
CuCN:50〜200g/L
Zn(CN)
2:2〜100g/L
As
2O
3:0.01〜1g/L
(液温)
40〜90℃
(電流条件)
電流密度:1〜50A/dm
2
めっき時間:1〜20秒
【0119】
「Ni−Zn」:ニッケル−亜鉛合金メッキ
液組成 :ニッケル2〜30g/L、亜鉛2〜30g/L
pH :3〜4
液温 :30〜50℃
電流密度 :1〜2A/dm
2
クーロン量:1〜2As/dm
2
【0120】
「Zn」:亜鉛メッキ
液組成 :亜鉛15〜30g/L
pH :3〜4
液温 :30〜50℃
電流密度 :1〜2A/dm
2
クーロン量:1〜2As/dm
2
【0121】
(防錆層形成)
「クロメート」:クロメート処理
K
2Cr
2O
7(Na
2Cr
2O
7或いはCrO
3):2〜10g/L
NaOH又はKOH:10〜50g/L
ZnOH又はZnSO
4・7H
2O:0.05〜10g/L
pH:7〜13
浴温:20〜80°C
電流密度:0.05〜5A/dm
2
時間:5〜30秒
【0122】
(シランカップリング処理層形成)
0.1vol%〜0.3vol%の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン水溶液をスプレー塗布した後、100〜200℃の空気中で0.1〜10秒間乾燥・加熱した。
【0123】
2.キャリア付銅箔の評価
上記のようにして得られたキャリア付銅箔について、以下の方法で各評価を実施した。
【0124】
<極薄銅層の厚みの測定>
キャリア付銅箔の重量を測定した後、キャリアを引き剥がし、キャリアの重量を測定し、前者と後者との差を極薄銅層の重量と定義する。
・試料の大きさ:10cm角シート(プレス機で打ち抜いた10cm角シート)
・試料の採取:任意の3箇所
・以下の式により各試料の重量法による極薄銅層の厚みを算出した。
重量法による極薄銅層の厚み(μm)={(10cm角シートのキャリア付銅箔の重量(g/100cm
2))−(前記10cm角シートのキャリア付銅箔から極薄銅層を引き剥がした後の、キャリアの重量(g/100cm
2))}/銅の密度(8.96g/cm
3)×0.01(100cm
2/cm
2)×10000μm/cm
なお、試料の重量測定には、小数点以下4桁まで測定可能な精密天秤を使用した。そして、得られた重量の測定値をそのまま上記計算に使用した。
・3箇所の重量法による極薄銅層の厚みの算術平均値を、重量法による極薄銅層の厚みとした。
また、精密天秤にはアズワン株式会社 IBA−200を用い、プレス機は、野口プレス株式会社製HAP−12を用いた。
なお、極薄銅層の上に粗化処理層等の表面処理層を形成した場合には、当該表面処理層を形成した後に上記測定を行った。
【0125】
<剥離強度(常態剥離強度)の測定>
キャリア付銅箔の極薄銅層側の表面をBT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)に貼り付けて220℃で2時間、20kg/cm
2で加熱圧着した。次に、引張試験機にてキャリア側を引っ張り、JIS C 6471 8.1に準拠してキャリアを剥がしたときの剥離強度を測定した。
【0126】
<ピンホール>
キャリア付銅箔の極薄銅層側の表面をBT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)に貼り付けて220℃で2時間、20kg/cm
2で加熱圧着した。次に、キャリア側を上に向け、キャリア付銅箔のサンプルを手で押さえながら、無理に引き剥がすことなく極薄銅層が途中で切れてしまわないように注意しながら極薄銅層からキャリアを手で剥がした。続いて、BT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)上の極薄銅層表面に対し、民生用の写真用バックライトを光源にして、大きさ250mm×250mmのサンプル5枚についての、孔径で50μm以下のピンホールの数を目視で測定した。そして、以下の式により単位面積(m
2)当たりのピンホール個数を算出した。
単位面積(m
2)当たりのピンホール個数(個/m
2)=大きさ250mm×250mmのサンプル5枚について測定されたピンホール個数の合計(個)/観察した表面領域の合計面積(5枚×0.0625m
2/枚)
そして、以下の基準により、ピンホールの評価を行った。
◎:0個/m
2
〇:1〜10個/m
2
△:11〜20個/m
2
×:20個超/m
2
【0127】
<極薄銅層形成後の後工程での剥れ>
極薄銅層形成後の後工程(粗化処理工程)での、キャリアの剥れの有無(有り(10回中5回以上):×、時々有り(10回中1回から4回):△、無し:〇)を評価した。
実施例及び比較例の作製条件及び評価結果を表1に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
(評価結果)
実施例1〜18は、いずれも極薄銅層の厚みが0.9μm以下のキャリア付銅箔について、キャリア引き剥がし時に生じるピンホールの発生を良好に抑制することができた。
比較例1〜6は、いずれも極薄銅層の厚みが0.9μm以下のキャリア付銅箔について、JIS C 6471 8.1に準拠の90°剥離法で前記キャリアを引き剥がすときの剥離強度が10N/mを超えており、キャリア引き剥がし時に生じるピンホールの発生を抑制することができなかった。