(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る実施の形態(以下、実施形態という)について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0025】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態である包装用蓋体10が取り付けられた包装体1を示す斜視図である。
図1において、厚さ方向が矢印Hで示され、長さ方向が矢印Lで示され、幅方向が矢印Wで示されている。包装体1が水平面に置かれているとき、厚さ方向Hは縦方向または上下方向に相当し、長さ方向Lおよび幅方向Wは水平面上で直交する横方向に相当する。このことは、
図1以外の他の図面(
図2、
図3等)において同様である。
【0026】
包装体1は、例えば多数枚のウェットシート(内容物)Sが積層されてなる積層体7を密封状態で収容する容器である。包装体1は、ウェットシートに含まれる水分やアルコール等に対して不透過性の可撓性フィルム材によって形成されている。この可撓性フィルム材には、例えばアルミ箔に樹脂フィルムを積層したフィルム材が好適に用いられる。ただし、包装体1に収容される内容物はウェットシート以外のどのようなものであってもよい。また、可撓性フィルム材は単層または複層の樹脂フィルム材で構成されてもよい。
【0027】
包装体1は、厚さ方向Hに対向する頂面2aおよび底面2bと、これらの頂面2aおよび底面2bに一体的に連続して幅方向Wに対向する2つの側面3a,3bとを有する。
図1には示されていないが、包装体1の頂面2aには商品名やロゴマーク等が印刷により付されている。
【0028】
包装体1の底面には、図示されない縦シール部が長さ方向に沿って形成される。この縦シール部は、包装体1を形成する可撓性フィルム材の基材となる長尺帯状フィルム材の筒状に成形した後に、幅方向の両側縁部を例えばヒートシール等によって接合することによって形成される。
【0029】
包装体1の長さ方向Lの両端部は、横シール部4a,4bによって閉塞されている。横シール部4a,4bは、頂面2aと底面2bとが例えばヒートシール等で接合されることによって形成される。このように包装体1は、底面2aに形成された縦シール部と、長さ方向両端部に形成された横シール部4a,4bとによって、内部が密封された状態に封止されている。
【0030】
包装体1の頂面2aの略中央位置には、取出口5が開口して形成されている。本実施形態では取出口5は、長さ方向の両端部が円弧状をなす長孔形状に形成されている。ただし、これに限定されず、取出口5は、例えば、矩形状、円形状、楕円状等の他の形状であってもよいし、切り目だけが形成されスリットとして形成されてもよい。
【0031】
包装体1の取出口5は、柔軟なフィルム材からなる封止片6によって密封状態に閉じられている。封止片6は、取出口5よりも少し大きい略相似形状の外形を有し、取出口5の全体を覆うことができる大きさに形成されている。封止片6の裏面には粘着層が設けられている。これにより、封止片6は包装体1の頂面2aの取出口5の周辺縁部上に接着されている。なお、封止片6は一旦剥がされると捨てられるため、その粘着層は繰り返し剥離可能な粘着層とする必要はない。ただし、これに限定されるものではなく、剥離と接着を繰り返し行えるような粘着層としてもよい。
【0032】
包装体用蓋体(以下、適宜に「蓋体」とだけいう)10は、包装体1の頂面2a上に接着されて、取出口5を塞ぐ封止片6を覆って周囲を取り囲むように取り付けられている。蓋体10は、合成樹脂性のシート材を用いたシート成形によって製造される。その製造方法については後述する。
【0033】
図2は、
図1に示される蓋体10の平面図および側面図であり、
図3は、
図1に示される蓋体10のA−A線断面図である。蓋体10は、取付ベース12とヒンジ部14と蓋部16とを一体的に備えている。
【0034】
本実施形態における蓋体10は、ポリプロピレン樹脂(PP)を主材料とする有色で不透明な合成樹脂シート材から形成される。このシート材は、例えば、ポリプロピレン樹脂30〜50重量%、フィラー20〜50重量%、ならびに、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)および/またはナイロン樹脂(NY)10〜40重量%を含む樹脂材料によって好適に構成される。
【0035】
より詳しくは、フィラーを30重量%としたとき、第1例としてPP50重量%でHDPE20重量%、第2例としてPP40重量%でHDPE30重量%、第3例としてPP30重量%でHDPE40重量%等が好適である。また、第4例として、PP50重量%、フィラー40重量%、NY10重量%等も好適である。このようにフィラー(例えばタルク)等をPPに混ぜることで、シート成形時の収縮率を1.4〜1.9%から0.4%程度まで抑えられることが確認されている。
【0036】
ここで、フィラーには、例えば、タルク、結晶シリカ、溶融シリカ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、水和アルミナ、ガラス短繊維、マイカ、無水石膏、硫酸バリウム等を用いることができる。上記タルクの具体例としては、日本タルク株式会社製の製品名「タルクMS−K」(化学名:含水珪酸マグネシウム、化学式:3MgO・4SiO
2・H
2O)が挙げられる。
【0037】
また、シート成形されるシート材の厚みは、例えば0.4〜0.8mmであることが好ましく、特に、例えば0.7mmであることが好ましい。
【0038】
蓋体10の取付ベース12は、包装体1の頂面2aに固着される基部である。取付ベース12は、2つの長辺部18a,18bと2つの短辺部20a,20bとが4つの略円弧状の角部によって連続した略矩形枠状に形成されている。取付ベース12の中央領域には、略矩形状の開口部22が形成されている。開口部22は、取付ベース12が包装体1の封止片6の周囲を取り囲んで配置されたとき、封止片6の全体を露出させる程度の大きさに形成されている。開口部22の形状は、略矩形状に限定されるものではなく、例えば、円形、楕円形等の他の形状であってもよい。
【0039】
取付ベース12は、厚み方向Hに略矩形環状に突出したベース側凸部(嵌合部分)24を有する。ベース側凸部24の内周側には横方向に沿って張り出した内側フランジ部26が形成されており、内側フランジ部26の内周縁部によって上記開口部22が画定されている。
【0040】
また、上記ベース側凸部24の外周側面であってヒンジ部14とは反対側に位置する外周側面には、係合凸部52が突設されている。この係合凸部52は、後述する蓋部16の係合凹部54と係合することにより、取付ベース12に対して蓋部16が閉じた状態を保持する機能を有する。ここで、係合凸部52および係合凹部54の組は、ヒンジ部14の長さ方向の中央部に略対応する位置に1組形成されるのが好ましい。これにより、蓋部16を閉じたときの両者の係合が確実に行われるようになる。ただし、係合凸部52および係合凹部54を複数組設けることもできる。
【0041】
取付ベース12のベース側凸部24の外周側には横方向に沿って張り出した外側フランジ部28が形成されている。蓋体10が包装体1の頂面2aに接着されるとき、外側フランジ部28の裏面側に塗工されることとなるホットメルト材29が多数の一点鎖線円で示されている。
【0042】
ヒンジ部14は、長さ方向Lに関して取付ベース12および蓋部16よりも細幅の帯状をなし、一端部が取付ベース12の外側フランジ部28の縁部に連設するとともに、他端部が蓋部16に連設されている。ヒンジ部14の幅方向略中央には、取付ベース12に対して蓋部16を閉じたときに屈曲されることとなる屈曲線15が示されている。この屈曲線15は、例えば屈曲しやすくするために長さ方向両側から所定深さの切り込みを入れて規定されてもよいし、あるいは、
図2中の右側の側面図に示すように屈曲線15の幅方向両側部分をそれぞれ円弧状に成形して剛性を大きくすることで規定されてもよいし、あるいは、線状の薄肉部(例えば、ハーフカット罫線)として形成されてもよい。
【0043】
蓋部16は、略矩形状の平板部30と、平板部30の外周を取り囲んで突設された略矩形環状の蓋側凸部(嵌合部分)32と、蓋側凸部32の外周を取り囲むように横方向に沿って形成されたフランジ部34と、フランジ部34の外周縁部から厚み方向に沿って延びる外周壁部36とを一体に有する。
【0044】
平板部30の表面、すなわち、蓋部16が取付ベース12に対して閉じられたときの外側表面には、包装体1の商品名やロゴマーク等を表示する印刷表示層31が形成されている。この印刷表示層31は、シート成形される前の平らなシート材に印刷することにより形成される。
【0045】
蓋側凸部32は、ベース側凸部24よりも一回り大きく形成されている。これにより、
図3に示すように、蓋部16が取付ベース12に対して閉じられたとき、蓋側凸部32の内周側面がベース側凸部24の外周側面に嵌合する。その結果、包装体1の取出口5および封止片6に対向し且つベース側凸部24に囲まれた空間領域38が蓋部16の平板部30によって密封状態に閉塞されるようになっている。
【0046】
また、上記蓋側凸部32の内周側面であってヒンジ部14とは反対側に位置する内周側面には、係合凹部54が形成されている。この係合凹部54は、取付ベース12の係合凸部52と係合することにより、取付ベース12に対して蓋部16が閉じた状態を保持する機能を有する。
【0047】
蓋部16の外周壁部36には、外側へ円弧状に膨らんだ指掛け部40が形成されている。これにより、ユーザが蓋体10の蓋部16を開こうとするときに、蓋部16の指掛け部40に容易に指を係合させることができるようにしている。また、蓋部16の指掛け部40に対応して、取付ベース12の外側フランジ部28に略円弧状の凹み部28aを形成してもよい。このようにすることで、ユーザが蓋部16の指掛け部40に指を係合させるときに爪が取付ベース12の外側フランジ部28に引っ掛かるのを抑制でき、より安全な設計となる。
【0048】
次に、本実施形態の包装体用蓋体10の製造方法について、
図4を参照して説明する。
図4は、包装体用蓋体10の製造方法を示すフローチャートである。
【0049】
まず、ステップS1において、長尺ウェブ状または枚葉状の合成樹脂製シート材の一方表面にコロナ処理を施す。
【0050】
続いて、ステップS2において、シート材のコロナ処理面に印刷表示層31を印刷により形成する。
【0051】
次いで、ステップS3において、シート材を真空成形(または圧空成形)によってシート成形し、
図2に示されるような蓋体10の形状を成形する。
【0052】
最後に、ステップS4において、抜き加工することによりシート材から蓋体10を切り離す。この抜き工程時に、蓋体10の取付ベース12に開口部22が穿孔されて形成されてもよい。これにより、蓋体10の製造が完了する。
【0053】
なお、蓋体10に印刷表示層31を設けない場合、上記のステップS1およびS2を省略することができる。
【0054】
次に、
図5を参照して、包装体用蓋体が取り付けられた包装体の製造工程について説明する。
図5は、蓋体10付き包装体1の製造工程を概略的に示す斜視図である。
【0055】
包装体1に形成される長尺ウェブ状の可撓性フィルム材9が矢印D方向に連続して搬送される。この可撓性フィルム材9には、図示しない上流側の工程として、所定の間隔を空けて取出口5が穿孔され、それを覆うように封止片6が貼着される。
【0056】
一方、複数枚のウェットシートの積層体7が別の工程として作られる。そして、積層体供給工程において、封止片6が貼着された可撓性フィルム材9の送り速度に同期させて、積層体7を封止片6に対応する位置で可撓性フィルム材9の内側に供給する。これにより、可撓性フィルム材9をガイド部材50によって案内しながら積層体7の周囲に巻き付けて包み込んでいく。
【0057】
続いて、縦シール工程において、可撓性フィルム材9の幅方向両側の端縁部を積層体7の下側で重ね合わせた状態で、その端縁側同士を送り方向に沿ってシールして縦シール部を形成する。
【0058】
そして、次に横シール工程において、先行の積層体7の後部側と、後続の積層体7の前部側とを横方向にヒートシール等により接合して横シール部4a,4bを形成した後、後方の横シール部4bの位置で可撓性フィルム材9を切断する。これにより、先行の積層体7についての包装体1の製袋を完了する。
【0059】
そして、各包装体の製袋が完了すると、各包装体1の頂面2aの取出口5側に、閉じられた状態にある蓋体10を供給する。このとき、蓋体10の取付ベース12の外側フランジ部28には、ホットメルト材29が既に塗工されている。したがって、包装体1の頂面2a上に位置合わせして置かれた蓋体10を適度な押圧力で抑えることで、ホットメルト材29が外側フランジ部28の略全体に隙間無く広がる。これにより、蓋体10が包装体1に気密状に固着されて、蓋体10付き包装体1が製造される。
【0060】
次に、上記の構成を有する蓋体10が取り付けられた包装体1の使用状態について説明する。
【0061】
包装体1からウェットシートSを取り出そうとするユーザは、蓋部16の指掛け部40に指を引っ掛けて持ち上げる。そうすると、
図3中に破線で示されるように、取付ベース12のベース側凸部24と蓋部16の蓋側凸部32との嵌合が外れて蓋部16が開かれる。これにより、包装体1の封止片6が取付ベース12の開口部22内に露出した状態になる。
【0062】
次に、ユーザは、封止片6の端を摘んで剥がして、取出口5を露出した状態とする。そして、露出した取出口5から指を包装体1の内部に挿入して、積層体7の最上部に位置するウェットシートSを摘んで包装体1の外部に引き出す。これにより、ユーザは、ウェットシートSを使用することできる。
【0063】
包装体1に収容された各ウェットシートSは隣接するウェットシート同士で端部が交互に重なった状態で積層されている。そのため、1枚のウェットシートを引き出すと、次のウェットシートの端部が連携して引き出されることより、取出口5から飛び出した状態となり、ユーザが次のウェットシートを容易に引き出せるよう工夫されている。
【0064】
ユーザが使用したいウェットシートSを取り出し終えると、取出口5からはみ出したシートSの端部を取付ベース12のベース側凸部24の内側に入れた状態として、蓋部16を閉じる。そうすると、蓋部16の蓋側凸部32とベース側凸部24との嵌合によって、蓋体10の内側が気密に閉じた状態となる。これにより、包装体10内のウェットシートSの乾燥および埃の進入等が抑制される。
【0065】
上述したように、本実施形態の包装体用蓋体10は、合成樹脂性のシート材を用いたシート成形によって一体に形成されているため、熱可塑性樹脂の射出成形やプレス成形等によって蓋体を製造する場合に比べて、薄肉軽量化が容易で少ない樹脂材料で安価に製造することができる。したがって、内容物がなくなって包装体1が蓋体10と一緒に廃棄されるとき、ゴミ量を減らせて環境にやさしく且つ経済的な商品になる。
【0066】
次に、
図6および
図7を参照して、本実施形態の包装体用蓋体10の変形例について説明する。
図6は、
図3中におけるB部の拡大断面図である。また、
図7は、シート成形されるシート材の拡大断面図である。
【0067】
図6に示すように、蓋体10における取付ベース12のベース側凸部24の外周側面24aに、蓋部16の蓋側凸部32との嵌合度合を良好にするための嵌合調整層42を設けてもよい。この嵌合調整層42を設けることによって、蓋部16が閉じられたときの蓋体10の内側の密封状態をより確実に実現および維持することができる。嵌合調整層42の印刷には、例えば、硬質ニス、発泡インキ、マイクロビーズおよび/またはガラスビーズ入りのメジューム等を用いることができる。ここで、発泡インキとして、例えば、株式会社ダイセル製の低温加熱型発泡インキ(型番:EK−8017C、WK−204(C)、WK−1117C等)を用いることができる。また、嵌合調整層42は、蓋部16の蓋側凸部32の内周側面上に設けられてもよいし、あるいは、ベース側凸部24と蓋側凸部32の両方に設けられてもよい。
【0068】
上記嵌合調整層42は、蓋体10をシート成形する前に、平らな合成樹脂製シート材に印刷することにより形成することができる。したがって、
図4を参照して説明した蓋体10の製造工程に1つの印刷工程を加えるだけでよく、成形前に印刷することができない射出成形等に比べて、製造コストの増加を抑制することができる。
【0069】
また、嵌合調整層42は、取付ベース12のベース側凸部24の上面を覆うように印刷形成されてもよい。このようにすれば、ベース側凸部24と蓋部16の平板部30との密着状態が良好になり、蓋部16が閉じられたときの蓋体10の内側の密封状態を更に確実に実現および維持することができる。
【0070】
また、蓋体10の製造に用いられるシート材Pは、
図6に示されるように、例えばポリプロピレン樹脂を主材料とするベース層P1と、包装体1の内容物であるウェットシートに含まれる水分、アルコール、香料等の物質の透過を抑制するバリア層P2とが積層されて構成されてもよい。バリア層P2は、例えば、ナイロン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)等により形成することができる。ここで、バリア層P2は、蓋体10に成形されたときの蓋部16の内側表面(取付ベース12に対向する表面)に設けられてもよいし、あるいは、それとは反対の(蓋体10が閉じられた状態での)外側表面に設けられてもよい。また、バリア層P2は、二層のベース層P1の間にサンドイッチ状態に積層されてもよい。
【0071】
さらに、蓋部16の内側表面に例えば使用上の注意等を表示する印刷表示層を形成してもよい。この場合、包装体1の内容物にアルコール、香料、油分等の物質が含まれる場合、印刷表示層は、アルコール等の物質に対する耐性を有する機能性インキにより形成されるのが好ましい。
【0072】
<第2の実施の形態>
図8は、第2の実施形態である包装体用蓋体11の平面図および側面図である。
図1ないし
図7を参照して上述した第1の実施形態の蓋体10と同一または類似の構成要素には同一または類似の参照符号を付して、重複する説明を援用により省略する。
【0073】
図8に示すように、蓋体11は、取付ベース12とヒンジ部14と蓋部16とを一体的に備えている。また、蓋体11は、透明な合成樹脂製のシート材をシート成形することによって形成されている。そのため、蓋体10が包装体1に取り付けられたときに平板部30を介して包装体1の頂面2aに付与された印刷表示や封止片6を外側から視認することが可能になっている。
【0074】
本実施形態の蓋体11では、ベース側凸部24が取付ベース12の外周に沿って比較的大きく形成されており、ヒンジ部14と反対側だけに外側フランジ部28が形成されている。これに応じて、内側フランジ部26の内周縁部によって画定される開口部22もまた、第1の実施形態の蓋体10よりも大きく形成されている。また、本実施形態では、内側フランジ部26の裏面にホットメルト材29が塗工されて、包装体1の頂面2a上に接着固定される。
【0075】
取付ベース12のベース側凸部24においてヒンジ部14と反対側の外周側面には、2つの係合凸部52が凹み部28aを挟んで両側に外側へ膨出形成されている。
【0076】
蓋体11の蓋部16には、矩形枠状の凸部が形成されておらず、平板部30と、この平板部30の外周に厚み方向Hへ延びて立設された外周壁部36とを有する。蓋部16が取付ベース12に対して閉じられたとき、外周壁部36の内周側面が取付ベース12のベース側凸部24の外周側面に嵌合する部分となる。また、外周壁部36のヒンジ部14とは反対側の端部に指掛け部40が形成されている。
【0077】
本実施形態のヒンジ部14は、取付ベース12に対して蓋部16を閉じたときに屈曲されることとなる屈曲線15(例えば、ハーフカット罫線)を含むフラット型のものである。このようなフラット型のヒンジ部14によれば、蓋部16を開いたときに、
図8に示すように取付ベース12から180度回動した位置まで開いた状態に維持され易くなり、ユーザが包装体1の取出口5からウェットシートSを取り出す際に蓋部16が邪魔になりにくいという利点がある。
【0078】
また、
図2及び
図3を参照して説明した第1実施形態の蓋体10における丸型のヒンジ部14の下面が平らにならず包装体1の頂面2aに対する貼着面にならず且つ比較的製造しにくいという問題があるが、本実施形態におけるフラット型のヒンジ部14は、下面が平らになって包装体1の頂面2aにホットメルトによって貼着することができるので、貼着面積の拡大による接着強度の向上を図ることができるとともに、製造が容易であるという利点もある。
【0079】
また、蓋部16の外周壁部36には、取付ベース12の係合凸部52に対応して、2つの係合凹部54が指掛け部40の両側に凹設されている。
【0080】
本実施形態の蓋体11では、蓋部16が取付ベース12に対して閉じられたとき、取付ベース12のベース側凸部24の外周側面に、蓋部16の外周壁部36の内周面が嵌合する。また、このとき、ベース側凸部24の係合凸部52が蓋部16の係合凹部54内に嵌り込むことによって、蓋部16が閉じられた状態を保持できるようにしている。
【0081】
このように本実施形態の蓋体11もまた、合成樹脂製のシート材を用いたシート成形により形成されるため、熱可塑性樹脂の射出成形等によって蓋体を製造する場合に比べて、少ない樹脂材料で安価に製造することができる。したがって、内容物がなくなって包装体1が蓋体11と一緒に廃棄されるとき、ゴミ量を減らせて環境にやさしく且つ経済的な商品になる。
【0082】
また、本実施形態の蓋体11では、蓋部16の平板部30の全体が透明部分となっており、蓋部16が取付ベース12に対して閉じたときに内側を視認することができる。そのため、包装体1の取出口5からはみ出したウェットシートの端部が蓋部16と取付ベース12との間に噛み込まれたことを外側から目視により容易に確認することができる。したがって、ユーザは噛み込みを解消したうえで蓋部16を閉じ直すことができ、包装体1の内部の乾燥および埃の進入を確実に防止することができる。
【0083】
また、本実施形態における蓋体11は、蓋部16の平板部30が透明で平らに形成されているため、包装体1の頂面2aおよび封止片6の表面の印刷表示が透けて見える。したがって、蓋体10に印刷を施さなくてもユーザに商品名等を認知してもらうことができるので、蓋体10への印刷を省くことができ、製造コストを安価にできる利点がある。
【0084】
本実施形態の包装体用蓋体11の原料となる合成樹脂製シート材には、ポリプロピレン(PP)を主成分とする合成樹脂製のシート材を好適に用いることができる。例えば、シート材には、高透明ポリプロピレン(PP)シートを好適に用いることができ、具体的には瀧田化学株式会社製のHCF500またはその改良品を好適に用いることができる。このようなシート材の特性を
図9に示す。
図9には、本件シート材の特性として(a)透明性、(b)耐熱性、(c)耐油性が示されている。
【0085】
図9(a)に示すように、本実施形態の蓋体10の製造に用いられる高透明PPシートは、シート成形後にA−PET(非晶質ポリエチレンテレフタレート)並みの透明性を有しており、上述した包装体1の頂面2a等の印刷表示やシート噛み込みを視認可能な透明性を確保することができる。
【0086】
また、
図9(b)に示すように、本実施形態の蓋体10の製造に用いられる高透明PPシートは、例えば110℃の耐熱温度を有する。そのため、ユーザが包装体1を電子レンジやお湯等で加温してからウェットシートを使用するときに、加温によって蓋体10が変形するのを抑制することができる。
【0087】
さらに、
図9(c)に示すように、本実施形態の蓋体10の製造に用いられる高透明PPシートは、包装体1の内容物に油分が含まれる場合にも高い耐油性を備えることから、油分が付着した蓋体10の加温時の変形を効果的に抑制することができる。
【0088】
なお、上記においては蓋体11をシート成形するためのシート材として高透明ポリプロピレン(PP)シートを用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ポリプロピレン樹脂60〜90重量%、ならびに、高密度ポリエチレン樹脂および/またはナイロン樹脂10〜40重量%を含む樹脂材料からなるシート材を用いてもよい。
【0089】
あるいは、シート材は、A−PET(非晶質ポリエチレンテレフタレート)を主成分とする樹脂材料からなるシート材を用いてもよい。この場合、A−PETを主成分とするシート材から製造される蓋体11は、
図9(a)に関連して説明したように成形後も高い透明性を有するため蓋体内部の視認性に優れている。また、耐熱性についても、例えばポリテック株式会社製のA−PETシートであって、測定法JIS−K−7121で測定されたガラス転移点73℃で、昇温速度10℃/分の条件下で測定された融点255℃という高耐熱性のものを用いれば、加温時の変形を有効に防止することができる。
【0090】
次に、本実施形態の蓋体11の変形例について説明する。
【0091】
上記においては、蓋部16の平板部30の全体が透明部分であると説明したが、これに限定されるものではなく、
図10に示すように、蓋部16の平板部30に商品名やロゴデザイン等の印刷表示層46を設けてもよい。ここでは、蓋体11が閉じられた状態で蓋部16の平板部30の取付ベース12側の内側表面に、例えば「ABCDEFG」なる商品名が楕円状の透明窓44の周囲に印刷されている例を示している。透明窓44の形状は、矩形状や円形状等の他の形状であってもよい。このようにすれば、蓋体11のデザイン性が向上するとともに、透明窓44を介して内側を視認することができる。
【0092】
また、上記のような印刷表示層46は、上述した嵌合調整層42の場合と同様にシート成形前に簡易に印刷することできる。加えて、印刷表示層46は、蓋部16の内側表面に印刷されていて外側表面は透明シート材によって保護されるので、蓋体11が包装体1に取り付けられた後に擦れることによって損傷することがない。
【0093】
さらに、本実施形態の蓋体11では、蓋部16の平板部30の内側表面の全体、または、透明窓44の内側表面に、防曇剤を塗布してもよい。これにより、ユーザが使用前に加温したときに透明窓44が水蒸気等で曇るのを抑制することができる。
【0094】
さらにまた、印刷表示層46の背面側を覆って例えば白ベタ印刷等からなる背景色印刷層48を設けてもよい。
図10に示す例では、透明窓44の周囲を取り囲む帯状の楕円形状をなして形成されている。このように背景色印刷層を設けることによって、印刷表示層46がよりくっきりと視認することが可能になり、蓋体11のデザイン性が向上する。ここで、包装体1の内容物にアルコール、香料、油分等の物質が含まれる場合、上記印刷表示層46を保護する機能も果たす背景色印刷層48は、アルコール等の物質に対する耐性を有する機能性インキにより形成されるのが好ましい。また、この場合、印刷表示層46も同様の機能性インキで形成されてもよい。
【0095】
なお、上記においては印刷表示層46および背景色印刷層48を透明窓44を取り囲む帯状領域に形成するものとしたが、これに限定されるものではなく、平板部30の透明窓44以外の全ての領域に印刷表示層および背景色印刷層を形成してもよい。
【0096】
また、上記においては蓋部16の平面部30の内側表面に透明窓44を残すように印刷を施すと説明したが、蓋部16の内面全体に印刷を施してもよい。この場合、内側表面全体の印刷層は一層であっても複数層であってもよく、蓋部16が閉じた状態で取付ベース12に最も近い側の印刷層が上記機能性インキで印刷されていてもよい。
【0097】
また、上記のような印刷表示層46は、
図4を参照して説明した蓋体の製造方法において、ステップS2の印刷工程で形成することができる。また、上述した防曇剤を塗布する工程は、
図4においてステップS2に続く一点鎖線で示されるステップS5として実施するのが好ましい。さらに、上記の背景色印刷層48は、
図4においてステップS5に続く一点鎖線で示されるステップS6の印刷工程で形成することができる。