(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基およびオキセタニル基からなる群から選ばれる重合性官能基を1分子中に2つ以上含む重合性化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
前記第2の重合性化合物は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基およびオキセタニル基からなる群から選ばれる重合性官能基を1分子中に2つ以上含む重合性化合物である請求項9に記載の量子ドット含有重合性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本発明および本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0023】
本発明および本明細書中、ピークの「半値幅」とは、ピーク高さ1/2でのピークの幅のことを言う。また、430〜480nmの波長帯域に発光中心波長を有する光を青色光と呼び、520〜560nmの波長帯域に発光中心波長を有する光を緑色光と呼び、600〜680nmの波長帯域に発光中心波長を有する光を赤色光と呼ぶ。
【0024】
また、本発明および本明細書において、「重合性組成物」とは、重合性化合物を少なくとも一種含む組成物であり、光照射、加熱等の重合処理を施されることにより硬化する性質を有する。また、「重合性化合物」とは、1分子中に1つ以上の重合性官能基を含む化合物である。重合性官能基とは、重合反応に関与し得る基であり、詳細は後述する。
【0025】
[波長変換部材]
本発明の波長変換部材は、励起光により励起されて蛍光を発光する量子ドットを含む波長変換層を有する波長変換部材であって、波長変換層は、量子ドットおよび重合性化合物を含む重合性組成物を硬化させてなる硬化層であり、上記重合性組成物は、少なくとも一種の第1の重合性化合物を含み、第1の重合性化合物は、1分子中に含まれる重合性官能基の数Fで分子量Mwを除した値Mw/Fが130以上であり、1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数が1つであり、かつLogP値が3.0以下である単官能(メタ)アクリレート化合物であり、上記重合性組成物は、この組成物に含まれる重合性化合物全量100質量部に対して第1の重合性化合物を50質量部以上含有する波長変換部材に関する。
【0026】
本発明者らは、先に記載した目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、本発明の波長変換部材を見出した。以下、この点について更に説明する。
前述の現象(1)、即ちバックライト輝度低下、の原因は、量子ドットが酸素分子に接触すると光酸化反応により発光効率が低下することにあると考えられる。この点に関し、特許文献1には、量子ドットを酸素分子等から保護するために、量子ドットを含むフィルム(波長変換層)にバリア層を積層することが提案されている。しかるに、波長変換部材を製品に加工する際には、シート状の波長変換部材原反から波長変換部材を製品サイズに切り出す(例えば、打ち抜き器により打ち抜く)ことが行われる。このように切り出された製品では、端面にはバリア層が存在しないため、端面からの酸素分子の侵入により量子ドットの発光効率が低下し、例えばバックライトユニットの出射面外周領域において、輝度の低下が発生してしまうことが懸念される。この点に関し本発明者らは、量子ドットと酸素分子との接触に起因すると考えられるバックライト輝度の低下を抑制するためには、波長変換層そのものの酸素分子の透過度(酸素透過度)を低下させることが望ましいと考えるに至った。
【0027】
更に、本発明者らは鋭意検討を重ねる中で、前述の現象(2)、即ち表示面における表示ムラについては、波長変換層および波長変換層を含む波長変換部材が重合収縮により変形することが原因ではないかと考えた。詳しくは、次の通りである。量子ドットを含む波長変換層は、通常、量子ドットをマトリックス中に含む。このような波長変換層は、量子ドットおよび重合性化合物を含む重合性組成物を硬化させてなる硬化層として形成することができる。より詳しくは、上記重合性組成物を重合処理により硬化させることによって、波長変換層を形成することができる。しかし、この重合処理において発生する重合収縮が、波長変換層および波長変換層を含む波長変換部材の変形を引き起こすと考えられる。そして本発明者らは、この変形が波長変換部材からの光の取り出し効率の局所的な違いをもたらすことが、表示面における表示ムラを引き起こすのではないかと考えるに至った。一方、本発明者らは、上記重合性化合物としては、硬化性、入手容易性等の様々な観点を総合すると、(メタ)アクリレート化合物が好適であると考えている。そこで本発明者らは、現象(2)に関しては、重合性化合物として(メタ)アクリレート化合物を含む重合性組成物であって、重合収縮を起こし難い(または重合収縮が少ない)組成物を見出すべく鋭意検討を重ねた。
【0028】
以上の本発明者らによる鋭意検討の結果見出された本発明の波長変換部材は、バックライト輝度低下および表示面における表示ムラの発生を抑制することができる。これには、以下の点が寄与しているのではないかと本発明者らは推察している。
(1)波長変換層を形成するための重合性組成物に含まれる単官能(メタ)アクリレート化合物の占める割合を、重合性化合物全量100質量部に対して50質量部以上とすること。単官能(メタ)アクリレート化合物が、多官能(メタ)アクリレート化合物と比べ重合収縮を起こし難い(または重合収縮が少ない)と考えられるからである。
(2)上記Mw/Fが130以上の単官能(メタ)アクリレート化合物は、単官能(メタ)アクリレート化合物の中でも重合収縮を起こし難い(または重合収縮が少ない)と考えられること。
(3)LogPが3.0以下の化合物は非極性分子である酸素分子と比べて極性が高い化合物と言え、この化合物を多く含む重合性組成物から形成される波長変換層は酸素分子との相溶性に乏しく酸素分子が侵入し難いと考えられること。
ただし以上は本発明者らによる推察であって、本発明を何ら限定するものではない。
【0029】
以下、本発明の波長変換部材について、更に詳細に説明する。
【0030】
(波長変換部材の構成、配置例)
波長変換部材は、入射光の少なくとも一部の波長を変換して、入射光の波長と異なる波長の光を出射する機能を有していればよい。波長変換部材の形状は特に限定されるものではなく、シート状、バー状等の任意の形状であることができる。波長変換部材は、液晶表示装置のバックライトユニットの構成部材として使用することができる。
【0031】
図1は、波長変換部材を含むバックライトユニット1の一例の説明図である。
図1中、バックライトユニット1は、光源1Aと、面光源とするための導光板1Bを備える。
図1(a)に示す例では、波長変換部材は、導光板から出射される光の経路上に配置されている。一方、
図1(b)に示す例では、波長変換部材は、導光板と光源との間に配置されている。そして
図1(a)に示す例では、導光板1Bから出射される光が、波長変換部材1Cに入射する。
図1(a)に示す例では、導光板1Bのエッジ部に配置された光源1Aから出射される光2は青色光であり、導光板1Bの液晶セル(図示せず)側の面から液晶セルに向けて出射される。導光板1Bから出射された光(青色光2)の経路上に配置された波長変換部材1Cには、青色光2により励起され赤色光4を発光する量子ドット(A)と、青色光2により励起され緑色光3を発光する量子ドット(B)を、少なくとも含む。このようにしてバックライトユニット1からは、励起された緑色光3および赤色光4、ならびに波長変換部材1Cを透過した青色光2が出射される。こうして赤色光、緑色光および青色光を発光させることで、白色光を具現化することができる。
図1(b)に示す例は、波長変換部材と導光板の配置が異なる点以外は、
図1(a)に示す態様と同様である。
図1(b)に示す例では、波長変換部材1Cから、励起された緑色光3および赤色光4、ならびに波長変換部材1Cを透過した青色光2が出射され導光板に入射し、面光源が実現される。
【0032】
(波長変換層)
波長変換部材は、少なくとも、量子ドットを含む波長変換層を有する。波長変換層は、量子ドットをマトリックス中に含む。マトリックスは重合体を含み、波長変換層は、量子ドットおよび重合性化合物を含む量子ドット含有重合性組成物から形成することができ、波長変換層は、量子ドット含有重合性組成物を硬化させてなる硬化層であればよい。波長変換層の形状は特に限定されるものではなく、シート状、バー状等の任意の形状であることができる。
【0033】
量子ドットは、励起光により励起され蛍光を発光する。波長変換層は、少なくとも一種の量子ドットを含み、発光特性の異なる二種以上の量子ドットを含むこともできる。公知の量子ドットには、600nm〜680nmの範囲の波長帯域に発光中心波長を有する量子ドット(A)、520nm〜560nmの範囲の波長帯域に発光中心波長を有する量子ドット(B)、400nm〜500nmの波長帯域に発光中心波長を有する量子ドット(C)がある。量子ドット(A)は、励起光により励起され赤色光を発光し、量子ドット(B)は緑色光を、量子ドット(C)は青色光を発光する。例えば、量子ドット(A)と量子ドット(B)を含む波長変換層へ励起光として青色光を入射させると、
図1に示すように、量子ドット(A)により発光される赤色光、量子ドット(B)により発光される緑色光と、波長変換層を透過した青色光により、白色光を具現化することができる。または、量子ドット(A)、(B)、および(C)を含む波長変換層に励起光として紫外光を入射させることにより、量子ドット(A)により発光される赤色光、量子ドット(B)により発光される緑色光、および量子ドット(C)により発光される青色光により、白色光を具現化することができる。
【0034】
(量子ドット含有重合性組成物)
波長変換層は、量子ドット含有重合性組成物を硬化させてなる硬化層である。量子ドット含有重合性組成物(「重合性組成物」とも記載する。)は、量子ドットおよび少なくとも一種の第1の重合性化合物を含む。量子ドット含有重合性組成物は、重合開始剤、粘度調整剤、有機金属カップリング剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0035】
(量子ドット)
量子ドットについては、上記の記載に加えて、例えば特開2012−169271号公報段落0060〜0066を参照することができるが、ここに記載のものに限定されるものではない。量子ドットとしては、市販品を何ら制限なく用いることができる。量子ドットの発光波長は、通常、粒子の組成、サイズ、ならびに組成およびサイズにより調整することができる。
【0036】
量子ドットは、上記重合性組成物に粒子の状態で添加してもよく、溶媒に分散した分散液の状態で添加してもよい。分散液の状態で添加することが量子ドットの粒子の凝集を抑制する観点から好ましい。ここで使用される溶媒は、特に限定されるものではない。量子ドットは、重合性組成物の全量100質量部に対して、例えば0.01〜10質量部程度添加することができる。
【0037】
(第1の重合性化合物)
第1の重合性化合物は、1分子中に含まれる重合性官能基の数Fで分子量Mwを除した値Mw/Fが130以上であり、1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数が1つであり、かつLogP値が3.0以下である単官能(メタ)アクリレート化合物である。第1の重合性化合物として一種の化合物のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上の化合物を用いてもよい。第1の重合性化合物として構造の異なる二種以上の化合物が含まれる場合、それら化合物はそれぞれ、Mw/Fが130以上であり、1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数が1つであり、かつLogP値が3.0以下である単官能(メタ)アクリレート化合物である。
【0038】
第1の重合性化合物は、1分子中に含まれる重合性官能基の数Fで分子量Mwを除した値Mw/Fが130以上である。Mw/Fは、150以上であることが好ましい。先に記載したように、Mw/Fが130以上の単官能(メタ)アクリレート化合物は重合収縮を起こし難い(または重合収縮が少ない)と考えられ、このことが上記の表示ムラの低減に寄与すると本発明者らは推察している。Mw/Fは300以下であることが好ましいが、300超であってもよい。Mw/Fが300以下であると、第1の重合性化合物を含む重合性組成物の粘度が低くなる傾向がある。この点は、波長変換層を塗布により形成することが容易となるため、好ましい。重合性官能基とは、先に記載したように重合反応に関与し得る基であり、好ましくはラジカル重合、またはカチオン重合によって重合反応を起こすことができる官能基である。重合性官能基の具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、グリシジル基、オキセタン基、脂環式エポキシ基等を挙げることができる。ここで脂環式エポキシ基とは、エポキシ環と飽和炭化水素環とが縮合した環状構造を有する1価の官能基をいうものとする。
【0039】
第1の重合性化合物は、単官能(メタ)アクリレート化合物であって、1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数は1つである。単官能(メタ)アクリレート化合物は、重合処理(例えば光照射)による硬化が容易であり、かつ硬化の際のマトリックスの収縮を抑えることができるため、好ましい。第1の重合性化合物は、1分子中に、1つの(メタ)アクリロイル基のほかに、(メタ)アクリロイル基以外の重合性官能基を有していてもよい。(メタ)アクリロイル基とともに他の重合性官能基を有することは、波長変換層の高硬度化等の観点から好ましい。第1の重合性化合物が(メタ)アクリロイル基以外の重合性官能基を含む場合、かかる重合性官能基の数は1分子中に例えば1つ以上であり、Mw/Fが130以上となる範囲であれば、2つ以上であってもよい。
【0040】
なお本発明および本明細書において、重合性化合物の分子量とは、ポリマー(ポリマーにはオリゴマーも包含されるものとする。)については、重量平均分子量をいうものとする。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による測定値をポリスチレン換算して求めた重量平均分子量をいうものとする。GPCによる測定条件としては、例えば以下の条件を採用することができる。後述の実施例に記載する重量平均分子量は、以下の条件によって測定された値である。
GPC装置:HLC−8120(東ソー社製):
カラム:TSK gel Multipore HXL−M(東ソー社製、7.8mmID(内径)×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
【0041】
また、第1の重合性化合物は、LogP値が3.0以下である。LogP値は2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。LogP値は0.5以上であることが好ましいが、0.5未満であってもよい。LogP値が0.5以上であると、第1の重合性化合物を含む重合性組成物に量子ドットを分散させることが容易になる傾向があるため、好ましい。
LogP値は親水性の指標であって、この値が小さいほど極性が高いことを意味する。一方、酸素分子は非極性分子である。LogP値が3.0以下の化合物は酸素分子と比べて極性が高いため、この化合物を多く含む(具体的には組成物に含まれる重合性化合物全量100質量部に対して第1の重合性化合物を50質量部以上含む)重合性組成物から形成された波長変換層は、酸素分子との相溶性に乏しく酸素分子が侵入し難いと考えられる。このことが、先に記載したように切り出した後の波長変換層の端面や隣接層との界面端部からの酸素分子の侵入による量子ドットの発光効率低下を抑制することに寄与すると本発明者らは推察している。
本発明および本明細書中、LogP値とは、1−オクタノール/水の分配係数の対数値をいうものとする。LogP値は、フラグメント法、原子アプローチ法等を用いて計算により算出することができる。本明細書に記載のLogP値は、化合物の構造からCambridge Soft社製ChemBioDraw Ultra12.0を用いて計算されるLogP値である。
【0042】
第1の重合性化合物としては、以上記載した単官能(メタ)アクリレート化合物の一種のみ用いてもよく、または構造の異なる二種以上を用いてもよい。二種以上を用いる場合、以下に記載の含有量は、二種以上の合計含有量をいう。この点は、後述する他の成分に関する含有量についても同様である。
第1の重合性化合物は、量子ドット含有重合性組成物に含まれる重合性化合物全量100質量部に対して、第50質量部以上含まれ、70質量部以上含まれることが好ましく、90質量部以上含まれることがより好ましい。上記含有量で第1の重合性化合物を含む重合性組成物によれば、上述の表示ムラの発生を抑制することができる。これは先に記載したように、上記含有量で第1の重合性化合物を含む重合性組成物は重合収縮を起こし難い(または重合収縮が少ない)ことによるものと考えられる。上記含有量は、例えば99質量部未満であってもよく、95質量部以下であってもよく、または重合性化合物の全量が第1の重合性化合物であってもよい。即ち、上記含有量が100質量部であってもよい。
また、重合性組成物全量100質量部に占める全重合性化合物の含有量は、例えば80.00〜99.99質量%程度とすることができる。
【0043】
第1の重合性化合物として使用可能な単官能(メタ)アクリレート化合物としては、アクリル酸およびメタクリル酸、それらの誘導体、より詳しくは、(メタ)アクリル酸の重合性不飽和結合((メタ)アクリロイル基)を分子内に1つ有するモノマーを挙げることができる。それらの具体例として以下に化合物を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アダマンタン骨格を有する(メタ)アクリレート誘導体などが挙げられる。なお上記の(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の一方または両方を示すものとする。
【0044】
(第1の重合性化合物と併用可能な重合性化合物)
量子ドット含有重合性組成物は、重合性化合物として一種以上の第1の重合性化合物のみを含むものであってもよく、一種以上の第1の重合性化合物とともに一種以上の他の重合性化合物を含むものであってもよい。他の重合性化合物とは、第1の重合性化合物(上記Mw/Fが130以上であり、1分子中に含まれる(メタ)アクリロイル基の数が1つであり、かつLogP値が3.0以下である単官能(メタ)アクリレート化合物)に該当せず、かつ重合性官能基を1分子中に1つ以上有する化合物である。
【0045】
他の重合性化合物としては、多官能(メタ)アクリレート化合物、第1の重合性化合物に該当しない単官能(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリロイル基以外の重合性官能基を有する各種重合性化合物の一種または二種以上を用いることができる。
他の重合性化合物は、重合性組成物に含まれる重合性化合物全量100質量部に対して、例えば1質量部以上用いることができ、40質量部以下で用いることが好ましく、30質量部以下で用いることがより好ましい。
【0046】
他の重合性化合物の好ましい一態様としては、多量体(多量体とは、同一または異なる繰り返し単位を含む化合物を意味し、ダイマー、トリマー、テトラマー等のオリゴマーおよびポリマーを包含する意味で用いるものとする。以下同様である。)を挙げることもできる。そのような多量体の重量平均分子量は、重合収縮の更なる抑制の観点から、1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることが更に好ましい。また、上記重量平均分子量は、第1の重合性化合物との溶解性および重合性組成物の塗布適性(粘度)の観点から、100万以下であることが好ましい。
【0047】
また、他の重合性化合物が多量体である場合、繰り返し単位中にヒドロキシル基、ニトリル基等の極性基、塩素原子およびフッ素原子の1種または2種以上を含むことも好ましい。ヒドロキシル基、ニトリル基等は、架橋的な相互作用により波長変換層の酸素透過度をより低減することに寄与することができると考えられる。また、塩素原子およびフッ素原子は、一般に有機化合物を構成する各種原子の中で原子半径の大きな原子であるため、重合性化合物が重合した重合体の構造の隙間を埋めることにより、重合体の運動を抑制することができると考えられる。これにより酸素透過度を更に抑制することができると推察される。
【0048】
(第1の重合性化合物および他の重合性化合物の好ましい構造)
上記重合性組成物は、第1の重合性化合物および他の重合性化合物の少なくとも一方として、下記構造を有する重合性化合物を含むことが好ましい。
【0050】
上記(1)〜(4)において、nは1以上の整数であり、P
1は少なくとも1つの重合性官能基を含む任意の構造であり、R
0は水素原子または少なくとも1つの非共有結合性の官能基を有する任意の構造である。ここでいう非共有結合性の官能基とは、共有結合以外の引力的相互作用を発現し得る官能基をいう。非共有結合性の官能基としては、ヒドロキシル基、ウレタン基、ウレア基、フェニル基等が挙げられる。上記(1)において、R
1、R
2のうちの少なくとも1つは水素原子であり、その他は水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基のいずれかである。なおnが2以上の整数である場合には、複数存在するR
1および複数存在するR
2のうちの少なくとも1つが水素原子であり、その他は水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基のいずれかである。
上記(2)において、R
1〜R
4のうちの少なくとも1つは水素原子であり、その他は水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基のいずれかである。なおnが2以上の整数である場合には、複数存在するR
1、複数存在するR
2、複数存在するR
3および複数存在するR
4のうちの少なくとも1つが水素原子であり、その他は水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基のいずれかである。
【0051】
上記構造を有する重合性化合物は、上記構造を持たない重合性化合物と比べて分子が柔軟性を有する傾向がある。この点は、波長変換層の脆性を向上させることに寄与すると本発明者らは推察している。脆性を向上することにより、波長変換部材を製品サイズに切り出した際に端部に破断やクラックが生じることを抑制することができる。このような破断やクラックの発生を抑制できることは、これらによる波長変換層と隣接層との剥離を防ぐ観点から好ましい。
また、上記構造を有する重合性化合物は、分子中に非共有結合性の官能基を含むことが、波長変換層の酸素透過度をより低下させることに寄与すると本発明者らは考えている。
【0052】
上記構造を有する重合性化合物の具体例としては、例えば、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは、第1の重合性化合物として特に好ましい。中でも、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートは波長変換層と隣接層との密着性を高める効果が大きいため、特に好ましい。
【0053】
(Mw
ave/F
ave、LogP
ave)
量子ドット含有重合性組成物は、重合性化合物として、一種の重合性化合物のみ含んでもよく、構造の異なる二種以上の重合性化合物を含んでもよい。即ち、量子ドット含有重合性組成物に含まれる重合性化合物の種類を合計n種とすると、nは1以上であり、2以上であってもよく、例えば3〜5の範囲であることもできるが、6以上であってもよく、特に限定されるものではない。合計n種の重合性化合物については、下記式1により算出されるF
aveで下記式2により算出されるMw
aveを除した値Mw
ave/F
aveが110.0以上であることが好ましい。Mw
ave/F
aveは、130.0以上であることがより好ましく、140.0以上であることが更に好ましい。Mw
ave/F
aveが上記の範囲であると、量子ドット含有重合性組成物が重合収縮をより起こし難くなり(または重合収縮がより少なくなり)、表示ムラをより一層低減することができるため、好ましい。なお、波長変換層に隣接させて詳細を後述するバリアフィルムを設けることは、波長変換層に含まれる量子ドットを酸素分子等からより一層保護するうえでも好ましい。この点に関し、量子ドット含有重合性組成物が重合収縮を起こし難い(または重合収縮が少ない)ことは、バリアフィルムを波長変換層と隣接させて設けた際に端部において波長変換層とバリアフィルムとの間で部分的な剥離が生じることを抑制する観点から好ましい。上記の部分的な剥離を抑制することにより、量子ドットを酸素分子等からより一層保護することができる。Mw
ave/F
aveは、例えば300.0以下であるが、300.0超でもよい。
【0055】
上記式において、上記n種の重合性化合物を任意の順に番号付けた場合、Fは、i番目の重合性化合物の1分子中に含まれる重合性官能基の数であり、W
iは、上記重合性組成物に含まれるi番目の重合性化合物の質量である。質量は、すべての重合性化合物について同じ単位を採用すればよく、例えば「質量部」、「g」等である。この点は、後述の式3についても同様である。Mw
iは、i番目の重合性化合物の分子量であり、iは1以上n以下の整数である。即ち、F
aveは、上記重合性組成物に含まれる重合性化合物の1分子中に含まれる重合性官能基の数の重量平均であり、Mw
aveは、上記重合性組成物に含まれる重合性化合物の分子量の重量平均である。なお重合性組成物を硬化させて形成された波長変換層を公知の方法(例えば、核磁気共鳴(NMR)、各種クロマトグラフィー法等)により分析することによって、この層を形成するために用いられた重合性組成物に含まれていた重合性化合物の質量、1分子中に含まれていた重合性官能基の数、および分子量を求めることができる。例えば、量子ドット含有重合性組成物に、構造の異なる重合性化合物が合計3種含まれている場合、これら化合物を化合物A、化合物B、化合物Cとすると、F
ave、Mw
aveは、以下のように算出される。以下において、F
Aは化合物Aの1分子中に含まれる重合性官能基の数であり、W
Aは量子ドット含有重合性組成物に含まれる化合物Aの質量であり、Mw
Aは、化合物Aの分子量である。F
B、F
C、W
B、W
C、Mw
B、Mw
Cは、それぞれ化合物B、Cについて同様である。
【0057】
また、上記n種の重合性化合物については、下記3により算出されるLogP
aveが3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましい。LogP
aveは、例えば0.5以上であるが、0.5を下回ってもよい。LogP
aveが上記の範囲であると、波長変換層の酸素透過度をより一層低減することができ、波長変換層に含まれる量子ドットが酸素に接触することを更に抑制することができるため、好ましい。
【0059】
上記式において、上記n種の重合性化合物を任意の順に番号付けた場合、W
iは、上記重合性組成物に含まれるi番目の重合性化合物の質量であり、LogP
iは、i番目の重合性化合物のLogP値であり、iは1以上n以下の整数である。なお、例えば先に記載したように上記重合性組成物に化合物A、B、Cが含まれる場合、LogP
aveは、以下のように算出される。以下において、LogP
Aは化合物AのLogP値であり、W
Aは上記重合性組成物に含まれる化合物Aの質量である。LogP
B、LogP
C、W
B、W
Cは、それぞれ化合物B、Cについて同様である。
【0061】
(他の重合性化合物の好ましい態様)
第1の重合性化合物と併用可能な他の重合性化合物の好ましい態様としては、1分子中に含まれる重合性官能基の数が2つ以上である重合性化合物(以下、「第2の重合性化合物」という。)を挙げることができる。第2の重合性化合物は、好ましくは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基およびオキセタニル基からなる群から選ばれる重合性官能基を1分子中に2つ以上含む重合性化合物である。量子ドット含有重合性組成物が第2の重合性化合物を含むことにより、量子ドット含有重合性組成物の硬化により形成される波長変換層内での重合体の架橋密度を高くすることができる。この結果、波長変換層の耐熱性を向上することができる。これにより、波長変換層を含む波長変換部材、波長変換部材を備えたバックライトユニットや液晶表示装置が高温で保管された後に使用される際のバックライト輝度低下を抑制することが可能となる。重合性組成物には、第2の重合性化合物として、一種の重合性化合物が含まれていてもよく、構造の異なる二種以上の重合性化合物が含まれていてもよい。第2の重合性化合物は、上記重合性組成物に含まれる重合性化合物全量100質量部に対して、1〜49質量部用いることが好ましく、5〜25質量部用いることがより好ましい。
【0062】
第2の重合性化合物の具体的態様としては、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する2官能以上の(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。2官能以上の(メタ)アクリレート化合物の好ましい例としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(ECH)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
第2の重合性化合物の他の具体的態様としては、エポキシ基およびオキセタニル基からなる群から選ばれる重合性官能基を2つ以上有する重合性化合物を挙げることができる。かかる重合性化合物の好ましい例としては、例えば、脂肪族環状エポキシ化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに一種または二種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシシクロアルカンを含む化合物等が挙げられる。
【0064】
エポキシ基およびオキセタニル基からなる群から選ばれる重合性官能基を2つ以上有する重合性化合物として好適に使用できる市販品としては、ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021P、セロキサイド8000、シグマアルドリッチ社製の4−ビニルシクロヘキセンジオキシド等が挙げられる。
【0065】
エポキシ基およびオキセタニル基からなる群から選ばれる重合性官能基を2つ以上有する重合性化合物は、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213頁、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32頁、1985、吉村、接着、30巻5号、42頁、1986、吉村、接着、30巻7号、42頁、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。ただし、製法は特に限定されるものではない。
【0066】
第2の重合性化合物の他の具体的態様としては、ビニル基を2つ以上有する重合性化合物を挙げることもできる。かかる重合性化合物の好ましい例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジビニルシロキサン等が挙げられる。
【0067】
また、第2の重合性化合物は、異なる種類の重合性官能基を2つ以上有する重合性化合物であることもできる。かかる重合性化合物の好ましい例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート(市販品としては、ダイセル社製のサイクロマーM100が挙げられる。)、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、四国化成工業社製のイソシアヌル酸誘導体(商品名MA−DGIC、DA−MGIC)等が挙げられる。
【0068】
(樹脂)
量子ドット含有重合性組成物は、必要に応じて1種以上の樹脂を含んでいてもよい。樹脂の重量平均分子量は、重合収縮の更なる抑制の観点から、1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることが更に好ましい。また、上記重量平均分子量は、第1の重合性化合物との溶解性および重合性組成物の塗布適性(粘度)の観点から、100万以下であることが好ましい。好適な樹脂としては、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、ABS(アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene))樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、エチレン−ビニルアルコール(EVOH)共重合樹脂、ポリビニルブチラート樹脂およびポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。また樹脂は、上記樹脂の繰り返し単位の一部が異なる変性樹脂であってもよい。これらのうち、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルブチラート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂が波長変換層の酸素透過度を低減できる観点から好ましい。
【0069】
市販品としては、クラレ社製モビタール(Mowital)、クラレポバール、日本合成化学社製ソアノール、ゴーセノール、三菱レイヨン社製のアクリペット、ダイヤナール、東亜合成化学社製ARUFON UPシリーズ、UCシリーズ、UFシリーズが挙げられる。
【0070】
また、上記樹脂は、先に第2の重合性化合物について記載した理由と同様の理由により、繰り返し単位中にヒドロキシル基、ニトリル基等の極性基、塩素原子およびフッ素原子の1種または2種以上を含むことも好ましい。
【0071】
(粘度調整剤)
量子ドット含有重合性成組成物は、必要に応じて粘度調整剤を含んでいてもよい。粘度調整剤は、粒径が5nm〜300nmであるフィラーであることが好ましい。また、粘度調整剤はチキソトロピー剤であることも好ましい。なお本発明および本明細書中、チキソトロピー性とは、液状組成物において、せん断速度の増加に対して粘性を減じる性質を指し、チキソトロピー剤とは、それを液状組成物に含ませることによって、組成物にチキソトロピー性を付与する機能を有する素材のことを指す。チキソトロピー剤の具体例としては、ヒュームドシリカ、アルミナ、窒化珪素、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、タルク、雲母、長石、カオリナイト(カオリンクレー)、パイロフィライト(ろう石クレー)、セリサイト(絹雲母)、ベントナイト、スメクタイト・バーミキュライト類(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイトなど)、有機ベントナイト、有機スメクタイト等が挙げられる。
一態様では、量子ドット含有重合性組成物は、粘度がせん断速度500s
−1の時に3〜100mPa・sであり、せん断速度1s
−1の時に300mPa・s以上であることが好ましい。このように粘度調整するために、チキソトロピー剤を用いることが好ましい。また、量子ドット含有重合性組成物の粘度がせん断速度500s
−1の時に3〜100mPa・sであり、せん断速度1s
−1の時に300mPa・s以上であることが好ましい理由は、以下の通りである。
波長変換部材の製造方法の一例としては、後述するように、第1の基材に量子ドット含有重合性組成物を塗布したのちに、量子ドット含有重合性組成物の上に第2の基材を貼り付けてから、量子ドット含有重合性組成物を硬化して波長変換層を形成する工程を含む製造方法を挙げることができる。上記製造方法では、第1の基材に量子ドット重合性化合物を塗布する際に塗布スジが生じないように均一に塗布して塗膜の厚さを均一にすることが望ましく、そのためには塗布性とレベリング性の観点から塗布液(量子ドット含有重合性組成物)の粘度は低いことが好ましい。一方、第1の基材に塗布された塗布液の上に第2の基材を均一に貼り合せるためには貼り合せ時の圧力への抵抗力が高いことが好ましく、この点から高粘度の塗布液が好ましい。上記のせん断速度500s
−1とは、第1の基材に塗布される塗布液に加わるせん断速度の代表値であり、せん断速度1s
−1とは塗布液に第2の基材を貼り合せる直前に塗布液に加わるせん断速度の代表値である。なお、せん断速度1s
−1とはあくまでも代表値に過ぎない。第1の基材に塗布された塗布液の上に第2の基材を貼り合せる際、第1の基材と第2の基材を同速度で搬送しつつ貼り合せるのであれば塗布液に加わるせん断速度はほぼ0s
−1であり、実製造工程において塗布液に加わるせん断速度が1s
−1に限定されるものではない。せん断速度500s
−1も同様に代表値に過ぎず、実製造工程において塗布液に加わるせん断速度が500s
−1に限定されるものではない。そして均一な塗布および貼り合せの観点から、量子ドット含有重合性組成物の粘度を、第1の基材に塗布液を塗布する際に塗布液に加わるせん断速度の代表値500s
−1の時に3〜100mPa・sであり、第1の基材に塗布された塗布液上に第2の基材を貼り合せる直前に塗布液に加わるせん断速度の代表値1s
−1の時に300mPa・s以上であるように調整することが好ましい。
【0072】
(ゴム粒子)
量子ドット含有重合性組成物は、ゴム粒子を含んでいてもよい。ゴム粒子を含むことにより、波長変換層が脆くなることを防止できる。ゴム粒子としては、アクリル酸エステルを主な構成モノマーとするゴム状重合体、ブタジエンを主な構成モノマーとするゴム状重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。ゴム粒子は一種を単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。ゴム粒子については特開2014−35393号公報の段落0061〜0069の記載を参照できる。
【0073】
(重合開始剤)
量子ドット含有重合性組成物は、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤等の公知の重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤の好ましい態様は、光重合開始剤である。
【0074】
ラジカル重合開始剤については、例えば、特開2013−043382号公報段落0037、特開2011−159924号公報段落0040〜0042を参照できる。
【0075】
量子ドット含有重合性組成物が、エポキシ基およびオキセタニル基からなる群から選ばれる重合性官能基を有する重合性化合物を含む場合には、量子ドット含有重合性組成物は光カチオン重合開始剤、または光アニオン重合開始剤を含むことが好ましい。光カチオン重合開始剤については、例えば、特許4675719号公報段落0019〜0024を参照できる。また、光アニオン重合開始剤については、例えば、特開2013−235216号公報段落0039〜0053を参照できる。エポキシ基を有する重合性化合物は、脂環式エポキシ基を有する重合性化合物であることが、硬化性の観点から好ましい。
【0076】
好ましい光カチオン重合開始剤としては、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物、ピリジニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物を挙げることができる。これらの塩化合物に含まれるアニオン部(カウンターアニオン)としては、例えば、CH
3SO
3−、C
6H
5SO
3−、CF
3SO
3−、PF
6−、HSbF
6−、HB(C
6F
5)
4−を例示することができる。中でも、硬化速度の観点から、アニオン部の気相酸性度が240〜290kcal/molの範囲にあるヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物、ピリジニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物が好ましい。気相酸性度の範囲としては、240〜280kcal/molがより好ましく、240〜270kcal/molの範囲が更に好ましい。ここで「気相酸性度」とは、気相中での酸性度であり、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)により酸解離に伴うギブズエネルギー変化と定義されている。気相酸性度は、公知の計算ソフトにより算出することができる。
【0077】
中でも、熱安定性に優れる観点から、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物が好ましく、波長変換層の光源由来の光の吸収を抑制し、輝度を向上する観点から、ヨードニウム塩化合物が特に好ましい。波長変換層が光源由来の光を吸収する一因として、光重合開始剤の分解物による吸収が考えられるが、ヨードニウム塩化合物はそのような吸収の一因となる分解物を生成し難いと本発明者らは推察している。ただし以上は本発明者らによる推察であって、本発明を何ら限定するものではない。
【0078】
ヨードニウム塩化合物とは、構造中にI
+を含むカチオン部と任意の構造のアニオン部とにより形成される塩であって、電子供与性基を3つ以上有し、これら電子供与性基の少なくとも1つがアルコキシ基であるジアリールヨードニウム塩が更に好ましい。このようにジアリールヨードニウム塩に電子供与性基であるアルコキシ基を導入することで、経時での水や求核剤による分解や、熱による電子移動が抑制することができること等により、安定性が向上すると考えられる。このような構造を有するヨードニウム塩化合物の具体例としては、下記光カチオン重合開始剤(ヨードニウム塩化合物)A、Bを挙げることができる。また、気相酸性度が240〜290kcal/molの範囲にあるアニオン部を有するヨードニウム塩化合物の具体例としては、下記光カチオン重合開始剤(ヨードニウム塩化合物)Cを挙げることができる。
【0082】
量子ドット含有重合性組成物に含まれる光カチオン重合開始剤は、ヨードニウム塩化合物に限定されるものではない。使用可能な光カチオン重合開始剤として、例えば以下の市販品の一種または二種以上の組み合わせを挙げることもできる:サンアプロ社製のCPI−110P(下記光カチオン重合開始剤D)、CPI−101A、CPI−110P、CPI−200K、和光純薬工業社製のWPI−113、WPI−116、WPI−124、WPI−169、WPI−170、ローディア社製のPI−2074、BASF社製のイルガキュア(登録商標)250、イルガキュア270、イルガキュア290(下記光カチオン重合開始剤E)。
【0085】
量子ドット含有重合性組成物に含まれる重合開始剤含有量は、量子ドット含有重合性組成物に含まれる重合性化合物の全量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜5モル%であることがより好ましい。また、重合開始剤が揮発性の溶剤を含む場合には、それを除いた量子ドット含有重合性組成物の全量100質量部に対する重合開始剤含有量は、0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜8質量部、更に好ましくは0.2〜5質量部である。適量の重合開始剤の使用は、硬化のための光照射量を低減する観点、および波長変換層全体を均一に硬化することを可能にする観点から好ましい。
【0086】
(溶媒)
量子ドット含有重合性組成物は、必要に応じて溶媒を含んでいてもよい。この場合に使用される溶媒の種類および添加量は、特に限定されない。例えば溶媒として、有機溶媒を一種または二種以上混合して用いることができる。
【0087】
(波長変換層の形成方法)
波長変換層は、量子ドット含有重合性組成物を、例えば基材表面に塗布した後に光照射、または加熱により硬化させ、形成することができる。
塗布方法としてはカーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーテティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。
硬化条件は、使用する重合性化合物の種類や重合性組成物の組成に応じて、適宜設定することができる。また、量子ドット含有重合性組成物が溶媒を含む組成物である場合には、硬化を行う前に、溶媒除去のために乾燥処理を施してもよい。
【0088】
波長変換層と隣接する層との密着性を向上するために、波長変換層もしくは隣接する層に、または両層に、両層間の密着性を向上するために有機金属カップリング剤を含ませてもよい。有機金属カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、スズカップリング剤等の各種カップリング剤を使用できる。これら有機金属カップリング剤は、波長変換層に隣接する層が、金属、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料の層である場合や樹脂中にこれら無機材料を含む層である場合に密着改良効果が大きく、特に好ましい。
【0089】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、ビニル、エポキシ、(メタ)アクリロイルオキシ、アミノ、イソシアネート変性のシランカップリング剤が好ましく、特に好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ変性のシランカップリング剤である。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0090】
好適に使用できるシランカップリング剤の市販品としては、信越化学工業社製のものを挙げることができる。例えば、信越化学工業社製KBM−502、KBM−503、KBM−5103、KBE−502、KBE−503、KBM−903、KBM−9103等が挙げられる。
【0091】
また、シランカップリング剤としては、特開2013−43382号公報に記載の一般式(1)で表されるシランカップリング剤を挙げることができる。詳細については、特開2013−43382号公報段落0011〜0016の記載を参照できる。
【0092】
チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0093】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、テトラ−n−プロポキシジルコニウ
ム、テトラ−ブトキシジルコニウム、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0094】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテエートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトアセテート)等を挙げることができる。
【0095】
以上記載したチタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤としては、市販品または公知の方法で合成したものを何ら制限なく用いることができる。スズカップリング剤も同様である。
【0096】
一態様では、有機金属カップリング剤を含む量子ドット含有重合性組成物を用いることにより、有機金属カップリング剤を含む波長変換層を形成することができる。波長変換層と隣接する層との密着性をより一層向上する観点からは、量子ドット含有重合性組成物中に、量子ドット含有重合性組成物の総質量から量子ドットおよび溶媒の質量を除いた質量100質量部に対し1〜30質量部の範囲で含まれることが好ましく、3〜30質量部の範囲で含まれることがより好ましく、5〜25質量部の範囲で含まれることが更に好ましい。
【0097】
また他の一態様では、波長変換層に隣接する層の表面を有機金属カップリング剤により表面処理した後に、波長変換層と隣接する層との表面を貼り合せることにより、波長変換層と隣接する層とを積層することもできる。表面処理は、例えば、有機金属カップリング剤および溶媒を含む有機金属カップリング剤含有組成物を処理対象の表面に塗布することにより行うことができる。溶媒としては、有機金属カップリング剤が水の存在下で加水分解することができる官能基(加水分解性基)を有する場合には、水または水と有機溶媒との混合溶媒が好ましい。水と併用する有機溶媒としては、例えばアルコールが挙げられるが、特に限定されるものではない。また有機金属カップリング剤含有組成物は、加水分解を促進するために酸を含んでいてもよい。酸としては、一例として酢酸を挙げることができるが、これに限定されるものではない。有機金属カップリング剤含有組成物中の有機金属カップリング剤量、溶媒量、酸等の任意に添加される成分の含有量は、適宜調整すればよい。有機金属カップリング剤含有組成物の塗布方法も特に限定されるものではないが、ロールツーロール(Roll-to-Roll)で表面処理することが、生産性の観点から好ましい。具体的には、公知の塗布機を用いてロールツーロールで、処理対象の層を少なくとも含むフィルム上に有機金属カップリング剤含有組成物の塗布および乾燥を実施することができる。このような表面処理が施される層としては、無機層が好ましい。上記表面処理を施すことにより、無機層と波長変換層との密着性を一層高めることができる。
【0098】
量子ドット含有重合性組成物の硬化は、量子ドット含有重合性組成物を2枚の基材間に挟持した状態で行ってもよい。かかる硬化処理を含む波長変換部材の製造工程の一態様を、図面を参照し以下に説明する。ただし、本発明は、下記態様に限定されるものではない。
【0099】
図2は、波長変換部材の製造装置の一例の概略構成図であり、
図3は、
図2に示す製造装置の部分拡大図である。
図2、3に示す製造装置を用いる波長変換部材の製造工程は、連続搬送される第1の基材(以下、「第1のフィルム」という。)の表面に量子ドット含有重合性組成物を塗布し塗膜を形成する工程と、塗膜の上に、連続搬送される第2の基材(以下、「第2のフィルム」ともいう。)をラミネートし(重ねあわせ)、第1のフィルムと第2のフィルムとで塗膜を挟持する工程と、第1のフィルムと第2のフィルムとで塗膜を挟持した状態で、第1のフィルム、および第2のフィルムの何れかをバックアップローラに巻きかけて、連続搬送しながら光照射し、塗膜を重合硬化させて波長変換層(硬化層)を形成する工程とを少なくとも含む。第1のフィルム、第2のフィルムのいずれか一方として酸素や水分に対するバリア性を有するバリアフィルムを用いることにより、片面がバリアフィルムにより保護された波長変換部材を得ることができる。また、第1のフィルムおよび第2のフィルムとして、それぞれバリアフィルムを用いることにより、波長変換層の両面がバリアフィルムにより保護された波長変換部材を得ることができる。
【0100】
より詳しくは、まず、図示しない送出機から第1のフィルム10が塗布部20へと連続搬送される。送出機から、例えば、第1のフィルム10が1〜50m/分の搬送速度で送り出される。但し、この搬送速度に限定されない。送出される際、例えば、第1のフィルム10には、20〜150N/mの張力、好ましくは30〜100N/mの張力が加えられる。
【0101】
塗布部20では、連続搬送される第1のフィルム10の表面に量子ドット含有重合性組成物(以下、「塗布液」とも記載する。)が塗布され、塗膜22(
図3参照)が形成される。塗布部20では、例えば、ダイコーター24と、ダイコーター24に対向配置されたバックアップローラ26とが設置されている。第1のフィルム10の塗膜22の形成される表面と反対の表面をバックアップローラ26に巻きかけて、連続搬送される第1のフィルム10の表面にダイコーター24の吐出口から塗布液が塗布され、塗膜22が形成される。ここで塗膜22とは、第1のフィルム10上に塗布された硬化前の量子ドット含有重合性組成物をいう。
【0102】
本実施の形態では、塗布装置としてエクストルージョンコーティング法を適用したダイコーター24を示したが、これに限定されない。例えば、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法等、種々の方法を適用した塗布装置を用いることができる。
【0103】
塗布部20を通過し、その上に塗膜22が形成された第1のフィルム10は、ラミネート部30に連続搬送される。ラミネート部30では、塗膜22の上に、連続搬送される第2のフィルム50がラミネートされ、第1のフィルム10と第2のフィルム50とで塗膜22が挟持される。なお量子ドット含有重合性組成物が溶媒を含む場合、ラミネート部30前の任意の位置に、溶媒除去のために、図示されていない乾燥ゾーンを設けてもよい。乾燥ゾーンにおける乾燥処理は、加熱雰囲気中を通過させること、乾燥風を吹きつけること等の公知の方法によって行うことができる。
【0104】
ラミネート部30には、ラミネートローラ32と、ラミネートローラ32を囲う加熱チャンバー34とが設置されている。加熱チャンバー34には第1のフィルム10を通過させるための開口部36、および第2のフィルム50を通過させるための開口部38が設けられている。
【0105】
ラミネートローラ32に対向する位置には、バックアップローラ62が配置されている。塗膜22の形成された第1のフィルム10は、塗膜22の形成面と反対の表面がバックアップローラ62に巻きかけられ、ラミネート位置Pへと連続搬送される。ラミネート位置Pは第2のフィルム50と塗膜22との接触が開始する位置を意味する。第1のフィルム10はラミネート位置Pに到達する前にバックアップローラ62に巻きかけられることが好ましい。仮に第1のフィルム10にシワが発生した場合でも、バックアップローラ62によりシワがラミネート位置Pに達するまでに矯正され、除去できるからである。したがって、第1のフィルム10がバックアップローラ62に巻きかけられた位置(接触位置)と、ラミネート位置Pまでの距離L1は長いことが好ましく、例えば、30mm以上が好ましく、その上限値は、通常、バックアップローラ62の直径とパスラインとにより決定される。
【0106】
本実施の形態では硬化部60で使用されるバックアップローラ62とラミネートローラ32とにより第2のフィルム50のラミネートが行われる。即ち、硬化部60で使用されるバックアップローラ62が、ラミネート部30で使用するローラとして兼用される。ただし、上記形態に限定されるものではなく、ラミネート部30に、バックアップローラ62と別に、ラミネート用のローラを設置し、バックアップローラ62を兼用しないようにすることもできる。
【0107】
硬化部60で使用されるバックアップローラ62をラミネート部30で使用することで、ローラの数を減らすことができる。また、バックアップローラ62は、第1のフィルム10に対するヒートローラとしても使用できる。
【0108】
図示しない送出機から送出された第2のフィルム50は、ラミネートローラ32に巻きかけられ、ラミネートローラ32とバックアップローラ62との間に連続搬送される。第2のフィルム50は、ラミネート位置Pで、第1のフィルム10に形成された塗膜22の上にラミネートされる。これにより、第1のフィルム10と第2のフィルム50とにより塗膜22が挟持される。ラミネートとは、第2のフィルム50を塗膜22の上に重ねあわせ、積層することをいう。
【0109】
ラミネートローラ32とバックアップローラ62との距離L2は、第1のフィルム10と、塗膜22を重合硬化させた波長変換層(硬化層)28と、第2のフィルム50と、の合計厚さの値以上であることが好ましい。また、L2は第1のフィルム10と塗膜22と第2のフィルム50との合計厚さに5mmを加えた長さ以下であることが好ましい。距離L2を合計厚さに5mmを加えた長さ以下にすることより、第2のフィルム50と塗膜22との間に泡が侵入することを防止することができる。ここでラミネートローラ32とバックアップローラ62との距離L2とは、ラミネートローラ32の外周面とバックアップローラ62の外周面との最短距離をいう。
【0110】
ラミネートローラ32とバックアップローラ62の回転精度は、ラジアル振れで0.05mm以下、好ましくは0.01mm以下である。ラジアル振れが小さいほど、塗膜22の厚さ分布を小さくすることができる。
【0111】
また、第1のフィルム10と第2のフィルム50とで塗膜22を挟持した後の熱変形を抑制するため、硬化部60のバックアップローラ62の温度と第1のフィルム10の温度との差、およびバックアップローラ62の温度と第2のフィルム50の温度との差は30℃以下であることが好ましく、より好ましくは15℃以下、最も好ましくは同じである。
【0112】
バックアップローラ62の温度との差を小さくするため、加熱チャンバー34が設けられている場合には、第1のフィルム10、および第2のフィルム50を加熱チャンバー34内で加熱することが好ましい。例えば、加熱チャンバー34には、図示しない熱風発生装置により熱風が供給され、第1のフィルム10、および第2のフィルム50を加熱することができる。
【0113】
第1のフィルム10が、温度調整されたバックアップローラ62に巻きかけられることにより、バックアップローラ62によって第1のフィルム10を加熱してもよい。
【0114】
一方、第2のフィルム50については、ラミネートローラ32をヒートローラとすることにより、第2のフィルム50をラミネートローラ32で加熱することができる。
ただし、加熱チャンバー34、およびヒートローラは必須ではなく、必要に応じで設けることができる。
【0115】
次に、第1のフィルム10と第2のフィルム50とにより塗膜22が挟持された状態で、硬化部60に連続搬送される。図面に示す態様では、硬化部60における硬化は光照射により行われるが、量子ドット含有重合性組成物に含まれる重合性化合物が加熱により重合するものである場合には、温風の吹き付け等の加熱により、硬化を行うことができる。
【0116】
バックアップローラ62と、バックアップローラ62に対向する位置には、光照射装置64が設けられている。バックアップローラ62と光照射装置64と間を、塗膜22を挟持した第1のフィルム10と第2のフィルム50とが連続搬送される。光照射装置により照射される光は、量子ドット含有重合性組成物に含まれる光重合性化合物の種類に応じて決定すればよく、一例としては、紫外線が挙げられる。ここで紫外線とは、波長280〜400nmの光をいうものとする。紫外線を発生する光源として、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。光照射量は塗膜の重合硬化を進行させ得る範囲に設定すればよく、例えば、一例として100〜10000mJ/cm
2の照射量の紫外線を塗膜22に向けて照射することができる。
【0117】
硬化部60では、第1のフィルム10と第2のフィルム50とにより塗膜22を挟持した状態で、第1のフィルム10をバックアップローラ62に巻きかけて、連続搬送しながら光照射装置64から光照射を行い、塗膜22を硬化させて波長変換層(硬化層)28を形成することができる。
【0118】
本実施の形態では、第1のフィルム10側をバックアップローラ62に巻きかけて、連続搬送したが、第2のフィルム50をバックアップローラ62に巻きかけて、連続搬送させることもできる。
【0119】
バックアップローラ62に巻きかけるとは、第1のフィルム10および第2のフィルム50の何れかが、あるラップ角でバックアップローラ62の表面に接触している状態をいう。したがって、連続搬送される間、第1のフィルム10および第2のフィルム50はバックアップローラ62の回転と同期して移動する。バックアップローラ62へ巻きかけは、少なくとも紫外線が照射されている間であればよい。
【0120】
バックアップローラ62は、円柱状の形状の本体と、本体の両端部に配置された回転軸とを備えている。バックアップローラ62の本体は、例えば、φ200〜1000mmの直径を有している。バックアップローラ62の直径φについて制限はない。積層フィルムのカール変形と、設備コストと、回転精度とを考慮すると直径φ300〜500mmであることが好ましい。バックアップローラ62の本体に温度調節器を取り付けることにより、バックアップローラ62の温度を調整することができる。
【0121】
バックアップローラ62の温度は、光照射時の発熱と、塗膜22の硬化効率と、第1のフィルム10と第2のフィルム50のバックアップローラ62上でのシワ変形の発生と、を考慮して、決定することができる。バックアップローラ62は、例えば、10〜95℃の温度範囲に設定することが好ましく、15〜85℃であることがより好ましい。ここでローラに関する温度とは、ローラの表面温度をいうものとする。
【0122】
ラミネート位置Pと光照射装置64との距離L3は、例えば30mm以上とすることができる。
【0123】
光照射により塗膜22は硬化層28となり、第1のフィルム10と硬化層28と第2のフィルム50とを含む波長変換部材70が製造される。波長変換部材70は、剥離ローラ80によりバックアップローラ62から剥離される。波長変換部材70は、図示しない巻取機に連続搬送され、次いで巻取機により波長変換部材70はロール状に巻き取られる。
【0124】
以上、波長変換部材の製造工程の一態様について説明したが、本発明は上記態様に限定されるものではない。例えば、量子ドット含有重合性組成物を基材またはバリアフィルムなどの基材上に塗布し、その上に更なる基材をラミネートすることなく、必要に応じて行われる乾燥処理の後、硬化を施すことにより波長変換層(硬化層)を形成してもよい。形成された波長変換層には、無機層等の一層以上の他の層を、公知の方法により積層することもできる。
【0125】
波長変換層の厚さは、好ましくは1〜500μmの範囲であり、より好ましくは10〜250μmの範囲であり、さらに好ましくは30〜150μmの範囲である。厚さが1μm以上であると、高い波長変換効果が得られるため、好ましい。また、厚さが500μm以下であると、バックライトユニットに組み込んだ場合に、バックライトユニットを薄くすることができるため、好ましい。
【0126】
(基材)
波長変換部材は、強度向上、製膜の容易性等のため、基材を有していてもよい。基材は、波長変換層に直接接していてもよい。基材は、波長変換部材中に1つまたは2つ以上含まれていてもよく、波長変換部材は、基材、波長変換層、基材がこの順で積層された構造を有していてもよい。波長変換部材が2つ以上の基材を含む場合、かかる基材は同一であっても異なっていてもよい。基材は、可視光に対して透明であることが好ましい。ここで可視光に対して透明とは、可視光領域における光線透過率が、80%以上、好ましくは85%以上であることをいう。透明の尺度として用いられる光線透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
【0127】
基材の厚さは、ガスバリア性、耐衝撃性等の観点から、10μm〜500μmの範囲内、中でも20〜400μmの範囲内、特に30〜300μmの範囲内であることが好ましい。
【0128】
また、基材は上述の第1のフィルムおよび第2のフィルムのいずれか、または双方として用いることもできる。
【0129】
基材は、バリアフィルムであることもできる。バリアフィルムは酸素分子を遮断するガスバリア機能を有するフィルムである。バリアフィルムが、水蒸気を遮断する機能を有していることも好ましい。
【0130】
基材として使用可能なバリアフィルムは、公知のいずれのバリアフィルムであってもよく、例えば以下に説明するバリアフィルムであってもよい。
バリアフィルムは、通常、少なくとも無機層を含んでいればよく、支持体フィルムおよび無機層を含むフィルムであってもよい。支持体フィルムについては、例えば、特開2007−290369号公報段落0046〜0052、特開2005−096108号公報段落0040〜0055を参照できる。バリアフィルムは、支持体フィルム上に少なくとも上記の無機層1層と少なくとも1層の有機層を含むバリア積層体を含むものであってもよい。このように複数の層を積層することは、より一層バリア性を高めることができるため好ましい。他方、積層する層の数が増えるほど、波長変換部材の光透過率は低下する傾向があるため、良好な光透過率を維持し得る範囲で、積層数を増やすことが望ましい。具体的には、基材は、酸素透過度が1.00cm
3/(m
2・day・atm)以下であることが好ましい。また、記載の可視光領域における全光線透過率は、80%以上であることが好ましい。ここで、上記酸素透過度は、測定温度23℃、相対湿度90%の条件下で、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製OX−TRAN 2/20:商品名)を用いて測定した値である。また、可視光領域とは、380〜780nmの波長領域をいうものとし、全光線透過率とは、可視光領域にわたる光透過率の平均値を示す。
基材の酸素透過度は、より好ましくは、0.10cm
3/(m
2・day・atm)以下、さらに好ましくは、0.01cm
3/(m
2・day・atm)以下である。可視光領域における全光線透過率は、より好ましくは90%以上である。酸素透過度は低いほど好ましく、可視光領域における全光線透過率は高いほど好ましい。
【0131】
−無機層−
「無機層」とは、無機材料を主成分とする層であり、好ましくは無機材料のみから形成される層である。これに対し、有機層とは、有機材料を主成分とする層であって、好ましくは有機材料が50質量%以上、更には80質量%以上、特に90質量%以上を占める層を言うものとする。
無機層を構成する無機材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属、または無機酸化物、窒化物、酸化窒化物等の各種無機化合物を用いることができる。無機材料を構成する元素としては、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、チタン、スズ、インジウムおよびセリウムが好ましく、これらを一種または二種以上含んでいてもよい。無機化合物の具体例としては、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム合金、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタンを挙げることができる。また、無機層として、金属膜、例えば、アルミニウム膜、銀膜、錫膜、クロム膜、ニッケル膜、チタン膜を設けてもよい。
【0132】
上記の材料の中でも、窒化ケイ素、酸化ケイ素、または酸化窒化ケイ素が特に好ましい。これらの材料からなる無機層は、有機層との密着性が良好であることから、バリア性をより一層高くすることができるからである。
無機層の形成方法としては、特に限定されず、例えば製膜材料を蒸発ないし飛散させ被蒸着面に堆積させることができる各種製膜方法を用いることができる。
【0133】
無機層の形成方法の例としては、無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物、金属等の無機材料を、加熱して蒸着させる真空蒸着法;無機材料を原料として用い、酸素ガスを導入することにより酸化させて蒸着させる酸化反応蒸着法;無機材料をターゲット原料として用い、アルゴンガス、酸素ガスを導入して、スパッタリングすることにより蒸着させるスパッタリング法;無機材料にプラズマガンで発生させたプラズマビームにより加熱させて蒸着させるイオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法)、酸化ケイ素の蒸着膜を製膜させる場合は、有機ケイ素化合物を原料とするプラズマ化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法)等が挙げられる。蒸着は、支持体フィルム、波長変換層、有機層などを基板としてその表面に行えばよい。
【0134】
無機層の厚さは、1nm〜500nmであればよく、5nm〜300nmであることが好ましく、特に10nm〜150nmのであることが好ましい。隣接無機層の厚さが、上述した範囲内であることにより、良好なバリア性を実現しつつ、無機層における反射を抑制することができ、光透過率がより高い波長変換部材を提供することができるからである。
【0135】
波長変換部材には、波長変換層の少なくとも一方の主表表面が無機層と直接接していることが好ましい。波長変換層の両主表面に無機層が直接接していることも好ましい。また、無機層と有機層との間、二層の無機層の間、または二層の有機層の間を、公知の接着層により貼り合わせてもよい。光透過率向上の観点からは、接着層は少ないほど好ましく、接着層が存在しないことがより好ましい。一態様では、無機層と有機層とが直接接していることが好ましい。
【0136】
−有機層−
有機層については、特開2007−290369号公報段落0020〜0042、特開2005−096108号公報段落0074〜0105を参照できる。なお有機層は、カルドポリマーを含むことが好ましい。これにより、有機層と隣接する層との密着性、特に、無機層とも密着性が良好になり、より一層優れたガスバリア性を実現することができるからである。カルドポリマーの詳細については、上述の特開2005−096108号公報段落0085〜0095を参照できる。有機層の厚さは、0.05μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、中でも0.5〜10μmの範囲内であることが好ましい。有機層がウェットコーティング法により形成される場合には、有機層の厚さは、0.5〜10μmの範囲内、中でも1μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。また、ドライコーティング法により形成される場合には、0.05μm〜5μmの範囲内、中でも0.05μm〜1μmの範囲内であることが好ましい。ウェットコーティング法またはドライコーティング法により形成される有機層の厚さが上述した範囲内であることにより、無機層との密着性をより良好なものとすることができるからである。
【0137】
無機層、有機層のその他詳細については、上述の特開2007−290369号公報、特開2005−096108号公報、更にUS2012/0113672A1の記載を参照できる。
【0138】
(散乱粒子)
波長変換部材には、量子ドットが発光した蛍光を波長変換層から効率よく外部に取り出すために光散乱機能を付与してもよい。光散乱機能は、波長変換層内部に設けてもよいし、光散乱層として光散乱機能を有する層を別途設けてもよい。
一態様として、波長変換層内部に散乱粒子を添加することも好ましい。
また別の一態様として、波長変換層の表面に光散乱層を設けることも好ましい。光散乱層での散乱は、散乱粒子に依ってもよいし、表面凹凸に依ってもよい。
【0139】
[バックライトユニット]
波長変換部材はバックライトユニットの構成部材として使用することができる。バックライトユニットは、波長変換部材と光源とを少なくとも含む。
【0140】
(バックライトユニットの発光波長)
高輝度かつ高い色再現性の実現の観点からは、バックライトユニットとして、多波長光源化されたものを用いることが好ましい。例えば、430〜480nmの波長帯域に発光中心波長を有し、半値幅が100nm以下である発光強度のピークを有する青色光と、520〜560nmの波長帯域に発光中心波長を有し、半値幅が100nm以下である発光強度のピークを有する緑色光と、600〜680nmの波長帯域に発光中心波長を有し、半値幅が100nm以下である発光強度のピークを有する赤色光とを発光することが好ましい。
より一層の輝度および色再現性の向上の観点から、バックライトユニットが発光する青色光の波長帯域は、440〜460nmであることがより好ましい。
同様の観点から、バックライトユニットが発光する緑色光の波長帯域は、520〜545nmであることがより好ましい。
また、同様の観点から、バックライトユニットが発光する赤色光の波長帯域は、610〜640nmであることがより好ましい。
【0141】
また同様の観点から、バックライトユニットが発光する青色光、緑色光および赤色光の各発光強度の半値幅は、いずれも80nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることがさらに好ましく、30nm以下であることが一層好ましい。これらの中でも、青色光の発光強度の半値幅が25nm以下であることが、特に好ましい。
【0142】
バックライトユニットは、少なくとも、上記波長変換部材とともに、光源を含む。一態様では、光源として、430nm〜480nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色光を発光するもの(青色光源)、例えば、青色光を発光する青色発光ダイオードを用いることができる。青色光を発光する光源を用いる場合、波長変換層には、少なくとも、励起光により励起され赤色光を発光する量子ドット(A)と、緑色光を発光する量子ドット(B)が含まれることが好ましい。これにより、光源から発光され波長変換部材を透過した青色光と、波長変換部材から発光される赤色光および緑色光により、白色光を具現化することができる。
または他の態様では、光源として、300nm〜430nmの波長帯域に発光中心波長を有する紫外光を発光するもの(紫外光源)、例えば、紫外線発光ダイオードを用いることができる。この場合、波長変換層には、量子ドット(A)、(B)とともに、励起光により励起され青色光を発光する量子ドット(C)が含まれることが好ましい。これにより、波長変換部材から発光される赤色光、緑色光および青色光により、白色光を具現化することができる。
また他の態様では、発光ダイオードに替えてレーザー光源を使用することもできる。
【0143】
(バックライトユニットの構成)
バックライトユニットは、例えば、導光板や反射板などを構成部材とするエッジライト方式のバックライトユニットであることができる。
図1には、エッジライト方式のバックライトユニットの例を示した。導光板としては、公知のものを何ら制限なく使用することができる。ただし、バックライトユニットは、直下型方式であっても構わない。
【0144】
また、バックライトユニットは、光源の後部に、反射部材を備えることもできる。このような反射部材としては特に制限は無く、公知のものを用いることができ、特許3416302号、特許3363565号、特許4091978号、特許3448626号などに記載されており、これらの公報の内容は本発明に組み込まれる。
【0145】
バックライトユニットは、その他、公知の拡散板や拡散シート、プリズムシート(例えば、住友スリーエム社製BEFシリーズなど)、導光器を備えていることも好ましい。その他の部材についても、特許3416302号、特許3363565号、特許4091978号、特許3448626号などに記載されており、これらの公報の内容は本発明に組み込まれる。
【0146】
[液晶表示装置]
上述のバックライトユニットは液晶表示装置に応用することができる。液晶表示装置は上述のバックライトユニットと液晶セルとを少なくとも含む構成とすればよい。
【0147】
(液晶表示装置の構成)
液晶セルの駆動モードについては特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、またはTNモードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。VAモードの液晶表示装置の構成としては、特開2008−262161号公報の
図2に示す構成が一例として挙げられる。ただし、液晶表示装置の具体的構成には特に制限はなく、公知の構成を採用することができる。
【0148】
液晶表示装置の一実施形態では、対向する少なくとも一方に電極を設けた基板間に液晶層を挟持した液晶セルを有し、この液晶セルは2枚の偏光板の間に配置して構成される。液晶表示装置は、上下基板間に液晶が封入された液晶セルを備え、電圧印加により液晶の配向状態を変化させて画像の表示を行う。さらに必要に応じて偏光板保護フィルムや光学補償を行う光学補償部材、接着層などの付随する機能層を有する。また、カラーフィルター基板、薄層トランジスタ基板、レンズフィルム、拡散シート、ハードコート層、反射防止層、低反射層、アンチグレア層等とともに(またはそれに替えて)、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層等の表面層が配置されていてもよい。
【0149】
図4に、本発明の一態様にかかる液晶表示装置の一例を示す。
図4に示す液晶表示装置51は、液晶セル21のバックライト側の面にバックライト側偏光板14を有する。バックライト側偏光板14は、バックライト側偏光子12のバックライト側の表面に、偏光板保護フィルム11を含んでいても、含んでいなくてもよいが、含んでいることが好ましい。
バックライト側偏光板14は、偏光子12が、2枚の偏光板保護フィルム11および13で挟まれた構成であることが好ましい。
本明細書中、偏光子に対して液晶セルに近い側の偏光板保護フィルムをインナー側偏光板保護フィルムと言い、偏光子に対して液晶セルから遠い側の偏光板保護フィルムをアウター側偏光板保護フィルムと言う。
図4に示す例では、偏光板保護フィルム13がインナー側偏光板保護フィルムであり、偏光板保護フィルム11がアウター側偏光板保護フィルムである。
【0150】
バックライト側偏光板は、液晶セル側のインナー側偏光板保護フィルムとして、位相差フィルムを有していてもよい。このような位相差フィルムとしては、公知のセルロースアシレートフィルム等を用いることができる。
【0151】
液晶表示装置51は、液晶セル21のバックライト側の面とは反対側の面に、表示側偏光板44を有する。表示側偏光板44は、偏光子42が、2枚の偏光板保護フィルム41および43で挟まれた構成である。偏光板保護フィルム43がインナー側偏光板保護フィルムであり、偏光板保護フィルム41がアウター側偏光板保護フィルムである。
【0152】
液晶表示装置51が有するバックライトユニット1については、先に記載した通りである。
【0153】
液晶表示装置を構成する液晶セル、偏光板、偏光板保護フィルム等については特に限定はなく、公知の方法で作製されるものや市販品を、何ら制限なく用いることができる。また、各層の間に、接着層等の公知の中間層を設けることも、もちろん可能である。
【実施例】
【0154】
以下に実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0155】
(バリアフィルム10の作製)
支持体フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東洋紡社製、商品名:コスモシャイン(登録商標)A4300、厚さ50μm)を用いて、支持体フィルムの片面側に以下の手順で有機層および無機層を順次形成した。
トリメチロールプロパントリアクリレート(ダイセルサイテック社製TMPTA)および光重合開始剤(ランベルティ社製ESACURE KTO46)を用意し、質量比率として95:5となるように秤量し、これらをメチルエチルケトンに溶解させ、固形分濃度15質量%の塗布液とした。この塗布液を、ダイコーターを用いてロールトウロールにて上記PETフィルム上に塗布し、雰囲気温度50℃の乾燥ゾーンを3分間通過させた。その後、窒素雰囲気下で紫外線を照射(積算照射量約600mJ/cm
2)し、紫外線硬化にて硬化させ、巻き取った。支持体フィルム上に形成された第一有機層の厚さは、1μmであった。
【0156】
次に、ロールトウロールのCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、上記有機層の表面に無機層(窒化ケイ素層)を形成した。原料ガスとして、シランガス(流量160sccm)、アンモニアガス(流量370sccm)、水素ガス(流量590sccm)、および窒素ガス(流量240sccm)を用いた。電源として、周波数13.56MHzの高周波電源を用いた。製膜圧力は40Pa、到達厚さは50nmであった。
このようにして支持体フィルム上に形成された第一有機層の表面に無機層が積層されたバリアフィルム10を作製した。
【0157】
(バリアフィルム11の作製)
下記組成のシランカップリング剤含有組成物を調製し、表面処理用の組成物(表面処理用塗布液)として用いた。この表面処理用の組成物(表面処理用塗布液)を、ダイコーターを用いてロールツーロールにて、バリアフィルム10の無機層上に2ml/m
2の塗布量で塗布し、雰囲気温度120℃の乾燥ゾーンを3分間通過させた。こうして無機層表面がシランカップリング剤により表面処理されたバリアフィルム11を作製した。
表面処理用の組成物
イソプロパノール/エタノール/酢酸/水/(信越化学工業社製KBM−5103(シランカップリング剤含有溶液)=14/14/2/20/50(質量比)
【0158】
(実施例1に使用する量子ドット含有重合性組成物の作製)
下記の量子ドット含有重合性組成物1を調製し、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過した後、30分間減圧乾燥して塗布液として用いた。
【0159】
──────────────────────────────────────
量子ドット含有重合性組成物1(実施例1で使用)
──────────────────────────────────────
量子ドット1のトルエン分散液(発光極大:530nm) 10質量部
量子ドット1:NN-labs社製INP530―10
量子ドット2のトルエン分散液(発光極大:620nm) 1質量部
量子ドット2:NN-labs社製INP620−10
第1の重合性化合物 100質量部
2−フェノキシエチルアクリレート(新中村化学工業社製AMP−10G)
光重合開始剤 1質量部
(BASF社製イルガキュア(登録商標)819)
粘度調整剤 10質量部
(日本アエロジル社製ヒュームドシリカアエロジル(登録商標)R812)
──────────────────────────────────────
(上記において、量子ドット1、2のトルエン分散液の量子ドット濃度は1質量%であ
る。)
【0160】
(その他の実施例および比較例に使用する量子ドット含有重合性組成物の作製)
表1に示す組成比(質量比)にて量子ドット含有重合性組成物を調製し、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過した後、30分間減圧乾燥して塗布液として用いた。
【0161】
(実施例1の波長変換部材の作製)
上述した手順で作製したバリアフィルム10を第1、第2のフィルムとして使用し、
図2および
図3を参照し説明した製造工程により、波長変換部材を得た。具体的には、第1のフィルムとしてバリアフィルム10を用意し、1m/分、60N/mの張力で連続搬送しながら、無機層面上に上記で調製した量子ドット含有重合性組成物1をダイコーターにて塗布し、50μmの厚さの塗膜を形成した。次いで、塗膜の形成された第1のフィルム(バリアフィルム10)をバックアップローラに巻きかけ、塗膜の上に第2のフィルム(バリアフィルム10)を無機層面が塗膜に接する向きでラミネートし、2枚のバリアフィルム10で塗膜を挟持した状態で連続搬送しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製)を用いて、紫外線を照射して硬化させ、量子ドットを含有する波長変換層を形成した。紫外線の照射量は2000mJ/cm
2であった。
【0162】
(実施例1〜16、比較例1〜5の波長変換部材の作製)
上記で作製した各実施例、比較例に使用する量子ドット含有重合性組成物(塗布液)を用いて、かつ表1に示すバリアフィルム(バリアフィルム10または11)を用いて実施例1と同様にして波長変換部材を作製した。
【0163】
(バックライト輝度低下の評価)
各実施例および比較例の波長変換部材を4cm×4cmのトムソン刃による打ち抜き器によって打ち抜いた。打ち抜いた波長変換部材について、以下に記載の方法によりバックライト出射面外周領域におけるバックライト輝度低下を評価した。実施例および比較例の波長変換部材は、上記の通り波長変換層の両面にそれぞれバリアフィルムが設けられているが、打ち抜き後の端面にはバリアフィルムは存在しない。この端面から波長変換層へ侵入する酸素分子による量子ドットの発光効率低下が抑制されていれば、以下に記載の方法により評価されるバックライト出射面外周領域におけるバックライト輝度低下は抑制されると考えられる。
−評価方法−
上記の打ち抜いた波長変換部材を、温度25℃相対湿度60%に保たれた部屋で、市販の青色光源(OPTEX−FA社製OPSM−H150X142B)上に並べて置き、波長変換部材に対して青色光を100時間連続で照射した。
次に、市販のタブレット端末(Amazon社製Kindle(登録商標) Fire HDX 7”)を分解してバックライトユニットを取り出し、導光板上に青色光を100時間連続で照射した後の波長変換部材を置き、その上にKindle Fire HDX 7”から取り出した2枚のプリズムシートを、表面凹凸パターンの向きが直交するように重ね置いた。バックライトユニットを点灯し、バックライトユニットの表面(出射面)から740mmの距離に設置したイメージング色彩輝度計(プロメトリックラディアント イメージング社製)で輝度を測定した。測定結果から、出射面の外周領域(画面4辺の端から内側1cmまでの領域)において、出射面中央部で測定される輝度から15%以上輝度が低下している領域の割合を求め、以下の評価基準により評価した。結果を下記表1に示す。
(評価基準)
A:15%以上の輝度低下が発生している領域が、外周領域の25%未満。
B:15%以上の輝度低下が発生している領域が、外周領域の25%以上50%未満。
C:15%以上の輝度低下が発生している領域が、外周領域の50%以上75%未満。
D:15%以上の輝度低下が発生している領域が、外周領域の75%以上。
【0164】
(表示ムラの評価)
市販のタブレット端末(Amazon社製、Kindle Fire HDX 7”)を分解し、バックライトユニットからQDEF(3M社製量子ドットフィルム)を取り出し、QDEFに代えて矩形に切り出した実施例、比較例の波長変換部材を組み込んだ。このようにして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置を点灯させ、全面が白表示になるようにし、目視にて表示ムラ(色味ムラおよび輝度ムラ)を観察した。以下の基準にて表示ムラを評価した。結果を下記表1に示す。
(評価基準)
A:画面の全面に亘り色味ムラおよび輝度ムラが視認されない。
B:画面の一部に色味ムラおよび輝度ムラの一方または両方が弱く視認される。
C:画面の一部に色味ムラおよび輝度ムラの一方または両方が強く視認される。
D:画面の全面に亘り色味ムラおよび輝度ムラの一方または両方が視認される。
【0165】
(耐熱性の評価)
市販のタブレット端末(Amazon社製、Kindle Fire HDX 7”)を分解し、バックライトユニットからQDEF(3M社製量子ドットフィルム)を取り出し、QDEFに代えて矩形に切り出した実施例、比較例の波長変換部材を組み込んだ。このようにして液晶表示装置を作製した。
作製した液晶表示装置を点灯させ、全面が白表示になるようにし、導光板の面に対して垂直方向520mmの位置に設置した輝度計(TOPCON社製商品名「SR3」)にて輝度(加熱前バックライト輝度)を測定した。
別途作製していた実施例、比較例の波長変換部材を、ヤマト科学株式会社製精密恒温器DF411を用い、内部温度を85℃に保持した上記精密恒温器内で1000時間加熱した。その後、上記と同様にして市販の液晶表示装置に組み込み、加熱後バックライト輝度を測定した。
加熱前後のバックライト輝度から、耐熱性を、下記評価基準に基づいて評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:加熱前バックライト輝度に対して、加熱後バックライト輝度の低下が15%未満
B:加熱前バックライト輝度に対して、加熱後バックライト輝度の低下が15%以上30%未満
C:加熱前バックライト輝度に対して、加熱後バックライト輝度の低下が30%以上50%未満
D:加熱前バックライト輝度に対して、加熱後バックライト輝度の低下が50%以上
【0166】
以上の結果を、表1に示す。なお表1に示す量の単位は質量部である。
【0167】
【表1】
【0168】
表1に示す結果から、実施例の波長変換部材を備えたバックライトユニットではバックライト輝度低下が抑制されていること、および実施例の波長変換部材を備えたバックライトユニットを含む液晶表示装置では表示面における表示ムラが抑制されていることが確認できる。
更に、第2の重合性化合物(1分子中に含まれる重合性官能基の数が2つ以上である重合性化合物)を含む実施例の波長変換部材は、他の実施例の波長変化部材と比べて耐熱性に優れることも確認できる。なお上記の耐熱性の評価の試験条件は、加速試験条件であり、耐熱性の評価結果が、B以上であれば、実用上十分な耐熱性を有し、Aであればきわめて優れた耐熱性を有すると言える。
【0169】
(打ち抜き後の端部評価)
各実施例の波長変換部材を80℃の恒温槽に24時間入れた後、温度25℃相対湿度60%の部屋で調湿を1時間行った後に、4cm×4cmのトムソン刃による打ち抜き器によって5枚打ち抜きを行った。
打ち抜いた4cm×4cmの波長変換部材試料について、その各辺の端部の状態を、以下の基準に基づいて1試料当たり4.00点を最高点として点数化した。
0.00点:波長変換層と隣接する無機層との剥離または波長変換層のクラックの発生がない。
0.25点:上記剥離、クラックの領域が、一辺の25%以下。
0.50点:上記剥離、クラックの領域が、一辺の25%超50%以下。
0.75点:上記剥離、クラックの領域が、一辺の50%超75%以下。
1.00点:上記剥離、クラックの領域が、一辺の75%超。
5枚の波長変換部材試料について点数を合計し、以下のように評価を行い、その結果を下記表2に記載した。
D:点数0.00点
C:点数0.00超5.00点未満
B:点数5.00点以上10.00点未満
A:点数10.00点以上15.00点未満
AA:点数15.00点以上20.00点以下
上記評価において評価結果AA、AまたはBの波長変換部材は製品として十分に使用可能であり、評価結果AAまたはAの波長変換部材がより好ましく、評価結果AAの波長変換部材が更に好ましい。
【0170】
【表2】