(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(銀テルル被覆ガラス粉)
本発明の銀テルル被覆ガラス粉は、テルルを20質量%以上含むテルル系ガラス粉の表面に、銀とテルルを主成分とする被覆層を有する。
【0012】
<テルル系ガラス粉>
前記テルル系ガラス粉は、テルルを20質量%以上含有するガラス粉である。ガラス粉はガラスフリットとも言う。前記テルルの含有量は、蛍光X線による組成分析を行った場合において、ガラス中に含まれる含有量とする。
前記テルル系ガラス粉中のテルルの含有量としては、20質量%以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、太陽電池の発電効率の向上(ファイヤースルー性による電極のオーミック抵抗の低減)のためには、30質量%以上が好ましく、40質量%以上90質量%以下がより好ましい。
前記テルル系ガラス粉に含まれるテルル以外の成分としては、例えば、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、リン(P)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、およびランタン(La)から選択される1種以上を含むことが好ましく、亜鉛、鉛、ビスマス、ケイ素、リチウム、およびアルミニウムから選択される1種以上を含むことがより好ましい。
前記テルル系ガラス粉中のテルルは、酸化物、金属、および合金のいずれの形態であってもよく、酸化物としては、例えば、二酸化テルル(TeO
2)とすることができる。
テルル以外の成分としては、酸化物の形態としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化鉛(PbO)、酸化ケイ素(SiO
2)、酸化リチウム(Li
2O
3)、および酸化アルミニウム(Al
2O
3)から選択される1種以上とすることができる。
【0013】
前記テルル系ガラス粉としては、適宜製造したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0014】
前記テルル系ガラス粉の体積平均粒子径としては、得られる銀テルル被覆ガラス粉の体積平均粒子径に大きく影響する点から、0.1μm以上100μm以下が好ましく、1μm以上60μm以下がより好ましい。
前記体積平均粒子径は、例えば、レーザー回折式の粒度分布測定器などを用いて測定することができる。
【0015】
<銀とテルルを主成分とする被覆層>
本発明で前記銀とテルルを主成分とする被覆とは、テルル系ガラス粉表面上に銀とテルルを主成分とする物質が存在していることを指し、
銀とテルルを主成分とする被覆層とは、テルル系ガラス粉表面上に存在する銀とテルルを主成分とする物質を指す。
前記被覆は、テルル系ガラス粉表面の全部を被覆しても、一部を被覆してもよく、一部を被覆する場合、その被覆率は面積で40%以上であることが好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。前記被覆率は、銀テルル被覆ガラス粉を例えば、電子線マイクロアナライザ(EPMA)やオージェマップ分析を行うことにより求めることができる。
被覆層は種々の形態をとることができ、一部を被覆する場合は、例えば、銀とテルルを主成分とする粒子がテルル系ガラス粉表面に点在している形態であってもよい。
【0016】
前記被覆層中の銀(Ag)とテルル(Te)の量は、オージェ分光分析装置を用いてテルル系ガラス粉表面から粉末中央に向けて深さ方向分析より測定することができる。
前記銀とテルルを主成分とするとは、銀とテルルの合計が被覆層中の主成分(50質量%以上100質量%以下)であることをいう。なお、被覆層中のAg、Teは各々少なくとも10質量%以上含まれるものとする。被覆層中にTeが含まれることにより、Agのみの被覆に比べて融点が下がり、加熱時に銀が拡散しやすくなると考えられる。
【0017】
前記銀とテルルを主成分とする被覆層の厚さは、10nm以下であると銀とテルルが共存している量が少なく太陽電池セルの変換効率(発電効率)が向上しない点から、10nm以上400nm以下が好ましく、20nm以上300nm以下がより好ましく、200nmを超えると銀が多くなりすぎ経済的な面から好ましくない点から、200nm以下がさらに好ましい。
前記被覆層の厚さは、オージェ分光分析装置を用いて銀テルル被覆ガラス粉表面から粉末中央に向けて深さ方向分析を行った場合の、銀とテルルが主成分となる層の深さによって測定することができる。被覆層と原料のテルル系ガラス粉からなる深部との境界は、例えば、検出されるAgのIntensityと酸素のIntensityとの強弱関係が逆転する位置とすることができる。
また、被覆層の厚さ(深さ)の値は、SiO
2に対するエッチングレートを用いて、Arスパッタの時間を厚さ(深さ)に換算することにより求めることができる。
【0018】
以下、被覆層中のAg、Teの量の算出方法について記載する。
前記被覆層中の銀(Ag)とテルル(Te)の含有量は、オージェ分光分析装置を用いて銀テルル被覆ガラス粉表面から粉末中央に向けた深さ方向分析(データ出力において、縦軸を組成比(Relat.Con.%(単位:at%))としたもの)において、被覆層に相当する領域のデータから測定することができる。前記オージェ分光分析装置による自動計算により縦軸を各元素の強度(Int.)から組成比(at%)に変換して出力し、前記被覆層に相当する領域における各元素の値の平均値を計算し、原子量を用い質量%に換算して被覆層中の銀(Ag)とテルル(Te)の質量%を算出する。
【0019】
前記銀とテルルを主成分とする被覆層は、銀とテルルを主成分とする固溶体、銀とテルルを主成分とする金属間化合物、銀とテルルを主成分とする非晶質、および銀とテルル化合物との混合物のいずれでもよい。また、被覆層を形成するにあたって少なくともテルル系ガラスの表面の一部が溶解していると考えられることから、テルルと共に溶解した成分として、または、溶解せず部分的に残留した成分(酸化物)として、テルル系ガラス粉に含まれるテルル以外の成分が被覆層内に(不純物として)混在することが考えられる。
【0020】
前記銀とテルルを主成分とする被覆層の酸素含有率は、被覆層に覆われる前記テルル系ガラス粉の酸素含有率の平均よりも低いことが好ましい。テルル系ガラスは主に酸化物であるが、銀とテルルを主成分とする被覆層の主な構成は、銀イオンとテルルイオンの存在下で還元剤のもとに形成される合金、金属間化合物、および非晶質のいずれかであって、テルル系ガラス粉よりも酸素が少ないことが好ましい。
前記酸素含有率は、例えば、オージェ分光分析装置を用いた深さ方向分析により測定することができ、少なくとも銀とテルルを主成分とする被覆層の酸素の強度が、粉末中央よりも低い傾向を示していればよい。
【0021】
前記テルル系ガラス粉の表面の少なくとも一部を、銀とテルルを主成分とする被覆層とすることで、ペースト化した際の溶剤や他の銀粉とのなじみがよく、例えば、ペースト化の際に本発明の銀テルル被覆ガラス粉を用いると粘度を低くすることができる。太陽電池のフィンガー電極の細線化に伴い、ガラス粉も微細化していくと考えられるが、一般的にガラス粉を微細化していくと増粘する傾向があるため、印刷可能な粘度にするために溶剤の追添加が必要となり、電極特性やその形状に悪影響を及ぼすと考えられる。本発明の銀テルル被覆ガラス粉では、微細化したことによる増粘の影響を低く抑えられるので、溶剤の追添加量を減らすことができて導電性ペースト中の銀含有量の低下を抑制することができ、ラインの抵抗等の電極への悪影響を低減することができる。
また、焼成して導電膜を形成する際のテルルや銀の拡散にも良い影響を与えるものと予想される。例えば、従来、テルル系ガラス粉をガラスフリットとして含んだ太陽電池用の焼成型導電性ペーストにおいては、800℃以上で銀粉の焼成を行うが、800℃以上で銀粉の焼成が始まるまでの間に、200℃以上500℃以下でバインダーが分解し、ガラスフリットの種類によるが350℃以上550℃以下でガラスフリットが溶解し、700℃以上で溶解したガラスフリットと太陽電池表面のSiN層との反応が起こってファイヤースルーし、800℃以上でガラスフリット中のPbまたはTeがAgと合金化し、Agがガラス中に拡散して導通を確保しつつ、太陽電池表面のSiN層の下のN型層とのオーミック接触をとる、と考えられる。ここで、あらかじめガラスフリット(テルル系ガラス粉)の表面を、銀とテルルを主成分とする被覆層とすることで、従来よりも、より低い温度での合金化や導通の確保が起こりやすくなり、太陽電池の発電効率の向上に寄与すると考えられる。
【0022】
前記銀テルル被覆ガラス粉の粒度分布として、累積10%粒子径(D
10)は、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.3μm以上5μm以下がより好ましく、0.5μm以上2μm以下が特に好ましい。また、累積50%粒子径(D
50)は、0.1μm以上20μm以下が好ましく、0.3μm以上10μm以下がより好ましく、1μm以上5μm以下が特に好ましい。さらに、累積90%粒子径(D
90)は、1μm以上60μm以下が好ましく、1.5μm以上30μm以下がより好ましく、1.5μm以上20μm以下が特に好ましい。
前記累積10%粒子径(D
10)が0.1μm未満、累積50%粒子径(D
50)が0.1μm未満、および累積90%粒子径(D
90)が1μm未満であると、銀テルル被覆ガラス粉の導電性が不十分となることがあり、前記累積10%粒子径(D
10)が10μm、累積50%粒子径(D
50)が20μm、および累積90%粒子径(D
90)が60μmを超えると、微細な配線の形成が困難になる場合がある。
前記銀とテルルを主成分とする被覆層を有する銀テルル被覆ガラス粉の粒度分布としては、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製のマイクロトラック)により測定することができる。
【0023】
前記銀テルル被覆ガラス粉の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、細線化が進む導電性用途に適用することを考えると、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。前記体積平均粒子径が、10μmを超えると、細線化が進む導電性用途に用いることが困難となることがある。
前記体積平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製のマイクロトラック)により測定することができる。
【0024】
前記銀テルル被覆ガラス粉のBET比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1m
2/g以上70m
2/g以下が好ましく、0.5m
2/g以上10m
2/g以下がより好ましい。前記BET比表面積としては、例えば、市販のBET比表面積測定装置などを用いて測定することができる。
【0025】
前記銀テルル被覆ガラス粉は、脂肪酸などの有機物からなる表面処理剤にて表面が被覆されていてもよい。
【0026】
前記銀テルル被覆ガラス粉中の銀の含有率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、銀テルル被覆ガラス粉全量に対して、5質量%以上90質量%以下が好ましく、5質量%以上70質量%以下がより好ましく、5質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。
【0027】
前記銀テルル被覆ガラス粉の明度としては、JIS規格Z8722に従って測定されたL
*の値が、60以下であることが好ましい。テルル系ガラス粉の表面の少なくとも一部を、銀とテルルを主成分とする被覆層とすることにより、テルル系ガラス粉に対し表面色が大きく変わり、明度L
*値が低下する。
【0028】
<実施形態1:TeO
2−Bi
2O
3系>
前記銀テルル被覆ガラス粉について、オージェ分光分析装置(日本電子株式会社製、JAMP−9500F)を用いて、テルル系ガラス粉表面の定性分析、およびテルル系ガラス粉表面から粉末中央に向けて深さ方向分析を行うことで、銀とテルルとを含有する層の存在を確認することができる。例として、後述する実施例1の銀テルル被覆ガラス粉のオージェ分光分析による定性分析結果を
図1に、定性分析結果で検出された元素の深さ方向分析結果を
図2に、
図2の縦軸を組成比にした分析結果を
図3に示す。
図2は、表面から約308nmまでの深さ方向の分析結果を示す。
分析条件は、Arスパッタエッチング速度が12.3nm/min(SiO
2)であり、分析エリアは、8nmφである。
定性分析結果では、最表面にはAg、Te、Bi、Ti、O、およびCが含まれ、テルル系ガラスの成分に含まれるZnなどは検出されなかった。
深さ方向分析では、AgとTeが共に存在している領域(表面側の領域、
図2では表面から約140nmの深さまでの範囲)とその深部(テルル系ガラス粉からなる核の領域、
図2では表面から約140nmの深さ以降の範囲)との間で、検出元素のピークが異なることが分かる。深さの数値については、エッチングレートは規定のSiO
2に対する値(12.3nm/min)を用いた。Agは表面側に多く、表面側の酸素含有率は深部の酸素含有率の平均に比べて半分以下に少ないことから、表面に存在する被覆層は、AgとTeを含む合金(金属間化合物)が含まれる可能性があることが分かる。
【0029】
実施例1の深さ方向分析(
図3、縦軸が組成比)において、測定元素の組成比(at%)の、0nm〜140nmまでの範囲の平均値および平均値の合計から算出した各元素の組成比は、Agが29.27at%、Teが27.23at%、Oが14.91at%、Tiが5.57at%、Biが1.7at%、Cが21.33at%であり、質量%に換算したTeは44.84質量%、AgとTeの合計は85.58質量%と計算された。
【0030】
<実施形態2:TeO
2−Pb
2O
3系>
後述する実施例5の銀テルル被覆ガラス粉について上記と同様にオージェ分光分析による定性分析と深さ方向分析結果を得た。定性分析結果では、最表面にはAg、Te、Si、O、およびCが含まれ、テルル系ガラスの成分に含まれるPbなどは検出されなかった。分析条件は、Arスパッタエッチング速度が10.6nm/min(SiO
2)であり、分析エリアは、8nmφであった。銀と酸素の逆転する位置を確認すると、被覆層の範囲は最表面から200nmの深さまでの範囲であった。測定元素の組成比(at%)の0nm〜200nmまでの範囲の平均値および平均値の合計から算出した各元素の組成比は、Agが33.95at%、Teが16.1at%、Oが18.59at%、Siが9.27at%、Cが22.1at%であり、質量%に換算したTeは31.4質量%、AgとTeの合計は87.4質量%と計算された。
【0031】
−熱処理による銀テルル被覆ガラス粉の評価1−
上記の例では、銀とテルルを主成分とする被覆層を有する銀テルル被覆ガラス粉を、350℃にて熱処理を行うとテルル系ガラス粉内部に被覆層中の銀が拡散して銀テルル被覆ガラス粉を断面観察した場合に内部に銀リッチ相が点在するようになる。前記銀リッチ相とは、銀、銀を含む固溶体、銀を含む金属間化合物、および銀を含む非晶質から選ばれる1種以上からなるものとする。これは、前記被覆層があることが要因であって被覆層がない場合は起きない現象であるため、銀とテルルを主成分とする被覆層によって従来に比べてより低い温度での合金化や導通の確保が起こりやすくなっていると考えられる。
【0032】
図3に後述の実施例1に記載の銀とテルルを主成分とする被覆層を有する銀テルル被覆ガラス粉を350℃にて熱処理を行った後の銀テルル被覆ガラス粉の断面SEM像およびEDSマップ分析結果を示す。断面SEM像およびそのEDSはFE−SEM装置(日本電子株式会社製、JSM−6700F)を用いて測定をした。
図3からわかるように、銀が銀テルル被覆ガラス粉内部に点在している様子が観察される。熱処理前は銀テルル被覆ガラス粉の内部側(原料のテルル系ガラスの領域)には銀は観察されないことから、350℃の熱処理によって被覆層中の銀が銀テルル被覆ガラス粉全体に拡散するとともに、テルル系ガラス粉内部の粒界などに粒状または線状に銀リッチ相が析出している可能性がある。また、EDSマップ分析結果において、粉末の表面側と内部とで分布傾向に差が見られないことから、銀テルル被覆ガラス粉に含まれた銀のほとんどが銀テルル被覆ガラス粉全体に拡散し、銀リッチ相が銀テルル被覆ガラス粉全体に点在するようなったと考えられる。
【0033】
なお、銀粉とテルル系ガラス粉とを混合して350℃にて熱処理を行った場合では、テルル系ガラス粉の内部まで銀は拡散せず、テルル系ガラス粉を断面観察した場合に内部に銀が存在することはない。テルル系ガラス粉に対し11質量%の銀粉(DOWAハイテック株式会社製、AG−4−8F)とテルル系ガラス粉とを混合して350℃にて熱処理を行った場合にはテルル系ガラス粉内部に銀は通常であれば観察されず、仮に内部に銀が観察される場合であってもその割合は混合した銀粉の量に対して非常に少ないものである。
【0034】
前記銀とテルルを主成分とする被覆層を有する銀テルル被覆ガラス粉を導電性ペーストに用いた場合に、太陽電池の発電効率を向上させることが可能な理由として、上記の観察結果より、導電性ペーストの焼成温度よりも低い温度帯においてテルル系ガラス粉の内部に銀が拡散することでテルル系ガラス粉内にも導通経路を形成することが容易となることが予想される。そのため、焼成後の導電膜の導電性が向上し、結果として太陽電池の発電効率を向上させることが考えられる。
【0035】
−熱処理による銀テルル被覆ガラス粉の評価2−
<IR炉試験による導電性ペースト中での挙動の考察>
太陽電池用シリコン基板(100Ω/□)の反射防止膜(SiN)上に、実施例5の銀テルル被覆ガラス粉を直接まぶした場合と、銀粉(DOWAハイテック製AG−3−96F)とテルル系ガラス粉(比較例5)を質量比10:90で混合したものを直接まぶした場合において、高速焼成IR炉(日本碍子株式会社製)を用いて、ピーク時の温度(焼成温度)を450℃または500℃としてin−out21secにて高速加熱した後の状態を、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製、KEYENCE VHX−5000)を用いて観察した。
その結果として、
図5に実施例5の銀テルル被覆ガラス粉を太陽電池用シリコン基板の反射防止膜(SiN)上で450℃または500℃にて熱処理を行った後のマイクロスコープ画像を示す。また、
図6に、比較例5の銀粉とテルル系ガラス粉の10:90混合物を太陽電池用シリコン基板の反射防止膜(SiN)上で450℃または500℃にて熱処理を行った後のマイクロスコープ画像を示す。
【0036】
上記観察の結果では、実施例5の銀テルル被覆ガラス粉においては、450℃に加熱した場合(
図5、左パネル)と比べて、500℃に加熱した場合において太陽電池用シリコン基板の反射防止膜(SiN)上に銀が濡れ広がっている(
図5、右パネル)。対して、被覆層のないテルル系ガラス粉(比較例5)においては、450℃に加熱した場合(
図6、左パネル)と比べて500℃に加熱した場合(
図6、右パネル)において銀粉がテルル系ガラス粉の周囲に集まっていることが観察されるものの、銀テルル被覆ガラス粉のような濡れ広がりは起きていない。したがって、実施例5の銀テルル被覆ガラス粉において、反射防止膜との反応が低温(500℃)で進みやすくなっていると考えられる。
このような銀テルル被覆ガラス粉自体の低温での太陽電池用シリコン基板に対する濡れ広がりやすさが、銀テルル被覆ガラス粉を導電性ペーストに用いた場合での変換効率の向上に効いていると考えられる。
【0037】
(銀テルル被覆ガラス粉の製造方法)
本発明の銀テルル被覆ガラス粉の製造方法は、テルルを20質量%以上含むテルル系ガラス粉を、銀錯体溶液に添加した後、還元剤を添加し、必要に応じてその他の成分を添加して、銀の還元反応により、表面に銀とテルルを主成分とする被覆層を形成する。
また、銀錯体溶液中の未還元銀を無くすために、還元反応が終了するまで銀、および銀テルル化合物の少なくとも一方をテルル系ガラス粉表面に析出させる熟成時間を有していてもよく、さらに必要に応じて被覆後に、ろ過、洗浄、乾燥、および解砕する工程を有していてもよい。
【0038】
前記銀テルル被覆ガラス粉の製造方法としては、原料を調製する原料調液工程、前記原料調液工程において得られた銀化合物含有水溶液中の銀を錯化する錯化工程、前記錯化工程で得られる銀錯体溶液にテルル系ガラス粉を添加し、還元剤および必要に応じてその他の成分を加えて、還元反応を起こさせることで銀とテルルを主成分とする被覆層によりテルル系ガラス粉の表面を被覆する被覆工程、前記被覆工程後に、必要に応じて、前記銀テルル被覆ガラス粉を表面処理剤で処理する表面処理工程、ろ過工程、洗浄工程、乾燥工程、解砕工程、分級工程などを含む。
【0039】
<原料調液工程>
前記原料調液工程は、原料を調製する工程である。
純水が攪拌されている状態の反応槽に、銀化合物を入れ撹拌し、銀化合物含有水溶液を得ることができる。
前記銀化合物としては、例えば、硝酸銀、炭酸銀、酢酸銀などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、コスト等の面から、硝酸銀を用いることが好ましい。
【0040】
<錯化工程>
前記錯化工程は、前記原料調液工程において得られる銀化合物含有水溶液中の銀を錯体化する工程である。
【0041】
前記錯化工程としては、前記原料調液工程で得られた銀化合物含有水溶液中の銀を錯体化することにより、銀錯体溶液を得ることができる。
前記錯体化する方法としては、例えば、銀錯化剤を用いることができる。
前記銀錯化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アンモニア水、アンモニウム塩、キレート化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アンモニア水が好ましい。
ここで、前記錯化工程後の銀化合物含有水溶液のpHは、9〜13の範囲とすることが好ましい。
【0042】
<被覆工程>
前記被覆工程としては、前記錯化工程で得られる銀錯体溶液にテルル系ガラス粉を添加し、還元剤および必要に応じてその他の成分を加えて、還元反応を起こさせることで銀とテルルを主成分とする被覆層によりテルル系ガラス粉の表面を被覆する工程である。
【0043】
前記還元剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸塩、アルカノールアミン、過酸化水素水、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム、グリオキサール、酒石酸、次亜燐酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドロキノン、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、ピロガロール、ぶどう糖、没食子酸、ホルマリン、無水亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アスコルビン酸、アルカノールアミン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドロキノン、ヒドラジン、ホルマリンが好ましく、安価な点から、ホルマリン、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウムがより好ましい。
前記還元剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0044】
前記被覆工程は熟成時間を設けてもよい。前記「熟成」とは、テルル系ガラス粉と銀錯体溶液とを混合し、撹拌しながら、テルル系ガラス粉表面に銀とテルルを主成分とする被覆層を生成させる反応を、銀錯体溶液中の未反応の銀が無くなるまで継続することを意味する。
前記熟成時間は、特に制限はないが、1分間以上が好ましい。
前記銀錯体溶液中の未反応の銀の存在の有無としては、反応液をろ過したろ液に食塩水を加え白濁するか否かで確認することができる。すなわち、ろ液中に銀(Ag)イオンが残っていなければ、食塩(NaCl)由来の塩化物と銀(Ag)イオンとが反応して生成される難溶性の塩化銀(AgCl;白色)が生じないため、反応終了と判断することができる。
前記被覆工程および前記熟成時間中の液温としては、特に制限はないが、10℃以上50℃以下が好ましい。
【0045】
前記その他の成分としては、例えば、還元助剤、表面処理剤などが挙げられる。また、以下に記載するとおり、表面処理工程の表面処理剤を、還元反応前や還元中のタイミングで投じてもよい。
【0046】
前記還元助剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水素化ホウ素ナトリウム、コロイド粒子を用いることが好ましい。前記コロイド粒子が分散した液を添加することにより、ナノサイズの粒子が核となり、銀が析出する場を増やすため、未還元銀をなくすことが可能である。前記コロイド粒子としては、導電性の観点から、ナノサイズの金属のコロイド粒子を用いることが好ましく、銀コロイド液が特に好ましい。
前記還元助剤の添加量としては、特に制限はなく、未反応の銀が出ないように適宜調整することができる。
【0047】
<表面処理工程>
前記表面処理工程は必須ではないものの、前記銀テルル被覆ガラス粉を表面処理剤で処理してもよい。粉末が凝集することを抑制することができる。
【0048】
<ろ過工程、洗浄工程、乾燥工程、解砕工程、および分級工程>
前記分散工程で得られる銀被覆ガラス粉含有スラリーを吸引ろ過し、水洗することによって、流動性がほとんどない塊状のケーキが得られる。ケーキの乾燥を早める、乾燥時の凝集を防ぐ、などの目的で、ケーキ中の水を低級アルコールやポリオールなどで置換してもよい。前記ケーキを強制循環式大気乾燥機、真空乾燥機、気流乾燥装置等の乾燥機によって乾燥した後、解砕することにより、銀テルル被覆ガラス粉が得られる。解砕の代わりに、粒子を機械的に流動化させることができる装置に銀テルル被覆ガラス粉を投入して、粒子同士を機械的に衝突させることによって、銀テルル被覆ガラス粉表面の凹凸や角張った部分を滑らかにする表面平滑化処理を行ってもよい。また、解砕や表面平滑化処理の後に分級処理を行ってもよい。なお、乾燥、粉砕、および分級を行うことができる一体型の装置(例えば、株式会社ホソカワミクロン製のドライマイスタ、ミクロンドライヤ等)を用いて乾燥、粉砕、および分級を行ってもよい。
【0049】
(導電性ペースト)
本発明の導電性ペーストは、本発明の銀テルル被覆ガラス粉を含有し、銀粉等の導電粉、樹脂、および有機溶媒を含有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。なお、前記銀テルル被覆ガラス粉以外のガラスフリットをさらに含有していてもよい。
【0050】
本発明の導電性ペーストの製造方法は、テルルを20質量%以上含むテルル系ガラス粉を、銀錯体溶液に添加した後、還元剤を添加して表面に銀とテルルを主成分とする被覆層を形成させることにより銀テルル被覆ガラス粉を得る工程と、
前記銀テルル被覆ガラス粉と、少なくとも導電粉、樹脂、および有機溶媒を混合する工程と、を有し、さらに必要に応じてその他の工程を有する。
前記混合は、例えば、超音波分散、ディスパー、三本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、二軸ニーダー、自公転式攪拌機などを用いて行うことができる。
本発明の太陽電池用電極の製造方法としては、得られた導電性ペーストを印刷し、焼成する工程を有することが好ましい。
【0051】
前記導電性ペーストにおける前記銀テルル被覆ガラス粉の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記導電性ペーストの粘度が、25℃で、10Pa・s以上1,000Pa・s以下となるように調整することが好ましい。前記粘度が、10Pa・s未満であると、低粘度の領域では「にじみ」が発生することがあり、1,000Pa・sを超えると、高粘度の領域では「かすれ」、と言った印刷の不具合が発生することがある。また、前記導電性ペーストの粘度は、粘度調整剤の添加や溶剤の種類等の銀テルル被覆ガラス粉の含有量以外でも調整することが可能である。
【0052】
本発明の銀テルル被覆ガラス粉を含有した前記導電性ペーストは、従来の導電性ペーストに比較して、焼成型太陽電池の電極、種々の電子部品の電極や回路などを形成するための導電性ペーストとして、好適に利用可能である。本発明の銀テルル被覆ガラス粉は、焼成型導電性ペーストとして特に好適に用いられる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
−銀テルル被覆ガラス粉の作製−
テルル系ガラス粉(Te:69.8質量%、Bi:23.7質量%、Zn:6.5質量%を含む(蛍光X線による分析結果)、軟化点344℃、密度5.3g/cm
3)を10g用意した。
銀32質量%の硝酸銀水溶液3.47gを純水787gが攪拌されている状態の1Lビーカーに混合して希釈し、銀を1.11g含む硝酸銀水溶液とした。引き続き、このビーカー中へ錯体化剤としての28質量%のアンモニア水2.5gを添加し、銀アンミン錯塩水溶液を得た(pHは11)。この銀アンミン錯塩水溶液の液温を30℃とした後、前記テルル系ガラス粉を10g投入し、その直後に、還元剤としてのヒドラジン0.3g、銀コロイド[溶媒は純水、含有するナノ粒子銀のTEM粒径は5nm〜40nmであり、ナノ粒子銀量は0.01g(水溶液中の銀量に対して0.001倍)]10.3g、および純水20gを予め混合したものを投入し、熟成時間(未還元銀が液中に残らないようにする待ち時間)を5分間として、銀とテルルを主成分とする被覆層を前記テルル系ガラス粉表面に形成させた。
還元剤投入から5分間後に、銀被覆ガラス粉含有スラリーを吸引濾過し、純水を用いて洗浄後液の電位が0.5mS/m以下となるまで水洗して、ケーキを得た。得られたケーキを75℃の真空乾燥機で10時間乾燥させ、実施例1の銀とテルルを主成分とする被覆層を有する銀テルル被覆ガラス粉を得た。
得られた銀テルル被覆ガラス粉について、蛍光X線による組成分析は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(日本電子株式会社製、JSX−3201)により行った。結果を表1−1に示した。
前記吸引ろ過時のろ液のpHは9.6であり、ICP発光分析(SII社製、SPS5100)したところ、Teが58.0ppmであった。結果を表2に示した。
【0055】
次に、得られた銀テルル被覆ガラス粉について、以下のようにして、諸特性の測定を行った。結果を表1−2に示した。
【0056】
[被覆層の厚さの測定]
被覆層の厚さは、オージェ分光分析装置(日本電子株式会社製、JAMP−9500F)を用いて銀テルル被覆ガラス粉表面から粉末中央に向けて深さ方向分析を行った場合の、銀とテルルが主成分となる層の深さによって測定した。被覆層と原料のテルル系ガラス粉からなる深部との境界は、例えば、AgのピークがTeや酸素のピークよりも下回った位置とすることができる。また、被覆層の厚さ(深さ)の値は、SiO
2に対するエッチングレートを用いて、Arスパッタの時間を厚さ(深さ)に換算することにより求めた。
【0057】
[粒度分布]
銀テルル被覆ガラス粉の粒度分布としては、レーザー回折式粒度分布装置(日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置(Microtrac社製、MT3300EXII))により測定して、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)、および累積90%粒子径(D
90)を求めた。
【0058】
[BET比表面積の測定]
銀テルル被覆ガラス粉のBET比表面積としては、比表面積測定装置(装置名:Macsorb、Mountech社製)を用いて窒素吸着によるBET1点法で測定した。なお、BET比表面積の測定において、測定前の脱気条件は60℃で10分間とした。
【0059】
次に、得られた銀テルル被覆ガラス粉を用い、以下のようにして、導電性ペーストを作製した。
<導電性ペーストの作製>
得られた銀テルル被覆ガラス粉(銀含有量15.8質量%)1.6質量%、銀粉(DOWAハイテック株式会社製、AG−4−8F)88.5質量%、樹脂(和光純薬工業株式会社製、エチルセルロース)1.2質量%、溶剤(JMC株式会社製、テキサノール)3.95質量%、溶剤(和光純薬工業株式会社製、ブチルカルビトールアセテート)3.95質量%、ステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.3質量%、およびオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.5質量%となるように秤量し、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー製、あわとり練太郎)により混合(予備混練)した後、3本ロール(オットハーマン社製、EXAKT80S)により混練することにより、導電性ペーストを得た。
得られた導電性ペーストについて、粘度計(ブルックフィールド社製、HBDV−III ULTRA)にCPE−52のコーンプレートを用いて1rpmの5分値と5rpmの1分値を測定し、粘度を測定した。結果を表3−1に示した。
【0060】
次に、得られた導電性ペーストを用い、以下のようにして、太陽電池を作製した。
<太陽電池の作製>
太陽電池用シリコン基板(80Ω/□)上に、スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT−320T)を用いて基板裏面に、アルミニウムペースト(東洋アルミニウム株式会社製、アルソーラー14−7021)を用いて154mm□のベタパターンを形成した。
熱風乾燥機を用いて200℃で10分間乾燥させた。
基板表面に、実施例1の導電性ペーストを用いて40μm幅のフィンガー電極と、3本のバスバー電極を形成した。
熱風乾燥機を用いて200℃で10分間乾燥させた。
高速焼成IR炉(日本碍子株式会社製)を用いて、ピーク時の温度(焼成温度)を810℃または830℃としてin−out 21secにて高速加熱した。以上により、太陽電池を作製した。
【0061】
<太陽電池特性の評価>
作製した太陽電池について、WACOM社製ソーラーシミュレーターを用いて太陽電池特性を評価した。結果を表3−2に示した。
得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度810℃で18.10%、焼成温度830℃で17.83%であった。
【0062】
(実施例2)
実施例1において、テルル系ガラス粉の組成を(Te:69.5質量%、Bi:23.8質量%、Zn:6.8質量%含む(蛍光X線による分析結果)、軟化点334℃、密度5.2g/cm
3)とした以外は、実施例1と同様にして、銀テルル被覆ガラス粉を得た。
次に、得られた銀テルル被覆ガラス粉について、実施例1と同様にして、諸特性の測定を行った。結果を表1−1および表1−2に示した。
ろ液のpHは9.6であり、ICP発光分析(SII社製、SPS5100)したところ、Teが89.7ppmであった。結果を表2に示した。
得られた銀テルル被覆ガラス粉を用い、実施例1と同様にして、導電性ペーストおよび太陽電池を作製し、導電性ペーストの粘度、および太陽電池特性を評価した。結果を表3−1および表3−2に示した。
得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度810℃で18.14%、焼成温度830℃で18.14%であった。
【0063】
(比較例1)
実施例1において、銀テルル被覆ガラス粉に替えて、被覆層を形成していない実施例1に記載の原料のテルル系ガラス粉1.6質量%を添加した以外は、実施例1と同様にして、太陽電池を作製し、太陽電池特性を評価した。結果を表3−2に示した。
得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度810℃で17.83%、焼成温度830℃で17.72%であった。
【0064】
(比較例2)
実施例2において、銀テルル被覆ガラス粉に替えて、被覆層を形成していない実施例2に記載の原料のテルル系ガラス粉1.6質量%を添加した以外は、実施例2と同様にして、太陽電池を作製し、太陽電池特性を評価した。結果を表3−2に示した。
得られた太陽電池の変換効率は、焼成温度810℃で18.12%、焼成温度830℃で18.05%であった。
【0065】
(参考例1)
実施例1において、テルル系ガラス粉に替えて、テルルを含まないガラス粉(Ba:61.8質量%、Zn:29.1質量%、Bi:15.0質量%含む(蛍光X線による分析結果)、軟化点526℃、密度3.4g/cm
3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、太陽電池を作製し、太陽電池特性を評価した。結果を表3−2に示した。
参考例1の太陽電池は、テルルを含まないため変換効率が非常に小さく、銀層を被覆したガラス粉を用いた太陽電池の変換効率は、焼成温度830℃で3.41%であった。
【0066】
【表1-1】
【0067】
【表1-2】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3-1】
【0070】
【表3-2】
【0071】
本発明の銀テルル被覆ガラス粉を用いた導電性ペーストは、銀とテルルを主成分とする被覆層を有していないテルル系ガラス粉を用いた場合に比べて太陽電池の変換効率を向上させる効果を有することが分かった。
【0072】
(実施例3)
次に、実施例1の銀テルル被覆ガラス粉を用い、実施例1とは配合比の異なる導電性ペーストを作製した。
上記の実施例1の銀テルル被覆ガラス粉を1.6質量%、銀粉(DOWAハイテック株式会社製、AG−4−8F)89.5質量%、樹脂(和光純薬工業株式会社製、エチルセルロース)1.2質量%、溶剤(JMC株式会社製、テキサノール)3.45質量%、溶剤(和光純薬工業株式会社製、ブチルカルビトールアセテート)3.45質量%、ステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.3質量%、およびオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.5質量%となるように秤量し、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー製、あわとり練太郎ARE−310)により混合(予備混練)した後、3本ロール(EXAKT社製、M−80S)により混練することにより、実施例3に関する導電性ペーストを得た。
【0073】
得られた導電性ペーストについて、粘度計(ブルックフィールド社製、HBDV−III ULTRA)にCPE−52のコーンプレートを用いて1rpmの5分値と5rpmの1分値を測定し、粘度を測定した。結果を表4−1に示した。
【0074】
(実施例4)
次に、実施例2の銀テルル被覆ガラス粉を用い、実施例2とは配合比の異なる導電性ペーストを作製した。導電性ペーストの製造方法は実施例3と同様として、実施例4に関する導電性ペーストを得た。粘度を測定した結果を表4−1に示した。
【0075】
(比較例3)
次に、比較例1のテルル系ガラス粉を用いた以外は、実施例3と同様として、比較例3に関する導電性ペーストを得た。粘度を測定した結果を表4−1に示した。
【0076】
(比較例4)
次に、比較例2のテルル系ガラス粉を用いた以外は、実施例4と同様として、比較例4に関する導電性ペーストを得た。粘度を測定した結果を表4−1に示した。
【0077】
【表4-1】
【0078】
表4−1より、得られた実施例3および4の導電性ペーストは、比較例3および4の導電性ペーストに比べて粘度が高くなり易いことが分かった。そして、実施例3および4の導電性ペーストは、比較例3および4の導電性ペーストに比べて粘度の上昇(増粘)が小さいことが分かった。下記に示すスクリーン印刷機での印刷では粘度が高いと印刷性パターンが悪化しやすい。そのため、太陽電池による評価では、溶剤(テキサノールとブチルカルビトールアセテートの質量比1:1の混合)を追添加することにより、実施例3および4と比較例3および4の1rpmの5分値の粘度を、スクリーン印刷機での印刷が最適になる粘度範囲(例えば、320rpm±20rpm)でほぼ同じ値になるように調整した。調整に用いた溶剤の追加量およびその粘度の結果を表4−2に示した。
【0079】
【表4-2】
【0080】
次に、得られた各導電性ペーストを用い、以下のようにして、太陽電池を作製した。
太陽電池用シリコン基板(105Ω/□)上に、スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT−320T)を用いて基板裏面に、アルミニウムペースト(東洋アルミニウム株式会社製、アルソーラー14−7021)を用いて154mm□のベタパターンを形成した。
熱風乾燥機を用いて200℃で10分間乾燥させた。
基板表面に、各導電性ペーストを用いて40μm幅のフィンガー電極と、3本のバスバー電極を形成した。
熱風乾燥機を用いて200℃で10分間乾燥させた。
高速焼成IR炉(日本碍子株式会社製)を用いて、ピーク時の温度(焼成温度)を820℃としてin−out 21secにて高速加熱した。以上により、太陽電池を作製した。
作製した太陽電池について、WACOM社製ソーラーシミュレーターを用いて太陽電池特性を評価した。結果を表5に示した。
【0081】
【表5】
【0082】
上記により、実施例3および4の銀テルル被覆ガラス粉では、ペースト化したときに被覆層を有していない比較例3および4のテルル系ガラス粉に比べて粘度を低くすることができることが分かった。実施例3および4の銀テルル被覆ガラス粉は低粘度に抑えられるので、適度な粘度に合わせる際に導電性ペースト中の銀含有量の低下を避けることができることも、太陽電池の変換効率の向上に加えて有意な効果であることが分かった。
【0083】
(実施例5)
−銀テルル被覆ガラス粉の作製−
実施例1のテルル系ガラス粉に替えて、鉛を含むテルル系ガラス粉(Te:34.8質量%、Pb:36.7質量%、Bi:21.0質量%などを含む(蛍光X線による分析結果))10gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例5に関する銀テルル被覆ガラス粉を得た。
【0084】
得られた銀テルル被覆ガラス粉について、蛍光X線による組成分析を、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(日本電子株式会社製、JSX−3201)により行った。結果を表6に示した。なお、Liなどの軽元素は蛍光X線では分析されないが、テルル系ガラス粉にLiは含まれている。
また、得られた銀テルル被覆ガラス粉の粒度分布、およびBET比表面積を測定した結果を表7に示した。
【0085】
(比較例5)
実施例5の銀テルル被覆ガラス粉に替えて、被覆層を形成していない実施例5に記載の原料の鉛を含むテルル系ガラス粉を比較例5のテルル系ガラス粉として用い、実施例5と同様にして蛍光X線による組成分析、粒度分布の測定、およびBET比表面積の測定を行った。結果を表6および7に示した。
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
さらに、以下のようにして実施例5に関する銀テルル被覆ガラス粉を用いた導電性ペースト、および太陽電池を作製し、太陽電池特性を評価した。
【0089】
<導電性ペーストの作製>
得られた銀テルル被覆ガラス粉(銀含有量15.1質量%)1.80質量%、銀粉(DOWAハイテック株式会社製、AG−3−8F分散性改善品、累積50%粒子径(D
50)=1.5μm)90.0質量%、ビヒクル(エチルセルロース10cps30質量%(和光純薬工業株式会社製)ブチルカルビトールアセテート溶液)0.41質量%、ビヒクル(EU−5638、アクリル樹脂46.1質量%、ブチルカルビトールアセテート溶液、日本カーバイド工業株式会社製)2.40質量%、溶剤(CS−12、JNC株式会社製、テキサノール)3.12質量%、溶剤(和光純薬工業株式会社製、ブチルカルビトールアセテート)1.54質量%、ステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.26質量%、およびオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.51質量%となるように秤量し、自公転式真空攪拌脱泡装置(株式会社シンキー製、ARE−310)により混合(予備混練)した後、3本ロール(EXAKT社製、M−80S)により混練することにより、実施例5に関する導電性ペーストを得た。
得られた導電性ペーストの粘度について、粘度計(ブルックフィールド社製、HBDV−III ULTRA)にCPE−52のコーンプレートを用いて1rpmの5分値と5rpmの1分値を測定し、1rpmの粘度の数値を合わせる粘度調整のため、上記溶剤(テキサノールとブチルカルビトールアセテートの質量比3.12:1.54の混合)を必要に応じて追加して再度粘度を測定した。粘度を測定した結果を表8に示した。
【0090】
<太陽電池の作製>
太陽電池用シリコン基板(105Ω/□)上に、スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT−320T)を用いて基板裏面に、アルミニウムペースト(東洋アルミニウム株式会社製、アルソーラー14−7021)を用いて154mm□のベタパターンを形成した。
熱風乾燥機を用いて200℃で10分間乾燥させた。
基板表面に、実施例5の導電性ペーストを用いて30μm幅のフィンガー電極と、4本のバスバー電極を形成した。
熱風乾燥機を用いて200℃で10分間乾燥させた。
高速焼成IR炉(日本碍子株式会社製)を用いて、ピーク時の温度(焼成温度)を760、780℃、または820℃としてin−out 21secにて高速加熱した。以上により、実施例5に関する太陽電池を作製した。実施例1と同様にして太陽電池の特性を評価した結果を表9に示した。
【0091】
(比較例5)
<導電性ペースト、および太陽電池の作製>
実施例5の銀テルル被覆ガラス粉に替えて、被覆層を形成していない実施例5に記載の原料の鉛を含むテルル系ガラス粉1.64質量%、および銀粉(DOWAハイテック株式会社製、AG−3−8F分散性改善品、累積50%粒子径(D
50)=1.5μm)90.14質量%を添加した以外は、実施例5と同様にして、比較例5に関する導電性ペースト、および太陽電池を作製し、粘度、および太陽電池特性を評価した結果を表8および9に示した。
【0092】
【表8】
【0093】
【表9】
【0094】
さらに、実施例1、2および5の銀テルル被覆ガラス粉、ならびに比較例1、2および5のテルル系ガラス粉について、色差計(日本電色工業株式会社 カラーメータ ZE6000)を用いて、JIS規格Z8722に従ってL
*、a
*、b
*の測定を行った。結果を表10に示した。
【0095】
【表10】
【課題】太陽電池の電極用途に用いた場合に、太陽電池の発電効率を向上させることが可能な銀テルル被覆ガラス粉およびその製造方法、ならびに前記銀テルル被覆ガラス粉を含有する導電性ペーストおよびその製造方法の提供。
【解決手段】テルルを20質量%以上含むテルル系ガラス粉の表面に、銀とテルルを主成分とする被覆層を有する銀テルル被覆ガラス粉である。前記銀とテルルを主成分とする被覆層が、銀とテルル以外に前記テルル系ガラス粉に含まれる銀とテルル以外の成分をさらに含む態様、前記テルル系ガラス粉に含まれる銀とテルル以外の成分が、亜鉛、鉛、ビスマス、ケイ素、リチウム、およびアルミニウムから選ばれる1種以上を含む態様などが好ましい。