【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載日:平成27年8月、アドレス(URL):http://www.gakkai−web.net/gakkai/ieice/S_2015/Settings/ab/b_13_027.html
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
すべてのコアにおいてシングルモード伝送が可能な3以上のコアと、前記3以上のコアの周囲を覆う共通のクラッドと、前記クラッドよりも屈折率が低い低屈折率部とを備え、
長手方向に垂直な断面において、3以上のコアが円環状に配置された領域を2以上有し、前記領域内において前記3以上のコアが結合型であり、前記領域の間は、相互に伝送モードが独立しており、
前記領域の少なくとも1つにおいて、前記低屈折率部の少なくとも一部は、前記領域内において隣接した2つのコアの最小の内接円の内側に配置されていることを特徴とするマルチコアファイバ。
すべてのコアにおいてシングルモード伝送が可能な3以上のコアと、前記3以上のコアの周囲を覆う共通のクラッドと、前記クラッドよりも屈折率が低い低屈折率部とを備え、
長手方向に垂直な断面において、3以上のコアが円環状に配置された領域を1つのみ有する結合型マルチコアファイバであり、前記低屈折率部の少なくとも一部は、前記領域内において隣接した2つのコアの最小の内接円の内側に配置されていることを特徴とするマルチコアファイバ。
【背景技術】
【0002】
近年の通信トラフィックの増大に対処するため、更なる通信(伝送)容量の増大が求められている。しかし、従来の光通信に用いられるシングルモードファイバ(SMF)を用いた光通信システムでは、容量の増大に対する限界が予想されている。その限界を超えるための技術として、空間多重の研究開発が盛んに行われている。
【0003】
空間多重を実現する光ファイバとして、1つのコア内に複数のモードを伝搬させ、それぞれのモードに信号を載せることで容量の増大を図った数モードファイバ(FMF)と、複数のコアのそれぞれに信号を載せることで容量の増大を図ったマルチコアファイバ(MCF)とがある(MCFについては特許文献1〜6参照)。
【0004】
また、MCFには、大きく分けて、各コアが独立して情報を伝送させる非結合型MCFと、各コア(のモード)が結合することによってスーパーモードを形成し、それぞれのスーパーモードに情報を伝送させる結合型MCF(C−MCF:Coupled Multicore fiber)との2種類がある(C−MCFについては非特許文献1〜3参照)。C−MCFは、モード多重伝送(MDM:Mode Division Multiplexing)伝送用ファイバの一つである。
【0005】
特に、数モード伝送においては、モード間群遅延時間差(DGD:Differential Group Delay)を低減することが、MIMO(Multiple-input and Multiple-output)等の信号処理の負荷の削減のために重要である。C−MCFでは、スーパーモード同士の結合を強めることによってDGDの低減を目指す検討が行われている(非特許文献2,3参照)。特に、C−MCFにおいて、ファイバ中のランダムな摂動によるモード間結合を利用することで、MIMO受信において問題となるDGDを低減できることが実験的に示されたため、大きな注目を集めている(非特許文献3参照)。また、非特許文献4には、本発明者らのグループによる報告であるが、同種3コアC−MCFにおいて、コア中心に空孔を付加した例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2010/038861号
【特許文献2】特開2011−150133号公報
【特許文献3】特開2013−40078号公報
【特許文献4】特開2013−41148号公報
【特許文献5】国際公開第2013/161825号
【特許文献6】特許第5117636号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】C.Xia,et al.,“Supermodes for optical transmission,” Optics Express, Vol.19, No.17, pp.16653-16664, 2011年.
【非特許文献2】R.Ryf,et al.,“Impulse Response Analysis of Coupled-Core 3-Core Fibers,” ECOC2012, Mo.1.F.4, 2012年.
【非特許文献3】R.Ryf,et al.,“1705-km Transmission over Coupled-Core Fibre Supporting 6 Spatial Modes,” ECOC2014, PD.3.2, 2014年.
【非特許文献4】猪狩章ら、「ベクトル有限要素法とフィールド結合理論による同種3コア結合型ファイバの伝送特性解析」、信学技報,vol.114, no.453, OPE2014-224, 2015年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
C−MCFでは、スーパーモード同士が強く結合するため、すなわち、スーパーモード同士の実効屈折率(n
eff)の差(Δn
eff)が小さいため、DGDを低減することができる(非特許文献2参照)。しかし、従来型のC−MCFにおいてΔn
effを小さくするためには、コア間距離をある程度広げなければならない。例えば、非特許文献3では、6コアのC−MCFに対して、コア間距離を28μmとした例が報告されている。コア間距離を広げることは空間多重度の低下につながるため、コア間距離をより狭くできる構造が必要である。
【0009】
加えて、非結合型MCFのコアのひとつひとつを、C−MCF(これと同様に、相互に結合可能な2以上のコアを含む領域)とすることを想定した場合に、非結合型MCFのコア間クロストークを低減する(すなわち、非結合型MCFのコア間距離を大きくする)ためには、C−MCFのコア間距離をより狭くすることが望ましい。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来よりコア間距離を狭くしてもDGDを低減することが可能なマルチコアファイバ及びこれを用いた光ケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、すべてのコアにおいてシングルモード伝送が可能な3以上のコアと、前記3以上のコアの周囲を覆う共通のクラッドと、前記クラッドよりも屈折率が低い低屈折率部とを備え、長手方向に垂直な断面において
、3以上のコア
が円環状に配置された領域を
2以上有し、
前記領域内において前記3以上のコアが結合型であり、前記領域の間は、相互に伝送モードが独立しており、前記領域の少なくとも1つにおいて、前記低屈折率部の少なくとも一部は、前記領域内において隣接した2つのコアの最小の内接円の内側に配置されていることを特徴とするマルチコアファイバを提供する。
【0012】
また、本発明は、すべてのコアにおいてシングルモード伝送が可能な3以上のコアと、前記3以上のコアの周囲を覆う共通のクラッドと、前記クラッドよりも屈折率が低い低屈折率部とを備え、長手方向に垂直な断面において、3以上のコアが円環状に配置された領域を1つのみ有する結合型マルチコアファイバ
であり、前記低屈折率部の少なくとも一部は、前記領域内において隣接した2つのコアの最小の内接円の内側に配置されていることを特徴とするマルチコアファイバを提供する。
前記領域に含まれるすべてのコアのモードが結合したスーパーモードが形成されてもよい。
前記低屈折率部が、空孔であってもよい。
【0013】
また、本発明は、前記マルチコアファイバを少なくとも一部に有する光ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スーパーモード間の実効屈折率差(Δn
eff)を小さくすることができるので、コア間距離を狭くしてもDGDを抑制することができる。また、コア間距離が等しい条件では、DGDをより低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、空孔付加型6コアC−MCFの断面図である。
図1は空孔(低屈折率部13)を付加したマルチコアファイバ10を示す。
図1に示すように、コア11の半径をa、コア間距離(コア中心間距離)をΛ、低屈折率部13の半径をrとする。また、コア11の屈折率をn
core、クラッド12の屈折率をn
cladとする。コア11の屈折率n
coreは、クラッド12の屈折率n
cladより大きい。また、
図1において、コア11と低屈折率部13との中心間距離は、Λ/2である。
【0017】
すべてのコア11は、伝送帯域においてシングルモード伝送が可能である。クラッド12は、3以上のコア11の周囲を覆う共通のクラッドである。3以上のコア11は、同種のコアから構成されている。各コア単体の実効屈折率は同程度が好ましい。低屈折率部13は、クラッド12よりも屈折率が低い媒質から構成されている。低屈折率部13を構成する媒質は、固体でも液体でも気体でもよい。低屈折率部13が固体の場合は、ロッド状の部材をクラッドに挿入することで構成することができる。低屈折率部13が流体(液体、気体)である場合は、クラッド12の空孔として構成することができる。空孔内の気体が空気でもよく、MCFの外気が空孔内に導入されてもよい。空孔内が真空であってもよい。
【0018】
マルチコアファイバ10の長手方向に垂直な断面において、3以上のコア11が、円環状に配置されている。6コアC−MCFは、6つのコアを有する。
図2に、6コアC−MCFのフィールド分布を例示する。6コアC−MCFでは、各コアがシングルモード動作する場合には、6つのスーパーモードが存在する。そのうち、
図2(a)は1次スーパーモード(1st)を示し、
図2(b)は6次スーパーモード(6th)を示す。基本(1次)スーパーモードでは、6つのコアの電界が同符号であるのに対し、高次(2〜6次)スーパーモードでは、コア間に電界(フィールド)の符号が反転する節が形成される。6次スーパーモードでは、隣接する2つのコア間のそれぞれに節が形成される。これらの中で、基本スーパーモードの実効屈折率n
effが最も高く、高次スーパーモードのn
effは基本スーパーモードのn
effより低い。
【0019】
1次スーパーモードは、隣接コア間と偶対称のフィールド分布を有するのに対して、6次スーパーモードは、隣接コア間と奇対称のフィールド分布を有する。すなわち、6次スーパーモードは、隣接コア間の領域において、1次スーパーモードよりもパワーの局在が少ない。そこで、6次スーパーモードのパワーに比べて1次スーパーモードのパワーが局在している領域に低屈折率部を設けると、6次スーパーモードのn
effに比べて、1次スーパーモードのn
effが大きく低下する。これにより、スーパーモード間のn
effの差Δn
effが小さくなり、スーパーモード間の結合を強めることができる。その結果として、低屈折率部を有しないC−MCFと同程度のDGDを得ようとした場合に、コア間距離をより小さくして、空間多重度を向上することができる。また、低屈折率部を有しないC−MCFと同程度のコア間距離を設けた場合には、DGDをより低減することができる。MCFのDGDとしては、例えば500ps/km以下、さらには200ps/km以下が好ましい。
ここでは、6コアC−MCFの1次スーパーモードと最高次(6次)スーパーモードとの関係について述べたが、3コア以上のMCFの場合も同様である。円環に含まれるコア数が、3以上の奇数(3,5,7,・・・)でも、4以上の偶数(4,6,8,・・・)でもよい。また、最高次でない高次スーパーモード(6コアの場合は、2〜5次)においても、隣接コア間に奇対称のフィールド分布を有する箇所が存在するため、2次以上のスーパーモードに対して効果が得られる。
【0020】
低屈折率部の少なくとも一部が、円環状に配置された複数のコアのうち、隣接した2つのコアの最小の内接円の内側に配置されていることが好ましい。ここで、最小の内接円とは、2つの領域(コア)間の最短距離を直径とする円である。
図1の場合、各内接円は半径が(Λ/2)−aの円である。低屈折率部が、前記内接円の中心を含むことが好ましい。低屈折率部の全部が、前記内接円の内側に配置されてもよい。低屈折率部の中心が、前記内接円の中心と一致してもよい。低屈折率部は、コアに接しないことが好ましく、クラッドが低屈折率部の周囲を覆うことが好ましい。低屈折率部の半径rは、隣接した2つのコアの最小の内接円の半径である(Λ/2)−aより小さいことが好ましい。円環状に配置されたすべてのコア(外周)について、コア間距離Λが一定でない場合、隣接した2つのコア毎に半径が異なる内接円が設定されてもよい。
【0021】
図1に示す例では、MCFが、円環状に配置された複数のコアを含む領域(結合型コア領域)を1つ有する場合を示すが、本発明はこの場合に限定されない。各コアは、同種又は異種であり得る。MCFが2以上の結合型コア領域を有してもよいし、1以上の結合型コア領域と1以上の非結合型コアを有してもよい。ここで、結合型コア領域とは、当該領域に含まれる複数のコア間に生じるスーパーモードを伝送に利用することが可能な領域をいう。また、非結合型コアとは、単一のコアを含み、他のコアとの間で伝送モードが独立しているものをいう。
【0022】
2以上の結合型コア領域を含むMCFにおいて、結合型コア領域の間は、相互に伝送モードが独立している(すなわち、各領域が非結合型である)。2以上の結合型コア領域を有するMCFでは、そのうち1以上の結合型コア領域に低屈折率部を設けることが好ましい。これにより、低屈折率部を設けた結合型コア領域において、領域内のコア間距離を小さくすることにより、領域間のコア間距離を大きくし、領域間のクロストークを低減することができる。
【0023】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明のMCFは、光伝送路、光導波路、光ケーブル等に使用される光ファイバの一部又は全部として用いることができる。光ケーブルは、本発明のMCFを少なくとも一部に有することが好ましい。
【0024】
MCFのコア及びクラッドを構成する媒質としては、石英系ガラス(シリカガラス)、多成分ガラス、プラスチック等が挙げられる。石英系ガラスとしては、添加物を含まない純石英ガラスと、添加物を含む石英系ガラスがあり、添加物としては、Ge,Al,P,B,F,Cl,アルカリ金属等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0025】
C−MCFにおいてはFMFの場合と同様に、伝送路中での各種摂動(マイクロベンド、ねじれなど)により、モード間結合が発生するため、受信側では通常のMDM伝送と同様にMIMO処理が必要と考えられる。その際、スーパーモード間のDGDに伴う、MIMO処理の演算量増加が問題となる可能性がある。そこで、DGDを低減した本発明のマルチコアファイバを用いることにより、MIMO等の信号処理の負荷削減を図ることができる。
【0026】
MCFで伝送に使用される波長帯域は、特に限定されないが、Cバンド(1530〜1565nm)、Lバンド(1565〜1625nm)等が挙げられる。使用波長帯域でシングルモード動作する条件としては、正規化周波数v=2πa(n
core2−n
clad2)
1/2/λとして、v≦2.405のシングルモード動作条件を満たすことが好ましい。比屈折率差Δ=(n
core2−n
clad2)/(2n
core2)が0.05%以上で、C+Lバンドでv≦2.405が成り立つコア半径の上限はおおよそ13μmである。それぞれのコア半径でv≦2.405が成り立つΔは自動的に決めることができる。なお、λは波長であり、2π/λは波数k
0である。
また、v≧2.405となるようなaあるいはΔにおいては、LP
11モード以上の高次モードの伝送損失がα
Loss以上であってもよい。このとき、α
Loss>0dB/mであり、例えば0.1dB/m、0.5dB/m、1.0dB/m、2.0dB/m等が挙げられる。ファイバのケーブルカットオフ波長λ
ccとしては、例えば1260nm以下、1000nm以下等が挙げられる。
【0027】
参考文献1(岡本,“光導波路の基礎”コロナ社)に示されるように、ファイバ型の方向性結合器の結合定数は、a,Δ及びΛが一定の場合には、正規化周波数v(Vでも同じ)に依存する。波長λをC+Lバンドの範囲で変えた場合には、v値の変化は最大0.15程度であり、結合定数の値はそれほど変わらない。コア径a及び比屈折率差Δが一定の場合には、ファイバ型の方向性結合器の結合定数はΛ/aが増加するに従い、おおよそ指数関数的に減少する。
【0028】
以上より、Λ/aが小さすぎる場合には通常のFMFに近くなり、Λ/aが大きすぎる場合には非結合型MCFに近くなると考えられる。Λ/aの下限値としては、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0等が挙げられる。また、Λ/aの上限値としては、5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、6.0等が挙げられる。Λ/aの値としては、3.2、3.5、4.0、4.5、4.8、5.0等、適宜の値が挙げられる。
隣接するコア間の最短距離(Λ−2a)としては、Λ−2a≧0μmであり、例えば0.1μm、0.3μm、0.5μm、0.7μm、1.0μm、2.0μm、5.0μm、10.0μm、15.0μm、17.0μm等が挙げられる。
【0029】
低屈折率媒質(空孔等)の半径rは、特に限定されないが、r>0μmである。rの下限値としては、例えば0.1μm、0.25μm、0.5μm、0.7μm、1.0μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm等が挙げられる。
コアと低屈折率部との間の最短距離(例えば低屈折率部の中心が隣接するコア間の中点に位置する場合には、(Λ/2)−a−r)としては、r−a−a
2≧0μmであり、例えば0.1μm、0.3μm、0.5μm、0.7μm、1.0μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm、3.0μm等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
ここでは、モード分割多重伝送のための空孔付加型6コア結合型ファイバの伝送特性を解析し、フルベクトル有限要素法解析(参考文献2:K.Saitoh and M.Koshiba,“Full-vectorial imaginary-distance beam propagation method based on a finite element scheme: application to photonic crystal fibers,” IEEE J.Quantum Electronics, vol.38, no.7, pp.927-933, Jul. 2002)により、MCFのスーパーモード特性(実効屈折率、群遅延)を評価した。そして、隣接するコア間に空孔を付加することにより、スーパーモード間の実効屈折率差を低減しモード間の結合を強め、コア間距離を小さくしても、スーパーモード間の実効屈折率差を小さくすると同時に、モード間群遅延時間差を小さくすることができることを示す。
【0031】
低屈折率部を有しない同種6コアC−MCFと、
図1に示すように、隣接するコア間に低屈折率部として空孔を設けた同種6コアC−MCFについて、次のように解析を実施した。ここで、コア11の半径をa、コア11の屈折率をn
core、クラッド12の屈折率をn
cladとする。図示例では、各コア11は、重心をファイバ中心とする正六角形の頂点上に配置されている。
【0032】
コア及びクラッドの屈折率は、波長依存性を考慮し、Sellmeierの多項式により算出した。空孔を付加する場合、空孔半径をr、空孔の屈折率を1.0とする。空孔を付加しない場合、空孔半径rを0μmとする。また、コア同士の中心間距離をΛとした。正六角形状の配置では、ファイバ中心から各コアの中心までの距離もΛである。さらに、コアのクラッドに対する比屈折率差をΔ=(n
core2−n
clad2)/(2n
core2)とする。なお、正規化周波数V値は、V=k
0a(n
core2−n
clad2)
1/2である。ここで、k
0は自由空間波数である。
【0033】
本実施例では、Λを28μm以下とした。これは、中心に低屈折率部を有しない同種6コアC−MCFである、非特許文献3(ECOC2014,PD.3.2)のコア間距離Λ=28μmと同じか、より小さい値である。各解析例に共通する6コアC−MCFのパラメータとして、a=5.55μm、Δ=0.32μm、波長λ=1550nm、クラッド直径を125μmとした。また、上述したように、6コアC−MCFにおける伝搬モードは6つであり、それぞれ1次ないし6次スーパーモード(
図2〜4では、それぞれ1st、2nd、3rd、4th、5th、6th)とよぶ。
【0034】
このファイバの1次、m次スーパーモード間のDGD、及びΔn
effをそれぞれ、DGD=τ
mth−τ
1st、Δn
eff=n
eff_mth−n
eff_1stと定義する。ここで、τ
1st及びτ
mthは、それぞれ1次及びm次モードの群遅延時間を表し、n
eff_1st及びn
eff_mthは、それぞれ1次及びm次モードの実効屈折率を表す。
【0035】
本ファイバに関して、
図1に示すように、コア間に空孔を付加することにより、コア間距離Λを小さくしても、Δn
effが低減されるため、モード間結合が強まり、DGDの低減が可能であることを示す。
【0036】
6次のスーパーモードではその対称性から、
図2(b)に示すように、空孔の有無にかかわらず、コア間で常に電界が0になる。一方、基本スーパーモードでは、コア間の電界が大きな値をもつことが
図2(a)より分かる。つまり、隣接する2つのコアに着目すると、1次スーパーモードでは偶対称、6次スーパーモードでは奇対称になっている。よって、コア間に空孔を付加することで、6次スーパーモードにはあまり影響を与えずに、1次スーパーモードのn
effを小さくすることができ、基本(1次)スーパーモードと高次(6次)スーパーモードとの間で、実効屈折率差Δn
effを低減することが可能である。
【0037】
図3に、同種6コアC−MCFの2次〜6次スーパーモードにおける、Δn
effの空孔半径依存性を示す。このとき、コア間距離Λは28.0μmである。
図3より、空孔を大きくすることにより、1次と高次(2次〜6次)スーパーモード間の各Δn
effを低減できることが分かる。
【0038】
また、
図4に、Λが20μm、24μm、又は28μmである場合における、1次スーパーモードと6次スーパーモードとの間のDGDの空孔半径依存性を示す。
図4より、空孔を大きくすることにより、DGDを低減できることが分かる。
【0039】
以上より、6コアC−MCFのコア間に空孔を付加することで、スーパーモード間の実効屈折率差Δn
effを低減し、モード間の結合を強め、モード間群遅延時間差DGDを低減できることが分かる。