特許第6236660号(P6236660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236660
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】植物の生育促進剤
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20171120BHJP
   A01C 1/00 20060101ALI20171120BHJP
   C12N 1/00 20060101ALN20171120BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
   A01G7/00 605Z
   A01C1/00 A
   !C12N1/00 P
   !C12N1/20 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-146402(P2013-146402)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2015-15933(P2015-15933A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年3月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成25年1月28日 東北大学大学院生命科学研究科及び国立大学法人東北大学の「平成24年度東北大学大学院生命科学研究科 博士・修士最終試験要旨集、M308頁」に発表 (2)平成25年2月12日 東北大学大学院生命科学研究科博士課程前期2年の課程最終試験にて口頭発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度農林水産省委託プロ「農業環境における物質循環促進のための微生物による処理技術の開発」(気候変動プロ)産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01604
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01607
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01608
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01610
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01605
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01612
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01606
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01615
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01609
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01611
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01616
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01613
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-01614
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人帯広畜産大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100141357
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 音哉
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 和之
(72)【発明者】
【氏名】池田 成志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宙之
(72)【発明者】
【氏名】田口 和憲
(72)【発明者】
【氏名】黒田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】関口 博之
(72)【発明者】
【氏名】南澤 究
(72)【発明者】
【氏名】鶴丸 博人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 萌
(72)【発明者】
【氏名】大和田 琢二
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−276579(JP,A)
【文献】 特開2011−201800(JP,A)
【文献】 特開平05−194951(JP,A)
【文献】 特開平10−218715(JP,A)
【文献】 特開平07−025717(JP,A)
【文献】 特開2005−281195(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/145074(WO,A1)
【文献】 特開平08−205673(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/090628(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/009641(WO,A1)
【文献】 特開平09−299076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01C 1/00 − 1/08
C12N 1/00
C12N 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポラロモナス属に属するHRRK103(受託番号 NITE P−01607)、バリオボラックス属に属するHRRK170(受託番号 NITE P−01608)、ノボスフィンゴビウム属に属するHRRK193(受託番号 NITE P−01610)、又はHRRK010(受託番号 NITE P−01605)、ノカルディオイデス属に属するHRRP110(受託番号 NITE P−01612)、デボシア属に属するNo.184(受託番号 NITE P−01606)、メソリゾビウム属に属するHRTP027(受託番号 NITE P−01615)又はHRRK190(受託番号 NITE P−01609)、スフィンゴモナス属に属するHRRP089(受託番号 NITE P−01611)、フィロバクテリウム属に属するHRTP192(受託番号 NITE P−01616)、バチルス属に属するHRTK156(受託番号 NITE P−01613)、リゾビウム属に属するHRRK005(受託番号 NITE P−01604)、又はストレプトマイセス属に属するHRTK192(受託番号 NITE P−01614)に属する微生物を含む、植物の生育促進剤。
【請求項2】
植物が、ヒユ科に属する、請求項1に記載の植物の生育促進剤。
【請求項3】
植物が、テンサイ及び/又はホウレンソウである、請求項2に記載の植物の生育促進剤。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の植物の生育促進剤を種子又は植物の根部と接触させることを含む、植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生育促進根圏細菌(PGPR:Plant Growth Promotion Rhizobacterium)を含む植物の生育促進剤及びそれを用いる植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
砂糖の原料作物であるテンサイは北海道内で60,000haの作付面積を有する畑輪作を維持する上で欠くことができない作物である。テンサイ栽培においては、砂糖の国内消費量低下や輸入糖との価格競争などから、生産コストの低下が強く求められている。また、2010年以降、テンサイの収量は低下し、作付面積の減少により産糖量は大きく減少しており、収量性の向上と安定化が求められている。
【0003】
北海道のテンサイ栽培では45日程度育苗した苗を圃場に移植する移植栽培が9割を占める。この移植栽培で安定多収を実現するには、早期に健苗を育苗し、圃場に移植することが重要である。
【0004】
植物の根圏または根内には多くの微生物が生息しており、その中にはPGPRと呼ばれ、植物に生育促進効果をもたらす有用細菌が存在することが知らており、トマトやトウモロコシなど、多くの作物でPGPRを利用した生育促進技術が報告されている(特許文献1〜5)。
【0005】
しかしながら、テンサイを含むヒユ科は、菌根共生をしない植物として知られている。テンサイの病原菌を抑える拮抗微生物の研究は多々あるものの、この予測を支持するように、テンサイ生育促進微生物の研究は、ほとんど報告されていない(非特許文献1〜3)。
【0006】
そこで、テンサイから生育促進効果を有するPGPRを分離し、育苗中のテンサイ等の作物の苗に接種することで健苗を育成する技術の開発が待たれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−311826号公報
【特許文献2】特開2012−135300号公報
【特許文献3】特開2002−233246号公報
【特許文献4】特開平9−299076号公報
【特許文献5】特開平10−7483号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Suslow and Schroth, 1982. Phytopathology 72:199-206.
【非特許文献2】Cakmakci et al., 1999. J. Plant Nutr. Soil Sci. 162:437-442
【非特許文献3】Shi et al., 2011. Symbiosis 54:159-166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、植物の生育促進根圏細菌を含む植物の生育促進剤及びそれを用いる植物の栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、テンサイ根圏に生育促進効果を有するPGPRが生息していると考え、テンサイ共生細菌を網羅的に分離した。分離源の部位は栄養吸収を行っている細根とした。分離源のサンプリング時期は、テンサイの生育が旺盛な時期である7月中旬とした。その結果、無接種に比べて乾物量が増加し、生育促進効果が認められた13菌株を見出し、本発明を完成させた。
【0011】
したがって、本発明は、以下のとおりである。
[1]ポラロモナス属、バリオボラックス属、ノボスフィンゴビウム属、ノカルディオイデス属、デボシア属、メソリゾビウム属、スフィンゴモナス属、フィロバクテリウム属、バチルス属、リゾビウム属又はストレプトマイセス属に属する微生物を含む、植物の生育促進剤、
[2]植物が、ヒユ科に属する、[1]に記載の植物の生育促進剤、
[3]植物が、テンサイ及び/又はホウレンソウである、[2]に記載の植物の生育促進剤、
[4]ポラロモナス属に属する微生物が、HRRK103であり、バリオボラックス属に属する微生物が、HRRK170株であり、ノボスフィンゴビウム属に属する微生物が、HRRK193株及びHRRK010株であり、ノカルディオイデス属に属する微生物が、HRRP110株であり、デボシア属に属する微生物が、No.184株であり、メソリゾビウム属に属する微生物が、HRTP027株及びHRRK190であり、スフィンゴモナス属に属する微生物が、HRRP089株であり、フィロバクテリウム属に属する微生物が、HRTP192株であり、バチルス属に属する微生物が、HRTK156株であり、リゾビウム属に属する微生物が、HRRK005株であるか又はストレプトマイセス属に属する微生物が、HRTK192株である、[1]〜[3]のいずれかに記載の植物の生育促進剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の植物の生育促進剤をテンサイ等の作物の種子または幼苗に接種することで、植物体の大きい健苗を育苗することができる。この技術により、移植後の活着や初期生育が向上し、収量性の向上と安定化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で得られた13菌株については、下記の受託番号のもと独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センターに2013年6月25日付けで寄託されている。
菌株名 種名 受託番号
HRRK103 ポラロモナス属 NITE P−01607
(Polaromonas sp.)
HRRK170 バリオボラックス属 NITE P−01608
(Variovorax sp.)
HRRK193 ノボスフィンゴビウム属 NITE P−01610
(Novosphingobium sp.)
HRRP110 ノカルディオイデス属 NITE P−01612
(Nocardioides sp.)
No.184 デボシア属 NITE P−01606
(Devosia sp.)
HRTP027 メソリゾビウム属 NITE P−01615
(Mesorhizobium sp.)
HRRP089 スフィンゴモナス属 NITE P−01611
(Sphingomonas sp.)
HRTP192 フィロバクテリウム属 NITE P−01616
(Phyllobacterium sp.)
HRTK156 バチルス属 NITE P−01613
(Bacillus sp.)
HRRK010 ノボスフィンゴビウム属 NITE P−01605
(Novosphingobium sp.)
HRRK005 リゾビウム属 NITE P−01604
(Rhizobium sp.)
HRRK190 メソリゾビウム属 NITE P−01609
(Mesorhizobium sp.)
HRTK192 ストレプトマイセス属 NITE P−01614
(Streptomyces sp.)
【0014】
本発明に用いられる上記微生物の培養は、従来公知の任意の培地を用いることができる。また、液体培地以外に寒天入りの斜面培地及び平板培地等の固体培地を用いることもできる。これらの培地を用いることによって、菌株を増殖させて、所望の菌体量を得ることができる。
【0015】
培地の炭素源としては、上記菌株が同化しうるあらゆるものを使用することができるが、グルコース、ガラクトース、ラクトース、アラビノース、マンノース、麦芽エキス澱粉加水分解物などの糖を例示することができる。
【0016】
窒素源としても同様に、ペプトン、肉エキス、酵母エキスなどの、該菌株が利用することができる各種の合成又は天然物が利用可能である。
【0017】
微生物培養の常法に従って、食塩、リン酸塩などの無機塩類、カルシウム、マグネシウム、鉄などの金属の塩類、ビタミン、アミノ酸などの微量栄養源も必要に応じて添加することができる。
【0018】
培養は、振盪培養、静置培養、通気培養などの好気的条件下で行なうことができる。培養温度は、20〜30℃、好ましくは20〜25℃、培養期間は1〜5日、好ましくは3〜4日である。
【0019】
本発明において、「植物の生育促進」とは、植物の種子の発芽を促進させることおよび/または植物の生育を促進させることをいう。また、「根部」とは、植物を栽培した場合に土壌中または水耕液中にあって水分や栄養分の吸収を行なう部分をいう。
【0020】
本発明の微生物は、微生物を植物の種子または根部に接触させるかまたはそれらの近傍に存在させることで、その種子の発芽を促進しおよび/またはその植物の生育を促進する性質を有する。
【0021】
したがって、本発明は、植物の種子または根部に接触させるかまたはそれらの近傍に存在させることで植物の発芽を促進しおよび/または植物の生育を促進する性質を有する微生物を含む植物の栽培促進剤を提供する。また、本発明は、この栽培促進剤を用いる植物の栽培促進方法を提供する。
【実施例1】
【0022】
(1)テンサイ共生細菌の分離
北海道河西郡芽室町の北海道農業研究センター内の三要素栽培試験圃場において、テンサイ品種「アマホマレ」を移植栽培した。生育が旺盛な7月中旬に、通常施肥区(以下、NPK区)、窒素無施肥区(以下、PK区)、窒素およびリン酸無施肥区(以下、K区)の3試験区から各3個体を採取し、よく洗浄した後、葉身、葉柄、根、細根の各部位に分割して使用時まで−30℃で凍結保存した。
テンサイ共生細菌の分離はPK区及びK区から採取した細根を分離源とし、分離培地には、シクロヘキシミド50ppmを添加した、R2A寒天培地(ベクトン・ディッキンソン株式会社)又はTSA寒天培地(ベクトン・ディッキンソン株式会社のTryptic soy brothに1.5%濃度で寒天を加えた培地)の2種類を用いた(以下、培養法)。細根を乳鉢で摩砕した後、1/15Mリン酸緩衝液(pH7.0)で適当な濃度に薄め、分離培地に塗布した後、24℃で1週間培養した。培養後に形成されたコロニーを網羅的に釣菌し、各々200菌株、計800菌株を分離した。分離した800菌株のうち665菌株については16S rRNA遺伝子を解析し、属名を決定した。一方、NPK区、PK区及びK区から採取した根及び細根から抽出したDNAを用いて、培養することなく直接、細菌の16S rRNA遺伝子を解析し、テンサイの根及び細根に共生している細菌叢を解析した(以下、非培養法)。
【0023】
培養法及び非培養法で得られた16S rRNA遺伝子の配列結果を基に群集構造解析を行った結果、テンサイの共生細菌相は種レベルで385個のOTU(operational taxonomic units)に分類された。異なるOTUに属する共生細菌は系統的に異なっており、植物への共生機構も異なっていると考えられる。385個のOTUについて、培養法あるいは非培養法に基づいた多様性解析において分離頻度が高く、安定して検出された菌群、過去の論文から有用効果が期待できるものとして、45個のOTUを選抜した。これらのOTUに属する菌株について、以下の方法によりテンサイ幼苗への接種試験を行い、生育促進効果を評価した。
【実施例2】
【0024】
(2)テンサイ幼苗への接種試験
試験にはテンサイ品種「リッカ」を供試した。種子は70%エタノールに1分、次に次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度1%、tween20を0.01%添加)に15分、それぞれ浸漬した後、滅菌蒸留水で5回以上濯いで表面殺菌した。表面殺菌した種子を25℃で24時間、暗所に静置して発芽させた。発芽が確認された種子3粒を滅菌した育苗培土(商品名「ポットエース」、片倉チッカリン株式会社)80mlを充填したセル(セルサイズ:41x41x43.5(H)mm、商品名「セルボックス25穴」、明和株式会社)に置床し、その上に滅菌した育苗培土20mlを覆土して播種した。1処理区の反復は12セルとした。寒天培地(R2A寒天培地又はTSA寒天培地)上で24℃・3〜4日間、暗所で静置培養した菌体を白金耳で掻き取り、滅菌蒸留水中に懸濁した。この懸濁液の600nmにおける吸光度(OD値)を計測し、OD値が0.1となるように滅菌蒸留水で希釈したものを接種源とした。接種は、播種直後に行い、1セルあたり1mlの接種源を灌注して接種した。無接種区には滅菌蒸留水を灌注接種した。播種・接種後は、明期:25℃・16時間、暗期:20℃・8時間に調節した人工気象室内で栽培し、播種1週間後に間引きを行い1株/セルとした。播種1ヵ月後、セルからテンサイを慎重に抜き取り、丁寧に水洗いして根に付着した土壌を落とした。地上部と根部に切断し、80℃で3日間乾燥させた後、個体毎の乾物重を測定した。
テンサイ幼苗への接種試験の結果、無接種区と比較して乾物重が増加し、生育促進効果が認められた菌株として13菌株を選抜した(表1)。
【実施例3】
【0025】
(3)ホウレンソウ幼苗への接種試験
テンサイへ幼苗への生育促進効果が認められた13菌株のうち10菌株について、テンサイと同じヒユ科に属するホウレンソウへの接種試験を実施した。試験にはホウレンソウ品種「おかめ(ネーキッド種子)」(タキイ種苗)を供試した。種子を18℃で72時間、暗所に静置して発芽させた。発芽が確認された種子4粒を滅菌したバーミキュライトまたは育苗培土(商品名「げんき君果菜200」、コープケミカル株式会社)50mlを充填したセル(セルサイズ:45x45x50(H)mm、商品名「プラグトレイ50穴」、ランドマーク社)に置床し、その上に滅菌した育苗培土10mlを覆土して播種した。子葉展開後、健全な苗3株となるように間引きし、1処理区の反復は12株(4セル)とした。寒天培地(R2A寒天培地又はTSA寒天培地)上で25℃・3〜4日間、暗所で静置培養した菌体を滅菌綿棒で集菌し、滅菌蒸留水中に懸濁した。この懸濁液の600nmにおける吸光度(OD値)を計測し、OD値が0.02となるように滅菌蒸留水で希釈したものを接種源とした。接種は、播種直後に行い、1セルあたり5mlの接種源を灌注して接種した。無接種区には滅菌蒸留水を灌注接種した。播種・接種後は、明期:25℃・16時間、暗期:25℃・8時間に調節した人工気象室内で栽培し、栽培期間中は水耕栽培液を全てセルに等量ずつ与え、土壌が乾燥することのないよう維持した。播種2週間後、セルからホウレンソウを慎重に抜き取り、丁寧に水洗いして根に付着した土壌を落とした。地上部と根部に切断し、個体毎の生重量を測定した。
ホウレンソウへの接種試験を実施した結果、ポラロモナス属に属するHRRK103株、バリオボラックス属に属するHRRK170株、ノカルディオイデス属に属するHRRP110株、デボシア属に属するNo.184株及びメソリゾビウム属に属するHRTP027株は顕著な生育促進効果を示し、ホウレンソウへの適用の可能性が明らかとなった(表2)。
【0026】
【表1】

【表2】
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の植物の生育促進剤をテンサイ等の作物の種子または幼苗に接種することで、植物体の大きい健苗を育苗することができる。