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特許6236664画像補正装置及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236664
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】画像補正装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20171120BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20171120BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20171120BHJP
   G06T 7/557 20170101ALI20171120BHJP
【FI】
   H04N5/232 290
   H04N5/225 410
   G06T3/00 750
   G06T7/557
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-254310(P2014-254310)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-116120(P2016-116120A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2016年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 広太
(72)【発明者】
【氏名】藤井 憲作
(72)【発明者】
【氏名】小島 明
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊彰
(72)【発明者】
【氏名】高橋 桂太
【審査官】 吉川 康男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−119395(JP,A)
【文献】 特開2011−259168(JP,A)
【文献】 特開2012−216992(JP,A)
【文献】 特開2015−211372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
H04N 5/225
G06T 3/00
G06T 7/557
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の地点から撮影された、メインレンズが結像した被写体の光学像を複数のマイクロレンズを用いて撮像した複数のマイクロレンズ画像を含み構成されるライトフィールド画像を取得する画像取得部と、
取得された前記ライトフィールド画像から複数のエピポーラ画像を生成するエピポーラ画像生成部と、
複数のライトフィールド画像のうちいずれか一つのライトフィールド画像を基準画像とし、前記基準画像のエピポーラ画像と他のライトフィールド画像のエピポーラ画像とに基づいて、前記基準画像のエピポーラ画像に対する前記他のライトフィールド画像のエピポーラ画像の位置ずれを補正する画像補正部と、
を備える画像補正装置。
【請求項2】
前記エピポーラ画像生成部は、前記ライトフィールド画像において同じ列又は同じ行のマイクロレンズ画像それぞれにおける同一列の画素列又は同一行の画素行を取得し、取得した画素列又は画素行を取得元のマイクロレンズ画像の並び順に配置することでエピポーラ画像を生成する、請求項1に記載の画像補正装置。
【請求項3】
前記画像補正部は、前記基準画像と重複する領域を有するライトフィールド画像のエピポーラ画像と前記基準画像のエピポーラ画像との間のずれ量を算出し、前記ずれ量に基づいて前記基準画像と重複する領域を有するライトフィールド画像のエピポーラ画像の座標変換を行うことで前記基準画像のエピポーラ画像に対する前記他のライトフィールド画像のエピポーラ画像の位置ずれを補正する、請求項1又は2に記載の画像補正装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の画像補正装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像補正装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被写体からカメラレンズに侵入する全ての光線の向きと光量とを取得する技術が知られており、被写体を異なる視点から撮影した複数の画像の集合をライトフィールド画像という。ライトフィールド画像を得ることができるライトフィールドカメラは、被写体からカメラのレンズに侵入する全ての光線の向きと光量とを取得するために、メインレンズと、被写体との間に配置された光学要素のアレイとを有している。このアレイ内で、各光学要素は、アレイ内の他の光学要素と異なる角度からの光を受光し、異なるビューを主レンズに向ける。光検出器アレイは、アレイ内の各光学要素からの異なるビューを受像することができる。
【0003】
上述のような構成を有するライトフィールドカメラによって、ライトフィールド画像を利用できるようになったが、レンズやアレイなどのサイズの制約により、ライトフィールド画像の解像度が限定されたものとなっている。そこで、非特許文献1に記載された技術では、MAP型超解像技術を用いて複数の低解像度のライトフィールド画像から高解像度のライトフィールド画像を生成する試みが行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】蚊野、「MAP型超解像処理における復元誤差を考慮したライトフィールドカメラ画像の高画素化」、「画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2012)」、2012年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載されたMAP型超解像度処理で一般的に用いられる勾配法では、複数の低解像度のライトフィールド画像の位置合わせが難しいという問題があった。
上記事情に鑑み、本発明は、複数の地点から撮影されたライトフィールド画像を同じ座標系で利用するための位置ずれを補正するための画像取得技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、複数の地点から撮影された、メインレンズが結像した被写体の光学像を複数のマイクロレンズを用いて撮像した複数のマイクロレンズ画像を含み構成されるライトフィールド画像を取得する画像取得部と、取得された前記ライトフィールド画像から複数のエピポーラ画像を生成するエピポーラ画像生成部と、複数のライトフィールド画像のうちいずれか一つのライトフィールド画像を基準画像とし、前記基準画像のエピポーラ画像と他のライトフィールド画像のエピポーラ画像とに基づいて、前記基準画像のエピポーラ画像に対する前記他のライトフィールド画像のエピポーラ画像の位置ずれを補正する画像補正部と、を備える画像補正装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上記の画像補正装置であって、前記エピポーラ画像生成部は、前記ライトフィールド画像において同じ列又は同じ行のマイクロレンズ画像それぞれにおける同一列の画素列又は同一行の画素行を取得し、取得した画素列又は画素行を取得元のマイクロレンズ画像の並び順に配置することでエピポーラ画像を生成する。
【0008】
本発明の一態様は、上記の画像補正装置であって、前記画像補正部は、前記基準画像と重複する領域を有するライトフィールド画像のエピポーラ画像と前記基準画像のエピポーラ画像との間のずれ量を算出し、前記ずれ量に基づいて前記基準画像と重複する領域を有するライトフィールド画像のエピポーラ画像の座標変換を行うことで前記基準画像のエピポーラ画像に対する前記他のライトフィールド画像のエピポーラ画像の位置ずれを補正する。
【0009】
本発明の一態様は、上記の画像補正装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、複数の地点から撮影されたライトフィールド画像を同じ座標系で利用するための位置ずれを補正するための画像取得技術を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態における画像補正装置1の構成を示すブロック図である。
図2】画像取得部11が取得するライトフィールド画像を模式的に説明する図である。
図3】エピポーラ画像生成部12がエピポーラ画像を生成する処理を示すフローチャートである。
図4】画像補正部13が行う補正処理を示すフローチャートである。
図5】エピポーラ画像生成部12が行う処理の一例を示す図である。
図6】エピポーラ画像生成部12によって生成されるエピポーラ画像の一例を表す図である。
図7】画像補正部13が行う処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態における画像補正装置1の構成を示すブロック図である。
画像補正装置1は、基準となるライトフィールド画像(以下、「基準画像」という。)のエピポーラ画像(EPI:Epipolar Plane Image)と、基準画像と重複領域を有するライトフィールド画像(以下、「比較対象画像」という。)のエピポーラ画像との位置ずれを補正する。エピポーラ画像は、エピポーラ平面画像ともいわれる。図1に示すように、画像補正装置1は、画像取得部11、エピポーラ画像生成部12及び画像補正部13を備えている。
【0013】
画像取得部11は、異なる地点から撮影された、メインレンズが結像した被写体の光学像を複数のマイクロレンズを用いて撮像した複数のマイクロレンズ画像を含み構成されるライトフィールド画像を複数取得する。画像取得部11が取得する複数のライトフィールド画像は、ライトフィールドカメラを移動させながら撮影を行うことにより得られたライトフィールド画像である。すなわち、複数の地点から被写体をライトフィールドカメラで撮影することにより得られた複数のライトフィールド画像であって重複領域を有する複数のライトフィールド画像を画像取得部11は取得する。画像取得部11が取得する各ライトフィールド画像は、複数のマイクロレンズを介して撮影された小画像(以下、「マイクロレンズ画像」という。)が複数並ぶことで構成されている画像である。
【0014】
図2は、画像取得部11が取得するライトフィールド画像を模式的に説明する図である。
図2に示すような異なる撮影地点から撮影することにより得られたライトフィールド画像を画像取得部11は取得する。このとき、各ライトフィールド画像は、少なくとも隣接する撮影地点間のライトフィールド画像においては、ライトフィールド画像上の被写体において重複する領域を有している。図2に示す例では、撮影地点0の位置において撮影することにより得られたライトフィールド画像と、撮影地点mの位置において撮影することにより得られたライトフィールド画像とに重複領域が存在する場合を示している。
【0015】
図2における(x,u)はメインレンズ外側の光線を表す。図2において光線(x,u)は、メインレンズとマイクロレンズアレイとの間の距離をBとしてメインレンズの焦点距離Fを用いたレンズ公式(1/A+1/B=1/F)を満たす距離Aだけメインレンズから離れた位置として定義されている。また、図2における(x’,u’)は撮影地点0でのマイクロレンズアレイ上で定義される光線を表し、(x’,u’)は撮影地点mでのマイクロレンズアレイ上で定義される光線を表す。ここで、xは光線の通過する位置を表し、uは光線の方向を表す。
【0016】
エピポーラ画像生成部12は、画像取得部11が取得したライトフィールド画像ごとにエピポーラ画像を生成する。
図3は、エピポーラ画像生成部12がエピポーラ画像を生成する処理を示すフローチャートである。
エピポーラ画像生成部12は、処理を開始すると、画像取得部11が取得した複数のライトフィールド画像のうち未処理のライトフィールド画像を一つ選択する(ステップS121)。
【0017】
エピポーラ画像生成部12は、選択したライトフィールド画像を構成し行列状に並べられているマイクロレンズ画像から、未処理の行に並べられているマイクロレンズ画像を抽出する(ステップS122)。なお、ライトフィールド画像から未処理の行に含まれるマイクロレンズ画像を抽出する順序は、任意の順序でよく、例えば画像の上から順に、画像の下から順に、又はランダムな順で抽出してもよい。
【0018】
エピポーラ画像生成部12は、抽出した行に含まれるマイクロレンズ画像それぞれから、マイクロレンズ画像における同一行の画素(以下、「画素行」という。)を行単位で抽出する(ステップS123)。すなわち、ステップS123において抽出される画素は、処理対象としているライトフィールド画像における同一行の画素になっている。
【0019】
エピポーラ画像生成部12は、ステップS123において抽出した各マイクロレンズ画像における一行の画素を、時計回りに90度又は反時計回りに90度回転させた一列の画素として扱う。エピポーラ画像生成部12は、各マイクロレンズ画像に対応する一列の画素をマイクロレンズ画像の並び順に配置してエピポーラ画像を生成する(ステップS124)。例えば、エピポーラ画像生成部12は、ライトフィールド画像における同一行のn個のマイクロレンズ画像それぞれからm個の画素を行単位で抽出した場合、m行n列に配置された画素からなるエピポーラ画像を生成することになる。
【0020】
エピポーラ画像生成部12は、選択したライトフィールド画像における全ての行に対してステップS122からステップS124までの処理を施したか否かを判定する(ステップS125)。未処理の行がある場合(ステップS125:NO)、エピポーラ画像生成部12は処理をステップS122に戻して、選択したライトフィールド画像の全ての行に対して処理が行われるまで、ステップS122からステップS124までの処理を繰り返す。一方、全ての行に対して処理を終えた場合(ステップS125:YES)、エピポーラ画像生成部12は処理をステップS126に進める。
【0021】
エピポーラ画像生成部12は、画像取得部11が取得した全てのライトフィールド画像に対してステップS121からステップS125までの処理を施したか否かを判定する(ステップS126)。未処理のライトフィールド画像がある場合(ステップS126:NO)、エピポーラ画像生成部12は処理をステップS121に戻して、取得した全てのライトフィールド画像に対して処理が行われるまで、ステップS121からステップS125までの処理を繰り返す。一方、全てのライトフィールド画像に対して処理を終えた場合(ステップS126:YES)、エピポーラ画像生成部12はエピポーラ画像を生成する処理を終了する。
【0022】
エピポーラ画像生成部12は、上述の処理を行うことにより、複数のライトフィールド画像それぞれに対して、複数のエピポーラ画像を生成する。エピポーラ画像生成部12は、生成した複数のエピポーラ画像と当該エピポーラ画像の元になったライトフィールド画像とを対応付けて画像補正部13に出力する。
【0023】
画像補正部13は、エピポーラ画像生成部12が出力する複数のライトフィールド画像のうちいずれか一つのライトフィールド画像を基準画像とし、基準画像のエピポーラ画像と比較対象画像のエピポーラ画像とに基づいて、基準画像のエピポーラ画像に対する比較対象画像のエピポーラ画像の位置ずれを補正する。例えば、画像補正部13は、比較対象画像のエピポーラ画像に対して座標変換を行うことによって比較対象画像のエピポーラ画像を基準画像のエピポーラ画像と同一座標のエピポーラ画像に変換する。
【0024】
図4は、画像補正部13が行う補正処理を示すフローチャートである。
画像補正部13は、エピポーラ画像生成部12が複数のエピポーラ画像を生成した後にそれらのエピポーラ画像を取得すると、画像取得部11が取得した全てのライトフィールド画像からいずれか一つのライトフィールド画像を選択する。画像補正部13は、選択した一つのライトフィールド画像を基準画像に設定する(ステップS201)。なお、基準画像に設定するライトフィールド画像の選択は、画像補正装置1を操作するユーザの指示に従って選択してもよいし、他のライトフィールド画像との重複領域が最も多いライトフィールド画像を選択してもよいし、ランダムに選択してもよい。
【0025】
画像補正部13は、基準画像及び比較対象画像それぞれから生成された複数のエピポーラ画像のうち、未処理のエピポーラ画像をそれぞれ一つ選択する(ステップS202)。画像補正部13は、比較対象画像から生成されたエピポーラ画像と、基準画像から生成されたエピポーラ画像との間の座標位置におけるずれ量を算出する(ステップS203)。画像補正部13が算出するずれ量には、例えば二つのエピポーラ画像において類似する領域を重ね合わせた際のエピポーラ画像間のずれを示す値が用いられる。
【0026】
画像補正部13は、比較対象画像のエピポーラ画像に対して、算出したずれ量に基づく座標変換を行うことによって比較対象画像のエピポーラ画像の位置ずれを補正する(ステップS204)。この処理により、画像補正部13は、比較対象画像のエピポーラ画像を基準画像のエピポーラ画像と同一座標系のエピポーラ画像に変換する。画像補正部13は、比較対象画像の全てのエピポーラ画像に対してステップS202からステップS204までの処理を施したか否かを判定する(ステップS205)。
【0027】
未処理のエピポーラ画像がある場合(ステップS205:NO)、画像補正部13は処理をステップS202に戻して、比較対象画像の全てのエピポーラ画像に対して処理が行なわれるまで、ステップS202からステップS204までの処理を繰り返す。
一方、全てのエピポーラ画像に対して処理を終えた場合(ステップS205:YES)、画像補正部13は補正処理を終了する。
【0028】
画像補正装置1は、上述の処理を行なう各機能部を有することによって、複数の地点から撮影された複数のライトフィールド画像の位置ずれを補正することができる。
以下では、図を参照して、上述した画像補正装置1がエピポーラ画像間の位置ずれを補正するときの具体的な手順について詳細に説明する。
【0029】
(画像取得部11の動作)
メインレンズと撮像素子との間にマイクロレンズアレイが設けられたプレノプティックカメラをライトフィールドカメラとして用いて撮影を行い、複数のライトフィールド画像を取得する。プレノプティックカメラの内部においては、マイクロレンズアレイ及び撮像素子を微小なピンホールカメラアレイと見なすことができるため、メインレンズによって結像されたシーンの光学像を、これらの微小なピンホールカメラアレイを用いて撮影したことになる。例えば、ライトフィールドカメラとしてのプレノプティックカメラを水平なレールに乗せて等間隔に動かしながら撮影することにより得られた、画像間に重複領域を有する複数のライトフィールド画像を画像取得部11が取得する。
【0030】
(エピポーラ画像生成部12の動作)
図5は、エピポーラ画像生成部12が行う処理の一例を示す図である。
[ステップS122]
プレノプティックカメラで撮影したライトフィールド画像は、図5に示すように、マイクロレンズで撮影された小画像(マイクロレンズ画像601)で構成される。また、図5の下図に示されるグリッド線は、ライトフィールド画像の画素を示す。エピポーラ画像生成部12は、公知の円検出方法などを用いて、マイクロレンズ画像601を検出する。エピポーラ画像生成部12は、検出したマイクロレンズ画像601の輪郭に沿って、処理対象となっている行に並べられているマイクロレンズ画像601を抽出する。例えば、エピポーラ画像生成部12が、図5の下図に示される複数のマイクロレンズ画像のうち、1行目に並べられている複数のマイクロレンズ画像を抽出したとする。
【0031】
[ステップS123]
エピポーラ画像生成部12は、抽出した行におけるマイクロレンズ画像のうち、着目しているマイクロレンズ画像603から同一行の画素(画素行)604を行単位で抽出する。
[ステップS124]
全てのマイクロレンズ又はマイクロレンズ画像の番号を2次元のパラメータ(x,y)で定義することができる。ここでは、ライトフィールド画像の原点を画像の左上の画素としたときに、最も左上に位置するマイクロレンズ画像の番号を(x,y)=(0,0)とする。右側に隣接するマイクロレンズ画像に進むごとにxの値は、1ずつインクリメントされ、下側に隣接するマイクロレンズ画像に進むごとにyの値は1ずつインクリメントされる。エピポーラ画像生成部12は、このマイクロレンズ画像の番号に基づいて、ステップS123において抽出した行単位の画素をエピポーラ画像の空間(エピポーラ画像空間)に配置してエピポーラ画像を生成する。
【0032】
なお、エピポーラ画像空間は、n−i空間で定義される空間である。n軸の値は、マイクロレンズ画像の番号(x,y)のうちx又はyのいずれかの値に対応する。i軸の値は、マイクロレンズ画像における水平方向又は垂直方向の画素座標に対応する。なお、マイクロレンズ画像における画素座標は、マイクロレンズ画像の中心を原点とする座標系における座標である。
【0033】
例えば、ライトフィールド画像において行ごとにマイクロレンズ画像を選択し、選択したマイクロレンズ画像から同一行の画素を行単位で抽出する場合には、n軸の値はマイクロレンズ画像の番号(x,y)のxの値に対応し、i軸の値はマイクロレンズ画像における各画素の水平方向の画素座標に対応する。また、ライトフィールド画像において列ごとにマイクロレンズ画像を選択し、選択したマイクロレンズ画像から同一列の画素を列単位で抽出する場合には、n軸の値はマイクロレンズ画像の番号(x,y)のyの値に対応し、i軸の値はマイクロレンズ画像における各画素の垂直方向の画素座標に対応する。
【0034】
図5に示す例において、エピポーラ画像生成部12は、着目しているマイクロレンズ画像603における中央の一行における画素604を行単位で抽出し、抽出した画素604をエピポーラ画像空間における画素列605に配置する。マイクロレンズ画像603の番号は(1,4)であり、マイクロレンズ画像603から抽出された画素604は、エピポーラ画像空間におけるn=4の位置に配置される。
【0035】
[ステップS125]
エピポーラ画像生成部12は、ステップS122からステップS124までの処理を繰り返すことにより、ライトフィールド画像における各行のマイクロレンズ画像それぞれに対して複数のエピポーラ画像を生成する。
[ステップS126]
エピポーラ画像生成部12は、ステップS121からステップS125までの処理を繰り返すことにより、ライトフィールド画像ごとに複数のエピポーラ画像を生成する。すなわち、ライトフィールド画像における画素の行数分のエピポーラ画像が、ライトフィールド画像ごとに生成されることになる。エピポーラ画像生成部12によって生成されるエピポーラ画像の一例を図6に示す。
【0036】
図6は、エピポーラ画像生成部12によって生成されるエピポーラ画像の一例を表す図である。
図6に示されるエピポーラ画像は、エピポーラ画像生成部12がステップS122の処理で抽出した行に含まれるマイクロレンズ画像それぞれから、各マイクロレンズ画像における同一行の画素を行単位で抽出し、抽出した各マイクロレンズ画像における行単位の画素をそれぞれエピポーラ画像空間における対応する画素列に配置することによって生成される。図6に示すエピポーラ画像には、2つの直線が示されている。これら2つの直線はそれぞれ被写体を表す。すなわち、図6に示すエピポーラ画像の元になったライトフィールド画像には2つの被写体が撮像されていたことが表されている。
【0037】
(画像補正部13の動作)
図7は、画像補正部13が行う処理の一例を示す図である。
[ステップS201]
画像補正部13は、複数のライトフィールド画像のうち、上述したいずれかの方法に従って選択した一つのライトフィールド画像を基準画像に設定する。
【0038】
[ステップS202、S203]
画像補正部13は、基準画像から生成される複数のエピポーラ画像のうち一つのエピポーラ画像を選択する。選択されたエピポーラ画像に対応するn−iがなすエピポーラ画像空間を基準画像のエピポーラ画像のエピポーラ画像空間とする。また、画像補正部13は、比較対象画像から生成される複数のエピポーラ画像のうち一つのエピポーラ画像を選択する。画像補正部13は、選択したエピポーラ画像を基準画像のエピポーラ画像からあるずれ量Δnm、Δimだけ離れた位置に配置する。
【0039】
図7に示される例では、基準画像のエピポーラ画像がエピポーラ画像701に相当し、比較対象画像のエピポーラ画像がエピポーラ画像702に相当する。なお、比較対象画像のエピポーラ画像は、ステップS202の処理で選択された基準画像のエピポーラ画像の生成の際に使用されたマイクロレンズ画像の行及び画素行と同じマイクロレンズ画像の行及び画素行で生成された比較対象画像のエピポーラ画像である。
【0040】
画像補正部13は、基準画像のエピポーラ画像701と、比較対象画像のエピポーラ画像702とのずれ量(Δnm,Δim)を算出する。このとき、(Δnm,Δim)が取り得る値の範囲は予め定められている。画像補正部13は、ずれ量(Δnm,Δim)の取り得る値ごとに、エピポーラ画像701とエピポーラ画像702との重複領域703における相関値を算出する。相関値には、例えば重複領域703におけるSSD(Sum of Squared Difference)などの公知の相関指標が用いられる。
【0041】
画像補正部13は、算出した相関値のうち、最も相関が高いことを示す相関値に対応する(Δnm,Δim)をずれ量として選択する。なお、ずれ量は画素列又は画素行において同じ値をとるものであるため、各行又は各列におけるエピポーラ画像において算出したずれ量の平均値や中間値、最頻値を算出してずれ量として選択してもよい。
【0042】
[ステップS204]
比較対象画像のエピポーラ画像のエピポーラ画像空間をn−iとすると、画像補正部13は、比較対象画像のエピポーラ画像に対して、算出したずれ量(Δnm,Δim)に基づく座標変換を行うことによって比較対象画像のエピポーラ画像の位置ずれを補正する。座標変換には、以下の式1が用いられる。
【0043】
【数1】
【0044】
[ステップS205]
画像補正部13は、ステップS202からステップS204までの処理を繰り返すことによって、比較対象画像全てのエピポーラ画像の位置ずれを補正する。
【0045】
以上のように構成された画像補正装置1によれば、基準画像及び比較対象画像それぞれから生成されるエピポーラ画像を用いて、エピポーラ画像間のずれ量が算出される。そして、算出されたずれ量に基づいて画像補正装置1が比較対象画像のエピポーラ画像に対して座標変換を行う。この処理によって、エピポーラ画像間の位置ずれが補正される。これにより、複数の地点から撮影された複数のライトフィールド画像を同じ座標系で利用することができる。そのため、超解像処理、ケラレ補正及びパノラマ画像の合成が可能になる。
【0046】
<変形例>
エピポーラ画像生成部12は、各ライトフィール画像において行ごとにマイクロレンズ画像を選択することに代えて、各ライトフィールド画像において列ごとにマイクロレンズ画像を選択してもよい。この場合、エピポーラ画像生成部12は、選択した列のマイクロレンズ画像それぞれから列単位で画素を選択し、選択した一列の画素をマイクロレンズ画像の並び順で行方向に並べることによりエピポーラ画像を生成する。
重複領域を有するライトフィールド画像(比較対象画像)は、異なる位置におけるライトフィールドカメラの撮像素子(例えばCCD(Charge Coupled Devices)やCMOSイメージセンサ(CMOS image sensor))の物理的な位置が重複するようにライトフィールドカメラを移動させて取得したライトフィールド画像であってもよい。
本実施形態において、画像補正装置1は一つの装置として構成される場合について説明した。しかし、本実施形態における構成に限ることなく、画像取得部11、エピポーラ画像生成部12及び画像補正部それぞれが独立した装置で構成され、各装置が相互に通信可能に接続された画像生成システムとして構成してもよい。
【0047】
なお、本発明の画像補正装置1の各処理を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、画像補正装置1の各処理に係る上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0048】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0049】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…画像補正装置, 11…画像取得部, 12…エピポーラ画像生成部, 13…画像補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7