(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236733
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】伝動機構、駆動機構及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
F16H 55/14 20060101AFI20171120BHJP
F16H 55/17 20060101ALI20171120BHJP
F16H 55/12 20060101ALI20171120BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20171120BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
F16H55/14
F16H55/17 A
F16H55/12 Z
F16H1/06
G03G21/16
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-122727(P2013-122727)
(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公開番号】特開2014-240677(P2014-240677A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】高木 広彰
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−181023(JP,U)
【文献】
実開平5−56397(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/06
F16H 55/12
F16H 55/14
F16H 55/17
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な軸に対してトルク伝達可能に取り付けられた第1伝動部材と、駆動手段により回転駆動されると共に前記第1伝動部材に対して連結されかつ前記第1伝動部材に軸方向に重なった第2伝動部材とを少なくとも有し、前記第2伝動部材に形成された凹部に前記第1伝動部材が嵌合され、前記第1伝動部材と前記第2伝動部材は、前記軸の外径と略同じ内径を有する第1貫通穴と第2貫通穴とを具備しており、前記軸は、前記第1貫通穴と前記第2貫通穴を軸方向に移動可能に挿通されることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
前記凹部の軸方向深さが前記第1伝動部材の軸方向の厚みと略等しくされていることを特徴とする請求項1の駆動伝達装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記第2貫通穴と同心の円形形状であることを特徴とする請求項1又は2の駆動伝達装置。
【請求項4】
前記第1伝動部材が前記第1貫通穴と同心の円形形状であって、前記第1伝動部材の外径と前記凹部の内径が略等しいことを特徴とする請求項3の駆動伝達装置。
【請求項5】
前記軸は、少なくとも前記第2伝動部材の前記第2貫通穴の内周面と対向する位置に第1平面部が形成され、前記第2伝動部材の前記第2貫通穴の内周面に、前記第1平面部と対向する第2平面部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項の駆動伝達装置。
【請求項6】
前記第2貫通穴の軸方向から見て、前記第1平面部を含む前記軸の外周と、前記第2平面部を含む前記第2貫通穴の形状が相似形の小判形状であることを特徴とする請求項5の駆動伝達装置。
【請求項7】
前記第2貫通穴の軸方向から見て、前記第1平面部を含む前記軸の外周と、前記第2平面部を含む前記第2貫通穴の形状が相似形のDカット形状であることを特徴とする請求項5の駆動伝達装置。
【請求項8】
前記第1伝動部材の外周面の一部に、前記第2伝動部材の前記凹部の内周面と対向した第3平面部が形成され、前記凹部の内周面の一部に、前記第3平面部と対向する第4平面部が形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項の駆動伝達装置。
【請求項9】
前記第1伝動部材の軸方向から見て、前記第3平面部を含む前記第1伝動部材の外周面と、前記第4平面部を含む前記凹部の内周面が相似形の小判形状であることを特徴とする請求項8の駆動伝達装置。
【請求項10】
前記第1伝動部材の軸方向から見て、前記第3平面部を含む前記第1伝動部材の外周と、前記第4平面部を含む前記凹部の内周面が相似形のDカット形状であることを特徴とする請求項8の駆動伝達装置。
【請求項11】
前記第1伝動部材は前記第2伝動部材よりも機械的強度が高い材料で構成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項の駆動伝達装置。
【請求項12】
前記第1伝動部材が金属で構成され、前記第2伝動部材が樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項の駆動伝達装置。
【請求項13】
駆動手段の駆動力を請求項1から12のいずれか1項の駆動伝達装置の軸を介して被駆動体に伝達するようにした駆動装置において、前記軸又は前記被駆動体の回転速度を検出する検出手段と、当該検出手段の検出結果に基づいて前記駆動手段の駆動速度を制御する制御手段とを有することを特徴とする駆動装置。
【請求項14】
請求項13の駆動装置によって駆動部分が構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項13の駆動装置によって像担持体が駆動されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか1項の駆動伝達装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動機構と、当該伝動機構を使用した駆動機構、当該駆動機構を使用した複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれらの複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では、現像ローラや感光体ドラム等の被駆動回転体を、ギヤやタイミングプーリを使用した伝動機構で駆動するようにしている。
図10はギヤを使用した当該伝動機構の一例を概念的に示したものである。この伝動機構では、モータ60の回転を減速機70の駆動ギヤ90と従動ギヤ100で減速し、従動ギヤ100と同軸のシャフト80が回転駆動されて図示しない現像ローラや感光体ドラム等が駆動される。減速機70のケース71の両側には軸受72が左右一対で同軸状に配設され、この軸受72にシャフト80が回転自在に支持されている。
【0003】
従動ギヤ100からシャフト80へのトルク伝達は、平行ピンやスプリングピンによる係合ピン81で行われる(例えば特許文献1:特開2002−266952号公報参照)。この係合ピン81は、
図11(a)(b)に示すように、従動ギヤ100に形成された直径方向の溝部112に嵌合してトルク伝達する。当該トルク伝達は、係合ピン81によるもののほか、従動ギヤ100とシャフト80の嵌合形状を小判形もしくはDカット形にした構造や、キーとキー溝等の構造も広く使用されている。
【0004】
画像形成装置では、モータ60の振動成分やギヤ90、100の噛み合い部で発生した噛み合い振動や速度変動成分がシャフト80を通じて従動側に伝達すると、トナー像に横筋が入ったむら画像(異常画像)が発生することが知られている。特にギヤやタイミングプーリの噛み合い部で発生する噛み合い振動はこのような異常画像を発生させやすい。このため、ギヤやタイミングプーリは振動を発生しにくい構成にするとともに、発生した振動が従動側に伝達しにくい構成にすることが必要である。
【0005】
また、タンデム式画像形成装置のように複数色を順次重ね合わせて中間転写ベルト上にトナー像を形成する場合、中間転写ベルトが二次転写部で断続的に用紙と接触することで負荷変動が発生する。この負荷変動によっても横筋異常画像等が発生する。当該負荷変動を抑制するためには、伝動機構の回転方向の剛性を高める必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の画像形成装置では、シャフト又はギヤに弾性部材を配設することで従動側に振動や速度変動が伝達しにくい構造にしたものがある(例えば特許文献2:特開平9−114160号公報参照)。しかし、当該弾性部材で振動や速度変動がシャフトに伝達するのを抑制することができても、回転方向の剛性が弱まる場合がある。このため、当該弾性部材を設けることでシャフトの従動側で負荷変動があると却って回転速度が大きく変動してしまう可能性もある。つまり、駆動側の振動と速度変動に起因する回転速度の変動の防止と、従動側の負荷変動に起因する回転速度の変動の防止は、両立させるのが難しい。
【0007】
また、樹脂製のギヤやタイミングプーリは、ギヤ噛み合い部の振動を抑制する作用があって形状自由度(賦形性)の面でも優れるが、金属製のものに比べて強度、剛性、精度が劣る。この反対に金属製のギヤやタイミングプーリは、強度、剛性、精度を高くすることはできるが、ギヤ噛み合い部で発生する振動が樹脂製のものより大きくなる。従って、樹脂製の一体形ギヤやプーリ、或いは金属製の一体形ギヤやプーリでは、いずれも画像形成部の速度変動や振動などでむら画像の原因となる可能性がある。
【0008】
そこで、例えば特許文献3(特許第4435093号公報)のように、ギヤを2以上の異なる材質で構成することが考えられる。当該特許文献のギヤは、金属歯車の表面に樹脂をコーティングしたものである。これにより、高強度、高剛性、耐衝撃性、耐疲労性、耐摩耗性、耐久性、騒音低減性が得られる。
【0009】
図10の動力伝達装置を特許文献3(特許第4435093号公報)のように2部材で構成すると、例えば
図12のように、金属製のコア部
101と樹脂製のギヤ部
102による複合ギヤとすることが考えられる。しかしながら、このような複合ギヤにすると、金属と樹脂の嵌合部分の変形、金属と樹脂の線膨張係数の違いによる圧入部の耐トルク力低減のおそれがある。
【0010】
また、樹脂製ギヤ部
102とシャフト80間の同軸性に関して、中間に金属コア部
101が入ることで同軸性が低下するおそれがある。従って、
図12の複合ギヤでは
図10よりもギヤの回転ムラが悪化することが考えられる。
【0011】
そこで、本発明は、従動ギヤなどの伝動部材を少なくとも2部材で回転剛性を高めた構成とすることにより、従動側の負荷変動に起因する回転速度の変動の防止を図ると共に、シャフトに対する当該2部材の同軸性を容易に確保可能な構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため本発明は、回転可能なシャフトに対してトルク伝達可能に取り付けられた第1伝動部材と、駆動手段により回転駆動されると共に前記第1伝動部材に対して同軸に連結された第2伝動部材とを少なくとも有し、前記第1伝動部材と前記第2伝動部材は前記シャフトの外周面に嵌合して前記シャフトとの同軸性を担保する嵌合部を具備し、前記第1伝動部材と前記第2伝動部材が前記嵌合部により前記シャフトとの同軸性を保った状態で前記第2伝動部材が前記第1伝動部材に連結されていることを特徴とする伝動機構である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1伝動部材と第2伝動部材がそれぞれの嵌合部でシャフトに対して同軸性を保ち、この状態で第2伝動部材が第1伝動部材に連結される。従って、伝動機構を第1伝動部材と第2伝動部材の2部材で構成してもシャフトに対する同軸性を容易に確保することができ、回転むらの発生を抑制することができる。また、第1伝動部材と第2伝達部材を互いに連結しているので回転剛性を高めることができ、従動側の負荷変動に起因する回転速度の変動の防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る伝動機構を使用した動力伝達装置の概略図である。
【
図2】伝動部材の第1伝動部材と第2伝動部材を分離した状態で示す図である。
【
図4】(a)と(b)は第2伝動部材の変形例を示す正面図と断面図である。
【
図5】第1伝動部材と第2伝動部材を回転方向に整合させる方法を示す
図2と同様の図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る伝動機構を使用した画像形成装置の概略図である。
【
図8】中間転写ベルトの負荷変動による速度変動を示す図である。
【
図11】(a)と(b)は、従来の動力伝達装置に使用する伝動部材の正面図と断面図である。
【
図12】金属・樹脂複合ギヤを使用した従来の動力伝達装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面に基づいて本発明の伝動機構と、当該伝動機構を使用した駆動機構及び画像形成装置の実施形態について説明する。
(伝動機構および駆動機構)
図1は、本発明の実施形態に係る従動ギヤ100を有する伝動機構と、この伝動機構を使用した駆動機構を示している。駆動機構は、モータ60の回転数を歯車式の減速機70で減速してシャフト80に伝達する。モータ60は直流モータやパルスモータを使用することができる。
【0016】
減速機70のケース71内には駆動ギヤ90と従動ギヤ100が収納されている。ケース71の片側に固定されたモータ60の回転軸61に、ケース71内の駆動ギヤ90が直接取り付けられている。駆動ギヤ90のギヤ部91は後述の従動ギヤ100のギヤ部127に噛み合わされている。
【0017】
ケース71の両側には軸受72が左右一対で同軸状に配設されている。この軸受72にシャフト80が回転自在に支持されている。そして左右の軸受72の間のシャフト80に、従動ギヤ100が固定されている。
【0018】
従動ギヤ100は、
図2に示すように、従動ギヤ100の中心部分に配設された金属製の第1伝動部材110と、当該第1伝動部材110の外側に嵌合され、外周にギヤ部127を有する樹脂製の第2伝動部材120を有する。ここで「金属製」と「樹脂製」は、機械的強度が大小異なる材料の典型的な組み合わせとして例示している。従って、第1伝動部材110と第2伝動部材120は、機械的強度が大小異なる材料であれば、必ずしも金属製、樹脂製である必要はない。
【0019】
機械的強度は、例えば縦弾性係数や横断性係数で表される。このように、機械的強度が大小異なる異種材料で従動ギヤ100の第1伝動部材110と第2伝動部材120を構成することで、第1伝動部材110についてはシャフト80との間の剛性を向上させることができる。また第2伝動部材120については機械的振動の減衰性能を向上させることができる。
【0020】
特に第2伝動部材120を樹脂で成形することで、複雑形状のギヤやプーリでも容易かつ低コストに成形することができ、かつ、その噛み合い部からの噛み合い振動の発生を有効に抑制することができる。
【0021】
金属製の第1伝動部材110に、シャフト80が挿通される軸穴(嵌合部)111と、この軸穴111に連通して直径方向に延びた溝部112が形成されている。そして当該溝部112に、後述するシャフト80の係合ピン81が係合するようになっている。第1伝動部材110にはまた、軸穴111と平行な方向に、第2伝動部材120と連結するためのネジ穴113が形成されている。ネジ穴113は、前記溝部112と90度の間隔で直径方向2箇所に形成されている。
【0022】
樹脂製の第2伝動部材120は、第1伝動部材110を収容する円形の凹部121を有し、片側が開放されたカップ状に形成されている。当該凹部121に、第1伝動部材110が所定の公差で嵌合される。第2伝動部材120の開放側と反対側に、シャフト80が挿通する軸穴(嵌合部)122を取り囲んだ端壁123が形成されている。そしてこの端壁123に、第1伝動部材110に連結するネジ130を通す通し穴124が形成されている。また、軸穴122を取り囲むように端壁123に形成された円筒状の凸部125が、ケース71の軸受72と当接されている。
【0023】
シャフト80は金属ロッドで構成され、
図3のように、ケース71に配設された左右一対の軸受72の間に、第1伝動部材110と回転方向に係合するトルク伝達用の係合ピン81が直径方向に一体的に取り付けられている。この係合ピン81は、平行ピンやスプリングピンで構成することができ、シャフト80の直径方向に貫通形成された穴に差し込まれている。
【0024】
係合ピン81は、このように差し込み式にする他、ピンをシャフト80に一体に形成することも可能である。また、係合ピン81を使用せずに、軸穴111の断面形をD形や小判形等の異形断面に形成し、当該異形断面に嵌合するようにシャフト80の外形を対応する異形状に形成してトルク伝達可能にしてもよい。
【0025】
シャフト80に対するトルク伝達をピン以外でも行うため、及び、シャフト80に対する相対回転位置を規制するため、
図4のように、第2伝動部材120の軸穴122内周面の断面形状を異形に成形するようにしてもよい。図示例は軸穴122内周面に対向した一対の平面部126(第1規制部)を形成して、軸穴122の断面形状を所謂小判形にしたものである。そしてシャフト80の外周面にも、当該平面部126が嵌合可能な対応する平面部82(第1規制部)を形成する。
【0026】
軸受72の外側に出たシャフト80に、エンコーダホイール83が取り付けられている。このエンコーダホイール83を検出手段としての光学センサ84で検知することで、シャフト80の回転数を検知することができるようになっている。この光学センサ84の検出結果は、制御手段85に入力される。そして、制御手段85によってモータ60の回転速度や回転位置をPI制御(Proportional Integral Controller)又はPID制御(Proportional Integral Derivative Controller)などのフィードバック制御(FB制御)を行うことで、モータ60の周期成分を低減させるようにしている。
【0027】
図5は、第1伝動部材110と第2伝動部材120を、シャフト80に回転方向で位置合わせするための構成を示している。第1伝動部材110と第2伝動部材120は、2本のネジ130で互いに連結するようにしているので、お互いの回転方向の位置が正確に合っていないと組み立てがスムーズにいかない。
【0028】
そこで、第1伝動部材110の外周面と第2伝動部材120の凹部121の内周面に、それぞれ、互いに直径方向で対向した平面部118、128(第2規制部)を有する小判形の形状を設けた。このように小判形状を付与することにより、第1伝動部材110と第2伝動部材120を回転方向に互いに位置を合わせすることができる。従って、第1伝動部材110のネジ穴113と第2伝動部材120の通し穴124を正確に位置合わせした状態で、ネジ130をスムーズに挿入することが可能になる。
【0029】
(画像形成装置)
伝動機構と駆動機構は以上のように構成されている。当該伝動機構と駆動機構は、例えば、本発明の一実施形態である画像形成装置に使用することができる。
図6は当該画像形成装置の構成例を示す概略図である。前述した伝動機構と駆動機構は、一例として、
図6の中間転写ベルト1の駆動ローラ2(被駆動体)を駆動するために使用することができる。
【0030】
中間転写ベルト1は、後述の感光体ドラムと同じように、像担持体を構成するものである。中間転写ベルト1は、駆動ローラ2、二次転写ローラ4及び複数の従動ローラ51、52、53、54により、所定の張力をもって支持されている。中間転写ベルト1上には、その搬送方向(走行方向)xに従って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色に対応した画像形成ユニット8、9、10、11が順に配置されている。これらの色順はY、M、Cに関して任意に入れ換え可能である。
【0031】
各々の画像形成ユニット8、9、10、11は、画像形成装置の本体フレームに回転可能に支持された感光体ドラム(像担持体の一例)8a、9a、10a、11aを有している。また、各々の感光体ドラム8a、9a、10a、11aの表面をレーザビーム等で露光走査する画像書込部8b、9b、10b、11bを有している。各々の感光体ドラム8a、9a、10a、11aの周囲には、感光体ドラムの回転方向(反時計方向)に従って、帯電器8c、9c、10c、11c、現像器8d、9d、10d、11d、一次転写ローラ8e、9e、10e、11e、クリーナ8f、9f、10f、11fが順に配置されている。
【0032】
一次転写ローラ8e、9e、10e、11eのうち、搬送方向xの上流側にあるカラー作像用の3つの一次転写ローラ8e、9e、10eは、それらの下方に設けられたカラーブラケット7に保持される。カラーブラケット7の下方には接離機構6が備えられている。そして図示しない接離機構駆動モータにて接離機構6が駆動されると、カラーブラケット7に保持された一次転写ローラ8e、9e、10eの位置が、感光体ドラム8a、9a、10aとの距離が変化する。
【0033】
すなわち、接離機構6の駆動により、一次転写ローラ8e、9e、10eは、感光体ドラム8a、9a、10aに対し、接したり離れたりする。このようにして、単色の作像(単色作像モード)とフルカラーの作像(フルカラー作像モード)とを切り替える接離動作が実現される。
【0034】
中間転写ベルト1上には、搬送方向に沿って一定の周期で交互に配置された反射部と非反射部からなるベルトスケールが形成されている。中間転写ベルト1の近傍に、前記ベルトスケールを読み取るスケール検出センサ20が配置されている。スケール検出センサ20は、中間転写ベルト1のベルトスケールの一定の周期に対応したパルス信号を出力し、中間転写ベルト1の回転速度を検出するようにしている。
【0035】
本実施形態の画像形成装置では、画像形成(作像)の対象となる記録媒体の例を用紙として説明するが、材質は紙に限定されない。用紙14は、給紙カセット50に収容されており、その給紙カセット50の用紙送出側に設けられたピックアップローラ15により一枚ずつ繰り出される。繰り出された用紙14は、所定数のローラ対16により図中の破線で示す経路(用紙搬送経路)を辿って搬送され、二次転写ローラ4の圧接位置へと送られる。
【0036】
続いて、上述のように構成された画像形成装置において、カラー画像を形成する場合の動作手順の概略を説明する。
【0037】
まず、画像形成ユニット8、9、10、11にて画像の書き込みが順に開始され、次いで、中間転写ベルト1上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色画像が順次重ね転写(一次転写)される。このようにして一つのカラー画像が形成される。その後、カラー画像は中間転写ベルト1の走行とともに二次転写ローラ4へと送り込まれ、そこで中間転写ベルト1上のカラー画像が用紙14に一括転写(二次転写)される。
【0038】
カラー画像が転写された用紙14は、用紙搬送系17によって定着器18に送られ、そこで画像の定着処理(加熱、加圧等)がなされた後、図示しないトレイに排出される。中間転写ベルト1の片寄りを防止するため、中間転写ベルト1の幅方向の位置を検出するエッジセンサ13が配設されている。また、このエッジセンサ13による検出結果を基にステアリングコトロールローラ3を傾けるように制御する例えば中央演算処理装置等の制御手段が配設されている。
【0039】
(駆動ローラの周波数特性)
次に、駆動ローラ2を駆動する場合に当該駆動ローラ2に生ずる速度変動の周波数特性を
図7により説明する。この
図7は、従来の
図10のように従動ギヤ100を樹脂製の一体形で成形した場合と、本発明の
図1のように第1伝動部材110と第2伝動部材120の2部材で構成した場合の周波数特性を比較したものである。
【0040】
図7の上段が周波数とゲイン特性の関係グラフであり、下段が速度変動の周波数と位相のずれの関係グラフである。駆動ローラ2の回転軸、すなわちシャフト80の回転数を光学センサ84で検知して回転むらを抑制するため、制御帯域は十分広く確保する必要がある。
【0041】
モータ60の電圧と光学センサ84の出力から、周波数応答結果で比較したものが
図7上段のグラフである。本発明の
図1の実施形態のように、第1伝動部材110と第2伝動部材120の2部材で高剛性に構成することで、
図7上段の太線で示すように、細線で示す従来例よりも、共振する周波数を高い周波数に移動させることができる。これにより、制御帯域を広く確保することができ、回転むらを効果的に抑制することができる。
【0042】
図8は、駆動ローラ2の速度変動を示したものである。中間転写ベルト1の2次転写部でトナー像を紙に転写する際、2次転写部に対する用紙の前端進入時と後端抜け時に、中間転写ベルト1の負荷の変動が発生する。
【0043】
そして当該負荷変動が発生すると、一次転写部で感光体ドラム表面と中間転写ベルト1との間で速度誤差や位置誤差が発生し、中間転写ベルト1上のトナー像に横筋が入った異常画像が発生する。このような横筋異常画像も、中間転写ベルト1の駆動部の剛性を高めることで、
図8のように負荷変動の影響による速度変動や位置変動を低減することができる。
【0044】
図9は、
図10のような樹脂一体形と、
図12のような金属と樹脂の複合ギヤと、
図1の本発明の複合ギヤを、互いに同じ剛性にして、それぞれの周波数とゲイン特性の関係を試験した結果を示すものである。
図12の複合ギヤは高精度の同軸性が得られないため回転むらが発生し、共振ピーク周波数のゲイン(dB)が高くなる。このため安定したフィードバック制御を行うことが困難である。更に、共振ピーク周波数のゲイン(dB)が高くなることで振動伝達性も高まる。
【0045】
これに対して本発明の実施例では、金属製第1伝動部材110と樹脂製第2伝動部材120のシャフト80に対する高精度の同軸性を保った状態での相互連結構造により、
図12の複合ギヤに比べて共振部分のゲインを低減することができる。このように本発明の実施例は減衰性能が良いので、
図12の複合ギヤに比べて制御可能な周波数領域をより高い領域まで確保可能である。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。また、本発明に係る給紙装置は、
図1に示すタンデム方式のカラー画像形成装置に限らず、4サイクル方式のカラー画像形成装置やモノクロ画像形成装置、その他の複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等に設けることも可能である。
【0047】
また、前記実施形態ではシャフト80の回転数をエンコーダホイール83と光学センサ84で検知するようにしたが、これに限ったものではない。例えば中間転写ベルト1の表面に形成したベルトスケールやトナーマークをスケール検出センサ20等で検出することで中間転写ベルト1の回転速度を検出し、その検出結果を制御手段85に入力するようにしてもよい。
【0048】
また、制御手段85が行う制御はPI制御やPID制御に限ったものではなく、P制御やH∞制御等であっても良い。また、前述した駆動ギヤ90と従動ギヤ100の噛み合い率を上げるために、従動ギヤ100を内歯ギヤで構成することも可能である。また、1成分トナーに代えて2成分トナーによる現像方式を採用してもよい。
【0049】
前述した本発明の実施形態による作用をまとめると以下のようになる。
(1)第1伝動部材110と第2伝動部材120を同じシャフト80の外径を基準として位置決めすることによって、当該シャフト80との高精度な同軸性が得られ、ギヤの回転むらを安定化させることができる。更に、第1伝動部材110をシャフト80に対して同軸性を確保した構成としているので、第1伝動部材110を焼結金属などで成形することでシャフト80に対する負荷変動に伴うギヤの傾きを抑制することができる。この点、通常の射出成形で得られる樹脂ギヤでは、抜き勾配の関係で係合ピン81が入る溝部112等を含めた精度を確保することが難しく、負荷変動に伴うギヤの傾きが大きくなる。
【0050】
(2)シャフト80を主基準とし、更にシャフト80の一部にDカットや小判形状などを更に設けることで、第2伝動部材120の回転方向の位置決めを行うことができる。このように第2伝動部材120の回転方向を規制することで、第1伝動部材110と第2伝動部材120の連結部の位置が一致し、ネジなどの更に異なる手段を用いる場合、簡単に締付位置を見つけることができ、容易に組付けを実施することができる。
【0051】
(3)第1伝動部材110と第2伝動部材120の材質を異なるものとすることで、一方でギヤ精度、他方で剛性が要求されているものに対して、適切な材料を選定し、ギヤ精度と剛性のそれぞれを最適化可能な構成とすることができる。
【0052】
(4)第1伝動部材110を金属製など高機械強度とすることでシャフト80との係合部での剛性を高くし、これに対して第2伝動部材120を樹脂製など低機械強度とすることでギヤ部で発生する振動を低減することができる。
【0053】
(5)第1伝動部材110と第2伝動部材120の回転方向の剛性を増大させることができるため、普通の樹脂ギヤでは得られない回転剛性を確保することができる。これにより、特にPI制御やPID制御などのフィードバック制御において共振ピーク周波数を高い方に移動させて制御性を高めることができ、また共振ピーク周波数での減衰性を高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
1: 中間転写ベルト 2:駆動ローラ
3:ステアリングコトロールローラ 4:二次転写ローラ
6:接離機構 7:カラーブラケット
8、9、10、11:画像形成ユニット 8a、9a、10a、11a:感光体ドラム
8b、9b、10b、11b:画像書込部 8c、9c、10c、11c:帯電器
8d、9d、10d、11d:現像器 8e、9e、10e、11e:一次転写ローラ
8f、9f、10f、11f:クリーナ 13:エッジセンサ
14:用紙 15:ピックアップローラ
16:ローラ対 17:用紙搬送系
18:定着器 20:スケール検出センサ
50:給紙カセット 51、52、53、54:従動ローラ
30:紙搬送ベルト 50:給紙カセット
60:モータ 61:回転軸
70:減速機 71:ケース
72:軸受 80:シャフト
81:係合ピン 82:平面部
83:エンコーダホイール 84:光学センサ
85:制御手段 90:駆動ギヤ
91:ギヤ部 100:従動ギヤ
110:第1伝動部材 111:軸穴
112:溝部 113:ネジ穴
118:平面部 120:第2伝動部材
121:凹部 122:軸穴
123:端壁 124:通し穴
125:凸部 126:平面部
127:ギヤ部 130:ネジ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2002−266952号公報
【特許文献2】特開平9−114160号公報
【特許文献3】特許第4435093号公報