特許第6236736号(P6236736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236736製膜原液の異常検知装置及び異常検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236736
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】製膜原液の異常検知装置及び異常検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20171120BHJP
   G01N 21/85 20060101ALI20171120BHJP
   B01D 65/00 20060101ALI20171120BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G01N21/59 Z
   G01N21/85 B
   B01D65/00
   B01D69/08
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-156929(P2013-156929)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-25785(P2015-25785A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】平岡 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】隅 敏則
(72)【発明者】
【氏名】藤木 浩之
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−031181(JP,A)
【文献】 特開2005−329129(JP,A)
【文献】 特開平08−313434(JP,A)
【文献】 特開2008−233039(JP,A)
【文献】 特開2012−220324(JP,A)
【文献】 特開昭61−278736(JP,A)
【文献】 特表2000−506271(JP,A)
【文献】 特開2012−068048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01N 15/00−15/14
G01V 9/04
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
D01D 1/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜の製膜原液の供給ラインに設けられ、前記供給ライン中の前記製膜原液の異常を検知する異常検知装置であって、
光センサを有し、前記光センサは、
前記供給ライン中の前記製膜原液に向け、光を出射する出光部と、
前記供給ライン中の前記製膜原液を通過した、前記光を受光する受光部とを有し、
前記異常検知装置は、前記受光部が受光した光の量に基づいて、前記製膜原液の異常を検知する異常検知部を備えており、
前記異常検知部は製膜原液自体の性状変化を検知しうる、異常検知装置。
【請求項2】
前記異常検知部が、前記光の量の時間変化を分析する請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記時間変化が、連続的な時間変化である請求項2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記供給ラインは少なくとも一部に直線的に延びる管の部分を有し、前記出光部と前記受光部は、前記出光部と前記受光部とを結ぶ線が前記直線的に延びる管の部分の長手方向軸線と平行になるように配置されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の異常検知装置。
【請求項5】
前記供給ラインは少なくとも一部に直線的に延びる管の部分を有し、前記出光部と前記受光部は、前記出光部と前記受光部とを結ぶ線が前記直線的に延びる管の部分の中心軸と一致するように配置されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の異常検知装置。
【請求項6】
前記供給ラインの直線的に延びる管の部分は、第1の直径を有する部分と前記第1の直径よりも小さい第2の直径を有する部分とを有し、前記出光部と前記受光部は、前記供給ラインの前記第2の直径を有する部分の中心軸と前記出光部と前記受光部とを結ぶ線とが平行になるように配置されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の異常検知装置。
【請求項7】
前記供給ラインは少なくとも一部に直線的に延びる管の部分を有し、前記出光部と前記受光部は、前記出光部と前記受光部とを結ぶ線が前記直線的に延びる管の部分の長手方向軸線に対して垂直となるように配置されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の異常検知装置。
【請求項8】
前記供給ラインは少なくとも一部に直線的に延びる管の部分を有し、前記出光部と前記受光部は、前記出光部と前記受光部とを結ぶ線が前記供給ラインの長手方向軸線に対して傾斜するように配置されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の異常検知装置。
【請求項9】
中空糸膜の製膜原液の供給ラインに設けられ、前記供給ライン中の前記製膜原液の異常を検知する異常検知装置であって、
光センサを有し、前記光センサは、
前記供給ライン中の前記製膜原液に向け、光を出射する出光部と、
前記供給ライン中の前記製膜原液により反射された、前記光を受光する受光部とを有し、
前記異常検知装置は、前記受光部が受光した光の量に基づいて、前記製膜原液の異常を検知する異常検知部とを備えており、
前記異常検知部は製膜原液自体の性状変化を検知しうる、異常検知装置。
【請求項10】
前記供給ラインには、前記供給ラインから供給された製膜原液を吐出して前記中空糸膜を紡糸する吐出手段が接続されており、
前記出光部及び前記受光部は、前記供給ラインの前記吐出手段の上流側直前に配置される、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の異常検知装置。
【請求項11】
前記出光部及び前記受光部は、前記供給ラインの外部に配置され、前記供給ラインの、少なくとも、前記出光部に対応する部分と、前記受光部に対応する部分は、前記光を透過する材料で形成されている、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の異常検知装置。
【請求項12】
前記出光部及び前記受光部は、前記供給ライン内に突出して設けられ、前記製膜原液と直接接触するように配置されている、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の異常検知装置。
【請求項13】
前記異常検知部は、更に、前記受光部が受光した光の強度に基づいて、前記製膜原液中の気泡、異物、ゲル状化物、未溶解物、の少なくとも一つを検知する、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の異常検知装置。
【請求項14】
前記光センサは、光ファイバセンサである、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の異常検知装置。
【請求項15】
中空糸膜の製膜原液を供給ラインによって供給する際、前記供給ライン中の前記製膜原液の異常を検知する異常検知方法であって、
前記供給ライン中を流れる前記製膜原液に対して光センサから光を入射し、
前記製膜原液を通過した、前記光を前記光センサで受光し、
前記光センサで受光した光の強度を測定し、
前記測定された光の量に基づいて、前記製膜原液の異常を検知し、
前記製膜原液の異常の検知は、前記製膜原液自体の性状変化を検知しうる、異常検知方法。
【請求項16】
中空糸膜の製膜原液を供給ラインによって供給する際、前記供給ライン中の前記製膜原液の異常を検知する異常検知方法であって、
前記供給ライン中を流れる前記製膜原液に対して光センサから光を入射し、
前記製膜原液から反射した、前記光を前記光センサで受光し、
前記光センサで受光した光の量を測定し、
前記測定された光の量に基づいて、前記製膜原液の異常を検知し、
前記製膜原液の異常の検知は、前記製膜原液自体の性状変化を検知しうる、異常検知方法。
【請求項17】
前記異常検知方法は、更に、前記製膜原液中の気泡、異物、ゲル状化物、未溶解物、の少なくとも一つを検知する、請求項15又は16記載の異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜の製膜原液の異常検知装置及び異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜(多孔質中空糸膜)は水や空気の浄化等に広く使用されており、近年では、下水処理場における水処理や、産業廃水中の懸濁物質の固液分離など、高汚濁性水の処理にも用いられている。このような中空糸膜は各種のポリマー原液を含む製膜原液を紡糸ノズル等の吐出手段から吐出することで製造される。
【0003】
中空糸膜の品質を保つためには、吐出手段により吐出される製膜原液の状態を均一に保つ必要がある。製膜原液に異物や気泡などが混入することによって製膜原液に異常が生じた場合は、この異常を的確に検知し、中空糸膜の製造を停止して、異常が生じた製膜原液を用いないようにすることが好ましい。
【0004】
従来、製膜原液の異常の一種である、局所的な斑(粘度斑)を検出する方法の一つとして、製膜原液を紡糸孔径より小さな目開きのフィルターで濾過させた後、紡糸孔径と同等の孔径を有するキャピラリーを通し、キャピラリーを通る原液にレーザ光を通過させて、製膜原液に斑が生じたかどうかを判別する方法が知られていた(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、この他にも2種類以上のポリマーが溶解したドープからなる製膜原液の組成変動をその粘度と屈折率の変化から特定し、製膜原液の局所的な斑を検出するという方法が知られていた(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−267822号公報
【特許文献2】特開2006−219811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載された方法は、あくまでも原液中の局所的な斑という限定的な対象を検知しようとするものであり、この局所的な斑の大きさは差し渡し100μm程度であることから、ビーム直径の小さいレーザ光を用いる必要があった。このため、この従来技術の方法は、製膜原液中に生じる異物や気泡の混入といった、より一般的な異常を検知する方法として使用することが困難であった。また、特許文献2に記載された方法で用いられる屈折率計では、屈折率計の検知部先端の一部に露出したプリズム平面と検査対象となる液体との界面で生じる光の屈折を利用するため、製膜原液中の気泡や異物を的確に検知することが困難であった。また、粘度計によっても、同様に、製膜原液中の気泡や異物を的確に検知することが困難であった。
【0008】
従来の中空糸膜の製膜原液の異常検知装置や異常検知方法では、製膜原液に生じる異常の一部しか検知することができなかった。そこで本発明は、中空糸膜の製造に用いられる製膜原液への異物や気泡の混入といった、他の異常を的確に検知する異常検知装置や異常検知方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、中空糸膜の製膜原液の供給ラインに設けられ、供給ライン中の製膜原液の異常を検知する異常検知装置であって、光センサを有し、光センサは、供給ライン中の製膜原液に向け、光を出射する出光部と、供給ライン中の製膜原液を通過した、光を受光する受光部とを有し、この異常検知装置は、受光部が受光した光の量に基づいて、製膜原液の異常を検知する異常検知部とを備えており、この異常検知部は製膜原液自体の性状変化を検知しうることを特徴とする。
【0010】
このように構成された本発明においては、光センサを使用し、供給ライン中の製膜原液の広い領域に光を出射し、製膜原液中を通過した光を受光することにより、領域内に生じた異常を検知することができる。ビーム直径の小さいレーザ光を用いた構成とは異なり、広い領域を検知対象とすることができるため、中空糸膜の製造に用いられる製膜原液への異物や気泡の混入といった、様々な異常を的確に検知することが可能となる。
【0011】
また、本発明において、供給ラインは少なくとも一部に直線的に延びる管の部分を有し、出光部と受光部は、出光部と受光部とを結ぶ線が直線的に延びる管の部分の長手方向軸線に対して平行になるように配置されていることが好ましい。このように構成することで、製膜原液の異常を的確に検知することが可能となる。
【0012】
また、本発明において、供給ラインは少なくとも一部に直線的に延びる管の部分を有し、出光部と受光部は、出光部と受光部とを結ぶ線が直線的に延びる管の部分の中心軸と一致するように配置されていることが好ましい。このように構成することで、製膜原液の異常をより的確に検知することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、供給ラインの直線的に延びる管の部分は、第1の直径を有する部分と第1の直径よりも小さい第2の直径を有する部分とを有し、出光部と受光部は、供給ラインの第2の直径を有する部分の中心軸と出光部と受光部とを結ぶ線とが平行になるように配置されていることが好ましい。このように構成することで、製膜原液の異常をより的確に検知することが可能となる。
【0014】
また、本発明において、供給ラインは少なくとも一部に直線的に延びる管の部分を有し、出光部と受光部は、出光部と受光部とを結ぶ線が直線的に延びる管の部分の長手方向軸線に対して垂直となるように配置されていることが好ましい。このように構成することで、製膜原液の異常を的確に検知することが可能となる。
【0015】
また、本発明において、供給ラインは少なくとも一部に直線的に延びる管の部分を有し、出光部と受光部は、出光部と受光部とを結ぶ線が供給ラインの長手方向軸線に対して傾斜するように配置されていることが好ましい。このように構成することで、製膜原液の異常を的確に検知する他に、供給ラインを流れる製膜原液の種類等についてモニターすることが可能となる。
【0016】
また、本発明において、光センサは、光ファイバセンサであることが好ましい。このように構成することで、小さな屈曲部を有しても高い効率で検査光を伝送することが可能となり、出光部や受光部、そして出光部や受光部を構成する各要素の配置の自由度を高めることができる。
【0017】
また、本発明は、中空糸膜の製膜原液の供給ラインに設けられ、供給ライン中の製膜原液の異常を検知する異常検知装置であって、光センサを有し、光センサは、供給ライン中の製膜原液に対し、光を入射する出光部と、供給ライン中の製膜原液により反射された、光を受光する受光部と、を有し、この異常検知装置は、受光部が受光した光の量に基づいて、製膜原液の異常を検知する異常検知部を備えており、この異常検知部は製膜原液自体の性状変化を検知しうることを特徴とする。このように構成することで、中空糸膜の製造に用いられる製膜原液への異物や気泡の混入といった、様々な異常を的確に検知することが可能となる。
【0018】
また、本発明において、供給ラインには、供給ラインから供給された製膜原液を吐出して中空糸膜を紡糸する吐出手段が接続されており、出光部及び受光部は、供給ラインのうち吐出手段の上流側直前に配置されることが好ましい。このように構成することで、供給ライン中で発生する製膜原液の異常を的確に検知することが可能となる。
【0019】
また、本発明において、出光部及び受光部は、供給ラインの外部に配置され、供給ラインの、少なくとも、出光部に対応する部分と、受光部に対応する部分は、光を透過する材料で形成されていることが好ましい。このように構成することで、製膜原液の異常を的確に検知することが可能となる。
【0020】
また、本発明において、出光部及び受光部は、供給ライン内に突出して設けられ、製膜原液と直接接触するように配置されていることが好ましい。このように構成することで、製膜原液の異常を的確に検知することが可能となる。
【0021】
また、本発明において、異常検知部は、受光部が受光した光の強度に基づいて、製膜原液中の気泡、異物、ゲル状化物、未溶解物、製膜原液自体の性状変化、の少なくとも一つを検知することが好ましい。
【0022】
また、本発明は、中空糸膜の製膜原液を供給ラインによって供給する際、供給ライン中の製膜原液の異常を検知する異常検知方法であって、供給ライン中を流れる製膜原液に対して光センサから光を入射し、製膜原液を通過した、光を光センサで受光し、光センサで受光した光の強度を測定し、測定された光の量に基づいて、製膜原液の異常を検知し、この製膜原液の異常の検知は、製膜原液自体の性状変化を検知しうることを特徴とする。光センサを使用することで、ビーム直径の小さいレーザ光と異なり、広い領域を検知対象とすることができ、中空糸膜の製造に用いられる製膜原液への異物や気泡の混入といった、様々な異常を的確に検知することが可能となる。
【0023】
また、本発明は、中空糸膜の製膜原液を供給ラインによって供給する際、供給ライン中の製膜原液の異常を検知する異常検知方法であって、供給ライン中を流れる製膜原液に対して光センサから光を入射し、製膜原液から反射した、光を光センサで受光し、光センサで受光した光の強度を測定し、測定された光の量に基づいて、製膜原液の異常を検知し、製膜原液の異常の検知は、前記製膜原液自体の性状変化を検知しうることを特徴とする。このようにすることで、中空糸膜の製造に用いられる製膜原液への異物や気泡の混入といった、様々な異常を的確に検知することが可能となる。
【0024】
また、本発明において、異常検知方法は、製膜原液中の気泡、異物、ゲル状化物、未溶解物、製膜原液自体の性状変化の少なくとも一つを検知することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、中空糸膜の製造に用いられる製膜原液の異常を的確に検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る中空糸膜製造プロセスの構成を示す概略図である。
図2】本発明に係る製膜原液の異常検知装置の第1の実施形態を示す図である。
図3】本発明に係る製膜原液の異常検知装置により測定された信号の例を示す図である。
図4】本発明に係る製膜原液の異常検知装置の第2の実施形態を示す図である。
図5】本発明に係る製膜原液の異常検知装置の第3の実施形態を示す図である。
図6】本発明に係る製膜原液の異常検知装置の第4の実施形態を示す図である。
図7】本発明に係る製膜原液の異常検知装置の第5の実施形態を示す図である。
図8】本発明に係る製膜原液の異常検知装置の第6の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本発明の第1の実施形態に係る中空糸膜の製膜プロセスの構成を示す概略図である。図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る中空糸膜の製膜プロセスは、原液調製手段10、原液貯留部20、異常検知装置30、吐出手段40、凝固浴部50、洗浄部60、分解部70、乾燥部80、巻取部90を有している。原液調製手段10は溶解釜等から構成されており、原液調製手段10と原液貯留部20とは配管による製膜原液の供給ラインで接続されている。原液貯留部20はタンク等から構成されており、原液貯留部20から吐出手段40に向けて配管による供給ラインが設けられている。原液貯留部20から吐出手段40に向かう供給ラインの途中に、異常検知装置30が設けられており、製膜原液の異常を検知する。吐出手段40は例えば紡糸ノズルであり、製膜原液を中空糸の形に吐出する。吐出手段40から吐出された製膜原液は凝固液で満たされた凝固浴部50で凝固液に浸漬され、凝固して中空糸膜の形となる。その後、中空糸膜は巻取部90に巻き取られる形で、凝固浴部50から、中空糸膜を洗浄する洗浄部60、不純物を分解除去する分解部70、中空糸膜を乾燥する乾燥部80を次々に通過し、最終的には巻取部90に巻き取られる。
【0028】
原液調製手段10は、多孔質膜を形成する製膜原液を調製する手段である。この製膜原液は膜形成性樹脂、開孔剤および溶媒を含んでいる。
【0029】
膜形成性樹脂として、一般的に多孔質膜の形成に使用される通常の樹脂を用いることが可能である。例えば、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、スルホン化ポリスルホン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐薬品性に優れたポリフッ化ビニリデン樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの樹脂について、1種類のみを使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
開孔剤として、例えば、ポリエチレングリコールによって代表されるモノオール系、ジオール系、トリオール系、ポリビニルピロリドン等の親水性高分子樹脂を用いることができる。これらの中でも、増粘効果に優れたポリビニルピロリドンを用いるのが好ましい。これらの開孔剤について、1種類のみを使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
溶媒として、これらの膜形成性樹脂や開孔剤を溶解できるものであれば、特に限定されないが、例として、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドを用いることができる。これらの中でも、膜形成性樹脂の溶解が効率的に行なえる、N,N−ジメチルアセトアミドを用いるのが好ましい。これらの溶媒について、1種類のみを使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
これらの膜形成性樹脂、開孔剤、溶媒により製膜原液が調製されるが、製膜原液の相分離の制御を阻害しない範囲で、任意の成分を加えることが可能である。例えば、開孔剤以外の樹脂や、その他の添加剤を加えることができる。
【0033】
原液調製手段10において、上述した溶媒に膜形成性樹脂と開孔剤を加え、攪拌して溶解し、減圧処理により脱泡を行なうことにより、製膜原液が調製される。なお、本実施形態では原液調製手段10として、具体的には溶解釜が用いられる。
【0034】
原液調製手段10で調整された製膜原液は、次に供給ライン(製膜原液配管)を通じてタンクで構成される原液貯留部20へと送られ、原液貯留部20に貯留される。原液貯留部20は、原液調製手段10によって調製された製膜原液を吐出手段40に送る前に一時的に貯留し、均一な製膜原液を吐出手段40に安定的に供給するためのものである。この供給ラインを通じた原液貯留部20への製膜原液の送液は図示しないポンプ等を用いて行なわれる。
【0035】
原液貯留部20に貯留された原液は、次に供給ラインを通じて吐出手段40に送られる。原液貯留部20から吐出手段40に向かう供給ラインの途中には後述する異常検知装置30が設けられている。吐出手段40は製膜原液を吐出して中空糸膜を製造するための手段であり、具体的には紡糸ノズルを用いることができる。紡糸ノズルの例として、各種の繊維で製紐された中空状の編紐、組紐等の補強支持体の外側に製膜原液を塗布するように吐出する紡糸ノズルや、補強支持体を使用せずに製膜原液のみを円筒状に吐出する紡糸ノズルが挙げられる。また、複数の製膜原液を同心円状に吐出して複数の多孔質膜層が積層された多孔質中空糸膜を形成する紡糸ノズルを使用することも可能である。この場合、それぞれの製膜原液を紡糸ノズルに送るために、複数の原液調製手段や原液貯留部、製膜原液配管を用いる。また、この場合、複数の製膜原液の供給ラインにそれぞれ異常検知装置を設けることで、どの供給ラインの製膜原液に異常が発生しているかを容易に知ることが可能となる。なお、例として紡糸ノズルを挙げたが、このほかに平膜の製造に用いられる吐出ノズルを用いることも可能である。
【0036】
吐出手段40により吐出された製膜原液は凝固浴部50で凝固液に浸漬される。製膜原液が凝固液に浸漬されると、製膜原液中に凝固液が拡散し、膜形成性樹脂と開孔剤がそれぞれ相分離を起こしながら凝固し、これにより多孔質膜が形成される。この凝固浴部50は従来使用されていたものを用いることができる。
【0037】
凝固浴部50で形成された多孔質膜は続いて、洗浄部60へと送られ、洗浄される。洗浄された多孔質膜は分解部70へと送られ、膜中に残存した親水性ポリマーなどを分解除去する。その後、多孔質膜は乾燥部80において乾燥され、巻取部90に巻き取られる。これら洗浄部60、分解部70、乾燥部80および巻取部90は従来使用されていたものを用いることができる。
【0038】
図2は本発明に係る異常検知装置の第1の実施形態の主要部を示す概略図である。供給ライン305の左右に光ファイバユニット301の出光部302と受光部303が配され、中央に供給ライン305の断面が示されている。この部分の供給ライン305は直線的に延びる円筒状の管により形成され、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303とを結ぶ線が、この直線的に延びる管の部分の長手方向軸線に対して垂直となるように配置されている。受光部303は図示しないアンプ部を経由して、異常検知部304に接続されている。
【0039】
本実施形態で用いられる光ファイバセンサは光ファイバユニット301とアンプ部(図示せず)とを有しており、特に透過型の光ファイバセンサが用いられる。出光部302には光源(図示せず)からの光を導く光ファイバの端部が設けられており、この出光部302から光を放出する。光ファイバの端部から放出される光のビーム直径は従来技術で用いられていたレーザ光よりも大きく、またこの光は光ファイバの端部から所定の角度で広がるようになっている。このため、ビーム直径の小さいレーザ光と異なり、広い領域を検知対象とすることができる。受光部303は出光部302から放出された光を受光し、アンプ部へと信号を送る。アンプ部は受光部303で受光した光の信号を増幅し、これにより受光部303が受光した光量を測定することができる。この受光部303が受光した光量に基づいて、異常検知部304が製膜原液の異常を検知する。光ファイバセンサを構成する光ファイバユニット301として、株式会社キーエンス製のFU−77やオムロン株式会社製のE32−T11Nを使用することができ、アンプとして株式会社キーエンス製のFS−N11MNやオムロン株式会社製のE3X−DA11ANを使用することができる。また、光ファイバセンサに用いられる光ファイバはその取り扱いの容易性からプラスチック製のものが好ましい。
【0040】
なお、各実施形態において、光センサとして、出光部や受光部の配置の自由度の観点から、小さな屈曲部を有していても高い効率で検査光を伝送可能である光伝送体として光ファイバを採用した光ファイバセンサが用いられるが、この他にも発光素子と石英ロッドなどの導光体を有する出光部、受光素子と石英ロッドなどの導光体を有する受光部からなる光センサを用いても良い。また、導光体を用いずに、レンズ等により直接光を検知対象に導くようにするセンサ構成を用いても良い。
【0041】
異常検知部304は光ファイバユニット301の受光部303が受光した光量をモニターし、その絶対値の時間変化などを分析して、製膜原液の異常を検知する。異常検知を目的とした専用の機器で構成されてもよく、パーソナルコンピュータにソフトウェアをインストールすることによって同様の機能を実現してもよい。
【0042】
透過型の光ファイバセンサの一部である、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303は製膜原液の供給ライン305を挟んで配置される。第1の実施形態において、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303が配置される部分の供給ライン305は透明樹脂パイプが用いられている。好ましい透明な材質の具体例として、透明なナイロン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂(PFA、ETFE等)、透明タイプのフッ素ゴム、ポリウレタンなどが挙げられる。図2に示すような配置によって、配管の外部に配置された光ファイバユニット301の出光部302から放出された光が、透明な配管と、配管の内部を流れる製膜原液を通過して、光ファイバユニット301の受光部303で受光される。第1の実施形態において、光ファイバユニット301の出光部302及び受光部303は製膜原液に対して非接触の状態となっている。
【0043】
なお、図2に示す異常検知装置において、供給ライン305の直線的に延びる管全体を透明樹脂パイプとしているが、出光部302からの光が供給ライン305に入射する部分、及び受供給ライン305を通過した光が出射する部分に透明な窓を設け、それ以外の供給ラインについては不透明な状態とすることも可能である。
【0044】
第1の実施形態において、気泡や異物、製膜原液中のゲル状物や未溶解物が混入した製膜原液、あるいは製膜原液自体に性状変化が生じて白濁したような製膜原液が供給ライン305を流れてきた場合、出光部302から放出された光は透明樹脂パイプの壁を通過し、供給ライン305内の製膜原液に含まれた気泡や異物、ゲル状物や未溶解物、製膜原液の白濁によって散乱される。その結果、気泡や異物、ゲル状物や未溶解物が混入しておらず、性状変化も生じていない、通常の製膜原液が供給ライン305を流れてきた場合に比べて、受光部303が受光する光の量は減少することになる。製膜原液は供給ライン305に沿って出光部302と受光部303との間を吐出手段に向けて流れていくので、受光部303が受光する光の量は、気泡や異物、ゲル状物や未溶解物、白濁した製膜原液の通過による影響を受け、時間によって変化する。
【0045】
図3は本実施形態で用いられる光ファイバセンサの出力電圧の波形の例を示す図である。横軸は時間軸であり、縦軸は電圧を示す。平常時、すなわち気泡や異物、ゲル状物や未溶解物が混入していない通常の製膜原液が供給ライン305を通過しているときの電圧レベルと、気泡や異物、また、製膜原液中のゲル状物や未溶解物、白濁した製膜原液が供給ライン305を通過したときの電圧レベルの変化が現れている。気泡や異物、ゲル状物や未溶解物、白濁した製膜原液が出光部302と受光部303との間にさしかかると、出光部302から放出された光が気泡や異物、ゲル状物や未溶解物、白濁によって散乱され、光ファイバユニット301の受光部303が受光する光の量が減少するため、光ファイバセンサの出力電圧も低下する。その後、製膜原液の流れによって気泡や異物、ゲル状物や未溶解物、白濁した製膜原液が通過していくと、光ファイバユニット301の受光部303が受光する光の量も回復し、光ファイバセンサの出力電圧も平常時の値に戻る。
【0046】
このように、光ファイバセンサの出力電圧、すなわち光ファイバセンサで受光した光の量をモニターすることによって、供給ラインを流れる製膜原液の異常を検知することができる。異常検知装置30が製膜原液の異常を検知した場合、製品となる中空糸膜に異常が生じる前に製品としての採取を中止し、製膜原液に異常が検知されなくなった後、検知部から製品採取部までの製膜原液の工程滞在時間が経過するのを待って、製品採取を再開することが好ましい。このようにすることで、異常が検知された製膜原液から製造された中空糸膜を製品として採取することを避けることができる。異常検知装置30において異常が無いことを確認した後、異常検知装置30から吐出手段40に至るまでの供給ライン中において、異物が混入する可能性は排除できないことから、吐出手段40から吐出される製膜原液に異常がないことを的確に保証するために、本発明の異常検知装置30は、原液貯留部20から吐出手段40に至る供給ラインの中でも、吐出手段40の上流側直前付近に配置されるのが好ましい。
【0047】
なお、製膜原液に生じる異常として、光の散乱を生じさせるような気泡や異物の発生・混入、ゲル状物や未溶解物の発生といった異常の他に、製膜原液自体の特性が変化することによって、光の吸収を生じさせるような異常が発生することも考えられる。このような場合も、光ファイバユニット301の受光部303が受光する光の量は減少するので、同様に異常を検知することが可能となる。従って、受光部303が受光した光の量に基づいて、製膜原液に生じ得る様々な異常を的確に検知することが可能となる。
【0048】
このように、第1の実施形態によると、光ファイバセンサを有する異常検知装置を用いることによって、中空糸膜の製造に用いられる製膜原液の様々な異常を的確に検知することが可能となる。
【0049】
図4は本発明に係る異常検知装置の第2の実施形態を示す概略図である。第2の実施形態は第1の実施形態と基本構成は同じで、光ファイバユニットの配置が異なるものである。第1の実施形態と共通の部分については説明を省略する。図4に示すように、供給ライン305の左右に透過型の光ファイバセンサの一部である、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303が配され、中央に供給ライン305の断面が示されている。この部分の供給ライン305は直線的に延びる管により形成され、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303とを結ぶ線が、この直線的に延びる管の部分の長手方向軸線に対して垂直となるように配置されている。
【0050】
第2の実施形態の光ファイバユニット301の出光部302と受光部303の端部は第1の実施形態と異なり、供給ライン305の配管内に突出した形で配置されている。このようにすることで、第2の実施形態において、光ファイバユニット301の出光部302及び受光部303は製膜原液に対して接触した状態となっている。出光部302と受光部303の端部が供給ライン305の配管内に突出していることから、配管に透明な部分を設ける必要がない。また、第1の実施形態と異なり、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303との間に供給ライン305の壁面が存在しないため、第1の実施形態よりも受光部303の受光する光量が大きくなり、S/N比も向上する。第2の実施形態においても、光ファイバセンサからの出力電圧やこれに基づく異常の検知方法については第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0051】
図5は本発明に係る異常検知装置の第3の実施形態を示す概略図である。第3の実施形態は第1の実施形態と基本構成は同じであるが、上述した第1、第2の実施形態のような透過型の光ファイバセンサを用いる代わりに、反射型の光ファイバセンサ306を用いたものである。反射型の光ファイバセンサ306は、一筐体に出光部307と受光部308が搭載されたもので、測定対象を挟むように出光部と受光部を配置する透過型の光ファイバセンサとは異なり、測定対象に向けて出光部307から光を出光し、測定対象が反射した光を受光部308で受光するようになっている。
【0052】
第3の実施形態で用いられる反射型の光ファイバセンサ306は、供給ライン305の外部から出光し、この光の反射を、同じく供給ライン305の外部で受光するため、第1の実施形態と同様に、供給ライン305のうち、出光部307から出光された光を透過し、製膜原液で反射された光を受光部308へと透過する部分は透明な材質で形成されている。図5に示すように供給ライン305のうち一部の直線的に延びる管の部分を透明にしてもよく、また、直線的に延びる管の部分に窓を設け、窓の部分を透明にしてもよい。第3の実施形態においても、光ファイバセンサからの出力電圧やこれに基づく異常の検知方法については第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
図6は本発明に係る異常検知装置の第4の実施形態を示す概略図である。第1の実施形態と基本構成は同じであり、透過型の光ファイバセンサを用いるが、供給ライン305の形状と、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303の配置が異なっている。第4の実施形態において、供給ライン305は、それぞれ90度ずつ屈曲する2箇所の屈曲部を有しており、第1の屈曲部と第2の屈曲部との間に直線的に延びる管の部分が設けられている。第4の実施形態では、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303とを結ぶ線が、この直線的に延びる管の部分の長手方向軸線に対して平行となるように光ファイバユニット301の出光部302と受光部303が配置される。特に、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303とを結ぶ線が、この直線的に延びる管の部分の中心軸と一致することが好ましい。供給ライン305のうち、光ファイバユニット301の出光部302が設けられる側と、光ファイバユニット301の受光部303が設けられる側はガラスなどの透明な材質(石英ガラス、フッ化バリウムなど)で形成されている。
【0054】
上述した第1および第2の実施形態では、出光部302と受光部303との間の製膜原液の幅は供給ラインの直線的に延びる管の部分の直径とほぼ同一である。しかし、第4の実施形態のように光ファイバユニット301の出光部302と受光部303を配置することで、より長く製膜原液の中を通過させることが可能となり、ノイズ耐性を向上し、異常検知の精度を高めることが可能となる。
【0055】
また、流体力学上、流体に混入した気泡や異物等は、流体の流れの中でも流速の速いところに集まる傾向があることが知られている。そして、図示したような供給ラインの直線的に延びる管の部分では、直線的に延びる管の内壁面付近の流速よりも、直線的に延びる管の中心軸付近の流速の方が速い。従って、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303とを結ぶ線を、この直線的に延びる管の部分の中心軸と一致させることによって、より的確に製膜原液の異常を検知することが可能となる。第4の実施形態においても、光ファイバセンサからの出力電圧やこれに基づく異常の検知方法については他の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
なお、第4の実施形態においても、第2の実施形態と同様に、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303を供給ライン305の内部に突出させて、製膜原液と直接接触するようにしても構わない。また、直線的に延びる管の部分の前後の屈曲部の屈曲は、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303の配置の妨げとならないものであれば、90度以外の角度で屈曲しても構わない。
【0057】
図7は本発明に係る異常検知装置の第5の実施形態を示す概略図である。第5の実施形態は上述した第4の実施形態と類似しているが、第4の実施形態における直線的に延びる管の部分のうち、一部の直径が小さくなっている点が異なっている。第5の実施形態では、直線的に延びる管の部分のうち、この直径の小さい部分の中心軸と、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303とを結ぶ線とが平行となっている。特に、直径の小さい部分の中心軸と、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303とを結ぶ線とが一致することが好ましい。
【0058】
流体力学上、第5の実施形態のような直線的に延びる管の部分において、直径が小さくなっている部分の流速は直径が大きい部分の流速よりも速くなる。よって、この部分での気泡等の異常を検知することで、的確に製膜原液の異常を検知することが可能となる。第5の実施形態においても、光ファイバセンサからの出力電圧やこれに基づく異常の検知方法については他の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
図8は本発明に係る異常検知装置の第6の実施形態を示す概略図である。第6の実施形態は上述した第1の実施形態と基本構成は共通であるが、第1の実施形態では光ファイバユニット301の出光部302と受光部303とを結ぶ線が供給ライン305の直線的に延びる管の部分の長手方向軸線に対して垂直となるように、出光部302と受光部303が配置されているのに対し、第6の実施形態においては、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303とを結ぶ線が供給ライン305の直線的に延びる管の部分の長手方向軸線に対して傾斜するように配置されている。第1の実施形態では、製膜原液中の異常による光の反射や吸収に基づく、受光部303が受光する光の量の変化をモニターしていたのに対して、第6の実施形態では更に、製膜原液の屈折率の変化に起因した光の屈折の変化に基づく、受光部303が受光する光の量の変化もモニターすることが可能となる。なお、図8では光の屈折について分かり易いように供給ライン305の管の厚さを大きく示しているが、実際の供給ライン305の管の厚さは図示したものよりも薄くなっている。
【0060】
図8(a)は通常の製膜原液を供給ラインを介して吐出手段40に供給する際に動作する異常検出装置の例を示している。製膜原液と供給ラインの材質の屈折率の関係から、通常の製膜原液が有する屈折率に起因する光の屈折によって、受光部303が受光する光の量を最大化する位置に受光部303を位置決めすることが好ましい。このように配置された光ファイバユニット301を用いて、上述した各実施形態と同様に、製膜原液中の異常を検知することが可能である。
【0061】
一方、図8(b)は、通常の製膜原液の屈折率とは異なる屈折率を有する製膜原液を供給ラインを介して吐出手段40に供給する際に動作する異常検出装置の例を示している。供給ライン中を流れる製膜原液の屈折率が通常の製膜原液の屈折率と異なるため、出光部302か放出された光の屈折の度合いが変わり、受光部303が受光する光の量も減少する。また、この減少は、上述した気泡や異物の混入等と異なり、一時的なものではなく、異なる製膜原液が供給されている間は定常的に減少したままの状態となる。従って、受光部303が受光する光の量をモニターすることで、その測定値の挙動から、気泡や異物の混入等による製膜原液の異常の検知だけでなく、供給ライン中を流れる製膜原液の種類等についてもモニターすることが可能となる。第6の実施形態においても、光ファイバセンサからの出力電圧やこれに基づく異常の検知方法については他の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、これらの実施形態を適宜組み合わせ、複数の光ファイバセンサを用いた異常検出装置を構成することも可能である。例えば、第1の実施形態と第6の実施形態とを組み合わせて、2つの光ファイバセンサを用い、第1の光ファイバセンサについて、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303とを結ぶ線が供給ライン305の直線的に延びる管の部分の長手方向軸線に対して垂直となるように、出光部302と受光部303を配置し、第2の光ファイバセンサについて、光ファイバユニット301の出光部302と受光部303とを結ぶ線が供給ライン305の直線的に延びる管の部分の長手方向軸線に対して傾斜するように出光部302と受光部303を配置するようにしてもよい。この場合、第1の光ファイバセンサによる測定で、製膜原液中の異常を検知し、第2の光ファイバセンサによる測定で、製膜原液の種類を検知するように、その役割を分担させることが好ましい。
【0063】
本発明によると、中空糸膜の製造に用いられる製膜原液への異物や気泡の混入といった、様々な異常を的確に検知することができるため、製膜原液に異常が生じた場合、製品となる中空糸膜に異常が生じる前に製品としての採取を中止し、製膜原液に異常が検知されなくなった後、検知部から製品採取部までの製膜原液の工程滞在時間の経過を待ってから、製品採取を再開することが可能である。また、異常が検知された時点から製膜原液の吐出量を増やし、異常が検知されなくなるまで製膜原液の置換作業を行い、製膜原液に異常が検知されなくなった時点から通常条件に戻す、といった工程復帰操作も可能となり、工程の停止/再起動に伴う条件安定化のロスを抑えることも可能となる。さらに、前述のような処置を行なっても製膜原液の異常が継続する場合は、突発的な原因に起因する製膜原液の異常ではなく、設備や原材料に関わる大きなトラブルや根本的な問題に起因することが疑われるため、製造工程を停止して工程をチェックすることで、工程ロスを最小限に抑えることが可能となる。
【0064】
また、本発明の用途は中空糸膜の製膜原液の異常検知のみに限定されるものではなく、例えば、アクリル繊維、アセテート繊維の紡糸原液などの供給ラインでの異常検知に使用しても良い。また、溶融紡糸で製造されるポリエステル、ナイロン等の溶解した原料の供給ラインでの異常検知に使用しても良い。
【符号の説明】
【0065】
10 原液調製手段
20 原液貯留部
30 異常検知装置
301 光ファイバユニット
302 出光部
303 受光部
304 異常検知部
305 供給ライン
306 反射型光ファイバセンサ
307 出光部
308 受光部
40 吐出手段
50 凝固浴部
60 洗浄部
70 分解部
80 乾燥部
90 巻取部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8