【実施例】
【0082】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例によって制限されるものではない。
【0083】
実施例で用いる可溶性置換基およびアントラセン中間体の合成例を下記に記載する。
【0084】
<合成例1>
[化合物中間体の合成1]
【0085】
[化合物1の合成]
【0086】
【化8】
【0087】
500mLのビーカーに1,2,3,4−テトラヒドロ−6−アミノナフタレン(Aldrich製、10g,65.3mmol)と15%HCl(60mL)を入れ、氷冷却下5℃以下を維持しながら、亜硝酸ナトリウム水溶液(5.41g,78.36mmol in Water 23mL)を徐々に滴下した。
滴下終了後、そのままの温度で1時間攪拌し、ヨウ化カリウム水溶液(13.0g,78.36mmol in Water 50mL)を一度に加え、氷浴を外し3時間攪拌し、その後60℃で窒素の発生が収まるまで1時間加熱した。
室温まで冷却した後、反応溶液をジエチルエーテルで3回抽出した。有機層を5%チオ硫酸ナトリウム水溶液(100mL×3回)で洗浄し、さらに飽和食塩水(100mL×2回)で洗浄した。さらに、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾液を濃縮することで赤色のオイルを得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン)にて精製することにより、無色のオイルとして化合物1を得た。(収量 12.0g,収率 71.2%)
以下に化合物1の分析結果を示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):1.73−1.81(m,4H),2.70(quint,4H,J=4.85Hz),6.80(d,1H,J=8.0Hz),7.38(dd,1H,J
1=8.0Hz J
2=1.75Hz),7.41(s,1H)
質量分析(GC−MS):m/z=258(M+)(実測値);258.099(分子量理論値)
【0088】
[化合物2の合成]
J.Org.Chem.1999,64,9365−9373に記載の方法を応用して、目的化合物2の合成を行なった。
【0089】
【化9】
【0090】
100mLの丸底フラスコに化合物2(3.1g,12mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(59mg,0.36mmol)、四塩化炭素(50mL)、N−ブロモスクシンイミド(4.7g,26.4mmol)を入れ、アルゴンガスで置換を行なった後、穏やかに80℃に加熱し、そのまま1時間攪拌し、室温まで冷却した。沈殿を濾過し、濾液を減圧下で濃縮することで、薄黄色の固体として化合物2を得た。(収量 4.99g,収率 100%)
これ以上精製することなく次の反応に用いた。
以下に化合物2の分析結果を示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):2.31−2.41(m,2H),2.70−2.79(m,2H),5.65(t,2H,J=2.0Hz),7.24−7.28(m,2H),7.31−7.34(m,2H)
質量分析(GC−MS):m/z=416(100.0%),414(51.4%),418(48.6%)(実測値);415.891(分子量理論値)
【0091】
[化合物3の合成]
【0092】
化合物1の合成において、1,2,3,4−テトラヒドロ−6−アミノナフタレンの代わりに、1,2,3,4−テトラヒドロ−5−アミノナフタレンを用いて同様に1,2,3,4−テトラヒドロ−5−ヨードナフタレンを合成した。化合物2の合成において、化合物1の代わりに、1,2,3,4−テトラヒドロ−5−ヨードナフタレンを用いた以外は同じ方法で化合物3の合成を行った。
【0093】
【化10】
1H NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):2.72−2.76(m,2H),2.81−2.85(m,2H),5.53−5.54(m,H),5.60−5.62(m,H),6.95−6.99(m,H),7.35(d,H,J=7.8Hz),7.83(d,H,J=7.8Hz)
質量分析(GC−MS):m/z=416(100.0%),414(51.4%),418(48.6%)(実測値);415.891(分子量理論値)以上の分析結果より、合成した物が化合物3の構造と矛盾がないことを確認した。
【0094】
[化合物4の合成]
【0095】
【化11】
【0096】
100mLの丸底フラスコにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド5水和物(3.62g,20mmol)、ヘキサン酸(2.51mL,20mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMF,30mL)を入れ、アルゴン置換した後、室温で2.5時間攪拌した。そこへ、化合物2(4.16g,10mmol)を加え、さらに室温で16時間攪拌した。反応溶液を酢酸エチル100mLで希釈し、純水200mLを加え、有機層を分離した。水層は酢酸エチル30mLで4回抽出し合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、オレンジ色のオイルを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン→酢酸エチル/トルエン(5/95,v/v))にて精製することにより、無色のオイルとして化合物4を得た。(収量 2.44g,収率 50.2%)
以下に化合物4の分析結果を示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):0.87−0.90(m,6H),1.24−1.34(m,8H),1.60−1.67(m,4H),1.90−1.94(m,2H),2.23−2.34(m,6H),5.98(d,2H,J=3.5Hz),7.06(d,2H,J=8.0Hz),7.63−7.66(m,2H)
質量分析(GC−MS):m/z=486(M+)(実測値);486.384(分子量理論値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物4の構造と矛盾がないことを確認した。
【0097】
[化合物5の合成]
【0098】
【化12】
【0099】
100mLの丸底フラスコにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド5水和物(6.8g,37.5mmol)、ヘキサン酸(4.7mL,37.5mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMF,60mL)を入れ、アルゴン置換した後、室温で2.5時間攪拌した。そこへ、化合物3(6.24g,15mmol)を加え、さらに室温で16時間攪拌した。反応溶液を酢酸エチル100mLで希釈し、純水200mLを加え、有機層を分離した。水層は酢酸エチル30mLで4回抽出し合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、オレンジ色のオイルを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン→酢酸エチル/トルエン(5/95,v/v))にて精製することにより、無色のオイルとして化合物5を得た。(収量 2.00g,収率 27.0%)
以下に化合物5の分析結果を示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):0.86−0.89(m,6H),1.25−1.35(m,8H),1.58−1.62(m,4H),1.63−1.69(m,2H),1.94−1.96(m,2H),2.24−2.38(m,4H),5.89(t,H,J=2.9Hz),6.00(t,H,J=2.9Hz),7.04−7.07(m,H),7.36(d,H,J=8.0Hz),7.89(d,H,J=8.0Hz)
質量分析(GC−MS):m/z=486(M+)(実測値);486.384(分子量理論値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物5の構造と矛盾がないことを確認した。
【0100】
<合成例2>
[化合物中間体の合成2]
[化合物6の合成]
【0101】
下記反応式(スキーム)に従って化合物6を合成した。
【0102】
【化13】
【0103】
上記式中、出発原料の6−アミノ−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ナフタレノンはSIGMA Aldrich社より購入したものをそのまま用いた。
【0104】
500mLのビーカーに6−アミノ−3,4−ジヒドロ−1(2H)−ナフタレノン(20g、119.0mmol)と15% HCl(96mL)を入れ、氷冷却下5℃以下を維持しながら、亜硝酸ナトリウム水溶液(9.9g、143.0mmol+水42mL)を徐々に滴下した。滴下終了後、そのままの温度で30分間攪拌し、ヨウ化カリウム水溶液(23.7g、143.0mmol+水77mL)を一度に加え、氷浴を外し2.5時間攪拌し、その後60℃で窒素の発生が収まるまで0.5時間加熱した。室温まで冷却した後、反応溶液をジエチルエーテルで3回抽出した。有機層を5%チオ硫酸ナトリウム水溶液(100mL×3回)で洗浄し、さらに飽和食塩水(100mL×2回)で洗浄した。
さらに、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾液を濃縮することで赤色のオイルを得た。
これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=9/1)にて精製することにより、淡橙色の固体を得た。さらに、2−プロパノールより再結晶することにより、淡橙色の結晶として化合物6を得た(収量 11.4g、収率 35.2%)。
以下に化合物6の分析結果を示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):2.13(quint,2H,J=5.7Hz),2.64(t,2H,J=6.3Hz),2.92(t,2H,J=6.0Hz),7.66(d,1H,J=8.0Hz),,7.67(s,1H),7.72(d,1H,J=8.0Hz)
融点:74.0−75.0°C
質量分析(GC−MS):m/z=272(M+)(実測値);272.082(分子量計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物6の構造と矛盾が無いことを確認した。
【0105】
[化合物7の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物7を合成した。
【0106】
【化14】
【0107】
200mLの丸底フラスコに化合物6(4.1g、15mmol)、メタノール(100mL)を入れ、氷冷下0℃にて、水素化ホウ素ナトリウム(850mg、22.5mmol)を徐々に加え、0℃のまま3時間攪拌した。過剰の水素化ホウ素ナトリウムを希塩酸で中和し、飽和食塩水を加えて、酢酸エチル(50mL)で5回抽出を行った。抽出液を塩化アンモニウム(100mL)で1回、続けて食塩水(100mL)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた。濾液を濃縮し、淡赤色の固体として、化合物7を得た(収量 3.93g、収率 95.5%)。
これ以上精製することなく、このまま次の反応に用いた。
以下に化合物7の分析結果を示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):1.71(d,1H,J=5.8Hz),1.84−2.02(m,4H),2.65−2.71(m,1H,),2.75−2.81(m,1H,),4.72(d,1H,J=4.6Hz),7.17(d,1H,J=8.0Hz),,7.47(s,1H),7.52(d,t1H,J
1=8.0Hz,J
2=1.2Hz)
質量分析(GC−MS):m/z=274(M+)(実測値);274.098(分子量計算値)
融点:82.0−84.0℃
以上の分析結果から、合成したものが、化合物7の構造と矛盾がないことを確認した。
【0108】
[化合物8の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物8を合成した。
【0109】
【化15】
【0110】
50mLの丸底フラスコに化合物7(3.70g、13.5mmol)、N,N−ジメチルアミノピリジン(以下、DMAP、10mg)を入れ、アルゴンガスで置換した後、脱水ピリジン(8.1ml)、無水酢酸(6.2ml)を加えて、室温で6時間攪拌した。
反応溶液に水50mlを加えて、酢酸エチル(20ml)で5回抽出し、合わせた有機層を希塩酸(100ml)で3回、続けて飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100ml)で2回洗浄し、最後に飽和食塩水(100ml)で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、褐色の液体として化合物8を得た(収量 4.28g、収率 100%)。
これ以上精製することなく、このまま次の反応に用いた。
以下に化合物8の分析結果を示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):1.76−1.83(m,1H,),1.89−2.10(m,1H),2.07(s,3H),2.67−2.73(m,1H,),2.79−2.84(m,1H,),5.93(t,1H,J=5.2Hz),7.01(d,1H,J=8.6Hz),7.49(d,1H,J=2.3Hz),7.52(s,1H)
質量分析(GC−MS):m/z=316(M+)(実測値);316.135(分子量計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物8の構造と矛盾がないことを確認した。
【0111】
[化合物9の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物9を合成した。
【0112】
【化16】
【0113】
100mLの丸底フラスコに化合物8(4.27g、13.5mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBN,25mg)、四塩化炭素(100mL)、N−ブロモスクシンイミド(以下NBS,2.64g、14.8mmol)を入れ、アルゴンガスで置換を行なった後、穏やかに80℃に加熱し、そのまま1時間攪拌し、室温まで冷却した。沈殿を濾過し、濾液を減圧下で濃縮することで、薄黄色の固体を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=8/2)にて精製することにより、淡赤色のオイルとして化合物9を得た(収量 4.9g、収率 92.0%)。化合物(5)はシス体とトランス体の10:7の混合物として得られた。
以下に化合物9の分析結果を示す。
精密質量分析(LC−TofMS):m/z=393.9028(100.0%),395.9082(実測値);393.9065(100.0%),395.9045(97.3%) (理論値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物9の構造と矛盾が無いことを確認した。
【0114】
[化合物10の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物10を合成した。
【0115】
【化17】
【0116】
500mLの丸底フラスコに化合物9(4.2g、10.6mmol)を入れアルゴンガスで置換した後、THF(300mL)を入れ、氷冷下0℃で、ナトリウムメトキシド−メタノール溶液(25wt%、24mL)を加えて、そのままの温度で6時間攪拌した。
水(300mL)を加えて、酢酸エチル(100mL)で4回抽出し、飽和食塩水(100mL)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾液を濃縮することで褐色の液体を得た。これをカラム精製することにより、無色の結晶として化合物10を得た(収量 1.2g、収率 41.0%)。
以下に化合物10の分析結果を示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):1.70(d,1H,J=3.4Hz),2.58−2.61(m,2H),4.76(q,1H,J=6.3Hz),6.04(q,1H,J=5.2Hz),6.47(d,1H,J=9.8Hz),7.13(d,1H,J=8.1Hz),7.47(d,1H,J=1.7Hz),7.57(J
1=8.1Hz J
2=1.7Hz)
質量分析(GC−MS):m/z=272(M+),254(M+−H
2O)(実測値);272.082(分子量計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物10)の構造と矛盾がないことを確認した。
【0117】
[化合物(11−1)の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物(11−1)を合成した。
【0118】
【化18】
【0119】
50mLの丸底フラスコに化合物10(680mg、2.5mmol)、DMAP(15.3mg、0.125mmol)、を入れアルゴンガスで置換した後、ピリジン(15mL)を加えて、氷冷下0℃にて、ヘキサノイルクロライド(370mg、2.75mmol)を滴下し、そのままの温度で3時間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチル(50mL)で3回抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、褐色の液体を得た。酢酸エチル/ヘキサン(95/5)に液体を溶解させ、厚さ3cmのシリカゲルパッドを通し、濾液を濃縮することで無色の液体として化合物(11)を得た(収量 560g、収率 60.5%)。
以下に化合物(11)の分析結果を示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):0.86(t,3H,J=7.2Hz),1.21−1.30(m,4H),1.54−1.60(m,2H),2.23(td,2H,J
1=7.5Hz J
2=2.3Hz),2.58−2.62(m,2H),5.95(t,1H,J=5.2Hz),6.03(quint,1H,J=4.6Hz),6.48(d,1H,J=9.8Hz),7.10(d,1H,J=8.0Hz),7.48(d,1H,J=1.7Hz),7.54(dd,1H,J1=8.0Hz,J2=1.8Hz)
質量分析(GC−MS):m/z=370(M+)、254(M+−C5H11COOH)(実測値);370.225(分子量計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物(11)の構造と矛盾がないことを確認した。
【0120】
[化合物12の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物12を合成した。
出発原料の1−シクロヘキセニル トリフルオロメタンスルホン酸エステルはAldrichより購入したものを用いて、化合物2の合成と同様にジブロモ化を行い3,6−ジブロモ−1−シクロヘキセニル トリフルオロメタンスルホン酸エステルを得、それを次の反応に精製することなくそのまま用いた。
【0121】
【化19】
【0122】
100mLの丸底フラスコにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド5水和物(1.81g,10mmol)、ヘキサン酸(1.25mL,10mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMF,30mL)を入れ、アルゴン置換した後、室温で2.5時間攪拌した。そこへ、3,6−ジブロモ−1−シクロヘキセニル トリフルオロメタンスルホン酸エステル(1.8g,4.5 mmol)を加え、さらに室温で16時間攪拌した。
反応溶液を酢酸エチル100mLで希釈し、純水200mLを加え、有機層を分離した。
水層は酢酸エチル30mLで4回抽出し合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、続けて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾液を濃縮し、オレンジ色のオイルを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン→酢酸エチル/ヘキサン(5/95,v/v))にて精製することにより、無色のオイルとして化合物12を得た。(収量900 mg,収率 43.2%)
以下に化合物12の分析結果を示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3,TMS,δ):0.90(t,J=7.5Hz,6H),1.26−1.37(m,8H),1.60−1.67(m,4H),1.76−1.92(m,2H),1.96−2.08(m,2H),2.29−2.36(m,4H),5.48(q,1H,J=4.6Hz),5.51(t,1H,J=4.6Hz),6.12(d,J=5.2Hz,1H)
精密質量分析(LC−TofMS):m/z=458.1507(実測値),225.9980(M+−2C
5H
11COOH);458.1586,225.9910(理論値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物12の構造と矛盾がないことを確認した。
【0123】
[化合物13の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物13を合成した。
既知の1,5−シクロヘキサジエニル トリフルオロメタンスルホン酸エステルを化合物12と同様にブロモ化し、4−ブロモ−1,5−シクロヘキサジエニル トリフルオロメタンスルホン酸エステルを合成した。
【0124】
【化20】
【0125】
化合物12と同様に4−ブロモ−1,5−シクロヘキサジエニル トリフルオロメタンスルホン酸エステルの臭素をエステル化し、無色のオイルとして化合物13を得た。(収量 800mg,収率 30%)
精密質量分析(Tof−MS):m/z=342.0766(M+),225.9982(M+ −C
5H
11COOH)(実測値);342.0749(M+),225.9911(M+ −C
5H
11COOH)(理論値)
以上の分析結果から、合成したものが、化合物13の構造と矛盾がないことを確認した。
【0126】
[化合物14の合成]
下記反応式(スキーム)に従って化合物14を合成した。
【0127】
【化21】
【0128】
丸底フラスコに4,4’−ジブロモビフェニル (7.8g,25mmol)、1−ナフチルアミン(8.59g,60mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド(5.77g,60mmol)を取り、容器内をアルゴンガスで置換した後、トルエン(150mL)を加え、ラセミ−BINAP(1.4g,2.25mmol)、酢酸パラジウム(334mg,1.5mmol)を加えて、85℃で16時間加熱攪拌を行った。反応溶液に水を加えて、反応を停止させ、析出した固体を濾取した。固体を、水、メタノールで洗浄した後、真空下で乾燥させた。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)で精製し、淡褐色の結晶として化合物14を得た。
(収量 3.6g、収率 33%)
NMR、質量分析で分析したところ、既知の文献データと一致した。
【0129】
[化合物15の合成]
和光純薬工業より購入した4,4’−Bis(carbazol−9−yl)biphenylを原料とし、下記スキームに従って公知の手法で化合物15を合成した。すなわち、DMF溶液にN−ブロモスクシンイミドを加えて、ブロモ化を行った後、J.Org.Chem.1995,60,7508−7510に記載の石山・宮浦らの手法を適用し、ブロモをボロン酸エステルへと誘導した。
【0130】
【化22】
質量分析(MALDI−TOFMS)で分析したところ、目的物であることが確認された。
【0131】
[化合物16の合成]
化合物14と同様の方法で、化合物16を得た。(収量 4.0g,収率 70%)
【0132】
【化23】
【0133】
[実施例1:アリールアミン化合物 HTL17の合成]
【0134】
【化24】
【0135】
丸底フラスコに、N,N’−Di(1−naphthyl)−4,4’−benzidine(化合物14)(2.4g,5.5mmol)、化合物4(6.4g,13.2mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド(1.37g,14.3mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(50.3mg,0.055mmol),トリtertブチルホスフィン(22.2mg,0.11mmol)を取り、アルゴンガスで容器内を置換し、トルエン(100mL)を加えた。110℃で16時間加熱攪拌を行い、室温に戻した後、水を加えて反応を停止させた。反応溶液に酢酸エチルと水を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機層を水、続けて食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾取した後、溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)で精製し、メタノールで洗浄し、淡黄色の固体としてHTL17を得た。(収量 1.7g,収率 26.8%)
1H NMR(500MHz,CDCl3,TMS,δ):0.802−0.904(m,12H),1.15−1.32(m,12H),1.42−1.48(m,4H),1.58−1.65(m,8H),1.87−1.91(m,4H),2.03−2.35(m,12H),6.21−6.27(m,2H),6.63(t,2H,J=9.2Hz),7.24−7.25(m,2H),7.29−7.36(m,4H),7.44(td,1H,J1=5.3Hz, J2=2.3Hz),7.57−7.75(m,6H)
精密質量分析(MALDI−TOFMS):m/z=1153.4882(M+),689.8550(M+ −4C
5H
11COOH)(実測値);1153.4888(M+),688.8556(M+ −4
5H
11COOH)(分子量計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、それぞれHTL17の構造と矛盾がないことを確認した。
【0136】
[実施例2:アリールアミン化合物HTL18の合成]
【0137】
【化25】
【0138】
実施例1において、化合物4を化合物5に換えた以外は実施例1と同様に行ったところ、淡黄色の固体としてHTL18を収量 1.0g,収率 15.8%で得た。
精密質量分析(MALDI−TOFMS):m/z=1153.4880(M+),689.8559(M+ −4C
5H
11COOH)(実測値);1153.4888(M+),688.8556(M+ −4
5H
11COOH)(分子量計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、それぞれHTL18の構造と矛盾がないことを確認した。
【0139】
[実施例3:アリールアミン化合物HTL20の合成]
【0140】
【化26】
【0141】
実施例1において、化合物4を化合物11に換えた以外は実施例1と同様に行ったところ、淡黄色の固体としてHTL20を収量 0.7g,収率 11.0%で得た。
精密質量分析(MALDI−TOFMS):m/z=1153.4880(M+),689.8549(M+ −4C
5H
11COOH)(実測値);1153.4888(M+),688.8556(M+ −4
5H
11COOH)(分子量計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、それぞれHTL20の構造と矛盾がないことを確認した。
【0142】
[実施例4:アリールアミン化合物HTL33の合成]
【0143】
【化27】
【0144】
実施例1において、化合物14を化合物16に換えた以外は実施例1と同様に行ったところ、淡黄色の固体としてHTL33を収量 1.08g,収率 56.8%で得た。
精密質量分析(MALDI−TOFMS):m/z=1317.6911(M+),853.0589(M+ −4C
5H
11COOH)(実測値);1317.6914(M+),853.0583(M+ −4
5H
11COOH)(分子量計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、それぞれHTL33の構造と矛盾がないことを確認した。
【0145】
[実施例5:アリールアミン化合物HTL34の合成]
【0146】
【化28】
【0147】
丸底フラスコに、化合物15(2.98g,3.0mmol)、化合物12(6.05g,13.2mmol)、リン酸カリウム(8.41g,39.6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(362.0mg,0.396mmol),トリオルトトリルホスフィン(481mg,1.58mmol)を取り、アルゴンガスで容器内を置換し、DMF(100mL)を加えた。85℃で16時間加熱攪拌を行い、室温に戻した後、水を加えて反応を停止させた。反応溶液に酢酸エチルと水を加え、有機層を分離した。水層を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機層を水、続けて食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤を濾取した後、溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル)で精製し、メタノールで洗浄し、淡黄色の固体としてHTL34を得た。(収量 3.1g,収率 60.0%)
精密質量分析(MALDI−TOFMS):m/z=1721.0200(M+),792.3509(M+ −8C5H11COOH)(実測値);1721.0203(M+),792.3504(M+ −8C5H11COOH)(分子量計算値)
以上の分析結果から、合成したものが、それぞれHTL34の構造と矛盾がないことを確認した。
【0148】
[実施例6:アリールアミン化合物の熱分解挙動の観察例1]
実施例1で合成したHTL17の熱分解挙動を、TG−DTA[リファレンスAl
2O
3、窒素気流下(200mL/min)、EXSTAR6000(商品名)、Seiko Instruments Inc.製]を用いて25℃から450℃の範囲を5℃/minのレートで昇温し、観察した。
上記の結果を
図2に示す。なお、
図2において横軸は温度[℃]、縦軸左は重量変化[ug]、縦軸右はDTA信号[uV]である。
図2より、室温から250℃付近にかけて、初期重量から40.0%の重量減少が確認された。これは、ヘキサン酸4分子がHTL17より脱離し、4,4’−ビス[N−(l−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル(α,β−TNB)が生成したと考えられる重量減少量(40.28%)とほぼ一致する。
また、200℃の段階でサンプルを取り出し、精密質量分析を行ったところ、m/z,200℃加熱サンプルの実測値:688.2899に対して、α,β−TNBの理論値:688.2890と精密質量が小数点3桁一致した。
このことから、HTL17は加熱により、ヘキサン酸4分子を分子内より脱離し、α,β−TNBと定量的に変換することが確認された。
この実施例より本発明のアリールアミン化合物は、加熱により溶解基を脱離した構造へと定量的に変換が可能であることが明らかになった。
【0149】
[実施例7:アリールアミン化合物の熱分解挙動の観察例2]
実施例6において、HTL17の代わりに実施例3で合成したHTL20に変えた以外は同様にして、TG−DTAを測定し、その重量減少量と、加熱後のサンプルの分析を行った。
室温から180℃付近にかけて、初期重量から25.1%の重量減少が確認された。これは、ヘキサン酸2分子がHTL20より脱離し、4,4’−ビス[N−(l−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル(α,β−TNB)が生成したと考えられる重量減少量(25.22%)とほぼ一致する。
また、150℃の段階でサンプルを取り出し、精密質量分析を行ったところ、m/z,150℃加熱サンプルの実測値:688.2854に対して、α,β−TNBの理論値:688.2858と精密質量が小数点3桁一致した。
このことから、HTL20は加熱により、ヘキサン酸2分子を分子内より脱離し、α,β−TNBと定量的に変換することが確認された。脱離反応に要する温度はHTL17と比べて低いことが確認された。
【0150】
[実施例8]
実施例6において、HTL17の代わりに実施例2で合成したHTL18に変えた以外は同様にして、TG−DTAを測定し、その重量減少量と、加熱後のサンプルの分析を行った。
実施例6、7と同様に理論値からの重量減少値のずれは−0.12%となった。
また、精密質量分析については理論値と小数点以下3桁が一致した。
このことからHTL18についてもHTL17同様に加熱により構造変換が可能であることがわかった。
【0151】
[実施例9]
実施例6において、HTL17の代わりに実施例4で合成したHTL33に変えた以外は同様にして、TG−DTAを測定し、その重量減少量と、加熱後のサンプルの分析を行った。
実施例6、7と同様に理論値からの重量減少値のずれは−0.16%となった。
また、精密質量分析については理論値と小数点以下3桁が一致した。
このことからHTL33についてもHTL17同様に加熱により構造変換が可能であることがわかった。
【0152】
[実施例10]
実施例6において、HTL17の代わりに実施例5で合成したHTL34に変えた以外は同様にして、TG−DTAを測定し、その重量減少量と、加熱後のサンプルの分析を行った。
実施例6、7と同様に理論値からの重量減少値のずれは−0.18%となった。
また、精密質量分析については理論値と小数点以下3桁が一致した。
このことからHTL34についてもHTL17同様に加熱により構造変換が可能であることがわかった。
【0153】
[実施例11:アリールアミン化合物のインク化(溶解度の評価)1]
実施例1で得られたHTL17をそれぞれトルエン、クロロホルム、2−プロパノール、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(テトラリン(登録商標))、安息香酸エチル(各100mg)に溶け残りが出るまで添加し、溶媒還流下で10分間攪拌し、室温まで冷却し、さらに1時間攪拌し、16時間静置した後、上澄みを0.2μmのPTFEフィルターで濾過して飽和溶液を得た。これを減圧下乾燥させることにより、各溶媒に対する化合物の溶解度を算出した。
【0154】
[実施例12:アリールアミン化合物のインク化(溶解度の評価)2]
実施例11でHTL17に換えてHTL18を用いた以外は同様にして化合物の溶解度を算出した。
【0155】
[実施例13:アリールアミン化合物のインク化(溶解度の評価)3]
実施例11でHTL17に換えてHTL20を用いた以外は同様にして化合物の溶解度を算出した。
【0156】
[実施例14:アリールアミン化合物のインク化(溶解度の評価)4]
実施例11でHTL17に換えてHTL33を用いた以外は同様にして化合物の溶解度を算出した。
【0157】
[実施例15:アリールアミン化合物のインク化(溶解度の評価)5]
実施例11でHTL17に換えてHTL34を用いた以外は同様にして化合物の溶解度を算出した。
【0158】
[比較例1]
実施例11でHTL17に換えて、4,4’−ビス[N−(l−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル(α,β−TNB)を用いた以外は同様にして、化合物の溶解度を算出した。
【0159】
[比較例2]
実施例11でHTL17に換えて、4,4’−テトラキス[N−(l−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル(α−TNB)を用いた以外は同様にして、化合物の溶解度を算出した。
【0160】
[比較例3]
実施例11でHTL17に換えて、9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ナフタレン−2−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン(慣用名NPAPF)を用いた以外は同様にして、化合物の溶解度を算出した。
【0161】
[比較例4]
実施例11でHTL17に換えて、N,N,N’,N’−tetra−biphenyl−4−yl−benzidine(慣用名TBPB)を用いた以外は同様にして、化合物の溶解度を算出した。
【0162】
表4における評価基準は以下のとおりである。
○:溶解度が5wt%以上、
△:1wt%以上5wt%未満、
×:1.0wt%未満、
【0163】
【表4】
【0164】
表4より、全てのアリールアミン化合物について、トルエン、クロロホルム、2−プロパノール、テトラリン、安息香酸エチルなどの種々の溶媒に対して、概ね1.0wt%以上、最大5.0wt%以上という高い溶解性が確認された。これは、骨格中に含まれる溶解性基の寄与が大きいことを示している。本発明のアリールアミン化合物は、高い溶解性を有するので、様々な溶液プロセスに好適な濃度、粘度のインクを調製することが容易である。溶媒極性については、トルエン、テトラリンのような極性の小さい溶媒、クロロホルムのような含ハロゲン系溶媒、2−プロノール、安息香酸エチルのような高極性溶媒を選択できる。また、沸点についても少なくとも60℃から200℃程度の範囲の溶媒を選択することができる。
成膜方法に応じて、極性、沸点など所望の物性を得るために例えば上記溶媒を混合することも効果的だと考えられる。
本発明のアリールアミン化合物は、分子量が1000を超えるような通常の蒸着法では成膜が困難な骨格においても多くの溶媒に対して高い溶解性を有するので、様々な溶液プロセスに好適な濃度、粘度のインクを調製することが容易である。
【0165】
[実施例16:薄膜の作製&評価例1]
実施例1で合成したHTL17をクロロホルムに1.0wt%の濃度になるように溶解させ、0.2μmのフィルターで濾過して溶液を調製した。濃硫酸に24時間付けおき洗浄した膜厚300nmの熱酸化膜を有するN型のシリコン基板上に、調製した溶液をピペットを用いて100μL滴下し、シャーレを被せてそのまま溶媒が乾燥するまで静置し、薄膜を作製した。薄膜観察を偏光顕微鏡および走査型プローブ顕微鏡[コンタクトモード、Nanopics(商品名)、Seiko Instruments Inc.製]によって行ったところ、平滑な連続したアモルファス膜が得られていることが分かった。次に前記薄膜を、アルゴン雰囲気下で180℃で60分間アニール処理した後に、前記と同様にして膜の観察を行った。アニール処理後も変更顕微鏡像で確認したところ、結晶化は生じておらず、アモルファス性の連続した平滑な膜を保っていることが分かった。アニール後の薄膜を、クロロホルムに溶かし出し、精密質量分析を行ったところ、m/z,加熱後の薄膜抽出物の実測値:688.2812に対して、α,β−TNBの理論値:688.2878と精密質量が小数点2桁一致した。このことから、HTL17から製膜された膜が、加熱により、脱離成分を脱離し、二重結合を形成したことで、定量的にアモルファス性のα,β−TNB膜へと変換されていることが分かった。
【0166】
[実施例17:薄膜の作製&評価例2]
実施例16において、HTL17の代わりにHTL20を用いて、アニール温度を135度に変更した以外は同様にして、製膜および膜の観察を行い、膜の質量分析を行った。
アニール処理後も変更顕微鏡像で確認したところ、結晶化は生じておらず、アモルファス性の連続した平滑な膜を保っていることが分かった。アニール後の薄膜を、クロロホルムに溶かし出し、精密質量分析を行ったところ、m/z,加熱後の薄膜抽出物の実測値:688.2855に対して、α,β−TNBの理論値:688.2878と精密質量が小数点2桁一致した。このことから、HTL20から製膜された膜が、加熱により、脱離成分を脱離し、二重結合を形成したことで、定量的にアモルファス性のα,β−TNB膜へと変換されていることが分かった。
【0167】
[比較例5:薄膜の作製&評価例3]
実施例16において、HTL17をα,β−TNBに換えた以外は、同様にして、薄膜を調製し、観察を行ったところ、偏光顕微鏡像において一部結晶化していることが確認された。また、走査型プローブ顕微鏡像において、結晶化により不連続な膜を生じていることが確認された。同様に膜を180℃に加熱し、再度偏光顕微鏡像を確認したところ、さらに結晶化が進んでいることが確認された。
実施例16、17および比較例5より、本発明のアリールアミン化合物は結晶性が低く、有機EL材料に好適なアモルファス性膜を形成しやすいことが分かった。また、加熱変換後に生成する対応する化合物(この場合は、α,β−TNB)を単に溶液として製膜したのでは、結晶性の不連続膜が得られるのみであるが、本発明のアリールアミン化合物を製膜後、加熱処理することで、アモルファス性の連続膜が得られるということも明らかとなった。
【0168】
以下に、本発明のアリールアミン化合物およびその熱変換膜の有機ELデバイスへの応用例を示すが、本発明のアリールアミン化合物の応用用途はこれに限られる物ではない。
【0169】
[実施例18:ELデバイスへの応用例1]
<有機EL素子作成例>
40×40mm角の透明なガラスからなる基板を用意して、公知の洗浄工程により基板面を洗浄した。次に、前記基板の一面にITOを公知の成膜方法により成膜した後ストライプ状にパターニングして、これを陽極(電極)とした。その後、ITO表面をO2プラズマ処理によりクリーニングした。
次に、実施例1で合成したアリールアミン化合物HTL17の1.0wt%THF溶液を用意し、前記基板上にスピンコーティング法により膜厚60nmの膜を塗布した後、乾燥させた。
次に、前記基板を真空装置のチャンバーに入れ、真空蒸着法により、Alq3からなる電子輸送層(60nm)をこの順序で成膜した。次に、真空蒸着法により、メタルマスクを用いて、LiF(膜厚0.25nm)とMgAg(膜厚200nm)をこの順序で積層したストライプ状の陰極(電極)を形成した。
【0170】
<素子の評価>
作製した有機EL素子について、電流密度の電圧依存性、輝度の電圧依存性、発光スペクトルの測定を行い、絶対蛍光量子効率を算出した。
【0171】
[実施例19:応用例2]
実施例18(応用例1)において、HTL17をそれぞれHTL18に換えた以外は同様にして、有機EL素子の作製、素子評価を行った。
【0172】
[実施例20:応用例3]
実施例18(応用例1)において、HTL17をそれぞれHTL20に換えた以外は同様にして、有機EL素子の作製、素子評価を行った。応用例1乃至3の外部量子効率の評価結果を表5に示した。
【0173】
【表5】
【0174】
表5より、本発明のアリールアミン化合物は、溶液法による製膜で良好な特性を示す有機EL素子を作製可能であることが分かる(応用例1乃至3)。