特許第6236874号(P6236874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236874アニオン性ポリマー濃度測定方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236874
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】アニオン性ポリマー濃度測定方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/82 20060101AFI20171120BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G01N21/82
   G01N31/00 V
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-109964(P2013-109964)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-228467(P2014-228467A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】森 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】志村 幸祐
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−038462(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/132844(WO,A1)
【文献】 特開2006−029989(JP,A)
【文献】 特開平11−319885(JP,A)
【文献】 特開昭63−015161(JP,A)
【文献】 特開2005−156332(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/108576(WO,A1)
【文献】 特開昭59−087366(JP,A)
【文献】 特開2008−096190(JP,A)
【文献】 特開2011−092104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/75−83
G01N 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系中のアニオン性ポリマーの濃度を測定する方法であって、
予めキレート剤の水溶液を封入した測定セルへ水系から採取した検水を注入後、第四級アンモニウム塩の水溶液を添加し、攪拌してアニオン性ポリマーと反応させて白濁を生じさせ、波長が400〜900nmのいずれかの可視光線の透過率又は吸光度を測定してアニオン性ポリマーの濃度を測定することを特徴とするアニオン性ポリマーの濃度測定方法。
【請求項2】
アニオン性ポリマーがアクリル酸系重合体又は共重合体、マレイン酸系重合体又は共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のアニオン性ポリマーの濃度測定方法。
【請求項3】
予めキレート剤を封入した測定セルと、
該測定セルの吸光度又は透過率を測定する光学測定部と、
該光学測定部からの信号を受けて演算するデータ処理部と、
該データ処理部で得られた結果を表示する表示部と、
を含む持ち運び可能な、水系中におけるアニオン性ポリマーの濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水系やボイラー等の蒸気発生設備を備える水系中に添加された水処理用アニオン性ポリマーの該水中における濃度を測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系やボイラー等の蒸気発生設備を備える水系のスケール、腐食、及び汚れ防止等、水処理の目的のためにアクリル酸重合体、アクリル酸共重合体、マレイン酸重合体、マレイン酸共重合体等のアニオン性ポリマーが添加される。アニオン性ポリマーは高性能なスケール防止剤であるが、スケール防止能を十分に発揮させるためには、対象水系中のアニオン性ポリマーの濃度管理が極めて重要である。このようなアニオン性ポリマーの水中濃度を測定する方法として、特許文献1に、水系から検水を採取後、試薬を添加してアニオン性ポリマーと反応させて白濁を生じさせ、波長が400〜900nmのいずれかの可視光線を照射して比濁することができる持ち運び可能な測定装置を用いて測定する方法が記載されている(特許文献1の請求項1)。特許文献1では、この持ち運び可能な測定装置は、蓋付き測定セルと、前記測定セルを装着できる開口部と、該開口部の側面に設けられた可視光の照射部と、その透過光又は反射光を受ける受光部とからなる光学測定部と、該光学測定部を覆って遮光できる遮光キャップと、該光学測定部からの電気信号を受けて演算するデータ処理部と、データ処理部で得られた結果を表示する表示部から構成されている(同、請求項5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−38462
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたアニオン性ポリマーの測定方法においては、正確な測定を行うためには複数の試薬と検水の正確な量の分取が必要である。また、各操作間で行う攪拌が不十分な場合は、検水がアニオン性ポリマー成分を含んでいなくても、試薬同士が互いに高濃度で接触した結果、白濁を生じ、測定結果に正の誤差を与えることがあった。
【0005】
本発明は、水中のアニオン性ポリマーの濃度を容易かつ精度よく測定することができるアニオン性ポリマー濃度の測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアニオン性ポリマーの濃度測定方法は、水系中のアニオン性ポリマーの濃度を測定する方法であって、予めキレート剤の水溶液を封入した測定セルへ水系から採取した検水を注入後、第四級アンモニウム塩の水溶液を添加し、攪拌してアニオン性ポリマーと反応させて白濁を生じさせ、波長が400〜900nmのいずれかの可視光線の透過率又は吸光度を測定してアニオン性ポリマーの濃度を測定することを特徴とする。
【0007】
アニオン性ポリマーとしては、アクリル酸系重合体又は共重合体、マレイン酸系重合体又は共重合体などが例示される。
【0008】
本発明のアニオン性ポリマーの濃度測定装置は、予めキレート剤の水溶液を封入した測定セルと、該測定セルの吸光度又は透過率を測定する光学測定部と、該光学測定部からの信号を受けて演算するデータ処理部と、データ処理部で得られた結果を表示する表示部と、を含む持ち運び可能な、水系中におけるアニオン性ポリマーの濃度測定装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、予めキレート剤の水溶液を測定セルに封入してあるので、測定現場でセルに注入する操作は、検水の注入操作と、第四級アンモニウム塩の水溶液の注入操作の2操作だけとなる。このため、アニオン性ポリマーの濃度を容易に測定することができる。また、測定セルに規定濃度のキレート剤の水溶液を規定量封入しておくことにより、アニオン性ポリマーの濃度を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例の測定結果を示すグラフである。
図2】比較例の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のアニオン性ポリマー濃度測定方法では、予めキレート剤の水溶液を封入した測定セルへ水系から採取した検水を注入後、第四級アンモニウム塩を添加し、攪拌してアニオン性ポリマーと反応させて白濁を生じさせ、波長が400〜900nmのいずれかの可視光線の透過率又は吸光度を測定してアニオン性ポリマーの濃度を測定する。
【0012】
本発明方法は、水中のアニオン性ポリマーが、第四級アンモニウム塩と反応し、定量的に水中に不溶性物質が生成し、試料水が白濁する現象を利用したものであり、その白濁の程度からアニオン性ポリマーの濃度を知ることに基礎を置いている。
【0013】
本発明におけるアニオン性ポリマーは、分子中に複数のカルボキシル基、ないしスルホン酸基を有する分子量500以上の水溶性高分子化合物であり、水系における腐食防止、スケール防止を主たる目的に加えられているものである。アニオン性ポリマーの例としては、アクリル酸の単一又は共重合体、マレイン酸の単一又は共重合体、イタコン酸の単一又は共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の単一又は共重合体、アリルヒドロキシプロパンスルホン酸の単一又は共重合体等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0014】
測定対象となる検水中のアニオン性ポリマー濃度は0.1〜500mg/L、特に1〜50mg/L程度が好適である。
【0015】
測定対象とされる試料水は、アニオン性ポリマー以外に腐食防止、スケール防止、スライムコントロール剤等を含んでもよい。
【0016】
本発明で用いるキレート剤は、試料水に共存する金属イオンが第四級アンモニウム塩とアニオン性高分子電解質との定量的反応を妨害するのをマスキングするとともに、第四級アンモニウム塩とアニオン性高分子電解質との沈殿反応に影響を及ぼし、アニオン性高分子電解質の高濃度域での検量線の直線性を確保するためのものである。キレート剤を塩として添加することにより反応時のpH緩衝剤として作用させることもできる。キレート剤としてはエチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)、ニトリロ三酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩等のアミノカルボン酸類、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩等のヒドロキシ酸類が使用できるが、これらは単独ないし2種以上組み合わせて使用してもよい。ここでいう塩とはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等である。
【0017】
セル内に封入するキレート剤水溶液の濃度は、100〜10000mg/L特に1000〜5000mg/L程度が好ましい。
【0018】
本発明では、キレート剤水溶液を封入しておくセルとしてはポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどの合成樹脂製のものが好ましい。セルは、取り外し可能なシール蓋を備えており、測定に際してはこのシール蓋を取り外して検水等をセル中に添加することが好ましい。
【0019】
このような合成樹脂製セルとしては市販品を用いることができる。市販のセルとしては、ポリスチレン製、光路長10mm、光路幅10mm、高さ45mm、外幅12.5mmのものがある。このセルに1〜3mL程度のキレート剤水溶液を注入した後、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどよりなる蓋をセル上端面にポリエステル製の熱接着フィルムによって気密に付着させてキレート剤水溶液を封入する。
【0020】
このセルに検水を注入する場合、注入後のセル内の水面高さが20〜40mmとなるように注入することが好ましい。
【0021】
セルに検水を注入した後、第四級アンモニウム塩の水溶液をセルに添加する。本発明で用いる第四級アンモニウム塩は、アニオン性ポリマーと定量的に反応して安定な白濁を生じるものであればいかなるものでもよいが、好ましくは炭素数が12以上の第四級アンモニウム塩である。第四級アンモニウム塩の具体的な例として、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルジベンジルアンモニウム塩、アルキルトリベンジルアンモニウム塩、ベンゼトニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩ならびにこれらの誘導体である。第四級アンモニウム塩は分子中に第四級アンモニウム基が2個以上あってもよく、そのような化合物の例として、ポリ〔オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライド〕、ポリジアリルジアルキルアンモニウム塩、ポリ(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩、ポリ(メタ)アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウム塩等がある。また第四級アンモニウム塩の塩としては塩化物、臭化物、沃化物、硫酸塩等である。
【0022】
セルに添加される第四級アンモニウム塩水溶液の濃度は1〜5000mg/L、特に100〜1000mg/L程度が好ましい。
【0023】
本発明で用いるのに好ましい測定装置は、予めキレート剤を封入した蓋付き測定セルと、前記測定セルを装着することができ、かつ、波長が400〜900nmのいずれかの可視光の照射部と、その透過光又は反射光を受ける受光部とからなる光学測定部と、該光学測定部を覆って遮光することができる遮光キャップと、該光学測定部からの電気信号を受けて演算するデータ処理部と、データ処理部で得られた結果を表示する表示部とを含む持ち運び可能なものである。
【0024】
水中のアニオン性ポリマーの濃度を測定したい水系に、この持ち運び可能なアニオン性ポリマー測定装置を持参し、対象水系から採取した検水を、キレート剤を封入した測定セルに注入する。検水の注入量は正確に測定する。
【0025】
次に、該測定セルに第四級アンモニウム塩水溶液を添加し、撹拌する。この撹拌を行うには、セルに蓋を装着し、数回以上振るのが好ましい。
【0026】
アニオン性ポリマーと反応して安定な白濁を生じるに必要な量以上の第四級アンモニウム塩が添加されるように、第四級アンモニウム塩水溶液がセルに添加される。屋外での分析を行う場合には、数十μLの容量で滴下可能な点眼容器を用いることが好ましい。
【0027】
測定対象の比濁度がゼロ点補正を実施しなくても充分なSN比が得られるよう第四級アンモニウム塩水溶液濃度を選択しておけば、第四級アンモニウム塩の水溶液を滴下する前に、測定装置のゼロ補正を実施する必要はない。第四級アンモニウム塩水溶液を添加する前のキレート剤水溶液及び検水の特定波長の可視光の透過率又は吸光度を予め測定し、次いで、第四級アンモニウム塩水溶液を添加した後のセルの透過率又は吸光度を測定し、両者の差から、検水中のアニオン性ポリマーの濃度を算出することができる。
【0028】
用いる波長は、白濁を精度良く捉えられるものならば、400〜900nmの間で任意に選択すれば良い。現在、特定化合物の測定を目的とした固定波長を用いたハンディタイプの簡易測定装置が市販されている。これらのうち、本発明では、残留塩素測定用に波長500〜550nmの可視光を使用した、HACH社製POCKET COLORIMETERIIを使用すれば、簡便に、かつ精度良く実施することができて好ましい。特にコンビナートの大規模水系では、通常スライムコントロール対策として塩素が使用されており、上記装置を用いた塩素濃度は頻繁に測定されている。従って、上記装置を使用すると、セルと試薬を変えるだけで、残留塩素濃度とアニオン性ポリマー濃度を測定することができ、極めて好都合である。
【0029】
本発明に係る測定装置の使用にあたっては、一般的な測定装置と同様に、予め、測定対象のアニオン性ポリマー標準品の濃度を変えて測定し、測定装置の出力(前記装置の場合、指示値と呼ばれる)を得、該アニオン性ポリマーと出力値との関係を表わす検量線を作成しておく。
【0030】
なお、測定時の温度については、常温(10〜30℃程度)で良い。
【0031】
検水中に、アニオン性ポリマーとの白濁反応に影響を与える多価フェノール等の化合物が共存する場合には、当該影響物質を酸化剤等を用いて分解し、影響をなくしてから、アニオン性ポリマー濃度を測定する。
【実施例】
【0032】
[比較例1]
アニオン性ポリマーとしてポリアクリル酸ナトリウムを5,10,15,20mg/Lそれぞれ含むようにした検水を測定セル(ポリスチレン製、光路長10mm、光路幅10mm、高さ45mm、外幅12.5mm)に4mL採取した後、蓋をして数回振った。
【0033】
次いで前記セルをHACH社製POCKET COLORIMETERIIに装着して遮光キャップで光学測定部全体を覆い、波長528nmの可視光を用いて1回目の照射を行ない、ゼロ補正した。次に、キャップを取り、前記セルを取り出して蓋を取り、その中にEDTAを2重量%含む試薬を2mLと、塩化ベンゼトニウムを0.1重量%含む試薬を4mLをそれぞれ加え、蓋をして数回振った。その後、前記装置の光学測定部に再装着し、遮光キャップで覆い、5分間静置して反応させた。その後波長528nmの可視光を照射して吸光度を測定した。測定装置の指示値とポリアクリル酸ナトリウム濃度とをグラフにプロットして検量線を作成した。結果を図2に示す。
【0034】
[実施例1]
ポリスチレン製、光路長10mm、光路幅10mm、高さ45mm、外幅12.5mmの測定セルにEDTA0.7重量%水溶液1.5mLを封入したセルを用いて測定を行った。セルの蓋を取り、比較例1とそれぞれ同一濃度のポリアクリル酸ナトリウム水溶液よりなる検水を1mL添加した後、塩化ベンゼトニウム5重量%水溶液を約20μLスポイトで滴下した。それ以外は比較例1と同様にして測定を行い、測定装置指示値とポリアクリル酸ナトリウム濃度とをグラフにプロットして検量線を作成した。結果を図1に示す。
【0035】
比較例1では、検水と試薬2種類の合計3種類の溶液を採取して比色セルで混合する必要があるが、実施例1では、予めキレート剤水溶液を封入した比色セルに、検水と第四級アンモニウム塩水溶液を添加するだけであるので、秤量時に発生する採水量の不確かさが大幅に低減し、測定精度が向上する。また、測定操作も容易である。
【0036】
一般に、ゼロ点調整(バックグラウンド補正とも言う)を行う理由は、セルの個体差や汚れに起因するものとサンプル自身に起因するもの(バッファーの吸収や不溶物の影響など)を差し引くためである。実施例1は、工業的に製作した合成樹脂製セルを用いることで、セルの個体差や汚れの影響を取り除いている。
【0037】
なお、実施例1で用いた、試薬を封入した比色セルに純水を加えたときの吸光度のバラツキは0.01未満であり、ゼロ点調整は不要であった。
図1
図2