(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タッチパネル用基材上に、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を3〜20質量%含むバインダーポリマーと、少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、光重合開始剤と、メルカプト基又はアミノ基を有するトリアゾール化合物と、を含有する感光性樹脂組成物からなる感光層を設け、当該感光層の所定部分を活性光線の照射により硬化させた後に前記感光層の前記所定部分以外を除去し、前記基材の一部又は全部を被覆する前記感光層の前記所定部分の硬化物からなる保護膜を形成する、保護膜付きタッチパネル用基材の製造方法。
前記光重合性化合物が、ペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、ジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、トリメチロールプロパン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、及びグリセリン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の保護膜付きタッチパネル用基材の製造方法。
支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられた前記感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備える感光性エレメントを用意し、当該感光性エレメントの感光層を前記基材上に転写して前記感光層を設ける、請求項1〜5のいずれか一項に記載の保護膜付きタッチパネル用基材の製造方法。
前記光重合性化合物が、ペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、ジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、トリメチロールプロパン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、及びグリセリン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。特に、本発明の感光性樹脂組成物は、透明性及び防錆性に優れるものであるため、タッチパネル(タッチセンサー)用の基材、特に電極又は配線の形成部位を保護する目的であれば、タッチパネルの構成の変化に寄らず好適に用いることができる。具体的には、タッチパネルの構成がカバーガラス、タッチパネル、液晶パネルの3枚構成から、カバーガラス一体型、オンセル型に変更された際にも、タッチパネル(タッチセンサー)の電極又は配線形成部位を保護する目的であれば好適に用いることができる。
【0039】
本明細書においてタッチパネル用基材の保護膜は、電極を有するセンシング領域、金属配線を有する額縁領域、又はその他の領域に設けることができる。タッチパネル用基材の保護膜は、いずれかの領域のみに設けてもよく、複数の領域に設けてもよい。さらには、センシング領域に形成された電極の一部に設ける等、保護膜を設ける位置及び範囲は、その使用の目的等に応じて適宜選択することが可能である。
【0040】
また、本明細書において、透明性に優れるとは、400〜700nmの可視光を90%以上透過することを意味し、光をある程度散乱しても透明の概念に含まれる。
【0041】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。また、「(ポリ)オキシエチレン鎖」とは、オキシエチレン鎖又はポリオキシエチレン鎖を意味し、「(ポリ)オキシプロピレン鎖」とは、オキシプロピレン鎖又はポリオキシプロピレン鎖を意味する。さらに「(EO)変性」とは、(ポリ)オキシエチレン鎖を有することを意味する。
【0042】
また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0043】
さらに本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0044】
図1は、本発明の感光性エレメントの一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示される感光性エレメント1は、支持フィルム10と、支持フィルム10上に設けられた本発明に係る感光性樹脂組成物からなる感光層20と、感光層20の支持フィルム10とは反対側に設けられた保護フィルム30とからなる。
【0045】
本実施形態の感光性エレメント1は、タッチパネル用基材の保護膜の形成に好適に用いることができる。
【0046】
支持フィルム10としては、重合体フィルムを用いることができる。重合体フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン等からなるフィルムが挙げられる。
【0047】
支持フィルム10の厚さは、被覆性の確保と、支持フィルム10を介して活性光線を照射する際の解像度の低下を抑制する観点から、5〜100μmであることが好ましく、10〜70μmであることがより好ましく、15〜40μmであることがさらに好ましく、20〜35μmであることが特に好ましい。
【0048】
感光層20を構成する本発明に係る感光性樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を3〜20質量%含むバインダーポリマー(以下、(A)成分ともいう)と、少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(以下、(B)成分ともいう)と、光重合開始剤(以下、(C)成分ともいう)と、を含有する。
【0049】
本実施形態において、(A)成分であるバインダーポリマーは、(a1)(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有する重合体である。(A)成分としては、(a1)(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、及び(a2)(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を含有する共重合体が好適である。
【0050】
(a2)(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチルエステルが挙げられる。
【0051】
上記重合体及び上記共重合体は、更に、(a1)成分及び/又は(a2)成分と共重合しうるその他のモノマーを構成単位に含有していてもよい。
【0052】
上記の(a1)成分及び/又は(a2)成分と共重合し得るその他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、スチレン、及びビニルトルエンが挙げられる。(A)成分であるバインダーポリマーを合成する際、上記のモノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
(A)成分における(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量は、(A)成分を構成するモノマーの全質量を基準として、3〜20質量%であるが、防錆性にさらに優れる点では、19質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、17質量%以下であることが更に好ましく、16質量%以下であることが特に好ましい。また、上記含有量は、アルカリ現像性に優れる点では、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。
【0054】
本実施形態においては、(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量が上記範囲内にある(A)成分と、上記条件を満たす(B)成分とを組み合わせて用いることにより、現像性及び基材への密着性を確保しつつ、10μm以下の厚みで充分な防錆性を有する保護膜を形成することができる。よって、本実施形態に係る感光性樹脂組成物によれば、美観と防錆性とを両立できる保護膜を形成することができる。
【0055】
膜特性を考慮した従来の感光性エレメントでは、通常10μmを超える厚みで感光層が形成され、このときの現像性を確保するために感光性樹脂組成物に含まれるバインダーポリマーの(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量を調整することが行われる。現像性を確保する観点から、通常、(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量は20質量%より大きい値に設定される。このような感光性樹脂組成物を用いた場合、電極上に10μm以下の厚みで保護膜を形成すると、充分な防錆性を得ることができなかった。この原因を本発明者らは、10μm以下の薄膜の場合、水分、塩分等の腐食成分が膜内に含まれやすくなり、さらにこの傾向はバインダーポリマーに含まれるカルボキシル基によって大きくなるためと推察する。酸価が低すぎると、充分な現像性又は基材への密着性を確保することが困難となる傾向にあるが、本実施形態においては、適度な(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量を有する上記(A)成分と、防錆性を更に向上させることができる上記(B)成分とを組み合わせることにより、防錆性と現像性とを高水準で両立できると考えられる。
【0056】
(A)成分であるバインダーポリマーの酸価は、次のようにして測定することができる。
すなわち、まず、酸価の測定対象であるバインダーポリマー1gを精秤する。上記精秤したバインダーポリマーにアセトンを30g添加し、これを均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1Nの水酸化カリウム(KOH)水溶液を用いて滴定を行う。測定対象であるバインダーポリマーのアセトン溶液を中和するのに必要なKOHのmg数を算出することで、酸価を求める。バインダーポリマーを合成溶媒、希釈溶媒等と混合した溶液を測定対象とする場合には、次式により酸価を算出する。
酸価=0.1×Vf×56.1/(Wp×I/100)
式中、VfはKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定したバインダーポリマーを含有する溶液の重量(g)を示し、Iは測定したバインダーポリマーを含有する溶液中の不揮発分の割合(質量%)を示す。
なお、バインダーポリマーを合成溶媒、希釈溶媒等の揮発分と混合した状態で配合する場合は、精秤前に予め、揮発分の沸点よりも10℃以上高い温度で1〜4時間加熱し、揮発分を除去してから酸価を測定することもできる。
【0057】
(A)成分であるバインダーポリマーの分子量は、特に制限はないが、塗布性及び塗膜強度、現像性の見地から、通常、重量平均分子量が10,000〜200,000であることが好ましく、30,000〜150,000であることがより好ましく、50,000〜100,000であることが極めて好ましい。なお、重量平均分子量の測定条件は本願明細書の実施例と同一の測定条件とする。
【0058】
(B)成分である、少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタアクリル酸等)を反応させて得られる化合物、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物などが挙げられる。
【0059】
上記少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物は、防錆性に優れる点では、酸価が5mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0060】
本実施形態の感光性樹脂組成物においては、電極腐食の抑制力及び現像容易性の観点から、ペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、ジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、トリメチロールプロパン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、及びグリセリン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物及びトリメチロールプロパン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0061】
ここで、ジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレートとは、ジペンタエリスリトールと、(メタ)アクリル酸とのエステル化物を意味し、当該エステル化物には、アルキレンオキシ基で変性された化合物も包含される。上記のエステル化物は、一分子中におけるエステル結合の数が6であることが好ましいが、エステル結合の数が1〜5の化合物が混合していてもよい。
【0062】
また、上記トリメチロールプロパン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物とは、トリメチロールプロパンと、(メタ)アクリル酸とのエステル化物を意味し、当該エステル化物には、アルキレンオキシ基で変性された化合物も包含される。上記のエステル化物は、一分子中におけるエステル結合の数が3であることが好ましいが、エステル結合の数が1〜2の化合物が混合していてもよい。
【0063】
上記少なくとも3つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物の中でも、電極腐食の抑制力及び現像容易性をより向上させる観点から、アルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート化合物、アルキレンオキサイド変性テトラメチロールメタン(メタ)アクリレート化合物、アルキレンオキサイド変性ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート化合物、アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート化合物、アルキレンオキサイド変性グリセリン(メタ)アクリレート化合物、及びアルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、から選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート化合物及びアルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。
【0064】
上記アルキレンオキサイド変性テトラメチロールメタン(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートを用いることができる。EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートは、RP−1040(日本化薬(株)製)として入手可能である。
【0065】
上記の化合物は、1種を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0066】
本実施形態の感光性樹脂組成物における(A)成分及び(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対し、それぞれ(A)成分が40〜80質量部、(B)成分が20〜60質量部であることが好ましく、(A)成分が50〜70質量部、(B)成分が30〜50質量部であることがより好ましく、(A)成分が55〜65質量部、(B)成分が35〜45質量部であることが更に好ましい。
【0067】
(A)成分及び(B)成分の含有量を上記範囲内とすることにより、塗布性あるいは感光性エレメントでのフィルム性を充分に確保しつつ、充分な感度が得られ、光硬化性、現像性、及び電極腐食の抑制力を充分に確保することができる。
【0068】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記(B)成分以外の光重合性化合物を含有することができる。光重合性化合物として、例えば、上記(B)成分と、一官能モノマー及び二官能モノマーのうちの1種以上とを組み合わせて用いることができる。
【0069】
一官能モノマーとしては、例えば、上記(A)成分のバインダーポリマーの合成に用いられる好適なモノマーとして例示した(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びそれらと共重合可能なモノマーが挙げられる。
【0070】
二官能ビニルモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジ(メタ)アクリレート(即ち、2,2−ビス(4−アクリロキシポリエトキシポリプロポキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、水酸基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート等)と多価カルボン酸(無水フタル酸等)とのエステル化物等が挙げられる。
【0071】
(B)成分である光重合性化合物と、一官能ビニルモノマー又は二官能ビニルモノマーを組み合わせて用いる場合、これらのモノマーの配合割合に特に制限はないが、光硬化性及び電極腐食の抑制力を得る観点から、(B)成分である光重合性化合物の割合が、感光性樹脂組成物に含まれる光重合性化合物の合計量100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、75質量部以上であることが更に好ましい。
【0072】
(C)成分である光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N,N’,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン等のN−フェニルグリシン誘導体;クマリン化合物;オキサゾール化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、形成される保護膜の透明性、及び膜厚を10μm以下としたときのパターン形成能から、オキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物が好ましい。
【0074】
タッチパネルの視認性及び美観を考慮すると、保護膜の透明性はより高いことが好ましい。一方で、透明性が高い薄膜の感光層をパターニングする場合、解像性が低下する傾向にあることを本発明者らは見出している。この原因については、感光層の厚みが小さくなると、基材からの光散乱の影響を受けやすく、ハレーションが発生するためであると本発明者らは考えている。これに対し、(C)成分として、オキシムエステル化合物及び/又はホスフィンオキサイド化合物を含有することによって、充分な解像度でパターン形成が可能となる。
【0075】
なお、上記の効果が得られる理由を、オキシムエステル化合物に含まれるオキシム部位又はホスフィンオキサイド化合物に含まれるホスフィンオキサイド部位が、比較的高い光分解効率を有しつつも僅かな漏れ光では分解しない適度な閾値を有するために、漏れ光による影響が抑制された結果であると、本発明者らは推察する。
【0076】
オキシムエステル化合物としては、下記一般式(C−1)及び一般式(C−2)で表される化合物が挙げられるが、速硬化性、透明性の観点から、下記一般式(C−1)で表される化合物が好ましい。
【0078】
上記一般式(C−1)中、R
1は、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数3〜20のシクロアルキル基を示す。なお、本発明の効果を阻害しない限り、上記一般式(C−1)中の芳香環上に置換基を有していてもよい。
【0079】
上記一般式(C−1)中、R
1は、炭素数3〜10のアルキル基、又は炭素数4〜15のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜8のアルキル基、又は炭素数4〜10のシクロアルキル基であることがより好ましい。
【0081】
上記一般式(C−2)中、R
2は、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、R
3は、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数3〜20のシクロアルキル基を示し、R
4は、炭素数1〜12のアルキル基を示し、R
5は、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を示す。p1は0〜3の整数を示す。なお、p1が2以上である場合、複数存在するR
4はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、カルバゾール上には本発明の効果を阻害しない範囲で置換基を有していてもよい。
【0082】
上記一般式(C−2)中、R
2は炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、エチル基であることが更に好ましい。
【0083】
上記一般式(C−2)中、R
3は炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数4〜15のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数4〜10のシクロアルキル基であることがより好ましい。
【0084】
上記一般式(C−1)で表される化合物としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]等が挙げられる。上記一般式(C−2)で表される化合物としては、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]は、IRGACURE OXE 01(BASF(株)製、商品名)として入手可能である。また、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)は、IRGACURE OXE 02(BASF(株)製、商品名)として商業的に入手可能である。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0085】
上記一般式(C−1)の中でも、特に1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]が極めて好ましい。上記一般式(C−2)の中でも、特にエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)が極めて好ましい。
【0086】
上記ホスフィンオキサイド化合物としては、下記一般式(C−3)及び一般式(C−4)で表される化合物が挙げられる。速硬化性、透明性の観点から、下記一般式(C−3)で表される化合物が好ましい。
【0088】
上記一般式(C−3)中、R
6、R
7及びR
8はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を示す。一般式(C−4)中、R
9、R
10及びR
11はそれぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を示す。
【0089】
上記一般式(C−3)におけるR
6、R
7又はR
8が炭素数1〜20のアルキル基の場合、及び、上記一般式(C−4)におけるR
9、R
10又はR
11が、炭素数1〜20のアルキル基の場合、該アルキル基は直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。また該アルキル基の炭素数は5〜10であることがより好ましい。
【0090】
上記一般式(C−3)におけるR
6、R
7又はR
8がアリール基の場合、及び、上記一般式(C−4)におけるR
9、R
10又はR
11がアリール基の場合、該アリール基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基を挙げることができる。
【0091】
これらの中でも、上記一般式(C−3)におけるR
6、R
7、及びR
8が、アリール基であることが好ましい。また、上記一般式(C−4)におけるR
9、R
10及びR
11が、アリール基であることが好ましい。
【0092】
上記一般式(C−3)で表わされる化合物としては、形成される保護膜の透明性、及び膜厚を10μm以下としたときのパターン形成能から、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドが好ましい。2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドは、例えば、LUCIRIN TPO(BASF(株)社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0093】
(C)成分である光重合開始剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対し、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、2〜5質量部であることが更に好ましい。
【0094】
(C)成分の含有量を上記範囲内とすることにより、光感度が充分となるとともに、活性光線を照射する際に組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が不充分となること、可視光透過率が低下する等の不具合を抑制することができる。
【0095】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、防錆性と現像性を両立する点から、トリアゾール化合物、チアジアゾール化合物、及びテトラゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(以下、(D)成分ともいう)を更に含有することが好ましい。
【0096】
上記トリアゾール化合物としては、ベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−アセトニトリル、ベンゾトリアゾール−5−カルボン酸、1H−ベンゾトリアゾール−1−メタノール、カルボキシベンゾトリアゾール、3−メルカプトトリアゾール等のメルカプト基を含むトリアゾール化合物、3−アミノ−5−メルカプトトリアゾール等のアミノ基を含むトリアゾール化合物が挙げられる。
【0097】
上記チアジアゾール化合物としては、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,1,3−ベンゾチアジアゾール等が挙げられる。
【0098】
上記テトラゾール化合物としては、下記一般式(D−1)で表わされる化合物が挙げられる。
【0099】
上記一般式(D−1)中のR
11及びR
12は、各々独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、アミノ基、メルカプト基、又はカルボキシメチル基を示す。
【0100】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0101】
上記一般式(D−1)で表されるテトラゾール化合物の具体例としては、例えば、1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、1−メチル−5−エチル−テトラゾール、1−メチル−5−メルカプト−テトラゾール、1−カルボキシメチル−5−メルカプト−テトラゾール等が挙げられる。
【0102】
(D)成分としては、上記一般式(D−1)で表されるテトラゾール化合物の水溶性塩を用いることができる。具体例としては、1−カルボキシメチル−5−メルカプト−テトラゾールのナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0103】
(D)成分としては、これらの中でも、電極腐食の抑制力、金属電極との密着性、現像容易性、透明性の観点から、1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、1−メチル−5−メルカプト−1H−テトラゾールが特に好ましい。
【0104】
これらのテトラゾール化合物及びその水溶性塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
また、保護膜を設ける電極表面が銅、銀、ニッケル等の金属を有している場合の現像性を更に向上させる観点から、感光性樹脂組成物は、上記化合物の中でもアミノ基を有するテトラゾール化合物を更に含有することが好ましい。この場合、現像残渣を低減することができ、良好なパターンで保護膜を形成することが容易となる。この理由としては、アミノ基を有するテトラゾール化合物の配合によって、現像液に対する溶解性と金属との密着力のバランスが良好となることが考えられる。
【0106】
アミノ基を有するテトラゾール化合物を含有する場合、上記の効果が得られることから、本実施形態に係る感光性樹脂組成物及び感光性エレメントは、銅などの金属層を形成して導電性を向上させたタッチパネルの額縁領域における電極を保護するための保護膜の形成に好適である。
【0107】
本実施形態の感光性樹脂組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対し、0.05〜10.0質量部とすることが好ましく、0.1〜2.0質量部とすることがより好ましく、0.2〜1.0質量部とすることが更に好ましい。
【0108】
(D)成分の含有量を上記範囲内とすることにより、現像性又は解像度が低下する等の不具合を抑制しつつ、電極腐食の抑制力及び金属電極との密着性を向上させる効果を充分に得ることができる。
【0109】
本実施形態の感光性樹脂組成物には、その他、必要に応じて、シランカップリング剤等の密着性付与剤、レベリング剤、可塑剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、香料、熱架橋剤、重合禁止剤などを(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対し、各々0.01〜20質量部程度含有させることができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0110】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、保護膜を形成したときの400〜700nmにおける可視光線透過率の最小値が90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0111】
ここで、感光性樹脂組成物の可視光透過率は以下のようにして求められる。
まず、支持フィルム上に感光性樹脂組成物を含有する塗布液を乾燥後の厚みが10μm以下となるように塗布し、これを乾燥することにより、感光性樹脂組成物層(感光層)を形成する。次に、ガラス基板上に、感光層が接するようにラミネータを用いてラミネートする。こうして、ガラス基板上に、感光層及び支持フィルムが積層された測定用試料を得る。次に、得られた測定用試料に紫外線を照射して感光層を光硬化した後、得られた保護膜(感光層の硬化物)について、紫外可視分光光度計を用いて、測定波長域400〜700nmにおける透過率を測定する。
【0112】
一般的な可視光波長域である400〜700nmの波長域における透過率の最小値が90%以上であれば、例えば、タッチパネル(タッチセンサー)のセンシング領域の透明電極を保護する場合、タッチパネル(タッチセンサー)の額縁領域の金属層(例えば、ITO電極上に銅層を形成した層など)を保護したときにセンシング領域の端部から保護膜が見える場合等において、センシング領域での画像表示品質、色合い、又は輝度が低下することを充分抑制することができる。
【0113】
また、本実施形態の感光性樹脂組成物は、タッチパネルの視認性を更に向上させる観点から、CIELAB表色系でのb
*が−0.2〜1.0であることが好ましく、0.0〜0.7であることがより好ましく、0.1〜0.5であることが更に好ましい。可視光透過率の最小値が90%以上である場合と同様に、センシング領域の画像表示品質、色合いの低下防止の観点からも、b
*が、−0.2〜1.0であることが好ましい。なお、CIELAB表色系でのb
*は、例えばコニカミノルタ製分光測色計「CM−5」を使用し、厚さ0.7mmのガラス基板に厚みが10μm以下の感光性樹脂組成物層を形成し、紫外線を照射して感光性樹脂組成物層を光硬化した後、D65光源、視野角2°に設定して測定することにより求められる。
【0114】
本発明の感光性樹脂組成物は、タッチパネル用電極を有する基材上に感光層を形成するために用いることができる。たとえば、感光性樹脂組成物を溶媒に均一に溶解又は分散させて得ることのできる塗布液を調製し、基材上に塗布することで塗膜を形成し、乾燥により溶媒を除去することで感光層を形成することができる。
【0115】
溶媒としては、各成分の溶解性、塗膜形成のし易さ等の点から、ケトン、芳香族炭化水素、アルコール、グリコールエーテル、グリコールアルキルエーテル、グリコールアルキルエーテルアセテート、エステル、ジエチレングリコール、クロロホルム、塩化メチレンなどを用いることができる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上の溶媒からなる混合溶媒として用いてもよい。
【0116】
上記溶媒の中でも、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を用いることが好ましい。
【0117】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、本実施形態の感光性エレメント1のように、感光性フィルムに製膜して用いることが好ましい。感光性フィルムを、タッパネル用電極を有する基材100上に積層することにより、ロールツーロールプロセスが容易に実現できる、溶媒乾燥工程が短縮できる等、製造工程の短縮及びコスト低減に大きく貢献することができる。
【0118】
感光性エレメント1の感光層20は、本実施形態の感光性樹脂組成物を含有する塗布液を調製し、これを支持フィルム10上に塗布、乾燥することにより形成できる。塗布液は、上述した本実施形態の感光性樹脂組成物を構成する各成分を溶媒に均一に溶解又は分散することにより得ることができる。
【0119】
溶媒としては、特に制限はなく、公知のものが使用でき、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、クロロホルム及び塩化メチレンが挙げられる。これら溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上の溶媒からなる混合溶媒として用いてもよい。
【0120】
塗布方法としては、例えば、ドクターブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーンコーティング法、スピナーコーティング法、インクジェットコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。
【0121】
乾燥条件に特に制限はないが、乾燥温度は、60〜130℃とすることが好ましく、乾燥時間は、30秒〜30分とすることが好ましい。
【0122】
感光層20の厚みは、基材、電極等の保護に充分な防錆性等の効果を発揮し、かつ部分的な保護膜形成により生じるタッチパネル(タッチセンサー)表面の段差が極力小さくなるよう、乾燥後の厚みで1μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上9μm以下であることがより好ましく、1μm以上8μm以下であることがさらに好ましく、2μm以上8μm以下であることが更に好ましく、3μm以上8μm以下であることが特に好ましい。
【0123】
本実施形態においては、感光層20の可視光透過率の最小値が90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。また、感光層20が、CIELAB表色系でのb
*が−0.2〜1.0となるよう調整されることが好ましく、0.0〜0.7であることがより好ましく、0.1〜0.5であることが更に好ましい。
【0124】
感光層20の粘度は、感光性エレメント1をロール状とした場合に、感光性エレメント1の端面から感光性樹脂組成物がしみ出すことを1カ月以上防止する点及び感光性エレメント1を切断する際に感光性樹脂組成物の破片が基板に付着して引き起こされる活性光線を照射する際の露光不良、現像残り等を防止する点から、30℃において、15〜100mPa・sであることが好ましく、20〜90mPa・sであることがより好ましく、25〜80mPa・sであることが更に好ましい。
【0125】
なお、上記の粘度は、感光性樹脂組成物から形成される直径7mm、厚さ2mmの円形の膜を測定用試料とし、この試料の厚さ方向に、30℃及び80℃で1.96×10
−2Nの荷重を加えたときの厚さの変化速度を測定し、この変化速度からニュートン流体を仮定して粘度に換算した値である。
【0126】
保護フィルム30(カバーフィルム)としては、重合体フィルムを用いることができる。重合体フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体、及びポリエチレン−酢酸ビニル共重合体とポリエチレンとの積層フィルム等からなるフィルムが挙げられる。
【0127】
保護フィルム30の厚さは、5〜100μm程度が好ましいが、ロール状に巻いて保管する観点から、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。
【0128】
感光性エレメント1は、ロール状に巻いて保管し、あるいは使用できる。
【0129】
本発明においては、上述した本実施形態の感光性樹脂組成物及び溶媒を含有する塗布液を、タッチパネル用電極を有する基材上に塗布し、乾燥して、感光性樹脂組成物からなる感光層20を設けてもよい。この用途の場合においても、感光層は上述した、膜厚、可視光線透過率、CIELAB表色系でのb
*の条件を満たすことが好ましい。
【0130】
次に、本発明に係る保護膜付きタッチパネル用基材の製造方法について説明する。
図2は、本発明の保護膜付きタッチパネル用基材の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
【0131】
本実施形態の保護膜付きタッチパネル用基材の製造方法は、タッチパネル用電極110及び120を有するタッチパネル用基材100上に、上記の本実施形態に係る感光性樹脂組成物からなる感光層20を設ける第1工程と、感光層20の所定部分を活性光線の照射により硬化させる第2工程と、活性光線の照射後に感光層20の所定部分以外(感光層の活性光線が照射されていない部分)を除去し、電極の一部又は全部を被覆する感光層の所定部分の硬化物からなる保護膜22を形成する第3工程とを備える。こうして、保護膜付きタッチパネル用基材が得られる。得られる保護膜付きタッチパネル用基材は、保護膜付きタッチパネル用基材を備えるタッチパネル、タッチ入力シートである保護膜22付きタッチパネル200に用いることができる。
【0132】
本実施形態で使用されるタッチパネル用基材100としては、一般にタッチパネル(タッチセンサー)用として用いられる、ガラス板、プラスチック板、セラミック板等の基板が挙げられる。この基板上には、保護膜を形成する対象となるタッチパネル用電極が設けられる。電極としては、ITO、Cu、Al、Mo等の電極、TFTなどが挙げられる。また、基板上には、基板と電極との間に絶縁層が設けられていてもよい。
【0133】
図2に示されるタッチパネル用電極110及び120を有するタッチパネル用基材100は、例えば、以下の手順で得ることができる。PETフィルム等のタッチパネル用基材100上に、ITO、Cuの順にスパッタ法より金属膜を形成した後、金属膜上にエッチング用感光性フィルムを貼り付け、所望のレジストパターンを形成し、不要なCuを塩化鉄水溶液等のエッチング液で除去した後、レジストパターンをはく離除去する。
【0134】
本実施形態の第1工程では、本実施形態の感光性エレメント1の保護フィルム30を除去した後、感光性エレメント1を加熱しながら、基材100のタッチパネル用電極110及び120が設けられている表面に感光層20を圧着することにより転写し、積層する(
図2の(a)を参照)。
【0135】
圧着手段としては、圧着ロールが挙げられる。圧着ロールは、加熱圧着できるように加熱手段を備えたものであってもよい。
【0136】
加熱圧着する場合の加熱温度は、感光層20とタッチパネル用基材100との密着性、並びに、感光層20とタッチパネル用電極110及び120との密着性を充分確保しながら、感光層20の構成成分が熱硬化あるいは熱分解されにくいよう、10〜180℃とすることが好ましく、20〜160℃とすることがより好ましく、30〜150℃とすることが更に好ましい。
【0137】
また、加熱圧着時の圧着圧力は、感光層20と基材100との密着性を充分確保しながら、基材100の変形を抑制する観点から、線圧で50〜1×10
5N/mとすることが好ましく、2.5×10
2〜5×10
4N/mとすることがより好ましく、5×10
2〜4×10
4N/mとすることが更に好ましい。
【0138】
感光性エレメント1を上記のように加熱すれば、基材を予熱処理することは必要ではないが、感光層20と基材100との密着性を更に向上させる点から、基材100を予熱処理することが好ましい。このときの予熱温度は、30〜180℃とすることが好ましい。
【0139】
本実施形態においては、感光性エレメント1を用いる代わりに、本実施形態の感光性樹脂組成物及び溶媒を含有する塗布液を調製して基材100のタッチパネル用電極110及び120が設けられている表面に塗布し、乾燥して感光層20を形成することができる。
【0140】
感光層20は、上述した膜厚、可視光線透過率、CIELAB表色系でのb
*の条件を満たすことが好ましい。
【0141】
本実施形態の第2工程では、感光層20の所定部分に、フォトマスク130を介して、活性光線Lをパターン状に照射する(
図2の(b)を参照)。
【0142】
活性光線を照射する際、感光層20上の支持フィルム10が透明の場合には、そのまま活性光線を照射することができ、不透明の場合には除去してから活性光線を照射する。感光層20の保護という点からは、支持フィルム10として透明な重合体フィルムを用い、この重合体フィルムを残存させたまま、それを通して活性光線を照射することが好ましい。
【0143】
活性光線Lの照射に用いられる光源としては、公知の活性光源が使用でき、例えば、カーボンアーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯及びキセノンランプが挙げられ、紫外線を有効に放射するものであれば特に制限されない。
【0144】
このときの、活性光線Lの照射量は、通常、1×10
2〜1×10
4J/m
2であり、照射の際に、加熱を伴うこともできる。この活性光線照射量が、1×10
2J/m
2未満では、光硬化の効果が不充分となる傾向があり、1×10
4J/m
2を超えると、感光層20が変色する傾向がある。
【0145】
本実施形態の第3工程では、活性光線の照射後の感光層20を現像液で現像して活性光線が照射されていない部分(すなわち、感光層の所定部分以外)を除去し、電極の一部又は全部を被覆する本実施形態の感光層の所定部分の硬化物からなる保護膜22を形成する(
図2の(c)を参照)。形成される保護膜22は所定のパターンを有することができる。
【0146】
なお、活性光線の照射後、感光層20に支持フィルム10が積層されている場合にはそれを除去した後、活性光線が照射されていない部分を現像液により除去する現像が行われる。
【0147】
現像方法としては、アルカリ水溶液、水系現像液、有機溶媒等の公知の現像液を用いて、スプレー、シャワー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像を行い、不要部を除去する方法等が挙げられ、中でも、環境、安全性の観点からアルカリ水溶液を用いることが好ましい。
【0148】
アルカリ水溶液の中でも炭酸ナトリウムの水溶液が好ましい。例えば、20〜50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(0.5〜5質量%水溶液)が好適に用いられる。
【0149】
現像温度及び時間は、本実施形態の感光性樹脂組成物の現像性に合わせて調整することができる。
【0150】
また、アルカリ水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶媒等を混入させることができる。
【0151】
また、現像後、光硬化後の感光層20に残存したアルカリ水溶液の塩基を、有機酸、無機酸又はこれらの酸水溶液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知方法により酸処理(中和処理)することができる。
【0152】
さらに、酸処理(中和処理)の後、水洗する工程を行うこともできる。
【0153】
現像後、必要に応じて、活性光線の照射(例えば、5×10
3〜2×10
4J/m
2)により、硬化物を更に硬化させてもよい。なお、本実施形態の感光性樹脂組成物は、現像後の加熱工程なしでも金属に対して優れた密着性を示すが、必要に応じて、現像後の活性光線の照射の代わりに、又は活性光線の照射と合わせて、加熱処理(80〜250℃)を施してもよい。
【0154】
上述のように、本実施形態の感光性樹脂組成物及び感光性エレメントは、タッチパネル用基材の保護膜形成のための使用に好適である。感光性樹脂組成物の上記使用については溶媒と混合した塗布液を用いて保護膜を形成することができる。
【0155】
また、本発明は、本発明に係る感光性樹脂組成物からなる感光層の硬化物であるタッチパネル用基材の保護膜の形成材料を提供することができる。このタッチパネル用電極の保護膜形成材料は、上述した本実施形態の感光性樹脂組成物を含むことができ、さらに上述した溶媒を含有する塗布液であることが好ましい。
【0156】
次に、
図3、
図4及び
図5を用いて、本発明に係る保護膜の使用箇所の一例を説明する。
図3は、静電容量式のタッチパネルの一例を示す模式上面図である。
図3に示されるタッチパネルは、透明基板101の片面にタッチ位置座標を検出するためのタッチ画面102があり、この領域の静電容量変化を検出するための透明電極103及び透明電極104が基板101上に設けられている。透明電極103及び透明電極104はそれぞれタッチ位置の静電容量の変化を検出し、X位置座標及びY位置座標とする。
【0157】
透明基板101上には、透明電極103及び透明電極104からタッチ位置の検出信号を外部回路に伝えるための引き出し配線105が設けられている。また、引き出し配線105と、透明電極103及び透明電極104とは、透明電極103及び透明電極104上に設けられた接続電極106により接続されている。また、引き出し配線105の透明電極103及び透明電極104との接続部と反対側の端部には、外部回路との接続端子107が設けられている。本実施形態の感光性樹脂組成物は、引き出し配線105、接続電極106及び接続端子107の保護膜122を形成するために好適に用いることができる。この際に、センシング領域(タッチ画面102)にある電極を同時に保護することもできる。
図3では、保護膜122により、引き出し配線105、接続電極106、センシング領域の一部電極及び接続端子107の一部を保護しているが、保護膜を設ける箇所は適宜変更してもよい。例えば、
図4に示すように、タッチ画面102を全て保護するように保護膜123を設けてもよい。
【0158】
図5を用いて、
図3に示したタッチパネルにおいて、透明電極と引き出し配線との接続部の断面構造を説明する。
図5は、
図3に示されるC部分のV−V線に沿った部分断面図であり、透明電極104と引き出し配線105の接続部を説明するための図である。
図5の(a)に示すように、透明電極104と引き出し配線105とは、接続電極106を介して電気的に接続されている。
図5の(a)に示すように、透明電極104の一部、並びに、引き出し配線105及び接続電極106の全部が、保護膜122で覆われている。同様に、透明電極103と引き出し配線105とは、接続電極106を介して電気的に接続されている。なお、
図5の(b)に示すように、透明電極104と引き出し配線105とが直接、電気的に接続されていてもよい。本実施形態の感光性樹脂組成物及び感光性エレメントは、上記構造部分の保護膜形成のための使用に好適である。
【0159】
本実施形態に係るタッチパネルの製造方法について説明する。まず、基材100上に設けられた透明電極101上に、透明電極(X位置座標)103を形成する。続いて、絶縁層(図示せず)を介して、透明電極(Y位置座標)104を形成する。透明電極103及び透明電極104は、透明基材100上に形成した透明電極層を、エッチングする方法等により形成することができる。
【0160】
次に、透明基板101の表面に、外部回路と接続するための引き出し配線105と、この引き出し配線と透明電極103及び透明電極104を接続する接続電極106を形成する。引き出し配線105及び接続電極106は、透明電極103及び透明電極104の形成後に形成してもよく、各透明電極形成時に同時に形成してもよい。引き出し配線105及び接続電極106の形成は、金属スパッタリング後、エッチング法等を用いて形成することができる。引き出し配線105は、例えば、フレーク状の銀を含有する導電ペースト材料を使って、スクリーン印刷法を用いて、接続電極106を形成するのと同時に形成することができる。次に、引き出し配線105と外部回路とを接続するための接続端子107を形成する。
【0161】
上記工程により形成された透明電極103及び透明電極104、引き出し配線105、接続電極106、並びに、接続端子107を覆うように、本実施形態に係る感光性エレメント1を圧着し、上記電極上に感光層20を設ける。次に、転写した感光層20に対し、所望の形状にフォトマスクを介してパターン状に活性光線Lを照射する。活性光線Lを照射した後、現像を行い、感光層20の所定部分以外を除去することで、感光層20の所定部分の硬化物からなる保護膜122を形成する。このようにして、保護膜122を備えるタッチパネル、すなわち保護膜122付きタッチパネル用基材(透明基板101)を備えるタッチパネルを製造することができる。
【0162】
次に、
図6〜
図10を用いて、本発明に係る保護膜の使用箇所を説明する。本発明の保護膜は、例えば、
図7〜
図10の保護膜(絶縁膜)124としても好適に使用することができる。
【0163】
図6は、透明電極(X位置座標)103及び透明電極(Y位置座標)104が同一平面上に存在する静電容量式タッチパネルの一例を示す平面図であり、
図7は、その一部切欠き斜視図である。
図8は、
図7中のVI−VI線に沿った部分断面図である。上記静電容量式タッチパネルは、透明基板101上に、静電容量変化を検出して、X位置座標とする透明電極103と、Y位置座標とする透明電極104とを有する。これらのX、Y位置座標とするそれぞれの透明電極103及び透明電極104には、タッチパネルとしての電気信号を制御するドライバ素子回路(図示せず)の制御回路に接続するための引き出し配線105a及び引き出し配線105bを有する。
【0164】
透明電極(X位置座標)103と透明電極(Y位置座標)104とが交差する部分には、絶縁膜124が設けられている。
【0165】
透明電極(X位置座標)103及び透明電極(Y位置座標)104が同一平面上に存在する静電容量式タッチパネルの製造方法について説明する。
【0166】
静電容量式タッチパネルの製造方法は、例えば、透明導電材料を用いた公知の方法により、透明電極(X位置座標)103と、後にY位置座標を検出する透明電極104となる透明電極の一部を透明基板101上に予め形成した基板を用いてもよい。
図9は、透明電極が同一平面に存在する静電容量式タッチパネルの製造方法の一例を説明するための図であり、(a)は透明電極を備える基板を示す一部切欠き斜視図であり、(b)は得られる静電容量式タッチパネルを示す一部切欠き斜視図である。
図10は、透明電極が同一平面に存在する静電容量式タッチパネルの製造方法の一例を説明するための図である。
【0167】
まず、
図9(a)及び
図10(a)に示されるような、透明電極(X位置座標)103と、透明電極の一部104aとが予め形成された基板を用意し、透明電極103の一部(透明電極の一部104aに挟まれる部分)に絶縁膜124を設ける(
図10の(b))。その後、公知の方法により、導電パターンが形成される。この導電パターンにより透明電極のブリッジ部104bを形成することができる(
図10(c))。この透明電極のブリッジ部104bにより、予め形成された透明電極の一部104a同士を導通することができ、透明電極(Y位置座標)104が形成される。
【0168】
予め形成された透明電極は、例えば、ITO等を用いた公知の方法により形成されてもいてもよい。また、引き出し配線105a,105bは、透明導電材料の他、Cu、Ag等の金属などを用いた公知の方法で形成することが可能である。また、引き出し配線105a,105bが予め形成された基板を用いてもよい。
【実施例】
【0169】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0170】
[バインダーポリマー溶液(A1)の作製]
撹拌機、還流冷却器、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、表1に示す(1)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃に昇温し、反応温度を80℃±2℃に保ちながら、表1に示す(2)を4時間かけて均一に滴下した。(2)の滴下後、80℃±2℃で6時間撹拌を続け、(メタ)アクリル酸由来の構成単位が12質量%、重量平均分子量が約65,000、酸価が78mgKOH/gのバインダーポリマーの溶液(固形分45質量%)(A1)を得た。
【0171】
[バインダーポリマー溶液(A2)の作製]
上記(A1)と同様にし、(メタ)アクリル酸由来の構成単位が17.5質量%、重量平均分子量が約80,000、酸価が115mgKOH/gのバインダーポリマーの溶液(固形分45質量%)(A2)を得た。
【0172】
[バインダーポリマー溶液(A3)の作製]
上記(A1)と同様にし、(メタ)アクリル酸由来の構成単位が24質量%、重量平均分子量が約35,000、酸価が156mgKOH/gのバインダーポリマーの溶液(固形分45質量%)(A3)を得た。
【0173】
[バインダーポリマー溶液(A4)の作製]
上記(A1)と同様にし、(メタ)アクリル酸由来の構成単位が30質量%、重量平均分子量が約45,000、酸価が195mgKOH/gのバインダーポリマーの溶液(固形分45質量%)(A4)を得た。
【0174】
[バインダーポリマー溶液(A5)の作製]
上記(A1)と同様にし、(メタ)アクリル酸由来の構成単位が24質量%、重量平均分子量が約45,000、酸価が155mgKOH/gのバインダーポリマーの溶液(固形分45質量%)(A5)を得た。
【0175】
【表1】
【0176】
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件を以下に示す。
GPC条件
ポンプ:日立 L−6000型((株)日立製作所製、製品名)
カラム:Gelpack GL−R420、Gelpack GL−R430、Gelpack GL−R440(以上、日立化成株式会社製、製品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
試料濃度:NV(不揮発分濃度)50質量%の樹脂溶液を120mg採取、5mLのTHFに溶解
注入量:200μL
圧力:4.9MPa
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI((株)日立製作所製、製品名)
【0177】
[酸価の測定方法]
酸価は、次のようにして測定した。まず、バインダーポリマーの溶液を、130℃で1時間加熱し、揮発分を除去して、固形分を得た。そして、酸価を測定すべきポリマー1.0gを精秤した後、精秤したポリマーを三角フラスコに入れ、このポリマーにアセトンを30g添加し、これを均一に溶解した。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行った。そして、バインダーポリマーのアセトン溶液を中和するのに必要なKOHのmg数を算出することにより、酸価を求めた。
【0178】
(実施例1)
[感光性樹脂組成物を含有する塗布液(V−1)の調製]
表2に示す材料を、攪拌機を用いて15分間混合し、保護膜を形成するための感光性樹脂組成物を含有する塗布液(V−1)を調製した。
【0179】
【表2】
【0180】
[感光性エレメント(E−1)の作製]
支持フィルムとして厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、上記で調製した感光性樹脂組成物及び溶媒を含有する塗布液(V−1)を支持フィルム上にコンマコーターを用いて均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で3分間乾燥して溶媒を除去し、感光性樹脂組成物からなる感光層(感光性樹脂組成物層)を形成した。得られた感光層の厚さは5μmであった。
【0181】
次いで、得られた感光層の上に、さらに、25μmの厚さのポリエチレンフィルムを、カバーフィルムとして張り合わせて、感光性エレメント(E−1)を作製した。
【0182】
[保護膜の透過率の測定]
得られた感光性エレメント(E−1)のカバーフィルムであるポリエチレンフィルムをはがしながら、厚さ1mmのガラス基板上に、感光層が接するようにラミネータ(日立化成株式会社製、商品名HLM−3000型)を用いて、ロール温度120℃、基板送り速度1m/分、圧着圧力(シリンダ圧力)4×10
5Pa(厚さが1mm、縦10cm×横10cmの基板を用いたため、このときの線圧は9.8×10
3N/m)の条件でラミネートして、ガラス基板上に、感光層及び支持フィルムが積層された積層体を作製した。
【0183】
次いで、得られた積層体の感光層に、平行光線露光機(オーク製作所(株)製、EXM1201)を使用して、感光層側上方より露光量5×10
2J/m
2で(i線(波長365nm)における測定値)、紫外線を照射した後、支持フィルムを除去し、厚さ5.0μmの感光層の硬化膜からなる保護膜を有する透過率測定用試料を得た。
【0184】
次いで、得られた試料を日立製作所製、紫外可視分光光度計(U−3310)を使用して、測定波長域400〜700nmで可視光線透過率の最小値を測定した。得られた保護膜の波長400nmにおける透過率は、波長700nmにおいて97%、波長550nmにおいて96%、波長400nmにおいて94%であり、400〜700nmにおける透過率の最小値は94%であり、良好な透過率を確保できていた。
【0185】
[保護膜のb
*の測定]
得られた感光性エレメント(E−1)のカバーフィルムポリエチレンフィルムをはがしながら、厚さ0.7mmのガラス基板上に、感光層が接するようにラミネータ(日立化成株式会社製、商品名:HLM−3000型)を用いて、ロール温度120℃、基板送り速度1m/分、圧着圧力(シリンダ圧力)4×10
5Pa(厚さが1mm、縦10cm×横10cmの基板を用いたため、この時の線圧は9.8×10
3N/m)の条件でラミネートして、ガラス基板上に、感光層及び支持体フィルムが積層された基板を作製した。
【0186】
次いで、得られた感光層に、平行光線露光機(オーク製作所(株)製、EXM1201)を使用して、感光層側上方より露光量5×10
2J/m
2で(i線(波長365nm)における測定値)、紫外線を照射した後、支持体フィルムを除去し、さらに感光層側上方より露光量1×10
4J/m
2で(i線(波長365nm)における測定値)紫外線を照射し、厚さ5.0μmの感光層の硬化膜からなる保護膜を有するb
*測定用試料を得た。
【0187】
次いで、得られた試料をコニカミノルタ(株)製、分光測色計(CM−5)を使用して、光源設定D65、視野角2°でCIELAB表色系でのb
*を測定した。
【0188】
保護膜のb
*は0.44であり、良好なb
*を有していることが確認された。
【0189】
[保護膜の塩水噴霧試験(人工汗液耐性評価試験)]
得られた感光性エレメント(E−1)のカバーフィルムであるポリエチレンフィルムをはがしながら、スパッタ銅付きポリイミドフィルム(東レフィルム加工(株)製)上に、感光層が接するようにラミネータ(日立化成株式会社製、商品名:HLM−3000型)を用いて、ロール温度120℃、基板送り速度1m/分、圧着圧力(シリンダ圧力)4×10
5Pa(厚さが1mm、縦10cm×横10cmの基板を用いたため、この時の線圧は9.8×10
3N/m)の条件でラミネートして、スパッタ銅上に、感光層及び支持フィルムが積層された積層体を作製した。
【0190】
次いで、得られた積層体の感光層に、平行光線露光機(オーク製作所(株)製、EXM1201)を使用して、感光層側上方より露光量5×10
2J/m
2で(i線(波長365nm)における測定値)、紫外線を照射した後、支持フィルムを除去し、さらに感光層側上方より露光量1×10
4J/m
2で(i線(波長365nm)における測定値)紫外線を照射し、厚さ5.0μmの感光層の硬化膜からなる保護膜を有する人工汗液耐性評価用試料を得た。
【0191】
次いで、JIS規格(Z 2371)を参考に、塩水噴霧試験機(スガ試験機(株)製STP−90V2)を用いて、試験槽内に前述の試料を載置し、濃度50g/Lの塩水(pH=6.7)を試験槽温度35℃、噴霧量1.5mL/hで48時間噴霧した。噴霧終了後、塩水を拭き取って、評価用試料の表面状態を観察し、以下の評点に従って評価した。
A : 保護膜表面に全く変化なし。
B : 保護膜表面にごくわずかな痕跡が見えるが、銅は変化なし。
C : 保護膜表面に痕跡が見えるが、銅は変化なし。
D : 保護膜表面に痕跡があり、かつ銅が変色する。
評価用試料の表面状態を観察したところ、保護膜表面にごくわずかな痕跡が見えるが、銅は変化なく評価はBであった。
【0192】
[感光層の現像残渣試験]
得られた感光性エレメントのカバーフィルムであるポリエチレンフィルムをはがしながら、スパッタ銅付きポリイミドフィルム(東レフィルム加工(株)製)上に、感光層が接するようにラミネータ(日立化成株式会社製、商品名HLM−3000型)を用いて、ロール温度120℃、基板送り速度1m/分、圧着圧力(シリンダ圧力)4×10
5Pa(厚さが1mm、縦10cm×横10cmの基板を用いたため、この時の線圧は9.8×10
3N/m)の条件でラミネートして、スパッタ銅上に、感光層及び支持フィルムが積層された積層体を作製した。
【0193】
上記で得られた積層体を作製後、23℃、60%の条件で24時間保管した後、活性光線透過部と活性光線遮光部が交互にパターニングされた、ライン/スペースが300μm/300μmのフォトマスクを用い、支持フィルム上にフォトマスクを載置し、平行光線露光機(オーク製作所(株)製、EXM1201)を使用して、フォトマスク面垂直上方より露光量5×10
2J/m
2で(i線(波長365nm)における測定値)、紫外線を像的に照射した。
【0194】
次いで、感光層上に積層されている支持フィルムを除去し、1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、30℃で40秒間スプレー現像して、感光層を選択的に除去し、パターン形成された保護膜を得た。得られた保護膜付き基板の、選択的に感光層を除去した部分の基材表面状態を顕微鏡で観察し、以下の評点に従って現像残渣を評価した。
A : 基材表面に全く変化なし。
B : 基材表面の銅がわずかに変色するが、現像残渣はない。
C : 基材表面の銅がわずかに変色し、現像残渣がわずかに発生する。
D : 現像残渣が発生する。
評価用試料の表面状態を観察したところ、基材表面の銅がわずかに変色し、現像残渣がわずかに発生し、評価はCであった。
【0195】
[保護膜のクロスカット密着性試験]
得られた感光性エレメントのカバーフィルムであるポリエチレンフィルムをはがしながら、スパッタ銅付きポリイミドフィルム(東レフィルム加工(株)製)上に、感光層が接するようにラミネータ(日立化成株式会社製、商品名:HLM−3000型)を用いて、ロール温度120℃、基板送り速度1m/分、圧着圧力(シリンダ圧力)4×10
5Pa(厚さが1mm、縦10cm×横10cmの基板を用いたため、この時の線圧は9.8×10
3N/m)の条件でラミネートして、スパッタ銅上に、感光層及び支持フィルムが積層された積層体を作製した。
【0196】
次いで、得られた積層体の感光層に、平行光線露光機(オーク製作所(株)製、EXM1201)を使用して、感光層側上方より露光量5×10
2J/m
2で(i線(波長365nm)における測定値)、紫外線を照射した後、支持フィルムを除去し、さらに感光層側上方より露光量1×10
4J/m
2で(i線(波長365nm)における測定値)紫外線を照射し、厚さ5.0μmの感光層の硬化膜からなる保護膜を有するクロスカット密着性試験用試料を得た。
【0197】
次いで、JIS規格(K5400)を参考に、100マスのクロスカット試験を実施した。試験面にカッターナイフを用いて、1×1mm四方の碁盤目の切り傷を入れ、碁盤目部分にメンディングテープ#810(スリーエム(株)製)を強く圧着させ、テープの端をほぼ0°の角度でゆっくりと引き剥がした後、碁盤目の状態を観察し、以下の評点に従ってクロスカット密着性を評価した。
A : 全面積のほぼ100%が密着している。
B : 全面積のうち95%以上100%未満が密着し残っている。
B〜C: 全面積のうち85%以上95%未満が密着し残っている。
C : 全面積のうち65%以上85%未満が密着し残っている。
C〜D: 全面積のうち35%以上65%未満が密着し残っている。
D : 全面積のうち0%以上35%未満が密着し残っている。
評価用試料の碁盤目の状態を観察したところ、スパッタ銅上に全面積のうち95%以上が密着し残っている状態で、評価はBであった。
【0198】
(実施例2〜12)
表3、4(表中の数値の単位は質量部)に示す感光性樹脂組成物及び溶媒を含有する溶液を用いた以外は、実施例1と同様に感光性エレメントを作製し、透過率の測定、塩水噴霧試験、現像残渣試験、クロスカット密着性試験を行った。表5に示すように、実施例1〜12においては、透過率の測定、塩水噴霧耐性評価、クロスカット密着性のいずれも良好な結果であった。
【0199】
【表3】
【0200】
【表4】
【0201】
【表5】
【0202】
(比較例1〜8)
表6、7(表中の数値の単位は質量部)に示す感光性樹脂組成物及び溶媒を含有する溶液を用いた以外は、実施例1と同様に感光性エレメントを作製し、透過率の測定、b
*の測定、塩水噴霧試験、現像残渣試験、クロスカット密着性試験を行った。
【0203】
【表6】
【0204】
【表7】
【0205】
【表8】
【0206】
表8に示すように、バインダーポリマー(A3)、(A4)を使用した比較例1、2においては、塩水噴霧耐性(人工汗液耐性)が劣る結果であった。また、光重合性化合物としてエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(BPE−500、新中村化学工業(株)製)、ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート(9G、新中村化学工業(株)製)、ウレタンジアクリレート(UA−11、新中村化学工業(株)製)を用いた比較例3〜6においても、塩水噴霧耐性が劣る結果であった。
【0207】
表2〜表4、表6、および表7中の成分の記号は以下の意味を示す。
(A)成分
(A1):モノマー配合比(メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル=12/58/30(質量比))である共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテル/トルエン溶液、重量平均分子量65,000、酸価78mgKOH/g
(A2):モノマー配合比(メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル=17.5/52.5/30(質量比))である共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテル/トルエン溶液、重量平均分子量80,000、酸価115mgKOH/g
他のバインダーポリマー
(A3):モノマー配合比(メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/メタクリル酸ブチル=24/43.5/15/17.5(質量比))である共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテル/トルエン溶液、重量平均分子量35,000、酸価156mgKOH/g
(A4):モノマー配合比(メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル=30/35/35(質量比))である共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテル/トルエン溶液、重量平均分子量45,000、酸価195mgKOH/g
(A5):モノマー配合比(メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル=24/46/30(質量比))である共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテル/トルエン溶液、重量平均分子量45,000、酸価155mgKOH/g
【0208】
(B)成分
A−TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬(株)製)
RP−1040:EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬(株)製)
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製)
他の光重合性化合物
BPE−500:エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業(株)製)
9G:ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート(新中村化学工業(株)製)
UA−11:ウレタンジアクリレート(新中村化学工業(株)製)
【0209】
(C)成分
IRGACURE OXE 01:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](BASF(株)製)
Lucirin TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(BASF(株)製)
【0210】
(D)成分
1HT:1H−テトラゾール(東洋紡績(株)製)
MMT:1−メチル−5−メルカプト−1H−テトラゾール(東洋紡績(株)製)
HAT:5−アミノ−1H−テトラゾール(東洋紡績(株)製)
3MT:3−メルカプト−トリアゾール(和光純薬(株)製)
ATT:2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール(和光純薬(株)製)
AMT:3−アミノ−5−メルカプトトリアゾール(和光純薬(株)製)
【0211】
その他の成分
Antage W−500:2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)(川口化学(株)製)
メチルエチルケトン:東燃化学(株)製