(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と、前記基板の受光面側に設けられた表面電極と、前記基板の裏面側に設けられた裏面電極と、を有する複数の太陽電池セルを備え、一の太陽電池セルの裏面電極と隣接する太陽電池セルの表面電極とを、接着剤を介してタブ線で接続してなる太陽電池モジュールであって、
前記裏面電極は、ポーラス状のアルミニウム層によって形成され、
前記基板と前記アルミニウム層との界面を含んで深さ方向に10μm、及び前記基板の界面の面内方向に100μmの範囲において、前記アルミニウム層中の炭素の存在量が、アルミニウムと炭素との総質量を基準として平均値で50質量%以上であり、
前記アルミニウム層の空隙率は、10%以上であり、
前記アルミニウム層の表面粗さは、中心線平均粗さで2μm以下であることを特徴とする太陽電池モジュール。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、光エネルギーを直接的に電気エネルギーに変換する装置であるため、クリーンエネルギーとして注目を集めており、今後その市場は急激に拡大すると見られている。このような太陽電池モジュールは、一般に、電圧の要求値に応じて複数の太陽電池セルを直列に接続した構造となっている。
【0003】
太陽電池セルの表面(受光面)には、直線状のフィンガー電極が、互いに平行に複数本形成されている。また、太陽電池セルの裏面には、裏面電極が略全面にわたって形成されている。隣接する太陽電池セル同士は、タブ線によって互いに接続される。タブ線は、一方の太陽電池セルのフィンガー電極と交差すると共に、他方の太陽電池セルの裏面電極に接続される。
【0004】
従来、タブ線の接続には、良好な導電性を示すハンダが用いられてきた。しかしながら、近年では、ハンダに代えて、接着剤をタブ線の接続に用いる手法が開発されてきている。例えば特許文献1に記載の太陽電池モジュールでは、アルミニウム層からなる裏面電極が用いられ、裏面電極とタブ線との接続部に開口部を形成している。これにより、裏面電極の表面積を減少させ、タブ線と裏面電極とを接着剤で接続する際に必要な圧力を下げることを可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の構成では、開口部において半導体基板が露出した状態となっている。このため、アルミニウム層の無い部分では太陽電池セルの集電効率が十分に確保できなくなるおそれがある。一方、アルミニウム層とタブ線とを接着剤で接着する場合、タブ線接続後にアルミニウム層に凝集破壊が生じ、タブ線が剥離してしまうことがある。したがって、集電効率の確保とタブ線の剥離の防止とを両立できる技術の確立が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、集電効率を十分に確保できると共にタブ線の剥離を防止できる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決のため、本発明に係る太陽電池モジュールは、基板と、基板の受光面側に設けられた表面電極と、基板の裏面側に設けられた裏面電極と、を有する複数の太陽電池セルを備え、一の太陽電池セルの裏面電極と隣接する太陽電池セルの表面電極とを、接着剤を介してタブ線で接続してなる太陽電池モジュールであって、裏面電極は、ポーラス状のアルミニウム層によって形成され、基板とアルミニウム層との界面を含んで深さ方向に10μm、及び基板の界面の面内方向に100μmの範囲において、アルミニウム層中の炭素の存在量が、アルミニウムと炭素との総質量を基準として平均値で50質量%以上であることを特徴としている。
【0009】
この太陽電池モジュールでは、裏面電極をアルミニウム層で形成することにより、集電効率を十分に確保できる。また、この太陽電池モジュールでは、裏面電極がポーラス状のアルミニウム層によって形成され、タブ線と裏面電極との接続に用いられる接着剤の硬化物がアルミニウム層の深部まで十分に入り込んだ状態となっている。これにより、アルミニウム層と接着剤層との結合が強化され、タブ線の剥離強度を向上させることができる。したがって、タブ線の剥離を防止できる。
【0010】
また、タブ線は、裏面電極に接続される主面及びその反対面が平坦面となっていることが好ましい。この場合、タブ線を裏面電極に熱圧着する際に、接着剤の硬化物をアルミニウム層の深部により確実に入り込ませることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る太陽電池モジュールによれば、集電効率を十分に確保できると共にタブ線の剥離を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る太陽電池モジュールの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る太陽電池モジュールの一実施形態を示す模式的斜視図である。同図に示すように、太陽電池モジュール1は、複数の太陽電池セル2をタブ線3によって互いに電気的に接続することによって構成されている。
【0015】
太陽電池セル2の一面側は、表面電極が形成された受光面2aとなっており、太陽電池セル2の他面側は、裏面電極が形成された裏面2bとなっている。隣接する太陽電池セル2,2間では、受光面2a側の表面電極と裏面2b側の裏面電極とがタブ線3によって接続されており、これにより、太陽電池セル2が直列に接続されたストリングスが形成されている。
【0016】
製品としての太陽電池モジュール1は、例えばストリングスを複数配列したマトリクスを備えている。そして、太陽電池モジュール1は、マトリクスを封止用の接着剤シートで挟んだ状態で、保護用の受光面2a側の表面カバー及び裏面2b側のバックシートと共に一括でラミネートされ、周囲にアルミニウム等の金属フレームを取り付けることで完成する。
【0017】
封止用の接着剤には、例えばエチレンビニルアルコール(EVA)樹脂等の透光性を有する接着剤が用いられる。また、表面カバーには、例えばガラス等の透光性を有する材料が用いられ、バックシートには、例えばガラス又はアルミニウム箔を樹脂フィルムで挟んでなる積層体等が用いられる。
【0018】
次に、太陽電池セル2について説明する。
図2は、太陽電池セルを受光面側から見た模式的平面図であり、
図3は、太陽電池セルを裏面側から見た模式的平面図である。
図2及び
図3に示すように、太陽電池セル2は、基板11を有している。
【0019】
基板11は、例えばSiの単結晶、多結晶、及び非結晶のうちの少なくとも一つによって略正方形状に形成されている。基板11の四隅は、それぞれ円弧状に面取りされている。基板11の一方面は、太陽電池セル2の受光面2aに対応し、基板11の他方面は、太陽電池セル2の裏面2bに対応している。なお、基板11は、例えば受光面2a側がn型半導体となっており、裏面2b側がp型半導体となっている。
【0020】
基板11の受光面2a側には、
図2に示すように、表面電極として、複数のフィンガー電極12が設けられている。フィンガー電極12は、基板11の受光面2aの略全面において、太陽電池モジュール1のストリングスの延在方向と略直交する方向に形成され、ストリングスの延在方向に沿って所定の間隔をもって配列されている。
【0021】
フィンガー電極12は、例えば金属ペーストを塗布及び加熱することによって形成されている。フィンガー電極12の厚みは、例えば10μm〜30μmとなっており、フィンガー電極12の幅は、例えば5μm〜90μmとなっている。また、隣り合うフィンガー電極12,12間の間隔は、例えば2mm程度となっている。
【0022】
フィンガー電極12の形成材料としては、銀を含有したガラスペースト、接着剤樹脂に各種導電性粒子を分散した銀ペースト、金ペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト、アルミニウムペースト、及び焼成・蒸着によって形成されるITOなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、導電性、安定性、及びコストの観点から、銀を含有したガラスペーストを用いることが好ましい。
【0023】
受光面2a側では、フィンガー電極12に略直交する向きに一対のタブ線3の配置領域P,Pが設定されている。本実施形態では、フィンガー電極12を連結するバスバー電極は設けられておらず、タブ線3は、後述の接着剤層22を介してフィンガー電極12に直接的に接続されるが、必要に応じバスバー電極を設けてもよい。配置領域Pは、太陽電池モジュール1の集電効率を十分に確保する観点から、受光面2a上の全てのフィンガー電極12に跨るように直線状に設定されている。また、配置領域P,P間の間隔は、タブ線3のアライメント精度を考慮し、タブ線3の幅の2倍程度としておくことが好ましい。
【0024】
基板11の裏面2b側には、
図3に示すように、裏面電極14が設けられている。裏面電極14は、基板11の裏面2b側の略全面にわたって形成されている。裏面2b側においても、受光面2aと同様に、一対のタブ線3の配置領域P,Pが設定されており、タブ線3は、接着剤層22を介して裏面電極14に接続される。配置領域Pは、受光面2a側の配置領域P,Pの位置に対応するように直線状に設定されている。
【0025】
裏面電極14は、例えばアルミニウムペーストの焼成によって得られたアルミニウム層21によって形成されている。アルミニウム層21の厚みは、例えば20μm〜30μm程度となっている。アルミニウム層21の内部は、アルミニウムペーストの焼成時に形成された空隙によってポーラス状をなしている。タブ線3の接続前のアルミニウム層21の空隙率は、例えば10%以上であることが好ましい。また、アルミニウム層21の表面粗さは、中心線平均粗さで2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることが更に好ましい。アルミニウム層21の表面粗さは、例えば十点平均粗さで10μm以下であることが好ましい。これらの表面粗さは、JIS B 0601(1994)及びJIS B 0031(1994)により定義される。
【0026】
タブ線3と、フィンガー電極12及び裏面電極14との接続には、例えば導電性接着剤が用いられる。導電性接着剤としては、例えばフィルム形成樹脂を25質量部、熱硬化性樹脂を20質量部、熱硬化性樹脂用の硬化剤を55質量部、シリコーン粒子を10質量部、導電粒子を10質量部、それぞれ含有したものが用いられる。
【0027】
フィルム形成樹脂としては、良好なフィルム形成を実施できる観点から、例えばフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリアミド樹脂等の熱可塑性高分子が用いられる。これらの樹脂の中でも、フェノキシ樹脂を用いることが好ましい。また、熱可塑性高分子の重量平均分子量は、接着剤層22の流動性を考慮し、10000〜10000000であることが好ましい。
【0028】
熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン−ビスマレイミド樹脂、及びフェノール樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐熱性を考慮すると、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0029】
熱硬化性樹脂用の硬化剤とは、熱硬化性樹脂と共に加熱したときに熱硬化性樹脂の硬化を促進する材料を指す。かかる硬化剤としては、例えばイミダゾール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ポリアミンの塩、アミンイミド、及びジシアンジアミドが用いられる。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が用いられる場合には、例えばイミダゾール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、三フッ化ホウ素アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、及びジシアンジアミドを用いることが好適である。
【0030】
シリコーン粒子としては、例えばシリコーンゴム粒子、シリコーン樹脂粒子、シリコーン複合粒子等が用いられる。シリコーンゴム粒子は、例えば直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造を有するシリコーンゴム粒子である。シリコーン樹脂粒子は、例えばシロキサン結合が(RSiO
3/2)nで表される三次元網目状に架橋した構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン硬化物の粒子である。
【0031】
導電粒子としては、例えば金粒子、銀粒子、銅粒子、ニッケル粒子、金めっきニッケル粒子、金/ニッケルめっきプラスチック粒子、銅めっき粒子、ニッケルめっき粒子が用いられる。導電性を確保する点から、導電粒子の平均粒径は、1μm〜20μmであることが好ましく、1μm〜5μmであることがより好ましい。
【0032】
また、導電性接着剤には、被着体との接着性及び濡れ性を向上させるためのカップリング剤を含有させてもよい。カップリング剤としては、例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0033】
続いて、裏面電極14とタブ線3との接続について説明する。
図4は、
図3のIV−IV線模式的断面図である。同図に示すように、タブ線3は、上記の導電性接着剤を用いて形成された接着剤層22を介して裏面電極14に配置されている。接続にあたっては、まず、上記の導電性接着剤を用いて形成された接着剤フィルムを配置領域Pに沿って貼り付け、アルミニウム層21上に接着剤層22を形成する。なお、接着剤層22は、太陽電池セル2側の構成として予め第2の層21B上に形成してあってもよい。次に、接着剤層22上にタブ線3を仮固定する。タブ線3としては、例えば銅リボンの表面をハンダで被覆した幅1mm〜2mm程度のものが用いられる。タブ線3は、特に制限はないが、ハンダで表面を被覆しないものであってもよい。また、タブ線3は、接着剤層22に対向する対向面及びその反対面が平坦面となっていることが好ましい。平坦面の高さ変動(凹凸の差)は、タブ線3の幅方向の500μmの範囲内において、例えば5μmであることが好ましく、2μm以下であることが更に好ましい。
【0034】
タブ線3を仮固定した後、例えば熱圧着機を用いてタブ線3と裏面電極14とを熱圧着する。熱圧着時の温度は、例えば80℃〜320℃程度である。熱圧着時の圧力は、例えば1.0MPa以上、好ましくは3.0MPa以上である。圧力の付与時間は、例えば1秒〜30秒程度である。熱圧着により、接着剤層22の接着剤成分がアルミニウム層21に入り込み、タブ線3が裏面電極14に対して固着される。
【0035】
図5は、基板と裏面電極との界面近傍の状態を示すSEM画像である。同図では、基板11の裏面2b側の界面Sからアルミニウム層21側に向かって深さ方向に10μm、及び基板11の裏面2b側の界面Sの面内方向に100μmの矩形状の範囲Rを図示している。タブ線3の接続後の状態において、この範囲R内では、アルミニウム層21中の炭素の存在量は、アルミニウムと炭素との総質量を基準として平均値で50質量%以上となっている。
【0036】
アルミニウム層21中のアルミニウム及び炭素の存在量は、例えばエネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)によって測定することができる。EDXでは、電子線の照射によって発生する元素固有の特性X線をエネルギー分光することで、構成元素の同定が行われる。したがって、EDXによって範囲Rの面分析を行い、例えばアルミニウムに対応するエネルギー線のカウント数と、炭素に対応するエネルギー線のカウント数とを測定することにより、アルミニウム層21中のアルミニウム及び接着剤硬化物の存在量を測定することができる。
【0037】
EDXによるアルミニウム及び接着剤硬化物の存在量の測定の例は、以下のとおりである。まず、タイヤモンドカッター、ウォータジェット、カッターナイフなどを用いて太陽電池モジュールを切断し、ガラス及びバックシートを取り除いた15mm角の小片を得る。次に、タブ線を剥離し、基板の結晶方位に従って応力を加えて小片を分断する。この分断面において、基板11とアルミニウム層21との界面S近傍が測定サンプルとなる。
【0038】
EDXの測定では、範囲Rの深さ方向については、基板11とアルミニウム層21との界面Sから基板11側に5μmの深さを基準とし、この位置から界面Sからアルミニウム層21側に5μmの深さとなる位置までの10μmを測定領域とすることができる。また、範囲Rの面内方向については、例えばアルミニウム層21において剥離したタブ線の中心線に接していた位置を基準とし、界面Sの面内方向に±100μmの範囲から任意の100μmの幅を設定して測定領域とすることができる。基板11の結晶方位がタブ線3の長手方向と交差して断面が斜めに得られる場合でも、上記と同様の範囲設定を行えばよい。範囲Rの誤差は、深さ方向は±3μm程度、面内方向は±10μm程度である。EDX測定時の加速電圧は、例えば5kV〜20kV程度である。指定元素は、アルミニウム及び炭素であり、アルミニウムに対する炭素の存在比はC/(Al+C)で求められる。
【0039】
なお、基板11の裏面2b側の面には、実際には微細な凹凸が存在する。したがって、本実施形態では、例えば基板11の裏面2b側の面のうち、最も深い凹部の底部を基準に基板11とアルミニウム層21との界面Sを設定し、範囲Rの深さ方向の基準とすることができる。
【0040】
以上説明したように、太陽電池モジュール1では、太陽電池セル2の裏面電極14をアルミニウム層21で形成することにより、アルミニウムが基板11に拡散して基板11の裏面2bにP型半導体層が十分に形成されるので、集電効率を十分に確保できる。また、太陽電池モジュール1では、裏面電極14がポーラス状のアルミニウム層21によって形成され、タブ線3と裏面電極14との接続に用いられる接着剤の硬化物がアルミニウム層21の深部まで十分に入り込んだ状態となっている。これにより、アルミニウム層21と接着剤層22との結合が強化され、タブ線3の剥離強度を向上させることができる。したがって、タブ線3の剥離を防止できる。
【0041】
また、タブ線3は、裏面電極14に接続される主面(接着剤層22に対向する対向面)及びその反対面が平坦面となっている。これにより、タブ線3を裏面電極14に熱圧着する際に、接着剤の硬化物をアルミニウム層21の深部により確実に入り込ませることが可能となる。タブ線3の剥離強度を一層向上させることができる。
【0042】
本発明の効果確認試験について説明する。本試験は、範囲Rにおいて、アルミニウム層中の炭素の存在量が、アルミニウムと炭素との総質量を基準として平均値で36質量%の太陽電池モジュール(比較例)と、アルミニウム層中の炭素の存在量が、アルミニウムと炭素との総質量を基準として平均値で51質量%の太陽電池モジュール(実施例)とを用意し、それぞれについてタブ線の剥離強度(タブ線1本あたりの引っ張り力)を測定したものである。剥離強度の測定には、オリエンテック社製のテンシロン(STA−1150)を用い、太陽電池セルの法線方向に50mm/分の速度でタブ線を引き上げ、引き上げに要する力を記録して測定値とした。
【0043】
本試験では、まず、テキスチャ加工済み及びSiN膜形成済みの125mm角のブルーセルを用意した。次に、基板の裏面のSi面にアルミニウムペーストをスクリーン印刷してアルミニウム層の前駆体パターンを形成し、150℃で1分間の乾燥を行った。アルミニウム層の形成後、基板の表面のSi面に銀を含有するガラスペーストをスクリーン印刷してフィンガー電極の前駆体パターンを形成し、150℃で1分間の乾燥を行った。次に、前駆体が印刷された太陽電池セルを350℃、800℃、550℃の各温度で連続的に30秒ずつ加熱し、所望の電極パターンを形成した。なお、市販のα−Terpineol(有機溶剤)をアルミニウムペーストに添加し希釈をすることで、アルミニウム層の厚み調整を行った。本試験では、実施例及び比較例のいずれについてもアルミニウム層の厚みを30μmとした。
【0044】
電極パターンの形成後、導電性フィルムを温度90℃、圧力1Mpa、時間1秒の条件で4箇所の配置領域に仮固定した。導電性接着フィルムには、セパレータと導電性接着剤層との2層から構成される日立化成株式会社製の導電フィルム(CF−205、幅1.2mm)を用いた。次に、導電性フィルムのセパレータを剥離し、導電性接着剤からなる接着剤層を形成した。次いで、接着剤層上にタブ線を70℃で積層し、太陽電池セルを得た。タブ線には、日立電線株式会社製のタブ線(SSA−TPS−0.2×1.5(20))を用いた。また、タブ線の接続には、芝浦メカトロニクス株式会社製のTAB Stringer ATS−200を用いた。タブ線の接続条件は、実施例では、温度190℃、圧力3MPa、時間5秒とし、比較例では、温度190℃、圧力1MPa、時間5秒とした。
【0045】
測定の結果、比較例では、タブ線の剥離強度は0.45N/TABであったのに対し、実施例では、タブ線の剥離強度は1.7N/TABであった。この結果から、接着剤の硬化物をアルミニウム層21の深部まで十分に入り込ませることがタブ線の剥離強度の向上に資することが確認できた。
【0046】
なお、タブ線接続時の圧力を増加させることで、接着剤層の接着剤成分がアルミニウム層に入り込む量を増加できる。この場合、接着剤成分をアルミニウム層のより深くまで入り込ませることが可能となり、炭素の存在量を増加できる。アルミニウム層の厚みが30μm以上であるときは、タブ線接続時の圧力を3MPa以上とすることが好ましい。また、アルミニウム層の厚みが16μm以上30μm未満であるときは、タブ線接続時の圧力を2MPa以上とすることが好ましい。
【0047】
接続圧力が不足すると、基板の近傍まで接着剤成分が十分に入り込まず、アルミニウム層の深さ方向の途中までの入り込みに留まるおそれがある。この場合、アルミニウム層中の炭素の存在量が50質量%未満となり、アルミニウム層の凝集力に支配されるピール強度となることが考えられる。一方、アルミニウム層の厚みが15μm以下の場合は、接続圧力に特に制限はない。以上の知見をアルミニウム層の厚みの観点から表すと、アルミニウム層の厚みが減少するに従って、基板近傍の炭素の存在量を容易に増加させることが可能になると言える。アルミニウム層の厚みが15μm以下であれば、基板近傍のアルミニウム層中の炭素の存在量がアルミニウムと炭素との総質量を基準として平均値で50質量%以上、という条件をより確実かつ容易に達成できる。