(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態である金属用研磨液及び研磨方法について以下に説明する。本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
[金属用研磨液]
本発明の実施形態である金属用研磨液は、アミノ酸、下記式(I)で表される酸、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物、及び、アクリル酸ポリマを含有する。
【化2】
(式(I)中、Rは、置換若しくは非置換の炭素数2〜4のアルキレン基、又は、置換若しくは非置換の炭素数2〜4のアルケニレン基を表す。但し、Rは、酸素原子を含まない基である。)
【0021】
金属用研磨液は、少なくとも、金属を含有する物質(以下、単に「金属」ともいう。)を研磨するために用いられる。
【0022】
(アミノ酸)
金属用研磨液は、アミノ酸を含有する。アミノ酸は、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物である。アミノ酸は、金属に対する溶解剤として機能すると考えられるが、これに限定されない。アミノ酸は、一種を単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0023】
アミノ酸は、研磨される金属に結合し錯体を形成すると考えられる。アミノ酸と金属とによる錯形成反応は、比較的高い安定度定数(「錯生成定数」ともいう。)を有する。アミノ酸は、特に酸化された金属と効果的に錯体を形成し、金属に対する研磨速度を高める効果がある。研磨速度が高いとは、すなわち、金属が効率よく除去されることを意味する。
【0024】
アミノ酸としては、例えば、アミノ酸とカルボキシル基とを一つずつ有する中性アミノ酸、直鎖状又は分岐状のアルキレン基を有する脂肪族アミノ酸、アミノ酸とカルボキシル基とを一つずつ有し、且つ、直鎖状アルキレン基を有するアミノ酸等が好ましく用いられる。
【0025】
アミノ酸として、より具体的には、グリシン、α−アラニン、β−アラニン、2−アミノ酪酸、ノルバリン、バリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、アロイソロイシン、フェニルアラニン、プロリン、サルコシン、オルニチン、リシン、セリン、トレオニン、アロトレオニン、ホモセリン、チロシン、3,5−ジヨード−チロシン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−アラニン、チロキシン、4−ヒドロキシ−プロリン、システイン、メチオニン、エチオニン、ランチオニン、シスタチオニン、シスチン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、S−(カルボキシメチル)−システイン、4−アミノ酪酸、アスパラギン、グルタミン、アザセリン、アルギニン、カナバニン、シトルリン、δ−ヒドロキシ−リシン、クレアチン、キヌレニン、ヒスチジン、1−メチル−ヒスチジン、3−メチル−ヒスチジン、エルゴチオネイン、トリプトファン等が挙げられる。
【0026】
アミノ酸は分子量が小さいアミノ酸であることが好ましい。分子量が小さいアミノ酸は、分子量が大きい同質量のアミノ酸と比較して、相対的に金属と錯体を形成できる分子の数が多くなり、少ない添加量で研磨速度を高める効果が得られる傾向がある。このような観点から、アミノ酸の分子量は、200以下が好ましく、150以下がより好ましく、100以下が更に好ましい。また、分子量の下限は特に制限はないが、一般的に75以上が好ましい。
【0027】
好ましいアミノ酸として、具体的には、グリシン(分子量75)、α−アラニン(分子量89)、β−アラニン(分子量89)、2−アミノ酪酸(分子量103)、4−アミノ酪酸(分子量103)等が挙げられる。より好ましくは、グリシン、α−アラニン、β−アラニン等である。
【0028】
アミノ酸の含有量は、金属を効率よく溶解し、当該金属に対する研磨速度を向上させる観点から、金属用研磨液100質量部中、0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.5質量部以上が特に好ましく、0.8質量部以上が非常に好ましい。また、エッチングを抑制する観点から、アミノ酸の含有量は、金属用研磨液100質量部中、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下が更に好ましく、2質量部以下が特に好ましく、1.5質量部以下が非常に好ましい。
【0029】
(酸)
金属用研磨液は、下記式(I)で表される酸を含有する。式(I)で表される酸は、一種を単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【化3】
(式(I)中、Rは、置換又は非置換の炭素数2〜4のアルキレン基、又は、置換又は非置換の炭素数2〜4のアルケニレン基を表す。但し、Rは、酸素原子を含まない基である。)
【0030】
理由は明らかではないが、金属用研磨液が、アミノ酸と、式(I)で表される酸との両方を含有することによって、金属に対する良好な研磨速度を得つつ、エッチング量を小さく、且つ、金属表面に生じる孔食数を低減できるという驚くべき効果を奏する。
【0031】
効果を損なわない範囲で、金属用研磨液は、酸として、式(I)で表される酸以外の任意の酸を含有してもよい。但し、前記のアミノ酸、並びに、後述するアクリル酸ポリマ、及び酸化剤として用いられる無機酸は、ここでいう酸には含まれない。任意の酸としては、無機酸及び有機酸のいずれでもよいが、有機酸が好ましい。酸によっては、研磨速度の向上、エッチング速度の低下等の効果が得られる場合がある。少ない孔食数を得る観点からは、金属用研磨液は、好ましくは、有機酸として式(I)で表される酸のみを含有し、より好ましくは酸として式(I)で表される酸のみを含有する。
【0032】
式(I)中、アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。好ましくは直鎖状又は分岐状であり、より好ましくは直鎖状である。アルキレン基として、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、iso−プロピレン基、n−ブチレン基、iso−ブチレン基、tert−ブチレン基等が挙げられる。
【0033】
式(I)中、アルケニレン基は、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。好ましくは直鎖状又は分岐状であり、より好ましくは直鎖状である。アルケニレン基として、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0034】
「置換又は非置換の」とは、アルキレン基が、置換基を有していても、又は、置換基を有していなくてもよいことを意味する。アルキレン基が置換基を有する場合、当該置換基に含まれる炭素の数は、アルキレン基の炭素数「2〜4」には含まれないものとする。アルケニレン基についても同様である。高い研磨速度、低いエッチング速度、及び少ない孔食数を達成できるという観点から、アルキレン基及びアルケニレン基は、置換基を有していないことが好ましい。
【0035】
なお、Rは、酸素原子を含まない基であるために、アルキレン基及びアルケニレン基が有してもよい置換基は、酸素原子を含まない置換基に限られる。また、金属用研磨液は、アミノ酸と式(I)で表される酸とを含有する研磨液であり、アミノ酸と式(I)で表される酸とは異なる化合物であるために、アミノ基は、「アルキレン基及びアルケニレン基が有してもよい置換基」には含まれない。
【0036】
高い研磨速度、低いエッチング速度、及び少ない孔食数を達成する観点から、式(I)で表される酸は分子量の低い酸であることが好ましい。式(I)で表される酸の分子量は、200以下が好ましく、170以下がより好ましく、140以下が更に好ましい。また、低いエッチング速度を得る観点から、式(I)で表される酸の分子量は、110以上が好ましい。
【0037】
式(I)で表される酸としては、例えば、コハク酸(分子量118)、グルタル酸(分子量132)、アジピン酸(分子量146)、フマル酸(分子量116)、マレイン酸(分子量116)、グルタコン酸(分子量130)等が挙げられ、中でも、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸等が好ましい。
【0038】
高い研磨速度を得る観点から、式(I)で表される酸の含有量は、金属用研磨液100質量部中、0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、0.03質量部以上が更に好ましく、0.05質量部以上が特に好ましい。また、高い研磨速度と低いエッチング速度とを両立する観点から、式(I)で表される酸の含有量は、金属用研磨液100質量部中、3質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましい。より高い研磨速度を得る観点からは、0.5質量部以下が更に好ましく、0.3質量部以下が特に好ましい。
【0039】
(ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物)
金属用研磨液は、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物(以下、「ベンゾトリアゾール化合物」という。)を含有する。ベンゾトリアゾール化合物は、金属に対する保護膜形成剤、防食剤等として機能すると考えられるが、これに限定されない。ベンゾトリアゾール化合物は、一種を単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0040】
ベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール、1−ジヒドロキシプロピル−1H−ベンゾトリアゾール、4−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール、4−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾール、4−カルボキシル−1H−ベンゾトリアゾールメチルエステル、4−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾールブチルエステル、4−カルボキシ−1H−ベンゾトリアゾールオクチルエステル、5−ヘキシル−1H−ベンゾトリアゾール、[1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル][1,2,4−トリアゾリル−1−メチル][2−エチルヘキシル]アミン、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール等が挙げられる。
【0041】
高い研磨速度と低いエッチング速度とを両立する観点から、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール等が好ましい。より好ましくは、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール等である。
【0042】
エッチングを抑制する観点から、ベンゾトリアゾール化合物の含有量は、金属用研磨液100質量部中、0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上が更に好ましく、0.1質量部以上が特に好ましい。また、充分な研磨速度を得る観点から、ベンゾトリアゾール化合物の含有量は、金属用研磨液100質量部中、5質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、1質量部以下が更に好ましく、0.5質量部以下が特に好ましい。
【0043】
(アクリル酸ポリマ)
金属用研磨液は、アクリル酸ポリマを含有する。アクリル酸ポリマは、アクリル酸を含む単量体成分を重合して得られる構造を有してなるポリマとして定義される。アクリル酸ポリマは、金属の表面に作用し、ベンゾトリアゾール化合物による保護膜形成の補助剤として機能すると考えられるが、これに限定されない。ベンゾトリアゾール化合物とアクリル酸ポリマとを用いて形成された保護膜は、金属に対するエッチングを抑制する作用を有するものの、機械的作用により除去されやすいため、金属に対する高い研磨速度と、低いエッチングとの両立が可能となると推測される。
【0044】
アクリル酸ポリマは、アクリル酸の単独重合体(ホモポリマ)であってもよいし、アクリル酸と他の単量体を含む単量体成分を重合して得られる共重合体(コポリマ)であってもよい。アクリル酸ポリマは、一種を単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0045】
アクリル酸ポリマとしては、例えば、ポリアクリル酸(アクリル酸の単独重合体)、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−アクリルアミド共重合体等が挙げられる。高い研磨速度と低いエッチング速度とを両立する観点から、ポリアクリル酸が好ましい。
【0046】
アクリル酸ポリマにおいて、カルボキシル基の少なくとも一部が塩を形成していてもよい。塩としては、例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、アンモニウム塩が好ましい。
【0047】
高い研磨速度を得る観点から、アクリル酸ポリマの質量平均分子量は、10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、30,000以上が更に好ましい。質量平均分子量の上限は特に規定されないが、溶解性の観点から、5,000,000以下が好ましく、1,000,000以下がより好ましく、200,000以下が更に好ましく、100,000以下が特に好ましい。
【0048】
アクリル酸ポリマの質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography。以下、「GPC」という。)で測定し、ポリアクリル酸ナトリウム標準物質で作成した検量線を用いて算出できる。
【0049】
ベンゾトリアゾール化合物と併用することによる効果を充分に得る観点から、アクリル酸ポリマの含有量は、金属用研磨液100質量部中、0.005質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上が更に好ましく、0.3質量部以上が特に好ましい。また、研磨速度の低下を防ぐ観点から、アクリル酸ポリマの含有量は、金属用研磨液100質量部中、25質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下が更に好ましく、1質量部以下が特に好ましく、0.7質量部以下が非常に好ましい。
【0050】
(酸化剤)
金属用研磨液は、酸化剤を更に含有してもよい。酸化剤は、金属を酸化する機能を有すると考えられる。酸化剤は、一種を単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0051】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過ヨウ素酸カリウム、オゾン、硝酸、次亜塩素酸等が挙げられ、過酸化水素(H
2O
2)が好ましい。これらは水溶液として金属用研磨液に加えることができる。
【0052】
酸化剤を含有する場合、その含有量は、金属を酸化して良好な研磨速度を得る観点から、金属用研磨液100質量部中、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上が更に好ましい。また、被研磨面の荒れを防止する観点から、酸化剤の含有量は、金属用研磨液100質量部中、20質量部以下が好ましく、10質量部以下が好ましく、5質量部以下が更に好ましく、3質量部以下が特に好ましい。
【0053】
(砥粒)
金属用研磨液は、砥粒を更に含有してもよい。砥粒を含有することにより、良好な研磨速度を得ることができる。砥粒は、一種を単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0054】
砥粒としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、セリア粒子、チタニア粒子、ゲルマニア粒子等が挙げられる。これらの粒子は、アルコキシシランなどにより変性された変性物であってもよい。
【0055】
金属用研磨液中での分散安定性、研磨傷の低減等の観点から、シリカ粒子及びアルミナ粒子が好ましく、コロイダルシリカ及びコロイダルアルミナがより好ましく、コロイダルシリカが特に好ましい。
【0056】
砥粒の平均粒径は、特に制限はないが、高い研磨速度を得る観点から、10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましい。また、砥粒の平均粒径は、分散安定性の観点から、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましい。砥粒の「平均粒径」とは、金属用研磨液中の砥粒の平均二次粒径を意味する。砥粒の平均粒径の測定に際しては、例えば、光回折散乱式粒度分布計(例えば、COULTER Electronics社製「COULTER N4SD」、マルバーンインスツルメンツ社製「ゼータサイザー3000HSA」等)を使用できる。
【0057】
砥粒を用いる場合、砥粒の含有量は、高い研磨速度を得る観点から、金属用研磨液100質量部中、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましい。また、砥粒の含有量は、研磨液中で砥粒の分散安定性を維持し、研磨傷の発生を抑える観点から、金属用研磨液100質量部中、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、1質量部以下が更に好ましい。
【0058】
(有機溶剤)
金属用研磨液は、有機溶剤を更に含有してもよい。有機溶剤は、一種を単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。有機溶剤としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の炭酸エステル溶剤;ブチルラクトン、プロピルラクトン等のラクトン溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ポリエチレンオキサイド、エチレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、イソプロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、乳酸エチル、スルホランなどが挙げられる。
【0059】
有機溶剤を含有する場合、その含有量は、添加した各成分の溶解性を向上させる観点から、金属用研磨液100質量部中、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、有機溶剤の含有量は、研磨液を長期に安定的に保管する観点から、金属用研磨液100質量部中、好ましくは50質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
【0060】
(他の任意成分)
金属用研磨液は、得られる効果を考慮し、更に、前記に挙げた成分以外の任意成分として、一般的な金属用研磨液に用いられる酸化金属溶解剤、保護膜形成剤、分散剤、界面活性剤等から選択されるいずれか一種以上を含有しても、あるいは含有しなくてもよい。
【0061】
(水)
金属用研磨液は、水を更に含有してもよい。水として、イオン交換水、蒸留水等の純水を用いることが好ましい。水を含有する場合、その含有量は、他の成分の残部でよい。
【0062】
(pH)
金属用研磨液のpHは、エッチングを抑制する観点から、2.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、3.5以上が更に好ましく、4.0以上が特に好ましい。また、金属用研磨液のpHは、充分な研磨速度を得る観点から、5.0以下が好ましい。pHは、一般的なpHメータを用いて測定できる。
【0063】
金属用研磨液のpHは、金属用研磨液に含まれる成分の含有量によって調整できる。また、必要に応じて、酸性化合物又は塩基性化合物を加えて調整してもよい。塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、アミン、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0064】
(金属用研磨液の製造方法)
金属用研磨液は、上述の各成分を混合することにより製造できる。金属用研磨液の製造方法の一例を示すと、まず、水にアクリル酸ポリマを加えて溶解させた後に、アミノ酸、式(I)で表される化合物及びベンゾトリアゾール化合物をこの順に加え、撹拌して各成分を水に溶解させる。得られた溶液は、金属用研磨液として使用可能である。酸化剤及び/又は砥粒を含有する金属用研磨液を製造する場合は、前記の溶液に、更に酸化剤、砥粒、又は、酸化剤と砥粒とを加えて撹拌すればよい。また、添加する水の量を減じた金属用研磨液用貯蔵液としてもよい。これにより、保管、運搬等にかかるコストを低減できる。金属用研磨液用貯蔵液は水で希釈して金属用研磨液として用いることができる。
【0065】
(研磨対象)
金属用研磨液は、少なくとも、金属を含有する物質を研磨するために用いられる。金属を含有する物質は、好ましくは金属を主成分とする物質であり、より好ましくは銅を主成分とする物質である。「金属を主成分とする物質」とは、当該物質に含まれる成分の中で、質量が最も大きい成分が金属である物質をいう。「銅が主成分である物質」についても同様である。金属を含有する物質としては、例えば、金属;合金;金属の酸化物、金属の窒化物、金属の酸窒化物、合金の酸化物、合金の窒化物、合金の酸窒化物等の金属化合物;などが挙げられる。好ましくは、銅、タングステン、アルミニウム、タンタル、チタン、ルテニウム、コバルト、マンガン、金、銀等の金属;これら金属の合金;これら金属又は合金の酸化物、窒化物、酸窒化物等の金属化合物;などが挙げられる。より好ましくは、銅、銅合金(例えば、銅とクロムの合金、銅とアルミニウムの合金、銅とマンガンの合金等)、銅又は銅合金の酸化物などが挙げられる。金属又は合金の酸化物には、セラミックス、ペロブスカイト型酸化化合物等も含まれる。
【0066】
「金属を含有する物質」として金属を研磨する場合を例に挙げると、金属用研磨液は、表面に金属部を有する基板、金属板、金属と金属を含まない物質(例えば、金属を含有しないセラミックス、有機化合物等)との複合材料などに含まれる金属の研磨に用いることができる。表面に金属部を有する基板としては、表面に凹部が形成された基体上に、金属部を形成し、凹部を金属で充填した基板が挙げられる。このような基板を、金属用研磨液を用いて研磨すると、凹部内以外の凸部上の金属が選択的に除去される。これにより、平坦化された所望の金属パターンを有する基板が得られる。すなわち、金属用研磨液を用いて金属の研磨を行い、当該金属の不要部分、つまり、金属の少なくとも一部を除去できる。
【0067】
基体としては、例えば、シリコン、サファイア、ガリウム砒素、アルミニウム、ガラス等からなる基体が挙げられる。凹部を金属で充填した基板としては、例えば、半導体基板、磁気ヘッド用基板、磁気ディスク用基板等が挙げられる。
【0068】
[研磨方法]
本発明の実施形態である研磨方法は、前記実施形態の金属用研磨液を用いて金属を含有する物質を研磨し、当該金属を含有する物質の少なくとも一部を除去する工程を有する。「金属を含有する物質」は前記のとおりである。
【0069】
本実施形態の研磨方法は、例えば、LSI等の埋め込み配線形成工程において好適に用いられる。従って、研磨方法の一実施形態として、金属を含有する導電性物質部を研磨し、当該導電性物質部の少なくとも一部を除去する工程を有する研磨方法であって、前記工程が、(1)表面に凹部が形成された基体と、当該基体上に形成された前記導電性物質部とを有する基板を用意する工程、(2)前記実施形態の金属用研磨液を、研磨パッド上に供給する工程、及び、(3)前記基板と前記研磨パッドとを相対的に動かして、前記導電性物質部の不要部分を除去する工程、を有する研磨方法が挙げられる。
【0070】
工程(2)と工程(3)とは、別々に行われても、同時に行われてもよい。なお、同時とは、少なくとも工程(2)と工程(3)とを共に実施している時間が存在することをいう。「表面に凹部が形成された基体」は前記のとおりである。また、「導電性物質部」は、前記金属を含有する物質の中から埋め込み配線に適した物質を選択し、それを用いて形成された部分である。また、工程(3)では、前記基板の前記導電性物質部を前記研磨パッドに押圧した状態で、前記基板と前記研磨パッドとを相対的に動かすことが好ましい。
【0071】
研磨に用いられる研磨装置としては、例えば、研磨パッドにより研磨する場合、研磨対象を保持できるホルダと、研磨定盤とを有する一般的な研磨装置を用いることができる。研磨定盤は、通常、研磨パッドを貼り付け可能であり、且つ、回転可能であり、更に回転数を変更可能なモータ等と接続されている。研磨パッドとしては、不織布、発泡ポリウレタン樹脂、多孔質フッ素樹脂等からなるパッドを使用できる。
【0072】
研磨条件に特に制限はないが、研磨定盤と研磨対象の相対的な回転速度は、研磨対象が飛び出さないように200min
−1以下の低回転速度が好ましい。研磨対象を研磨パッドに押し付ける圧力(以下、「研磨圧力」という。)は、10〜100kPaが好ましい。被研磨面内で研磨速度のばらつきが少ないこと(研磨速度の面内均一性)及び研磨前に存在していた凹凸が解消し平坦になること(面内平坦性)を満足するためには、10〜50kPaがより好ましい。研磨している間、好ましくは、研磨パッドには金属用研磨液をポンプ等で連続的に供給する。供給量に特に制限はないが、研磨パッドの表面が常に金属用研磨液で覆われていることが好ましい。研磨終了後の研磨対象は、流水中で充分に洗浄後、スピンドライ等を用いて付着した水滴を払い落としてから乾燥させることが好ましい。
【0073】
また、研磨方法の一実施形態として、表面に凹部及び凸部を有する層間絶縁膜、前記表面に沿って層間絶縁膜を被覆するバリア膜、及び前記表面に起因する凹部を充填してバリア膜を被覆する導電性物質部を有する基板を用意する工程、前記実施形態の金属用研磨液を用い、前記導電性物質部を研磨し、前記凸部上の導電性物質部を除去して、前記凸部上のバリア膜を露出させる第一の研磨工程(I)、及び、少なくとも前記凸部上のバリア膜を研磨し、当該凸部上のバリア膜を除去して、前記層間絶縁膜の凸部を露出させる第二の研磨工程(II)を有する研磨方法が挙げられる。第二の研磨工程(II)には、前記実施形態の金属用研磨液、バリア膜を研磨できる公知のCMP研磨液等を用いることが可能である。
【0074】
層間絶縁膜としては、シリコン系被膜、有機ポリマ系被膜が挙げられる。
【0075】
シリコン系被膜としては、二酸化ケイ素、フルオロシリケートグラス、トリメチルシラン、シリコンオキシナイトライド、水素化シルセスキオキサン等からなるシリカ系被膜、シリコンカーバイド膜、シリコンナイトライド膜などが挙げられる。
【0076】
有機ポリマ系被膜としては、例えば、トリメチルシランを出発原料とするオルガノシリケートグラスからなる被膜、全芳香環系Low−k膜(全芳香族系低誘電率膜)等のLow−k膜(低誘電率膜)などが挙げられる。特に、オルガノシリケートグラスからなる被膜が好ましい。
【0077】
層間絶縁膜は、物理気相成長(PVD)法、化学気相成長(CVD)法、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法等によって成膜できる。更に、表面は、凹部及び凸部を有するように加工される。
【0078】
バリア膜は、主に、層間絶縁膜中に導電性物質が拡散するのを防止するため、また、層間絶縁膜と導電性物質部との密着性を向上させるために形成される。このようなバリア膜の形成には、前記金属を含有する物質の中からバリア膜に適した物質を選択して用いればよい。例えば、タングステン、タングステン合金、窒化タングステン等のタングステン化合物;チタン、チタン合金、窒化チタン等のチタン化合物;タンタル、タンタル合金、窒化タンタル等のタンタル化合物;ルテニウム、ルテニウム合金、窒化ルテニウム等のルテニウム化合物;コバルト、コバルト合金、窒化コバルト等のコバルト化合物;マンガン、マンガン合金、窒化マンガン等のマンガン化合物;などが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。バリア膜は、二層以上の層からなる積層膜であってもよい。バリア膜は、公知のPVD法、CVD法、スパッタ法、メッキ法等により成膜できる。
【0079】
導電性物質部の形成には、前記金属を含有する物質の中から埋め込み配線に適した物質を選択して用いればよい。例えば、銅、銅合金(例えば、銅とクロムの合金、銅とアルミニウムの合金、銅とマンガンの合金等)、銅の酸化物、銅合金の酸化物、タングステン、タングステン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、金、銀などが挙げられる。導電性物質部は、公知のPVD法、CVD法、スパッタ法、メッキ法等により成膜できる。
【0080】
各層の厚さは、半導体デバイスの種類に応じて適宜定められるものであるが、例えば、層間絶縁膜の厚さは10〜2,000nm程度が好ましく、バリア膜の厚さは10〜1,000nm程度が好ましく、また、導電性物質部の厚さは10〜3,000nm程度が好ましい。
【0081】
以下に、
図1(a)〜(c)を用いて埋め込み配線を形成する方法の概略を示す。
図1(a)〜(c)は、埋め込み配線の形成工程の一例を示す模式図であり、各図は基板の断面を示している。
【0082】
まず、集積回路が形成された半導体基板上に層間絶縁膜を積層する。次いで、レジスト層形成、エッチング等の公知の手段によって、層間絶縁膜の表面に所定パターンの凹部(例えば、溝部)を形成して、凹部と凸部(例えば、隆起部)とを有する層間絶縁膜1を得る。次いで、層間絶縁膜1上にバリア膜を、PVD法、CVD法等により成膜し、表面の凹凸に沿って層間絶縁膜を被覆するバリア膜2を得る。更に、前記表面の凹凸に起因する凹部を充填してバリア膜を被覆する導電性物質部3を、PVD法、CVD法、メッキ法等により形成する。
【0083】
図1(a)に示すように、研磨前の基板100は、凹部及び凸部により構成される凹凸が表面に形成された層間絶縁膜1と、層間絶縁膜1の表面に沿って層間絶縁膜を被覆するバリア膜2と、凹部を充填してバリア膜を被覆する導電性物質部3とを有する。
【0084】
次に、第一の研磨工程により、前記実施形態の金属用研磨液を用いて、基板を研磨し、表面の導電性物質部3の一部(不要部分)を除去する。これにより、層間絶縁膜1の凸部上に位置するバリア膜2が表面に露出し、凹部に導電性物質が残された所望の配線パターンが得られる(
図1(b))。研磨が進行する際に、層間絶縁膜1の凸部上に位置するバリア膜2の一部が導電性物質部3と同時に除去されてもよい。
【0085】
第二の研磨工程では、第一の研磨工程により露出した、少なくとも凸部上に位置するバリア膜2を研磨し、除去する。バリア膜2に被覆されていた層間絶縁膜1の凸部が全て露出し、凹部に配線層となる導電性物質が残され、凸部と凹部との境界にバリア膜2の断面が露出した所望のパターンが得られた時点で研磨を終了する(
図1(c))。
【0086】
すなわち、まず、
図1(b)に示すように、第一の研磨工程として、前記実施形態の金属用研磨液で、層間絶縁膜1の凸部上のバリア膜2が露出するまで導電性物質部3を研磨する。次に、
図1(c)に示すように、第二の研磨工程として、バリア膜に適した研磨液で層間絶縁膜1の凸部が露出するまでバリア膜2を研磨して、研磨後の基板200を得る。
【0087】
研磨終了後に優れた平坦性を確保するために、更に、オーバー研磨して層間絶縁膜の凸部の一部を含む量を研磨してもよい。例えば、第二の研磨工程で所望のパターンを得られるまでの時間が100秒の場合、当該100秒の研磨に加えて50秒追加して研磨することを50%のオーバー研磨という。オーバー研磨は、10%〜200%が好ましい。
【0088】
このようにして形成された配線層の上に、更に、パッシベーション層、層間絶縁膜、バリア膜及び第二層目の導電性物質部を形成し、研磨して基板全面に渡って平滑な面とする。この工程を所定数繰り返すことにより、所望の配線層数を有する半導体基板を製造できる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0090】
[金属用研磨液の調製]
(実施例1)
ポリアクリル酸(質量平均分子量40,000)を容器に計り取り、純水を入れた後、グリシン、コハク酸、及び1H−ベンゾトリアゾールをこの順に加え、撹拌して混合し、溶解させた。その後、得られた溶液に、コロイダルシリカ(シリカ粒子含有量20質量%、純水含有量80質量%、扶桑化学工業株式会社製「PL−3−D」)を混合し、次いで、過酸化水素水(過酸化水素含有量30質量%、純水含有量70質量%)を混合し、実施例1の金属用研磨液を得た。各成分の含有量は、表1に示したとおりである。
【0091】
(実施例2〜4、6〜8)
コハク酸にかえて、表1に示す酸を、表1に示す含有量で用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4及び6〜8の金属用研磨液を得た。
【0092】
(実施例5)
コロイダルシリカを用いなかった以外は実施例4と同様にして、実施例5の金属用研磨液を得た。
【0093】
(実施例9)
1H−ベンゾトリアゾールにかえて、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾールを用いた以外は実施例3と同様にして、実施例9の金属用研磨液を得た。
【0094】
(実施例10及び11)
グリシンにかえて、表1に示すアミノ酸を用いた以外は実施例3と同様にして、実施例10及び11の金属用研磨液を得た。
【0095】
(比較例1〜6)
コハク酸にかえて、表2に示す酸を、表2に示す含有量で用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1〜6の金属用研磨液を得た。
【0096】
(比較例7)
コハク酸を用いなかった以外は実施例1と同様にして、比較例7の金属用研磨液を得た。
【0097】
(比較例8)
グリシン及びコハク酸を用いなかった以外は実施例1と同様にして、比較例8の金属用研磨液を得た。
【0098】
(比較例9)
コハク酸及び1H−ベンゾトリアゾールを用いなかった以外は実施例1と同様にして、比較例9の金属用研磨液を得た。
【0099】
(比較例10)
コハク酸及びポリアクリル酸を用いなかった以外は実施例1と同様にして、比較例10の金属用研磨液を得た。
【0100】
(砥粒の平均粒径)
砥粒であるコロイダルシリカの平均粒径は、光回折散乱式粒度分布計(マルバーンインスツルメンツ社製「ゼータサイザー3000HSA」)を用いて測定した。具体的には、実施例1〜4、6〜11及び比較例1〜10金属用研磨液をイオン交換水で希釈して試料を調製後(散乱光強度が500〜2000cps)、前記装置の試料槽に投入し、散乱光強度から算出される電気泳動移動度として得られる値を読み取った。実施例1〜4、6〜11及び比較例1〜10において、コロイダルシリカの平均粒径は70nmであった。
【0101】
(アクリル酸ポリマの質量平均分子量)
アクリル酸ポリマであるポリアクリル酸の質量平均分子量は、GPCによりポリアクリル酸ナトリウム標準物質で作成した検量線を用いて測定した。具体的には、以下の条件により測定し、「Mm」として得られる値を読み取った。実施例1〜11及び比較例1〜9の金属用研磨液では、質量平均分子量40,000のポリアクリル酸を用いた。
【0102】
使用機器(検出器):株式会社日立製作所製「L−3300型液体クロマトグラフ用示差屈折率計」
ポンプ:株式会社日立製作所製「L−7100型液体クロマトグラフ用」
データ処理:株式会社日立製作所製「D−2520型GPCインテグレーター」
カラム:昭和電工株式会社製「Shodex Asahipak GF−710HQ」、内径7.6mm×300mm
溶離液:50mM−Na
2HPO
4水溶液/アセトニトリル=90/10(v/v(体積比))
流量:0.6mL/min
試料:アクリル酸ポリマを、濃度2質量%になるように溶離液と同じ組成の溶液に溶解し、孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターでろ過し、試料を調製した。
注入量:0.4μL
校正用標準物質:Polymer Laboratories社製「狭分子量ポリアクリル酸ナトリウム」
【0103】
(金属用研磨液のpH)
金属用研磨液のpHを、pHメータを用い、以下の条件により測定した。各金属用研磨液のpHを表1及び2に示す。
【0104】
測定装置:株式会社堀場製作所製「pH Meter F−51」
測定温度:25℃
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃)及び中性りん酸塩pH緩衝液、pH6.86(25℃))を用いて2点校正した後、電極を金属用研磨液に入れて2分以上経過させ、安定した後のpHを測定した。
【0105】
[評価]
前記で得られた金属用研磨液を用い、(1)研磨速度(CMP速度)、(2)エッチング速度、(3)孔食数、及び(4)研磨傷数を評価した。
【0106】
(1)研磨速度(CMP速度)
金属用研磨液を用いて銅膜が形成された基板を研磨し、研磨前後の銅膜の膜厚の差[nm]を、研磨時間[min]で除することにより、研磨速度[nm/min]を求めた。研磨条件及び膜厚の測定方法は以下のとおりである。結果を表1及び2に示す。
(a)研磨条件
研磨装置:定盤直径600mm、ロータリータイプ
研磨パッド:独立気泡を持つ発泡ポリウレタン樹脂(ロームアンドハース社製「IC−1010」)
基板:厚さ1,000nmの銅膜が形成されたシリコンウエハ(ブランケットウエハ)
研磨圧力:21kPa
基板と研磨定盤との相対速度:36m/min
金属用研磨液の供給量:200mL/min
金属用研磨液の温度:25℃
研磨時間:60sec(1min)
(b)膜厚の測定方法
測定装置:株式会社日立国際電気製、金属膜厚計「VR−120」
測定方法:研磨前後の銅膜について、電気抵抗を測定し、抵抗定数からそれぞれの膜厚を算出した。
【0107】
(2)エッチング速度
金属用研磨液に銅膜が形成されたチップを浸漬し、浸漬前後の銅膜の膜厚の差[nm]を、浸漬時間[min]で除することにより、エッチング速度[nm/min]を求めた。浸漬条件及び膜厚の測定方法は以下のとおりである。結果を表1及び2に示す。
(a)浸漬条件
チップ:厚さ1,000nmの銅膜が形成されたシリコンウエハ(ブランケットウエハ)を切断し、20mm×20mmのチップを得た。
金属用研磨液の温度:25℃
浸漬方法:金属用研磨液100mLを100mLビーカーに加えた。スターラーを用いて回転数100min
−1で撹拌されている金属用研磨液に、チップを10分間浸漬した。
(b)膜厚の測定方法
測定装置:株式会社日立国際電気製、金属膜厚計「VR−120」
測定方法:浸漬前後の銅膜について、電気抵抗を測定し、抵抗定数からそれぞれの膜厚を算出した。
【0108】
(3)孔食数
金属用研磨液に銅膜が形成されたチップを浸漬し、浸漬後のチップの表面上の孔食の数[個/1mm
2]を測定した。ここで評価した孔食は、銅の腐食により生じた穴であると考えられる。結果を表1及び2に示す。
(a)浸漬条件
チップ:前記(2)エッチング速度の評価と同様の方法により、チップを得た。
金属用研磨液の温度:25℃
浸漬方法:前記(2)エッチング速度の評価と同様の方法により、金属用研磨液にチップを浸漬した。
(b)膜厚の測定方法
測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製、走査型電子顕微鏡(SEM)「S−4800」
測定方法:浸漬後のチップの表面を、SEMを用いて倍率1,000倍で観察し、1mm×1mmの範囲内の孔食の数を測定した。
【0109】
(4)研磨傷数
前記(1)研磨速度の評価において得られた、研磨後の基板の表面を目視で観察した。実施例1〜11及び比較例1〜10の金属用研磨液で研磨した基板全てに、明確な傷は認められなかった。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
表1中、「酸A」の欄に示された酸は、式(I)で表される酸に該当する酸である。また、表2中、「酸B」の欄に示された酸は、式(I)で表される酸には該当しない酸である。
【0113】
アミノ酸、式(I)で表される酸、ベンゾトリアゾール化合物、及びアクリル酸ポリマを含有する実施例1〜11の金属用研磨液は、いずれも、高い研磨速度、低いエッチング速度、且つ少ない孔食数を示し、更に少ない研磨傷数を示した。式(1)で表される酸を用いることによって孔食数が低下するという結果から、式(1)で表される酸が、酸でありながらも、金属用研磨液中で防食作用を発揮するという効果を奏していると推測される。
【0114】
中でも、式(I)においてRがアルケニレン基である酸を含有する実施例3及び4の金属用研磨液では、Rがアルキレン基である酸を含有する実施例1及び2の金属用研磨液と比べ高い研磨速度が得られた。また、式(I)で表される酸の分子量が小さい実施例1、3及び4の金属用研磨液では、それよりも分子量が大きい実施例2の金属用研磨液と比べ高い研磨速度が得られた。更に、分子量の小さいアミノ酸を含有する実施例3の金属用研磨液では、それよりも分子量の大きいアミノ酸を含有する実施例10及び11の金属用研磨液と比べ高い研磨速度が得られた。高い研磨速度を得るためには、式(I)におけるRがアルケニレン基であること、式(I)で表される酸の分子量が小さいこと、アミノ酸の分子量が小さいことなどが有効であると考えられる。
【0115】
また、式(I)で表される酸の含有量が異なる実施例4及び6〜8の金属用研磨液では、含有量が少ないほど高い研磨速度が得られ、含有量が多いほど低いエッチング速度が得られる傾向があった。式(I)で表される酸の含有量を変化させることにより、所望の特性、つまり、研磨速度とエッチング速度との所望のバランスを有する金属用研磨液を得ることができると考えられる。
【0116】
(実施例12〜22及び比較例11〜20)
実施例12〜22及び比較例11〜20として、それぞれ実施例1〜11及び比較例1〜10で得た金属用研磨液を用い、半導体基板への埋め込み配線形成工程における導電性物質部の研磨を行った(前記第一の研磨工程)。実施例12〜22では、導電性物質部が高い速度及び低いエッチング速度で良好に除去され、且つ、表面の欠陥数が少ないという結果が得られた。これに対し、比較例11〜20では、いずれも、実施例12〜22に比べ、表面の欠陥数、特に、孔食数が多いという結果であった。
【0117】
以上に実施例を用いて本発明の実施形態が有する効果を示した。実施例において用いた各成分以外にも、前記で説明したアミノ酸、式(I)で表される酸、ベンゾトリアゾール化合物、アクリル酸ポリマ等を用いて金属用研磨液を得ることができ、得られた金属用研磨液は、同様に優れた効果を示すものである。