特許第6236992号(P6236992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236992
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ポリウレタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/48 20060101AFI20171120BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20171120BHJP
   C08G 18/61 20060101ALI20171120BHJP
   C08G 18/46 20060101ALI20171120BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20171120BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20171120BHJP
   D01F 6/70 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C08G18/48
   C08G18/50 096
   C08G18/61
   C08G18/46 092
   C08G18/76
   C08J5/18CFF
   D01F6/70 Z
【請求項の数】12
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-175646(P2013-175646)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-77120(P2014-77120A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2016年5月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-206109(P2012-206109)
(32)【優先日】2012年9月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 貴紀
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/073970(WO,A1)
【文献】 特開2011−174037(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052659(WO,A1)
【文献】 特開2011−173936(JP,A)
【文献】 特開平02−242868(JP,A)
【文献】 特開2006−169444(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/007577(WO,A1)
【文献】 特開2004−010806(JP,A)
【文献】 特開平03−140320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 − 64/42
C08G 81/00 − 85/00
C08G 77/00 − 77/62
C08G 18/00 − 18/87
C08G 71/00 − 71/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサンポリオール(a)、ポリエーテルポリオール(b)、イソシアネート化
合物(c)、及び鎖延長剤(d)を原料として製造することを特徴とするポリウレタンの
製造方法であって、該ポリシロキサンポリオール(a)が、ポリシロキサン骨格を有する
ポリシロキサンポリオール(i)と、ポリエーテルポリオール(ii)とをカーボネート
結合で連結させたポリシロキサンポリオールであることを特徴とするポリウレタンの製造
方法。
【請求項2】
前記ポリシロキサンポリオール(i)が、複数のエーテル結合を有することを特徴とす
る請求項1に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項3】
前記ポリシロキサンポリオール(a)が、前記ポリシロキサンポリオール(i)に炭酸
ジエステルを反応させて水酸基をカーボネート化した後にポリエーテルポリオール(ii
)を反応させて得たポリシロキサンポリオールであることを特徴とする請求項1又は2に
記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリオール(ii)がポリテトラメチレンエーテルグリコールである
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のポリポリウレタンの製造方法。
【請求項5】
前記ポリシロキサンポリオール(a)の数平均分子量が500〜6,000であること
を特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項6】
前記ポリシロキサンポリオール(a)の使用量の割合が、前記ポリシロキサンポリオー
ル(a)と前記ポリエーテルポリオール(b)の合計使用量に対して0.01〜20質量
%であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方
法。
【請求項7】
前記イソシアネート化合物(c)が芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする
請求項1乃至のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項8】
前記鎖延長剤(d)がポリアミン化合物であることを特徴とする請求項1乃至のいず
れか1項に記載のポリウレタンの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法により得られたことを特
徴とするポリウレタン。
【請求項10】
請求項に記載のポリウレタンから構成されることを特徴とするポリウレタン成形体。
【請求項11】
請求項に記載のポリウレタンを含むことを特徴とするポリウレタンフィルム。
【請求項12】
請求項に記載のポリウレタンを含むことを特徴とするポリウレタン繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリシロキサンポリオール、それを用いたポリウレタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン及びポリウレタンウレアは様々な分野で応用されており、その中でも、弾性繊維等の用途に用いられることが多い。特に、ポリウレタンウレア構造を持つ繊維は、ソフトセグメント成分としてポリエーテルポリオール、ハードセグメントとしてポリアミン化合物を使用しているために凝集力が高く、弾性特性、伸長回復性に優れた性質を有している。
【0003】
しかし、これらポリウレタン及びポリウレタンウレア等のポリウレタン系弾性繊維は繊維同士の粘着性が高いために紡出時の解舒性が悪い。又、摩擦抵抗が大きいために糸が接触する紡糸機、整経機、編み機及びガイド等の加工工程にある機器で糸切れを起こす等の問題が発生し易い。
そこで、加工工程の機器と糸との摩擦抵抗を低下させて、このような問題を解決する手段として、固体の金属石鹸、油溶性高分子、高級脂肪酸及びアミノ変性シリコーン等を油剤としてポリウレタン系弾性繊維に添加する方法、平滑剤としてタルク、シリカ、コロイダルアルミナ及び酸化チタン等をポリウレタン系弾性繊維に分散させる方法、並びにシリコンジオールまたはシリコンジアミンをポリウレタン主鎖の一部に導入する方法等が検討されてきた(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、これらの方法でも、十分な粘着防止効果が得られなかったり、平滑剤が紡糸機、整経機、編み機やガイド等に重大な磨耗を生じさせたりするといった問題があった。
又、整経若しくは編みたて工程において油剤成分によって抽出された糸中のオリゴマー、または油剤中の固体若しくは高粘度成分が固体またはペースト状になって分離したものが、繊維、紡糸機、整経機、編み機及びガイド等に多量に付着するため、製品汚損並びに機械及び器具の目詰まりを生じるといった問題があり、課題の解決に至っていない。
【0005】
このため、前記油剤及び平滑剤を使わずとも、粘着性を低下させ、紡出時の解舒性が高いポリウレタン、即ち、剥離性が高いポリウレタンを製造する方法が求められてきた。
一方、ポリウレタンの原料にポリシロキサンポリオールを用いてポリウレタンの特性を改良させた例がこれまでに数多く報告されている。例えば、変性ポリシロキサンジオールを使用した、高反発弾性率を有する熱可塑性ポリウレタン(特許文献2)、エーテル変性シリコーンを使用した、ソフトで良好な着用感を有するポリウレタン弾性繊維(特許文献3)、カルボン酸変性シリコーンをポリエーテルポリオールで変成したポリエーテル変成シリコーンを使用した、透明性および平滑性に優れたポリウレタン(特許文献4)等が挙げられる。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の熱可塑性ポリウレタンは、他のポリオールに対する変性ポリシロキサンジオールの使用量が非常に多いため、ポリウレタン成形体の柔軟性および透明性が不足しているという問題があった。
また、特許文献3に記載の方法では、ポリウレタンを製造した後に、得られたポリウレタンにエーテル変性シリコーンを添加するため、エーテル変性シリコーンが繊維表面から脱落し易いという問題があった。更に、ポリウレタンを製造する際に前記エーテル変性シリコーンを反応させようとしても、他のポリオールとの相溶性が不十分であり、均質なポリウレタンが生成しにくいといった問題もあった。
【0007】
また、特許文献4に記載の方法では、ポリエーテル変成シリコーンを少量添加することにより相溶性および平滑性に優れたポリウレタンを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−259577号公報
【特許文献2】特開2004−250683号公報
【特許文献3】特開2004−332126号公報
【特許文献4】特開2011−174037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明者が検討したところ、特許文献4に記載の方法では、ポリエーテル変成シリコーン原料のカルボン酸変性シリコーンの製造が難しいため、不飽和カルボン酸が不純物として残存するという課題があることが見出された。不飽和カルボン酸は、ウレタン化の際に着色原因となることや、ポリエーテルとの反応により生成する不飽和モノオールが末端封止剤となりウレタン化反応を阻害して製造効率が悪くなるといった問題が生じる可能性がある。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、剥離性が高く均質性に優れ、着色が少なく、弾性繊維やフィルム及び衣料等の用途に極めて有用なポリウレタンを効率良く製造する製造方法、及びその原料用のポリシロキサンポリオールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリウレタンを製造するにあたり、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオールとポリエーテルポリオールとをカーボネート結合で連結させたポリシロキサンポリオールを原料として用いた場合に、製造効率が高く、かつ、得られるポリウレタンが一定以上の透明性を有しつつも高い剥離性を示し、着色が少ないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の要旨は以下である。
[1] ポリシロキサンポリオール(a)、ポリエーテルポリオール(b)、イソシアネート化合物(c)、及び鎖延長剤(d)を原料として製造することを特徴とするポリウレタンの製造方法であって、該ポリシロキサンポリオール(a)が、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)と、ポリエーテルポリオール(ii)とをカーボネート結合で連結させたポリシロキサンポリオールであることを特徴とするポリウレタンの製造方法。
[2] 前記ポリシロキサンポリオール(i)が、複数のエーテル結合を有することを特徴とする[1]に記載のポリウレタンの製造方法。
[3] 前記ポリシロキサンポリオール(a)が、前記ポリシロキサンポリオール(i)に炭酸ジエステルを反応させて水酸基をカーボネート化した後にポリエーテルポリオール(ii)を反応させて得たポリシロキサンポリオールであることを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリウレタンの製造方法。
[4] 前記ポリシロキサンポリオール(i)がカルビノール変性シリコーンであることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。
[5] 前記ポリエーテルポリオール(ii)がポリテトラメチレンエーテルグリコールであることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1項に記載のポリポリウレタンの製造方法。
[6] 前記ポリシロキサンポリオール(a)の数平均分子量が500〜6,000であ
ることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。[7] 前記ポリシロキサンポリオール(a)の使用量の割合が、前記ポリシロキサンポリオール(a)と前記ポリエーテルポリオール(b)の合計使用量に対して0.01〜20質量%であることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。
[8] 前記イソシアネート化合物(c)が芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。
[9] 前記鎖延長剤(d)がポリアミン化合物であることを特徴とする[1]乃至[8]のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法。
[10] [1]〜[9]のいずれか1項に記載のポリウレタンの製造方法により得られたことを特徴とするポリウレタン。
[11] [10]に記載のポリウレタンから構成されることを特徴とするポリウレタン成形体。
[12] 表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比であるSi/Cが0.05〜0.40であることを特徴とする[11]に記載のポリウレタン成形体。
[13] [10]に記載のポリウレタンを含むことを特徴とするポリウレタンフィルム。
[14] [10]に記載のポリウレタンを含むことを特徴とするポリウレタン繊維。
[15] ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)と、ポリエーテルポリオール(ii)とをカーボネート結合で連結させたポリシロキサンポリオール(a)。
[16] 分子内におけるポリシロキサン部位含有量が20〜50質量%である、[15]に記載のポリシロキサンポリオール(a)。
[17] [15]又は[16]に記載のポリシロキサンポリオール(a)と、ポリエーテルポリオール(b)とを含むことを特徴とするポリオール混合物。
[18] [17]に記載のポリオール混合物と、イソシアネート化合物(c)とを反応させて得たポリウレタンプレポリマー。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、剥離性が高く、均質性に優れ、着色が少なく、弾性繊維、フィルム及び衣料等の用途に極めて有用なポリウレタンを効率よく製造する製造方法、及びその原料用のポリシロキサンポリオールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に記載するが、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下に記載の態様に限定されない。
<1.ポリウレタンの製造>
<1−1.ポリウレタンの製造原料>
本発明のポリウレタンは、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)とポリエーテルポリオール(ii)とをカーボネート結合で連結させたポリシロキサンポリオール(a)[以降、ポリシロキサンポリオール(a)ということがある]、ポリエーテルポリオール(b)、イソシアネート化合物(c)、及び鎖延長剤(d)を原料として得られるものである。
【0015】
尚、本発明において、ポリウレタンとは、特に限定がない限り、類似の物性を有することが従来から知られているポリウレタンとポリウレタンウレアの両者を言う。
ここで、ポリウレタンとポリウレタンウレアの構造的特徴の違いとしては、ポリウレタンは、主としてウレタン結合によって連鎖構造を形成するポリマーであり、ポリウレタンウレアは、主としてウレタン結合及びウレア結合によって連鎖構造を形成するポリマーで
ある。原料面からの違いとしては、ポリウレタンは、鎖延長剤として短鎖ポリオールを使用し製造されるものであり、ポリウレタンウレアは、鎖延長剤としてポリアミン化合物を使用し製造されるものである。
【0016】
各原料の組成割合は、通常、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の水酸基の合計のモル数をA、イソシアネート化合物(c)のイソシアネート基のモル数をB、鎖延長剤(d)の活性水素置換基(水酸基及び/又はアミノ基)のモル数をCとした場合、A:Bが、通常1:10〜1:1の範囲であることが好ましく、1:5〜1:1.05の範囲であることがより好ましく、1:3〜1:1.1の範囲であることが更に好ましく、1:2.5〜1:1.2の範囲であることが特に好ましく、1:2〜1:1.2の範囲であることが最も好ましく、且つ、(B−A):Cが、通常1:0.1〜1:5の範囲であることが好ましく、1:0.8〜1:2の範囲であることがより好ましく、1:0.9〜1:1.5の範囲であることが更に好ましく、1:0.95〜1:1.2の範囲であることが特に好ましく、1:0.98〜1:1.1の範囲であることが最も好ましい。
【0017】
<1−1−1.ポリシロキサンポリオール(a)>
本発明において用いられるポリシロキサンポリオール(a)は、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)と、ポリエーテルポリオール(ii)をカーボネート結合で連結させて得られる。
なお、カーボネート結合で連結するに際しては、上記(i)と(ii)とをカーボネート結合で直接連結しても良いし、(i)と(ii)とは異なるポリオール等を介してカーボネート結合で連結する、つまり、(i)と(ii)とを間接的に連結しても良い。
【0018】
本発明において用いられるポリシロキサンポリオール(a)中の、ポリシロキサン部位の割合は特に限定されるものではないが、下限は、通常5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましく、25質量%以上が最も好ましい。前記割合の数値が大きくなるほど、得られるポリウレタンの剥離性が向上する傾向となる。
【0019】
一方、上限は、通常90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましく、60質量%以下が特に好ましく、50質量%以下が最も好ましい。前記割合の数値が小さくなるほどポリエーテルポリオール(b)との相溶性が向上して得られるポリウレタンの透明性や均質性が高くなる傾向となる。なお、ポリシロキサンポリオール(a)中の、ポリシロキサン部位の割合は、例えば、NMRを測定することにより、算出することができる。
【0020】
前記ポリシロキサンポリオール(a)の数平均分子量は特に限定されるものではないが、下限は、通常500以上が好ましく、700以上がより好ましく、1000以上が更に好ましい。また、上限は、通常6000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、4500以下が更に好ましい。
数平均分子量を前記上限以下とすることにより、ポリウレタン製造時に使用するポリエーテルポリオール(b)や溶媒との相溶性が良くなり、均質なポリウレタンを製造し易い。また、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の混合物(以下、ポリオール混合物ということがある)またはプレポリマー、プレポリマー溶液を形成した際に、それらの粘度が高くなりすぎることを抑え、操作性及び生産性が向上する傾向がある。前記下限以上とすることにより、得られるポリウレタン重合体の剥離性を十分発現させることができる。
【0021】
本発明において用いられるポリシロキサンポリオール(a)の性状は特に限定されるも
のではないが、常温で液状又はワックス状のものであり、ポリシロキサンポリオール(a)の性状や形態は、用途に応じて種々選択すればよい。
本発明において用いられるポリシロキサンポリオール(a)は、通常、分子内に2個以上のカーボネート結合と2個以上のヒドロキシル基を有するものである。また、分子内に複数のエーテル結合を有することが好ましい。
【0022】
該ポリシロキサンポリオール(a)は、通常、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)1分子が有する2個以上のヒドロキシル基が、少なくとも2分子のポリエーテルポリオール(ii)のヒドロキシル基とカーボネート結合を介して連結し、合計として1分子中に2個以上のカーボネート結合を有すると共に、結合した少なくとも2分子の各ポリエーテルポリオール(ii)の有する2個以上のヒドロキシル基のうちカーボネート結合を形成していない残余の1個以上のヒドロキシル基を合計として1分子中に2個以上有するものである。
【0023】
本発明におけるポリシロキサンポリオール(a)の製造方法としては、以上の分子構造を有する限り特に限定されるものではないが、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)に炭酸ジエステルを反応させて水酸基をカーボネート化した後に、ポリエーテルポリオール(ii)を反応させて製造することが好ましい。
ポリシロキサンポリオール(a)の好ましい分子構造としては、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)に由来する部分(〔X〕とする)とポリエーテルポリオール(ii)に由来する部分(〔Y〕とする)がカーボネート結合を介して連結されたYXY型である。ポリシロキサンポリオール(i)に過剰のカーボネート源を反応させて両末端をカーボネート化した後にポリエーテルポリオール(ii)を反応させてエステル交換反応を行えば、YXY型のポリシロキサンポリオールを優先的に製造することが可能となる。
【0024】
ただし、上記エステル交換反応は通常高温条件で行われるため、前述した望ましいエステル交換反応以外にも種々のエステル交換反応が起こり、YXY型だけでなくXYX型やXXX型やYYY型などの複数の分子構造が含まれる可能性があるが、これらの分子構造が含まれていても良い。
しかし、本発明において用いられるポリシロキサンポリオール(a)はYXY型の分子構造が最も好ましいため、ポリシロキサンポリオール(i)の両末端を先にカーボネート化した後にポリエーテルポリオール(ii)を反応させてエステル交換反応を行い、YXY型分子の含有率を高めることが重要となる。
【0025】
尚、一般に、ポリウレタン製造時におけるシリコーン系化合物の添加は、得られるポリウレタンの剥離性を向上させるために効果的である。しかし、シリコーン系化合物は、ポリウレタンの製造において、他の主原料であるポリエーテルポリオールや溶媒との相溶性が悪く、ポリウレタンが白濁したり、均質なフィルムまたは繊維が製造しにくいといった問題があった。
【0026】
これに対し、本発明においては、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)とポリエーテルポリオール(ii)をカーボネート結合で連結したポリシロキサンポリオール(a)を用いることにより、ポリシロキサンポリオール(a)中のポリシロキサン部位の割合が小さくなるほど剥離性は悪化するものの、後述するポリウレタンの製造において、このポリシロキサンポリオール(a)と後述するポリエーテルポリオール(b)の混合物を作製する際の両者の相溶性が向上し、均質で透明なフィルムまたは繊維を製造しやすくなるものである。
【0027】
<1−1−1−1−1.ポリシロキサンポリオール(a)の製造原料>
前述したような、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)とポリエーテルポリオール(ii)をカーボネート結合で連結させて得られるポリシロキサンポリオール(a)の製造について、以下に詳述する。
<1−1−1−1−1−a.ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)>
本発明において用いられるポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)は、通常、複数のシロキサン部位及び複数のヒドロキシル基を有する化合物であり、そのポリシロキサン骨格としては、シロキサン骨格を有する限り特に限定されるものではなく、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン等のポリアルキルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、及びポリジフェニルシロキサン等が挙げられる。これらの中で、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0028】
ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)は、ヒドロキシル基を複数有していてよいが、2個であるのが好ましい。
ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)中のヒドロキシル基の位置は特に限定されず、例えば、ヒドロキシル基を分子側鎖に有するもの、分子の両末端に有するもの、分子の片末端と側鎖に有するもの、及び分子の片末端のみに有するもの等が挙げられる。
【0029】
その中でも、高物性のポリウレタンを得るためには、ヒドロキシル基をポリシロキサンの両末端に有するポリシロキサンポリオールが特に好ましい。
また、前記ポリシロキサンポリオール(i)は、エーテル結合を有するものが好ましく、1分子中に複数のエーテル結合を有するものがより好ましい。分子中のエーテル結合の位置は特に限定されないが、直鎖状ポリシロキサンポリオールの両末端にエーテル結合を有することが特に好ましい。ポリシロキサンポリオール(a)の相溶性を向上させるためにはエーテル結合数は多い方が好ましいが、相溶性についてはポリシロキサンポリオール(i)に連結させるポリエーテルポリオール(ii)の分子量で調整可能であるため、最適なエーテル結合数は特に定めない。
【0030】
尚、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)のいくつかは市販されており、本発明においてもそれら公知のものが使用できる。例えば、カルビノール変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンが挙げられ、カルビノール変性シリコーンであることが好ましい。
ポリシロキサンポリオール(i)の製造方法も特に限定されないが、ポリジメチルシロキサンを原料として、エチレングリコールやポリオキシアルキレングリコールのモノアリルエーテルを反応させてヒドロシリル化にて製造したものであることが好ましい。この場合、完全にヒドロシリル化反応を進行させるためには過剰のアリルエーテルを使用する必要があるが、剰余分のアリルエーテルはストリッピング等により容易に除去することが可能である。つまり、未反応原料を残存することなくポリシロキサンポリオール(i)を製造することが可能であり、変性シリコーン製造時に未反応原料の不飽和カルボン酸が必ず残存するカルボン酸変性シリコーンとは異なる。カルボン酸変性シリコーンは主にポリジメチルシロキサンおよび不飽和カルボン酸を原料としてヒドロシリル化反応で製造されるが、不飽和カルボン酸を過剰に反応させて製造する。このため、未反応原料として不飽和カルボン酸が残り、さらに、使用する不飽和カルボン酸の分子量が大きいため、未反応原料として残った不飽和カルボン酸を完全に除去することができない。
【0031】
尚、ポリシロキサン骨格を有し、複数のエーテル結合を有するポリシロキサンポリオール(i)は、通常、ポリシロキサン骨格の珪素原子に−R−O−(R−O)−Hのポリオキシアルキレンアルキルエーテルが複数連結したものである。Rは独立して炭素数1〜15のアルキレン基、Rは独立して炭素数2〜6のアルキレン基、nは独立して
1〜50の整数である。
【0032】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル基がポリシロキサン骨格の両末端に連結したポリシロキサンポリオールが特に好ましい。
本発明において用いられるポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)の分子量は、数平均分子量で、300以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、700以上であることが更に好ましい。また、5,000以下であることが好ましく、4,000以下であることがより好ましく、3,000以下であるものが更に好ましい。
【0033】
数平均分子量を前記上限以下とすることにより、カーボネート化反応によりポリシロキサンポリオール(a)を製造する際に、ポリエーテルポリオール(ii)やカーボネート源との相溶性が良くなりカーボネート化反応が進行しやすくなるだけでなく、ポリウレタン製造時に使用するポリエーテルポリオール(b)や溶媒との相溶性の悪化を防ぎ、均質なポリウレタンを製造し易くなる。また、分子量が大きくなりすぎるのを防ぎ、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の混合物(以下、ポリオール混合物ということがある)やプレポリマー、プレポリマー溶液を形成した際のそれらの粘度を抑え、操作性及び生産性を向上することができる。
【0034】
一方、前記下限以上とすることにより、ポリシロキサンポリオール(a)中のポリシロキサン部位含有量を増加させて、得られるポリウレタン重合体の剥離性を十分発現させることができる。
尚、本発明において用いられるポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)の性状は、特に限定されるものではなく、常温で液状のものもワックス状のものも使用可能である。ハンドリング性が良いことから、液状のものが好ましい。
【0035】
<1−1−1−1−1−b.ポリエーテルポリオール(ii)>
本発明において用いられるポリエーテルポリオール(ii)は、通常、分子内の主骨格中に1つ以上のエーテル結合を有するヒドロキシ化合物である。主骨格中の繰り返し単位としては、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素のどちらでもよく、又、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。
【0036】
主骨格中の繰り返し単位としては、例えば、1,2−エチレングリコール単位、1,2−プロピレングリコール単位、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)単位、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール単位、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)単位、2−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、1,6−ヘキサンジオール単位、1,7−ヘプタンジオール単位、1,8−オクタンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、1,10−デカンジオール単位及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等が挙げられる。
【0037】
ポリエーテルポリオール(ii)としては、前記繰り返し単位を主骨格中に有するポリエーテルポリオールのうち、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルポリオール(例えば、保土ヶ谷化学社製「PTG−L1000」、「PTG−L2000」及び「PTG−L3500」等)及びネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルグリコール等が好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコールがより好ましい。
【0038】
これらのポリエーテルポリオールは、単独で用いても二種以上を混合して使用することもでき、求めるポリウレタンの物性に応じて種々選択すればよい。均質なポリウレタンを得るためには、ポリウレタン製造時に使用するポリエーテルポリオール(b)と同一のポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
本発明において用いられるポリエーテルポリオール(ii)の分子量は、数平均分子量で、200以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、500以上であることが更に好ましい。また、3,000以下であることが好ましく、2,500以下であることがより好ましく、2,000以下であることが更に好ましい。
【0039】
数平均分子量を前記上限以下とすることにより、生成するポリシロキサンポリオール(a)の分子量が非常に大きく粘度が高くなりすぎるのを防ぎ、ポリウレタン製造時の操作性及び生産性を向上することができる。また、ポリシロキサンポリオール中のポリエーテル部位含有量が高くなり過ぎるのを防ぎ、ポリウレタンの剥離性を十分発現させることができる。
【0040】
一方、数平均分子量を前記下限以上とすることにより、ポリシロキサンポリオール中のポリエーテル部位含有量が十分となり、ポリエーテルポリオール(b)との相溶性が良く、均質なポリウレタンを生成することができる。
尚、数平均分子量は、JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法により求めることができる。
【0041】
<1−1−1−1−2.ポリシロキサンポリオール(a)の製造>
<1−1−1−1−2−a.触媒>
本発明におけるポリシロキサンポリオール(a)は、好ましくは、前記ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)と炭酸ジエステルとのカーボネート化反応並びに前記ポリエーテルポリオール(ii)とのエステル交換反応によって得られるものである。
【0042】
前記カーボネート化反応並びにエステル交換反応は、触媒の存在しない系で行うことも可能ではあるが、通常は、これらの反応を円滑に進行させるために、金属触媒を用いることができる。なお、カーボネート化反応とエステル交換反応とで触媒種を変更したり、触媒使用量を変更してもよいが、カーボネート化反応で用いた触媒をそのままエステル交換反応でも使用することが好ましい。
【0043】
前記金属触媒としては、通常のエステル交換反応に使用されているいずれの触媒も用いることができる。その場合得られたポリシロキサンポリオール(a)中にその触媒が残存する事があるが、あまり多くの触媒が残存するとウレタン化反応を想定以上に促進したりすることがあり、好ましくない。ポリシロキサンポリオール(a)中に残存する触媒量は、金属の含有量として好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。残存する金属の種類としては、下記のエステル交換能を有する金属が挙げられる。
【0044】
エステル交換触媒として利用できる金属は、一般にエステル交換能があるとされている、金属であれば制限なく用いる事ができる。金属の例をあげると、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;チタン、ジルコニウム、ハフニウム、コバルト、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマスなどの遷移金属;ランタン、セリウム、ユーロピウム、イッテルビウムなどランタナイド系金属などが挙げられる。これらの金属は金属の単体として使用される場合と、塩として使用される場合があるが、塩として使用される場合の塩の例としては、水酸化物の他に、塩化物、
臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩;酢酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩などのカルボン酸塩;メタンスルホン酸やトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸塩;燐酸塩や燐酸水素塩、燐酸二水素塩などの燐含有の塩;アセチルアセトナート塩;さらにはメトキシドやエトキシドの様なアルコキシドを用いる事ができる。好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の酢酸塩やハロゲン化物、アルコキシドが用いられる。これらの金属、および金属化合物は単独でも組み合わせて用いてもよい。
【0045】
エステル交換触媒のアルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が挙げられる。
【0046】
アルカリ土類金属化合物の例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0047】
遷移金属の塩の例としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロポキシチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートなどのチタンアルコキシド;四塩化チタンなどのチタンのハロゲン化物;酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛の塩;塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシドなどのスズ化合物;ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシドなどのジルコニアの塩;酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、塩化鉛(IV)等の鉛化合物等が挙げられる。
【0048】
これらの中でも、入手が容易で毒性も低く、エステル化またはエステル交換反応に幅広く使用されていることから、イソプロピルチタネート及びn−ブチルチタネート等のチタン系触媒が最も好ましい。
その際の触媒の使用量は、ポリシロキサンポリオール(a)調製用原料総量に対して0.00001質量%以上が好ましく、0.0001質量%以上が更に好ましく、0.001質量%以上が最も好ましい。また、1.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.02質量%以下が最も好ましい。
触媒の使用量を前記下限以上とすることにより、ポリシロキサンポリオール形成にかかる時間を短縮し、生成物の着色を防ぐことができる。また、前記上限以下とすることにより、触媒が、ポリウレタン化反応に対する過剰な反応促進作用を示すのを防ぐことができる。
【0049】
<1−1−1−1−2−b.カーボネート化およびエステル交換反応>
本発明のポリシロキサンポリオール(a)の製造は、通常、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)と炭酸ジエステルとポリエーテルポリオール(ii)を、カーボネート化反応並びにエステル交換反応させる事により実施する事が出来る。カ
ーボネート化反応並びにエステル交換反応は同時に行っても良いが、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)に過剰の炭酸ジエステルを反応させてカーボネート化し、このカーボネート化体にポリエーテルポリオール(ii)を反応させてエステル交換反応によりポリシロキサンポリオール(a)を製造することが好ましい。
【0050】
本発明のポリシロキサンポリオール(a)の製造に用いる事のできる炭酸ジエステルとしては、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートまたはアルキレンカーボネートである。ジアルキルカーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、エチルイソブチルカーボネート等が挙げられる。ジアリールカーボネートの例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート等が挙げられる。さらにアルキレンカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、1,3−ペンチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート、1,5−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネートおよび2,4−ペンチレンカーボネート、ネオペンチルカーボネート等が挙げられる。
【0051】
これらの中でもジアルキルカーボネートが安価かつ回収が容易であり、工業的に製造する上では、効率的であり好ましく、中でも工業原料として容易にかつ安価に入手可能なジエチルカーボネートがより好ましい。これら炭酸ジエステルの使用量は、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)に対して下限が、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上であり、特に好ましくは4.0であり、上限は好ましくは10.0以下、より好ましくは7.0以下、さらに好ましくは6.0以下のモル比である。
【0052】
炭酸ジエステル使用量を前記下限以上とすることにより、カーボネート化反応を十分進行させることができる。ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)中には通常水酸基が2つ以上存在するため、これらの水酸基を全てカーボネート化させることが好ましい。また、炭酸ジエステル使用量を前記上限以下とすることにより、炭酸ジエステル回収に必要なエネルギーを低減することができる。
【0053】
カーボネート化体を得る際のカーボネート化反応の反応温度は、通常100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上が更に好ましく、130℃以上が特に好ましい。また、通常200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、170℃以下が更に好ましく、160℃以下が特に好ましい。カーボネート化反応の初期はアルコールの留出量が多いため、反応初期は上記最適温度範囲の低めの温度で反応を行い、アルコールの留出量が減ってきた反応後半は上記最適温度範囲の高めの温度で反応を行うことが好ましい。具体的には、アルコールや炭酸ジエステルの留出が観測されなくなってから、カーボネート化反応開始時よりも反応温度を10℃以上高くすることが好ましい。
【0054】
反応温度を前記下限以上とすることにより、カーボネート化反応を進行しやすくすることができる。また、反応温度を前記上限以下とすることにより、炭酸ジエステルの留出量を減らすことができる。
カーボネート化体を得る際のカーボネート化反応は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。反応圧力は任意であり、目的に応じて常圧又は減圧下で実施することができる。反応中に生成するアルコールを反応系から除去するために、反応系に不活性ガスを流通させてもよい。
【0055】
又、カーボネート化体を得る際のカーボネート化反応の反応時間は、触媒の使用量、反応温度、反応させる基質、生成するポリシロキサンポリオールの物性等により異なるが、通常2時間以上とすることが好ましく、4時間以上とすることがより好ましい。また、通常12時間以下とすることが好ましく、10時間以下とすることがより好ましい。
このカーボネート化体にポリエーテルポリオール(ii)を反応させてエステル交換反応によりポリシロキサンポリオール(a)を製造する際の、エステル交換反応の反応温度は、通常100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましく、150℃以上が特に好ましい。また、通常250℃以下が好ましく、240℃以下がより好ましく、230℃以下が更に好ましく、220℃以下が特に好ましい。
【0056】
反応温度を前記下限以上とすることにより、エステル交換反応を十分進行させることができる。また、反応温度を前記上限以下とすることにより、生成物の着色を抑えることができる。
また、エステル交換反応の初期は炭酸ジエステル含有量やアルコール生成量が多いため、反応初期は150〜170℃の温度で反応を行い、炭酸ジエステル含有量やアルコール留出量が減ってきた反応後半は170〜190℃の温度で反応を行うことが好ましい。具体的には、アルコールの留出が観測されなくなってから、エステル交換反応開始時よりも反応温度を10〜20℃以上高くすることが好ましい。
【0057】
又、エステル化またはエステル交換反応は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。反応圧力は任意であり、目的に応じて常圧又は減圧下で実施することができる。反応中に生成する水やアルコールを反応系から除去するために、反応系に不活性ガスを流通させてもよい。
又、エステル化反応の反応時間は、触媒の使用量、反応温度、反応させる基質により異なるが、通常1時間以上とすることが好ましく、2時間以上とすることがより好ましい。また、通常30時間以下とすることが好ましく、20時間以下とすることがより好ましい。
【0058】
なお、カーボネート化反応並びにエステル交換反応を同時に行う場合には、その反応温度は、通常100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましく、150℃以上が特に好ましい。また、通常240℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましく、210℃以下が更に好ましく、200℃以下が特に好ましい。
又、その反応時間は、触媒の使用量、反応温度、反応させる基質、生成するポリシロキサンポリオールの物性等により異なるが、通常2時間以上とすることが好ましく、3時間以上とすることがより好ましい。また、通常30時間以下とすることが好ましく、20時間以下とすることがより好ましい。
【0059】
なお、ポリシロキサンポリオール(i)とポリエーテルポリオール(ii)の使用量は特に限定されるものではないが、ポリシロキサンポリオール(i)のモル量に対して、ポリエーテルポリオール(ii)の使用量として、通常2.0モル当量以上であることが好ましく、2.05モル当量以上であることがより好ましく、2.1モル当量以上であることが更に好ましく、2.15モル当量以上であることが特に好ましく、2.2モル当量以上であることが最も好ましい。
【0060】
また、通常5.0モル当量以下であることが好ましく、4.5モル当量以下であることがより好ましく、4.0モル当量以下であることが更に好ましく、3.5モル当量以下であることが特に好ましく、3.0モル当量以下であることが最も好ましい。
ポリエーテルポリオール(ii)の使用量を前記上限以下とすることにより、ポリシロキサンポリオールやそのカーボネート化体とポリエーテルポリオールの相溶性が向上し、
エステル交換反応が進行しやすくなる傾向となる。使用量を前記下限以上とすることにより、エステル交換に必要なポリエーテルポリオールが確保でき、エステル交換反応を押し切りやすい傾向となる。
【0061】
なお、通常のエステル交換反応ではポリエーテルポリオール(ii)を過剰に加えた方がカーボネートに対するヒドロキシル基の量が多くなりエステル交換反応は押し切りやすいが、本発明のポリシロキサンポリオール(a)製造時にはポリエーテルポリオール(ii)をポリシロキサンポリオール(i)に対して小過剰量反応させることが好ましい。これは、ポリエーテルポリオール(ii)を過剰量添加すると、親水的なポリエーテルポリオールが余剰となり、疎水的なポリシロキサンポリオール(i)や同カーボネート体との相溶性が悪く、反応液が不均一化するためにエステル交換反応が進行しにくくなるためである。
【0062】
<1−1−1−1−2−c.後処理>
ポリシロキサンポリオール生成物からのエステル交換触媒等の除去には通常繁雑な工程を伴うので、生成したポリシロキサンポリオールは、一般にエステル交換触媒を分離することなく、そのままポリウレタンの製造に使用することが多い。しかし、触媒の含有量が多い場合やポリウレタンの用途によってはポリシロキサンポリオール中のエステル交換触媒を失活させておくことが好ましい。
【0063】
ポリシロキサンポリオール中のエステル交換触媒の失活方法としては、例えば、ポリシロキサンポリオールを加熱下に水と接触させる方法、並びにポリシロキサンポリオールを燐酸、燐酸エステル、亜燐酸及び亜燐酸エステル等の燐化合物で処理する方法等を挙げることができる。
水と接触させる前者方法による場合は、例えば、ポリシロキサンポリオールに水を1質量%以上添加して、好ましくは70〜150℃、より好ましくは90〜130℃の温度で1〜3時間程度加熱すればよい。その際の加熱による失活処理は、常圧下で行っても加圧下で行ってもよい。失活処理後に系を減圧にすると、失活に用いた水分をポリシロキサンポリオールから円滑に除去することができる。
【0064】
<1−1−1−1−3.ポリシロキサンポリオール(a)の物性>
所望のポリウレタン樹脂の物性に応じて、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)及びポリエーテルポリオール(ii)の重合度を調節することにより、生成するポリシロキサンポリオール(a)の分子量やポリシロキサン骨格の含有量を変化させることが容易に可能である。
【0065】
又、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)1分子に過剰量の炭酸ジエステルを反応させてカーボネート化し、本化合物に対してポリエーテルポリオール(ii)を2分子以上の割合で加えてエステル交換を実施し、ポリシロキサンポリオール(a)と未反応のポリエーテルポリオール(ii)の混合物をウレタン化反応の原料として使用してもよい。
【0066】
<1−1−2.ポリエーテルポリオール(b)>
本発明において用いられるポリエーテルポリオール(b)は、通常、分子内の主骨格中に1つ以上のエーテル結合を有するヒドロキシ化合物である。主骨格中の繰り返し単位としては、飽和炭化水素又は不飽和炭化水素のどちらでもよく、又、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。
【0067】
また、ポリエーテルポリオール(b)は、分子中にエステル結合、カーボネート結合、シロキサン結合、ウレタン結合、ウレア結合、アミド結合等、エーテル結合以外の結合を
1つ以上有していても良い。このとき、エーテル結合以外の結合の数は、エーテル結合に対して1/10以下であることが好ましく、1/100以下であることが最も好ましい。エーテル結合以外の結合が上記以下であることで、最終的に得られるポリウレタンの柔軟性や弾性回復性、透明性に優れる。
【0068】
前記繰り返し単位としては、例えば、1,2−エチレングリコール単位、1,2−プロピレングリコール単位、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)単位、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール単位、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)単位、2−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、1,6−ヘキサンジオール単位、1,7−ヘプタンジオール単位、1,8−オクタンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、1,10−デカンジオール単位及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等が挙げられる。
【0069】
これらの繰り返し単位を主骨格中に有するポリエーテルポリオールのうち、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルポリオール(例えば、保土ヶ谷化学社製「PTG−L1000」、「PTG−L2000」及び「PTG−L3500」等)、及びネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランとの反応により得られる共重合ポリエーテルグリコール等が好ましい。
【0070】
又、これらのポリエーテルポリオールは、単独で用いても二種以上を混合して使用することもでき、求めるポリウレタンの物性に応じて種々選択すればよい。
均質なポリウレタンを得るためには、ポリシロキサンポリオール(a)製造において用いたポリエーテルポリオール(ii)と同一のポリエーテルポリオール(b)を使用することが好ましい。
【0071】
本発明において用いられるポリエーテルポリオール(b)の分子量は、数平均分子量で、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、1,500以上であることが更に好ましい。また、5,000以下であることが好ましく、4,000以下であることがより好ましく、3,500以下であることが更に好ましい。
数平均分子量を前記上限以下とすることにより、後述するポリウレタンの製造において、前述したポリシロキサンポリオール(a)とこのポリエーテルポリオール(b)の混合物を作製する際の該混合物、及びそれを用いて製造したプレポリマー、プレポリマー溶液を形成した際に、それらの過度な粘度の上昇を抑え、操作性及び生産性を向上するとともに、得られるポリウレタンの低温における柔軟性及び弾性回復性が向上することができる。
【0072】
一方、前記下限以上とすることにより、得られるポリウレタンが硬くなるのを防ぎ、十分な柔軟性が得られるとともに、強度及び伸度等の弾性性能が十分に得られる。
尚、ここで、数平均分子量は、JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法により求めたものである。
ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の使用量は特に限定されるものではないが、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の合計質量に対して、ポリシロキサンポリオール(a)の使用量として、通常0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが更に好ましく、0.07質量%以上であることが特に好ましく、0.1質量%以上であることが最も好ましい。
【0073】
なお、ポリシロキサンポリオール(a)を製造する際に未反応物として残ったポリエーテルポリオール(ii)をポリウレタン製造時にポリエーテルポリオール(b)の一部として用いる場合には、未反応として残ったポリエーテルポリオール(ii)の量がポリエーテルポリオール(b)の使用量に含まれるものとする。
また、通常20質量%以下であることが好ましく、17質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましく、12質量%以下であることがより更に好ましく、10質量%以下であることが特に好ましく、5質量%以下であることが最も好ましい。
【0074】
ポリシロキサンポリオール(a)の使用量を前記上限以下とすることにより、得られるポリウレタンの剥離性が向上する傾向となる。使用量を前記下限以上とすることにより、得られるポリウレタンの剥離性は悪化するものの、弾性特性や伸張回復性が向上する傾向となる。
【0075】
<1−1−3.イソシアネート化合物(c)>
本発明において用いられるイソシアネート化合物(c)は、特に限定されるものではないが、例えば、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−MDI、パラフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート及びトリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、並びに1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0076】
本発明においては、特に反応性の高い芳香族ポリイソシアネートが好ましく、特にトリレンジイソシアネート(TDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好
ましい。
又、イソシアネート化合物のNCO基の一部を、ウレタン、ウレア、ビュレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド及びイミド等に変成したものであってもよく、更に多核体には前記以外の異性体を含有しているものも含まれる。
【0077】
これらのイソシアネート化合物(c)の使用量は、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の水酸基の合計、並びに鎖延長剤(d)の水酸基及び/又はアミノ基を合計した1当量に対し、通常0.1当量〜5当量であることが好ましく、0.8当量〜2当量であることがより好ましく、0.9当量〜1.5当量であることが更に好ましく、0.95当量〜1.2当量であることが最も好ましく、0.98当量〜1.1当量であることが特に好ましい。
【0078】
イソシアネート化合物の使用量を5当量以下とすることにより、未反応のイソシアネート基が好ましくない反応を起こすのを防ぎ、所望の物性を得やすくなる。また、0.1当量以上とすることにより、ポリウレタン及びポリウレタンウレアの分子量を十分に大きくすることができ、所望の性能を発現し易くなる。
【0079】
<1−1−4.鎖延長剤(d)>
本発明において用いられる鎖延長剤(d)は、主として、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物、2個以上のアミノ基を有する化合物、水に分類される。この中でも、ポリウレタン製造には短鎖ポリオール、具体的には2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を有する化合物が好ましい。また、ポリウレタンウレア製造には、ポリアミン化合物、具体的には2個以上のアミノ基を有する化合物が好ましい。
【0080】
鎖延長剤(d)のうち、水については反応を安定に行うために、できるだけ低減することが好ましい。又、本発明のポリウレタンは、鎖延長剤(d)として、分子量(数平均分子量)が500以下の化合物を併用すると、ポリウレタンエラストマーのゴム弾性が向上するために、物性上更に好ましい。尚、これらの鎖延長剤(d)は単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0081】
前記2個以上のヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール及び1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール、並びにキシリレングリコール及びビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香環を有するグリコール等が挙げられる。
【0082】
又、2個以上のアミノ基を有する化合物としては、例えば、2,4−又は2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン及び4,4′−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン及び1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、並びに1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4′−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン及び1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。これらの中でも、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−ペンタンジアミン及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミンが好ましい。
【0083】
これらの鎖延長剤(d)の使用量は、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の合計の水酸基当量からイソシアネート化合物(c)の当量を引いた当量を1とした場合、通常0.1当量〜5.0当量であることが好ましく、0.8当量〜2.0当量であることがより好ましい、0.9当量〜1.5当量であることが更に好ましい。
【0084】
鎖延長剤(d)の使用量を前記上限以下とすることにより、得られるポリウレタン及びポリウレタンウレアが硬くなりすぎるのを防いで所望の特性を得ることができ、溶媒に溶け易く加工し易い。また、前記下限以上とすることにより、軟らかすぎることなく、十分
な強度や弾性回復性能や弾性保持性能が得られ、良好な高温特性が得られる。
【0085】
<1−1−5.その他の添加剤等(e)>
本発明において、ポリウレタンの製造には、以上の(a)〜(d)の他に、ポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤等を使用することができる。
【0086】
前記鎖停止剤としては、水酸基を有するエタノール、プロパノール、ブタノール及びヘキサノール等の脂肪族モノオール、並びにアミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等の脂肪族モノアミン等が例示される。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
又、ポリウレタン製造時に、必要に応じて他の添加剤を加えてもよい。これらの添加剤としては、「CYANOX1790」(CYANAMID社製)、「IRGANOX245」、「IRGANOX1010」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「Sumilizer GA−80」(住友化学社製)及び2,6−ジブチル−4−メチルフェノール(BHT)等の酸化防止剤、「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「SANOL LS−2626」及び「SANOL LS−765」(以上、三共社製)等の光安定剤、「TINUVIN328」及び「TINUVIN234」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)等の紫外線吸収剤、ジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体等のシリコン化合物、赤燐、有機燐化合物、燐及びハロゲン含有有機化合物、臭素または塩素含有有機化合物、ポリ燐酸アンンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤、二酸化チタン等の顔料、染料、カーボンブラック等の着色剤、カルボジイミド化合物等の加水分解防止剤、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン、白土等のフィラー、滑剤、油剤、界面活性剤、その他の無機増量剤並びに有機溶媒等が挙げられる。
【0087】
<1−2.ポリウレタンの製造>
本発明において、ポリウレタンを製造するには、ポリシロキサンポリオール(a)、ポリエーテルポリオール(b)、イソシアネート化合物(c)、及び鎖延長剤(d)を主製造用原料として、上記記載の各使用量で用い、一般的に実験/工業的に用いられる全ての製造方法により、無溶媒或いは溶媒共存下で実施することができる。
【0088】
その際使用する溶媒としては、特に限定されるものではないが、汎用性や溶解性等の観点から、N,N−ジメチルアセトアミド及びN,N−ジメチルホルムアミド並びにそれらの2種以上の混合物等のアミド系溶媒;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる溶媒が好ましく用いられ、これらの中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0089】
製造方法の一例としては、前記(a)、前記(b)、前記(c)及び前記(d)を一緒に反応させる方法(以下、一段法という)、まず前記(a)と前記(b)を混合して、その混合物と前記(c)を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと前記(d)を反応させる方法(以下、二段法という)、前記(b)と前記(c)を反応させた後に前記(a)を混合し、前記(d)と反応させる方法、並びに前記(b)、前記(c)及び前記(d)を反応させた後に前記(a)を混合する方法が挙げられる。
【0090】
これらの中でも二段法は、ポリエーテルポリオール(b)を予め1当量以上のイソシアネート化合物(c)と反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する両末端イソシアネートで封止された中間体を調製する工程を経るものである。二段法は
、プレポリマーをいったん調製した後に鎖延長剤(d)と反応させることにより、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすく、ソフトセグメントとハードセグメントの相分離がしっかりとなされやすく、エラストマーとしての性能を出しやすい特徴がある。
【0091】
特に、鎖延長剤(d)がジアミンの場合には、イソシアネート基との反応速度がポリエーテルポリオールの水酸基とジアミンのアミノ基では大きく異なるため、二段法にてポリウレタンウレアを製造することが好ましい。
また、前記(a)と前記(b)の混合物と前記(c)を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと前記(d)を反応させるポリウレタン製造方法は、ポリシロキサンポリオール(a)がポリウレタンの分子構造に組みこまれるのでポリウレタン成形工程においてポリシロキサンポリオールがブリードアウト(分離、析出)しにくく、生成するポリウレタン成形体の剥離性が損なわれない最も好ましい方法であると言える。
【0092】
一方、別のポリウレタン製造方法として、例えば、前記(b)、前記(c)、前記(d)を反応させた後に前記(a)を混合する方法がある。しかし、当該方法では、ポリシロキサンポリオール(a)がポリウレタンの分子構造に組み込まれにくいため、ポリウレタン成形工程において前記(a)がブリードアウトしやすく、生成するポリウレタン成形体が所望の剥離性を示さない傾向や、十分な剥離性を得るためには大量のポリシロキサンポリオール(a)が必要となるのでコストが高くなる傾向となり、好ましくない。
【0093】
予め、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)でポリオール混合物を調整する方法は、特に限定されないが、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の何れも液状である場合は、これを攪拌して混合することが好ましい。
また、一方または双方が固体または高粘度の液体である場合は、加温して粘度の低い液状として混合することもできる。
【0094】
混合する際の温度は限定されないが、10〜110℃で混合することが好ましい。110℃以下とすることにより、ポリオール混合物が着色するのを防ぐことができる。また、10℃以上とすることにより、ポリオールが一部固化するのを防ぎ、作業効率を向上するとともに、不均一に混合されるのを防ぎ、剥離性及び均質性に優れたポリウレタンを安定的に生産することができる。
【0095】
上記ポリオール混合物のハーゼン色数は、0に近いほど好ましい。ハーゼン色数の上限は、通常400以下、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。上限超過では、ポリウレタン成形体の着色が大きくなる傾向がある。
ポリオール混合物を予め調整しておくと、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)の相溶性が良好であるので、このように混合した状態で長期に保存した場合であっても、相分離を起こすことがないという特徴をもつ。
【0096】
また、ポリオール混合物は、後述する本発明のポリウレタンを製造する際に、ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)を別々のラインから導入し、混合または分散させてポリオール混合物とすることも好ましい。
ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)を別のラインから導入する場合、通常のポリウレタン製造設備に本発明のポリシロキサンポリオール用のタンクとフィードラインを増やすだけで、剥離性に優れる特殊グレードのポリウレタンが製造可能となる。
【0097】
ポリオール混合物を調整した後に通常のポリウレタン製造設備のポリエーテルポリオー
ルの保管タンクに導入すると、通常グレードのポリウレタンを製造する場合にポリシロキサンポリオールが混在してしまい、ポリウレタンの均質性が損なわれる可能性が考えられる。
通常グレードと特殊グレードのポリウレタンを所望の物性が得られるように効率よく製造するためには、このようにポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)を別々のラインから導入することが好ましい。
【0098】
<1−2−1.一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、前記(a)、前記(b)、前記(c)及び前記(d)を一緒に仕込むことで反応を行う方法である。反応は、通常、各成分を0〜250℃で反応させることが好ましい。
前記反応温度は、溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低くなるために生産性が悪く、又、高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない。
【0099】
反応は、減圧下脱泡しながら行ってもよい。又、反応は必要に応じて、触媒、安定剤等を添加することもできる。その際の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸及びスルホン酸等が挙げられる。
また、安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン及びトリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
【0100】
<1−2−2.二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれる。まずポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)を混合し、イソシアネート化合物(c)とそのポリオール混合物とを反応させたプレポリマーを製造する。次いで該プレポリマーにイソシアネート化合物(c)又は多価アルコール及びアミン化合物等の活性水素化合物成分を加えることにより、二段階反応させることもできる。
【0101】
特に、ポリオール混合物に対して当量以上のイソシアネート化合物(c)を反応させて両末端NCOプレポリマーをつくり、続いて鎖延長剤(d)である短鎖ジオールやジアミンを作用させてポリウレタンを得る方法が有用である。
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。溶媒共存下で実施する場合、汎用性や溶解性等の観点から、N,N−ジメチルアセトアミド及びN,N−ジメチルホルムアミド並びにそれらの2種以上の混合物等のアミド系溶媒;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる溶媒が好ましく用いられる。これらの中でN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
【0102】
プレポリマーを合成する場合、(1)まず溶媒を用いないで直接イソシアネート化合物(c)とポリオール混合物を反応させてプレポリマーを合成しそのまま使用してもよいし、(2)(1)の方法でプレポリマーを合成しその後に溶媒に溶かして使用してもよいし、(3)初めから溶媒を用いてイソシアネート化合物(c)とポリオール混合物を反応させてもよい。
【0103】
(1)の場合には、本発明では、鎖延長剤(d)と作用させるにあたり、鎖延長剤(d)を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤(d)を導入する等の方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることが好ましい。
NCO/活性水素基(ポリオール混合物)の反応当量比は、通常1以上であることが好
ましく、1.05以上であることがより好ましい。また、通常10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。
【0104】
NCO/活性水素基(ポリオール混合物)の反応当量比を前記上限以下とすることにより、過剰のイソシアネート基が副反応を起こすのを防ぎ、良好なポリウレタンの物性が得られる。また、前記下限以上とすることにより、得られるポリウレタンの分子量を十分に向上することができ、十分な強度及び熱安定性が得られる。
又、鎖延長剤(d)の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるNCO基の当量に対して、通常0.1以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。また、通常5.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。
【0105】
鎖延長反応は、通常、各成分を0〜250℃で反応させることが好ましい。当該反応温度は溶剤の量、使用原料の反応性及び反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低いために生産性が悪く、又、高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下脱泡しながら行ってもよい。
【0106】
又、反応は必要に応じて、触媒及び安定剤等を添加することもできる。その際の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸及びスルホン酸等が挙げられる。
また、安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン及びトリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
【0107】
しかしながら、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施することが好ましい。又、反応時に一官能性の有機アミン及びアルコールを共存させてもよい。
【0108】
<2.ポリウレタンの物性>
上記の製造方法で得られるポリウレタンは、通常は溶媒存在下で反応を行っているため、溶媒に溶解した状態で得られるのが一般的であるが、溶液状態でも固体状態でも制限されない。
本発明において、ポリウレタンのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、用途により異なるが、通常1万〜100万が好ましく、5万〜50万がより好ましく、10万〜40万が更に好ましく、15万〜30万が特に好ましい。
又、分子量分布の目安としての、その重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)は、1.5〜3.5であることが好ましく、1.7〜3.0であることがより好ましく、1.8〜3.0であることが特に好ましい。なお、前記数平均分子量(Mn)も、前述のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0109】
また、本発明におけるポリウレタンのフィルム成形時における剥離強度は小さいほど好ましい。剥離強度は、通常0.5N/cm以下であることが好ましく、0.4N/cm以下であることがより好ましく、0.3N/cm以下であることが更に好ましく、0.2N/cm以下であることが特に好ましい。0.15N/cm以下とすることにより、ポリウレタン重合体の剥離性が十分となる。
【0110】
さらに、本発明におけるポリウレタンのフィルム成形時における接触角は大きいほど好ましい。接触角は、80°以上であることが好ましく、85°以上であることがより好ま
しく、90°以上であることが更に好ましく、95°以上であることが特に好ましい。下限以上にすることにより、ポリウレタンの剥離性が向上する傾向がある。
又、上記の製造方法で得られるポリウレタンは、ハードセグメントの含有量が、ポリウレタンの全質量に対して、1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましく、4〜12質量%であることが更に好ましく、5〜10質量%であることが特に好ましい。
【0111】
前記ハードセグメント量を20質量%以下とすることにより、得られるポリウレタンが十分な柔軟性や弾性性能を示し、溶媒を使用する場合に溶け易くなり加工し易くなる。一方、ハードセグメント量を1質量%以上とすることにより、ポリウレタンが柔らかくなりすぎるのを防ぎ、加工し易く、十分な強度及び弾性性能が得られる。
尚、本発明でいう、ハードセグメントとは、P.J.Flory,Journal of American Chemical Society,58,1877〜1885(1936)をもとに、全体質量に対する、イソシアネートと鎖延長剤結合部の質量を、下記式で算出したものである。
【0112】
ハードセグメント(%)=[(R−1)(Mdi+Mda)/{Mp+R・Mdi+(R−1)・Mda}]×100
ここで、
R=イソシアネート化合物(c)のモル数/(ポリエーテルポリオール(b)の水酸基のモル数+ポリシロキサンポリオール(a)の水酸基のモル数)
Mdi=イソシアネート化合物(c)の数平均分子量
Mda=鎖延長剤(d)の数平均分子量
Mp=ポリシロキサンポリオール(a)とポリエーテルポリオール(b)から成るポリオール混合物の数平均分子量
溶媒存在下で反応を行った際に得られるポリウレタン溶液は、ゲル化が進行しにくく、粘度の経時変化が小さい等保存安定性がよく、又、チクソトロピー性も小さいため、フィルム、繊維等に加工するためにも都合がよい。
【0113】
ポリウレタン溶液のポリウレタン濃度は、溶媒に溶解した溶液の全質量に対して、通常1〜99質量%であることが好ましく、5〜90質量%であることがより好ましく、10〜70質量%であることが更に好ましく、15〜50質量%であることが特に好ましい。
ポリウレタンの量を前記下限以上とすることにより、大量の溶媒を除去することが不要とになり生産性を向上することができる。一方、前記上限以下とすることにより、溶液の粘度を抑え、操作性及び加工性を向上することができる。
【0114】
尚、ポリウレタン溶液は、長期にわたり保存する場合は、常温又はそれ以下の温度で、窒素及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で保存することが好ましい。
<3.ポリウレタン成形体>
本発明のポリウレタン成形体は、前記のポリウレタンから構成される成形体である。前記の通り、本発明においてポリウレタン成形体とは、固体状態のポリウレタンを意味するので、前記で例示した製造方法で得られた固体状のポリウレタン自体も本発明のポリウレタン成形体に該当する。さらには固体状態又は液体状態のポリウレタンを公知の方法で成形することによって得られる成形体も該当する。
【0115】
その成形方法も形態も特に限定されないが、押出成形及び射出成形等の成形方法により、シート、フィルム及び繊維等の形態に成形されたものを包含する。
また、本発明には、成形体表面の原子組成が特定のものであることを特徴とするポリウレタン成形体も含まれる。すなわち、成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比であるSi/Cは、下限が0.05以上であることが好ましく、0.07以
上であることがより好ましく、0.08以上であることがさらに好ましく、0.09以上であることがよりさらに好ましく、0.10以上であることが特に好ましい。前記下限値未満であると、ポリウレタン成形体の剥離性が不十分となるため好ましくない。
【0116】
一方、上限は、0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.25以下であることがさらに好ましく、0.2以下であることがよりさらに好ましく、0.15以下であることが特に好ましい。前記上限値を超えると、得られる成形体の透明性が低くなる傾向にあるため、好ましくない。
本発明において、成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比は、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)またはXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)により測定するものとする。従って、ここで規定される表面原子の相対存在比は厳密には最表面の原子数比ではなく、分析測定域の厚みのある部分に存在する原子数比となる。
【0117】
また、成形体表面の相対存在比は、ポリシロキサンポリオール(a)またはポリエーテルポリオール(b)の添加量を変えたり、ポリシロキサンポリオールの添加順序を変えたり、ポリシロキサン部位またはポリオキシアルキレン部位の含有量が異なるポリシロキサンポリオールの使用等により調整することができる。
<4.ポリウレタンの用途>
本発明で製造されるポリウレタン、及びそのウレタンプレポリマー溶液は、多様な特性を発現させることができる。例えば、樹脂状、ゴム状及び熱可塑性エラストマー状等の材質で、又、各種形状に成形された固体状またはフォーム状及び液体状等の性状で、繊維、フィルム、塗料、接着剤及び機能部品等として、衣料、衛生用品、包装、土木、建築、医療、自動車、家電及びその他工業部品等の広範な分野で用いられる。
【0118】
特に、繊維やフィルムとして用いられるのが本発明で製造されるポリウレタンの弾性性能や透湿性の特徴を生かす上で好ましい。これらの具体的用途としては、衣料用の弾性繊維、医療、衛生用品及び人工皮革等に用いられるのが好ましい。
【0119】
<4−1.ポリウレタンフィルム>
本発明のポリウレタンを用いたフィルムは、その厚さとしては特に限定されるものではないが、通常10〜1000μmであることが好ましく、10〜500μmであることがより好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。フィルムの厚さを1000μm以下とすることにより、十分な透湿性が得られる。又、10μm以上とすることにより、ピンホールが形成されにくいとともに、フィルムがブロッキングしにくく、取り扱い易くなる。
【0120】
本発明のポリウレタンを用いたフィルムは、医療用粘着フィルムや衛生材料、包装材、装飾用フィルム、その他透湿性素材等に好ましく用いることができる。尚、フィルムは布や不織布等の支持体に塗布して形成されたものでもよく、その場合は厚さが10μmよりも更に薄くてもかまわない。
又、引張特性として、破断強度は、通常5MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましく、20MPa以上であることが更に好ましく、30MPa以上であることが特に好ましい。また、破断伸度は、通常100%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、300%以上であることが更に好ましく、500%以上であることが特に好ましい。
【0121】
本発明のポリウレタンを用いたフィルムの製造方法は、特に限定はなく、従来公知の方法が使用できる。例えば、支持体又は離型材に、ポリウレタン溶液を塗布又は流延し、凝
固浴中で溶媒その他の可溶性物質を抽出する湿式製膜法、並びに支持体または離型材にポリウレタン溶液を塗布又は流延し、加熱及び減圧等により溶媒を除去する乾式製膜法等が挙げられる。
【0122】
製膜する際に用いる支持体は特に限定されないが、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム、ガラス、金属、剥離剤を塗布した紙や布等が用いられる。塗布の方式は特に限定されないが、ナイフコーター、ロールコーター、スピンコーター及びグラビアコーター等の公知のいずれでもよい。
乾燥温度は、溶媒の種類や乾燥機の能力等によって任意に設定できるが、乾燥不十分、或いは急激な脱溶媒が起こらない温度範囲を選ぶことが必要であり、室温〜300℃の範囲であることが好ましく、60℃〜200℃の範囲であることがより好ましい。
【0123】
<4−2.ポリウレタン繊維>
ポリウレタンフィルムと繊維の物性は非常によい相関があり、フィルム試験等で得られた物性値は繊維においても同様の傾向を示す場合が多い。本発明のポリウレタンを用いた繊維は、伸長回復性、弾性、耐加水分解性、耐光性、耐酸化性、耐油性及び加工性等に優れる。
【0124】
本発明のポリウレタンを用いた繊維は、例えば、レッグ、パンティー・ストッキング、おむつカバー、紙おむつ、スポーツ用衣類、下着、靴下、ファッション性に優れたストレッチ性の衣類、水着及びレオタード等の用途に好ましく用いられる。
本発明のポリウレタンを用いた弾性繊維の優れた透湿性は、衣類に使用される際に蒸れにくく、付け心地がよいという特徴を持つ。又、応力の変動率またはモジュラスが小さいという特性は、例えば、衣類として体につける際に小さな力でそでを通したりすることができ、小さな子供やお年寄りにとっても非常に着脱しやすいという特徴を持つ。
【0125】
又、フィット感及び運動追従性が良いことより、スポーツ用衣類及びよりファッション性の高い衣類の用途で使用することができる。又、繰り返しの伸張試験での弾性保持率が高いことより、繰り返しの使用に対してもその弾性性能が損なわれにくいという特徴もある。
【実施例】
【0126】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例、参考例及び比較例における分析、測定は、以下の方法によった。
<ポリシロキサンポリオール(a)の数平均分子量>
ポリエーテルポリオール(ii)がポリシロキサン骨格を有し、複数のエーテル結合を有するポリシロキサンポリオール(i)に対して2当量以上存在する場合、ポリシロキサンポリオール(a)の数平均分子量は、原料の分子量から以下の〔式1〕に従って算出することができる。実施例に用いたポリシロキサンポリオール1,2,3の数平均分子量は、〔式1〕によって算出した。
【0127】
〔式1〕
ポリシロキサンポリオール1,2,3の数平均分子量=(ポリシロキサンポリオール(i)の分子量)+(DECの分子量)×2+(ポリエーテルポリオール(ii)の分子量)×2−(エタノールの分子量)×4
<ポリエーテルポリオール(ii)、及びポリエーテルポリオール(b)の数平均分子量>
JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法より数平均分子量を求めた。
【0128】
<ポリウレタン及びポリウレタンウレアの分子量>
得られたポリウレタン又はポリウレタンウレアの分子量は、ポリウレタン又はポリウレタンウレアのジメチルアセトアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」 (カラム:TskgelGMH−XL(2本)〕を用い、標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0129】
<ポリウレタンウレア溶液の透明性>
透明ガラス規格瓶(150ml、第一ガラス社製「PS−13K」)にポリウレタンウレア溶液100mlを入れ、瓶の真横から溶液の透明性を目視観察し、以下の基準で評価した。
○;透明。
【0130】
△;微白濁し、瓶を通し背景の色彩等は見えるが透明ではない。
×;白濁し、瓶を通し背景が全く見えない。
<剥離試験方法>
成形したフィルム2枚を重ね合わせ、長さ4cm、幅1cmの試験片2枚を打ち抜き、その長さ方向一端から2.5cmの重ね合わせ部分を、温度25℃、相対湿度50%の条件下、19.6kPaの圧力を10分間印加した試験片について、引張試験機(FUDOH製「レオメーターNRM−2003J」)を用い、引張速度300mm/分で圧着部分をT型剥離したときの剥離強度を測定した。
【0131】
<水接触角>
協和界面科学株式会社製の自動接触角計DM―300を用い、ポリウレタンフィルム表面に1.5〜2.0μlの水滴を落とし、5秒後に水滴の接線と成形体表面のなす内角を測定した。フィルムの場所を変えて同じ操作を5回繰り返し、得られた5点の値の平均値を水接触角とした。
【0132】
<フィルム物性>
成形したフィルムから打ち抜いた幅10mm、長さ100mm(厚み約50μm)の短冊状試験片を用い、JIS K6301に準じ、温度23℃、相対湿度55%の条件下、引張試験機(オリエンテック社製、製品名「テンシロンUTM−III−100」)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、100%伸長時と300%伸長時の応力、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
【0133】
<相対存在比(表面原子組成)>
ポリウレタン成形体表面に存在する炭素原子に対するケイ素原子の相対存在比、すなわち、表面原子組成は、ESCA(Electron Spectroscopy for
Chemical Analysis)測定により求めた。測定は、アルバック−ファイ株式会社ESCA装置「ESCA−5800」を用いて実施した。測定条件は、以下の通りである。
・励起X線:単色AlKα線(1486.6eV)
・X線出力:14kV、350W(帯電防止の為中和銃使用)
・分析モード(LENS MODE):5(最小領域モード)
・アパーチャー番号:5
・検出角度(試料法線から検出器の角度):45度
・PassEnergy:23.5eV
・チャージシフト補正:炭素のC1sピークの結合エネルギーを285.0eVに合わせ
るように行った。
【0134】
ケイ素原子の炭素原子に対する相対存在比については、以下の式で算出した。
相対存在比=(ケイ素Si2pのピーク面積/ピーク補正相対感度係数)/(炭素C1sのピーク面積/ピーク補正相対感度係数)
尚、各ピークの面積は装置付属のMultiPak Ver.8.2Cソフトを使用しSavitzky−Golayアルゴリズムを用いたスムージング処理(9ポイント)を行いshirleyのバックグラウンド補正を使って求めた。相対存在比算出に用いたケイ素原子ピークと炭素原子ピークの結合エネルギー及びMultiPak Ver.8.2Cソフトで用いられている補正感度係数は次の通りである。
・Si2p:結合エネルギー=102.5eV付近、
・補正相対感度係数=4.872
・C1s:結合エネルギー=285.0eV付近、
・補正相対感度係数=5.220
炭素C1sのピーク面積については、280eV及び290.5eV付近の極小値をshirleyで結んで得られる面積と、290.5eV及び293eV付近の極小値をshirleyで結んで得られるベンゼン環のshake up由来のピーク(291〜293eV付近〉の面積を足したものを用いた。
【0135】
ケイ素Si2pのピーク面積については、98eV及び107eV付近の極小値をshirleyで結んで得られる面積を用いた。
<ポリシロキサンポリオール(a)の製造>
実施例1
撹拌子を備えた100mL四つ口丸底フラスコに、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)として、カルビノール変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製、「X−22−160AS」、数平均分子量930)9.34g(10.0mmol)、炭酸ジエステルとして炭酸ジエチル(キシダ化学社製)5.93g(50.2mmol)、テトラブチルオルトチタネート(東京化成社製)/ヘキサン溶液(0.53%)を0.22g測り取った。
【0136】
還流管及び窒素導入管を取り付け、反応容器をオイルバスに浸して20分で160℃まで昇温し、160℃で1時間反応させた。その後、10分で180℃まで昇温し、180℃で6時間反応させ、カルビノール変性シリコーンのカーボネート化体1(カーボネート化反応進行率94%)を得た。
ポリエーテルポリオール(ii)として、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、「PTMG」と略記することがある。)(数平均分子量1000、三菱化学社製)30.0g(30.0mmol)を添加し、還流管を外して留出管を取り付け、留出部はテープヒーターにより120℃に保温した。真空ポンプで反応系内を減圧下にし、反応容器をオイルバスに浸して30分で180℃まで昇温し、180℃で1時間反応させた。その後、10分で200℃まで昇温し、200℃で6時間反応させ、ポリシロキサンポリオール1(数平均分子量2985、ポリジメチルシロキサン含有量24質量%)および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物1)を得た。
【0137】
実施例2−1
ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)として、カルビノール変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製、「BY16−201」、数平均分子量1500)15.0g(10.0mmol)を使用し、炭酸ジエステル使用量を5.93g(50.2mmol)、テトラブチルオルトチタネート(東京化成社製)/ヘキサン溶液(0.53%)の量を0.32gとしてカーボネート化反応を行い、PTMG使用量を22.0g(22.0mmol)にしてエステル交換反応を行った以外は実施例1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2(数平均分子量3552、ポリジメチルシロキサン含有量36質量%)および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物2−1)を得た。エステ
ル化反応進行率は92%であった。
【0138】
実施例2−2
エステル交換反応を、180℃×1h+200℃×12hで実施した以外は実施例2−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物2−2)を得た。エステル化反応進行率は、100%であった。
実施例3−1
炭酸ジエステル使用量を5.95g(50.3mmol)、テトラブチルオルトチタネート(東京化成社製)/ヘキサン溶液(0.53%)の量を0.29gとしてカーボネート化反応を行い、PTMG使用量を30.0g(30.0mmol)にしてエステル交換反応を行った以外は実施例2−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物3−1)を得た。エステル化反応進行率は83%であった。
【0139】
実施例3−2
エステル交換反応を、180℃×1h+200℃×12hで実施した以外は実施例3−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物3−2)を得た。エステル化反応進行率は、98%であった。
実施例3−3
エステル交換反応を、180℃×1h+200℃×18hで実施した以外は実施例3−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物3−3)を得た。エステル化反応進行率は、100%であった。
【0140】
実施例4−1
炭酸ジエステル使用量を5.92g(50.1mmol)、テトラブチルオルトチタネート(東京化成社製)/ヘキサン溶液(0.53%)の量を0.29gとしてカーボネート化反応を行い、PTMG使用量を40.0g(40.0mmol)にしてエステル交換反応を行った以外は実施例2−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物4−1)を得た。エステル化反応進行率は81%であり、実施例2−1〜2−2や3−1〜3−3に比べてエステル化反応進行率が低く、エステル化反応を完全に押切ることはできなかった。
【0141】
実施例4−2
エステル交換反応を、180℃×1h+200℃×12hで実施した以外は実施例4−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール2および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物4−2)を得た。エステル化反応進行率は、87%であった。
実施例5−1
ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)として、カルビノール変性シリコーン(信越化学社製、「KF−6001」、数平均分子量1810)9.05g(5.0mmol)を使用し、炭酸ジエステル使用量を2.98g(25.2mmol)、テトラブチルオルトチタネート(東京化成社製)/ヘキサン溶液(0.53%)の量を0.19gとしてカーボネート化反応を行い、PTMG使用量を15.0g(15.0mmol)にしてエステル交換反応を行った以外は実施例1と同様にして、ポリシロキサンポリオール3(数平均分子量3862、ポリジメチルシロキサン含有量42質量%)および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物5−1)を得た。エステル化反応進行率は80%であった。
【0142】
実施例5−2
エステル交換反応を、180℃×1h+200℃×12hで実施した以外は実施例5−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール3および未反応PTMGの混合物(ポリオー
ル混合物5−2)を得た。エステル化反応進行率は、100%であった。
【0143】
実施例6−1
テトラブチルオルトチタネート(東京化成社製)/ヘキサン溶液(0.53%)の量を0.25gとしてカーボネート化反応を行い、PTMG使用量を15.0g(15.0mmol)にしてエステル交換反応を行った以外は実施例5−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール3および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物6−1)を得た。エステル化反応進行率は、76%であった。
【0144】
実施例6−2
エステル交換反応を、180℃×1h+200℃×12hで実施した以外は実施例6−1と同様にして、ポリシロキサンポリオール3および未反応PTMGの混合物(ポリオール混合物6−2)を得た。エステル化反応進行率は、96%であった。
<ポリウレタンウレアの製造>
【0145】
実施例7
<ポリウレタンウレア1の製造>
容量が1Lのフラスコに、ポリエーテルポリオール(b)として予め40℃に加温したポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、「PTMG」と略記することがある。)(数平均分子量1965、三菱化学社製)149.62gと、実施例1で得られたポリオール混合物1を1.94g加えて混合し、この混合物をポリウレタン製造用の原料とした。この混合物中のポリシロキサンポリオール1の割合は0.96質量%であった。
【0146】
その後、イソシアネート化合物(c)として予め40℃に加温した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記することがある。)30.8gを加えた。このときの、NCO/活性水素基(ポリシロキサンポリオールとポリエーテルポリオール)の反応当量比は1.6であった。
そして、このフラスコを45℃のオイルバスにセットし、窒素雰囲気下にて碇型攪拌翼で攪拌しつつ、1時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃にて3時間保持した。
【0147】
残存NCO基を過剰量のジブチルアミンと反応させ、その後残存ジブチルアミンを塩酸により逆滴定することによりNCOの反応率が99%を越えていることを確認した後に、オイルバスを取り去り、フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAC」と略記することがある。関東化学社製)326.8gを加え、室温にて攪拌し溶解させることでポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。
【0148】
上記ポリウレタンプレポリマー溶液を10℃に冷却し保持しておき、一方で、鎖延長剤(d)として、エチレンジアミン(EDA)/ジエチルアミン(DEA)=73/27(モル比)の0.77%DMAC溶液を調製した。この0.77%DMAC溶液に10℃に冷却し保持した上記ポリウレタンプレポリマー溶液を高速に攪拌しながら添加してポリマー濃度20%の透明性良好なポリウレタンウレアDMAC溶液を得た。
【0149】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、得られたポリウレタンウレア1につき、GPCで重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布の目安としてその重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)を算出したところ、Mwは19.3万、Mw/Mnは3.5であった。又、得られたポリウレタンウレア1のハードセグメントの割合は、7.8質量%であった。
【0150】
又、こうして得られたポリウレタンウレア1溶液をガラス板上にキャストし、60℃に
て乾燥させて厚さ約50μmの無色透明なフィルムを得た。このフィルムの剥離試験を行ったところ、剥離強度は0.21N/cmであり、参考例1に比べて剥離性は良好であった。又、得られた弾性フィルムは表2に示す通りの特性であった。
【0151】
実施例8
<ポリウレタンウレア2の製造>
ポリエーテルポリオール(b)としてのポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1965、三菱化学社製)の量を138.84gとし、実施例2−2で得られたポリオール混合物2−2を1.43gとし、イソシアネート化合物(c)としてのMDIの量を28.5gとした以外は、実施例6と同様にしてわずかに濁りがあるポリウレタンウレア2溶液を得た。
【0152】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、得られたポリウレタンウレア2につき、GPCで測定したMwは16.0万、Mw/Mnは2.7であった。又、得られたポリウレタンウレア2のハードセグメントの割合は、7.8質量%であった。
又、こうして得られたポリウレタンウレア2溶液から実施例7と同様にしてフィルムを成形し、剥離試験を行ったところ、剥離強度は0.12N/cmであり、比較例に比べて剥離性は良好であった。又、得られた弾性フィルムは表2に示す通りの特性であった。
【0153】
実施例9
<ポリウレタンウレア3の製造>
ポリエーテルポリオール(b)としてのポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量1965、三菱化学社製)の量を140.86gとし、実施例5−2で得られたポリオール混合物5を1.44gとし、イソシアネート化合物(c)としてのMDIの量を28.84gとした以外は、実施例6と同様にして透明性良好なポリウレタンウレア3溶液を得た。
【0154】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、得られたポリウレタンウレア3につき、GPCで測定したMwは20.1万、Mw/Mnは3.2であった。又、得られたポリウレタンウレア3のハードセグメントの割合は、7.8質量%であった。
又、こうして得られたポリウレタンウレア3溶液から実施例7と同様にしてフィルムを成形し、剥離試験を行ったところ、剥離強度は0.14N/cmであり、比較例に比べて剥離性は良好であった。又、得られた弾性フィルムは表2に示す通りの特性であった。
【0155】
参考例1
<ポリウレタンウレア4の製造>
ポリシロキサンポリオールを使用せず、PTMGを185.58g、MDIを37.711g、EDAを2.91g、DEAを0.91gとした以外は実施例7と同様にしてポリウレタンウレア4溶液を製造した。
【0156】
この溶液を25℃にて一晩熟成した後に、得られたポリウレタンウレア4につき、GPCで測定したMwは18.1万、Mw/Mnは2.9であった。又、得られたポリウレタンウレア4のハードセグメントの割合は、7.8質量%であった。
こうして得られたポリウレタンウレア4溶液から、実施例7と同様にして無色透明なフィルムを成形し、剥離試験を行ったところ、剥離強度は1.12N/cmであり、剥離性は悪かった。また、得られたフィルムのSi/Cは0.000であり、水接触角は80.7であった。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
表1に示すように、各実施例を比較すると、分子量の小さいカルビノール変性シリコーンをポリウレタン製造時に使用するとエステル交換反応が進行しやすくなること(実施例1)、ポリエーテルポリオールの添加量が少ないほどエステル交換反応率が高いこと(実施例2、3、4)が明らかとなった。通常のエステル交換反応はポリエーテルポリオールの使用量が多いほど進行しやすいため、本系においてエステル交換反応を十分進行させるためには反応液の相溶性が非常に重要であり、ポリエーテルポリオールを理論当量よりも小過剰添加してエステル交換反応を行なうことが、反応を押し切るのに有効であることがわかった。
【0160】
また、表1の各実施例で得られたポリシロキサンポリオール(a)はいずれも無色であった。着色しやすい高温条件にてカーボネート化反応およびエステル交換反応を実施しているが、原料のカルビノール変性シリコーン中には不純物が少なく無色であるため、反応生成物中に不純物は存在せず、着色もしていない。一方、特許文献4のカルボン酸変性シリコーンとポリエーテルポリオールの反応により生成したポリシロキサンポリオールは、原料のカルボン酸変性シリコーンが着色しており不飽和カルボン酸も含まれているため、着色が大きく、不飽和モノオールが生成していた。着色したポリシロキサンポリオールは、ポリウレタン製造時に用途によっては使用制限がかかるし、不飽和モノオールはポリウレタン化において末端封止物質となるので好ましくない。
【0161】
また、表2の各実施例と参考例とを比較すると、ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンポリオール(i)とポリエーテルポリオール(ii)とをカーボネート結合で連結させたポリシロキサンポリオール(a)をポリウレタン製造時に使用している実施例6〜8は、同ポリシロキサンポリオールを使用していない参考例1に比べ、ポリウレタンの剥離性が優れていることが明らかとなった。
【0162】
さらに、ポリジメチルシロキサン含有量が少ないポリシロキサンポリオール(a)を使用した実施例6はポリウレタンの相溶性が最も良く、ポリジメチシロキサン含有量が多い実施例7,8は剥離性に優れていることがわかった。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明によれば、剥離性が高く均質性に優れ、着色が少なく、弾性繊維やフィルム及び衣料等の用途に極めて有用なポリウレタンを効率よく製造する製造方法、及びその原料用のポリシロキサンポリオールを提供することができる。
そして、得られるポリウレタン及びポリウレタンウレアを用いて弾性繊維およびフィルム等のポリウレタン成形体を製造する場合、油剤および平滑剤等の使用量の削減によるコストの削減、製品汚損並びに機械および器具の目詰まり頻度低減による操業安定性の向上、摩擦抵抗の低減による機械に導入する駆動電力の削減等が期待できる。