特許第6237041号(P6237041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6237041-位相差フィルムの製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237041
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】位相差フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20171120BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20171120BHJP
   B29C 41/12 20060101ALI20171120BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20171120BHJP
   C08L 1/12 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20171120BHJP
   B29K 1/00 20060101ALN20171120BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20171120BHJP
   B29L 11/00 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/13363
   B29C41/12
   C08J5/18CEP
   C08L1/12
   C08K5/10
   B29K1:00
   B29L7:00
   B29L11:00
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-195477(P2013-195477)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-60175(P2015-60175A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】吉村 洋志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】立川 豊
(72)【発明者】
【氏名】山口 政之
(72)【発明者】
【氏名】信川 省吾
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−030937(JP,A)
【文献】 特開2005−314613(JP,A)
【文献】 特開2010−217500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアセチルセルロース樹脂(a1)と、オクタノール−水分配係数(logP値)が6〜9の下記一般式(1)または一般式(2)
【化1】
(式中、Aは炭素原子数4〜10のジカルボン酸残基を表し、Bは炭素原子数6〜11のモノアルコール残基を表す。Cは炭素原子数2〜9のグリコール残基を表し、Dは炭素原子数6〜12のモノカルボン酸残基を表す。)
で表されるエステル化合物(a2)とを含む樹脂溶液を流涎しトリアセチルセルロース樹脂を含むフィルム(A1)を得る第一工程、
前記フィルム(A1)を延伸し、延伸フィルム(A2)を得る第二工程、
前記延伸フィルム(A2)を前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)は溶解しないが、前記エステル化合物(a2)を溶解する溶剤(a3)に浸漬し、前記フィルム(A2)からエステル化合物(a2)の一部乃至全部を除去したフィルム(A3)を得る第三工程を含むことを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記エステル化合物(a2)が、オクタノール−水分配係数(logP値)が6〜8の化合物である請求項1記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記エステル化合物(a2)がアジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニルおよびフタル酸ジオクチルからなる群から選ばれる一種以上の化合物である請求項1記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記エステル化合物(a2)の使用量が、前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)100質量部に対して5〜20質量部である請求項1〜3の何れか1項記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記溶剤(a3)の沸点が20〜120℃である請求項1〜のいずれか1項記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記溶剤(a3)がメタノールである請求項1〜のいずれか1項記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項7】
更に、前記第三工程の後、フィルム(A3)を乾燥させる第四工程を含む請求項1〜6の何れか1項記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項8】
トリアセチルセルロース樹脂(a1)を含む位相差フィルムであり、該位相差フィルムの波長450nmの光における面内方向のレターデーション(Re450nm)と、波長550nmの光における面内方向のレターデーション(Re550nm)との比〔(Re450nm)/(Re550nm)〕が1未満の位相差フィルムを製造する方法であって、
トリアセチルセルロース樹脂(a1)と、オクタノール−水分配係数(logP値)が6〜9の下記一般式(1)または一般式(2)
【化2】
(式中、Aは炭素原子数4〜10のジカルボン酸残基を表し、Bは炭素原子数6〜11のモノアルコール残基を表す。Cは炭素原子数2〜9のグリコール残基を表し、Dは炭素原子数6〜12のモノカルボン酸残基を表す。)
で表されるエステル化合物(a2)とを含む樹脂溶液を流涎しトリアセチルセルロース樹脂を含むフィルム(A1)を得る第一工程、
前記フィルム(A1)を延伸し、延伸フィルム(A2)を得る第二工程、
前記延伸フィルム(A2)を前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)は溶解しないが、前記エステル化合物(a2)を溶解する溶剤(a3)に浸漬し、前記フィルム(A2)からエステル化合物(a2)の一部乃至全部を除去したフィルム(A3)を得る第三工程を含むことを特徴とする位相差フィルムの製造方法
【請求項9】
トリアセチルセルロース樹脂(a1)を含み、形態異方性を持つ空孔を有するフィルムであり、波長450nmの光における面内方向のレターデーション(Re450nm)と、波長550nmの光における面内方向のレターデーション(Re550nm)との比〔(Re450nm)/(Re550nm)〕が1未満であることを特徴とする位相差フィルム。
【請求項10】
請求項9の位相差フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆分散性の位相差を有する位相差フィルムを安価に製造することができる製造方法とこの製造方法で得られた位相差フィルムを用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などのモバイル機器やタブレット型端末、パソコンモニター、液晶テレビなど液晶ディスプレイ(LCD)の需要はますます増加している。LCDは、光の旋光性と液晶の複屈折を利用して光の透過性を制御し、明・暗の切り替えを行うことで画像を表示する装置であり、光を制御するために偏光板や位相差フィルムなどの光学フィルムが用いられている。
【0003】
位相差フィルムとは、延伸等の工程により屈折率の異方性を発現させたフィルムであり、LCDの偏光の偏光状態を変換する役割をもつ。屈折率の異方性の程度は位相差(レタデーション)の値で表される。レタデーション(Re)は複屈折Δnと厚みdの積からなる。
レタデーション(Re)=Δn・d
(ここで、Δn=Nx−Nyであり、Nxは延伸方向と水平方向の屈折率であり、Nyは延伸方向と垂直方向の屈折率である。)
【0004】
近年、高精細な画像が得られるLCDが求められている。高精細な画像を得る為には、位相差フィルムが発現する位相差の波長依存性が重要となっている。波長依存性の中でも特に、長波長になるに従い、位相差が増加する性質を有する逆分散性フィルムが求められている。
【0005】
これまで、逆波長分散性を発現するフィルムは、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂等種々の樹脂をベース樹脂として用いて製造されている。例えば、上記種々の樹脂のフィルムの2種以上を、アッベ数が異なる組合せで用い、該2種以上のフィルムを遅相軸の角度を変えた状態で積層してなる逆分散性が発現する積層フィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、フィルムの2種以上を張り合わせる際に遅相軸のズレが生じ、その結果、十分な逆波長分散性を発現できなくなるという問題があった。また、フィルムを積層する為、高コストになる問題もあった。
【0006】
また、位相差フィルムのベース樹脂として側鎖にフルオレン構造を有するジオールと特定の脂肪族ジオールとの共重合ポリカーボネートを用いることで一枚のフィルムにより逆分散性を発現する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、フルオレン構造を有するジオールは高価であるため、特許文献2で得られるフィルムはコスト高の問題がある。
【0007】
更に、アシル基の総置換度の異なる3種類のセルロースアセテートを3つの式を満たす条件で混合してなるセルロースアセテートを用いることで一枚のフィルムにより逆分散性を発現する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、3つの式を満たすように置換度の異なるセルロースアシレートを混合する必要がある為、特許文献3で得られるフィルムもコスト高の問題がある。その為、安価な逆分散性の位相差フィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−120804号公報
【特許文献2】特開2012−256061号公報
【特許文献3】特開2010−217500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする第一の課題は、逆分散性の位相差フィルムを安価に製造できる製造方法を提供することにある。また、第二の課題は、逆分散性の位相差フィルムを提供することにある。そして、第三の課題は、該製造方法により得られる安価な逆分散性の位相差フィルムを有する液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、安価なトリアセチルセルロース樹脂と、特定範囲の疎水性を有するエステル化合物を含む樹脂溶液を流涎して得られるトリアセチルセルロースフィルムはトリアセチルセルロースとエステル化合物が完全に相溶しておらず、トリアセチルセルロース樹脂からなる領域とエステル化合物からなる領域とが散在していること、該トリアセチルセルロースフィルムを溶剤に浸漬することで該トリアセチルセルロースフィルムからエステル化合物が除去され、該エステル化合物が存在していた領域が空孔となること、該空孔を有するトリアセチルセルロースフィルムは、逆分散性の位相差フィルムとして利用できること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、トリアセチルセルロース樹脂(a1)と、オクタノール−水分配係数(logP値)が6〜9のエステル化合物(a2)とを含む樹脂溶液を流涎しトリアセチルセルロース樹脂を含むフィルム(A1)を得る第一工程、
前記フィルム(A1)を延伸し、延伸フィルム(A2)を得る第二工程、
前記延伸フィルム(A2)を前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)は溶解しないが、前記エステル化合物(a2)を溶解する溶剤(a3)に浸漬し、前記フィルム(A2)からエステル化合物(a2)の一部乃至全部を除去したフィルム(A3)を得る第三工程を含むことを特徴とする位相差フィルムの製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、トリアセチルセルロース樹脂(a1)を含む位相差フィルムであり、該位相差フィルムの波長450nmの光における面内方向のレターデーション(Re450nm)と、波長550nmの光における面内方向のレターデーション(Re550nm)との比〔(Re450nm)/(Re550nm)〕が1未満であることを特徴とする位相差フィルムを提供するものである。
【0013】
また、本発明は、前記製造方法で得られる位相差フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、前記位相差フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安価なトリアセチルセルロース樹脂を原料として、しかもフィルムの積層などの煩雑な工程を経ずとも逆分散性のフィルムを製造することができる。このフィルムは、液晶表示装置に組み込まれる位相差フィルムをして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は実施例1で得られた位相差フィルム(1)の走査型電子顕微鏡(SEM)による3500倍での観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の製造方法で用いるトリアセチルセルロース樹脂(a1)は、パルプ、リンターなどのセルロース樹脂をアセチル化することで得られる樹脂である。
【0018】
セルロース樹脂は基本単位であるD−グルコースが、β−1,4結合で直鎖状につながった多糖である。セルロースを構成するグルコースユニットには2、3、6位の3つの水酸基が存在しており、これらの水酸基はエステル化可能である。セルロースのエステル化は既知の方法で行うことができる。例えば、セルロースを強苛性ソーダ溶液にて処理した後、酸無水物によってアシル化する。得られたセルロースアシレートの置換度はほぼ3となるが、これを加水分解することにより、目的の置換度を有するセルロースアシレートを製造することができる。セルロースアシレートの置換基の種類と置換度は、ASTM−D817によって求めることができる。
【0019】
一般的に、置換度の異なるセルロースアシレート樹脂や、置換基の異なるセルロースアシレート樹脂は、加水分解工程や別途エステル化工程が必要であり、高価な樹脂となる。
【0020】
本発明の製造方法で用いるトリアセチルセルロース樹脂(a1)は、セルロース樹脂中のグルコース単位の3つのヒドロキシ基を全てアセチル化したものであり、その後の工程が必要なく安価な樹脂である。本発明の製造方法で用いるトリアセチルセルロース樹脂(a1)の置換度は2.8〜3.0の範囲のものが、後述する第二工程において、フィルム(A1)形状を良好に維持することができる。
【0021】
本発明の製造方法において、従来正分散性のフィルムしか得られなかったトリアセチルセルロース樹脂(a1)をベース樹脂として用いても、逆分散性のフィルムを得ることが出来る。安価にフィルムを提供するという本発明の課題を達成する為に、安価なトリアセチルセルロース樹脂(a1)のみを用いることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で他のセルロースエステル樹脂を併用することもできる。他のセルロースエステル樹脂としては、例えば、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等が挙げられる。他のセルロースエステル樹脂を使用する際は、1種類を使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0022】
本発明で用いるトリアセチルセルロース樹脂(a1)は、重合度が250〜400が好ましい。重合度がかかる範囲であれば、優れた機械的物性を有する位相差フィルムを得ることができる。
【0023】
前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)の数平均分子量(Mn)は、70,000〜300,000の範囲が好ましく、80,000〜200,000の範囲がより好ましい。前記セルロースアセテートの(Mn)がかかる範囲であるならば、優れた機械的物性を有する位相差フィルムを得ることができる。
【0024】
ここで、数平均分子量(Mn)はGPC測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、トリアセチルセルロース樹脂のGPCの測定条件は以下の通りである。
【0025】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテック製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 メチレンクロライド
流速 1.0ml/分
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のメチレンクロライド溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0026】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
【0027】
本発明で用いるエステル化合物(a2)はオクタノール−水分配係数(logP値)が6〜9である必要がある。logP値が6より小さいとエステル化合物が親水性となりトリアセチルセルロースとの相溶性が良好となる。この場合、相分離が生じず、溶剤浸漬した後に空孔が生じないことから、逆分散性を発現するフィルムを得にくいことから好ましくない。logP値が9より大きいとエステル化合物が疎水性となりトリアセチルセルロース樹脂(a1)との相溶性が悪化し、透明性が損なわれ、その結果、位相差フィルムとして好適に使用できるフィルムが得にくくなることから好ましくない。エステル化合物(a2)は、透明性を維持した逆分散性位相差フィルムが容易に得られることから、logP値が6〜8であるエステル化合物がより好ましい。
【0028】
ここで、オクタノール−水分配係数(LogP値)は、化学物質の疎水性(脂質への溶けやすさ)を表す指標であり、JIS Z−7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法または経験的方法により見積もることも可能である。
【0029】
LogP値を求める方法としては、例えば、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))、Viswanadhan’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,29巻、p163(1989年))、Broto’s fragmentation法(“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、p71(1984年))、CLogP法(参考文献Leo,A.,Jow,P.Y.C.,Silipo,C.,Hansch,C.,J.Med.Chem.,18,865 1975年)等が好ましく用いられる。本発明においては、LogP値は、上記Crippen’s fragmentation法に準じて求めた。
【0030】
本発明で用いるエステル化合物(a2)は、例えば、下記一般式(1)や一般式(2)で表されるエステル化合物等を好ましく例示できる。
【0031】
【化1】
(式中、Aは炭素原子数4〜10のジカルボン酸残基を表し、Bは炭素原子数6〜11のモノアルコール残基を表す。Cは炭素原子数2〜9のグリコール残基を表し、Dは炭素原子数6〜12のモノカルボン酸残基を表す。)
【0032】
一般式(1)で表されるエステル化合物は、例えば、炭素原子数4〜10のジカルボン酸と炭素原子数6〜11のモノアルコールとをエステル化反応させることにより得ることができる。また、一般式(2)で表されるエステル化合物は、例えば、炭素原子数2〜9のグリコールと炭素原子数6〜12のモノカルボン酸とをエステル化反応させることにより得ることができる。
【0033】
前記炭素原子数4〜10のジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸などが挙げられる。
【0034】
前記炭素原子数6〜11のモノアルコールとしては、例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデカノール、2−エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコール等が挙げられる。
【0035】
前記炭素原子数2〜9のグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール、パラキシレングリコール等が挙げられる。
【0036】
前記炭素原子数6〜12のモノカルボン酸としては、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、トルイル酸、ターシャルブチル安息香酸等が挙げられる。
【0037】
本発明で用いるエステル化合物(a2)の中でも、前記一般式(1)で表されるエステル化合物が塩化ビニル樹脂用可塑剤として汎用品であり、安価に手に入ることから好ましく、中でもアジピン酸残基と2−エチルヘキサノール残基とを有するエステル化合物[アジピン酸ジオクチル]、アジピン酸残基とジイソノニルアルコール残基とを有するエステル化合物[アジピン酸ジイソノニル]、フタル酸と2−エチルヘキサノール残基とを有するエステル化合物[フタル酸(ビス2−エチルヘキシル)〔フタル酸ジオクチル〕]がより好ましい。
【0038】
前記一般式(1)で表されるエステル化合物は、例えば、前記ジカルボン酸とモノアルコールとを、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば、180〜250℃の温度範囲内で10〜25時間エステル化反応させることにより製造することができる。尚、エステル化反応の温度、時間などの条件は特に限定せず、適宜設定してよい。
【0039】
また、前記一般式(2)で表されるエステル化合物についても、例えば、前記ジオールとモノカルボン酸とを必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば、180〜250℃の温度範囲内で10〜25時間エステル化反応させることにより製造することができる。尚、エステル化反応の温度、時間などの条件は特に限定せず、適宜設定してよい。
【0040】
前記エステル化触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;ジブチル錫オキサイド等のスズ系触媒;p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸系触媒などが挙げられる。
【0041】
前記エステル化触媒の使用量は、適宜設定すればよいが、通常、原料の全量100質量部に対して、0.001〜0.1質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0042】
本発明で用いるエステル化合物(a2)の数平均分子量(Mn)は、トリアセチルセルロース樹脂(a1)と該エステル化合物(a2)とが相分離しやすくなり、逆分散性を発現する為に必要となる空孔を形成しやすくなることから300〜500の範囲が好ましく、350〜450の範囲がより好ましい。
【0043】
ここで、数平均分子量(Mn)はGPC測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、エステル化合物のGPCの測定条件は前記の通りである。尚、エステル化合物(a2)の数平均分子量(Mn)測定において、展開溶媒はテトラヒドロフランを用いた。また、測定サンプルは、樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したものを5μl使用した。
【0044】
本発明の第一工程は、前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)と、前記エステル化合物(a2)とを含む樹脂溶液を流涎しトリアセチルセルロース樹脂を含むフィルム(A1)を得る工程である。この工程は、具体的には、例えば、前記セルロースエステル樹脂(a1)と前記エステル化合物(a2)とを有機溶剤中に溶解させ、得られた樹脂溶液を金属支持体上に流延させる工程(I)と、流延させた前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤を留去し乾燥させてフィルムを形成する工程(II)と、金属支持体上に形成された前記フィルムを金属支持体から剥離し加熱乾燥させる工程(III)からなる。
【0045】
フィルム(A1)を得る際に用いるエステル化合物(a2)の使用量としては、トリアセチルセルロース樹脂(a1)100質量部に対して3〜20質量部が、逆波長分散性を良好に発現し、しかも、透明性に優れる位相差フィルムが得られることから好ましく、5〜20質量部がより好ましく、5〜15質量部がより好ましい。
【0046】
前記樹脂溶液は、例えば、トリアセチルセルロース樹脂(a1)と、前記エステル化合物(a2)とを有機溶剤に添加・溶解することにより得ることができる。ここで用いる有機溶剤としては、前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)と前記エステル化合物(a2)とを溶解可能なもの(良溶媒)であれば特に限定しないが、良溶媒として、例えばメチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類を使用することが好ましい。
【0047】
また、前記良溶媒と共に、貧溶媒を併用することがフィルム(A1)の生産効率を向上させるうえで好ましい。貧溶媒は、トリアセチルセルロースを膨潤させて良溶媒の溶解性を向上させたり、乾燥時のゲル化を促進することで剥離を容易にする効果をもつ。貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が使用できる。
【0048】
前記良溶媒と貧溶媒とを併用する際の混合割合は、良溶媒/貧溶媒=75/25〜95/5質量比の範囲が好ましい。
【0049】
前記樹脂溶液中のセルロースエステル樹脂(a1)の濃度は、10〜50質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。
【0050】
前記樹脂溶液を得る際に、トリアセチルセルロース樹脂(a1)と、前記エステル化合物(a2)と共に、種々の添加剤を樹脂溶液中に加えることができる。
【0051】
前記添加剤としては、例えば、改質剤、熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤、マット剤、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤等)、染料などが挙げられる。
【0052】
前記改質剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられる。
【0053】
前記熱可塑性樹脂としては、特に限定しないが、例えば、本発明で用いるエステル化合物(a2)以外のポリエステル樹脂、ポリエステルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂等が挙げられる。
【0054】
前記紫外線吸収剤としては、特に限定しないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。前記紫外線吸収剤は、前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)100質量部に対して、0.01〜2質量部の範囲が好ましい。
【0055】
前記マット剤としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク等が挙げられる。前記マット剤は、前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)100質量部に対して、0.1〜0.3質量部の範囲が好ましい。
【0056】
前記染料としては、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、種類や配合量など特に限定しない。
【0057】
前記工程(I)で使用する金属支持体としては、無端ベルト状又はドラム状の金属製のものなどを例示でき、例えば、ステンレス製でその表面が鏡面仕上げの施されたものを使用することができる。
【0058】
前記金属支持体上に樹脂溶液を流延させる際には、得られるフィルムに異物が混入することを防止するために、フィルターで濾過した樹脂溶液を使用することが好ましい。
【0059】
前記工程(II)の乾燥方法としては、特に限定しないが、例えば30〜50℃の温度範囲の風を前記金属支持体の上面及び/又は下面に当てることで、流延した前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤の50〜80質量%を蒸発させ、前記金属支持体上にフィルムを形成させる方法が挙げられる。
【0060】
次いで、前記工程(III)は、前記工程(II)で形成されたフィルムを金属支持体上から剥離し、前記工程(II)よりも高い温度条件下で加熱乾燥させる工程である。前記加熱乾燥方法としては、例えば100〜160℃の温度条件にて段階的に温度を上昇させる方法が、良好な寸法安定性を得ることができるため、好ましい。前記温度条件にて加熱乾燥することにより、前記工程(II)後のフィルム中に残存する有機溶剤をほぼ完全に除去することができる。
【0061】
尚、前記工程(I)〜工程(III)で、有機溶媒は回収し再使用することも可能である。
【0062】
本発明の第二工程は、前記第一工程で得られたフィルム(A1)を延伸し、延伸フィルム(A2)を得る工程である。延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することが好ましい。また、二軸延伸を行う場合にも同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
【0063】
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方の張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時2軸延伸の好ましい延伸倍率は幅方向に×1.05〜×1.5倍で長手方向に×0.8〜×1.3倍であり、特に幅方向に×1.1〜×1.5倍、長手方向に×0.8〜×0.99倍とすることが好ましい。特に好ましくは幅方向に×1.1〜×1.4倍、長手方向に×0.9〜×0.99倍である。
【0064】
また、本発明における「延伸方向」とは、延伸操作を行う場合の直接的に延伸応力を加える方向という意味で使用する場合が通常であるが、多段階に二軸延伸される場合に、最終的に延伸倍率の大きくなった方(即ち、通常遅相軸となる方向)の意味で使用されることもある。
【0065】
第二工程における延伸操作は、加熱条件下にて行うことにより、高温高湿条件下(例えば、80℃、90%RH条件下)における寸法安定性に優れる位相差フィルムが得られることから好ましい。加熱温度としては、40〜220℃が好ましく、100〜210℃がより好ましい。
【0066】
第二工程における延伸時間は、高温高湿条件下(例えば、80℃、90%RH条件下)における寸法変化率を小さくするためには短時間である方が好ましい。但し、フィルムの均一性の観点から、最低限必要な延伸時間の範囲が規定される。具体的には1〜10秒の範囲であることが好ましく、4〜10秒がより好ましい。
【0067】
第三工程は、第二工程で得られた延伸フィルム(A2)を、前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)は溶解しないが、前記エステル化合物(a2)を溶解する溶剤(a3)に浸漬し、前記フィルム(A2)からエステル化合物(a2)の一部乃至全部を除去したフィルム(A3)を得る工程である。ここで、溶剤が、溶剤(a3)に該当するか否かの判定は、例えば、ASTM D3132−84 (Reapproved 1996)の7.2結果の判断(Interpretation of Results)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行なうことが出来る。
【0068】
前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)が溶剤に溶解するか否かの判定は、具体的にはトリアセチルセルロース樹脂(a1)10重量部と有機溶剤90重量部をフラスコにとって密栓し、25℃で16時間振とうした後の溶解状態を観察し、前記ASTM D3132−84の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された下記判定区分で、1.「完全な溶液」か、2.「境界線の溶液」か、3.「不溶」かのどの区分に属するか判定することにより行うことができる。
【0069】
また、前記エステル化合物(a2)が溶剤に溶解するか否かの判定は、具体的にはエステル化合物(a2)10重量部と有機溶剤90重量部をフラスコにとって密栓し、25℃で16時間振とうした後の溶解状態を観察し、前記ASTM D3132−84の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された下記判定区分で、1.「完全な溶液」か、2.「境界線の溶液」か、3.「不溶」かのどの区分に属するか判定することにより行うことができる。
【0070】
1.「完全な溶液(Complete Solution)」;明瞭な固形物やゲル粒子を含まない単一の透明な相(A single, clear liquid phase with no distinct solid orgel particle)。
2.「境界線の領域(Borderline Solution)」;明瞭な相分離を含まない透明または混濁した相(Cloudy or turbid but without distinct phase separation)。
3.「不溶(Insoluble)」;2相に分離:分離したゲル固体相を含む液体又は2相に相分離した液体(Two phases : either a liquid with separate gel solid phase or two separate liquids)。
【0071】
第三工程で用いる溶剤とは、前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)が溶剤に溶解するか否かの判定において、前記「3」に該当し、且つ、前記エステル化合物(a2)が溶剤に溶解するか否かの判定において、前記「1」に該当する溶剤である。
【0072】
本発明で用いる有機溶剤(a3)は、使用するトリアセチルセルロース樹脂(a1)とエステル化合物(a2)により異なるが、例えば、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、含窒素系溶剤、グリコール系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤等が挙げられる。
【0073】
前記ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。前記エステル系溶剤としては、例えば、蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等が挙げられる。前記含窒素系溶剤としては、例えば、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。前記グリコール系溶剤としては、例えば、メチルグリコール、メチルグリコールアセテート等が挙げられる。
【0074】
前記エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等が挙げられる。前記炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロルエタン等が挙げられる。前記アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。また、上記に分類されないジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンも使用できる。
【0075】
本発明で用いる溶剤(a3)の中でも、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、含窒素系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤が好ましい、ケトン系溶剤の中でもアセトン、メチルエチルケトンが好ましく、エステル系溶剤の中でも酢酸エチルが好ましい。含窒素系溶剤の中でも、アセトニトリルが好ましく、エーテル系溶剤の中でもテトラヒドロフランが好ましい。炭化水素系溶剤の中でも、ベンゼン、シクロヘキサン、トルエンが好ましく、アルコール系溶剤の中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノールが好ましい。
【0076】
本発明で用いる溶剤(a3)の中でも、トリアセチルセルロースを溶解せず、膨潤させることでエステル化合物を除去しやすい特性に優れることからアルコール系溶剤がより好ましく、中でも、メタノールが更に好ましい。
【0077】
また、本発明で用いる溶剤(a3)は、沸点が20℃〜120℃の有機溶剤が、後述するフィルム(A3)を乾燥させる際に、フィルム(A3)から溶剤(a3)を容易に除去できることから好ましく、沸点が30℃〜120℃の有機溶剤がより好ましい。
【0078】
前記延伸フィルム(A2)を溶剤(a3)中に浸漬させる時間は、用いる溶剤種や温度、エステル化合物種によって異なるが、通常0.1〜20時間であり、より好ましくは2〜15時間である。具体的には、エステル化合物(a2として)アジピン酸ジオクチルを用い、溶剤(a3)としてメタノールを用い、該メタノールの温度を25℃で行う場合、浸漬時間は通常8時間程度である。
【0079】
前記延伸フィルム(A2)を溶剤(a3)中に浸漬させる温度は、用いる溶剤によって異なるが、溶剤の融点+5℃以上、沸点−5℃以下が好ましい。溶剤の浸漬時間を短くし生産時間を早める為には、溶剤の温度は高いほうが好ましい。
【0080】
本発明の製造方法では、トリアセチルセルロース樹脂(a1)、とオクタノール−水分配係数(logP値)が6〜9であるエステル化合物(a2)を用いることを特徴とする。logP値が上記範囲にあるエステル化合物(a2)はトリアセチルセルロース樹脂(a1)との相溶性が中程度である。相溶性が中程度となる組合せで前記トリアセチルセルロース樹脂(a1)とエステル化合物(a2)とを使用して延伸フィルムは、トリアセチルセルロース樹脂(a1)の領域とエステル化合物(a2)の領域とが分離したフィルムとなる。このように領域が分離したフィルムをエステル化合物(a2)を溶解する溶剤(a3)に浸漬することにより、フィルムからエステル化合物(a2)が溶剤(a3)中に抽出され、フィルム中のエステル化合物(a2)が存在する領域は空孔となる。その空孔が形態異方性を持つことから、屈折率異方性に寄与し、逆分散性を発現したと本発明者らは推測している。
【0081】
本発明では、通常、フィルム(A3)を得る第三工程の後、フィルム(A3)を乾燥させる第四工程を含む。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う事が出来るが、熱風を用いて行うことが、より簡便な為好ましい。
【0082】
乾燥温度は通常40〜150℃の範囲である。一定の温度で乾燥させても良いし、段階的に温度を高くしても良い。また、乾燥させる際は、常圧で行っても良いし、乾燥時間を短縮する為に減圧下で行っても良い。
【0083】
本発明の製造方法では、種々の厚さの位相差フィルムを製造することができる。本発明の製造方法で製造できる位相差フィルムは通常20〜200μmである。
【0084】
本発明の位相差フィルムはトリアセチルセルロース樹脂(a1)を含む位相差フィルムであり、該位相差フィルムの波長450nmの光における面内方向のレターデーション(Re450nm)と、波長550nmの光における面内方向のレターデーション(Re550nm)との比〔(Re450nm)/(Re550nm)〕が1未満であることを特徴とする。本発明の位相差フィルムは、例えば、前記した本発明の位相差フィルムの製造方法により好ましく製造することができる。本発明の位相差フィルムの中でも〔(Re450nm)/(Re550nm)〕が0.4〜0.9のものが好ましい。
【0085】
本発明の製造方法で得られる位相差フィルムや本発明の位相差フィルムは、種々の光学用途として用いることができる。例えば、位相差機能が付いた偏光子保護フィルムや、1/4λ板、1/2λ板等の用途に使用できる。
【0086】
また、本発明の液晶表示装置は本発明の製造方法で得られる位相差フィルムや本発明の位相差フィルムを有することを特徴とする。液晶表示装置としては、例えば、タブレット型端末、パソコンモニター、液晶テレビ等が挙げられる。本発明の製造方法で得られた位相差フィルムを用いることで、光漏れの少ない液晶表示装置が得られる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例に基づき更に具体的に説明する。例中の部及び%は断りがない限り質量基準である。
【0088】
合成例1〔エステル化合物(a2)の合成〕
温度計、攪拌器及び還流冷却器を備えた内容積1リットルの四つ口フラスコに、アジピン酸292g、2−エチルヘキサノール573g及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.05gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、220℃になるまで段階的に昇温して、合計10時間反応させた。反応後、200℃で未反応の2−エチルヘキサノールを減圧除去することによって、常温液体であるエステル化合物(a2−1)を得た。エステル化合物(a2−1)の酸価は0.12、水酸基価は8、数平均分子量は380)であり、また、この化合物のlogP値は6.51であった。
【0089】
合成例2(同上)
温度計、攪拌器及び還流冷却器を備えた内容積1リットルの四つ口フラスコに、アジピン酸292g、イソノニルアルコール635g及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.06gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、220℃になるまで段階的に昇温して、合計10時間反応させた。反応後、200℃で未反応のイソノニルアルコールを減圧除去することによって、常温液体であるエステル化合物(a2−2)を得た。エステル化合物(a2−2)の酸価は0.18、水酸基価は10、数平均分子量は410であり、また、この化合物のlogP値は7.2であった。
【0090】
合成例3(同上)
温度計、攪拌器及び還流冷却器を備えた内容積1リットルの四つ口フラスコに、無水フタル酸296g、2−エチルヘキサノール573g及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.05gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、230℃になるまで段階的に昇温して、合計12時間反応させた。反応後、200℃で未反応の2−エチルヘキサノールを減圧除去することによって、常温液体であるエステル化合物(a2−3)を得た。エステル化合物(a2−3)の酸価は0.18、水酸基価は10、数平均分子量は400であり、また、この化合物のlogP値は7.46であった。
【0091】
比較合成例1〔比較対照用エステル化合物(a´2)の合成〕
温度計、攪拌器及び還流冷却器を備えた内容積1リットルの四つ口フラスコに、アジピン酸292g、1−ブタノール356g及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.04gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、220℃になるまで段階的に昇温して、合計12時間反応させた。反応後、200℃で未反応の1−ブタノールを減圧除去することによって、常温液体である比較対照用エステル化合物(a´2−1)を得た。比較対照用エステル化合物(a´2−1)の酸価は0.18、水酸基価は10、数平均分子量は265であり、また、この化合物のlogP値は3.21であった。
【0092】
比較合成例2(同上)
温度計、攪拌器及び還流冷却器を備えた内容積1リットルの四つ口フラスコに、コハク酸236g、1−ブタノール356g及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.04gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、220℃になるまで段階的に昇温して、合計11時間反応させた。反応後、200℃で未反応の1−ブタノールを減圧除去することによって、常温液体である比較対照用エステル化合物(a´2−2)を得た。比較対照用エステル化合物(a´2−2)の酸価は0.08、水酸基価は7、数平均分子量は240であり、また、この化合物のlogP値は2.37であった。
【0093】
比較合成例3(同上)
温度計、攪拌器及び還流冷却器を備えた内容積1リットルの四つ口フラスコに、安息香酸488g、プロピレングリコール184g及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.04gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、230℃になるまで段階的に昇温して、合計15時間反応させた。反応後、200℃で未反応のプロピレングリコールを減圧除去することによって、常温液体である比較対照用エステル化合物(a´2−3)を得た。比較対照用エステル化合物(a´2−3)の酸価は0.15、水酸基価は4、数平均分子量は290であり、また、この化合物のlogP値は3.78であった。
【0094】
実施例1
トリアセチルセルロース(製品名LT−35、ダイセル化学工業製)100部、エステル化合物(a2−1)10部に対し、メチレンクロライド810部及びメタノール90質量部を加えて溶解し、樹脂溶液を得た。樹脂溶液をガラス板上に厚み約1mmとなるように流延し、室温で一晩放置後、50℃で30分、120℃で30分乾燥し、膜厚80μmのフィルムを得た。
【0095】
次に、加熱延伸機(井元製作所製)にて、205℃にて初期長の1.3倍となるように一軸延伸して延伸フィルムを作成した。この延伸フィルムを25℃に調整したメタノールに8時間浸漬した。浸漬後、40℃、1torrにて乾燥し、位相差フィルム(1)を得た。尚、トリアセチルセルロース及びエステル化合物(a2−1)のメタノールに対する溶解性の判定をASTM D3132−84 (Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行った処、該判定法の判定区分でセルロースエステルは「不溶」であり、エステル化合物(a2−1)は「完全な溶液」であった。
【0096】
メタノールに浸漬前の前記延伸フィルム及び本発明の製造方法で得られた位相差フィルム(1)の複屈折Δn、逆分散性の度合い及びヘイズ(HAZE)について下記方法に従って評価した。評価結果を第1表に示す。位相差フィルム(1)の延伸方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)による3500倍での観察写真を図1に示す。この観察写真により、エステル化合物(a2−1)がメタノールにより延伸フィルムから除去され、空孔(Nano Pore)が形成されている事が確認できる。
【0097】
<複屈折Δnの評価方法>
550nmにおける位相差値を位相差測定装置KOBRA−WR(王子計測機器株式会社製)で測定し、得られた位相差値を延伸フィルム、位相差フィルム(1)のそれぞれの厚みで除することで、光学フィルムの複屈折Δnを得た。
【0098】
<逆分散性の度合いの評価方法>
波長450nmの光における面内方向のレターデーション(Re450nm)と、波長550nmの光における面内方向のレターデーション(Re550nm)とを、位相差測定装置KOBRA−WR(王子計測機器株式会社製)で測定し、〔(Re450nm)/(Re550nm)〕を求めた。〔(Re450nm)/(Re550nm)〕が1よりも小さければ、逆分散性のフィルムであることを表す。
【0099】
<ヘイズの評価方法>
濁度計NDH5000(日本電色工業株式会社)を用いてJISK7105に準じて測定した。
【0100】
実施例2
トリアセチルセルロース(製品名LT−35、ダイセル化学工業製)100部、エステル化合物(a2−1)10部に対し、メチレンクロライド810部及びメタノール90質量部を加えて溶解し、樹脂溶液を得た。樹脂溶液をガラス板上に厚み約1mmとなるように流延し、室温で一晩放置後、50℃で30分、120℃で30分乾燥し、膜厚80μmのフィルムを得た。
【0101】
次に、加熱延伸機(井元製作所製)にて、205℃にて初期長の1.5倍となるように一軸延伸して延伸フィルムを作成した。この延伸フィルムを25℃に調整したメタノールに8時間浸漬した。浸漬後、40℃、1torrにて乾燥し、位相差フィルム(2)を得た。
【0102】
メタノールに浸漬前の前記延伸フィルム及び本発明の製造方法で得られた位相差フィルム(2)の複屈折Δn、逆分散性の度合い及びヘイズ(HAZE)について下記方法に従って評価した。評価結果を第1表に示す。
【0103】
実施例3
トリアセチルセルロース(製品名LT−35、ダイセル化学工業製)100部、エステル化合物(a2−2)10部に対し、メチレンクロライド810部及びメタノール90質量部を加えて溶解し、樹脂溶液を得た。樹脂溶液をガラス板上に厚み約1mmとなるように流延し、室温で一晩放置後、50℃で30分、120℃で30分乾燥し、膜厚80μmのフィルムを得た。
【0104】
次に、加熱延伸機(井元製作所製)にて、208℃にて初期長の1.5倍となるように一軸延伸して延伸フィルムを作成した。この延伸フィルムを25℃に調整したメタノールに8時間浸漬した。浸漬後、40℃、1torrにて乾燥し、位相差フィルム(3)を得た。尚、トリアセチルセルロース及びエステル化合物(a2−2)のメタノールに対する溶解性の判定をASTM D3132−84 (Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行った処、該判定法の判定区分でセルロースエステルは「不溶」であり、エステル化合物(a2−2)は「完全な溶液」であった。
【0105】
メタノールに浸漬前の前記延伸フィルム及び本発明の製造方法で得られた位相差フィルム(3)の複屈折Δn、逆分散性の度合い及びヘイズ(HAZE)について下記方法に従って評価した。評価結果を第1表に示す。
【0106】
実施例4
トリアセチルセルロース(製品名LT−35、ダイセル化学工業製)100部、エステル化合物(a2−2)15部に対し、メチレンクロライド810部及びメタノール90質量部を加えて溶解し、樹脂溶液を得た。樹脂溶液をガラス板上に厚み約1mmとなるように流延し、室温で一晩放置後、50℃で30分、120℃で30分乾燥し、膜厚80μmのフィルムを得た。
【0107】
次に、加熱延伸機(井元製作所製)にて、217℃にて初期長の1.5倍となるように一軸延伸して延伸フィルムを作成した。この延伸フィルムを25℃に調整したメタノールに8時間浸漬した。浸漬後、40℃、1torrにて乾燥し、位相差フィルム(4)を得た。
【0108】
メタノールに浸漬前の前記延伸フィルム及び本発明の製造方法で得られた位相差フィルム(4)の複屈折Δn、逆分散性の度合い及びヘイズ(HAZE)について下記方法に従って評価した。評価結果を第1表に示す。
【0109】
実施例5
トリアセチルセルロース(製品名LT−35、ダイセル化学工業製)100部、エステル化合物(a2−3)10部に対し、メチレンクロライド810部及びメタノール90質量部を加えて溶解し、樹脂溶液を得た。樹脂溶液をガラス板上に厚み約1mmとなるように流延し、室温で一晩放置後、50℃で30分、120℃で30分乾燥し、膜厚80μmのフィルムを得た。
【0110】
次に、加熱延伸機(井元製作所製)にて、203℃にて初期長の1.5倍となるように一軸延伸して延伸フィルムを作成した。この延伸フィルムを25℃に調整したメタノールに8時間浸漬した。浸漬後、40℃、1torrにて乾燥し、位相差フィルム(5)を得た。尚、トリアセチルセルロース及びエステル化合物(a2−3)のメタノールに対する溶解性の判定をASTM D3132−84 (Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行った処、該判定法の判定区分でセルロースエステルは「不溶」であり、エステル化合物(a2−3)は「完全な溶液」であった。
【0111】
メタノールに浸漬前の前記延伸フィルム及び本発明の製造方法で得られた位相差フィルム(5)の複屈折Δn、逆分散性の度合い及びヘイズ(HAZE)について下記方法に従って評価した。評価結果を第1表に示す。
【0112】
実施例6
トリアセチルセルロース(製品名LT−35、ダイセル化学工業製)100部、エステル化合物(a2−2)15部に対し、メチレンクロライド810部及びメタノール90質量部を加えて溶解し、樹脂溶液を得た。樹脂溶液をガラス板上に厚み約1mmとなるように流延し、室温で一晩放置後、50℃で30分、120℃で30分乾燥し、膜厚80μmのフィルムを得た。
【0113】
次に、加熱延伸機(井元製作所製)にて、206℃にて初期長の1.5倍となるように一軸延伸して延伸フィルムを作成した。この延伸フィルムを25℃に調整したメタノールに8時間浸漬した。浸漬後、40℃、1torrにて乾燥し、位相差フィルム(6)を得た。
【0114】
メタノールに浸漬前の前記延伸フィルム及び本発明の製造方法で得られた位相差フィルム(6)の複屈折Δn、逆分散性の度合い及びヘイズ(HAZE)について下記方法に従って評価した。評価結果を第1表に示す。
【0115】
比較例1
エステル化合物(a2−1)を使用しない以外は、実施例1と同様にして比較対照用位相差フィルム(1´)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。
【0116】
比較例2
エステル化合物(a2−1)の代わりに比較対照用エステル化合物(a´2−1)を使用した以外は実施例1と同様にして比較対照用位相差フィルム(2´)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。尚、比較対照用エステル化合物(a´2−1)のメタノールに対する溶解性の判定をASTM D3132−84 (Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行った処、該判定法の判定区分で比較対照用エステル化合物(a´2−1)は「完全な溶液」であった。
【0117】
比較例3
エステル化合物(a2−1)の代わりに比較対照用エステル化合物(a´2−2)を使用した以外は実施例1と同様にして比較対照用位相差フィルム(3´)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。尚、比較対照用エステル化合物(a´2−2)のメタノールに対する溶解性の判定をASTM D3132−84 (Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行った処、該判定法の判定区分で比較対照用エステル化合物(a´2−2)は「完全な溶液」であった。
【0118】
比較例4
エステル化合物(a2−1)の代わりに比較対照用エステル化合物(a´2−3)を使用した以外は実施例1と同様にして比較対照用位相差フィルム(4´)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。尚、比較対照用エステル化合物(a´2−3)のメタノールに対する溶解性の判定をASTM D3132−84 (Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行った処、該判定法の判定区分で比較対照用エステル化合物(a´2−3)は「完全な溶液」であった。
【0119】
比較例5
エステル化合物(a2−1)の代わりにトリフェニルフォスフェートを使用した以外は実施例1と同様にして比較対照用位相差フィルム(5´)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。尚、トリフェニルフォスフェートのメタノールに対する溶解性の判定をASTM D3132−84 (Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行った処、該判定法の判定区分でトリフェニルフォスフェートは「完全な溶液」であった。
【0120】
比較例6
エステル化合物(a2−1)の代わりにフタル酸ジエチルを使用し、フィルム化する際の延伸温度を178℃とする以外は実施例1と同様にして比較対照用位相差フィルム(6´)を得た。実施例1と同様の評価を行い、その結果を第2表に示す。尚、トリフェニルフォスフェートのメタノールに対する溶解性の判定をASTM D3132−84 (Reapproved 1996)の7.2.1.1〜7.2.1.3に記載された判定法を用いて行った処、該判定法の判定区分でフタル酸ジエチルは「完全な溶液」であった。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
実施例1では、エステル化合物(a2−1)を用いた場合、溶剤抽出前の延伸フィルムの〔Re(450nm)/Re(550nm)〕が1.34であったのに対し、溶剤浸漬後には〔Re(450nm)/Re(550nm)〕が0.76となっており、本願発明の製造方法で得られる位相差フィルムは逆分散性を有するフィルムとなっていることが分かる。延伸倍率を上げた実施例2においても、実施例1と同様の傾向が見られる。
また、LogP値が6〜9の間のエステル化合物を用いた実施例3〜6においても、実施例1と同様の傾向が見られ、逆分散性フィルムが得られることが分かる。
【0124】
比較例1では、添加剤を加えない配合であるが、溶剤抽出後も〔Re(450nm)/Re(550nm)〕が1.31であり逆分散性を有する位相差フィルムとはならなかった。比較例2〜6は、LogP値が6よりも小さい比較対照用のエステル化合物又はトリフェニルフォスフェート又はフタル酸ジエチルを使用した例であるが、溶剤浸漬後も逆分散性フィルムとはならなかった。
【0125】
本発明によれば、特定のエステル化合物を用いた延伸フィルムを溶剤に浸漬し、該エステル化合物を溶剤中に抽出することで、安価なトリアセチルセルロース樹脂を用いても逆分散性を有する位相差フィルムを得ることが出来、産業上有用である。
図1