特許第6237160号(P6237160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友大阪セメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6237160-光導波路デバイス 図000002
  • 特許6237160-光導波路デバイス 図000003
  • 特許6237160-光導波路デバイス 図000004
  • 特許6237160-光導波路デバイス 図000005
  • 特許6237160-光導波路デバイス 図000006
  • 特許6237160-光導波路デバイス 図000007
  • 特許6237160-光導波路デバイス 図000008
  • 特許6237160-光導波路デバイス 図000009
  • 特許6237160-光導波路デバイス 図000010
  • 特許6237160-光導波路デバイス 図000011
  • 特許6237160-光導波路デバイス 図000012
  • 特許6237160-光導波路デバイス 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237160
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】光導波路デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20171120BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20171120BHJP
   G02F 1/035 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G02B6/12 301
   G02B6/42
   G02F1/035
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-244767(P2013-244767)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-102789(P2015-102789A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】一明 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−224064(JP,A)
【文献】 特開2013−080009(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0185533(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 − 6/126
G02B 6/42
G02F 1/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、該誘電体基板上に高屈折率材料を熱拡散して形成される拡散導波路と、該拡散導波路の上方に配置され、該拡散導波路を伝搬する光波の一部を受光する受光素子とを備えた光導波路デバイスにおいて、
該受光素子は、該誘電体基板上に形成された台座上に配置し固定され、
該台座の少なくとも一部は、該拡散導波路を形成する高屈折率材料と同じ高屈折率材料を熱拡散して形成すると共に、該拡散導波路の線幅の3倍以内の幅の線の集合体で構成されていることを特徴とする光導波路デバイス。
【請求項2】
誘電体基板と、該誘電体基板上に高屈折率材料を熱拡散して形成される拡散導波路と、該拡散導波路の上方に配置され、該拡散導波路を伝搬する光波の一部を受光する受光素子とを備えた光導波路デバイスにおいて、
該受光素子は、該誘電体基板上に形成された台座上に配置し固定され、
該台座の少なくとも一部は、該拡散導波路を形成する高屈折率材料と同じ高屈折率材料を熱拡散して形成すると共に、該拡散導波路が延在する方向とほぼ同じ方向に延在する線の集合体で構成されていることを特徴とする光導波路デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の光導波路デバイスにおいて、前記台座の一部は、該拡散導波路が延在する方向とほぼ同じ方向に延在する線の集合体で構成されていることを特徴とする光導波路デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の光導波路デバイスにおいて、該高屈折率材料で形成した台座上、又は該受光素子の該台座への対向面のいずれか、もしくは両方に該拡散導波路と該受光素子の下面とのギャップを調整するための膜体が配置されていることを特徴とする光導波路デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光導波路デバイスにおいて、該受光素子は、受光部と該受光部を保持する透明基板を備え、該受光素子が複数本の拡散導波路に跨って配置され、該透明基板の該拡散導波路に対向する面には、該受光部が受光すべき光波を伝搬する拡散導波路には近接し、該受光部が受光しない光波を伝搬する拡散導波路からは離れるよう構成された凹凸が形成されていることを特徴とする光導波路デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路デバイスに関するものであり、特に、誘電体基板に高屈折率材料を熱拡散して形成される拡散導波路と、該拡散導波路の上方に配置され、該拡散導波路を伝搬する光波の一部を受光する受光素子とを有する光導波路デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路を有する光変調器などの光導波路デバイスでは、光導波路を伝搬する光波の一部を直接モニタ(「同相モニタ方式」という。)したり、マッハツェンダー型光導波路の合波部などの光導波路から放出される放射モード光(OFF光)をモニタすることが行われている。例えば、光変調器の出力光を一定出力の状態に維持するため、光変調器の出力光をモニタし、出力光の変化に対応して、光変調器に印加する変調電圧や直流バイアスなどの大きさを制御している。
【0003】
モニタでバイアス制御を行う場合でも、光変調器からの出力が適正となるためには、光変調器の光ファイバ出力とモニタ出力との出力関数が、変調電極への印加電圧に対して同相又は逆相の関係にあってその間に位相差が無いことが求められる。このため、モニタ光への不要光混入を防止する構造や、例えば特許文献1又は2のように2つのOff光を利用する構造が提案されている。
【0004】
しかしながら特許文献1又は2に記載されているようなマッハツェンダー型光導波路を有する光変調器において、変調器のバイアス点のモニタ用途で従来使用されてきた光合波部から放射される放射モード光をモニタする方式は、信号光の損失が抑制されるという利点があるものの、次のような欠点を有している。(1)信号光とモニタ光とが逆相となりかつ位相差はπからずれが生じること、(2)効率良く放射モード光を取り出すためには構造が複雑化し、基板上に受光素子を配置することが難しく、小型化やコストダウンが難しい、さらには、(3)複数の光変調部を配置した多段型光変調器の場合には、最終段の光合波部以外では放射モード光を正確にモニタすることが難しい。
【0005】
これに対し、光導波路を伝搬する光波の一部を直接モニタする、同相モニタ方式の場合には、信号光との位相差が無い上、多段型光変調器でも最終段の光合波部以外でも光変調部の信号光をモニタすることが可能である。
【0006】
同相モニタ方式の例としては、特許文献3のように、光導波路の一部に切れ込みを入れミラーとし反射光を受光する方法、特許文献4のように、S字光導波路で放射光を発生させ該放射光を受光する方法、特許文献5のように、光導波路に円錐状等の穴を形成し該穴に高屈折率材料を充填し、光波を光導波路の上方に導出し受光する方法などがある。
【0007】
これらの方法では、導波光から取り出した光を原理的にすべて受光することができないため、受光素子で受光できる光パワーが弱く、導波光の損失も大きい、すなわち過剰損失が大きいという問題を生じる。
【0008】
他方、エバネセント結合型の受光素子が提案されている。これは、光導波路(実効屈折率nf)よりも屈折率の高い受光素子(受光素子を構成する高屈折率基板,屈折率np)を光導波路に近づけて配置することで、エバネセント波は導波路に対して角度sin−1(nf/np)で受光素子に入射する。入射光の光路上に受光素子の受光部を配置することで、エバネセント波を検出することができる。
【0009】
エバネセント結合型の受光素子の利点は、受光素子の設計により、モニタとして取り出したパワー以外の過剰損失を理論上0%で受光させることできる。受光感度(受光素子での受光パワー÷導波路を伝搬する光パワー)は、光導波路と接している部分の長さ、及び光導波路と受光素子とのギャップで決まる。従って、受光素子の形状が決まっているとするならば、光導波路と受光部(受光素子)とのギャップを調整することで受光パワーを調整することができる。
【0010】
エバネセント結合型の受光素子の例としては、特許文献6に示すように、半導体導波路デバイスを用いたものが提案されている。半導体導波路デバイスでは、光導波路や受光素子を結晶成長により形成するため、各層の厚さを精度良く制御できると共に、構造の再現性よく作成でき、安定した受光パワーを確保できる。
【0011】
これに対し、誘電体基板に形成した拡散導波路でエバネセント結合型の受光素子を実現するには、受光素子を、接着材を利用して、あるいは直接接合により、光導波路表面に貼り付けることが考えられる。しかしながら、前述のとおり受光感度は、光導波路と光を吸い上げるための高屈折率材料である受光素子とのギャップによって決まる。このため、受光感度を安定に保つには、高精度なギャップ調整が不可欠である。しかも、拡散導波路の場合は、光導波路の表面は盛り上がっており、平坦では無い。このため、拡散導波路と受光素子とのギャップ制御は一層困難なものとなっている。また、信頼性を確保して充分な強度で受光素子を誘電体基板に接着するには、ある程度の接着材の厚みと面積が必要である。
【0012】
本出願人は、拡散導波路と受光素子とのギャップを調整するために、特許文献7において、図1及び2に示すように、拡散導波路2上に配置された受光素子4を支持するための台座3を提案している。拡散導波路2は誘電体基板1に高屈折率材料を熱拡散することで形成されている。また、台座3は、拡散導波路2を形成する高屈折率材料と同じ高屈折率材料を熱拡散して形成しており、拡散導波路2の盛り上がりとほぼ同じ高さに設定されている。
【0013】
図1は光導波路デバイスの受光素子4近傍の状態を説明する平面図である。受光素子4の輪郭は点線で示されており、拡散導波路2を挟むように、台座3が配置されている。図2は、図1の矢印A−A’における断面図である。受光素子4は、受光部6とそれを支持する透明基板(高屈折率材料基板)7で構成される。符号5は誘電体基板1上に受光素子4を固着するための接着剤であり、符号8は拡散導波路2の表面と受光素子との間の間隔を調整するための膜体である。
【0014】
他方、上述した特許文献1及び2のようなマッハツェンダー型光導波路から放出される2つの放射光を同時に受光する場合には、2つの放射光を等量の光量で受光する必要があり、受光素子をより高い精度で配置することが求められる。
【0015】
図3は、ネスト型光導波路2を例示しており、メイン・マッハツェンダー型光導波路の合波部における放射光を、受光素子4で受光する構成を説明している。合波部には、メイン・マッハツェンダー型光導波路から出力される出力光が伝搬する出力導波路20と、該合波部から放出される放射光が伝搬する放射光用導波路21、22とが設けられている。
【0016】
図4は、図3の受光素子4の部分を拡大した図であり、受光素子4は点線の枠で示されている。図5は、図4の矢印B−B’における断面図を示している。図4に示すように、受光素子4を支持する台座3は、出力導波路20と放射光用導波路21,22を挟むように配置されている。また、受光素子4は、受光部6とそれを支持する透明基板7から構成され、受光部6には、放射光用導波路21,22を伝搬する光波の一部が入射される。
【0017】
本発明者らは、複数の拡散導波路20〜22の中から特定の拡散導波路を伝搬する光波のみを受光するには、例えば、図5に示すように、受光する光波が伝搬する拡散導波路21,22に対しては透明基板7を近づけ、受光しない光波が伝搬する拡散導波路20からは透明基板7を離すことが必要であると考えた。このため、透明基板の拡散導波路に対向する面には、選択する拡散導波路に対応して凹部10を含む凹凸面を形成している。
【0018】
放射光用導波路21,22を伝搬する放射光の一部を同時に受光部6に導入するには、受光する放射光の光量を同じにするだけでなく、位相差を発生しないようにすることが重要であり、受光素子4と拡散導波路との位置関係を高精度に調整することが必要となる。しかも、受光素子4の透明基板7に凹凸面が形成される場合のように、受光しない光波を伝搬する拡散導波路20も受光素子4の下面側に配置される場合には、更に精度の高い位置調整が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2012−173654号公報
【特許文献2】特開2013−80009号公報
【特許文献3】特開2006−47894号公報
【特許文献4】特開平5−224044号公報
【特許文献5】特開平11−194237号公報
【特許文献6】特開2005−129628号公報
【特許文献7】特開2010−224064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、誘電体基板に形成された拡散導波路に対して、受光素子を精度よく配置することが可能な光導波路デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明の光導波路デバイスは、以下のような技術的特徴を有する。
(1) 誘電体基板と、該誘電体基板上に高屈折率材料を熱拡散して形成される拡散導波路と、該拡散導波路の上方に配置され、該拡散導波路を伝搬する光波の一部を受光する受光素子とを備えた光導波路デバイスにおいて、該受光素子は、該誘電体基板上に形成された台座上に配置し固定され、該台座の少なくとも一部は、該拡散導波路を形成する高屈折率材料と同じ高屈折率材料を熱拡散して形成すると共に、該拡散導波路の線幅の3倍以内の幅の線の集合体で構成されていることを特徴とする。
【0022】
(2) 誘電体基板と、該誘電体基板上に高屈折率材料を熱拡散して形成される拡散導波路と、該拡散導波路の上方に配置され、該拡散導波路を伝搬する光波の一部を受光する受光素子とを備えた光導波路デバイスにおいて、該受光素子は、該誘電体基板上に形成された台座上に配置し固定され、該台座の少なくとも一部は、該拡散導波路を形成する高屈折率材料と同じ高屈折率材料を熱拡散して形成すると共に、該拡散導波路が延在する方向とほぼ同じ方向に延在する線の集合体で構成されていることを特徴とする。
【0023】
(3) 上記(1)に記載の光導波路デバイスにおいて、前記台座の一部は、該拡散導波路が延在する方向とほぼ同じ方向に延在する線の集合体で構成されていることを特徴とする。
【0024】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光導波路デバイスにおいて、該高屈折率材料で形成した台座上、又は該受光素子の該台座への対向面のいずれか、もしくは両方に該拡散導波路と該受光素子の下面とのギャップを調整するための膜体が配置されていることを特徴とする。
【0025】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光導波路デバイスにおいて、該受光素子は、受光部と該受光部を保持する透明基板を備え、該受光素子が複数本の拡散導波路に跨って配置され、該透明基板の該拡散導波路に対向する面には、該受光部が受光すべき光波を伝搬する拡散導波路には近接し、該受光部が受光しない光波を伝搬する拡散導波路からは離れるよう構成された凹凸が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明のように、受光素子を配置する台座は、拡散導波路の線幅とほぼ同じ幅の線の集合体、又は拡散導波路が延在する方向とほぼ同じ方向に延在する線の集合体、あるいは両方の技術的特徴を組み合わせた集合体で構成することにより、拡散導波路と台座の高さをほぼ同じになるように高精度に調整できる。このような台座を使用することで、拡散導波路に対して受光素子をより精度良く配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来の光導波路デバイスの概略を示す平面図である。
図2図1の矢印A−A'における断面図である。
図3】マッハツェンダー型光導波路を含む拡散導波路の一例を示す平面図である、
図4図3における受光素子4(点線枠)を含む領域を拡大した図である。
図5図4の矢印B−B'における断面図である。
図6】本発明の光導波路デバイスの、光導波路と台座の概略を示す概略図である。
図7図6の矢印C−C'における断面図であり、本発明の第1の実施例である。
図8図6の矢印C−C'における断面図であり、本発明の第2の実施例である。
図9図6の矢印C−C'における断面図であり、本発明の第3の実施例である。
図10】本発明に係る光導波路デバイスにおける、拡散導波路と受光素子とのギャップ等を説明する図である。
図11】本発明の光導波路デバイスにおいて、光導波路構造及び受光素子の配置位置の他の実施例を示す平面図である。
図12】受光素子を支持する台座の他の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の光導波路デバイスについて詳細に説明する。本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、台座の高さが、台座の形状や配置方向に応じてバラツキが生じることに着目し、本発明に到達したものである。具体的には、台座となる高屈折率材料を誘電体基板上に線状に配置した際に、線幅が異なると、熱拡散した後の台座の高さが異なっていた。また、ニオブ酸リチウムなどの電気光学効果を有する誘電体基板は、結晶軸に異方性があるため、線状に配置した高屈折率材料の配置方向によって、熱拡散した際の台座の高さが異なっていた。これらの現象に着目し、台座を線状として、その幅や方向を調整することで、高精度に台座の高さを調整することが可能となった。
【0029】
図6及び7に本発明に係る光導波路デバイスの第一の実施例を示す。図6は本発明に係る光導波路デバイスの平面図であり、図7図6の矢印C−C’における断面図である。図6は、従来例の図4に代わる図面であり、図7は、従来例の図5に代わる図となる。また、図6には、図3のネスト型光導波路におけるメイン・マッハツェンダー型光導波路の合波部から分岐した出力導波路20と放射光用導波路21,22が描かれている。当然、光導波路の形状は、ネスト型光導波路に限らず、単一のマッハツェンダー型光導波路であっても良いし、分岐部や合波部を複雑に組み合わせたものであっても良い。
【0030】
本発明では、誘電体基板1と、該誘電体基板上に高屈折率材料を熱拡散して形成される拡散導波路20〜22と、該拡散導波路の上方に配置され、該拡散導波路を伝搬する光波の一部を受光する受光素子4とを備えた光導波路デバイスにおいて、該受光素子4は、該誘電体基板上に形成された台座3上に配置し固定され、該台座の少なくとも一部は、該拡散導波路を形成する高屈折率材料と同じ高屈折率材料を熱拡散して形成すると共に、該拡散導波路の線幅とほぼ同じ幅の線の集合体で構成されていることを特徴とする。
【0031】
また、本発明では、誘電体基板1と、該誘電体基板上に高屈折率材料を熱拡散して形成される拡散導波路20〜22と、該拡散導波路の上方に配置され、該拡散導波路を伝搬する光波の一部を受光する受光素子4とを備えた光導波路デバイスにおいて、該受光素子4は、該誘電体基板上に形成された台座3上に配置し固定され、該台座の少なくとも一部は、該拡散導波路を形成する高屈折率材料と同じ高屈折率材料を熱拡散して形成すると共に、該拡散導波路が延在する方向とほぼ同じ方向に延在する線の集合体で構成されていることを特徴とする。
【0032】
光導波路デバイスに利用される誘電体基板としては、ニオブ酸リチウムやニオブ酸タンタルなどが好適に利用可能である。また、拡散導波路を形成する高屈折率材料としては、Tiが好適に利用できる。
【0033】
本発明では、拡散導波路を形成する際に、受光素子を支持する台座の全て又は一部を形成することが好ましい。この形成方法としては、誘電体基板1の表面にフォトマスクパターンを形成し、Tiをスパッタして、図3の光導波路2や図6に示す光導波路20〜22及び台座3に対応するパターンを形成する。次に、フォトマスクパターンを除去した後に、約1000℃の高温でTiを熱拡散させ、拡散導波路2,20〜22や台座3を形成する。
【0034】
台座3の形状(線幅)及びその配置方向は、拡散導波路の線幅とその延在方向とほぼ同じに設定されるのが好ましい。線幅か配置方向のいずれか一方を拡散導波路とほぼ同じに合わせるだけでも効果が期待できるが、より精度を高く調整するには、両者を拡散導波路の条件とほぼ同じに合わせることがより好ましい。
【0035】
本発明における「拡散導波路の線幅とほぼ同じ幅」とは、当該線幅と同じ幅を備えることを意味するだけでなく、本発明の課題を解決できる範囲においては、当該線幅から外れている場合も許容できること意味している。具体的には、当該線幅の約3倍程度の範囲内であれば、受光素子を精度よく配置できることを確認している。
【0036】
本発明における「拡散導波路が延在する方向とほぼ同じ方向」とは、拡散導波路の延在方向と平行な方向のみを意味するだけでなく、本発明の課題を解決できる範囲において、当該延在方向に対して若干斜め方向になっても良いことを意味している。
【0037】
図6に示すように、受光素子4の下側に複数の拡散導波路が配置される場合には、全ての拡散導波路が、同じ線幅で、同じ延在方向に配置されているとは限らない。このような場合には、着目する特定の拡散導波路と同じ線幅及び/または同じ延在方向に配置することが好ましい。特定の拡散導波路とは、受光すべき光波を伝搬している拡散導波路のみでなく、受光しない光波を伝搬する拡散導波路であっても良い。図6では、台座3は、出力導波路20に着目して、線幅及び配置方向が設定されている。
【0038】
次に、受光素子4は受光部6とそれを支持する透明基板(高屈折率基板)7から構成される。なお、受光部6は一つに限られない。受光する光波を伝搬する拡散導波路毎に対応して複数の受光部を配置することも可能である。図6では、2つの放射光を同時に同じ受光部6で受光するよう構成するため、一つの受光部6を採用している。
【0039】
また、図7に示すように、受光しない光波を伝搬する拡散導波路20に対しては、透明基板7の下面に凹部10が形成されている。後述するように、受光素子が複数本の拡散導波路に跨って配置される場合には、透明基板の拡散導波路に対向する面には凹凸形状が形成される。例えば、当該対向する面は、受光部が受光すべき光波を伝搬する拡散導波路には近接し、受光部が受光しない光波を伝搬する拡散導波路からは離れるように、凹凸が形成される。これにより、特定の拡散導波路のみからの受光を効率良く行うことができる。
【0040】
また、拡散導波路2の表面と受光素子4とのギャップを調整する場合には、図2の従来例に示すように、高さ調整のための膜体8を、Ti拡散の台座3の上に形成することも可能である。
【0041】
この場合、膜体8にはSiOを用いることが可能である。SiOはバッファ層として電極の下に付ける膜体として一般的に使われており、それと同じ装置で形成できるため好都合である。膜体の材料は何でもよいが、拡散導波路の部分を膜体が覆わないようにパターニングするか、もしくは、パターニングを行なわない場合低屈折率の膜体とし、光導波路を伝播する光に影響を与えないようにすることが好ましい。
【0042】
受光素子4を基板1に接着する際には、受光素子4と基板1との間に接着材5を介在させ、特に、台座3を構成する複数の線の隙間から不要な接着材を排出することで、受光素子4と台座3との間には接着材が存在せず、拡散導波路2に対して受光素子4をより精度よく配置することが可能となる。
【0043】
台座部分の総面積は、受光素子の下面の面積の10%以上、60%以下にすることで、十分な受光感度を確保しつつ、隙間部分に流れ込んだ接着材により、受光素子と誘電体基板との間で必要な接着面積を確保でき、十分な機械強度で接着することができる。
【0044】
拡散導波路と受光素子との間に接着材を介在させる方法としては、拡散導波路2上に接着材を塗布し、受光素子4を配置する方法だけでなく、台座上に受光素子を配置し、受光素子と誘電体基板との隙間が有する毛細管現象を利用して、両者の隙間に接着材を導入する方法もある。
【0045】
次に、図8を用いて、拡散導波路と受光素子とのギャップを調整する他の実施例について説明する。図8は、図6の矢印C−C’における断面図であり、本発明の第2の実施例を示す図である。
【0046】
第2の実施例では、受光素子4の台座3への対向面に、低屈折率材料の膜体9として、窒化物膜を形成している。図8では、膜体にパターニングをしていないため、使用する膜体は低屈折率の膜体である必要がある。台座3及び膜体9が協働して、拡散導波路2の表面と受光素子4とのギャップを形成している。なお、符号5’で示す空間には、図7と同様に接着材を配置することが可能である。
【0047】
次に、図9を用いて、拡散導波路と受光素子とのギャップを調整する他の実施例について説明する。図9は、図6の矢印C−C’における断面図であり、本発明の第3の実施例を示す図である。
【0048】
第3の実施例では、受光素子が高屈折率材料の透明基板7と受光部61,62から構成され、該透明基板7には、拡散導波路20〜22に対向する部分には凹部10,11が形成されている。具体的には、拡散導波路21,22を伝搬する光波(放射光)の一部は、当該拡散導波路の近傍に配置された凹部11から透明基板7内に入射し、受光部61,62に各々到達する。また、拡散導波路20を伝搬する光波は、凹部10により、透明基板7から十分離れているため、当該拡散導波路を伝搬する光波が透明基板7内に入射することは無い。なお、空間5’には、接着材を配置することが可能である。
【0049】
図10は、本発明に係る光導波路デバイスにおける、拡散導波路と受光素子とのギャップ等を説明する図である。符号dは、拡散導波路2の表面と受光素子4(透明基板)の表面との距離を示す。通常、距離dを適正な間隔に維持することが必要であるが、受光素子4の表面層71が低屈折率膜で、高屈折率膜が符号72の層に配置される場合には、拡散導波路21,22と層72との距離hが光波の吸い上げ状態を決定する重要な要素となる。モニタ用途で数%の光を受光したい場合には、受光部の拡散導波路に沿った長さが1000μm以下とすると、距離hは2000〜2500Åの範囲である。この範囲より大きい場合には、受光パワーが小さくなり、適正なモニタが困難となる。また、後述する図11(a)のように出力導波路を伝播する光を直接モニタする際には、上記距離hは上記範囲より小さくなると、出力導波路を伝播する光の多くが受光部側に吸い上げられ、光損失を増大させる原因ともなる。
【0050】
また、拡散導波路2と台座3との距離sは、拡散導波路を伝搬する光波が台座3の方に引き寄せられない程度に、拡散導波路2と台座3とを離間する必要があるため、50μm以上の距離を確保することが好ましい。
【0051】
以上の実施例では、拡散導波路の形状及び受光素子の配置位置については、図3に示すネスト型光導波路のメイン・マッハツェンダー型光導波路の合波部を中心に説明したが、例えば、図11(a)に示すように、拡散導波路2が単一のマッハツェンダー型導波路から構成されても良い。また、受光素子は、図11(a)に示すように、マッハツェンダー型導波路からの出力光を受光するような構成でも、図11(b)のようにマッハツェンダー型導波路の合波部から放出される2つの放射光のうち一方のみを受光するような構成としても良い。
【0052】
また台座3を形成する線状のパターンは、図12(a)に示すように、連続的な線の集合体として形成しても良いし、図12(b)に示すように不連続な線の集合体として形成しても良い。図12(a)の構成によれば凸部を形成する際のパターンが簡単な構成となり、容易に本発明の光導波路デバイスを製造することができるようになる。また図12(b)の構成では、線間の隙間が増加することで、隙間に入り込む接着材の量が増加し、受光素子と基板との接着をより強固なものにすることができるようになる。また、当該隙間により接着剤が図面の上下方向にも広がり易くなり、誘電体基板と受光素子との間に接着剤を効率良く充填することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係る光導波路デバイスによれば、誘電体基板に形成された拡散導波路に対して、受光素子を精度よく配置することが可能な光導波路デバイスを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 誘電体基板
2 拡散導波路
3 台座
4 受光素子
5 接着材
6 受光部
7 透明基板(高屈折率材料)
8,9 膜体
10,11 凹部
20 出力導波路
21,22 放射光用導波路
71 低屈折率膜
72 高屈折率膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12