特許第6237180号(P6237180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237180
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】光導波路デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/125 20060101AFI20171120BHJP
   G02B 6/134 20060101ALI20171120BHJP
   G02F 1/035 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G02B6/125 301
   G02B6/134 301
   G02F1/035
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-252992(P2013-252992)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-111193(P2015-111193A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】竹村 基弘
(72)【発明者】
【氏名】藤野 哲也
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−023123(JP,A)
【文献】 特開2000−241645(JP,A)
【文献】 国際公開第94/010592(WO,A1)
【文献】 特開平07−120631(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0006246(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 − 6/138
G02F 1/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦電効果を有する基板上に、金属の導体パターンを形成し、該基板を加熱し該金属を熱拡散処理することにより、光導波路パターンを形成する光導波路デバイスの製造方法において、
該光導波路パターンが、少なくとも一つのマッハツェンダー型導波路と、該マッハツェンダー型導波路を構成する分岐部と2つの分岐導波路及び合波部で囲まれた領域内に形成されるスラブ型導波路とを備え、
該マッハツェンダー型導波路と該スラブ型導波路との距離が、該スラブ導波路の全周に渡ってほぼ等距離になるように設定されていることを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路デバイスの製造方法において、該マッハツェンダー型導波路と該スラブ型導波路との距離は、10μm以上であることを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
【請求項3】
焦電効果を有する基板上に、金属の導体パターンを形成し、該基板を加熱し該金属を熱拡散処理することにより、光導波路パターンを形成する光導波路デバイスの製造方法において、
該光導波路パターンが、少なくとも一つのマッハツェンダー型導波路と、該マッハツェンダー型導波路を構成する分岐部と2つの分岐導波路及び合波部で囲まれた領域内に形成されるスラブ型導波路と、該スラブ型導波路に近接して配置され、該スラブ型導波路との間で放電を誘発する放電誘発用パターンとを備えることを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の光導波路デバイスの製造方法において、該スラブ導波路の面積が1mm以上であることを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の光導波路デバイスの製造方法において、該放電誘発用パターンと該スラブ型導波路とが最も近接した距離は、該マッハツェンダー型導波路と該スラブ導波路とが最も近接した距離よりも短いことを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路デバイスの製造方法に関するものであり、特に、焦電効果を有する基板上に、金属の導体パターンを形成し、該基板を加熱し該金属を熱拡散処理することにより、光導波路パターンを形成する光導波路デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光計測分野において、光変調器などの光導波路デバイスが多用されている。光導波路デバイスの中には、ニオブ酸リチウムなどの焦電効果を有する基板上に、Tiなどの金属を熱拡散して光導波路を形成するものがある。
【0003】
特許文献1又は2に示すように、このような光導波路を形成する際には、熱拡散処理時に基板上に焦電現象が発生し、焦電した電荷が放電し、光導波路に損傷を与えることが指摘されている。
【0004】
他方、光導波路デバイスでは、伝送特性などの光学特性の向上のため、光導波路から漏れた漏れ光を処理することが重要な課題となっている。特に、複数のマッハツェンダー型導波路を並列又は入れ子状に配置した光導波路デバイスでは、多くの漏れ光が発生し易く、光学特性に大きな影響を与えている。
【0005】
図1に示すように、このような漏れ光が光導波路と結合しないようにするため、漏れ光をガイドするスラブ型導波路(SG)を、信号光などの光波を伝搬する光導波路(WG)とは別に設けることが行われている。
【0006】
しかしながら、このようなスラブ型導波路を設けることにより、熱拡散処理時の焦電効果で生ずる電荷量も増大し、例えば、点線Aの部分などで、スラブ型導波路とマッハツェンダー型導波路との間で放電が生ずる危険性が増大している。
【0007】
しかも、マッハツェンダー型導波路(WG)の内部領域にスラブ型導波路(SG)を配置する場合には、スラブ型導波路が孤立した状態となり、焦電効果で生じた電荷を逃がすことがより難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−140340号公報
【特許文献2】特開2010−8887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、マッハツェンダー型導波路の内部領域にスラブ型導波路を配置する場合でも、光導波路を形成する際の熱拡散処理において、焦電効果による放電で光導波路が損傷することを抑制することが可能な光導波路デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の光学素子モジュールは、以下のような技術的特徴を有する。
(1) 焦電効果を有する基板上に、金属の導体パターンを形成し、該基板を加熱し該金属を熱拡散処理することにより、光導波路パターンを形成する光導波路デバイスの製造方法において、該光導波路パターンが、少なくとも一つのマッハツェンダー型導波路と、該マッハツェンダー型導波路を構成する分岐部と2つの分岐導波路及び合波部で囲まれた領域内に形成されるスラブ型導波路とを備え、該マッハツェンダー型導波路と該スラブ型導波路との距離が、該スラブ導波路の全周に渡ってほぼ等距離になるように設定されていることを特徴とする。
【0011】
(2) 上記(1)に記載の光導波路デバイスの製造方法において、該マッハツェンダー型導波路と該スラブ型導波路との距離は、10μm以上であることを特徴とする。
【0012】
(3) 焦電効果を有する基板上に、金属の導体パターンを形成し、該基板を加熱し該金属を熱拡散処理することにより、光導波路パターンを形成する光導波路デバイスの製造方法において、該光導波路パターンが、少なくとも一つのマッハツェンダー型導波路と、該マッハツェンダー型導波路を構成する分岐部と2つの分岐導波路及び合波部で囲まれた領域内に形成されるスラブ型導波路と、該スラブ型導波路に近接して配置され、該スラブ型導波路との間で放電を誘発する放電誘発用パターンとを備えることを特徴とする。
【0013】
(4) 上記(3)に記載の光導波路デバイスの製造方法において、該スラブ導波路の面積が1mm以上であることを特徴とする。
【0014】
(5) 上記(3)又は(4)に記載の光導波路デバイスの製造方法において、該放電誘発用パターンと該スラブ型導波路とが最も近接した距離は、該マッハツェンダー型導波路と該スラブ導波路とが最も近接した距離よりも短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、焦電効果を有する基板上に、金属の導体パターンを形成し、該基板を加熱し該金属を熱拡散処理することにより、光導波路パターンを形成する光導波路デバイスの製造方法において、該光導波路パターンが、少なくとも一つのマッハツェンダー型導波路と、該マッハツェンダー型導波路を構成する分岐部と2つの分岐導波路及び合波部で囲まれた領域内に形成されるスラブ型導波路とを備え、該マッハツェンダー型導波路と該スラブ型導波路との距離が、該スラブ導波路の全周に渡ってほぼ等距離になるように設定されているため、光導波路を形成する際の熱拡散処理時に、マッハツェンダー型導波路とスラブ型導波路との間で放電を生じることを効果的に抑制することが可能となる。
【0016】
さらに、本発明により、焦電効果を有する基板上に、金属の導体パターンを形成し、該基板を加熱し該金属を熱拡散処理することにより、光導波路パターンを形成する光導波路デバイスの製造方法において、該光導波路パターンが、少なくとも一つのマッハツェンダー型導波路と、該マッハツェンダー型導波路を構成する分岐部と2つの分岐導波路及び合波部で囲まれた領域内に形成されるスラブ型導波路と、該スラブ型導波路に近接して配置される放電誘発用パターンとを備えるため、光導波路を形成する際の熱拡散処理時に、スラブ型導波路と放電誘発用パターンとの間で放電を発生し易くすることで、マッハツェンダー型導波路とスラブ型導波路との間で放電を生じることを効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来の光導波路デバイスに光導波路パターンの概略を示す図である。
図2】本発明の光導波路デバイスに係る第1の実施例を示す図である。
図3】本発明の光導波路デバイスに係る第2の実施例を示す図である。
図4】本発明の光導波路デバイスに係る第3の実施例を示す図である。
図5】本発明の光導波路デバイスに係る第4の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適例を用いて詳細に説明する。
本発明の特徴は、光導波路を形成する際の熱拡散処理時に、マッハツェンダー型導波路と、該マッハツェンダー型導波路を構成する分岐部と2つの分岐導波路及び合波部で囲まれた領域(内部領域)内に形成されるスラブ型導波路との間で、放電が発生するのを抑制するため、次の2つの方法の少なくともいずれか採用している。
(1)マッハツェンダー型導波路とスラブ型導波路との間の距離が局所的に短くなっている部分を排除すること。
(2)スラブ型導波路に蓄積した電荷を放出するため、放電誘発用のパターンを追加すること。
【0019】
図2及び図3は、本発明の光導波路デバイスの製造方法に係る第1及び第2の実施例を説明する図である。この実施例では、焦電効果を有する基板上に、金属の導体パターンを形成し、該基板を加熱し該金属を熱拡散処理することにより、光導波路パターンを形成する光導波路デバイスの製造方法において、該光導波路パターンが、少なくとも一つのマッハツェンダー型導波路(WG)と、該マッハツェンダー型導波路を構成する分岐部と2つの分岐導波路及び合波部で囲まれた領域内に形成されるスラブ型導波路(SG)とを備え、該マッハツェンダー型導波路と該スラブ型導波路との距離(G)が、該スラブ導波路の全周に渡ってほぼ等距離になるように設定されていることを特徴とする。
【0020】
本発明における「ほぼ等距離」の意味は、本発明の効果である焦電効果による放電が発生しない範囲であれば、特に制限されるものではないが、例えば、マッハツェンダー型導波路とスラブ型導波路との距離(G)の変動幅が、45μm以下となる場合には、局所的に発生する放電が効果的に抑制される。なお、当該変動幅は、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは15μm以下とすることで、より高い効果が期待できる。
【0021】
焦電効果を有する基板としては、例えばニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)等の単結晶材料やこれらの固溶体結晶材料が該当する。
【0022】
光導波路パターンを形成する金属としては、Tiなどが好適に利用可能である。
【0023】
図2の実施例では、マッハツェンダー型導波路(WG)とスラブ型導波路(SG)との距離(G)を、スラブ導波路の全周に渡ってほぼ等距離になるように設定しており、図1に示すように、局所的に両者が近接する部分が形成されないようにしている。特に、当該距離(G)は、10μm以上を確保することで、基板材料や熱拡散処理条件(処理温度、処理時間)等にも依存するが、両者間の放電をほぼ完全に抑制することが可能となる。
【0024】
図3の実施例では、図2の実施例をさらに改善したものであり、矢印Bで示す位置のように、スラブ型導波路の角部を丸く形成することで、スラブ型導波路からマッハツェンダー型導波路に向かって放電が発生するのを、一層抑制することが可能となる。
【0025】
次に、図4及び図5を用いて、本発明の光導波路デバイスの製造方法に係る第3及び第4の実施例について説明する。この実施例では、焦電効果を有する基板上に、金属の導体パターンを形成し、該基板を加熱し該金属を熱拡散処理することにより、光導波路パターンを形成する光導波路デバイスの製造方法において、該光導波路パターンが、少なくとも一つのマッハツェンダー型導波路(WG)と、該マッハツェンダー型導波路を構成する分岐部と2つの分岐導波路及び合波部で囲まれた領域内に形成されるスラブ型導波路(SG)と、該スラブ型導波路に近接して配置される放電誘発用パターン(DP)とを備えることを特徴とする。
【0026】
本発明における「放電誘発用パターン」とは、図4に示すように、スラブ型導波路(SG)とは別に設けるだけでなく、図5に示すように、放電誘発用パターン(DP)をスラブ型導波路の一部(SG1)とを兼用させることも可能である。図4では点線Cで示した部分で、図5では点線Dで示した部分で放電が発生し易くなっている。
【0027】
また、図5の放電誘発用パターンがスラブ型導波路全体(SG1,SG2)の内部の方に配置されているように、放電誘発用パターンは、マッハツェンダー型導波路から離して配置することが好ましい。これは、仮に放電が発生した場合にでも、マッハツェンダー型導波路への損傷を抑制するためである。
【0028】
スラブ導波路(SG,SG1又はSG2)の面積が1mm以上である場合には、特に、蓄積された電荷量が多く、放電が発生し易くなるため、本発明のような放電誘発用パターンを設けることが効果的である。
【0029】
また、放電誘発用パターンとスラブ型導波路とが最も近接した距離は、マッハツェンダー型導波路とスラブ導波路とが最も近接した距離よりも短いことが好ましい。これにより、マッハツェンダー型導波路とスラブ型導波路との間に放電が発生する前に、放電誘発用パターンとスラブ型導波路との間で放電を発生させることができ、マッハツェンダー型導波路への損傷を抑制することが可能となる。
【0030】
図5に示すように、図2又は図3で説明した、マッハツェンダー型導波路と該スラブ型導波路との距離が、スラブ導波路の全周に渡ってほぼ等距離になるように設定されている構成と、図4で説明した、スラブ型導波路に近接して配置される放電誘発用パターンとを備える構成とを、共に用いることも可能である。
【0031】
本発明は、図2乃至図5に示すように、一つのマッハツェンダー型導波路を用いて説明したが、これに限られるものでは無く、複数のマッハツェンダー型導波路を配置したものや、入れ子型にマッハツェンダー型導波路を組み込んだものなど、種々の形態の光導波路デバイスに適用可能であることは言うまでも無い。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように、本発明に係る光導波路デバイスの製造方法によれば、マッハツェンダー型導波路の内部領域にスラブ型導波路を配置する場合でも、光導波路を形成する際の熱拡散処理において、焦電効果による放電で光導波路が損傷することを抑制することが可能な光導波路デバイスの製造方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
WG 光導波路(信号光等の光波を伝搬する導波路,マッハツェンダー型導波路)
SG 光導波路(漏れ光などを案内する導波路,スラブ型導波路)
DP 放電誘発用パターン
図1
図2
図3
図4
図5