(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、反応管の底部領域の温度が第1の温度に設定された後、第1の温度よりも低い第2の温度に降温するための制御信号を出力すると共に、反応管の底部領域の温度が第1の温度に設定された後、第2の温度に降温する前に処理ガスの供給を開始するための制御信号を出力することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の縦型熱処理装置。
前記基板の熱処理時において、反応管内の雰囲気は処理ガスの熱分解温度以上の温度に設定され、前記ガスノズル内は温調流体により処理ガスの熱分解温度以下に維持されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の縦型熱処理装置。
【背景技術】
【0002】
多数枚の半導体ウエハ(以下「ウエハ」と言う)などの基板に対して一括して成膜処理などの熱処理を行う装置として、これらウエハを棚状に積載したウエハボート(基板保持具)を縦型の反応管内に下方側から気密に搬入して熱処理を行う縦型熱処理装置が知られている。反応管内には、熱処理時の雰囲気を形成するための処理ガスを供給するガスノズルがウエハボートの長さ方向に沿って配置されている。また、反応管の外側には、各ウエハを加熱するための加熱機構をなすヒータが設けられており、このヒータは、上下方向に複数箇所例えば5箇所のゾーンに区画されると共に、各々独立して温度調整ができるように構成されている。
【0003】
このような装置では、ウエハの熱処理が終了すると、ヒータへの通電(反応管内部の加熱)を継続したまま、反応管の下方側にてウエハボートにおける処理済みのウエハを未処理のウエハに入れ替えて、次いでウエハボートを上昇させて当該未処理のウエハの熱処理を行っている。ここで、ウエハボートを反応管内に搬入した時、反応管内では、上方側の領域よりも下方側の領域の温度が下がりやすくなってしまう。そこで、ウエハボートを反応管内に搬入する時は、各ウエハ間にて加熱温度を揃えるために、既述の5箇所のゾーンのうち最下段のゾーン(あるいは当該最下段のゾーンに加えて一段上のゾーン)を受け持つヒータについては他のヒータよりも通電量を増やしている。
【0004】
既述の成膜処理の具体的な一例としては、互いに反応する処理ガスを交互に供給することによってこれら処理ガスの反応生成物を積層して薄膜を成膜する手法であるALD(Atomic Layer Deposition)が挙げられる。このような薄膜として酸化ハフニウム(Hf−O)などの高誘電率膜を成膜する場合には、処理ガスとして原料ガスである例えばTDMAH(テトラキスジメチルアミノハフニウム)ガスと反応ガスであるオゾン(O
3)ガスとが用いられる。また、酸化ハフニウム膜以外の高誘電率膜としては、酸化ジルコニウム(Zr−O)膜、酸化チタン(Ti−O)膜あるいは酸化アルミニウム(Al−O)膜などが知られており、これら高誘電率膜は、金属含有炭化物(有機物)系ガスを原料ガスとして使用して成膜される。これら原料ガス及び反応ガスは、夫々別のガスノズルを用いて供給される。また、高誘電率膜を成膜する時には、当該高誘電率膜に残存する不純物レベルをなるべく低減するために、ウエハの加熱温度は原料ガスの熱分解温度近傍に設定される。
【0005】
ところで、このような高誘電率膜を成膜するときに既述のゾーン制御を行うと、原料ガスを供給するガスノズル内部では、この原料ガスの熱分解温度を超えてしまうおそれがある。即ち、反応管内におけるウエハの加熱温度が原料ガスの熱分解温度近傍に設定されているのに対して、最下段のゾーンの温度を他のゾーンの温度よりも高く設定すると、当該最下段のゾーンに位置するガスノズル内では原料ガスの熱分解温度を超えた温度に到達しやすくなる。そして、ガスノズル内で原料ガスの熱分解温度を超えると、当該ガスノズル内に付着物が付着しやすくなるので、この付着物の剥離に伴って発生するパーティクルやノズル詰まりを抑制するために、ガスノズルを頻度に交換せざるを得なくなってしまう。このような付着物の付着を抑制する手法として、原料ガスを供給した後、窒素(N
2)ガスなどをガスノズル内にフローさせる方法も挙げられるが、それ程大きな改善は見られない。
【0006】
特許文献1には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて薄膜の成膜を行うにあたって、インジェクターの表面にて四塩化スズと水蒸気との反応を抑えるために、窒素ガスを当該インジェクターの表面から吐出する技術について記載されている。特許文献2及び特許文献3には、枚葉式装置において、インジェクタヘッドやインジェクターを冷却する技術について記載されている。しかしながら、これら特許文献1〜3では、縦型熱処理装置における処理ガスの温度分布について検討されていない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る縦型熱処理装置の実施の形態の一例について、
図1〜
図6を参照して説明する。始めにこの装置の概略について簡単に説明すると、この縦型熱処理装置は、互いに反応する原料ガスと反応ガス(酸化ガス)とをウエハWに対して交互に供給して反応生成物を積層するALD法により薄膜を成膜する成膜装置となっている。そして、本発明は、原料ガスを供給するためのガスノズルの構成や当該構成を用いた成膜方法に特徴を有するが、始めにこの成膜装置の詳細について説明する。
【0015】
成膜装置には、
図1に示すように、多数枚例えば150枚のウエハWに対して一括して成膜処理を行うための反応管12が配置された熱処理領域1と、この熱処理領域1の下方側に形成されたウエハWの搬入出領域2と、が設けられている。また、成膜装置には、ウエハWを棚状に積載するための基板保持具であるウエハボート11が設けられており、このウエハボート11は、これら領域1、2の間で昇降自在となっている。
図1中3はボートエレベータ、4はウエハボート11に対してウエハWの移載を行うアームである。ボートエレベータ3によるウエハボート11の昇降速度は、例えば400mm/min〜600mm/minである。尚、各領域1、2の間には、ウエハボート11を反応管12から取り出した時、反応管12の下面側開口部を塞ぐための蓋体が水平方向にスライド自在に設けられているが、ここでは図示を省略している。
【0016】
図2に示すように、熱処理領域1には、下面側が開口する概略円筒型の加熱炉本体14が設けられており、この加熱炉本体14の内部には、ウエハボート11を気密に収納して成膜処理を行うための反応管12が配置されている。加熱炉本体14の内壁面には、周方向に亘って加熱機構であるヒータ13が配置されている。このヒータ13は、ウエハボート11におけるウエハWの収納領域を跨ぐように設けられており、上下方向に複数箇所例えば5箇所に互いに離間するように配置されている。
【0017】
これら5つのヒータ(加熱部)13について、
図2に示すように、上側から下側に向かって順番に「13a」、「13b」、「13c」、「13d」、「13e」の符号を付すと、各々のヒータ13a〜13eは、電源15に個別に接続されている。そして、各ヒータ13a〜13eは、各々のヒータ13a〜13eが受け持つ反応管12内の各ゾーンにおける加熱温度を個別に調整できるように構成されている。本発明では、後で詳述するように、ウエハWに対して成膜処理を開始する時、下側2段のヒータ13d、13eの出力を他のヒータ13a〜13cの出力よりも高くしている。尚、この例では上下方向に5段のヒータ13a〜13eを設けたが、4段のヒータ13a〜13dを設けても良いし、3段のヒータ13a〜13cを設けても良い。即ち、本発明では、成膜処理を開始する時、上下に複数に区画した複数のヒータ13のうち下側のヒータ13の出力を他のヒータ13の出力よりも高くしている。
【0018】
図2及び
図3に示すように、反応管12は、石英により構成されると共に、この例では外管12aと当該外管12aの内部に収納された内管12bとの二重管構造となっている。これら外管12a及び内管12bの各々は、下面側が開口するように形成されている。
図3及び
図4にも示すように、平面で見た時における内管12bの一端側(手前側)の部位は、当該内管12bの長さ方向に亘って外管12aに向かって膨らむように形成されており、後述の各ガスノズル(ガスインジェクタ)51a〜51cや流路形成部材31を収納するための領域12cをなしている。内管12bにおいてこの領域12cに対向する部位は、
図2にも示すように、当該内管12bの長さ方向に亘って開口しており、排気口であるスリット17をなしている。尚、
図2及び
図3では、図示の便宜上、既述の領域12cを平面図として示し、当該領域12cの内部構造については
図4に示している。
【0019】
これら外管12a及び内管12bは、上下面が開口する概略円筒形状のフランジ部18によって下方側から各々気密に支持されている。即ち、フランジ部18の上端面により外管12aの下端部が気密に支持され、フランジ部18の内壁面から内側に向かって周方向に亘って水平に突出する突出部18aにより内管12bの下端部が気密に支持されている。外管12aと内管12bとの間には、
図2に示すように、上下方向に伸びるロッド19がフランジ部18に取り付けられており、このロッド19には、既述の各ヒータ13a〜13eに対応する各高さ位置に夫々熱電対からなる温度センサTCa〜TCeが測定部として設けられている。
【0020】
これら温度センサTCa〜TCeは、ロッド19の内部を引き回された導電路を介して、各ヒータ13a〜13eが受け持つゾーンにおける測定温度を後述の制御部100に伝達するように構成されている。
図2中16は、フランジ部18及び既述の加熱炉本体14を支持するためのベースプレートである。尚、ロッド19は、
図3に示すように、例えば既述の領域12cに近接配置されているが、
図2では各ヒータ13a〜13eと温度センサTCa〜TCeとの位置関係を示すために側方側に離間させて描画している。
【0021】
図2に示すように、フランジ部18の側壁における既述のスリット17に対向する部位には、内管12bと外管12aとの間の領域に連通するように排気口21が形成されている。そして、この排気口21から伸びる排気路22には、
図2に示すように、バタフライバルブなどの圧力調整部23を介して真空ポンプ24が接続されている。フランジ部18の下方側には、当該フランジ部18の下端側外周部であるフランジ面に周方向に亘って気密に接触するように概略円板状に形成された蓋体25が設けられており、この蓋体25は、既述のボートエレベータ3によって、ウエハボート11と共に昇降自在に構成されている。
図2中26は断熱体、27はモータなどの回転機構である。また、
図2中28は回転軸であり、21aは排気ポートである。
【0022】
続いて、反応管12内に処理ガスを供給するための既述のガスノズル51について詳述する。この例では、
図4に示すように、ガスノズル51は3本配置されており、各々石英により構成されている。各ガスノズル51は、ウエハボート11の長さ方向に沿って各々配置されると共に、反応管12の周方向に沿って互いに離間するように並んでいる。ここで、これら3本のガスノズル51について、
図4に示すように、この例では反応管12を上方側から見て時計周り(右周り)に原料ガスノズル51a、オゾンガスノズル51b及びパージガスノズル51cが配置されているものとする。
【0023】
これらガスノズル(ガス供給部)51a〜51cは、夫々原料ガス(TDMAHガス)の貯留源55a、反応ガス(オゾン(O
3)ガス)の貯留源55b及びパージガス(窒素(N
2)ガス)の貯留源55cに接続されている。各ガスノズル51a〜51cにおけるスリット17側の側面には、ウエハボート11の長さ方向に沿って複数箇所にガス吐出口52が形成されている。
図3中53はバルブ、54は流量調整部であり、窒素ガスについてはパージガスノズル51cだけでなく他のガスノズル51a、51bにも供給できるように構成されている。尚、貯留源55aは、高誘電率膜の原料である液体が貯留されると共に、この液体の加熱によって気化した金属含有有機ガスをキャリアガスである窒素ガスなどと共に供給するように構成されているが、ここでは図示を省略している。
【0024】
そして、原料ガスノズル51aの周囲には、当該原料ガスノズル51aの温度の調整を行うための流路形成部材31が設けられている。流路形成部材31は、石英により構成されており、原料ガスノズル51aを概略囲むように当該原料ガスノズル51aに溶接されている。即ち、
図5に示すように、流路形成部材31は、原料ガスノズル51aの長さ方向に沿って伸びる概略箱型の流路本体32と、この流路本体32の上端付近における側面及び下端付近における側面から夫々伸び出す供給路33及び排出路34とを備えている。
【0025】
流路本体32は、
図3及び
図6に示すように、内部領域が中空の温調流体通流空間をなしており、また原料ガスノズル51aの大部分を当該内部領域に埋め込んだ状態でこの原料ガスノズル51aに気密に溶接されている。具体的には、流路本体32におけるウエハボート11側の側面には、当該流路本体32における上端位置よりも僅かに下位置から、流路本体32の下端位置までに亘って、原料ガスノズル51aを平面で見た時の外形寸法よりも小さい開口径の開口部がスリット状に形成されている。また、流路本体32の底面には、原料ガスノズル51aを平面で見た時の形状と概略同形状の開口部が形成されており、前記側面の開口部と前記底面の開口部とは互いに連通している。従って、流路本体32に対して下方側から原料ガスノズル51aを気密に差し込むと、ガス吐出口52が流路本体32から突出すると共に、既述のフランジ部28に向かう原料ガスノズル51aの屈曲部分が流路本体32の下方側に位置する。こうしてこれら原料ガスノズル51aと流路本体32とを互いに溶接すると、既述の
図5に示した構成が得られる。尚、
図6は、
図5におけるA−A線における断面を示している。
【0026】
既述の供給路33及び排出路34は、ウエハボート11から見て流路本体32における左右の側面に夫々形成されており、流路本体32への取り付け面が夫々供給口33a及び排出口34aをなしている。供給路33及び排出路34における流路本体32とは反対側の端部は、
図3に示すように、原料ガスノズル51aや他のガスノズル51b、51cと同様に、フランジ部28を気密に貫通している。即ち、これら供給路33及び排出路34における前記端部は、流路本体32から水平方向に伸び出すと共に、下方側に向かって直角に屈曲して、フランジ部28を介して反応管12の外側に配置されたチラーなどの温調機構35に各々接続されている。この温調機構35に設けられた冷却機構及び加熱機構によって、任意の温度例えば95℃に調整された温調流体この例では窒素ガスを流路本体32の内部に循環させるように構成されている。
【0027】
この縦型熱処理装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には後述の成膜処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部101から制御部100内にインストールされる。
【0028】
次に、上述実施の形態の作用について説明する。本発明では、後述するように、ウエハWに成膜処理を行うにあたって、反応管12内にウエハボート11を気密に搬入した後、原料ガスノズル51aの恒温化(冷却)を図っているが、このように原料ガスノズル51aの冷却を行っている理由について始めに説明する。既述の背景の項目にて説明したように、縦型熱処理装置では、各ウエハWは反応管12の下方側にてウエハボート11に載置された後、反応管12内に気密に収納されて熱処理が行われる。熱処理が終了すると、ウエハボート11を再度下降させて、処理済みのウエハWを未処理のウエハWと入れ替えて、こうして順次多数枚のウエハWに対して連続して成膜処理を行う。従って、ヒータ13a〜13eの出力は、反応管12内の昇降温に伴う時間的なロスをなるべく少なくするために、熱処理が終了した後(ウエハボート11に対してウエハWの入れ替えを行っている時)においても、反応管12内がウエハWの熱処理を行う処理温度となるように維持される。
【0029】
ここで、各ヒータ13a〜13eの設定温度を揃えたまま反応管12内にウエハボート11を搬入すると、ウエハボート11における下端側の領域では、上端側の領域よりもウエハWの温度が低くなってしまう。即ち、ウエハボート11を上昇させている間、反応管12の炉口(下端の開口部)は、常温雰囲気の搬入出領域2に開口したままとなっていて、当該搬入出領域2に放熱している。また、反応管12へのウエハボート11の搬入を完了した時、当該ウエハボート11に積載された多数枚のウエハWのうち上端位置のウエハWは、反応管12内を長さ方向に亘って移動している間に、既にある程度加熱されている。一方、下端位置のウエハWは、反応管12内をそれ程長く移動しておらず、従って前記上端位置よりも温度が低い。また、既述のように、ボートエレベータ3によるウエハボート11の昇降速度は、例えばアーム4によるウエハWの搬送速度と比べて極めて遅い。そのため、ウエハボート11の搬入を終えた時、各ヒータ13a〜13eの設定温度を揃えたままだと、当該ウエハボート11では上下方向においてウエハWの加熱温度がばらついてしまう。そして、ウエハボート11の搬入完了後、このような温度ばらつきが解消されるまで(ウエハWの加熱温度が揃うまで)待機時間を設けると、スループットの低下に繋がってしまう。
【0030】
そこで、縦型熱処理装置では、ウエハボート11の搬入が完了した後、各ウエハWの温度を速やかに揃えている。具体的には、各ヒータ13a〜13eのうち例えば下側から2段のヒータ13d、13eの設定温度について、他のヒータ13a〜13cの設定温度よりも例えば25℃だけ高くしている。その後、ヒータ13d、13eの設定温度を他のヒータ13a〜13cの設定温度と揃えて、下段側のウエハWの加熱温度が高くなりすぎないようにしている。
【0031】
しかしながら、このような温度制御を行うと、ウエハWの加熱温度については上下方向において速やかに均一化が図られる一方、原料ガスノズル51aを頻繁に交換せざるを得なくなってしまう。即ち、反応管12内における各ウエハWの加熱温度は、原料ガスに含まれる有機物などの不純物がなるべく薄膜に取り込まれないように、当該原料ガスの熱分解温度近傍あるいは熱分解温度を超えた温度に設定される。既述のTDMAHガスの場合には、熱分解温度は280℃程度であり、反応管12内の加熱温度は280℃〜300℃である。従って、最下段のヒータ13d、13eの設定温度を他のヒータ13a〜13cの設定温度を超えた温度に設定すると、最下段のゾーンに位置する原料ガスノズル51a内では、原料ガスが熱分解しやすくなってしまう。そして、原料ガスが原料ガスノズル51a内で熱分解すると、当該原料ガスノズル51aの内壁に付着物が付着するので、この付着物が剥離した場合にはパーティクルとなってしまうし、当該原料ガスノズル51a内が詰まりやすくなってしまう。一方、原料ガスノズル51a内の温度が原料ガスの熱分解以下の温度に落ち着くまで待機時間を設けて、その後原料ガスの供給を開始しようとすると、前記待機時間の分だけスループットの低下に繋がってしまう。
【0032】
そこで、本発明では、以上説明した各ヒータ13a〜13eの温度制御を行う時に、原料ガスノズル51aを冷却している。このような温度ヒータ13a〜13eの温度制御及び原料ガスノズル51aの冷却の具体的なシーケンスについて、
図7を参照してウエハWの成膜処理と共に以下に詳述する。
【0033】
今、既述の搬入出領域2において、ウエハボート11に処理前の(これから処理を行おうとする)ウエハWが移載されているものとする。この時点においては、各ヒータ13a〜13eの設定温度は、
図7(a)に示すように、反応管12内の熱処理温度に揃っている。原料ガスノズル51aは、
図7(c)に示すように、各ヒータ13a〜13eによって反応管12の内部領域と同様の温度に加熱されている。そして、時刻t0において、ウエハボート11を上昇させて、反応管12内への搬入(ローディング)を開始し、時刻t1にてウエハボート11の搬入を終了する。
【0034】
図7(a)〜(d)は、ウエハボート11の搬入前後及びプロセス(成膜処理)時におけるヒータ13の設定温度、反応管12内の雰囲気温度、ウエハWの温度、原料ガスノズル51aの温度及び温調流体の流量の推移を示している。
図7では、ヒータ13a〜13eの温度については、最下段のヒータ13eと、ヒータ13d、13eよりも上段側のヒータ13を代表する最上段のヒータ13aとの各温度を示している。また、反応管12内の雰囲気の温度については、下側2段のヒータ13d、13eが受け持つ(ヒータ13d、13eに対応する)ゾーンと、当該ヒータ13d、13eよりも上段側のヒータ13が受け持つゾーンを代表して最上段のヒータ13aが受け持つゾーンとの各温度を示している。また、ウエハWの温度については、ウエハボート11上の製品ウエハWのうち最下段のウエハWと最上段のウエハWとの各温度を示している。
【0035】
ウエハボート11の搬入が終了した時刻t1の時点において、
図7(a)に示すように、下側2段のヒータ13d、13aの設定温度を他のヒータ13a〜13cの設定温度よりも例えば25℃高い第1の温度に設定する。また、
図7(d)に示すように、例えば時刻t1にて、流路本体32内に、例えば95℃に設定された窒素ガスを供給して、原料ガスノズル51aの冷却(温調)を開始する。
【0036】
反応管12内では、
図7(b)に示すように、下側2段のヒータ13d、13eが受け持つゾーン(ヒータ13d、13eに対応するゾーン、底部領域)については他のゾーンよりも速やかに昇温して、一方当該他のゾーンではウエハWの熱処理温度に保たれる。これに対して原料ガスノズル51aは、
図7(c)に示すように、反応管12内における加熱温度と流路本体32を通流する窒素ガスの温度とのバランスに基づいて、当該原料ガスノズル51aの長さ方向に亘って例えば原料ガスの熱分解温度以下の温度に保たれる(冷却される)。
【0037】
また、ウエハボート11に積載された各ウエハWは、
図7(c)に示すように、反応管12内に搬入された時点(t1)では既述のように上下方向の温度ばらつきが僅かに発生しているものの、各ゾーンの温度制御によって速やかに加熱されて熱処理温度に到達する(t2)。各ウエハWの加熱温度が揃うと(詳しくは各ウエハWの加熱温度が揃うまでの待機時間が経過した後)、
図7(a)に示すように、下側2段のヒータ13d、13eの設定温度が他のヒータ13a〜13cの設定温度と同じ第2の温度まで下げられる(t2)。下側2段のヒータ13d、13eが受け持つゾーンでは、
図7(b)に記載のように、当該ヒータ13d、13eの設定温度の変更に伴って他のゾーンの加熱温度に向かって降温していく。
【0038】
以上のように各ウエハWの加熱温度が揃った後、薄膜の成膜処理を開始する。具体的には、反応管12内を真空引きした後、当該反応管12内を任意の処理圧力に設定すると共に原料ガスの供給を開始する(t3)。ここで、下側2段のヒータ13d、13eの設定温度を他のヒータ13a〜13cの設定温度に揃えた後、反応管12内における下側2段のゾーンの実際の温度は、既述のように、緩やかに降温していく。従って、原料ガスの供給開始時(t3)には、反応管12内の下段のゾーンでは、当該原料ガスの熱分解温度を超えているか、あるいは前記熱分解温度近傍に加熱されている。しかしながら、原料ガスノズル51aを窒素ガスにより温調(冷却)しているため、原料ガスは、熱分解を抑制されながら通流して、当該原料ガスノズル51aからウエハWに吐出される。各ウエハWの表面では、当該ウエハWが原料ガスの熱分解温度近傍に加熱されているので、原料ガスが接触すると、この原料ガスの熱分解によって生成物が付着する。
【0039】
次いで、原料ガスの供給を停止して、反応管12内を真空引きすると共にパージガスにより反応管12内の雰囲気を置換した後、反応ガスを各ウエハWに供給する。ウエハWの表面では、前記生成物が酸化されて、ハフニウムの酸化物からなる反応生成物(Hf−O)が形成される。こうして再度反応管12内の雰囲気を置換して、原料ガスと反応ガスとを前記雰囲気を置換しながら交互に各ウエハWに供給することにより、前記反応生成物が積層されて薄膜が形成される。
【0040】
この薄膜を成膜している間に亘って、流路本体32内には温調された窒素ガスを通流させているので、各々のウエハWの薄膜における膜厚方向に亘って、且つ各ウエハW間において、原料ガスの温度の均一化が図られて、従って薄膜の膜質が揃う。また、原料ガスノズル51a内では原料ガスの熱分解が抑制されるので、原料ガスの熱分解によって生成する生成物の付着及び当該生成物の剥離が抑えられる。
図8は、以上説明した原料ガスノズル51a内の温度及び反応管12内における成膜温度を模式的に示したものであり、反応管12内では、原料ガスの熱分解温度近傍あるいは当該熱分解温度を超えた温度に設定されている。一方、原料ガスノズル51a内では、原料ガスの気化温度以上且つ熱処理温度以下に設定されている。
【0041】
その後、各ヒータ13a〜13eの設定温度についてはそのまま熱処理温度に維持しながら、反応管12内を大気雰囲気に戻してウエハボート11を下降させて、既に詳述したように処理済みのウエハWと未処理のウエハWとを交換する。
【0042】
上述の実施の形態によれば、反応管12内にて多数枚のウエハWに対して一括して薄膜の成膜処理を行うにあたって、反応管12内に原料ガスノズル51aを囲むように流路形成部材31を設けて、原料ガスノズル51aの温調(冷却)を行っている。従って、既述のように下側のヒータ13d、13eの設定温度を他のヒータ13a〜13cの設定温度より高くしても、原料ガスノズル51aの長さ方向に亘って原料ガスの温度を均一化できる。そのため、下側のヒータ13d、13eの設定温度が原料ガスの熱分解温度を超えた場合であっても、原料ガスノズル51a内における原料ガスの熱分解(生成物の付着)を抑制できる。従って、原料ガスノズル51aを頻繁に交換せずに済む。また、薄膜の膜質をウエハW間にて揃えることもできる。そして、温調流体について、反応管12内に漏れ出さないようにしているので、当該反応管12内にて行われるプロセスには影響を及ぼさずに原料ガスノズル51aを恒温化できる。
【0043】
図9は、以上説明した原料ガスノズル51aについて、多数回の成膜処理に使用した後、当該原料ガスノズル51aを切断して内側に付着した付着物を撮像したSEM写真を示している。
図9では、前記付着物の膜厚寸法dは、48.5nmとなっていた。一方、
図10は、原料ガスノズル51aの温調を行わずに、同様の成膜処理を行った時に原料ガスノズル51a内に付着する付着物を示している。
図10では、付着物の膜厚寸法dが705nmとなっており、
図9と比べて極めて厚膜となっていた。
【0044】
また、
図11は、反応管12内が例えば300℃となるように各ヒータ13a〜13eの設定温度を設定すると共に、流路本体32内に通流させる窒素ガス(温度:95℃)の流量を種々変えた時、反応管12内に吐出する原料ガスの温度がどのように変化するか実験した結果を示している。
図11から分かるように、5〜50slmまで温調流体の流量を増やして行くに従って、原料ガスの温度が下がっていた。そのため、温調流体の流量を介して、原料ガスの温度を調整できることが分かる。従って、原料ガスノズル51a内の処理ガスの温調を行うにあたって、処理ガスの温度をある任意の温度に設定するためには、温調流体の流量と、温調流体の温度と、の少なくとも一方を調整すれば良いと言える。尚、
図11において原料ガスの温度を測定する時には、最下段のゾーンにおける原料ガスノズル51aの吐出口52の近傍位置に熱電対などの温度計測部の計測端を配置して、当該吐出口52から吐出する原料ガスの温度を測定した。
【0045】
図11の結果から、反応管12内の加熱温度が原料ガスの熱分解温度を超えていても、原料ガスノズル51a内では原料ガスの熱分解が抑制されることが分かる。言い換えると、本発明では、原料ガスノズル51aを冷却することにより、原料ガスの熱分解温度を超えた高温までウエハWを加熱できるので、不純物レベルが極めて低い薄膜を得ることができる。
【0046】
以下に、本発明の他の例について説明する。
図12は、温調流体の供給量について、経時的に変化させた例を示している。具体的には、ウエハボート11を反応管12内に気密に搬入して温調流体の供給を開始する時(t1)、温調流体の供給量を流量V1に設定して、その後成膜処理を開始した後、任意のタイミングt4にて流量V2(V2<V1)に減少させる例を示している。即ち、既に詳述したように、本発明では、ウエハボート11を反応管12内に搬入した後、成膜処理を開始するまでのいわば準備段階において、下側のヒータ13d、13eの設定温度を他のヒータ13a〜13cの設定温度よりも高くしている。従って、前記準備段階では、成膜処理を開始した後よりも、原料ガスノズル51a内の温度が高くなりやすい。そこで、この例では、前記準備段階において、成膜処理を開始した後と比べて温調流体の流量を多くしている。
【0047】
また、
図13は、温調流体の流量について、当該温調流体の供給開始時t1から前記タイミングt4に向かって、流量V1からV2に徐々に少なくなるように設定した例を示している。更に、
図14は、流路形成部材31について、原料ガスノズル51aの下端側から当該原料ガスノズル51aの長さ方向における途中部位まで設けた例を示している。即ち、下側のヒータ13d、13eについては前記準備段階で他のヒータ13a〜13cの設定温度よりも高い設定温度に設定するため、当該ヒータ13d、13eが受け持つゾーンあるいはこのゾーンに加えて一つ上段側のゾーンだけに流路形成部材31を設けている。
図14では、流路形成部材31の上端の高さレベルhは、反応管12内のウエハボート11に積載される多数枚のウエハWのうち高さ方向において中央のウエハWの上面と同じ高さ位置となるように設定している。尚、
図14では、供給路33や排出路34の描画を省略している。
【0048】
以上の各例では、流路本体32内に通流させる温調流体の温度について、反応管12内の熱処理温度よりも低い温度に設定したが、当該熱処理温度近傍に設定しても良い。即ち、熱分解温度の近傍温度にて活性化する原料ガス(例えばオゾンガス)を用いる場合には、原料ガスノズル51a内にて原料ガスの熱分解を抑制しながら、当該原料ガスの活性化を図っても良い。
また、成膜処理を開始する時に反応管12内の上方側よりも下方側の加熱温度を高く設定するにあたり、既述の例ではヒータ13a〜13eのうち下側2段のヒータ13d、13eの出力を大きくしたが、最下段のヒータ13eの出力だけを大きくしても良い。
【0049】
また、既述の最下段のゾーンの温度調整を行わずに、ウエハボート11の搬入時から成膜処理の終了時までに亘って各ヒータ13a〜13eの設定温度を揃える場合には、原料ガスは、
図15に破線にて示すように、原料ガスノズル51a内を上方側に向かって通流するにつれて昇温する。従って、原料ガスにこのような温度ばらつきが生じていると、各ウエハWでは、原料ガスの熱分解の度合い(ウエハW上に形成される反応生成物の膜厚)のばらつくおそれがある。そこで、このような場合には、流路本体32内に供給する温調流体について、ウエハWの熱処理温度あるいは当該熱処理温度近傍に加熱して、原料ガスの温度の均一化を行っても良い。
【0050】
更に、流路形成部材31について、原料ガスノズル51aに代えて、あるいは原料ガスノズル51aと共に、オゾンガスノズル51bに設けても良い。即ち、オゾンガスについても、上方側に向かってオゾンガスノズル51b内を通流するにつれて昇温する。従って、オゾンガスノズル51bの長さ方向に沿ってオゾンガスの温度を揃えることにより、ウエハWの表面に吸着した原料ガスの成分と当該オゾンガスとの反応性を反応管12の長さ方向に沿って揃えることができる。
【0051】
以上の説明では、原料ガスと反応ガスとを交互にウエハWに供給するALD法を例に挙げたが、これら原料ガス及び反応ガスを同時にウエハWに供給してCVD法により薄膜を成膜しても良い。また、各ガスノズル51a〜51cとしては、ウエハボート11の長さ方向に沿ってガス吐出口52を形成する構成に代えて、当該ガスノズル51a〜51cの先端側上端部を開口させてガス吐出口52として構成であっても良い。
【0052】
流路形成部材31については、原料ガスノズル51a(オゾンガスノズル51b)の周囲を覆うように流路本体32を形成して、いわば2重管構造を採っても良い。この場合には、内管と外管との間に、内管の吐出口52から流路本体32の外側に向かって伸びるガス流路を配置しても良い。
【0053】
また、温調流体としては、気体に代えて液体(純水)を用いても良い。以上説明した成膜処理を行う時に使用する原料ガスとしては、Hf系有機ガスに代えて、例えばZr(ジルコニウム)系有機ガス、Sr(ストロンチウム)系有機ガス、Al(アルミニウム)系有機ガス、Ti(チタン)系有機ガスあるいはSi(シリコン)系有機ガスなどを用いても良い。これら有機ガスと反応する反応ガスとしては、既述のオゾンガスに代えて、水蒸気(H
2Oガス)を用いても良い。更に、ウエハWに対して行う熱処理としては、成膜処理に代えて、加熱したウエハWに水蒸気を供給する処理であっても良い。このような熱処理であっても、水蒸気はガスノズルの長さ方向に沿って恒温化が図られて、各ウエハWに対して温度の揃った水蒸気が供給される。