特許第6237513号(P6237513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6237513室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237513
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20171120BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20171120BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20171120BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C08L83/06
   C08K5/544
   C08K5/5419
   C08G59/50
   C08K3/00
   C08L63/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-144049(P2014-144049)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2016-20422(P2016-20422A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2016年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(72)【発明者】
【氏名】亀田 宜良
(72)【発明者】
【氏名】荒木 正
【審査官】 海老原 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−087258(JP,A)
【文献】 特開平06−049363(JP,A)
【文献】 特開平07−003159(JP,A)
【文献】 特表2008−513575(JP,A)
【文献】 特開2005−307107(JP,A)
【文献】 国際公開第2000/056817(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/06
C08K 3/00
C08K 5/5419
C08K 5/544
C08L 63/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖され主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状のジオルガノポリシロキサン100質量部
(B)アミノ基含有シランカップリング剤 0.1〜60質量部
(C)多官能エポキシ基含有化合物 0.05〜10質量
D)硬化触媒 0.001〜30質量部 及び
(F)無機充填剤:0.1〜1000質量部
を含有する複数の組成物の組合せからなる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、少なくとも(B)成分と(C)成分は別々の組成物中に含有されるものである室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
更に、(E)下記一般式(1):
SiX4-a (1)
(式中、Rは非置換若しくは置換の一価炭化水素基を示し、Xは同一または異種の加水分解性基を示し、aは0,1又は2であり、ただし、a=2のとき、Rは同一でも異なっていてもよい。)
で表される有機ケイ素化合物および/またはその部分加水分解縮合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
下記第一組成物と第二組成物を夫々100:1〜100:30の質量比で混合して得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、さらに、下記第一組成物及び/又は第二組成物は、(F)無機充填剤を合計で、下記(A)成分100質量部に対して0.1〜1000質量部含有するものである室温硬化性オルガノポリシロキサン
第一組成物
(A)分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖され主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状のジオルガノポリシロキサン100質量部
(C)多官能エポキシ基含有化合物 0.05〜10質量部 及び
(E)下記一般式(1):
SiX4-a (1)
(式中、Rは非置換若しくは置換の一価炭化水素基を示し、Xは同一または異種の加水分解性基を示し、aは0,1又は2であり、ただし、a=2のとき、Rは同一でも異なっていてもよい。)
で表される有機ケイ素化合物および/またはその部分加水分解縮合物 0.1〜30質量部
を含有する組成物。
第二組成物
(B)アミノ基含有シランカップリング剤 0.1〜60質量部 及び
(D)硬化触媒 0.001〜30質量部
を含有する組成物。
【請求項4】
下記第一組成物と第二組成物を夫々100:50〜100:150の質量比で混合して得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、さらに、下記第一組成物及び/又は第二組成物は、
(D)硬化触媒を下記(A)成分100質量部に対して0.001〜30質量部 及び/又は
(F)無機充填剤を合計で、下記(A)成分の合計100質量部に対して0.1〜1000質量部
含有するものである室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
第一組成物
(A)分子鎖両末端が加水分解性基で封鎖され主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状のジオルガノポリシロキサン100質量部 及び
(B)アミノ基含有シランカップリング剤 0.1〜60質量部
を含有する組成物。
第二組成物
(A)分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖され主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状のジオルガノポリシロキサン100質量部 及び
(C)多官能エポキシ基含有化合物 0.05〜10質量部
を含有する組成物。
【請求項5】
請求項1〜の何れか1項記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなるシリコーンゴムを接着させた合成樹脂。
【請求項6】
請求項3又は4記載の第一組成物と第二組成物とを、使用する直前に均一に混合して請求項1記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製し、該オルガノポリシロキサン組成物を合成樹脂製被着体の表面に適用してオルガノポリシロキサン組成物層を該被着体の表面に形成し、硬化させる工程を有するシリコーンゴムを合成樹脂に接着させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン系シーリング剤又は接着剤として用いられる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する。特に、事前の調整を必要とせず、各種の合成樹脂製被着体に対して接着する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
湿気により架橋するRTVシリコーンゴムはその取り扱いが容易な上に耐侯性、電気特性に優れるため、建材用のシーリング材、電気電子分野での接着剤など様々な分野で応用されている。そのため、様々な基材に対して接着させる必要があるため、種々の接着性組成物の特許出願がされている。
その中でアミノ基を有するアミノアルキルアルコキシシランとエポキシ基を有するエポキシアルキルアルコキシシランとの反応物または混合物を接着促進剤として使用すると接着性が改善される事が開示されている(特許文献1、2)。他に、ジシラアルカン化合物(特許文献3)や長鎖アルキル基含有シラン(特許文献4)を含有させることも提案されている。しかし、これらの組成物は調製に手間がかかるという問題があった。更にシロキサン組成物に添加すると溶解性が著しく悪いため、分離するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭52−08854号公報
【特許文献2】特公昭63−23226号公報
【特許文献3】特開2003−221506号公報
【特許文献4】特開昭64−60656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上述の問題点がなく、事前の調整を必要とせず、速硬化性で、かつ、接着性が飛躍的に向上したシリコーンゴムを与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、複数の組成物からなるオルガノポリシロキサン組成物(即ち、2種以上の成分を含んでなる混合物(組成物)を複数組み合わせてなる組成物)であって、アミノ基含有シランカップリング剤と多官能エポキシ基含有化合物を別々な組成物とし、使用直前にこれらを混合することで、速硬化性で、かつ、接着性が良好で、接着成分の分離が無いなど保存安定性にも優れた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることができることを見いだし、本発明をなすに至った。
なお、本発明において、「使用直前」とは、複数の組成物同士を混合して最終的に調製した室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を合成樹脂等の被着体に適用してから30分以内、特には15分以内、とりわけ10分以内を意味する。
【0006】
即ち、本発明は、次の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供するものである。
〈1〉 少なくとも、
(A)分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン100質量部
(B)アミノ基含有シランカップリング剤 0.1〜60質量部
(C)多官能エポキシ基含有化合物 0.05〜10質量部 及び
(D)硬化触媒 0.001〜30質量部
を含有する複数の組成物の組合せからなる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、少なくとも(B)成分と(C)成分は別々の組成物中に含有されるものである室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【0007】
〈2〉更に、(E)下記一般式(1):
SiX4-a (1)
(式中、Rは非置換若しくは置換の一価炭化水素基を示し、Xは同一または異種の加水分解性基を示し、aは0,1又は2であり、ただし、a=2のとき、Rは同一でも異なっていてもよい。)
で表される有機ケイ素化合物および/またはその部分加水分解縮合物を含むことを特徴とする〈1〉に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【0008】
〈3〉下記第一組成物と第二組成物を夫々100:1〜100:30の質量比で混合して得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
第一組成物
(A)分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン100質量部
(C)多官能エポキシ基含有化合物 0.05〜10質量部 及び
(E)下記一般式(1):
SiX4-a (1)
(式中、Rは非置換若しくは置換の一価炭化水素基を示し、Xは同一または異種の加水分解性基を示し、aは0,1又は2であり、ただし、a=2のとき、Rは同一でも異なっていてもよい。)
で表される有機ケイ素化合物および/またはその部分加水分解縮合物 0.1〜30質量部
を含有する組成物。
第二組成物
(B)アミノ基含有シランカップリング剤 0.1〜60質量部 及び
(D)硬化触媒 0.001〜30質量部
を含有する組成物。
【0009】
〈4〉下記第一組成物と第二組成物を夫々100:50〜100:150の質量比で混合して得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、さらに、下記第一組成物及び/又は第二組成物は、(D)硬化触媒を下記(A)成分100質量部に対して0.001〜30質量部含有するものである室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
第一組成物
(A)分子鎖両末端が加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン100質量部 及び
(B)アミノ基含有シランカップリング剤 0.1〜60質量部
を含有する組成物。
第二組成物
(A)分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン100質量部 及び
(C)多官能エポキシ基含有化合物 0.05〜10質量部
を含有する組成物。
【0010】
〈5〉更に、(F)無機充填剤:0.1〜1000質量部
を含むことを特徴とする〈1〉〜〈4〉のいずれか1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【0011】
〈6〉 〈1〉〜〈5〉の何れか1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物で接着させた合成樹脂。
〈7〉 〈3〉又は〈4〉記載の第一組成物と第二組成物とを、使用する直前に均一に混合して〈1〉記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製し、該オルガノポリシロキサン組成物を合成樹脂製被着体の表面に適用してオルガノポリシロキサン組成物層を該被着体の表面に形成し、硬化させる工程を有するシリコーンゴムを合成樹脂に接着させる方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、室温で硬化して弾性体状のオルガノポリシロキサン硬化物(シリコーンゴム)を与えるものであり、接着性、特に合成樹脂に対する接着性に優れ、接着成分の分離がない等保存安定性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本発明において、粘度は、JIS Z 8803に規定する方法に順じた回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型等)による測定値である。
【0014】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、2種以上の成分を含んでなる混合物(組成物)を複数組み合わせてなる組成物であって、少なくとも、下記
(A)分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン100質量部
(B)アミノ基含有シランカップリング剤 0.1〜60質量部
(C)多官能エポキシ基含有化合物 0.05〜10質量部 及び
(D)硬化触媒 0.001〜30質量部
を含有する。なお、本発明の組成物は、複数の組成物からなり、複数の組成物全体が、上記成分を含んでいればよい。ただし、(B)成分と(C)成分は同一組成物中に含有してはならない。
以下、個々の成分について説明する。
【0015】
[(A)成分]
(A)成分のジオルガノポリシロキサンは分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基(即ち、シラノール基)及び/又はケイ素原子に結合した加水分解性基(例えば、ジオルガノヒドロキシシロキシ基及び/又は1〜3個の加水分解性基を有するシロキシ基)で封鎖され、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰返しからなる直鎖状のジオルガノポリシロキサンであり、本発明のオルガノポリシロキサン組成物を構成するベース成分であり、分子鎖両末端のケイ素原子に水酸基及び/又は加水分解性基が結合している。
この加水分解性基としてはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;メチルエチルケトオキシム基等のケトキシム基;アセトキシ基;アミノオキシ基が例示される。また、このオルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合するその他の基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2−エチルブチル基、オクチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基、シクロペンチル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基、フェナントリル基などのアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、トリクロロプロピル基、トリフロロプロピル基、ブロモフェニル基、クロロシクロヘキシル基などのハロゲン化アルキル、アリールもしくはシクロアルキル基;2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、2−シアノブチル基などのシアノ化アルキル基が挙げられ、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフロロプロピル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
このオルガノポリシロキサンの23℃における粘度が好ましくは10〜500,000mPa・s、より好ましくは100〜100,000mPa・s、更により好ましくは200〜50,000mPa・sの範囲となる数である。粘度が小さすぎると硬化物に十分な機械的特性が得られない場合があり、大きすぎると組成物の粘度が高くなり、作業性が低下する。
また、(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0016】
[(B)成分]
(B)成分のアミノ基含有シランカップリング剤は単独でも接着性付与成分として作用するが、(C)成分の多官能エポキシ含有化合物と反応することにより、更に幅広い被着体に対して、接着性を付与できる。
本発明で用いる、アミノ基含有シランカップリング剤(アミノ官能性基含有カーボンファンクショナル加水分解性シラン及び/又はその部分加水分解縮合物)は当該技術分野で公知のシランカップリング剤およびその部分加水分解縮合物が好適に使用される。特には加水分解性基としてアルコキシシリル、アルケノキシシリル基を有するものが好ましく、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、等が例示される。
このアミノ基含有シランカップリング剤の配合量は、(A)成分100質量部あたり0.1〜60質量部、好ましくは0.3〜50質量部使用される。0.1質量部未満では十分な接着性が得られない場合があり、60質量部を越えると機械特性に劣るものとなる。
【0017】
[(C)成分]
(C)成分の多官能エポキシ基含有化合物(即ち、分子中に2個以上のエポキシ基を含有する化合物)は(B)成分のアミノ基含有シランカップリング剤と反応することにより幅広い被着体に対して、接着性を付与するものである。なお、(C)成分の多官能エポキシ基含有化合物としては分子中に加水分解性基を含有しないものが好ましい。
多官能エポキシ含有化合物としては脂肪族多官能エポキシ化合物や芳香族多官能エポキシ化合物、脂環式多官能エポキシ化合物等があり、脂肪族多官能エポキシ化合物としては1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、芳香族多官能エポキシ化合物としてはヒドロキノンジグリシジルエーテル、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン、脂環式多官能エポキシ化合物としては3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロペンタジエンジオキシドなどが挙げられる。更に多官能エポキシ基含有のシランカップリング剤や変性シリコーンオイルも接着性付与に効果がある。
多官能エポキシ基含有化合物は2官能以上が好ましく、特に3官能以上が好ましい。
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.05〜10質量部、好ましくは、0.1〜7質量部で使用される。0.05質量部未満では十分な接着性が得られない場合があり、10質量部を超えるとゴムの柔軟性が失われる虞がある。
【0018】
[(D)成分]
本発明(D)成分である縮合反応用硬化触媒は、縮合反応を促進し、ゴム化を速めるために添加するものである。
硬化触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン酸エステル;ジイソプロポキシキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート等の有機ジルコニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジ(2−エチルヘキサノエート)等の有機スズ化合物;ナフテン酸スズ、オレイン酸スズ、ブチル酸スズ、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、およびその塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の4級アンモニウム塩;酢酸カリウム、硝酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;テトラメチルグアニジンプロピルトリメトキシシラン等のグアニジル基含有有機ケイ素化合物;が挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
上記硬化触媒を配合する場合、その配合量は、特に制限されず、触媒としての有効量でよいが、例えば、上記(A)成分100質量部(即ち、第一組成物と第二組成物中の(A)成分の合計100質量部)に対して通常、0.001〜30質量部、好ましくは0.002〜20質量部、より好ましくは0.004〜10質量部程度である。
【0019】
[(E)成分]
本発明では、必要に応じて、任意成分として更に(E)成分の架橋剤を配合してもよい。
(E)成分の架橋剤は、下記一般式(1):
SiX4-a (1)
(式中、Rは非置換若しくは置換の一価炭化水素基を示し、Xは同一または異種の加水分解性基を示し、aは0,1又は2であり、ただし、a=2のとき、Rは同一でも異なっていてもよい。)
で表される有機ケイ素化合物(加水分解性オルガノシラン化合物)及び/又はその部分加水分解縮合物であり、1種又は2種以上の混合物であってもよい。なお、本発明において、部分加水分解縮合物とは、加水分解性オルガノシラン化合物の1種又は2種以上を(共)加水分解/縮合して生成する、分子中に残存加水分解性基を(好ましくは2個以上)有するオルガノシロキサンオリゴマーを意味する。
一般式(1)中、Rの非置換若しくは置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基及びフェニル基から選択される基が好ましい。
(E)成分の有機ケイ素化合物及びその部分加水分解物が有する加水分解性基としては、例えばケトオキシム基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基等が挙げられ、ケトオキシム基、アルコキシ基、イソプロペノキシ基が好ましい。
(E)成分の具体例としては、メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シランなどのケトオキシムシラン及びメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、エチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン等のイソプロペノキシ基含有シラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランなどのアセトキシシランの各種シラン、並びにこれらのシランの部分加水分解縮合物が挙げられる。
(E)成分を配合する場合には、その配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜30質量部、好ましくは、0.5〜20質量部、特に好ましくは1〜15質量部の範囲で使用される。0.1質量部未満では十分な架橋が得られず、適当なゴム弾性を有する組成物を得られ難くなることがあり、30質量部を超えると得られる硬化物は機械特性が低下し易い。
【0020】
[(F)成分]
(F)成分の無機質充填剤は、必要に応じて配合してもよい任意成分であって、得られる硬化物に適度な補強性、ゴム特性を与える成分である。
この成分としては、ヒュームドシリカ(煙霧質シリカ)、沈降性シリカ、焼成シリカ等の補強性シリカ充填剤、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化チタン、珪藻土、マイカ、溶融シリカ(石英粉末)等の非補強性充填剤が例示される。好ましくはヒュームドシリカや炭酸カルシウムである。また、これらの充填剤の表面をオルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシラン、シラザン等の有機ケイ素化合物、脂肪酸やパラフィン系等で処理した充填剤を用いてもよい。またこの成分は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
(F)成分を配合する場合には、その配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜1000質量部、特に1〜500質量部配合することが好ましい。0.1質量部未満では得られる硬化物の機械特性が不十分となることがあり、1000質量部を超える量では、得られる組成物の粘度が高すぎて作業性、吐出性が悪くなる。
【0021】
[その他の成分]
本発明のオルガノポリシロキサン組成物には、任意成分として、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、溶剤、難燃剤としての白金化合物や酸化アンチモン等を配合することができる。
更に、チクソ性向上剤としてのポリエーテル、防かび剤、抗菌剤等が挙げられる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的を損なわない範囲であればよい。
【0022】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、上記(A)〜(D)成分、所望により(E)、(F)成分や他の上記各種添加剤を混合、好ましくは乾燥雰囲気(実質的に湿分の不存在)下において均一に混合することにより得ることができる。
混合は、3本ロール、プラネタリーミキサー、万能混合機等の公知の混合機を用いて行えばよい。 ただし、(B)成分と(C)成分は別組成物とする。
このような、複数の組成物の例としては、次のものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
第一組成物
(A)分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン100質量部
(C)多官能エポキシ基含有化合物 0.05〜10質量部 及び
(E)下記一般式(1):
SiX4-a (1)
(式中、Rは非置換若しくは置換の一価炭化水素基を示し、Xは同一または異種の加水分解性基を示し、aは0,1又は2であり、ただし、a=2のとき、Rは同一でも異なっていてもよい。)
で表される有機ケイ素化合物および/またはその部分加水分解縮合物 0.1〜30質量部
を含有する組成物。
第二組成物
(B)アミノ基含有シランカップリング剤 0.1〜60質量部 及び
(D)硬化触媒 0.001〜30質量部
【0024】
使用時において、上記、第一組成物と第二組成物は、夫々100:1〜100:30の質量比で混合することが好ましい。
【0025】
さらに、複数の組成物の例としては、次のものが挙げられる。
第一組成物
(A)分子鎖両末端が加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン100質量部 及び
(B)アミノ基含有シランカップリング剤 0.1〜60質量部
を含有する組成物。
第二組成物
(A)分子鎖両末端が水酸基及び/又は加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサン100質量部 及び
(C)多官能エポキシ基含有化合物 0.05〜10質量部
を含有する組成物。
【0026】
上記、第一組成物と第二組成物は、夫々100:50〜100:150の質量比で混合して使用することが好ましい。さらに、該第一組成物及び/又は第二組成物は、(D)硬化触媒を下記(A)成分100質量部に対して0.001〜30質量部添加する。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中の部は質量部、粘度は23℃での測定値を示したものである。
【0028】
[実施例1]
23℃における粘度が5,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、煙霧質シリカを15部添加し、150℃に加熱し減圧下で2時間混合した。冷却後、三本ロール分散を行った。次いでこの混合物に、ビニルトリイソプロペノキシシラン2.4質量部、およびN,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン(三菱化学製EP−630)0.5質量部加えて、減圧下で完全に混合し、第1組成物を得た。
また、23℃における粘度が30,000mPa・sの分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、表面処理煙霧状シリカを7部添加し、均一に分散混合した後、1,1,3,3−テトラメチル−2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]グアニジンを20質量部、3−アミノプロピルトリエトキシシランを40質量部加えて、減圧下で完全に混合し、第2組成物を得た。
上記第1組成物と第2組成物を、下記の接着試験に使用する直前に、質量比10:1で混合し、サンプル1を得た。
【0029】
[実施例2]
実施例1において、第1組成物中のN,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリンをトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製EX−321−L)に変更した他は同様の条件にて調整し、サンプル2を得た。
【0030】
[実施例3]
実施例1において、第1組成物中のN,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリンを1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製EX-212L)に変更した他は同様の条件にて調整し、サンプル3を得た。
【0031】
[実施例4]
23℃における粘度が900mPa・sの分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、煙霧質シリカを5部添加し、150℃に加熱し減圧下で2時間混合した。冷却後、三本ロール分散を行った。次いでこの混合物に、3−アミノプロピルトリエトキシシランを3質量部加えて、減圧下で完全に混合し、第1組成物を得た。
また、23℃における粘度が700mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100質量部に、煙霧質シリカを5部添加し、150℃に加熱し減圧下で2時間混合した。冷却後、三本ロール分散を行った。次いでこの混合物に、N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン(三菱化学製EP−630)0.5質量部、錫触媒を0.01質量部加えて、減圧下で完全に混合し、第2組成物を得た。
上記第1組成物と第2組成物を、下記の接着試験に使用する直前に、質量比1:1で混合し、サンプル4を得た。
【0032】
[比較例1]
実施例1において、第1組成物中のN,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリンをN,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリンと3−アミノプロピルトリエトキシシランをモル比で1:1となる量を70℃で5時間反応させた化合物を1質量部に変更した他は同様の条件にて調整し、サンプル5を得た。
【0033】
[比較例2]
実施例1において、第1組成物中のN,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリンを、分子中にエポキシ基を1個有するグリシジルヘキシルエーテルに変更した他は同様の条件にて調整し、サンプル6を得た。
【0034】
[比較例3]
実施例1において、第1組成物中のN,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリンを分子中にエポキシ基を1個有するグリシジル-2-メチルフェニルエーテルに変更した他は同様の条件にて調整し、サンプル7を得た。
【0035】
[評価]
接着性:各樹脂表面に20mm×30mm×5mmの形状に、サンプルを塗布し、23±2℃、50±5%RHの雰囲気で一週間硬化させた後に、硬化シリコーンゴムを各樹脂表面から0°の方向に引っ張り、目視により接着性を確認した。上記引っ張りにより、硬化シリコーンゴムが接着したものを○と評価し、完全に剥離したものを×、一部接着したものを△と評価して、表1に示した。
保存性:50℃×28日間放置後に組成物の分離状態を確認した。分離せず均一な組成物であれば○と評価し、オイルなどの分離が見られた場合は×と評価した。
【0036】
【表1】
【0037】
上記の結果から、本発明の組成物は、各種プラスチックに対して接着性が高く、且つ保存安定性に優れることが分かる。一方でアミノシランとエポキシ化合物の反応物を用いた比較例1のサンプル5では接着性に優れるものの保存性に劣り、本発明の範囲外のエポキシ化合物を用いた比較例2、3のサンプル6と7では接着性に劣ることが分かる。