(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両表面層が植物由来ポリエチレン樹脂を含有する、少なくとも3層以上で構成される積層フィルムであって、JISK−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜4GPaであり、−40〜0℃における損失正接(tanδ)の平均値が0.08以上であり、ポリアミド6、ポリアミド11、エチレン−ビニルアルコール共重合体、およびポリプロピレンの何れかを70質量%以上含有する中間層を有することを特徴とするラップフィルム。
【背景技術】
【0002】
ラップフィルムは、業務用のストレッチ包装フィルムとは区別され、例えば、家庭などで調理した食品を陶器やプラスチック容器などに載せて包装するフィルムとして使われている。
【0003】
このようなラップフィルムは、通常カッター刃を具備した紙箱の中に筒に巻かれた状態で収納されており、包装する際は、フィルムを紙箱から引き出して食品を覆うように被せ、フィルムを紙箱に具備されたカッター刃に押し当て、このカッター刃でフィルムにミシン目状の孔を開けてフィルムを引きちぎることにより、引き裂きを幅方向に伝播させるようにしてフィルムをカットし、そしてフィルムの端部を容器に密着させて包装するように使用する。このため、ラップフィルムには、透明性のほか、容器への密着性、箱から引き出したフィルムをカットする際のカット適性などの諸特性が必要とされる。
【0004】
現在市販されているラップフィルムの多くは、延伸したポリ塩化ビニリデン系樹脂を主成分とするフィルムのほか、押出キャストしたポリエチレン系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1系樹脂等を主成分とするフィルムである。
【0005】
近年、環境問題の高まりから枯渇性資源の有効活用が重要視されるようになり、とうもろこしやジャガイモ等のでんぷんから得られる天然植物由来の樹脂である乳酸系重合体や、とうもろこし等から精製されたバイオエタノールを使用して作製される植物由来ポリエチレン等が注目されている。特に乳酸系重合体は、量産が可能であるばかりか、透明性にも優れているため、乳酸系重合体を用いたラップフィルムの研究開発が行われている。
【0006】
例えば、特許文献1には、ラップフィルムの特性であるカット適性、包装適性、耐熱性を同時に具備した生分解性ラップフィルムとして、JISK−7198A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した40℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜3GPaの範囲にあり、100℃における貯蔵弾性率(E’)の値が30MPa〜500MPaの範囲にあり、損失正接(tanδ)のピーク値が0.1〜0.8の範囲にある乳酸系樹脂組成物、例えば乳酸系重合体と可塑剤とを60:1〜99:1の質量割合で含有する乳酸系樹脂組成物を主成分として含有する生分解性ラップフィルムが開示されている。
【0007】
特許文献2には、最外層がオレフィン系重合体を主成分とする層であり、該オレフィン系重合体を主成分とする層の間にポリ乳酸(乳酸系重合体)を主成分とする層を少なくとも1層有する収縮シート状物が開示されていると共に、オレフィン系重合体を主成分とする層とポリ乳酸を主成分とする層との間に、アクリル変性ポリエチレン系樹脂からなる接着層が介在し得ることも開示されている。
【0008】
しかし、上記特許文献1のような、乳酸系重合体に可塑剤を配合した系では、乳酸系重合体のガラス転移点(Tg)を室温付近まで下げることになるため、キャスティング法などで急速に冷却してラップフィルムを製膜すると、非晶のままシーティングされることになって弾性率が下がってしまい、そのまま長尺で巻いてしまうと巻物がブロッキングするという問題が生じることがある。
【0009】
また、乳酸系重合体がラップフィルムの表裏層に露出していると、加水分解によって乳酸系重合体の分子量が経時的に低下してしまうため、さらにブロッキングを生じ易くなるという問題もある。
【0010】
さらに、ラップフィルムとして機能させるには、上記のとおり、透明性のほか、容器への密着性、引き出したフィルムをカットする際のカット適性などの諸特性が求められるが、乳酸系重合体を主原料に用いて、このような諸特性を満足するラップフィルムを作製することは容易なことではなく、特に特許文献2のように、多層構造の積層フィルムにおいては、容器への密着性に優れるラップフィルムを作製することは簡単なことではない。
【0011】
また、市販されているラップフィルムの多くは−40〜0℃付近の損失正接(tanδ)平均値が低いため、冷凍庫等の低温下で使用する際に容器への密着性が低下する傾向もある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のラップフィルムは、両表面層が植物由来ポリエチレン樹脂成分を含有する、少なくとも3層以上で構成される積層フィルムである。そして、本発明の好ましい態様においては、中間層は、脂肪族ポリアミド重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレンの何れかを主成分として含有する。
【0017】
本発明のラップフィルムでは、植物由来ポリエチレン樹脂含有する表面層を形成し、積層構成とすることで、両表面層に防曇剤や粘着剤等の添加剤を含ませることができるため、フィルムの防曇性や密着性等を高めることもできる。また、低温(−40〜0℃)での損失正接(tanδ)の平均値の値が石油由来の線状低密度ポリエチレン樹脂に比べ高いため、低温下での容器等への密着性を付与できる。
【0018】
ここで、植物由来ポリエチレン系樹脂としては、サトウキビより抽出されたエタノールを用いて作製された、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの中から選ばれる一種または二種以上の混合組成物などを挙げることができる。
【0019】
これらの中でも、植物由来ポリエチレン樹脂としては、密度が0.910〜0.960g/cm
3の間にあるのが好ましく、特に0.915〜0.940g/cm
3、中でも特に0.915〜0.925g/cm
3にあるものがさらに好ましい。ここで、密度が0.915g/cm
3以上であれば、ラップフィルムに求められる弾性回復性を維持することができる。一方、0.940g/cm
3以下であれば、ラップフィルムに求められる、接触時のフィルムの柔らかさを付与することが可能となる。
【0020】
また、植物由来ポリエチレンの植物度(%)(ASTM6866、放射性炭素
14Cの含有率測定)が80%以上のものが好ましい。植物度が80%以上の場合は、石油由来ポリエチレンに比べCO
2を70〜74%程度削減が可能となり、枯渇性資源の有効利用および、温室効果ガスの原因となるCO
2発生量を大幅に削減することが可能となる。
【0021】
押出加工性の観点からは、メルトフローレート(JISK7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が0.5〜10g/10分の植物由来ポリエチレンが好ましく、特に1.0〜5.0g/10分の植物由来ポリエチレンがさらに好ましい。メルトフローレートが0.5g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持することができる。一方、10g/10分以下であれば、製膜安定性を維持することができ、厚み斑や力学強度のバラツキ等が生じるのを抑えることができるから好ましい。
【0022】
脂肪族ポリアミド重合体としては、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、ジカルボン酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられる。本検討に用いられるポリアミド樹脂としては、具体的には、ポリアミド6と称されるε−カプロラクタムの単独重合体、あるいはポリアミド11と称されるウンデカンラクタムを開環重縮合した単独重合体が押出成形用途として安価に入手でき、かつ、種々のガスバリア性能も優れているため、食品を包装するラップフィルムという点から見ると、コストが過大に上昇しないで品質が向上するために好ましい。
【0023】
ポリアミド系樹脂としては、芳香族ポリアミド樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂、およびそれらの混合物などが挙げられるが、ラップフィルムとして必要な耐熱性やバリア性、および原料コスト面より、通常は脂肪族ポリアミド樹脂が好ましく使用される。該ポリアミド樹脂としては、例えばヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3―または1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)、m―またはp−キシリレンジアミン等の脂肪族、脂環式、芳香族のジアミンとアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の脂肪族、脂環式、芳香族ジカルボン酸との重縮合によって得られるポリアミド、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸の縮合によって得られるポリアミド、ε−カプロラクタム、ε−ラウロラクタム等のラクタムから得られるポリアミドまたはこれらの共重合ポリアミドなどが挙げられる。具体的には、ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド−6,10、ポリアミド−9、ポリアミド−11、ポリアミド−12、ポリアミド−6/6,6、ポリアミド−6,6/6,10、ポリアミド−6/11等が好ましく挙げられる。成形性の観点からは、融点が170〜250℃のものが好ましく、低温下での衝撃性に優れているものが好ましい。本発明においては、特に、ポリアミド−6やポリアミド−11が好適に用いられる。
【0024】
ラップフィルムは電子レンジ内で加熱される場合があるために、耐熱性が求められる。各種ポリオレフィン樹脂に比べ、ポリアミド6、ポリアミド11共に耐熱温度は非常に高いため、中間層にポリアミド6、ポリアミド11を使用することは耐熱性を得るという点からも好ましい。
【0025】
また、ポリアミド11はヒマから抽出されたヒマシ油より合成される植物由来のポリアミド樹脂であり低温性能が他のポリアミド樹脂に比べ優れているのが特徴である、よって、ポリアミド11を中間層に使用する事で枯渇性資源の削減および、低温環境下でのラップフィルムの性能低下を防止することができるという点からも好ましい。
【0026】
本発明のラップフィルムの中間層としては、酸素バリア性能および吸湿性を有し、かつ熱成形可能な熱可塑性樹脂である、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を使用することが好ましい。すなわち、これは、食品を包装するラップフィルムという点から見ると、コストが過大に上昇しないで品質が向上するからである。
【0027】
本発明でエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を中間層に用いる場合は、酸素バリア性能および、製膜安定性を保持するという観点から、EVOH中のエチレン含有量は通常20モル%以上、好ましくは25モル%以上であり、47モル%以下、好ましくは44モル%以下含有されることが望ましい。また、EVOHけん化度は90%以上、好ましくは95モル%以上のものが望ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体けん化物中のエチレン含有量およびけん化度を上記範囲に保つことにより、良好な酸素バリア性を維持できるとともに、共押出性とフィルムの強度とを良好なものにすることができる。
【0028】
エチレン−ビニルアルコール共重合体のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JISK7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.2g/10分以上、好ましくは、0.5〜18g/10分であり、1〜15g/10分であるのがより好ましい。MFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、20g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となると共に、厚みムラや力学強度の低下やバラツキ等が少なくなり好ましい。
【0029】
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂としては、例えばプロピレンの単独重合体、あるいは、プロピレンと「共重合可能な他の単量体」とのランダム共重合体やブロック共重合体などを挙げることができる。このようなポリプロピレン系樹脂を中間層の主成分することで、容器密着性等の各種包装適性を高めることができ、またペレット保管安定性のほか、中間層を構成する樹脂組成物の強度や耐熱性を高めることができる。なお、本発明おいて、「主成分」とは、組成物中の当該成分(ポリプロピレン系樹脂)の含有量が通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上を意味し、当該成分(ポリプロピレン系樹脂)の単独使用の場合(100%含む)を含む(以下、同じ)。
【0030】
この際、共重合可能な他の単量体としては、エチレンや1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン等の炭素数4〜20のα−オレフィンおよびジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエン類等が挙げられるが、これらの二種以上が共重合されていてもよい。
【0031】
容器密着性等の性能を付与するという観点から柔軟性が求められるため、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、およびリアクタータイプのポリプロピレン系エラストマーおよび、プロピレン−エチレン共重合体もしくはプロピレン−α−オレフィン共重合体の中から選ばれる1種または2種類の混合成分を用いるのが好ましい。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂の中から選ばれる1種または2種類の混合成分のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JISK7210、温度:230℃、荷重:21.18N)が、0.2g/10分以上、好ましくは、0.5〜18g/10分であり、1〜15g/10分であるのがより好ましい。MFRが0.2g/10分以上であれば、押出加工性は安定し、20g/10分以下であれば、成形時に安定した製膜が可能となると共に、厚みムラや力学強度の低下やバラツキ等が少なくなり好ましい。
【0033】
上記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば日本ポリプロ(株)の商品名「ノバテックPP」「WINTEC」、住友化学(株)の商品名「ノーブレン」、プライムポリマー(株)の商品名「プライムポリプロ」「プライムTPO」、ダウ・ケミカル(株)の商品名「バーシファイ」等を挙げることができる。
【0034】
内外両方の表面層(以下、単に「表面層」という)は、植物由来ポリエチレン樹脂を含有する表面層形成組成物から形成することができる。
【0035】
表面層は、上記の植物由来ポリエチレン樹脂のほか、防曇剤を配合することによりフィルムの防曇性を高めることができ、また、粘着剤を配合することによりフィルムの密着性をさらに高めることができる。
【0036】
より具体的には、防曇性、帯電防止性、滑り性、粘着性などの性能をさらに向上するために、次のような各種添加剤を適宜配合することができる。例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリンオレート、ポリグリセリンオレート、ポリグリセリンポリリシノレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、グリセリンアセチルラウレート、メチルアセチルリシレート、エチルアセチルリシレート、ブチルアセチルリシレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキレンエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、さらに、パラフィン系オイルなどから選ばれた化合物の少なくとも1種を、各種を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1〜12質量部配合させることができ、好適には1〜8質量部配合させるのが好ましい。
【0037】
表面層および中間層には、本包装フィルムの機能を損なわない範囲で、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、アンチブロッキング剤、光安定剤などの添加剤を適宜配合することができる。
【0038】
本発明のフィルムの性能を阻害しない範囲であれば、表面層の植物由来ポリエチレン樹脂と中間層の層間剥離を防止するために、接着性樹脂層を設けることも可能となる。この接着性樹脂層を構成する接着性樹脂は、一般的に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂等を使用することができる。
【0039】
また、好適な層間接着力と原料コスト面を両立させるために、酸変性ポリオレフィン樹脂と植物由来ポリエチレン樹脂や、石油由来の線状低密度ポリエチレン等を一種または二種以上混合させてもよい。
【0040】
好適な層間接着力と原料コスト面を両立させる混合比率としては、植物由来ポリエチレン/酸変性ポリオレフィン=80〜40/20〜60が好ましく、より好ましくは植物由来ポリエチレン/酸変性ポリオレフィン=30〜50/70〜50である。
上記の比率の範囲内であれば、表面層植物由来ポリエチレン樹脂と中間層ポリアミド樹脂双方との層間接着力が保て、かつ原料コスト面での上昇も抑制することが可能となる。
【0041】
なお、接着層形成組成物には、ラップフィルムの機能を損なわない範囲で、相溶化剤を配合することができるほか、防曇性、帯電防止性、滑り性、粘着性などの性能を付与するために次のような各種添加剤を適宜配合することができる。例えば、炭素数が1〜12、好ましくは1〜6の脂肪族アルコールと、炭素数が10〜22、好ましくは12〜18の脂肪酸との化合物である脂肪族アルコール系脂肪酸エステル、具体的には、モノグリセリンオレート、ポリグリセリンオレート、ポリグリセリンポリリシノレート、グリセリントリリシノレート、グリセリンアセチルリシノレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、ポリグリセリンステアレート、ポリグリセリンラウレート、メチルアセチルリシレート、エチルアセチルリシレート、ブチルアセチルリシレート、プロピレングリコールオレート、プロピレングリコールラウレート、ペンタエリスリトールオレート、ポリエチレングリコールオレート、ポリプロピレングリコールオレート、ソルビタンオレート、ソルビタンラウレート、ポリエチレングリコールソルビタンオレート、ポリエチレングリコールソルビタンラウレート等、ならびに、ポリアルキレンエーテルポリオール、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、さらに、パラフィン系オイル、ポリブテン、テルペン樹脂、石油樹脂などから選ばれた化合物の少なくも1種を、各種を構成する樹脂成分100質量部に対して0.1〜30質量部配合させることができ、好適には3〜25質量部配合させるのが好ましい。
【0042】
接着層の厚みは、その機能から好ましくは0.3〜5μmである。接着層の厚みがかかる範囲内であれば、両表面層と中間層との接着性を発現させることができ、またフィルム成形の際に製膜安定性が得られるため好ましい。中間層の厚み比をより確保したい場合には、より好ましくは0.5〜3μmである。
【0043】
本発明のラップフィルムは、両表面層と、中間層とを備えた積層フィルムであり、少なくとも表面層/中間層/表面層をこの順に有する3層以上の積層フィルムであればよく、力学特性や層間接着性の改良など必要に応じて他の層を適宜導入してもかまわない。また、表面層と中間層の間に接着層や、表面層と中間層の間に再生層を設けることもできる。
【0044】
例えば、表面層Aと同様の組成からなる層A’が、両表面層以外に介在してもかまわないし、また、中間層Bと同様の組成からなる層が、両表面層の間に2層以上介在してもかまわない。具体的には、接着層をC、再生層をDで表すと次のとおりである。
A/C/B/C/Aからなる5層構成のほか、A/C/B/B/C/A、A/D/C/B/C/A、A/C/D/B/C/Aなどからなる6層構成、A/C/B/A’/B/C/A、A/C/B/C/B/C/A、A/D/C/B/C/D/A、A/C/D/B/D/C/Aなどからなる7層構成などを例示することができる。この場合、各層の樹脂組成や厚み比に関しては同一であっても異なってもよい。
【0045】
本発明のラップフィルムにおいては、フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比が5〜50%であることが好ましい。中間層の厚み比がかかる範囲内であれば、前記の動的粘弾性による各特性値(E’、tanδ)を満足するフィルムの設計が容易となり、例えばTダイ法にてフィルムを成形する際、好ましい製膜安定性が得られるほか、ラップフィルムに好適なカット性を発現させるための力学特性や、容器の密着性を発現させるための緩和特性を比較的容易に付与することができる。また、製膜したフィルムを巻いた状態で保管しておいてもブロッキングが生じず、防曇性や容器密着性が良好であり、経時により加水分解による分子量低下が生じ難いことに加えて、各層間の接着性が良好であるラップフィルムとすることができる。
さらに、安定した製膜加工性と柔軟性をより重視する場合には、フィルム全体の厚みに対する中間層の厚み比は10〜40%であるのが好ましく、特に15〜30%であるのがより好ましい。
【0046】
なお、中間層が上記したように2層以上ある場合には、全ての中間層の合計厚みを用いて厚み比を計算すればよい。
【0047】
前述のように、本発明のラップフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、再生層を有することができる。これは、例えば製膜したフィルムの両端をカットしてトリミングした際に発生するトリミングロスについて、接着層に用いた後の余剰分や成形不良品などを用いることができ、材料の無駄を無くし、材料コストの軽減を図ることができる。
【0048】
再生層は、表面層と接着層の間や、中間層と接着層との間に設けることができる。例えば、表面層、中間層、あるいは接着層の構成を2層構成にしておき、一方の層にフィルム両端のトリミングロスをリターンすることによって、表面層と接着層の間、または中間層と接着層との間に再生層を設けることができる。この場合、各層の厚み比や組成比のほか、リターンを含有させる層が表面層、中間層、あるいは接着層のいずれをベースとしているかによって、3成分の混合比が調整できる。
【0049】
本発明のラップフィルムの厚さ(全体)は、ラップフィルムとして用いられる範囲、具体的には6μm〜30μmであればよく、好ましくは8μm〜20μmである。
【0050】
本発明のラップフィルムは、(1)動的粘弾性測定により、周波数10Hz、ひずみ0.1%において測定した20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜4GPaであり、(2)−40〜0℃の損失正接(tanδ)の平均値が0.08以上とする必要がある。
【0051】
上記の(1)〜(2)を全て備えているフィルムであれば、ラップフィルムとして好適に利用することができる。すなわち、貯蔵弾性率(E’)が100MPa未満であると、フィルムが柔らか過ぎて変形に対して応力が小さ過ぎるため、例えば紙箱から引き出してカットする際のカット性が悪くなることがある。その一方、E’が4GPaを超えると、硬くて伸び難いフィルムになり、紙箱から引き出した際の引き出し性が悪くなることがある。また、損失正接(tanδ)の平均値の−40〜0℃の値が0.08以上であれば、低温環境下であってもフィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることがないため、低温環境下での容器への密着性が良好となるので好ましい。
【0052】
なお、tanδ(損失正接)とは、貯蔵弾性率(E’)に対する損失弾性率(E”)の比、すなわち損失正接(tanδ=E”/E’)であり、この値が高い温度領域では、材料の損失弾性率(E”)、すなわち粘弾性特性のうち粘性の寄与率が大きいことを意味している。このtanδのピーク値およびピーク温度を評価することにより、包装時の容器への密着性や包装工程におけるフィルムの応力緩和挙動などを判断する大きな目安となる。
【0053】
上記の条件(1)〜(2)を全て満足するフィルムを作製するには、例えば中間層、表面層、および接着層(場合により再生層)における構成成分の選択(主成分となる樹脂の種類、Tg、成分の配合割合など)、中間層、表面層、および接着層(場合により再生層)の厚み比率、製膜方法、加工条件(例えばフィルム製膜後の熱処理条件など)を適宜バランスよく調整することによって作製することができる。
【0054】
本発明のラップフィルムの製造方法について説明するが、下記製造方法に限定されるものではない。
【0055】
まず、各層の構成原料が混合組成物である場合には、あらかじめ各層の構成原料を混合しておき、必要に応じてペレット化しておくのが好ましい。この際の混合方法としては、例えば、あらかじめ同方向2軸押出機、ニーダー、ヘンシェルミキサー等を用いてプレコンパウンドするようにしても構わないし、また、各原料をドライブレンドして直接フィルム押出機に投入するようにしても構わない。いずれの混合方法においても、原料の分解による分子量の低下を考慮する必要があるが、均一に混合させるためにはプレコンパウンドすることが好ましい。
【0056】
なお、各層の構成原料については上記で説明したとおりであるが、接着層形成樹脂の原料には、ラップフィルムのトリミングロスに酸変性ポリエチレン樹脂を加えるなど成分調整して得られたペレットを用いることが可能である。
【0057】
次に、各層の構成原料を、それぞれ別々の押出機に投入して溶融押出し、Tダイ成形またはインフレーション成形により共押出して積層すればよい。
この際、実用的にはTダイより押出した溶融物をそのまま、キャスティングロールなどで急冷しながら引き取るようにしてフィルムを製膜するのが好ましい。
【0058】
フィルムの耐熱性やカット性を重視する場合には、溶融押出シートを冷却ロールによって冷却固化した後、樹脂の結晶化温度以下に加熱し、ニップロール間の速度差を利用してフィルムの縦方向に1.2〜5.0倍延伸する縦延伸、もしくはフィルムの横方向に1.2〜5.0倍延伸するテンター延伸法を採用するのが好ましい。
【0059】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、逐次二軸延伸法及び、同時二軸延伸するフラット延伸法を採用してもかまわない。
【0060】
延伸温度としては、押出シートの温度を70〜115℃の範囲に設定とすることが好ましく、さらに90〜110℃の範囲とすることが好ましい。延伸温度が範囲内であれば、中間層形成組成物と、表面層の植物由来ポリエチレン樹脂の両方を延伸に好適な弾性率に近づけることができるため好ましい。また、延伸倍率は1.2〜5.0倍の範囲内とすることが好ましく、さらに1.5〜3.0倍の範囲とすることが好ましい。延伸倍率が範囲内であれば、押出シートの破断や白化等のトラブルが生じることなくカット性を向上させることができる。
【0061】
また、生産性および、経済性を重視する場合には、環状ダイから材料樹脂を溶融押出してインフレーション成形するのが好ましい。その際の冷却方法としては、チューブの外面から冷却する方法、チューブの外、内面の両面から冷却する方法のどちらでもよい。
【0062】
このようにして得られたフィルムは、熱収縮率や自然収縮率の軽減、幅収縮の発生の抑制等の目的に応じて、必要に応じて加熱ロール間での縦延伸、各種の熱固定、エージング等の熱処理を行うようにしてもよい。
【0063】
熱処理条件としては、熱処理温度を40〜100℃の範囲に設定することが好ましく、さらに60〜90℃の範囲とすることがより一層好ましい。熱処理温度が40℃以上であれば熱処理の効果を十分に得ることができ、100℃以下であればフィルムがロールにべたつく等の成形性の問題を生じることがない。
【0064】
また、防曇性、帯電防止性、粘着性等を付与、促進させる目的で、コロナ処理や熟成等の処理、さらには、印刷、コーティング等の表面処理や表面加工を行ってもよい。
【0065】
得られたフィルムは、両端をトリミングした後、目的の幅にスリットして製品化することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例および比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるフィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向を縦方向(以下「MD」と記載する場合がある)、その直角方向を横方向(以下「TD」と略する場合がある)と称する
【0067】
(1)E’、tanδ:
JISK−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御(株)製動的粘弾性測定装置「DVA−200」を用い、フィルムの長手方向について、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度1℃/分で−100℃から200℃まで測定し、得られたデータから温度20℃での貯蔵弾性率(E’)、並びに、−40〜0℃での損失正接(tanδ)の平均値の値を求めた。
【0068】
(2)植物度:
ASTMD6866に記載の植物度測定法により、得られたフィルムに使用されている表面層の樹脂の放射性炭素
14Cの含有率測定を実施し、植物度(%)を求めた。
【0069】
(3)密度:
JISK−7112D法に記載の密度勾配管法により、得られたフィルムに使用されている表面層の樹脂の密度(g/cm
3)を求めた。
【0070】
(4)製膜安定性:
フィルムを製膜する際、特にガラス転移温度(Tg)が室温付近である場合には、押出の際にキャスティングロールに貼り付いてしまって、安定した製膜を妨げることがある。
そこで、Tダイ成形法によりフィルムを成形した際、キャスティングの安定性およびロールへの貼り付き度合いを観察し、以下の基準で評価した。
A:極めて安定している
B:安定している
C:不安定である
【0071】
(5)生産安定性:
Tダイ成形法によりフィルムを成形した際に、下記基準にて生産安定性を評価した。
A:生産中、各層の押出時の流動性の違いによる厚みムラや破断などが生じず、安定した生産ができる
B:生産中、各層の押出時の流動性の違いによる厚みムラはあるが、破断などは生じずに製膜できる
C:生産中、各層の押出時の流動性の違いにより厚みムラが顕著であり、破断が頻繁に生じる
【0072】
(6)耐ブロッキング性:
得られたフィルムの巻き物を、温度43℃、相対湿度40%の条件の恒温室内に5日間保管し、その後の表面状態と巻き返し性を観察し、以下の基準で評価した。
A:フィルム同士のブロッキングが全くないレベル
B:フィルム同士のブロッキングが少しあるが実用上問題とならないレベル
C:フィルム同士のブロッキングにより剥離ができず巻き返しが不可となり実用上問題となるレベル
【0073】
(7)容器密着性:
直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器製容器に包装したときの容器への密着性を、以下の基準で評価した。
A:適度に包装できるレベル
B:少し容器形状から広がるが実用上問題ないレベル
C:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となるレベル
【0074】
(8)低温時容器密着性:
低温時での容器への密着性を調査するため、得られたフィルムをー10℃の環境下で24時間保管した後に、直径10cm、深さ5cmの茶碗状の陶磁器製容器に包装し、当該条件での密着性について以下基準で評価した。
A:適度に包装できるレベル
B:少し容器形状から広がるが実用上問題ないレベル
C:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となるレベル
【0075】
(9)小巻替え適性:
ラップフィルムを生産する場合には、生産性を考慮して、最初に長尺の原反として製膜した後、用途に応じて20m、50m、100mなどに巻き替えをしたもの(小巻)を箱に入れて出荷するのが通常である。この巻き替え工程(小巻替え)における適正も、ラップフィルムの生産においては重要である。そこで、製膜したフィルムの巻き替え試験を、200m/min〜600m/minの巻き取りスピードで行い、小巻替え適性を以下の基準で評価した。
A:600m/minの巻き取りスピードでも問題なく小巻替えできる
B:200m/min以上600m/min未満の巻き取りスピードで問題なく小巻替えできる
C:200m/min以上600m/min未満巻き替え途中で、層間剥離およびフィルムの破断が生じる
【0076】
(10)カット性:
製膜したフィルムを金属製鋸刃付きのカートンボックスに入れ、フィルムを引き出してカットし、その際のカットのし易さを以下の基準で評価した。
A:カット時に違和感なく使用できるレベル
B:カット時に多少の抵抗を感じるが実用上問題ないレベル
C:カット時にラップが金属製鋸刃に食い込み、過度の抵抗を感じるレベル
【0077】
実施例1:
表面層形成組成物については、ブラスケム社製線状低密度ポリエチレン「SLL218」(密度:0.918g/cm
3、MFR:2.3g/10分、植物度87%)とポリアミドおよび、ポリエチレン樹脂に接着性のある、酸変性ポリエチレン「アドマー」を選択し、植物由来ポリエチレン樹脂/酸変性ポリエチレン=85/15の比率で混合した。中間層形成組成物については、ポリアミド樹脂として東レ社製ポリアミド6「アミラン」(融点:225℃)を選択した。そして、上記のような表面層形成組成物と、中間層形成組成物とを、各層毎の押出機に投入し溶融混練した後に、溶融した樹脂を合流させ、三層Tダイ温度240℃、ダイギャップ1mmで共押出し、温度30℃に設定したキャストロールにて急冷することで、総厚み10μm(表面層/中間層/表面層=3.75μm/2.5μm/3.75μm)のラップフィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0078】
実施例2:
表面層形成組成物については、植物由来ポリエチレン樹脂としての、ブラスケム社製線状低密度ポリエチレン「SLL218」(密度:0.918g/cm
3、MFR:2.3g/10分、植物度87%)を選択した。中間層形成組成物については、ポリアミド樹脂として東レ社製ポリアミド6「アミラン」(融点:225℃)を選択した。
さらに、接着層形成組成物としては、ブラスケム社製線状低密度ポリエチレン「SLL218」(密度:0.918g/cm
3、MFR:2.3g/10分)とポリアミドおよび、ポリエチレン樹脂に接着性のある、酸変性ポリエチレン「アドマー」を選択し、植物由来ポリエチレン樹脂/酸変性ポリエチレン=50/50の比率で混合した。そして、上記のような表面層形成組成物と、中間層形成組成物と、接着層形成組成物とを、各層毎の押出機に投入し溶融混練した後に、溶融した樹脂を合流させ、五層Tダイ温度240℃、ダイギャップ1mmで共押出し、温度30℃に設定したキャストロールにて急冷することで、総厚み10μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=3.25μm/0.75μm/2.0μm/0.75μm/3.25μm)のラップフィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0079】
実施例3:
実施例2と同様に共押出し、総厚み25μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=8.125μm/1.875μm/5.0μm/1.875μm/8.125μm)の原反フィルムを得た。次いで、ロール延伸により、延伸温度110℃、延伸倍率2.5倍にてMDに一軸延伸した後、70℃で熱処理を行い、厚み10μmのラップフィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0080】
実施例4:
表面層形成組成物の植物由来ポリエチレン樹脂をブラスケム社製線状低密度ポリエチレン樹脂「SLL218」(密度:0.918g/cm
3、MFR:2.3g/10分)とブラスケム社製高密度ポリエチレン樹脂「SGE7252」(密度:0.953g/cm
3、MFR:2.2g/10分、植物度96%)が「SLL218」/「SGE7252」=85/15の比率になるよう混練し、密度が0.923g/cm
3、植物度が88.4%になるように変更した以外は、実施例2と同様にして、総厚み10μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=3.25μm/0.75μm/2.0μm/0.75μm/3.25μm)のラップフィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0081】
比較例1:
表面形成組成物をプライムポリマー社製線状低密度ポリエチレン樹脂「ネオゼックス0234N」(密度:0.919g/cm
3、MFR:2.0g/10分、植物度0%)に変更した以外は、実施例2と同様にして総厚み10μm(表面層/接着層/中間層/接着層/表面層=3.25μm/0.75μm/2.0μm/0.75μm/3.25μm)のラップフィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0082】
比較例2:
接着層用の押出機に、あらかじめ比較例1の中間層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に三層フィルムとした以外は、比較例1と同様にして、総厚み10μm(表面層/中間層/表面層=4.0μm/2.0μm/4.0μm)のラップフィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0083】
比較例3:
比較例1において、接着層および中間層用の押出機に、あらかじめ比較例1の両表面層と同様の組成となるようにプレコンパウンドしたペレットを投入し、実質的に単層フィルムとして総厚み10μmのラップフィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す。
【0084】
比較例4:
比較例3において、投入する原料をダウケミカル社製ポリプロピレン樹脂「バーシファイ」(密度:0.859g/cm
3、MFR:2.0g/10分、植物度0%)に変更した以外は、比較例3と同様にして、単層フィルムとして総厚み10μmのラップフィルムを得た。得られたフィルムを評価した結果を表1に示す
【0085】
【表1】
【0086】
実施例1〜4は、(1)20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa〜4GPaの間、かつ、−40〜0℃の損失正接(tanδ)の平均値の値が0.08以上であり、(2)植物由来ポリエチレン樹脂の植物度が80%以上であり、(3)植物度ポリエチレン樹脂の密度が0.915〜0.925g/cm
3とすることにより、小巻ラップに求められる、カット性や容器密着性、および、低温環境下での容器密着性が良好で、かつ枯渇性資源を有効利用可能な結果を得ることが確認できる。また、実施例1〜4共に品質だけでなく、製造状における製膜安定性、生産安定性、小巻替え適正等も優れていることを確認できる。実施例3はロール延伸にて、延伸倍率2.5倍にてMDに一軸延伸した後サンプルであり、カット性は他の実施例に比べて優れており、特に好ましい態様である。これに対して、比較例1は−40〜0℃における損失正接(tanδ)の平均値が0.08以下であり、低温環境下での容器密着性が劣る結果となった。また、接着性能が無い比較例2は小巻替え適性、容器密着性、低温時の容器密着性、カット性が劣ることが確認できた。また、単層である比較例3は製膜安定性を確保することが可能だが、容器密着性、低温時の容器密着性が劣る結果となった。さらに単層である比較例4は、20℃における貯蔵弾性率(E’)が100MPa以下であるため、耐ブロッキング性及び、カット性が劣る結果となった。