(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱硬化性樹脂として、有機錫化合物、尿素誘導体およびイミダゾール類からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化促進剤をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の裏止め塗料組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
熱硬化性樹脂とは、加熱すると硬化する樹脂を意味する。熱硬化性樹脂を硬化させる硬化剤、熱硬化性樹脂の硬化を促進させる硬化促進剤、および熱硬化性樹脂と反応し得る比較的低分子量の反応性希釈剤は、熱硬化性樹脂に包含される。
分散剤とは、裏止め塗料組成物に顔料を分散させ、かつ分散状態を安定化させうる作用を有する化合物を意味する。
酸基を有さないとは、分子中にカルボキシ基、リン酸基等の酸基を有さないことを意味し、酸基を有さないことは、酸価の有無によって確認できる。
アミン価は、JIS K7237に準拠して測定される値である。
酸価は、JIS K2501に準拠して測定される値である。
反応性シリコーンオイルとは、ジメチルポリシロキサン骨格を有し、かつ側鎖および末端のうちの一方または両方に反応性有機基を導入した変性シリコーンオイルを意味する。
エポキシ基の官能基当量とは、官能基(エポキシ基)の1つあたりのエポキシ変性シリコーンオイルの分子量を意味する。
溶剤とは、熱硬化性樹脂や顔料を溶解または分散させ得るが、他の成分と反応しない化合物を意味する。
裏止め塗料組成物の固形分とは、裏止め塗料組成物から溶剤を除いた成分を意味し、熱硬化性樹脂、その他の樹脂も含む。
数値範囲における「〜」とは、特段の定めがない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0016】
<裏止め塗料組成物>
本発明の裏止め塗料組成物は、鏡の裏面に裏止め塗膜を形成するための裏止め塗料組成物であって、熱硬化性樹脂、顔料、分散剤および反応性シリコーンオイルを含み、必要に応じて溶剤、他の添加剤、他の樹脂等を含んでいてもよい。
【0017】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。本発明の裏止め塗料組成物は、裏止め塗膜とした際に酸に侵食されにくい点から、熱硬化性樹脂の少なくとも一部として、エポキシ樹脂(ただし、エポキシ基を有する反応性シリコーンオイルを除く。)、および該エポキシ樹脂の硬化剤を含むことを特徴とする。
【0018】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アミノ変性エポキシ樹脂(日本特開平3−75006号公報参照)、エステル化されたビスフェノール型エポキシ樹脂(日本特開平5−161531号公報参照)等が挙げられ、耐蝕性、耐久性の点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0019】
硬化剤としては、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。本発明の裏止め塗料組成物は、塗膜の接着性が良好である点から、硬化剤の少なくとも一部として、アミン系硬化剤を含むことを特徴とする。
アミン系硬化剤としては、脂肪族アミン系硬化剤、脂環族アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、ジシアンジアミド系硬化剤、ポリアミドアミン系硬化剤、有機酸ジヒドラジド等が挙げられ、潜在性を有し、加熱によって急速に硬化する点から、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジドまたはポリアミドアミン系硬化剤が好ましく、ジシアンジアミドまたは有機酸ジヒドラジドが特に好ましい。
【0020】
本発明の裏止め塗料組成物は、熱硬化性樹脂の少なくとも一部として、硬化促進剤(硬化触媒)をさらに含んでいてもよい。硬化促進剤としては、有機錫化合物、イミダゾール類、尿素誘導体、3級アミン、オニウム塩等が挙げられ、硬化に必要な温度が低減しうる点から、有機錫化合物、尿素誘導体およびイミダゾール類からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0021】
本発明の裏止め塗料組成物は、裏止め塗料組成物の粘度等を調整する目的で、熱硬化性樹脂の一部として、反応性希釈剤をさらに含んでいてもよい。反応性希釈剤としては、グリシジルエーテル類等の比較的分子量の低いエポキシ化合物が挙げられる。
【0022】
(顔料)
顔料としては、体質顔料、防錆顔料、着色顔料が挙げられる。本発明の裏止め塗料組成物は、塗膜に必要な特性を付与しうる点から、顔料の少なくとも一部として、体質顔料を含むことが好ましい。また、本発明の裏止め塗料組成物は、鏡面としての金属膜を有効に保護する点から、顔料の少なくとも一部として、防錆顔料を含むことが好ましい。
【0023】
体質顔料としては、タルク、硫酸バリウム、マイカ、炭酸カルシウム等が挙げられ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好ましく、タルクまたは硫酸バリウムがより好ましい。
防錆顔料としては、シアナミド亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムマグネシウム、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸バリウム、シアナミド亜鉛カルシウム等が挙げられ、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸バリウムまたはシアナミド亜鉛カルシウムが好ましく、シアナミド亜鉛または酸化亜鉛がより好ましい。
着色顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等が挙げられ、カーボンブラックまたは酸化チタンが好ましく酸化鉄がより好ましい。
【0024】
(分散剤)
分散剤としては、顔料用分散剤等が挙げられる。本発明の裏止め塗料組成物は、分散剤の少なくとも一部として、アミン価が20mgKOH/g以上であり、かつ酸基を有さないアミノ基含有ポリマー(以下、特定のアミノ基含有ポリマーと記す。)を含むことを特徴とする。
【0025】
特定のアミノ基含有ポリマーのアミン価は、20mgKOH/g以上であり、20〜70mgKOH/gがより好ましく、40〜70mgKOH/gが特に好ましい。該アミン価が、20mgKOH/g以上であり、かつ酸基を有さないことによって、酸に侵食されにくい裏止め塗膜を形成できる。また、該アミン価が、70mgKOH/g以下であれば、エポキシ樹脂と付加反応をせず塗膜に残る親水性のアミノ基が低減され、裏止め塗膜の耐水性に悪影響を及ぼさないため好ましい。
【0026】
本発明における特定のアミノ基含有ポリマーが酸基を有さないことが好ましい理由は、以下の通りである。
分散剤は、通常、顔料等の分散性を向上させる目的で用いられることから、分散剤には顔料への特異な吸着作用が必要とされる。したがって、分散剤としては、酸基およびアミノ基の両方を有するものが広く知られている。
一方、本発明における分散剤(特定のアミノ基含有ポリマー)は、顔料への吸着および熱硬化性樹脂との親和性の向上とともに、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)の硬化触媒としての作用も有している。本発明における特定のアミノ基含有ポリマーは、酸基を有しておらず、熱硬化性樹脂の硬化を進行させる点から好ましいものである。
【0027】
特定のアミノ基含有ポリマーとしては、たとえば、BYK社製の下記の分散剤等が挙げられる。それぞれのアミン価および酸価は、括弧内の通りである。
DISPERBYK(登録商標)−116(アミン価:65mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、アクリル系共重合物)、
DISPERBYK(登録商標)−2155(アミン価:48mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、ブロック共重合物)、
DISPERBYK(登録商標)−9077(アミン価:48mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、高分子共重合体)等。
【0028】
分散剤として、特定のアミノ基含有ポリマー以外の他の分散剤を併用してもよい。他の分散剤としては、たとえば、BYK社製の下記の分散剤等が挙げられる。
DISPERBYK(登録商標)−167(アミン価:13mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、ブロック共重合物)、
DISPERBYK(登録商標)−163(アミン価:10mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、ブロック共重合物)、
DISPERBYK(登録商標)−164(アミン価:18mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、ブロック共重合物)、
DISPERBYK(登録商標)−110(アミン価:0mgKOH/g、酸価:53mgKOH/g、酸基を有する共重合物)、
DISPERBYK(登録商標)−106(アミン価:74mgKOH/g、酸価:132mgKOH/g、酸基を有するポリマー塩)、
DISPERBYK(登録商標)−2163(アミン価:10mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、ブロック共重合物)、
DISPERBYK(登録商標)−2164(アミン価:14mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、ブロック共重合物)等。
【0029】
(反応性シリコーンオイル)
反応性シリコーンオイルとしては、アミン変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、脂環式エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、ハイドロジェン変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、ジオール変性シリコーンオイル等が挙げられる。反応性有機基としては、アミノ基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、カルボキシ基、水酸基、水素原子等が挙げられる。
【0030】
本発明の裏止め塗料組成物は、外観が良好で、かつ耐水性に優れた裏止め塗膜を形成できる点から、反応性シリコーンオイルの少なくとも一部として、エポキシ基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有さないエポキシ変性シリコーンオイル(以下、特定のエポキシ変性シリコーンオイルと記す。)を含むことを特徴とする。
反応性シリコーンオイルがエポキシ基を有することによって、熱硬化性樹脂との相溶性がよくなり、外観が良好な裏止め塗膜を形成できる。また、反応性シリコーンオイルが撥水性を有するため、耐水性に優れた裏止め塗膜を形成できる。なお、反応性シリコーンオイルがエポキシ基を有する場合であっても、ポリオキシアルキレン鎖を有する場合、ポリオキシアルキレン鎖が分子構造上有している親水性部位に由来し、外観が良好で、かつ耐水性に優れた裏止め塗膜を形成しにくい。
【0031】
特定のエポキシ変性シリコーンオイルにおける、エポキシ基の官能基当量は、1000g/mol以下が好ましく、200〜700g/molがより好ましい。エポキシ基の官能基当量が1000g/mol以下であれば、特定のエポキシ変性シリコーンオイルの1分子あたりのエポキシ基の数が充分に多くなることから、(i)熱硬化性樹脂との相溶性がさらによくなるため、また(ii)熱硬化性樹脂との反応が充分に起こり、塗膜中に反応性シリコーンオイルが充分に固定されるため、反応性シリコーンオイルのブリードアウトが抑えられる。エポキシ基の官能基当量が200g/mol以上であれば、特定のエポキシ変性シリコーンオイルの1分子あたりのエポキシ基の数が多くなりすぎず、エポキシ樹脂に付加重合しつつ、塗料の表面張力を付与し、塗膜に耐水性を与える点から好ましい。
【0032】
反応性シリコーンオイルとして、特定のエポキシ変性シリコーンオイル以外の他の変性シリコーンオイルを併用してもよい。
なお、外観が良好で、かつ耐水性に優れた裏止め塗膜を形成する点からは、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリエーテル変性シリコーンオイルを含まないことが好ましい。
【0033】
(溶剤)
本発明の裏止め塗料組成物は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルコール類等が挙げられる。なかでも、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類等が好ましい。
【0034】
(他の添加剤)
本発明の裏止め塗料組成物は、分散剤以外の他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、補強材、増粘剤、防錆剤、沈降防止剤、消泡剤、界面活性剤、レオロジーコントロール剤等が挙げられる。
【0035】
(他の樹脂)
本発明の裏止め塗料組成物は、熱硬化性樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、ポリエステル、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ケトン樹脂、ロジン等が挙げられる。
【0036】
(組成比)
本発明の裏止め塗料組成物の固形分濃度は、60〜100質量%が好ましく、70〜90質量%がより好ましい。固形分濃度が60質量%以上であれば、充分な膜厚が得られる。
【0037】
裏止め塗料組成物の固形分(100質量%)のうちの熱硬化性樹脂(硬化剤、硬化促進剤および反応性希釈剤を含む。)の割合は、30〜50質量%が好ましく、35〜45質量%がより好ましい。熱硬化性樹脂の割合が30質量%以上であれば、製膜性が良好となり、充分な塗膜の硬度および密着性が得られる。熱硬化性樹脂の割合が50質量%以下であれば、防錆顔料等の機能性顔料の割合が増え、塗膜の耐酸性等が向上する。
【0038】
裏止め塗料組成物の固形分(100質量%)のうちの顔料の割合は、50〜70質量%が好ましく、52〜68質量%がより好ましい。顔料の割合が50質量%以上であれば、塗膜の耐酸性等が向上する。顔料の割合が70質量%以下であれば、造膜成分である樹脂成分が増え、充分な塗膜の硬度および密着性が得られる。
【0039】
裏止め塗料組成物の固形分(100質量%)のうちの分散剤の割合は、1〜13質量%が好ましく、1.2〜11質量%がより好ましい。分散剤の割合が1質量%以上であれば、分散剤の効果が充分に得られる。分散剤の割合が13質量%以下であれば、分散剤同士の架橋が進むことによる裏止め塗料組成物の流動性の低下が抑えられる。その結果、形成される塗膜の外観がさらに良好になる。
【0040】
裏止め塗料組成物の固形分(100質量%)のうちの反応性シリコーンオイルの割合は、0.001〜0.5質量%が好ましく、0.002〜0.4質量%がより好ましい。反応性シリコーンオイルの割合が0.001質量%以上であれば、反応性シリコーンオイルの効果が充分に得られる。反応性シリコーンオイルの割合が0.5質量%以下であれば、塗料の表面張力を低減し、良好な塗膜面を形成できる点から好ましい。
【0041】
熱硬化性樹脂(硬化剤、硬化促進剤および反応性希釈剤を含む。)(100質量%)のうちのエポキシ樹脂の割合は、70〜90質量%が好ましく、80〜88質量%がより好ましい。エポキシ樹脂の割合が70質量%以上であれば、塗膜の耐酸性がさらに向上する。エポキシ樹脂の割合が90質量%以下であれば、充分な硬化剤、硬化促進剤との配合比率となり、緻密な塗膜を形成できるため好ましい。
【0042】
熱硬化性樹脂(硬化剤、硬化促進剤および反応性希釈剤を含む。)(100質量%)のうちのアミン系硬化剤の割合は、5〜12質量%が好ましく、7〜10質量%がより好ましい。アミン系硬化剤の割合が5質量%以上であれば、塗膜の接着性がさらに向上する。アミン系硬化剤の割合が12質量%以下であれば、塗膜の外観が向上する。また、塗膜に残る未反応の硬化剤が低減され、耐酸性が向上する。
【0043】
熱硬化性樹脂(硬化剤、硬化促進剤および反応性希釈剤を含む。)(100質量%)のうちの硬化促進剤の割合は、3〜6質量%が好ましく、3.5〜5.5質量%がより好ましい。硬化促進剤の割合が3質量%以上であれば、充分な硬化促進が生じ、緻密な塗膜を形成できる。硬化促進剤の割合が6質量%以下であれば、塗膜に残る未反応の硬化促進剤が低減でき、耐酸性が向上する。
【0044】
顔料(100質量%)のうちの体質顔料の割合は、48〜68質量%が好ましく、53〜63質量%がより好ましい。体質顔料の割合が48質量%以上であれば、裏止め塗料組成物の流動性の低下が抑えられる。体質顔料の割合が68質量%以下であれば、他の防錆顔料が増え、塗膜の耐酸性等が向上する。
【0045】
顔料(100質量%)のうちの防錆顔料の割合は、24〜44質量%が好ましく、29〜39質量%がより好ましい。防錆顔料の割合が24質量%以上であれば、充分な防錆効果が得られる。防錆顔料の割合が44質量%以下であれば、裏止め塗料組成物の流動性の低下が抑えられる。
【0046】
分散剤(100質量%)のうちの特定のアミノ基含有ポリマーの割合は、20〜100質量%が好ましく、30〜100質量%がより好ましく、100質量%が特に好ましい。特定のアミノ基含有ポリマーの割合が20質量%以上であれば、熱硬化性樹脂の硬化触媒として充分な効果が得られる。
【0047】
反応性シリコーンオイル(100質量%)のうちの特定のエポキシ変性シリコーンオイルの割合は、20〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、100質量%が特に好ましい。特定のエポキシ変性シリコーンオイルの割合が20質量%以上であれば、エポキシ変性シリコーンオイルの効果が充分に得られる。
【0048】
(作用効果)
以上説明した本発明の裏止め塗料組成物にあっては、分散剤として、アミン価が20mgKOH/g以上であり、かつ酸基を有さないアミノ基含有ポリマーを含むため、酸に侵食されにくい裏止め塗膜を形成できる。また、反応性シリコーンオイルとして、エポキシ基を有し、ポリオキシアルキレン鎖を有さないエポキシ変性シリコーンオイルを含むため、外観が良好で、かつ耐水性に優れた裏止め塗膜を形成できる。
【0049】
<鏡>
図1は、本発明の鏡の第1の実施形態を示す断面図である。鏡10は、ガラス基板11と、ガラス基板11上に形成された銀鏡面膜12(金属膜)と、銀鏡面膜12上に形成された金属保護膜13(金属膜)と、金属保護膜13上に形成された裏止め塗膜14とを有する。
【0050】
図2は、本発明の鏡の第2の実施形態を示す断面図である。鏡10は、ガラス基板11と、ガラス基板11上に形成された銀鏡面膜12(金属膜)と、銀鏡面膜12上に形成された裏止め塗膜14とを有する。
【0051】
(ガラス基板)
ガラス基板としては、鏡用の公知のガラスを用いることができ、たとえば、ソーダライムガラス等が挙げられる。
【0052】
(銀鏡面膜)
銀鏡面膜の形成方法としては、無電解メッキ法、真空蒸着法、スパッタ法等が挙げられる。
銀鏡面膜としては、銀鏡面膜が0.5〜2g/m
2の範囲、好ましくは0.6〜1.5g/m
2となるような膜厚となることが好ましい。
【0053】
(金属保護膜)
金属保護膜は、銀鏡面膜の防食のために形成される金属製の膜である。金属保護膜としては、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、錫、錫合金等からなる金属保護膜が挙げられ、通常は、銅保護膜が好ましい。
金属保護膜の形成方法としては、無電解メッキ法等が挙げられる。
金属保護膜としては、金属保護膜が0.1〜1g/m
2の範囲、好ましくは0.2〜0.8g/m
2となるような膜厚となることが好ましい。
【0054】
本発明の鏡は、異なる金属からなる2層以上の金属保護膜を有していてもよい。
また、本発明の鏡は、本発明の裏止め塗料組成物を用いて形成された、酸に侵食されにくい裏止め塗膜を有するため、
図2に示すように、金属保護膜を有さなくてもよい。
【0055】
(裏止め塗膜)
裏止め塗膜は、銀鏡面膜および金属保護膜の防食、ならびに機械的耐久性向上のために形成される膜である。
裏止め塗膜は、金属膜(銀鏡面膜または金属保護膜)の表面に本発明の裏止め塗料組成物を塗布し、熱硬化させることによって形成される。
【0056】
裏止め塗料組成物の塗布は、刷毛、ローラ、スプレー、フローコータ、アプリケータ等を用いて実施でき、フローコータ、ロールコータ等が好ましい。
裏止め塗料組成物の塗布量は、乾燥膜厚が30〜100μm、好ましくは30〜60μmとなるように行う。
裏止め塗料組成物の熱硬化の際の温度は、通常、常温〜250℃、好ましくは150〜180℃である。
【0057】
(作用効果)
以上説明した本発明の鏡にあっては、本発明の裏止め塗料組成物を用いて形成された裏止め塗膜を有するため、耐酸性、裏面の外観、および耐水性に優れる。
具体的には、(a)切断した本発明の鏡を20℃の10質量%塩酸(試薬1級)に48時間浸漬した後における、金属膜の切断断面からの剥離が5mm以下となるような耐酸性を有する。また、(b)切断した本発明の鏡を、温度60℃相対湿度95%の雰囲気下に8時間静置するステップと、温度25℃相対湿度60%の雰囲気下に16時間静置するステップとからなるサイクルを40回繰り返した後における、金属膜の切断断面からの剥離が5mm以下となるような耐水性を有する。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定して解釈されるものではない。
例2〜9、11〜16、21、および28〜32は実施例であり、例1、10、17〜20、および22〜27は比較例である。
【0059】
(例1)
表1の例1の欄に示す組成比となるように、各原料をペイントシェーカー(Paintshaker)に量り取り、15分間シェイクし、裏止め塗料組成物を調製した。
【0060】
充分に洗浄されたガラス基板(サイズ90mm×40mm×5mm)の表面に、硝酸銀を含む溶液(銀濃度0.08mol/Lの水溶液)と、銀を還元させる還元液(アルデヒド基を含む化合物の溶液)とからなる銀メッキ液をスプレーし、銀鏡反応によって銀を析出させて、銀鏡面膜が1.0g/m
2となるような膜を形成した。
銀鏡面膜の表面を水洗した後、該表面に、硫酸銅を含む溶液(硫酸銅濃度0.15mol/Lの水溶液)と銅を還元させる還元液(卑金属粉末の懸濁液)とからなる銅メッキ液をスプレーし、無電解メッキ法によって銅を析出させて、銅保護膜が0.3g/m
2となるような膜を形成した。
銅保護膜の表面を水洗し、乾燥した後、ガラス基板の温度を常温とした。
銅保護膜の表面に、前記裏止め塗料組成物をフローコート法によって乾燥膜厚が55μmとなるよう塗布し、乾燥炉にてガラス基板の温度が135℃になるよう3分間加熱して裏止め塗膜を形成し、鏡(銅保護膜あり)を得た。
【0061】
充分に洗浄されたガラス基板(サイズ90mm×40mm×5mm)の表面に、硝酸銀を含む溶液(銀濃度0.08mol/Lの水溶液)と銀を還元させる還元液(アルデヒド基を含む化合物の溶液)とからなる銀メッキ液をスプレーし、銀鏡反応によって銀を析出させて、銀鏡面膜が1.0g/m
2となるような膜を形成した。
銀鏡面膜の表面を水洗し、乾燥した後、ガラス基板の温度を常温とした。
銀鏡面膜の表面に、前記裏止め塗料組成物をフローコート法によって乾燥膜厚が55μmとなるよう塗布し、乾燥炉にてガラス基板の温度が135℃になるよう3分間加熱して裏止め塗膜を形成し、鏡(銅保護膜なし)を得た。
【0062】
(例2〜32)
表1〜6の例2〜32の欄に示す組成比となるように、各原料を用意し、各欄記載の組成を有する裏止め塗料組成物をそれぞれ調製した。
裏止め塗料組成物を変更した以外は、例1と同様にして、鏡(銅保護膜ありおよび銅保護膜なし)を得た。
【0063】
(評価)
例1〜32の鏡について、塗膜外観の評価結果、塩酸試験の結果、および水蒸気サイクル試験の結果を、それぞれ表1〜6に示す。
評価方法は、下記のとおりである。
【0064】
(塗膜外観)
裏止め塗膜を目視にて観察し、下記の基準にて評価した。
合格:下記の不合格以外のもの。
不合格:円形状の凹みが顕著であり、凹みの直径が1mm以上の欠陥として認識できるもの。
【0065】
(塩酸試験)
サイズ90mm×40mmの鏡を、サイズ45mm×40mmの鏡が得られるように2つに切断した。切断した鏡を20℃の0.5質量%塩酸(試薬1級)に48時間浸漬した後、取り出して下記の基準にて評価した。
合格:銀鏡面膜に異常がなく、かつ切断断面からの侵食による金属膜の剥離が5mm以下である。
不合格:銀鏡面膜に異常がある、または、切断断面からの侵食による金属膜の剥離が5mmを超える。
【0066】
(水蒸気サイクル試験)
サイズ90mm×40mmの鏡を、サイズ45mm×40mmの鏡が得られるように2つに切断した。切断した鏡を、温度60℃相対湿度95%の雰囲気下に8時間静置するステップと、温度25℃相対湿度60%の雰囲気下に16時間静置するステップとからなるサイクルを繰り返し行った。切断断面からの侵食による金属膜の剥離が5mmを超えた時点で試験を中止し、金属膜の剥離が5mm以下を維持できたサイクル数を記録した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
*1:分散剤の略号の後ろの括弧内の数値は、左側がアミン価、右側が酸価である。
*2:反応性シリコーンオイルの略号の後ろの括弧内の数値は、エポキシ官能基当量(g/mol)であり、括弧内の「有」または「無」は、ポリオキシアルキレン鎖の有無である。
【0074】
表中の略号および化合物は、下記の通りである。
MIBK:メチルイソブチルケトン。
jER828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン社製、jER828。
DICY:ジシアンジアミド、SKW Trostberg AG社製、Dyhard(登録商標)100SF。
SDH:セバチン酸ジヒドラジド、日本ファインケミカル社製。
ADH:アジピン酸ジヒドラジド、日本ファインケミカル社製。
DY−T:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、Ciba Specialty Chemicals社製、Araldite(登録商標)DY−T。
DBTDL:ジブチル錫ジラウレート。
UR500:尿素系硬化促進剤、SKW Trostberg AG社製、Dyhard(登録商標)UR500。
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール、四国化成社製。
IBMI−12:1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、四国化成社製。
【0075】
BYK116:BYK社製、DISPERBYK(登録商標)−116(アミン価:65mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、アクリル系共重合物)。
BYK2163:BYK社製、DISPERBYK(登録商標)−2163(アミン価:10mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、ブロック共重合物)。
BYK2155:BYK社製、DISPERBYK(登録商標)−2155(アミン価:48mgKOH/g、酸価:0mgKOH/g、ブロック共重合物)。
BYK110:BYK社製、DISPERBYK(登録商標)−110(アミン価:0mgKOH/g、酸価:53mgKOH/g、酸基を有する共重合物)。
BYK106:BYK社製、DISPERBYK(登録商標)−106(アミン価:74mgKOH/g、酸価:132mgKOH/g、酸基を有するポリマー塩)。
【0076】
シアナミド亜鉛カルシウム:キクチカラー社製、ZK−S2。
タルク:日本タルク社製、SG−95。
硫酸バリウム:竹原化学工業社製、W−10。
酸化チタン:堺化学工業社製、R−650。
カーボンブラック:シグマアルドリッチジャパン社製、CPカーボンブラック。
【0077】
X−22−2000:信越化学工業社製、X−22−2000(エポキシ基の官能基当量:620g/mol、エポキシ変性シリコーンオイル)。
X−22−4741:信越化学工業社製、X−22−4741(エポキシ基の官能基当量:2500g/mol、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリオキシアルキレン鎖あり)。
KF−101:信越化学工業社製、KF−101(エポキシ基の官能基当量:350g/mol、エポキシ変性シリコーンオイル)。
KF−105:信越化学工業社製、KF−105(エポキシ基の官能基当量:490g/mol、エポキシ変性シリコーンオイル)。
【0078】
例2〜9、11〜16、21、および28〜32(実施例)の鏡は、裏止め塗料組成物が特定のアミノ基含有ポリマーを含み、かつ特定の反応性シリコーンオイルを含むため、耐酸性に優れ、かつ塗膜外観および耐水性が良好であった。
例1、10、17〜20、および22〜27(比較例)の鏡においては、裏止め塗料組成物が特定のアミノ基含有ポリマーを含まない場合は、耐酸性に劣り、裏止め塗料組成物が特定の反応性シリコーンオイルを含まない場合は、塗膜外観および耐水性に劣る傾向が見られた。