特許第6237850号(P6237850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237850
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】トナー用ポリエステル樹脂
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20171120BHJP
   C08G 63/668 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G03G9/08 331
   C08G63/668
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-182472(P2016-182472)
(22)【出願日】2016年9月20日
(62)【分割の表示】特願2012-133743(P2012-133743)の分割
【原出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2017-27071(P2017-27071A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小澤 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】安齋 竜一
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 諭
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 将
【審査官】 後藤 亮治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−511688(JP,A)
【文献】 特開2008−239744(JP,A)
【文献】 特開2007−213043(JP,A)
【文献】 特開2010−285555(JP,A)
【文献】 特開2011−180591(JP,A)
【文献】 特開2012−107228(JP,A)
【文献】 特開2011−227221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08 − 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表される構造単位と、ビスフェノールA誘導体由来の構造単位とを有する、ガラス転移温度が75℃以下のポリエステル樹脂からなるトナー材料。
【化1】
【請求項2】
前記一般式(1)で表される構造単位を、多価カルボン酸由来の構成単位100モル部に対して、1〜40モル部含有する、請求項に記載のトナー材料。
【請求項3】
ビスフェノールA誘導体由来の構造単位を多価カルボン酸由来の構成単位100モル部に対して、5〜70モル部含有する、請求項1又は2に記載のトナー材料。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のトナー材料を含有するトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー用ポリエステル樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真印刷法および静電荷現像法により画像を得る方法においては、感光体上に形成された静電荷像をあらかじめ摩擦により帯電させたトナーによって現像したのち、定着が行われる。定着方式については、現像によって得られたトナー像を加圧および加熱されたローラーを用いて定着するヒートローラー方式と、電気オーブンまたはフラッシュビーム光を用いて定着する非接触定着方式とがある。これらのプロセスを問題なく通過するためには、トナーは、まず安定した帯電量を保持することが必要であり、次に紙への定着性が良好である必要がある。また、装置は加熱体である定着部を有し、装置内での温度が上昇するため、トナーがブロッキングしないことが必要である。さらに、トナー製造時の樹脂の粉砕性が良好であることが求められている。
【0003】
また、近年のプリンターの高速化、小型化、省エネルギー化等の要求に対し、ヒートローラー方式の定着部の低温化が進んできた。そのため、トナーにはより低い温度で紙に定着する性能が求められ、低温での流動性の向上も求められている。
【0004】
例えば特許文献1には、3価以上のモノマーを共重合させた、粉砕性に優れたトナー用ポリエステル樹脂が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、エリスリタンを共重合させた、耐熱性と透明度に優れたポリエステル樹脂が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−250443
【特許文献2】特開2008−239744
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のトナー用ポリエステル樹脂は、低温での流動性が不十分であった。
【0008】
また、特許文献2に記載のポリエステル樹脂は、トナー用に用いた場合、低温流動性と粉砕性が不十分であった。
【0009】
本発明の目的は、この問題点を解決し、低温流動性、保存性、粉砕性に優れたトナー用ポリエステル樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は、下記の一般式(1)で表される構造単位を有する、ガラス転移温度が75℃以下の、リエステル樹脂からなるトナー材料にある。
【0011】
【化1】
【発明の効果】
【0012】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂を用いることによって、低温流動性、保存性、粉砕性に優れるトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、下記の一般式(1)で表される構造単位を有する。
【0014】
【化1】
【0015】
本発明において、前記一般式(1)で表される構造単位を有するポリエステルは、エリスリタンを含む多価アルコールと、多価カルボン酸を重縮合すればよい。
【0016】
エリスリタンは、天然の多糖類であるエリスリトールの分子内脱水反応によって合成される5員環構造のジオール化合物である。
【0017】
前記一般式(1)で表される構造単位を有することで、本発明のポリエステル樹脂を用いたトナーの粉砕性が向上する。
【0018】
また、本発明では、前記一般式(1)で表される構造単位を、多価カルボン酸由来の構成単位100モル部に対して、1〜40モル部含有することが好ましい。前記一般式(1)で表される構造単位を、多価カルボン酸由来の構成単位100モル部に対して、1モル部以上含むと粉砕性が良好となり、40モル部以下であれば低温流動性が良好となる。
【0019】
粉砕性の点から5モル部以上が好ましく、低温流動性の点から30モル部以下が好ましい。
【0020】
なお、本発明のトナー用ポリエステル樹脂に含まれる一般式(1)で表される構造単位の含有量は、1H−NMR(核磁気共鳴装置)、13C−NMR測定にてスペクトルの積分比から共重合体組成より決定することができる。とくに2種類の核プローブを用いることで、精度の高い分析が可能となる。
【0021】
また、本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、さらにビスフェノールA誘導体由来の構造単位を有することが好ましい。ビスフェノールA誘導体を構成単位として含有することにより、耐ブロッキング性、耐久性が向上する
なお、ビスフェノールA誘導体としては、たとえば、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0022】
また本発明では、ビスフェノールA誘導体由来の構造単位を多価カルボン酸由来の構成単位100モル部に対して、5〜70モル部含有することが好ましい。5モル部以上であればトナーの定着強度が良好となり、70モル部以下であれば重合時の熱分解を防ぐことができる。
【0023】
なお、ビスフェノールA誘導体由来の構造単位の樹脂中の含有量は、前記の一般式(1)で表される構造単位の含有量と同様にして決定できる。
【0024】
さらに本発明のトナー用ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、75℃以下である。Tgが75℃以下であれば、低温流動性、粉砕性、保存性が良好となる。保存性の点から45℃以上が好ましく、低温定着性の点から73℃以下が好ましい。
【0025】
また、本発明のトナー用ポリエステル樹脂の軟化温度は、80〜140℃が好ましい。軟化温度が80℃以上であればトナーの保存性が良好となり、140℃以下であれば低温流動性が良好となる。
【0026】
さらに本発明のトナー用ポリエステル樹脂の酸価は、1〜50mgKOH/gが好ましい。酸価が1mgKOH/g以上であれば帯電性が良好となり、50mgKOH/g以下であれば、吸湿を抑制できる。
【0027】
また、本発明のトナー用ポリエステル樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるピーク分子量(Mp)は、500〜9000が好ましい。Mpが500以上であれば保存性が良好となり、9000以下であれば低温流動性と粉砕性が良好となる。
【0028】
次に本発明のトナー用ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
【0029】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂は、エリスリタンを含む多価アルコールと多価カルボン酸との混合物を公知の方法で重縮合して製造できる。
【0030】
前記エリスリタンは多価カルボン酸100モル部に対して1〜50モル部含有することが好ましい。前記エリスリタンを、多価カルボン酸100モル部に対して1モル部以上含むと粉砕性が良好となり、40モル部以下含むと低温流動性が良好となる。粉砕性の点から10モル部以上が好ましく、低温流動性の点から30モル部以下が好ましい。
【0031】
さらに本発明では、多価アルコールとして、ビスフェノールA誘導体を含むことが好ましい。ビスフェノールA誘導体としては、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0032】
前記ビスフェノールA誘導体は、多価カルボン酸100モル部に対して5〜70モル部含有することが好ましい。5モル部以上であればトナーの定着強度が良好となり、70モル部以下であれば重合時の熱分解を防ぐことができる。
【0033】
また、本発明に使用できる上記以外の多価アルコールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、D−イソソルバイド、L−イソソルバイド、イソマンニド、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサテトラロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0034】
これらの中で、低温流動性、保存性と粉砕性を維持できるという点から、エチレングリコール、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0035】
これらの多価アルコールは単独でも2種類以上混合して用いてもよい。
【0036】
上記多価アルコールの合計量は、ガラス転移温度(Tg)と軟化温度(T4)のバランスの観点より、多価カルボン酸100モル部に対して、150モル部以下が好ましく、60モル部以上、140モル部以下がより好ましく、70モル部以上、130モル部がさらに好ましく、80モル部以上、120モル部以下が特に好ましい。
【0037】
この含有量が80モル部以上の場合に、ポリエステル樹脂の製造安定性が良好となる傾向にある。また120モル部以下の場合に、T4に対してTgが高くなりやすく保存性が良好となる傾向にある。
【0038】
本発明に使用できる、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジブチル、イソフタル酸ジブチル等の二価のカルボン酸、またはこれらのエステルもしくは酸無水物、フタル酸、セバシン酸、イソデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、またはこれらのエステルもしくは酸無水物等の脂肪族ジカルボン酸等。トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、またはこれらのエステルもしくは酸無水物等。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、末端官能基数の調整や他のトナー用材料の分散性向上目的で、1価のカルボン酸またはアルコールを使用することもできる。
1価のカルボン酸化合物としては、安息香酸、p−メチル安息香酸等の炭素数30以下の芳香族カルボン酸や、ステアリン酸、ベヘン酸等の炭素数30以下の脂肪族カルボン酸等や、桂皮酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和二重結合を分子内に一つ以上有する不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0040】
また、1価のアルコール化合物としては、ベンジルアルコール等の炭素数30以下の芳香族アルコールや、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の炭素数30以下の脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0041】
ポリエステル樹脂の重合に際しては、例えば、チタンテトラブトキシド等のチタン系触媒、ジブチルスズオキシド、酢酸スズ、2硫化スズ等のスズ系触媒、酢酸亜鉛、3酸化アンチモン、2酸化ゲルマニウム等の触媒を用いることができる。環境負荷低減の観点より、チタン系触媒が好ましい。
【0042】
重合温度は、180℃〜280℃の範囲が好ましい。重合温度が180℃以上の場合に、生産性が良好となる傾向にあり、280℃以下の場合に、樹脂の分解や、臭気の要因となる揮発分の副生成を抑制できる傾向にある。重合温度の下限値は200℃以上がより好ましく、上限値は270℃以下がより好ましい。
【0043】
また、得られるポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)を決定する方法としては、反応中に樹脂をサンプリングしてTg測定を行い所定のTgになった時点で重合を終了させればよい。なお、重合を終了させるとは、反応装置の攪拌を停止し、装置内部を常圧とし、窒素により装置内部を加圧して装置下部より反応物を取り出して100℃以下に冷却することをいう。
【0044】
さらに本発明においては、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で上記の成分とともに離型剤成分を添加してポリエステル樹脂を重合することもできる。離型剤成分を添加して重合することにより、トナーの定着性、ワックス分散性が向上する傾向にある。
【0045】
また、ポリエステル樹脂の重合安定性を得る目的で、安定剤を添加してもよい。安定剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ヒンダードフェノール化合物などが挙げられる。
【0046】
次に、本発明のポリエステル樹脂を用いたトナーについて説明する。本発明のトナーは、本発明のポリエステル樹脂と公知の着色剤、荷電制御剤、離型剤、流動改質剤等の添加剤、磁性体等を配合して得られる。
【0047】
着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染料、顔料などを挙げることができる。着色剤の含有量は、特に制限されないが、トナーの色調や画像濃度、熱特性の点から、トナー中2〜10質量%であることが好ましい。
【0048】
荷電制御剤としては、正帯電制御剤として4級アンモニウム塩や、塩基性もしくは電子供与性の有機物質等が挙げられ、負帯電制御剤として金属キレート類、含金属染料、酸性もしくは電子求引性の有機物質等が挙げられる。カラートナーの場合、帯電制御剤が無色ないし淡色で、トナーへの色調障害がないことが好ましく、サリチル酸またはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等との金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物等が挙げられる。さらに、スチレン系、アクリル酸系、メタクリル酸系、スルホン酸基を有するビニル重合体を荷電制御剤として用いてもよい。
【0049】
荷電制御剤の含有量は、トナー中0.5〜5質量%が好ましい。荷電制御剤の含有量が0.5質量%以上の場合にトナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり、5質量%以下の場合に荷電制御剤の凝集による帯電量の低下が抑制される傾向にある。
【0050】
離型剤としては、トナーの離型性、保存性、定着性、発色性等を考慮して、カルナバワックス、ライスワックス、蜜蝋、ポリプロピレン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、合成エステル系ワックス、パラフィンワックス、脂肪酸アミド、シリコーン系ワックス等を適宜選択して使用できる。離型剤の含有量は特に制限されないが、トナー中0.3〜15質量%であることが好ましい。
【0051】
その他の添加剤として、微粉末のシリカ、アルミナ、チタニア等の流動性向上剤、マグネタイト、フェライト、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、導電性チタニア等の無機微粉末、スチレン樹脂、アクリル樹脂などの抵抗調節剤、滑剤などが挙げられる。トナー中の、これらの添加剤の含有量は0.05〜10質量%が好ましい。
【0052】
さらにバインダー樹脂として、本発明のポリエステル樹脂以外のバインダー樹脂を用いてもよく、例えば、本発明のポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、環状オレフィン樹脂、メタクリル酸系樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができ、2種以上を混合して使用することができる。
【0053】
また本発明のトナーは、磁性1成分現像剤、非磁性1成分現像剤、2成分現像剤の何れの現像剤としても使用できる。
【0054】
本発明のトナー用ポリエステル樹脂を含有するトナーは、公知の方法で製造できる。たとえば、前述のバインダー樹脂および配合物を混合した後、2軸押出機などで溶融混練し、粗粉砕、微粉砕、分級を行い、必要に応じて無機粒子の外添処理等を行って製造する方法(粉砕法)、前述のバインダー樹脂および配合物を溶剤に溶解・分散させ、水系媒体中にて造粒したのち溶剤を除去し、洗浄、乾燥してトナー粒子を得て、必要に応じて無機粒子の外添処理等を行って製造する方法(ケミカル法)等が挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳しく説明する。また、評価は以下の方法で行った。
【0056】
<ガラス転移温度(Tg)>
示差走差熱量計(島津製作所製DSC−60)を用いて、昇温速度5℃/minにおけるチャートのベースラインと吸熱カーブの接線との交点から測定した。測定試料は10mg±0.5mgをアルミパン内に計量し、ガラス転移温度以上の100℃で10分融解後、ドライアイスを用いて急冷却処理したサンプルを用いて行った。
【0057】
<軟化温度(T4)>
フローテスター(島津製作所社製CFT−500D)を用いて、1mmφ×10mmのノズル、荷重294N、昇温速度3℃/minの等速昇温下で、樹脂サンプル1.0g中の4mmが流出したときの温度を測定した。
【0058】
<酸価(AV)>
サンプル約0.2gを枝付き三角フラスコ内に精秤し(A(g))、ベンジルアルコール10mlを加え、窒素雰囲気下として230℃のヒーターにて15分加熱し樹脂を溶解した。室温まで放冷後、ベンジルアルコール10ml、クロロホルム20ml、フェノールフタレイン溶液数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定した(滴定量=B(ml)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(ml))、以下の式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)=(B−C)×0.02×56.11×p÷A
<分子量:ピーク分子量(Mp)、質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)>GPC法により、得られた溶出曲線のピーク値に相当する保持時間から、ピーク分子量(Mp)を標準ポリスチレン換算により求めた。なお、溶出曲線のピーク値とは、溶出曲線が極大を示す点であり、極大値が2点以上ある場合は、溶出曲線が最大値を与える点のことである。
装置:東洋ソーダ工業(株)製、HLC8020
カラム:東洋ソーダ工業(株)製、TSKgelGMHXL(カラムサイズ:7.8mm(ID)×30.0cm(L))を3本直列に連結
オーブン温度:40℃
溶離液:THF
試料濃度:4mg/10mL
濾過条件:0.45μmテフロン(登録商標)メンブレンフィルターで試料溶液を濾過
流速:1mL/分
注入量:0.1mL
検出器:RI
検量線作成用標準ポリスチレン試料:東洋ソーダ工業(株)製TSK standard
、A−500(分子量5.0×10)、A−2500(分子量2.74×10)、F−2(分子量1.96×10)、F−20(分子量1.9×10)、F−40(分子量3.55×10)、F−80(分子量7.06×10)、F−128(分子量1.09×10)、F−288(分子量2.89×10)、F−700(分子量6.77×10)、F−2000(分子量2.0×10)。
【0059】
<ポリエステル樹脂の構成単位の組成分析>
超伝導核磁気共鳴装置を用いて分析を行った。
装置:日本電子製 Excalibur 270 超伝導FT−NMR
マグネット:JNM−GSX270型 超伝導マグネット
スペクトロメーター:JNM−EX270型
観測周波数:1H 270MHz、13C 67MHz
溶媒:重クロロホルム溶液
温度:35℃
積算回数:1H:16回、13C:1024回
1 H−NMR、13−NMRを測定し、各構成単位由来の帰属ピークの積分比からポリ
カルボン酸、ポリオールの割合を求めた。
【0060】
1 H−NMRの帰属ピーク範囲
テレフタル酸構造由来:8.0〜8.1ppm
フマル酸構造由来:6.8〜6.9ppm
エチレングリコール構造由来:4.0〜5.0ppm
エリスリタン構造由来:3.9〜4.2ppm、5.2ppm〜5.7ppm
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物構造由来:4.2〜4.3、4.6〜4.7、6.8〜6.9、7.1〜7.2ppm
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.3モル付加物構造由来:1.5〜1.6、4.6〜4.7、5.6〜5.7、6.8〜6.9、7.1〜7.2ppm
13 C−NMRの帰属ピーク範囲
テレフタル酸構造のカルボニル炭素由来:165.4〜165.6ppm
テレフタル酸構造のベンゼン環炭素由来:129.5〜133.8ppm
フマル酸構造のカルボニル炭素由来:165.4〜165.6ppm
フマル酸構造の(−C=C−)炭素由来:133.4〜133.8ppm
エチレングリコール構造由来:63.0〜63.1ppm
エリスリタン構造の由来:
{−(C=O)−O−CH−}:7.4〜7.5ppm
(−CH2−O−):7.0ppm〜7.1ppm
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物構造由来:
(−O−CH2−CH2−O−):6.8〜6.9ppm
(−O−C6H4−O−):114.1、127.7、143.6、156.2ppm
(−C(CH3)2−):31.1、41.8ppm
なお、NMRスペクトルにおける各吸収の帰属は、化学領域増刊141号 NMR−総説と実験ガイド[I]、p.132〜133に準じて行なった。
【0061】
<低温流動性>
低温流動性は回転型レオメーター(TAインスツルメント社製、AR−2000ex)を用いて評価した。
ジオメトリー:25mmφパラレルプレート
GAP:1mm
周波数:1Hz
ひずみ:0.01
測定温度:80〜240℃(3℃/minで昇温)
トナーの低温定着性と良い相関を示す貯蔵弾性率(G’at 110℃)を用いて、基準を以
下の通りとした。
◎(非常に良好):G’が1000mPa以下のG’
○(良好):G’が1000mPa以上5000mPa未満
△(使用可能):G’が5000mPa以上10000mPa未満
×(劣る):G’が10000mPa以上
<粉砕性>
粉砕性は、メッシュ上に残る樹脂残存率を求めることで評価した。ここで樹脂残存率とは、通常の粉砕工程を終わった樹脂を篩いにかけ、16メッシュを通過し22メッシュを通過しない樹脂粉体を得、この分級された樹脂粉末を10.00g精秤し、トリオブレンダー粉砕器(トリオサイエンス社製)にて10秒間粉砕後、30メッシュの篩いにかけ、通過しない樹脂の重量(A)gを精秤し、次式により、Aの値から残存率を求め、この操作を3回行い平均して求めた値である。
{(A)g/粉砕前の樹脂重量(10.00g)}×100=樹脂残存率(%)
得られた樹脂残存率より、粉砕性を以下の様に評価した。
◎(非常に良好):60%未満の樹脂残存率
○(良好):60%以上70%未満の樹脂残存率
△(使用可能):70%以上85%未満の樹脂残存率
×(劣る):85%以上の樹脂残存率
<保存性>
トナーを約5g秤量してサンプル瓶に投入し、これを45℃に保温された乾燥機に約24時間放置し、トナーの凝集程度を評価して保存性の指標とした。評価基準を以下の通りとした。
◎(極めて良好) :サンプル瓶を逆さにするだけで分散する
○(良好):サンプル瓶を逆さにし、1〜3回叩くと分散する
×(劣る) :サンプル瓶を逆さにし、4回以上叩くと分散する
(エリスリタンの合成)
断熱材を巻いたクライゼン管、温度計を備えた300mlの4つ口フラスコにエリスリトール214.0g(1.75mol)、85質量%リン酸水溶液23.1g(0.2mol)を仕込んだ。さらにリービッヒ冷却管、温度計、二又アダプター、フラスコ、圧力計、凍結した水で閉塞されないようにしたトラップ、真空ポンプ、圧力調整器を接続した。マグネチックスターラーで攪拌しながら、フラスコをオイルバスで加熱した。内温が135℃に達した後、真空ポンプを起動させて減圧を開始し、ゆっくり圧力を下げて行った。反応により生成し、留出したエリスリタンと一部の水はリービッヒ冷却管で凝縮され、二又アダプターにつけたフラスコに回収された。リービッヒ冷却管で凝縮されなかった水は液体窒素で冷却されたトラップに回収された。留出液がフラスコに50ml回収されたところで真空を停止し、エリスリトールを72.5g(0.59mol)供給した後、真空ポンプを起動し、エリスリタンの回収を再開した。以降、同様の操作でエリスリトールの供給を13回繰り返した後、エリスリタンの留出がなくなるまで反応を継続した。使用したエリスリトールは全部で1229.0g(10.1mol)であった。反応液の温度は135〜150℃、圧力は最終的に150Paになった。
【0062】
フラスコに回収されたエリスリタンをガスクロマトグラフィーで分析し、エリスリタンの純度を分析した。水を含むエリスリタンの取得量は1001.7gであり純度は96質量%、水の含有量は3質量%であり、収率は92%であった。300mlフラスコ内に残った残渣の重量は62.8gであった。
【0063】
(実施例1)
表1に示す仕込み組成の多価カルボン酸、多価アルコール、および多価カルボン酸に対して1000ppmのテトラ-n-ブトキシチタンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。
次いで昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持し、反応系からの水の留出がなくなるまでエステル化反応を行った。次いで、反応系内の温度を235℃とし、反応容器内を減圧し、反応系からポリアルコールを留出させながら縮合反応を実施した。
【0064】
重合終点は、反応中に樹脂を約2gサンプリングしてTg測定を行い表1記載の所定のTgになった時点で、攪拌停を停止し、反応系を窒素導入により常圧に戻し、窒素により加圧して反応物を取り出し、100℃以下に冷却しポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂の特性値を表1に示す。
【0065】
次に樹脂1:93質量部、着色剤としてキナクリドン顔料(クラリアント社製E02)3質量部および負帯電性の荷電制御剤LR−147(日本カートリット社製)1質量部、カルナバワックス(東洋ペトロライド社製)3質量部を粉体混合し、二軸押出機(PCM−29:株式会社池貝)を用いて外温設定:120℃、滞在時間1分として溶融混練し、粗粉砕後、ジェットミル型粉砕機で微粉砕し、分級機で平均粒径5μmの微粉末を得た。この外添未処理の微粉砕トナーを用いて、保存性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0066】
(実施例2〜5および比較例1〜2)
表1に示す仕込み組成のポリカルボン酸成分、ポリオール成分、および全酸成分に対して1000ppmのテトラ-n-ブトキシチタンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入し実施例
1と同様の方法を用いてポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂の特性値を表1に示す。実施例1と同様に得られた樹脂を用いてトナーを作成し、評価した。
【0067】
【表1】
比較例1では、一般式(1)で表される構造単位を含んでいないため、粉砕性が不十分であった。
【0068】
比較例2では、ガラス転移温度が75℃以上であるため、低温流動性と粉砕性が不十分であった。