【実施例1】
【0022】
図1及び
図2に、本発明の圧力センサの実施例1を示す。
【0023】
該図に示す如く、本実施例の圧力センサ1は、流体の圧力により変形するダイアフラム2と、ダイアフラム2の全周を覆うと共に、一方側がダイアフラム2と接合する弾性体3と、弾性体3の他方側で、かつ、ダイアフラム2の中心に相当する位置から離れた端部側(
図1及び
図2の左側)に接合して設置され、ダイアフラム2の変形と連動する弾性体3の変形をひずみとして検出するひずみセンサ4とを備え、弾性体3は、ひずみセンサ4を形成する材料の線膨張係数に近い線膨張係数をもつ材料から成っており、ダイアフラム2の外周部を固定すると共に、流体を導入する穴が形成されたサポート5を備えて概略構成されている。
【0024】
上述の弾性体3は円筒形を成すと共に、その中央部が端部より薄く形成され、かつ、弾性体3のひずみセンサ4が設置される部分以外に、穴であるスリット8A及び8Bが形成され、このスリット8A及び8Bは、ひずみセンサ4を挟むように弾性体3の端から端まで延びて形成され、弾性体3を
図2の上下方向(以下、Z方向という)に貫通している。
【0025】
更に詳細に説明すると、本実施例のダイアフラム2は金属材料で製作されており、例えば、耐食性の高いステンレス鋼やステンレス鋼と他の金属材料とのクラッド材を材質とする。
【0026】
また、本実施例のダイアフラム2は円筒形をしており、その中央部は、加工により端部より薄膜化(t1>t2)されており、薄膜化したダイアフラム2の中央部の中心は、弾性体3との接合のために一部盛り上がった構造となっている。ダイアフラム2の中央部の薄膜化方法としては、切削やプレス加工等がある。このダイアフラム2は、計測対象の流体の圧力をひずみセンサ4の設置面と逆の面から受けることで変形し、接合したひずみセンサ4に圧力に比例したひずみを発生させる構造となっている。
【0027】
更に、本実施例のダイアフラム2は、その外周部がサポート5に固定され、ダイアフラム2とサポート5は、抵抗溶接やレーザー溶接を用いて気密を確保するよう固定されており、流体がダイアフラム2とサポート5との隙間から漏れ出さない構造となっている。
【0028】
一方、弾性体3は金属材料で製作されており、例えば、ひずみセンサ4の材料であるシリコンと線膨張係数の近いコバール合金、42合金又はインバー合金等のいずれかを材質とする。また、弾性体3の20℃における線膨張係数の値が、半導体基板(シリコン)の20℃における線膨張係数の値の2.5倍を超えない材質でも構わない。
【0029】
また、本実施例の弾性体3は円筒形をしており、その中央部は、加工により端部より薄膜化されている。弾性体3は直に流体と接しないため、剛性を低下させることを目的に、ひずみセンサ4を設置する部分以外に穴を形成することが可能である。例えば、ひずみセンサ4の脇を、ひずみセンサ4を挟むように弾性体3の半径方向(以下、X方向という)に沿ってライン状にスリット8A及び8Bを形成することで、ひずみセンサ4の設置箇所を梁状にしても良い。弾性体3を薄膜化した端部は、フィレットが形成されており、圧力印加や温度変化に伴う応力集中を緩和する構造となっている。
【0030】
また、弾性体3は、ひずみセンサ4を設置可能とするため、ひずみセンサ4の大きさと同等以上の幅を備えており、少なくともダイアフラム2の中央の接合部6とダイアフラム2の外周部の2箇所で固定(接合部6は1点固定、外周部は全周固定)されており、接合部6は圧力の印加や温度の変化等により剥離しないよう溶接を用いて強固に固定されている。この接合部6はダイアフラム2の薄膜部全面ではなく、一部領域(1点)でのみ固定することで、ダイアフラム2と弾性体3の線膨張係数差の影響を緩和している。弾性体3は接合部6を介してダイアフラム2と接合されているため、ダイアフラム2の変形と連動してたわみが発生するが、弾性体3の弾性係数を適切に設計することにより、ダイアフラム2の弾性係数を補強することができる。
【0031】
弾性体3の薄膜部の深さは、ダイアフラム2の高さよりも浅くなっており、弾性体3とダイアフラム2は接合部6を介して互いに押し合っている。互いに押し合うことにより弾性体3は膨らむように押し上げられ、ダイアフラム2は押し下げられる。圧力が加わっていない状態において弾性体3が押し上げられていることにより、圧力の印加に伴う弾性体3の凹凸反転を抑止し、感度の線形性の向上効果が得られる。また、ダイアフラム2が押し下げられていることにより、ダイアフラム2の裏面端部の主応力を、圧力が加わる時に発生する応力とは逆の圧縮応力とすることができ、圧力が加わった時のダイアフラム2に発生する主応力を低減させることが可能である。
【0032】
次に、ひずみセンサ4の構成について、
図1乃至
図3を用いて説明する。
図3に示すように、ひずみセンサ4の表面中心にひずみゲージ7a、7b、7c、7dが形成されており、4つ一組のブリッジ回路が構成されている。また、ひずみセンサ4は、単結晶シリコン基板を材料に製作されており、ひずみゲージ7a、7b、7c、7dは、シリコン基板に不純物拡散することにより形成されている。更に、ひずみゲージ7a、7bはX方向が、ひずみゲージ7c、7dはダイアフラム2の円周方向(以下、Y方向という)が、それぞれ電流が流れる方向と平行になるように配置されている。
【0033】
このようなひずみセンサ4の構成により、X方向とY方向のひずみ差に比例した出力が、ブリッジ回路の中間電位の差動出力(Out1−Out2)として得られる。一方で、ひずみゲージ7a、7b、7c、7dの電気抵抗の温度変化による影響は、温度特性が4つのひずみゲージで等しければ、電気抵抗の温度変化も等しくなるので、ひずみセンサ4の出力には影響しない。
【0034】
例えば、スリット8A及び8Bの形成されていない弾性体3の場合、圧力による変形は軸対称で、ダイアフラム2の中央にひずみセンサ4を配置すると、X方向とY方向のひずみ差が得られない。よって、ひずみセンサ4は感度の向上を目的に、弾性体3の薄膜部端部に設置している。ひずみセンサ4を弾性体3の薄膜部端部に設置することで、ひずみセンサ4にX方向とY方向とでそれぞれ圧縮ひずみと引張ひずみが発生し、ひずみ差を大きくすることが可能になるためである。これにより、圧力センサ1の感度の向上が見込める。
【0035】
また、弾性体3とひずみセンサ4は、接合層を介して強固に固定されている。両者の接合には、金属(Au/Sn或いはAu/Ge)接合や低融点ガラス(バナジウム系ガラス)を用いることにより、長期間の温度や圧力印加に伴うクリープ変形を抑制できる。これら金属(Au/Sn或いはAu/Ge)や低融点ガラス(バナジウム系ガラス)は堅い材料であるため、弾性体3の変形をひずみセンサ4に効率よく伝達することができる。
【0036】
また、サポート5は、計測対象である流体の流れる配管に取り付けられたフランジ(図示せず)とダイアフラム2との接続をサポートする部材である。フランジと配管はねじにより固定されており、フランジとダイアフラム2を直接固定してしまうと、ねじを締結することによる影響で感度が変化してしまうことが考えられるので、サポート5の下部から伝達されるねじの締結に伴う応力を緩和するために、サポート5の一部にくびれ5aを設けている。
【0037】
また、上述した如く、弾性体3にはスリット8A及び8Bが形成されており、弾性体3をZ方向に貫通している。スリット8A及び8Bは、
図1のX方向において、長さは弾性体3の端から端まで形成されており、位置はひずみセンサ4から一定距離離れた場所に設けられている。ひずみセンサ4が設置している弾性体3は梁状になっており、中央と両端がダイアフラム2で固定されている。
【0038】
例えば、弾性体3にスリット8A及び8Bを形成しない圧力センサ1において、弾性体3の端部に固定したひずみセンサ4には、温度変化に伴い出力が発生する。これは、ダイアフラム2の材料であるステンレス鋼の線膨張係数が、ひずみセンサ4の材料であるシリコンの5倍以上と差があるためである。また、弾性体3の変形を効率よくひずみセンサ4に伝えるための接合層が堅い材料であるAu/SnやAu/Geや低融点ガラス(バナジウム系ガラス)で形成されている影響も大きい。
【0039】
圧力センサ1の外部の温度が低下すると、ひずみセンサ4にはX方向とY方向共に、圧縮のひずみが発生する。X方向とY方向のひずみが等しければ出力は変化しないが、Y方向の圧縮ひずみの方が大きくなるために、出力が変化する。これは、X方向は弾性体3が変形することにより応力緩和しているが、Y方向では弾性体3の面積が小さく変形し辛いため、X方向よりも応力を緩和できないことが原因である。
【0040】
また、弾性体3とひずみセンサ4の固定には、低融点ガラスなどの300℃以上の高温での接合を用いるため、接合後に温度を低下させると、X方向とY方向でひずみ差が発生し、初期ゼロ点の出力オフセットとして検出される。この初期ゼロ点の出力オフセットが発生すると、オフセット分をゼロに修正するための回路が必要になる他、圧力センサ1の使用範囲が狭くなるなどの課題が発生する。また、圧力センサ1の使用時においても、民生用圧力センサにおいては100℃程度、車載用圧力センサにおいては160℃程度の温度は変化し、圧力センサ1のゼロ点出力は変動する。
【0041】
よって、これを改善するため、弾性体3にスリット等の加工を施すことによって、弾性体3をY方向にも変形しやすくし、ひずみセンサ4に加わるY方向の圧縮ひずみを低減する。これにより、X方向とY方向とのひずみの差が小さくなり、温度変化に伴うゼロ点の出力変動を抑制することを可能とする。ひずみセンサ4にかかるY方向への圧縮ひずみを緩和する手段として、本実施例では、弾性体3にライン状のスリット8A及び8Bを形成している。
【0042】
弾性体3の薄膜部の深さはダイアフラム2の高さよりも浅くなっており、弾性体3とダイアフラム2は接合部6を介して互いに押し合っている。互いに押し合うことにより、弾性体3は少なくとも平坦よりもひずみセンサ4の設置面に向かって凸形状になっている。
弾性体3が凸形状であることにより、流体による圧力が加わることに伴い、弾性体3の凹凸が反転することを防いでいる。これにより、弾性体3の凹凸が反転することによる座屈やひずみセンサ4の符号反転を防ぎ、感度の線形性向上を図っている。
【0043】
また、上述した如く、ダイアフラム2は金属材料で製作されており、耐食性の高いステンレス鋼を材質とすると共に、ダイアフラム2は円筒形をしており、中央部は加工により端部より薄膜化されており、薄膜化したダイアフラム2の中央部の中心は、弾性体3との接合のために一部盛り上がった構造となっている。ダイアフラム2の形成方法としてプレス加工を用いており、ダイアフラム2の外周部にはサポート5と溶接するためのつば2aが備わっており、ダイアフラム2のつば2aとサポート5を溶接することで流体の漏れを防いでいる。ダイアフラム2の外周部と中心部までの間に屈曲部は存在せず、流体により圧力が加わった際の変形は屈曲部が存在する時に比べ大きく、感度も大きくなる。
【0044】
流体により圧力が加わった場合、ダイアフラム2は流体により押し上げられ、最大の主応力がダイアフラム2の裏面の端部に発生する。この引張の最大主応力が、ダイアフラム2の材料の耐力を超えないようにする必要があるため、圧力が加わっていない状態において、ダイアフラム2は弾性体3により押し下げられる構造となっている。ダイアフラム2が押し下げられることにより、圧力が加わっていない状態において、ダイアフラム2の裏面端部には圧縮の応力が発生している。この応力は、圧力が加わる時に発生する応力とは逆の応力であるため、ダイアフラム2に加わる主応力を低減することができ、圧力のダイナミックレンジを拡大している。
【0045】
このように本実施例の構成によれば、圧力センサ1の可動部分が、弾性体3とダイアフラム2の2つの部材で構成されていることになり、例えば、流体と直に接するために高耐食性材料を採用することが要求される部分については、ステンレス鋼等でなるダイアフラム2で構成し、ひずみセンサ4と結合する必要から低線膨張係数が要求される部分については、コバール合金、42合金又はインバー合金等のいずれかでなる弾性体3で構成するなど、各部材に求められる複数の機能にそれぞれ最も適した材料を独立して選択することが可能となる。
【0046】
このため、流体に対する高耐食性を維持しつつ、ひずみセンサ4の線熱膨張係数と、ひずみセンサ4が設けられる弾性体3の線熱膨張整数との差を小さくすることができるので、剥離や使用温度環境に関する上記の第1の課題を解決することができる。
【0047】
なお、上記の構成において、個別に設計されたダイアフラム2と弾性体3のそれぞれの表面を接合することにより、流体の圧力を受圧したダイアフラム2の変形を、ひずみセンサ4が設けられた弾性体3に伝達することができる。
【0048】
このため、接合されたこれら複数の部材が一体となって圧力センサ1としての機能が発揮される。ここで、例えば、ステンレス鋼でなるダイアフラム2と、コバール合金、42合金又はインバー合金等のいずれかでなる弾性体3とを、溶融部(溶接)でなる接合部を介して接合した場合であっても、両者は広い領域で接合されているのではなく、両者の一部同士が小さな面積で接合されているに過ぎない。
【0049】
従って、ダイアフラム2と弾性体3の間で線膨張係数に差があったとしても、そのことによって両者が剥離するおそれは、従来技術における面による接着に比べて少なくなる。
同様に、使用環境温度の変化によって線熱膨張係数の差に応じて生じる引っ張り応力又は圧縮応力の大きさも、広い面で接着されている場合に比べて小さい。
【0050】
また、上記の構成によれば、複数の部材によって圧力センサ1を構成することにより、単一の部材によって構成する場合に比べて材料の選択のみならず、各部材の形状及び寸法等の設計の自由度が大きくなる。
【0051】
即ち、可動部をダイアフラム2のみによって構成する場合は、可動部の弾性係数kはダイアフラム2のヤング率及び形状によって決まる。一方、ダイアフラム2及び弾性体3で可動部を構成する場合は、互いに接合された部材は全体としてk=k
1+k
2(ただし、k
1はダイアフラム2の弾性係数、k
2は弾性体3の弾性係数)に等しい弾性係数を有する可動部として動作する。このため、例えば、全体の弾性係数kを大きく変えることなく、ダイアフラム2の弾性係数k
1を小さく設計し、弾性体3の弾性係数k
2は大きく設計することなどが可能となるので、設計自由度が高まる。
【0052】
更に、可動部をダイアフラム2と弾性体3の2つに分離していることで、例えば、弾性体3を押し上げたり、ダイアフラム2を押し下げたりする構造が可能となる。
【0053】
また、流体により圧力が加わった場合、ダイアフラム2は流体により押し上げられ、最大の主応力はダイアフラム2の裏面の端部に発生し、この最大主応力がダイアフラム2の材料の耐力を超えないようにする必要がある。従来では圧力のダイナミックレンジを確保するため、最大主応力を緩和する構造、例えば、ダイアフラム裏面の端部の曲率を大きくするなどで対応してきた。しかしながら、ダイアフラムの裏面の端部の曲率を大きくするとダイアフラム自体の変形量が小さくなり、感度が低下するおそれがあった。
【0054】
そこで、本実施例のように、ダイアフラム2と弾性体3を互いに加圧する構造にすることで、ダイアフラム2を押し下げ、初期状態のダイアフラム2の裏面端部の主応力を圧力が加わる時に発生する応力とは逆の圧縮応力とすることができ、ダイアフラム2に加わる主応力を低減し、圧力センサによって測定することができる圧力の範囲が拡大できる。
【0055】
また、従来のダイアフラムでは、加工精度や接合による影響でダイアフラムの接合面が凹むことがあった。流体による圧力が加わることでダイアフラムは膨れることから、ダイアフラムは圧力が加わることで凹凸が反転していた。これは、ダイアフラムに接合されたひずみセンサにも影響を与えており、ひずみセンサに加わるひずみが引張から圧縮へと反転する。ダイアフラムの凹凸反転と、ひずみセンサの引張と圧縮の反転によりダイアフラムの座屈やひずみセンサの符号反転などが発生し、非線形性が大きくなる可能性があった。
【0056】
そこで、本実施例では、弾性体3を初期状態から押し上げることにより、圧力が加わることに伴う弾性体3の凹凸反転を抑止し、感度の線形性の向上を図るようにした。これらのことより、上記の第2の課題を解決することができる。
【0057】
従って、本実施例の構成によれば、ダイアフラムにステンレス鋼を採用した場合であっても、ダイアフラムとひずみセンサとが互いに剥離したりせず、かつ、使用環境温度の影響を受けにくいと共に、圧力センサの感度がダイアフラムを構成する材料の力学特性のみによって支配されず、圧力センサを構成する部材の設計自由度を高めることができる。
【実施例6】
【0074】
図12に、本発明の実施例6としての絶対圧センサを示す。
【0075】
該図に示す如く、本実施例の絶対圧センサ12は、上述した実施例1と同様な構成の圧力センサ1と気密ハウジング13で構成されている。気密ハウジング13は、ダイアフラム2やひずみセンサ4を囲うようにサポート5と固定されており、ひずみセンサ4の周囲の気密空間14を一定の気圧に維持している。
【0076】
気密ハウジング13とサポート5の固定には、例えば、抵抗溶接やレーザー溶接などの気密性を維持可能な固定方法を用いる。これにより、絶対圧センサ12の使用時には、計測対象以外の圧力変動の影響を受けない構造としている。
【0077】
サポート5の外周部には気密ハウジング13と溶接するためのつば5bが備わっており、サポート5のつば5bを気密ハウジング13に隙間なく固定することにより、気密空間14の気密が確保される。抵抗溶接やレーザー溶接などの固定方法を用いる場合、サポート5のつば5bの厚さが厚すぎると溶接時に溶融部を形成することが困難になるので、つば5bの厚さは0.20mm以下であることが好ましい。より好ましいつば5bの厚さは0.15mm以下である。また、つば5bの厚さが薄すぎるとつば5bが溶接の影響で損傷して気密空間14の気密が確保できなくなるので、つば5bの厚さは0.10mm以上であることが好ましい。
【0078】
上記の好ましい厚さを有するつば5bを用いて抵抗溶接やレーザー溶接を行う場合、つば5bの厚さが薄いため、溶接の衝撃でつば5bに貫通孔が形成されたり、溶接後の冷却の過程でつば5bが割れたりして、気密空間14の気密が確保できなくなる恐れがある。サポート5を形成する材料に異物や空隙などの欠陥の少ない材料を採用することは、そのような異物や空隙などの欠陥がつば5bの部分に存在することが防止され、つば5bに貫通孔が形成されたり割れたりする恐れがなくなるため、好ましい。つば5bの部分に異物や空隙などの欠陥の少ないサポート5を製造するには、例えば、真空再溶解法や鍛造法などの公知の技術を採用した材料を機械加工して製造することができる。
【0079】
サポート5を形成する材料の欠陥を少なくする方法として鍛造法を選択した場合、鍛造によって形成される鍛流線の方向(ファイバー方向)がつば5bの面内方向と一致するようにしてサポート5を製造することがより好ましい。鍛造された金属材料では鍛流線の方向の引張強さが他の方向に比べて大きいので、鍛流線の方向をつば5bの面内方向と一致させることにより、溶接後の冷却の過程でつば5bが割れることをより確実に防止することができる。なお、サポート5の鍛流線の方向は、サポート5の切断面を研磨して光学顕微鏡等により金属組織を観察するなどの方法により容易に判別することができる。
【0080】
ひずみセンサ4で計測した出力は、気密ハウジング13に形成された貫通電極15から外部に引き出されている。貫通電極15はメッキで形成されており、ひずみセンサ4とはフレキシブル基板電極(図示せず)を介して接続され、かつ、気密空間14の気密が確保されている。
【0081】
一方、サポート5は、計測対象である流体の流れる配管に取り付けられたフランジ16とダイアフラム2との接続をサポートする部材である。フランジ16と配管はねじにより固定されており、フランジ16とダイアフラム2を直接固定してしまうとねじの締結影響で感度が変化してしまうことが考えられる。
【0082】
そこで、サポート5の下部から伝達されるねじ締結に伴う応力を緩和するために、サポート5の一部にくびれ5aを設けている。
【0083】
このような本実施例の構成の絶対圧センサであっても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【実施例7】
【0084】
図13に、本発明の実施例7としての差圧センサを示す。
【0085】
該図に示す如く、本実施例の差圧センサ17は、互いに対向配置され、流体の圧力により変形する第1のダイアフラム22及び第2のダイアフラム32と、第1のダイアフラム22及び第2のダイアフラム32の間に配置され、一方側が第1のダイアフラム22と接合すると共に、他方側が第2のダイアフラム32と接合する弾性体3と、弾性体3の一方側又は他方側で、かつ、第1のダイアフラム22及び第2のダイアフラム32の中心に相当する位置から離れた端部側(
図13の左側)に設置され、第1のダイアフラム22及び第2のダイアフラム32の変形と連動する弾性体3の変形をひずみとして検出するひずみセンサ4とを備え、弾性体3は、ひずみセンサ4を形成する材料の線膨張係数に近い線膨張係数をもつ材料から成って概略構成されている。
【0086】
即ち、本実施例の差圧センサ17は、上述した実施例1と類似する構成の2つの圧力センサ21及び31と気密ハウジング18で構成される。圧力センサ21及び31には、それぞれ第1のダイアフラム22と第2のダイアフラム32が備えられており、圧力センサ21及び31に共通する弾性体3を挟んで互いに対向するように固定されている。また、気密ハウジング18は、圧力センサ21及び31を囲っており、圧力センサ21及び31の周囲の気密空間14を一定の気圧に維持している。これにより、計測対象以外の圧力変動の影響を受けない構造としている。
【0087】
また、第1のダイアフラム22と第2のダイアフラム32が第1の流体と第2の流体にそれぞれ接しており、第1のダイアフラム22と第2のダイアフラム32は、それぞれ接合部26と接合部36にて弾性体3に接合されている。接合部26と接合部36は溶接により強固に固定されており、第1の流体と第2の流体の圧力に差が発生した際に、第1のダイアフラム22と第2のダイアフラム32が変形する構造となっている。第1のダイアフラム22と第2のダイアフラム32のそれぞれの変形と連動して弾性体3にたわみが発生し、そのたわみをひずみセンサ4で検出することで第1の流体と第2の流体の差圧を計測するものである。第1の流体と第2の流体は、同じ流体系の異なる場所と連通している同一の流体であってもよい。
【0088】
このような本実施例の構成の差圧センサであっても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【0089】
また、本発明に係る圧力センサ1又は差圧センサ17は、例えば、半導体製造装置に用いられる質量流量制御装置に組み込んで、評価対象の圧力をモニタリングする用途に用いることができる。
【0090】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものでは無く、様々な変形例が含まれる。
例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものでは無い。また、実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。