特許第6237923号(P6237923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6237923圧力センサ及び差圧センサ並びにそれらを用いた質量流量制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6237923
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】圧力センサ及び差圧センサ並びにそれらを用いた質量流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/04 20060101AFI20171120BHJP
   G01L 13/02 20060101ALI20171120BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G01L9/04
   G01L13/02 Z
   H01L29/84 B
   H01L29/84 A
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-553119(P2016-553119)
(86)(22)【出願日】2015年10月6日
(86)【国際出願番号】JP2015078358
(87)【国際公開番号】WO2016056555
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2017年2月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-206347(P2014-206347)
(32)【優先日】2014年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健悟
(72)【発明者】
【氏名】梅山 貴博
(72)【発明者】
【氏名】坂口 勇夫
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−26117(JP,A)
【文献】 特開昭63−217671(JP,A)
【文献】 特開2004−53344(JP,A)
【文献】 実開平6−35934(JP,U)
【文献】 実開平7−12939(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力により変形するダイアフラムと、該ダイアフラムの全面を覆うと共に、一方側が前記ダイアフラムと接合する弾性体と、該弾性体の他方側で、かつ、前記ダイアフラムの中心に相当する位置から離れた端部側に接合して設置され、前記ダイアフラムの変形と連動する前記弾性体の変形をひずみとして検出するひずみセンサとを備え、
前記弾性体は、前記ひずみセンサを形成する材料の線膨張係数に近い線膨張係数をもつ材料から成ることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記ダイアフラムは、ステンレス鋼又は該ステンレス鋼と他の金属材料とのクラッド材から成ることを特徴とする圧力センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧力センサにおいて、
前記ダイアフラムは円筒形を成すと共に、中央部が端部より薄く形成され、その薄く形成された中央部の中心が盛り上がり、この盛り上がった部分が前記弾性体と接合していることを特徴とする圧力センサ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
前記ひずみセンサはシリコンから成り、かつ、前記弾性体は、前記シリコンの線膨張係数に近い線膨張係数をもつコバール合金、42合金又はインバー合金のいずれかから成ることを特徴とする圧力センサ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
前記弾性体は円筒形を成すと共に、中央部が端部より薄く形成され、かつ、前記弾性体の前記ひずみセンサが設置される部分以外に穴が形成されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項6】
請求項5に記載の圧力センサにおいて、
前記穴は、前記ひずみセンサを挟むように形成され、前記弾性体の端から端まで延びた2本のスリットであり、かつ、該スリットは前記弾性体を貫通していることを特徴とする圧力センサ。
【請求項7】
請求項5に記載の圧力センサにおいて、
前記穴は、前記ひずみセンサを挟むように形成され、前記弾性体を貫通している第1の貫通穴と、該第1の貫通穴と連通し、前記ひずみセンサが設置されている側とは反対側の前記弾性体に形成されている第2の貫通穴から成ることを特徴とする圧力センサ。
【請求項8】
請求項5に記載の圧力センサにおいて、
前記穴は、前記ひずみセンサを挟むように形成され、前記弾性体の端から端まで延びた2本のくぼみ(凹部)であり、かつ、該くぼみは前記弾性体を貫通していないことを特徴とする圧力センサ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
前記弾性体は、前記ひずみセンサの大きさと同等以上の幅を有し、少なくとも前記ダイアフラムの中央部及び外周部の2箇所と接合されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項10】
請求項9に記載の圧力センサにおいて、
前記弾性体は、前記ダイアフラムの中央部とは1点で接合され、前記ダイアフラムの外周部とは全周で接合されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
前記弾性体と前記ひずみセンサは、金属又は低融点ガラスを用いて接合されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項12】
請求項11に記載の圧力センサにおいて、
前記弾性体と前記ひずみセンサを接合する金属は、Au/Sn或いはAu/Geから成ることを特徴とする圧力センサ。
【請求項13】
請求項11に記載の圧力センサにおいて、
前記弾性体と前記ひずみセンサを接合する低融点ガラスは、バナジウム系ガラスから成ることを特徴とする圧力センサ。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の圧力センサにおいて、
前記ダイアフラムは、その中央部と端部の間に複数の屈曲部が形成されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項15】
請求項1に記載の圧力センサにおいて、
前記ダイアフラムの外周部を固定するサポートと、該サポートに固定され、前記ダイアフラムと前記弾性体及び前記ひずみセンサを囲うように設置された気密ハウジングとを備え、前記サポートと前記気密ハウジングは、気密性が維持可能なように固定されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項16】
請求項15に記載の圧力センサにおいて、
前記サポートの外周部につばが設けられ、該つばに前記気密ハウジングが固定され、前記つばの厚さは0.10mm以上、0.20mm以下であることを特徴とする圧力センサ。
【請求項17】
請求項16に記載の圧力センサにおいて、
前記サポートは鍛造材から成り、鍛造によって形成される鍛流線の方向が前記つばの面内方向と一致することを特徴とする圧力センサ。
【請求項18】
互いに対向配置され、流体の圧力により変形する第1のダイアフラム及び第2のダイアフラムと、該第1のダイアフラム及び該第2のダイアフラムの間に配置され、一方側が前記第1のダイアフラムと接合すると共に、他方側が前記第2のダイアフラムと接合する弾性体と、該弾性体の一方側又は他方側で、かつ、前記第1のダイアフラム及び前記第2のダイアフラムの中心に相当する位置から離れた端部側に設置され、前記第1のダイアフラム及び前記第2のダイアフラムの変形と連動する前記弾性体の変形をひずみとして検出するひずみセンサとを備え、
前記弾性体は、前記ひずみセンサを形成する材料の線膨張係数に近い線膨張係数をもつ材料から成ることを特徴とする差圧センサ。
【請求項19】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載の圧力センサ又は請求項18に記載の差圧センサを組み込んで、流体の圧力をモニタリングすることを特徴とする質量流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力センサ及び差圧センサ並びにそれらを用いた質量流量制御装置に係り、特に、圧力印加に伴うダイアフラムの変形を利用して圧力を検出するものに好適な圧力センサ及び差圧センサ並びにそれらを用いた質量流量制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力印加に伴うダイアフラムの変形を利用して圧力を検出する圧力センサとしては、ダイアフラム上にひずみゲージを形成(貼り付け等)することにより、圧力印加に伴うダイアフラムの変形をひずみとして検出する圧力センサが良く知られている。
【0003】
上述のひずみゲージは、わずかな変形であっても自身の電気抵抗を変える。通常、ひずみゲージは4つ一組で形成されており、ブリッジ回路を構成することで、圧力に比例した差動電圧を出力として計測する方法が良く用いられており、ブリッジ回路を構成し、ひずみゲージ自体の温度特性を補償することを可能としている。例えば、ひずみゲージ自体に温度特性を有していても、温度変化による4つのひずみゲージの変形が各々等しい時には、ひずみセンサの出力は変動しない。
【0004】
また、計測対象の圧力が低く耐食性が不要な場合には、シリコン基板を一部薄膜化することで受圧部となるシリコンダイアフラムを形成し、このシリコンダイアフラム上にひずみゲージを不純物拡散で形成する構成の圧力センサが用いられる。このような構成の圧力センサは、感度が高く、シリコンダイアフラム上にひずみゲージを一体構造として形成することが可能であるなどの利点を有している。
【0005】
しかしながら、上述した圧力センサは、計測対象の圧力が高い場合や耐食性が必要な場合には適しておらず、金属製のダイアフラムにひずみゲージを貼りつけるか、或いはひずみゲージを形成したひずみセンサを貼りつけた構成の圧力センサが多く使用されている。
【0006】
特許文献1には、圧力センサが開示され、圧力値を検出するためのマイクロマシニング型の装置であって、2つの構成素子から成っており、第1の構成素子が、第1の材料から成る第1のダイアフラムを備え、第2の材料から成る第2の構成素子が、第1の領域と第2の領域とを備えている。また、第1の領域が、第2の領域よりも薄く形成され、第1のダイアフラムと第1の領域の少なくとも一部とが、互いに堅固に結合されている。そして、第1の材料が、第2の材料よりも大きな熱膨張係数を有している形式のものを改良するために、第1の材料から成る第1のダイアフラムが、温度に関して、横膨脹を第2の構成素子の第1の領域に伝達するようになっており、横膨脹の伝達が、第1のダイアフラムと第1の領域の少なくとも一部との間に設けられた第1の結合材料を介して行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−227283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、大きく分けて2つある。即ち、第1の課題は、異種材料間の線膨張係数の違いに起因する課題であり、第2の課題は、圧力センサの感度の向上に関する課題である。
【0009】
まず、第1の課題から説明すると、上記の構成を有する圧力センサの腐食に対する耐性を高めるために、圧力センサを構成する部材のうち、流体と直に接触する部分(ダイアフラム)に、ステンレス鋼等の高耐食性材料を採用する必要がある。
【0010】
しかしながら、ひずみセンサの材料としてシリコンを採用した場合、シリコンの線膨張係数は2.6×10-6-1であるのに対し、ステンレス鋼の線膨張係数は15.9×10-6-1であり、両者に大きな差がある。
【0011】
このため、シリコン製のひずみセンサをステンレス鋼製のダイアフラムに接着しようとすると、温度変化によって大きな寸法の差が生じてしまうので、両者が接着された状態を維持することができず、剥離したり或いは製造の過程でダイアフラム又はひずみセンサのいずれかが破損したりする不具合が発生しやすくなる。
【0012】
また、シリコン製のひずみセンサとステンレス鋼製のダイアフラムの接着を維持することができ、破損も発生しなかった場合であっても、圧力センサの使用環境温度が変動すると、上記の線膨張係数の違いに起因して接着部に大きな応力が発生する。
【0013】
このため、実際には、ダイアフラムが流体の圧力が変化していないにもかかわらず、ひずみセンサがひずみを検知してしまうため、圧力センサの使用環境温度の変化に伴う測定誤差が生じることになる。
【0014】
次に、第2の課題について説明すると、低い圧力でも検知できるよう圧力センサの感度を高めるには、ダイアフラムの弾性係数を小さくして変形を容易にすることが有効である。即ち、ダイアフラムの弾性係数は、ダイアフラムを構成する材料のヤング率、ダイアフラムの受圧径及び厚さ等によって決まるため、ダイアフラムを構成する材料のヤング率を小さくすると共に、受圧径を大きくし、かつ、厚さを薄くするほど、ダイアフラムの弾性係数を小さくすることができる。
【0015】
ところが、ダイアフラムの弾性係数を小さくして変形を容易にすると、変形時に生じるダイアフラムの屈曲部に加わる主応力が増加して材料の弾性限界を超えてしまい、圧力センサとして継続的に使用できなくなる可能性がある。つまり、圧力センサの感度とダイアフラムの屈曲部に加わる主応力は、トレードオフの関係となるため、弾性体として単一のダイアフラムを使用している限り、圧力センサの感度は、ダイアフラムを構成する材料の力学特性によって支配される。
【0016】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ダイアフラムにステンレス鋼を採用した場合であっても、ダイアフラムとひずみセンサとが互いに剥離したりせず、かつ、使用環境温度の影響を受けにくいと共に、圧力センサの感度がダイアフラムを構成する材料の力学特性のみによって支配されず、圧力センサを構成する部材の設計自由度を高めることのできる圧力センサ及び差圧センサ並びにそれらを用いた質量流量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の圧力センサは、上記課題を解決するために、流体の圧力により変形するダイアフラムと、該ダイアフラムの全面を覆うと共に、一方側が前記ダイアフラムと接合する弾性体と、該弾性体の他方側で、かつ、前記ダイアフラムの中心に相当する位置から離れた端部側に接合して設置され、前記ダイアフラムの変形と連動する前記弾性体の変形をひずみとして検出するひずみセンサとを備え、前記弾性体は、前記ひずみセンサを形成する材料の線膨張係数に近い線膨張係数をもつ材料から成ることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の差圧センサは、上記課題を解決するために、互いに対向配置され、流体の圧力により変形する第1のダイアフラム及び第2のダイアフラムと、該第1のダイアフラム及び該第2のダイアフラムの間に配置され、一方側が前記第1のダイアフラムと接合すると共に、他方側が前記第2のダイアフラムと接合する弾性体と、該弾性体の一方側又は他方側で、かつ、前記第1のダイアフラム及び前記第2のダイアフラムの中心に相当する位置から離れた端部側に設置され、前記第1のダイアフラム及び前記第2のダイアフラムの変形と連動する前記弾性体の変形をひずみとして検出するひずみセンサとを備え、前記弾性体は、前記ひずみセンサを形成する材料の線膨張係数に近い線膨張係数をもつ材料から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ダイアフラムにステンレス鋼を採用した場合であっても、ダイアフラムとひずみセンサとが互いに剥離したりせず、かつ、使用環境温度の影響を受けにくいと共に、圧力センサの感度がダイアフラムを構成する材料の力学特性のみによって支配されず、圧力センサを構成する部材の設計自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の圧力センサの実施例1を示す平面図である。
図2図1の破線A−Aに沿った断面図である。
図3】本発明の圧力センサに採用されるひずみセンサを示し、4つのひずみゲージで形成したブリッジ回路の例である。
図4】本発明の圧力センサの実施例2を示す平面図である。
図5図4の破線A−Aに沿った断面図である。
図6】本発明の圧力センサの実施例3を示す平面図である。
図7図6の破線A−Aに沿った断面図である。
図8】本発明の圧力センサの実施例4を示す平面図である。
図9図8の破線A−Aに沿った断面図である。
図10】本発明の圧力センサの実施例5を示す平面図である。
図11図10の破線A−Aに沿った断面図である。
図12】本発明の実施例6である絶対圧センサを示す断面図である。
図13】本発明の実施例7である差圧センサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の圧力センサ及び差圧センサ並びにそれらを用いた質量流量制御装置を説明する。なお、以下に説明する各実施例において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0022】
図1及び図2に、本発明の圧力センサの実施例1を示す。
【0023】
該図に示す如く、本実施例の圧力センサ1は、流体の圧力により変形するダイアフラム2と、ダイアフラム2の全周を覆うと共に、一方側がダイアフラム2と接合する弾性体3と、弾性体3の他方側で、かつ、ダイアフラム2の中心に相当する位置から離れた端部側(図1及び図2の左側)に接合して設置され、ダイアフラム2の変形と連動する弾性体3の変形をひずみとして検出するひずみセンサ4とを備え、弾性体3は、ひずみセンサ4を形成する材料の線膨張係数に近い線膨張係数をもつ材料から成っており、ダイアフラム2の外周部を固定すると共に、流体を導入する穴が形成されたサポート5を備えて概略構成されている。
【0024】
上述の弾性体3は円筒形を成すと共に、その中央部が端部より薄く形成され、かつ、弾性体3のひずみセンサ4が設置される部分以外に、穴であるスリット8A及び8Bが形成され、このスリット8A及び8Bは、ひずみセンサ4を挟むように弾性体3の端から端まで延びて形成され、弾性体3を図2の上下方向(以下、Z方向という)に貫通している。
【0025】
更に詳細に説明すると、本実施例のダイアフラム2は金属材料で製作されており、例えば、耐食性の高いステンレス鋼やステンレス鋼と他の金属材料とのクラッド材を材質とする。
【0026】
また、本実施例のダイアフラム2は円筒形をしており、その中央部は、加工により端部より薄膜化(t1>t2)されており、薄膜化したダイアフラム2の中央部の中心は、弾性体3との接合のために一部盛り上がった構造となっている。ダイアフラム2の中央部の薄膜化方法としては、切削やプレス加工等がある。このダイアフラム2は、計測対象の流体の圧力をひずみセンサ4の設置面と逆の面から受けることで変形し、接合したひずみセンサ4に圧力に比例したひずみを発生させる構造となっている。
【0027】
更に、本実施例のダイアフラム2は、その外周部がサポート5に固定され、ダイアフラム2とサポート5は、抵抗溶接やレーザー溶接を用いて気密を確保するよう固定されており、流体がダイアフラム2とサポート5との隙間から漏れ出さない構造となっている。
【0028】
一方、弾性体3は金属材料で製作されており、例えば、ひずみセンサ4の材料であるシリコンと線膨張係数の近いコバール合金、42合金又はインバー合金等のいずれかを材質とする。また、弾性体3の20℃における線膨張係数の値が、半導体基板(シリコン)の20℃における線膨張係数の値の2.5倍を超えない材質でも構わない。
【0029】
また、本実施例の弾性体3は円筒形をしており、その中央部は、加工により端部より薄膜化されている。弾性体3は直に流体と接しないため、剛性を低下させることを目的に、ひずみセンサ4を設置する部分以外に穴を形成することが可能である。例えば、ひずみセンサ4の脇を、ひずみセンサ4を挟むように弾性体3の半径方向(以下、X方向という)に沿ってライン状にスリット8A及び8Bを形成することで、ひずみセンサ4の設置箇所を梁状にしても良い。弾性体3を薄膜化した端部は、フィレットが形成されており、圧力印加や温度変化に伴う応力集中を緩和する構造となっている。
【0030】
また、弾性体3は、ひずみセンサ4を設置可能とするため、ひずみセンサ4の大きさと同等以上の幅を備えており、少なくともダイアフラム2の中央の接合部6とダイアフラム2の外周部の2箇所で固定(接合部6は1点固定、外周部は全周固定)されており、接合部6は圧力の印加や温度の変化等により剥離しないよう溶接を用いて強固に固定されている。この接合部6はダイアフラム2の薄膜部全面ではなく、一部領域(1点)でのみ固定することで、ダイアフラム2と弾性体3の線膨張係数差の影響を緩和している。弾性体3は接合部6を介してダイアフラム2と接合されているため、ダイアフラム2の変形と連動してたわみが発生するが、弾性体3の弾性係数を適切に設計することにより、ダイアフラム2の弾性係数を補強することができる。
【0031】
弾性体3の薄膜部の深さは、ダイアフラム2の高さよりも浅くなっており、弾性体3とダイアフラム2は接合部6を介して互いに押し合っている。互いに押し合うことにより弾性体3は膨らむように押し上げられ、ダイアフラム2は押し下げられる。圧力が加わっていない状態において弾性体3が押し上げられていることにより、圧力の印加に伴う弾性体3の凹凸反転を抑止し、感度の線形性の向上効果が得られる。また、ダイアフラム2が押し下げられていることにより、ダイアフラム2の裏面端部の主応力を、圧力が加わる時に発生する応力とは逆の圧縮応力とすることができ、圧力が加わった時のダイアフラム2に発生する主応力を低減させることが可能である。
【0032】
次に、ひずみセンサ4の構成について、図1乃至図3を用いて説明する。図3に示すように、ひずみセンサ4の表面中心にひずみゲージ7a、7b、7c、7dが形成されており、4つ一組のブリッジ回路が構成されている。また、ひずみセンサ4は、単結晶シリコン基板を材料に製作されており、ひずみゲージ7a、7b、7c、7dは、シリコン基板に不純物拡散することにより形成されている。更に、ひずみゲージ7a、7bはX方向が、ひずみゲージ7c、7dはダイアフラム2の円周方向(以下、Y方向という)が、それぞれ電流が流れる方向と平行になるように配置されている。
【0033】
このようなひずみセンサ4の構成により、X方向とY方向のひずみ差に比例した出力が、ブリッジ回路の中間電位の差動出力(Out1−Out2)として得られる。一方で、ひずみゲージ7a、7b、7c、7dの電気抵抗の温度変化による影響は、温度特性が4つのひずみゲージで等しければ、電気抵抗の温度変化も等しくなるので、ひずみセンサ4の出力には影響しない。
【0034】
例えば、スリット8A及び8Bの形成されていない弾性体3の場合、圧力による変形は軸対称で、ダイアフラム2の中央にひずみセンサ4を配置すると、X方向とY方向のひずみ差が得られない。よって、ひずみセンサ4は感度の向上を目的に、弾性体3の薄膜部端部に設置している。ひずみセンサ4を弾性体3の薄膜部端部に設置することで、ひずみセンサ4にX方向とY方向とでそれぞれ圧縮ひずみと引張ひずみが発生し、ひずみ差を大きくすることが可能になるためである。これにより、圧力センサ1の感度の向上が見込める。
【0035】
また、弾性体3とひずみセンサ4は、接合層を介して強固に固定されている。両者の接合には、金属(Au/Sn或いはAu/Ge)接合や低融点ガラス(バナジウム系ガラス)を用いることにより、長期間の温度や圧力印加に伴うクリープ変形を抑制できる。これら金属(Au/Sn或いはAu/Ge)や低融点ガラス(バナジウム系ガラス)は堅い材料であるため、弾性体3の変形をひずみセンサ4に効率よく伝達することができる。
【0036】
また、サポート5は、計測対象である流体の流れる配管に取り付けられたフランジ(図示せず)とダイアフラム2との接続をサポートする部材である。フランジと配管はねじにより固定されており、フランジとダイアフラム2を直接固定してしまうと、ねじを締結することによる影響で感度が変化してしまうことが考えられるので、サポート5の下部から伝達されるねじの締結に伴う応力を緩和するために、サポート5の一部にくびれ5aを設けている。
【0037】
また、上述した如く、弾性体3にはスリット8A及び8Bが形成されており、弾性体3をZ方向に貫通している。スリット8A及び8Bは、図1のX方向において、長さは弾性体3の端から端まで形成されており、位置はひずみセンサ4から一定距離離れた場所に設けられている。ひずみセンサ4が設置している弾性体3は梁状になっており、中央と両端がダイアフラム2で固定されている。
【0038】
例えば、弾性体3にスリット8A及び8Bを形成しない圧力センサ1において、弾性体3の端部に固定したひずみセンサ4には、温度変化に伴い出力が発生する。これは、ダイアフラム2の材料であるステンレス鋼の線膨張係数が、ひずみセンサ4の材料であるシリコンの5倍以上と差があるためである。また、弾性体3の変形を効率よくひずみセンサ4に伝えるための接合層が堅い材料であるAu/SnやAu/Geや低融点ガラス(バナジウム系ガラス)で形成されている影響も大きい。
【0039】
圧力センサ1の外部の温度が低下すると、ひずみセンサ4にはX方向とY方向共に、圧縮のひずみが発生する。X方向とY方向のひずみが等しければ出力は変化しないが、Y方向の圧縮ひずみの方が大きくなるために、出力が変化する。これは、X方向は弾性体3が変形することにより応力緩和しているが、Y方向では弾性体3の面積が小さく変形し辛いため、X方向よりも応力を緩和できないことが原因である。
【0040】
また、弾性体3とひずみセンサ4の固定には、低融点ガラスなどの300℃以上の高温での接合を用いるため、接合後に温度を低下させると、X方向とY方向でひずみ差が発生し、初期ゼロ点の出力オフセットとして検出される。この初期ゼロ点の出力オフセットが発生すると、オフセット分をゼロに修正するための回路が必要になる他、圧力センサ1の使用範囲が狭くなるなどの課題が発生する。また、圧力センサ1の使用時においても、民生用圧力センサにおいては100℃程度、車載用圧力センサにおいては160℃程度の温度は変化し、圧力センサ1のゼロ点出力は変動する。
【0041】
よって、これを改善するため、弾性体3にスリット等の加工を施すことによって、弾性体3をY方向にも変形しやすくし、ひずみセンサ4に加わるY方向の圧縮ひずみを低減する。これにより、X方向とY方向とのひずみの差が小さくなり、温度変化に伴うゼロ点の出力変動を抑制することを可能とする。ひずみセンサ4にかかるY方向への圧縮ひずみを緩和する手段として、本実施例では、弾性体3にライン状のスリット8A及び8Bを形成している。
【0042】
弾性体3の薄膜部の深さはダイアフラム2の高さよりも浅くなっており、弾性体3とダイアフラム2は接合部6を介して互いに押し合っている。互いに押し合うことにより、弾性体3は少なくとも平坦よりもひずみセンサ4の設置面に向かって凸形状になっている。
弾性体3が凸形状であることにより、流体による圧力が加わることに伴い、弾性体3の凹凸が反転することを防いでいる。これにより、弾性体3の凹凸が反転することによる座屈やひずみセンサ4の符号反転を防ぎ、感度の線形性向上を図っている。
【0043】
また、上述した如く、ダイアフラム2は金属材料で製作されており、耐食性の高いステンレス鋼を材質とすると共に、ダイアフラム2は円筒形をしており、中央部は加工により端部より薄膜化されており、薄膜化したダイアフラム2の中央部の中心は、弾性体3との接合のために一部盛り上がった構造となっている。ダイアフラム2の形成方法としてプレス加工を用いており、ダイアフラム2の外周部にはサポート5と溶接するためのつば2aが備わっており、ダイアフラム2のつば2aとサポート5を溶接することで流体の漏れを防いでいる。ダイアフラム2の外周部と中心部までの間に屈曲部は存在せず、流体により圧力が加わった際の変形は屈曲部が存在する時に比べ大きく、感度も大きくなる。
【0044】
流体により圧力が加わった場合、ダイアフラム2は流体により押し上げられ、最大の主応力がダイアフラム2の裏面の端部に発生する。この引張の最大主応力が、ダイアフラム2の材料の耐力を超えないようにする必要があるため、圧力が加わっていない状態において、ダイアフラム2は弾性体3により押し下げられる構造となっている。ダイアフラム2が押し下げられることにより、圧力が加わっていない状態において、ダイアフラム2の裏面端部には圧縮の応力が発生している。この応力は、圧力が加わる時に発生する応力とは逆の応力であるため、ダイアフラム2に加わる主応力を低減することができ、圧力のダイナミックレンジを拡大している。
【0045】
このように本実施例の構成によれば、圧力センサ1の可動部分が、弾性体3とダイアフラム2の2つの部材で構成されていることになり、例えば、流体と直に接するために高耐食性材料を採用することが要求される部分については、ステンレス鋼等でなるダイアフラム2で構成し、ひずみセンサ4と結合する必要から低線膨張係数が要求される部分については、コバール合金、42合金又はインバー合金等のいずれかでなる弾性体3で構成するなど、各部材に求められる複数の機能にそれぞれ最も適した材料を独立して選択することが可能となる。
【0046】
このため、流体に対する高耐食性を維持しつつ、ひずみセンサ4の線熱膨張係数と、ひずみセンサ4が設けられる弾性体3の線熱膨張整数との差を小さくすることができるので、剥離や使用温度環境に関する上記の第1の課題を解決することができる。
【0047】
なお、上記の構成において、個別に設計されたダイアフラム2と弾性体3のそれぞれの表面を接合することにより、流体の圧力を受圧したダイアフラム2の変形を、ひずみセンサ4が設けられた弾性体3に伝達することができる。
【0048】
このため、接合されたこれら複数の部材が一体となって圧力センサ1としての機能が発揮される。ここで、例えば、ステンレス鋼でなるダイアフラム2と、コバール合金、42合金又はインバー合金等のいずれかでなる弾性体3とを、溶融部(溶接)でなる接合部を介して接合した場合であっても、両者は広い領域で接合されているのではなく、両者の一部同士が小さな面積で接合されているに過ぎない。
【0049】
従って、ダイアフラム2と弾性体3の間で線膨張係数に差があったとしても、そのことによって両者が剥離するおそれは、従来技術における面による接着に比べて少なくなる。
同様に、使用環境温度の変化によって線熱膨張係数の差に応じて生じる引っ張り応力又は圧縮応力の大きさも、広い面で接着されている場合に比べて小さい。
【0050】
また、上記の構成によれば、複数の部材によって圧力センサ1を構成することにより、単一の部材によって構成する場合に比べて材料の選択のみならず、各部材の形状及び寸法等の設計の自由度が大きくなる。
【0051】
即ち、可動部をダイアフラム2のみによって構成する場合は、可動部の弾性係数kはダイアフラム2のヤング率及び形状によって決まる。一方、ダイアフラム2及び弾性体3で可動部を構成する場合は、互いに接合された部材は全体としてk=k+k(ただし、kはダイアフラム2の弾性係数、kは弾性体3の弾性係数)に等しい弾性係数を有する可動部として動作する。このため、例えば、全体の弾性係数kを大きく変えることなく、ダイアフラム2の弾性係数kを小さく設計し、弾性体3の弾性係数kは大きく設計することなどが可能となるので、設計自由度が高まる。
【0052】
更に、可動部をダイアフラム2と弾性体3の2つに分離していることで、例えば、弾性体3を押し上げたり、ダイアフラム2を押し下げたりする構造が可能となる。
【0053】
また、流体により圧力が加わった場合、ダイアフラム2は流体により押し上げられ、最大の主応力はダイアフラム2の裏面の端部に発生し、この最大主応力がダイアフラム2の材料の耐力を超えないようにする必要がある。従来では圧力のダイナミックレンジを確保するため、最大主応力を緩和する構造、例えば、ダイアフラム裏面の端部の曲率を大きくするなどで対応してきた。しかしながら、ダイアフラムの裏面の端部の曲率を大きくするとダイアフラム自体の変形量が小さくなり、感度が低下するおそれがあった。
【0054】
そこで、本実施例のように、ダイアフラム2と弾性体3を互いに加圧する構造にすることで、ダイアフラム2を押し下げ、初期状態のダイアフラム2の裏面端部の主応力を圧力が加わる時に発生する応力とは逆の圧縮応力とすることができ、ダイアフラム2に加わる主応力を低減し、圧力センサによって測定することができる圧力の範囲が拡大できる。
【0055】
また、従来のダイアフラムでは、加工精度や接合による影響でダイアフラムの接合面が凹むことがあった。流体による圧力が加わることでダイアフラムは膨れることから、ダイアフラムは圧力が加わることで凹凸が反転していた。これは、ダイアフラムに接合されたひずみセンサにも影響を与えており、ひずみセンサに加わるひずみが引張から圧縮へと反転する。ダイアフラムの凹凸反転と、ひずみセンサの引張と圧縮の反転によりダイアフラムの座屈やひずみセンサの符号反転などが発生し、非線形性が大きくなる可能性があった。
【0056】
そこで、本実施例では、弾性体3を初期状態から押し上げることにより、圧力が加わることに伴う弾性体3の凹凸反転を抑止し、感度の線形性の向上を図るようにした。これらのことより、上記の第2の課題を解決することができる。
【0057】
従って、本実施例の構成によれば、ダイアフラムにステンレス鋼を採用した場合であっても、ダイアフラムとひずみセンサとが互いに剥離したりせず、かつ、使用環境温度の影響を受けにくいと共に、圧力センサの感度がダイアフラムを構成する材料の力学特性のみによって支配されず、圧力センサを構成する部材の設計自由度を高めることができる。
【実施例2】
【0058】
図4及び図5に、本発明の圧力センサの実施例2を示す。以下に示す実施例2では、実施例1との相違点のみ説明する。
【0059】
該図に示す本実施例の圧力センサ1は、弾性体3のひずみセンサ4が設置される部分以外に、ひずみセンサ4を挟むように、弾性体3をZ方向に貫通している第1の貫通穴9Aと、この第1の貫通穴9Aと連通し、ひずみセンサ4が設置されている側とは反対側の弾性体3に、Z方向に貫通している第2の貫通穴9Bが形成されている。
【0060】
即ち、本実施例の圧力センサ1でのひずみセンサ4からY方向に一定距離離れた場所の弾性体3に設けられている第1の貫通穴9Aは、X方向長さにおいて弾性体3の端から端まで形成され、また、接合部6から見てひずみセンサ4の設置している方向とは逆の弾性体3にも第2の貫通穴9Bが形成されている。ひずみセンサ4が設置している弾性体3は、梁状になっており、中央とひずみセンサ4が設置されている方向の端部でのみダイアフラム2で固定されている。
【0061】
このような本実施例の構成によれば、実施例1と同様な効果を得ることができることは勿論、弾性体3の固定箇所が実施例1よりも少なくなっているため、弾性体3の剛性は小さくなっており、弾性体3は実施例1に比べ大きく変形し、感度も大きくなる効果が得られる。
【実施例3】
【0062】
図6及び図7に、本発明の圧力センサの実施例3を示す。以下に示す実施例3では、実施例1との相違点のみ説明する。
【0063】
該図に示す本実施例の圧力センサ1は、ひずみセンサ4を挟むように弾性体3に形成され、弾性体3の端から端まで延びた2つのくぼみ(凹部)10A及び10Bを備えており、このくぼみ(凹部)10A及び10Bは、弾性体3を貫通していない構成である。
【0064】
即ち、本実施例の圧力センサ1では、くぼみ(凹部)10A及び10BのX方向において、長さは弾性体3の端から端まで形成されており、そのくぼみ(凹部)10A及び10Bの位置は、ひずみセンサ4から一定距離離れた場所に設けられている。弾性体3が梁状ではないため、接合部6がY方向に位置ズレしてしまったとしても、梁のねじれは抑制される。
【0065】
このような本実施例の構成によれば、実施例1と同様な効果を得ることができることは勿論、実施例1に比べくぼみ(凹部)10A及び10Bは、弾性体3を貫通していないため、変形は小さいが実装誤差や加工誤差などの位置ズレに強い構造を得ることができる。
【実施例4】
【0066】
図8及び図9に、本発明の圧力センサの実施例4を示す。以下に示す実施例4では、実施例1との相違点のみ説明する。
【0067】
該図に示す本実施例の圧力センサ1は、弾性体3の表面には、ひずみセンサ4が設置されているだけで、スリット等の加工が施されていないものである。
【0068】
このような本実施例の構成によれば、実施例1と同様な効果を得ることができることは勿論、実施例1に比べ変形は小さいが、実装誤差や加工誤差などの位置ズレに強く、加工コストも低減可能である。
【実施例5】
【0069】
図10及び図11に、本発明の圧力センサの実施例5を示す。以下に示す実施例5では、実施例1との相違点のみ説明する。
【0070】
該図に示す本実施例の圧力センサ1は、ダイアフラム2の中央部と端部の間に複数の屈曲部11が形成されている。
【0071】
即ち、本実施例の圧力センサ1は、弾性体3にはスリット8A及び8Bが形成されており、そのスリット8A及び8Bは、弾性体3を貫通している。そして、スリット8A及び8BのX方向において、長さは弾性体3の端から端まで形成されており、位置はひずみセンサ4から一定距離離れた場所に設けられている。ひずみセンサ4が設置されている弾性体3は梁状になっており、中央と両端がダイアフラム2に固定されている。
【0072】
また、ダイアフラム2は金属材料で製作されており、耐食性の高いステンレス鋼を材質とすると共に、ダイアフラム2は円筒形をしており、中央部は加工により端部より薄膜化されており、薄膜化した中央部の中心は弾性体3との接合のために一部盛り上がった構造となっている。しかも、ダイアフラム2の外周部(端部)と中心部(中央部)までの間に、複数の屈曲部11が形成されている構造となっている。
【0073】
このような本実施例の構成によれば、実施例1と同様な効果を得ることができることは勿論、ダイアフラム2の外周部(端部)と中心部(中央部)までの間に、複数の屈曲部11が形成されており、流体により圧力が加わった際の応力集中を緩和することができる。
【実施例6】
【0074】
図12に、本発明の実施例6としての絶対圧センサを示す。
【0075】
該図に示す如く、本実施例の絶対圧センサ12は、上述した実施例1と同様な構成の圧力センサ1と気密ハウジング13で構成されている。気密ハウジング13は、ダイアフラム2やひずみセンサ4を囲うようにサポート5と固定されており、ひずみセンサ4の周囲の気密空間14を一定の気圧に維持している。
【0076】
気密ハウジング13とサポート5の固定には、例えば、抵抗溶接やレーザー溶接などの気密性を維持可能な固定方法を用いる。これにより、絶対圧センサ12の使用時には、計測対象以外の圧力変動の影響を受けない構造としている。
【0077】
サポート5の外周部には気密ハウジング13と溶接するためのつば5bが備わっており、サポート5のつば5bを気密ハウジング13に隙間なく固定することにより、気密空間14の気密が確保される。抵抗溶接やレーザー溶接などの固定方法を用いる場合、サポート5のつば5bの厚さが厚すぎると溶接時に溶融部を形成することが困難になるので、つば5bの厚さは0.20mm以下であることが好ましい。より好ましいつば5bの厚さは0.15mm以下である。また、つば5bの厚さが薄すぎるとつば5bが溶接の影響で損傷して気密空間14の気密が確保できなくなるので、つば5bの厚さは0.10mm以上であることが好ましい。
【0078】
上記の好ましい厚さを有するつば5bを用いて抵抗溶接やレーザー溶接を行う場合、つば5bの厚さが薄いため、溶接の衝撃でつば5bに貫通孔が形成されたり、溶接後の冷却の過程でつば5bが割れたりして、気密空間14の気密が確保できなくなる恐れがある。サポート5を形成する材料に異物や空隙などの欠陥の少ない材料を採用することは、そのような異物や空隙などの欠陥がつば5bの部分に存在することが防止され、つば5bに貫通孔が形成されたり割れたりする恐れがなくなるため、好ましい。つば5bの部分に異物や空隙などの欠陥の少ないサポート5を製造するには、例えば、真空再溶解法や鍛造法などの公知の技術を採用した材料を機械加工して製造することができる。
【0079】
サポート5を形成する材料の欠陥を少なくする方法として鍛造法を選択した場合、鍛造によって形成される鍛流線の方向(ファイバー方向)がつば5bの面内方向と一致するようにしてサポート5を製造することがより好ましい。鍛造された金属材料では鍛流線の方向の引張強さが他の方向に比べて大きいので、鍛流線の方向をつば5bの面内方向と一致させることにより、溶接後の冷却の過程でつば5bが割れることをより確実に防止することができる。なお、サポート5の鍛流線の方向は、サポート5の切断面を研磨して光学顕微鏡等により金属組織を観察するなどの方法により容易に判別することができる。
【0080】
ひずみセンサ4で計測した出力は、気密ハウジング13に形成された貫通電極15から外部に引き出されている。貫通電極15はメッキで形成されており、ひずみセンサ4とはフレキシブル基板電極(図示せず)を介して接続され、かつ、気密空間14の気密が確保されている。
【0081】
一方、サポート5は、計測対象である流体の流れる配管に取り付けられたフランジ16とダイアフラム2との接続をサポートする部材である。フランジ16と配管はねじにより固定されており、フランジ16とダイアフラム2を直接固定してしまうとねじの締結影響で感度が変化してしまうことが考えられる。
【0082】
そこで、サポート5の下部から伝達されるねじ締結に伴う応力を緩和するために、サポート5の一部にくびれ5aを設けている。
【0083】
このような本実施例の構成の絶対圧センサであっても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【実施例7】
【0084】
図13に、本発明の実施例7としての差圧センサを示す。
【0085】
該図に示す如く、本実施例の差圧センサ17は、互いに対向配置され、流体の圧力により変形する第1のダイアフラム22及び第2のダイアフラム32と、第1のダイアフラム22及び第2のダイアフラム32の間に配置され、一方側が第1のダイアフラム22と接合すると共に、他方側が第2のダイアフラム32と接合する弾性体3と、弾性体3の一方側又は他方側で、かつ、第1のダイアフラム22及び第2のダイアフラム32の中心に相当する位置から離れた端部側(図13の左側)に設置され、第1のダイアフラム22及び第2のダイアフラム32の変形と連動する弾性体3の変形をひずみとして検出するひずみセンサ4とを備え、弾性体3は、ひずみセンサ4を形成する材料の線膨張係数に近い線膨張係数をもつ材料から成って概略構成されている。
【0086】
即ち、本実施例の差圧センサ17は、上述した実施例1と類似する構成の2つの圧力センサ21及び31と気密ハウジング18で構成される。圧力センサ21及び31には、それぞれ第1のダイアフラム22と第2のダイアフラム32が備えられており、圧力センサ21及び31に共通する弾性体3を挟んで互いに対向するように固定されている。また、気密ハウジング18は、圧力センサ21及び31を囲っており、圧力センサ21及び31の周囲の気密空間14を一定の気圧に維持している。これにより、計測対象以外の圧力変動の影響を受けない構造としている。
【0087】
また、第1のダイアフラム22と第2のダイアフラム32が第1の流体と第2の流体にそれぞれ接しており、第1のダイアフラム22と第2のダイアフラム32は、それぞれ接合部26と接合部36にて弾性体3に接合されている。接合部26と接合部36は溶接により強固に固定されており、第1の流体と第2の流体の圧力に差が発生した際に、第1のダイアフラム22と第2のダイアフラム32が変形する構造となっている。第1のダイアフラム22と第2のダイアフラム32のそれぞれの変形と連動して弾性体3にたわみが発生し、そのたわみをひずみセンサ4で検出することで第1の流体と第2の流体の差圧を計測するものである。第1の流体と第2の流体は、同じ流体系の異なる場所と連通している同一の流体であってもよい。
【0088】
このような本実施例の構成の差圧センサであっても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【0089】
また、本発明に係る圧力センサ1又は差圧センサ17は、例えば、半導体製造装置に用いられる質量流量制御装置に組み込んで、評価対象の圧力をモニタリングする用途に用いることができる。
【0090】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものでは無く、様々な変形例が含まれる。
例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものでは無い。また、実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1、21、31…圧力センサ、2…ダイアフラム、2a…ダイアフラムのつば、3…弾性体、4…ひずみセンサ、5、25、35…サポート、5a…サポートのくびれ、5b…つば、6、26、36…接合部、7a、7b、7c、7d…ひずみゲージ、8A、8B…スリット、9A…第1の貫通穴、9B…第2の貫通穴、10A、10B…くぼみ(凹部)、11…屈曲部、12…絶対圧センサ、13、18…気密ハウジング、14…気密空間、15…貫通電極、16…フランジ、17…差圧センサ、22…第1のダイアフラム、32…第2のダイアフラム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13