特許第6238148号(P6238148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238148
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】精製装置及びこれを利用した精製方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 3/32 20060101AFI20171120BHJP
   B01D 3/14 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B01D3/32 Z
   B01D3/14 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-531533(P2016-531533)
(86)(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公表番号】特表2016-525448(P2016-525448A)
(43)【公表日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】KR2014007097
(87)【国際公開番号】WO2015016653
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0091797
(32)【優先日】2013年8月1日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0098792
(32)【優先日】2014年8月1日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・キュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・シン
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−503307(JP,A)
【文献】 米国特許第05035776(US,A)
【文献】 米国特許第06171449(US,B1)
【文献】 特開昭60−226836(JP,A)
【文献】 米国特許第04615769(US,A)
【文献】 特開昭48−083089(JP,A)
【文献】 米国特許第04559108(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 3/00−3/42
C07B 31/00−63/04
C07C 1/00−409/44
F25J 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料が流入される第1原料供給ポートを有し、流入された原料を蒸留させる第1蒸留塔と、前記第1蒸留塔の塔頂領域で流出される塔頂フローを凝縮し、その一部を第1蒸留塔へ還流させる第1凝縮器と、第1蒸留塔の下部に流出される物質を移送させる第1流出ルートとを含む第1蒸留部と;
原料が流入される第2原料供給ポートを有し、流入された原料を蒸留させる第2蒸留塔と、前記第2蒸留塔の塔頂領域で流出される塔頂フローを凝縮し、その一部を第2蒸留塔へ還流させる第2凝縮器と、前記第2蒸留塔の塔底領域で流出される塔底フローを加熱し、少なくとも一部を第2蒸留塔へ還流させる第2再沸器と、第2蒸留塔の下部に流出される物質を移送させる第2流出ルートとを含む第2蒸留部と;
前記第2蒸留塔の塔頂領域で流出される塔頂フローを、前記第2凝縮器に導入させる前に、前記第1蒸留塔の塔底領域で流出される塔底フローと熱交換させる熱交換器と;
第1流出ルートまたは第2流出ルートで流出される物質を回収する回収装置と;
回収装置の蒸気相を第1蒸留塔の下部に連結する連結ルートと;
を含み、
第2蒸留塔の運転圧力P2に対する第1蒸留塔の運転圧力P1の比P1/P2が0.02〜0.85であり、
第2蒸留塔の塔頂フローの温度T2[℃]に対する第1蒸留塔の塔底フローの温度T1[℃]の比T1/T2が0.5〜0.96であり、
第2蒸留塔の運転圧力P2と第1蒸留塔の運転圧力P1の圧力差が1kg/cmg〜3.5kg/cmgであり、
第2蒸留塔の塔頂フローの温度T2と第1蒸留塔の塔底フローの温度T1との間の温度差が5℃〜25℃であり、
第1原料供給ポートに流入される原料の流量V1に対する第1流出ルートで流出される物質の流量V2の比V2/V1が0.0009〜0.005であり、
回収装置に回収される物質の流量V6に対する連結ルートを介して第1蒸留塔の下部に流入される物質の流量V7の比V7/V6が0.5〜0.95である、
n−ヘキサンを回収するための精製装置。
【請求項2】
前記第1蒸留塔の塔底領域で流出される塔底フローを加熱し、少なくとも一部を第1蒸留塔へ還流させる第1再沸器を含む、請求項1に記載の精製装置。
【請求項3】
第1再沸器は、熱交換器を経た第1蒸留塔の塔底フローを加熱し、少なくとも一部を第1蒸留塔へ還流させる、請求項2に記載の精製装置。
【請求項4】
第1再沸器は、熱交換器を経た第1蒸留塔の塔底フローと異なる他の塔底フローを、加熱し、少なくとも一部を第1蒸留塔へ還流させる、請求項2に記載の精製装置。
【請求項5】
第2原料供給ポートに流入される原料の流量V3に対する第2流出ルートで流出される物質の流量V4の比V4/V3が0.0009〜0.004である、請求項1に記載の精製装置。
【請求項6】
第1原料供給ポート及び第2原料供給ポートに流入される原料の全体流量V5に対する回収装置に回収される物質の流量V6の比V6/V5が0.001〜0.005である、請求項に記載の精製装置。
【請求項7】
第1蒸留塔及び第2蒸留塔はn−ヘキサン回収工程である、請求項1に記載の精製装置。
【請求項8】
前記回収装置を用いてn−ヘキサンを回収する、請求項に記載の精製装置。
【請求項9】
第1蒸留塔に原料を流入させる段階と;第2蒸留塔に原料を流入させる段階と;前記流入された原料が第1蒸留塔及び第2蒸留塔でそれぞれ塔頂フローと塔底フローとに分離される段階と;前記第2蒸留塔の塔頂領域で流出される塔頂フローと前記第1蒸留塔の塔底領域で流出される塔底フローとを熱交換させる段階と;第1蒸留塔または第2蒸留塔の下部に流出される物質を回収する段階と;前記回収段階で発生する蒸気相を第1蒸留塔の下部に伝達する段階と;を含み、
第2蒸留塔の運転圧力P2に対する第1蒸留塔の運転圧力P1の比P1/P2が0.02〜0.85であり、
第2蒸留塔の塔頂フローの温度T2[℃]に対する第1蒸留塔の塔底フローの温度T1[℃]の比T1/T2が0.5〜0.96であり、
第2蒸留塔の運転圧力P2と第1蒸留塔の運転圧力P1の圧力差が1kg/cmg〜3.5kg/cmgであり、
第2蒸留塔の塔頂フローの温度T2と第1蒸留塔の塔底フローの温度T1との間の温度差が5℃〜25℃であり、
第1原料供給ポートに流入される原料の流量V1に対する第1流出ルートで流出される物質の流量V2の比V2/V1が0.0009〜0.005であり、
回収装置に回収される物質の流量V6に対する連結ルートを介して第1蒸留塔の下部に流入される物質の流量V7の比V7/V6が0.5〜0.95である、n−ヘキサンの精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、原料を蒸留して精製する精製装置及び精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、原油(Crude Oil)などのような各種原料物質は、通常、多数の化学物質の混合物である場合が多いため、それ自体で産業に利用されることは珍しくて、それぞれの化合物に分離された後に使用される。混合物を分離する化学工程のうち代表的なものが蒸留工程である。
【0003】
このような蒸留工程では、最小限のエネルギーで分離効率を向上させることが解決すべき課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、原料を蒸留して精製する精製装置及び精製方法に関し、蒸留塔で内部熱源の活用を極大化して、外部エネルギーの使用を節減する精製装置及び精製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、精製装置に関する。1つの例示で、前記精製装置は、第1蒸留部、第2蒸留部及び熱交換器を含む。図1は、例示的な精製装置100を示す。図1に示されたように、本出願の精製装置100は、原料が流入される第1原料供給ポート103を有し、流入された原料を蒸留させる第1蒸留塔101と、前記第1蒸留塔101の塔頂領域で流出される塔頂フローを凝縮し、その一部を第1蒸留塔へ還流させる第1凝縮器104と、第1蒸留塔101の下部に流出される物質を移送させる第1流出ルート11とを含む第1蒸留部を含むことができる。また、本出願の精製装置100は、原料が流入される第2原料供給ポート105を有し、流入された原料を蒸留させる第2蒸留塔102と、前記第2蒸留塔102の塔頂領域で流出される塔頂フローを凝縮し、その一部を第2蒸留塔102へ還流させる第2凝縮器106と、前記第2蒸留塔102の塔底領域で流出される塔底フローを加熱し、その一部を第2蒸留塔102へ還流させる第2再沸器107と、第2蒸留塔102の下部に流出される物質を移送させる第2流出ルート12とを含む第2蒸留部を含むことができる。また、本出願の精製装置100は、前記第2蒸留塔102の塔頂領域で流出される塔頂フローを、前記第2凝縮器106に導入させる前に、前記第1蒸留塔101の塔底領域で流出される塔底フローと熱交換させる熱交換器108を含むことができる。前記で、第1蒸留塔101の塔底領域で流出される塔底フローは、少なくとも一部または全部が第1蒸留塔101の塔底領域へ還流されることができる。本出願の具体例で、前記熱交換器108は、第2蒸留塔102の塔頂領域で流出される高温の塔頂フローの熱を、第1蒸留塔101の塔底領域で流出される塔底フローに伝達することができる。前記熱交換器108を経た第2蒸留塔102の塔頂フローは、前記第2凝縮器106に流出されることができる。前記熱交換器108を使用することによって、第2蒸留塔102の塔頂フローは、さらに低い温度で第2凝縮器106に流出され、エネルギーを節減させることができ、第1蒸留塔101の塔底フローは、加熱され、第1蒸留塔101へ還流されることができる。
【0006】
本出願の例示的な精製装置200は、図2に示されたように、第1蒸留塔201の塔底領域で流出される塔底フローを加熱し、その一部を第1蒸留塔201へ還流させる第1再沸器209をさらに含むことができる。前記第1再沸器209は、図2のように、熱交換器を経た第1蒸留塔201の塔底フローとは異なる他の塔底フローを加熱し、その一部を第1蒸留塔201へ還流させることができるが、これに限定されるものではない。例えば、図示してはいないが、第1再沸器209は、熱交換器を経た第1蒸留塔201の塔底フローを加熱し、少なくとも一部を第1蒸留塔201へ還流させることができる。前記第1再沸器209を経た塔底フローは、第1蒸留塔201へ還流されることができる。したがって、第1蒸留塔201の塔底フローは、熱交換器208から熱源を受けて加熱されることによって、第1再沸器209では、前記塔底フローの加熱に使用されるエネルギーが節減されることができる。
【0007】
1つの例示で、本出願の第2蒸留塔102の運転圧力P2を第1蒸留塔101の運転圧力P1より高く制御することができる。例えば、第2蒸留塔の運転圧力P2と第1蒸留塔の運転圧力P1の圧力差が0.25〜3.5kg/cmg、1〜3.3kg/cmg、1.5〜3.0kg/cmg、または2.0〜2.8kg/cmgであることができる。1つの例示で、第2蒸留塔の運転圧力P2に対する第1蒸留塔の運転圧力P1の比P1/P2が、0.02〜0.85、0.03〜0.80、0.05〜0.73、0.08〜0.70、0.10〜0.67、0.1〜0.65、0.1〜0.60または0.1〜0.55であることができる。第1蒸留塔101及び第2蒸留塔102の圧力を前記のように制御することによって、第1蒸留塔の塔底フロー及び第2蒸留塔の塔頂フローの温度を後述するように制御することができ、これにより、内部のエネルギーを効果的に活用することができる。
【0008】
前記で第2蒸留塔102の塔頂フローと第1蒸留塔101の塔底フローが熱交換されるためには、前記塔頂フローと塔底フローとの間に5℃〜25℃、10℃〜23℃、15℃〜22℃、または18℃〜22℃の温度差が発生するように工程を制御することができる。具体的に、第2蒸留塔の塔頂フローの温度T2に対する第1蒸留塔の塔底フローの温度T1の比T1/T2が、0.5〜0.96、0.53〜0.95、0.55〜0.94、0.57〜0.93、0.60〜0.92、0.65〜0.90、0.70〜0.90または0.75〜0.85であることができる。このような温度の比率を満足させるために、前述したように、第1蒸留塔または第2蒸留塔の圧力を制御する方法を行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0009】
1つの例示で、第2蒸留塔の運転圧力は、1.5〜3.5kg/cmg、2.0〜3.3kg/cmg、2.3〜3.0kg/cmg、または2.5〜2.9kg/cmgであることができる。また、第1蒸留塔の運転圧力は、0.1〜1.5kg/cmg、0.15〜1.0kg/cmg、0.2〜0.8kg/cmgであることができる。本明細書で運転圧力は、特に別途規定しない限り、蒸留塔の塔頂領域の運転圧力であることができる。前記運転圧力は、第2蒸留塔の運転圧力P2に対する第1蒸留塔の運転圧力P1の比P1/P2を満足する限り、特に制限されない。本出願では、前記運転圧力の制御を通じて、フロー間の熱の交換が起き、外部熱源の代わりに、既存プロセス間の熱交換を通じて、工程のエネルギー効率を向上させることができる。
【0010】
また、1つの例示で、図3に示されたように、本出願の精製装置300は、第1流出ルート11または第2流出ルート12で流出される物質を回収する回収装置310をさらに含むことができる。前記回収装置310は、第1流出ルート11及び/または第2流出ルート12に流出された物質で一部の有効成分を回収することができる。
【0011】
一方、第1蒸留塔101の塔底フローと第2蒸留塔102の塔頂フローの熱交換のための方案として、前記圧力を調節すること以外にも、第1蒸留塔101の塔頂製品の一部を第1蒸留塔101の塔底フローとして流出させることができる。第1蒸留塔101の下部における高温の塔底フローは、第1蒸留塔における低温の塔頂製品の一部が混ざることによって、前記塔底フロー内の沸点が高い物質の濃度を相対的に低めて、第1蒸留塔101の塔底フロー全体の温度は低くなるようになり、第2蒸留塔102の塔頂フローとの関係から、前述した温度比T1/T2を満足させることができる。前記第1蒸留塔101の塔頂製品を第1蒸留塔101の塔底フローとして流出させる方法は、特に限定されず、当業界の一般的な工程を用いて行うことができる。1つの例示で、第1蒸留塔101の第1流出ルート11を通じて後述するように流量を制御することによって、第1蒸留塔の塔頂製品を塔底フローまたは第1流出ルート11に出る下部流出物質として流出させることができるが、これに限定されるものではない。
【0012】
本明細書で、用語「塔頂製品」は、第1蒸留塔または第2蒸留塔の塔頂領域で生成され、相対的に沸点が低い低沸点成分が濃厚(rich)な物質を意味し、用語「塔底製品」は、第1蒸留塔または第2蒸留塔の塔底領域で生成され、相対的に沸点が高い高沸点成分が濃厚な物質を意味する。前記で用語「低沸点成分が濃厚な物質」というのは、原料に含まれた低沸点成分、高沸点成分及び中間沸点成分それぞれの含量より、塔頂領域で生成され、相対的に沸点が低い低沸点成分の含量がさらに高い物質を意味し、例えば、製品に含まれた低沸点成分の含量が80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上または99重量%以上の製品を意味することができる。また、前記で用語「高沸点成分が濃厚な物質」というのは、原料に含まれた低沸点成分、高沸点成分及び中間沸点成分それぞれの含量より、塔底領域で生成され、相対的に沸点が高い高沸点成分の含量がさらに高い物質を意味し、例えば、製品に含まれた高沸点成分の含量が80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上または99重量%以上の製品を意味することができる。また、本明細書で、用語「塔頂領域」は、第1蒸留塔または第2蒸留塔の上部領域を意味し、具体的に、原料が供給される第1原料供給ポートまたは第2原料供給ポートを基準として、塔の上部領域を意味することができる。また、本明細書で、用語「塔底領域」は、第1蒸留塔または第2蒸留塔の下部領域を意味し、具体的に、原料が供給される第1原料供給ポートまたは第2原料供給ポートを基準として、塔の下部領域を意味することができる。
【0013】
前述したように、必要時に熱交換効率を極大化させるために、第1蒸留塔301の塔底フローの温度をさらに低める必要がある。この際、第1蒸留塔の第1流出ルート11を通じて下部に流出される物質の流量を制御することができ、この際、流出された物質において一部の有効成分を前記回収装置310を用いてさらに回収することができる。
【0014】
本出願の具体例で、前記第1原料供給ポートに流入される原料の流量V1に対する第1流出ルート11で流出される物質の流量V2の比V2/V1が、0.0009〜0.005、0.001〜0.004、0.0015〜0.0035、0.0016〜0.0034、0.0017〜0.0033、0.0018〜0.0032、0.0019〜0.0031、0.002〜0.003、0.0021〜0.0029または0.0022〜0.0028であることができる。また、前記第2原料供給ポートに流入される原料の流量V3に対する第2流出ルート12で流出される物質の流量V4の比V4/V3が、0.0009〜0.004、0.001〜0.003、0.001〜0.0025、0.0011〜0.0024、0.0012〜0.0023、0.0013〜0.0022、0.0014〜0.0021または0.0015〜0.002であることができる。1つの例示で、本出願の精製装置において、前記V2/V1値がV4/V3値より大きくてもよい。すなわち、第1蒸留塔の下部に流出される物質の流量をさらに大きく制御することができる。また、第1原料供給ポート及び第2原料供給ポートに流入される原料の全体流量V5に対する回収装置で回収される物質の流量V6の比V6/V5が、0.001〜0.005、0.0012〜0.0045、0.0013〜0.004、0.0014〜0.0035、0.0015〜0.003または0.0016〜0.0025であることができる。前記のように、第1蒸留塔及び第2蒸留塔を含む本出願の精製装置における流量を前記のように制御することによって、本出願で目的する内部エネルギーの活用をより効率的に具現させることができる。具体的に、前記第1原料供給ポートに流入される原料の流量V1に対する第1流出ルート11で流出される物質の流量V2の比V2/V1を制御することによって、第1蒸留塔の下部に流出される物質の量を制御し、第1蒸留塔の塔頂製品を塔底フローとして流出させることができ、これにより、第1蒸留塔の塔底温度を前述したように制御することができ、熱交換を効率的に行うことができる。また、前記第2原料供給ポートに流入される原料の流量V3に対する第2流出ルート12で流出される物質の流量V4の比V4/V3を制御することによって、第2蒸留塔の塔頂または塔底温度を前述したように制御することができる。また、第1原料供給ポート及び第2原料供給ポートに流入される原料の全体流量V5に対する回収装置で回収される物質の流量V6の比V6/V5を制御することによって、有効物質をより効率的に回収し、全体工程の効率を向上させることができる。
【0015】
1つの例示で、本出願の精製装置は、前記回収装置310の蒸気相を第1蒸留塔301の下部に連結する連結ルート13をさらに含むことができる。前記回収装置310の上部の蒸気相は、第1蒸留塔301の下部に熱源を伝達することができる。すなわち、回収装置に供給するエネルギーを全量回収して活用することができる。これを通じて、前記回収装置310の蒸気相が第1蒸留塔301の下部に導入されることによって、回収装置が再沸器と同一の役目を行うことができる。1つの例示で、回収装置で回収される物質の流量V6に対する連結ルート13を介して第1蒸留塔の下部に流入される物質の流量V7の比V7/V6が、0.5〜0.95、0.55〜0.93、0.60〜0.90、0.65〜0.89、0.67〜0.88、0.7〜0.87、0.75〜0.86または0.77〜0.85であることができる。前記のように回収装置に回収される物質の流量及び連結ルートを介して第1蒸留塔の下部に流入される物質の流量を制御することによって、回収装置の熱源を用いた全体工程のエネルギー効率の向上を具現することができる。
【0016】
本出願で原料は、特に制限されず、1つの例示で、本出願の第1蒸留塔及び第2蒸留塔は、ソルベント回収工程であることができるが、これに限定されるものではない。本出願の精製装置は、混合物を分離する化学工程なら、制限なしに適用されることができる。したがって、前記回収装置310を通じて回収する一部の有効成分は、ソルベントであることができ、前記ソルベントは、n−hexaneであることができるが、これに限定されるものではない。
【0017】
本出願は、また、原料の精製方法に関する。例えば、前記精製方法は、前述した精製装置によって行われることができる。例示的な方法は、第1蒸留塔101に原料を流入させる段階と;第2蒸留塔102に原料を流入させる段階と;前記流入された原料が第1蒸留塔101及び第2蒸留塔102でそれぞれ塔頂フローと塔底フローとに分離される段階と;前記第2蒸留塔102の塔頂領域で流出される塔頂フローと前記第1蒸留塔101の塔底領域で流出される塔底フローを熱交換させる段階とを含むことができる。1つの例示で、前記熱交換させる段階を通じて熱を交換することによって、外部熱源の代わりに、既存プロセス間の熱交換が起きるようにすることができる。前記第1蒸留塔及び/または第2蒸留塔の運転圧力または運転温度を制御することは、いずれも、前述したように行うことができる。また、第1蒸留塔及び/または第2蒸留塔の各流れの流量を制御することは、いずれも、前述したように行うことができる。
【0018】
1つの例示で、本出願の原料の精製方法は、第1蒸留塔または第2蒸留塔の下部に流出される物質を回収する段階をさらに含むことができる。すなわち、第1蒸留塔の第1流出ルート11または第2蒸留塔の第2流出ルート12を介して各蒸留塔の下部に流出される物質を前述した回収装置に回収させることができる。また、前記精製方法は、前記回収段階で発生する蒸気相を第1蒸留塔の下部に伝達する段階をさらに含むことができる。すなわち、前記回収装置の連結ルート13を介して第1蒸留塔の下部に前記蒸気相を移送させることができる。本出願による原料の精製方法は、前記回収段階を通じてソルベントを回収することができる。
【0019】
本出願の具体例で、前記精製方法は、前述したように、第1蒸留塔301の塔底フローと第2蒸留塔302の塔頂フローとの温度の差を用いて熱を交換することができる。1つの例示で、前記の熱交換のために、前述したように、第1蒸留塔301または第2蒸留塔302の塔底フローを流出させることによって、前記第1蒸留塔301の塔底フローまたは第2蒸留塔302の塔頂フローの温度を制御することができる。例えば、本出願による精製方法は、第1蒸留塔101の塔底フローと第2蒸留塔102の塔頂フローとの熱交換のための方案として、圧力を調節すること以外にも、第1蒸留塔101の塔頂製品の一部を第1蒸留塔101の塔底フローとして流出させることを含むことができる。第1蒸留塔101の下部における高温の塔底フローは、第1蒸留塔における低温の塔頂製品の一部が混ざることによって、前記塔底フロー内の沸点が高い物質の濃度を相対的に低めて、第1蒸留塔101塔底フロー全体の温度は、低くなるようになり、第2蒸留塔102の塔頂フローとの関係から、前述した温度比T1/T2を満足させることができる。前記第1蒸留塔101の塔頂製品を第1蒸留塔101の塔底フローに流出させる方法は、特に限定されず、当業界の一般的な工程を用いて行うことができる。1つの例示で、第1蒸留塔101の第1流出ルート11を介して前述したように流量を制御することによって、第1蒸留塔の塔頂製品を塔底フローとして流出させることができるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0020】
本出願による精製装置及び精製方法は、原料を蒸留する過程において蒸留塔で内部熱源活用を極大化し、外部熱源の使用を節減することによって、工程全体のエネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本出願の一実施例による精製装置を示す図である。
図2】本出願の一実施例による精製装置を示す図である。
図3】本出願の一実施例による精製装置を示す図である。
図4】従来の精製装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳しく説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【0023】
実施例1
図1のように、精製装置を使用してn−hexaneを回収した。具体的には、n−hexaneを含む原料を精製装置に導入して分離工程を行い、且つ、前記精製装置の第1蒸留塔の塔頂領域の運転圧力は、約0.3Kg/cmgであり、運転温度は、塔頂領域で約77℃、塔底領域では約95℃となるようにし、第2蒸留塔の塔頂領域の運転圧力は、約2.8Kg/cmgであり、運転温度は、塔頂領域で約117℃、塔底領域では約134℃となるようにした。また、第1蒸留塔の塔底領域に排出される塔底フローの一部は、熱交換器を経て第1蒸留塔へ還流させた。また、第1蒸留塔の塔頂領域で排出される塔頂フローの一部は、凝縮器を経て第1蒸留塔に再導入させ、他の一部は、製品として分離した。また、第2蒸留塔の塔頂フローは、第2蒸留塔の塔頂領域に流出され、熱交換器と凝縮器を順次に経て凝縮されたその一部を第2蒸留塔へ還流させ、残りの一部は、製品として貯蔵された。また、第2蒸留塔の塔底領域に排出される塔底フローの一部は、再沸器を経て第2蒸留塔へ還流させた。また、第1蒸留塔及び第2蒸留塔でそれぞれ第1流出ルート及び第2流出ルートを介して下部に流出される物質を移送させた。
【0024】
前記工程で、第1原料供給ポートに流入される原料の流量V1は、22ton/hr、第1流出ルートに流出される物質の流量V2は、0.05ton/hr、第2原料供給ポートに流入される原料の流量V3は、45ton/hr、第2流出ルートに流出される物質の流量V4は、0.07ton/hrに制御した。
【0025】
実施例2
図2のように、第1蒸留塔の熱交換器を経た塔底フローとは異なる他の塔底フローを再沸器を用いて加熱し、第1蒸留塔へ還流させたことを除いて、実施例1と同一の方法によって精製した。
【0026】
実施例3
図3と一緒に、精製装置の第1蒸留塔及び第2蒸留塔の塔底領域で排出される物質を回収する回収装置及び回収装置と、第1蒸留塔の下部を連結する連結ルートとをさらに含むことを除いて、実施例2と同一の方法によって精製した。
【0027】
前記工程で、第1原料供給ポート及び第2原料供給ポートに流入される原料の流量V5は、67ton/hr、回収装置に回収される物質の流量V6は、0.12ton/hr、前記回収装置の上部で連結ルートを介して第1蒸留塔の下部に流入される物質の流量V7は、0.1ton/hrに制御した。
【0028】
実施例4
第1蒸留塔の供給原料流量を45ton/hrで供給し、第2蒸留塔の供給原料の流量を22ton/hrで供給したことを除いて、実施例1と同一の方法で精製した。第1流出ルートを介して第1蒸留塔の下部に流出される物質の流量V2は、0.07ton/hrであり、第2流出ルートを通じて第2蒸留塔の下部に流出される物質の流量V4は、0.05ton/hrであった。
【0029】
比較例1
図4に示されたように、第1蒸留塔401及び第2蒸留塔402を別途に利用してn−hexaneを回収した。実施例2と同一の方法で精製するが、熱交換器は除外した。前記精製装置の第1蒸留塔及び第2蒸留塔は、同一に、塔頂領域の運転圧力は、約0.75Kg/cmg、運転温度は、塔頂領域で約88℃、塔底領域では約115℃となるように制御した。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
前記実施例及び比較例を見れば、本出願の実施例による精製装置は、生成物の純度は同一の水準に維持しながら、エネルギー節減を図ることができることが分かる。
【符号の説明】
【0033】
100、200、300、400 精製装置
101、201、301、401 第1蒸留塔
102、202、302、402 第2蒸留塔
103、203、303、403 第1原料供給ポート
104、204、304、404 第1凝縮器
105、205、305、405 第2原料供給ポート
106、206、306、406 第2凝縮器
107、207、307、407 第2再沸器
108、208、308 熱交換器
209、309、409 第1再沸器
310 回収装置
11 第1流出ルート
12 第2流出ルート
13 連結ルート
図1
図2
図3
図4