(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238149
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】新規な化合物半導体及びその活用
(51)【国際特許分類】
C01B 19/00 20060101AFI20171120BHJP
H01L 35/16 20060101ALI20171120BHJP
H01L 35/18 20060101ALI20171120BHJP
H01L 35/22 20060101ALI20171120BHJP
H01L 35/34 20060101ALI20171120BHJP
C01B 19/04 20060101ALI20171120BHJP
H01L 31/0256 20060101ALI20171120BHJP
H01L 31/072 20120101ALI20171120BHJP
【FI】
C01B19/00 F
H01L35/16
H01L35/18
H01L35/22
H01L35/34
C01B19/04 A
C01B19/00 C
H01L31/04 320
H01L31/06 400
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-534149(P2016-534149)
(86)(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公表番号】特表2017-507872(P2017-507872A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】KR2014011587
(87)【国際公開番号】WO2015080527
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2016年5月25日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0147674
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】オ−ジョン・クウォン
(72)【発明者】
【氏名】テ−フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チョル−ヒ・パク
(72)【発明者】
【氏名】キョン−ムン・コ
【審査官】
廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−513986(JP,A)
【文献】
特表2011−516370(JP,A)
【文献】
特表2011−523394(JP,A)
【文献】
Hidenori HIRAMATSU et al.,Crystal Structures, Optoelectronic Properties, and Electronic Structures of Layered Oxychalcogenides,Chem. Mater.,米国,2008年 1月 8日,Vol.20, No.1,p.326-334
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00−47/00
C01G 49/10−99/00
C01B 19/04
H01L 31/0256
H01L 31/072
H01L 35/16−35/22
H01L 35/18
H01L 35/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される化合物半導体:
<化1>
[Bi1−xMxCuu−wTwOa−yQ1yTebSez]Ac
前記化学式1において、Mが、Ba、Sr、Ca、Mg、Cs、K、Na、Cd、Hg、Sn、Pb、Mn、Ga、In、Tl、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素であり、Q1が、S、Se、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素であり、Tが、遷移金属元素より選択されたいずれか一種または二種以上の元素であり、Aが、遷移金属元素及び遷移金属元素と6族元素との化合物からなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上であり、0≦x<1、0.5≦u≦1.5、0≦w≦1、0.2<a<1.5、0≦y<1.5、0≦b<1.5、0≦z<1.5及び0<c<0.2である。
【請求項2】
前記化学式1のcが、0<c<0.05であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物半導体。
【請求項3】
前記Aが、Ag、Co、Ni、Au、Pd、Pt、Ag2Te、CuTe、Cu2Se及びCuAgSeからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物半導体。
【請求項4】
前記化学式1のx、y及びzが、それぞれx=0、y=0及びz=0であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物半導体。
【請求項5】
前記化学式1のw、y、b及びzが、それぞれw=0、y=0、b=0及びz=1であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物半導体。
【請求項6】
前記化学式1が、[Bi1−xMxCuOSe]Acで表されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物半導体。
【請求項7】
Bi1−xMxCuu−wTwOa−yQ1yTebSezで表される化合物にA粒子が不規則的に分布された化合物半導体:
ここで、Mが、Ba、Sr、Ca、Mg、Cs、K、Na、Cd、Hg、Sn、Pb、Mn、Ga、In、Tl、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素であり、Q1が、S、Se、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素であり、Tが、遷移金属元素より選択されたいずれか一種または二種以上の元素であり、Aが、遷移金属元素及び遷移金属元素と6族元素との化合物からなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上であり、0≦x<1、0.5≦u≦1.5、0≦w≦1、0.2<a<1.5、0≦y<1.5、0≦b<1.5及び0≦z<1.5である。
【請求項8】
Bi1−xMxCuu−wTwOa−yQ1yTebSezで表される材料を準備する段階と、
前記準備された材料に、Aを添加して混合物を形成する段階と、
前記混合物を焼結する段階と、を含む請求項1の化合物半導体の製造方法。
【請求項9】
前記Bi1−xMxCuu−wTwOa−yQ1yTebSezで表される材料準備の段階が、Bi2O3、Bi、Cu及びTの各粉末を混合し、選択的にM、Q1、Te及びSeのうち一種以上の粉末をさらに混合した後、熱処理することで行われることを特徴とする、請求項8に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項10】
前記混合物の形成段階が、AをBi1−xMxCuu−wTwOa−yQ1yTebSezに対し20mol%以下で添加することを特徴とする、請求項8に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項11】
前記混合物の形成段階が、AをBi1−xMxCuu−wTwOa−yQ1yTebSezに対し5mol%以下で添加することを特徴とする、請求項8に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項12】
前記混合物の形成段階が、粒度が5nm〜100μmであるAを添加することを特徴とする、請求項8に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項13】
前記混合物の焼結段階が、加圧焼結方式によって行われることを特徴とする、請求項8に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項14】
Bi2O3、Bi、Cu、T及びAの各粉末を混合し、選択的にM、Q1、Te及びSeのうち一種以上の粉末をさらに混合する段階と、
前記混合物を焼結する段階と、を含む請求項1に記載の化合物半導体の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の化合物半導体を含む熱電変換素子。
【請求項16】
請求項1〜7のうちいずいれか一項に記載の化合物半導体をpタイプ熱電変換材料として含むことを特徴とする、請求項15に記載の熱電変換素子。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物半導体を含む太陽電池。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物半導体を含むバルク熱電材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電材料、太陽電池などの多様な用途に用いることができる新規な化合物半導体物質及びその製造方法、これを用いる用途に関する。
【0002】
本出願は、2013年11月29日出願の韓国特許出願第10−2013−0147674号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
化合物半導体は、シリコンやゲルマニウムのような単一元素ではなく、2種以上の元素が結合して半導体として働く化合物である。このような化合物半導体は、現在、様々な種類が開発され、多様な分野において用いられている。代表的に、ペルチェ効果(Peltier Effect)を用いた熱電変換素子、光電変換効果を用いた発光ダイオードやレーザーダイオードなどの発光素子と太陽電池などに化合物半導体が用いられている。
【0004】
まず、太陽電池は、自然に存在する太陽光以外に別途のエネルギー源を必要としないという点で環境に親しいため、未来の代替エネルギー源として活発に研究が進んでいる。太陽電池は、主にシリコンの単一元素を用いるシリコン太陽電池、化合物半導体を用いる化合物半導体太陽電池、及び互いに異なるバンドギャップエネルギー(bandgap energy)を有する太陽電池を二つ以上積層した積層型(tandem)太陽電池などに分けられ得る。
【0005】
このうち、化合物半導体太陽電池は、太陽光を吸収して電子−正孔の対を生成する光吸収層に化合物半導体を用い、特に、GaAs、InP、GaAlAs、GaInAsなどのIII−V族化合物半導体、CdS、CdTe、ZnSなどのII−VI族化合物半導体、CuInSe
2に代表されるI−III−VI族化合物半導体などを用いることができる。
【0006】
太陽電池の光吸収層は、長期的な電気的、光学的安定性に優れ、光電変換効率が高く、組成の変化やドーピングによってバンドギャップエネルギーや導電型の調節が容易であることが要求される。また、実用化のためには製造コストや歩留まりなどの要件も満たすべきである。しかし、多くの従来の化合物半導体はこのような要件を同時に満していない。
【0007】
また、熱電変換素子は、熱電変換発電や熱電変換冷却などに適用することができ、一般的にNタイプ熱電半導体とPタイプ熱電半導体とが、電気的には直列に接続され、熱的には並列に接続される方式で構成される。このうち、熱電変換発電とは、熱電変換素子に温度差を付与することで発生する熱起電力を用いて、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電形態をいい、熱電変換冷却とは、熱電変換素子の両端に直流電流を流したとき、両端にて温度差が発生する効果を用いて、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する冷却形態をいう。
【0008】
このような熱電変換素子のエネルギー変換効率は、概ね熱電変換材料の性能指数値であるZTに依存する。ここで、ZTはゼーベック(Seebeck)係数、電気伝導度及び熱伝導度などによって決められ得、ZT値が高いほど性能に優れた熱電変換材料となる。
【0009】
現在まで多様な熱電変換材料が提案されてきたが、熱電変換性能の高い熱電変換材料が充分に提案されているとはいえない実情である。特に、最近は、熱電変換材料の適用分野は次第に拡張しつつあり、適用分野別に温度条件が変わり得る。ところが、熱電変換材料は、温度に応じて熱電変換性能が変わり得るため、それぞれの熱電変換材料は、該当の熱電変換材料が適用された分野において熱電変換性能を最適化する必要がある。しかし、未だ、多様な温度範囲で最適化した性能を有する熱電変換材料が十分提案されているとはいえない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱電変換素子の熱電変換材料、太陽電池などのように多様な用途に活用することができ、熱電変換性能に優れた化合物半導体物質とその製造方法、及びこれを用いた熱電変換素子、太陽電池などを提供することを目的とする。
【0011】
本発明の他の目的及び長所は、下記する説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を達成するため、本発明者は、化合物半導体に関する研究を重ねた末、下記の化学式1で表される化合物半導体を合成することに成功し、この化合物が、熱電変換素子の熱電変換材料または太陽電池の光吸収層などに使用できることを確認し、本発明を完成するに至った。
<化1>
[Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
z]A
c
【0013】
化学式1において、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Cs、K、Na、Cd、Hg、Sn、Pb、Mn、Ga、In、Tl、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素であり、Q1は、S、Se、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素であり、Tは、
遷移金属元素より選択されたいずれか一種または二種以上の元素であり、Aは、
遷移金属元素及び
遷移金属元素と6族元素との化合物からなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上であり、0≦x<1、0.5≦u≦1.5、0≦w≦1、0.2<a<1.5、0≦y<1.5、0≦b<1.5、0≦z<1.5及び0<c<0.2である。
【0014】
望ましくは、化学式1のcは、0<c<0.05である。
【0015】
また、望ましくは、Aは、Ag、Co、Ni
、Au、Pd、Pt、Ag
2Te、CuTe、Cu
2S
e及びCuAgSeからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上である。
【0016】
また望ましくは、化学式1のx、y及びzは、それぞれx=0、y=0及びz=0である。
【0017】
また望ましくは、化学式1は、[BiCuOTe]A
cで表される。
【0018】
また望ましくは、化学式1のw、y、b及びzは、それぞれw=0、y=0、b=0及びz=1である。
【0019】
また望ましくは、化学式1は、[Bi
1−xM
xCuOSe]A
cで表される。
【0020】
また、上記の課題を達成するための本発明の一面による化合物半導体の製造方法は、Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zで表される化合物にA粒子が不規則的に分布された化合物半導体であり、ここで、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Cs、K、Na、Cd、Hg、Sn、Pb、Mn、Ga、In、Tl、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素であり、Q1は、S、Se、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素であり、Tは、
遷移金属元素より選択されたいずれか一種または二種以上の元素であり、Aは、
遷移金属元素及び
遷移金属元素と6族元素との化合物からなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上であり、0≦x<1、0.5≦u≦1.5、0≦w≦1、0.2<a<1.5、0≦y<1.5、0≦b<1.5及び0≦z<1.5である。
【0021】
また、上記の課題を達成するための本発明の一面による化合物半導体の製造方法は、Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zで表される材料を準備する段階と、前記準備された材料に、Aを添加して混合物を形成する段階と、前記混合物を焼結する段階と、を含む。
【0022】
望ましくは、前記Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zで表される材料準備の段階は、Bi
2O
3、Bi、Cu及びTの各粉末を混合し、選択的にM、Q1、Te及びSeからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の粉末をさらに混合した後、熱処理することで行われる。
【0023】
また、望ましくは、前記混合物の形成段階は、AをBi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zに対し20mol%以下で添加する。
【0024】
また、望ましくは、前記混合物の形成段階は、AをBi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zに対し5mol%以下で添加する。
【0025】
また、望ましくは、前記混合物の形成段階は、粒度が5nm〜100μmであるAを添加する。
【0026】
また、望ましくは、前記混合物の焼結段階は、放電プラズマ焼結方式またはホットプレス方式によって行われる。
【0027】
また、上記の課題を達成するための本発明の一面による化合物半導体の製造方法は、Bi
2O
3、Bi、Cu、T及びAの各粉末を混合し、選択的にM、Q1、Te及びSeのうち一種以上の粉末をさらに混合する段階と、前記混合物を焼結する段階と、を含む。
【0028】
また、上記の課題を達成するための本発明による熱電変換素子は、前述の化合物半導体を含む。
【0029】
また、上記の課題を達成するための本発明による太陽電池は、前述の化合物半導体を含む。
【0030】
また、上記の課題を達成するための本発明によるバルク型熱電材料は、前述の化合物半導体を含む。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、熱電変換素子または太陽電池などに用いることができる化合物半導体物質が提供される。
【0032】
特に、本発明による化合物半導体は、従来の化合物半導体を代替するか、従来の化合物半導体に加えてさらに他の一素材として用いることができる。
【0033】
また、本発明の一面によれば、化合物半導体が熱電変換素子の熱電変換材料として用いられ得る。この場合、高いZT値が確保され、優れた熱電変換性能を有する熱電変換素子を製造することができる。さらに、本発明によれば、100℃〜600℃の範囲で高いZT値を有する熱電変換材料が提供できるため、中・高温用の熱電変換素子にさらに好適に適用可能である。
【0034】
特に、本発明による化合物半導体は、Pタイプ熱電変換材料に用いることができる。
【0035】
また、本発明の他面によれば、化合物半導体を太陽電池に用いることができる。特に、本発明による化合物半導体は、太陽電池の光吸収層として用いることができる。
【0036】
そのうえ、本発明のさらなる他面によれば、化合物半導体が赤外線を選択的に通過させる赤外線ウィンドウ(IR window)及び赤外線センサー、磁気デバイス、メモリなどにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【0038】
【
図1】本発明の一側面による化合物半導体の製造方法を概略的に示したフローチャートである。
【
図2】本発明の他の側面による化合物半導体の製造方法を概略的に示したフローチャートである。
【
図3】本発明によって製造した実施例1及び比較例1の化合物半導体の温度変化に応じた電気伝導度値を示したグラフである。
【
図4】本発明によって製造した実施例1及び比較例1の化合物半導体の温度変化に応じたゼーベック係数値を示したグラフである。
【
図5】本発明によって製造した実施例1及び比較例1の化合物半導体の温度変化に応じたパワーファクター値を示したグラフである。
【
図6】本発明によって製造した実施例1及び比較例1の化合物半導体の温度変化に応じた熱伝導度値を示したグラフである。
【
図7】本発明によって製造した実施例1及び比較例1の化合物半導体の温度変化に応じたZT値を示したグラフである。
【
図8】本発明によって製造した実施例2〜実施例4及び比較例2の化合物半導体の温度変化に応じた電気伝導度値を示したグラフである。
【
図9】本発明によって製造した実施例2〜実施例4及び比較例2の化合物半導体の温度変化に応じたゼーベック係数値を示したグラフである。
【
図10】本発明によって製造した実施例2〜実施例4及び比較例2の化合物半導体の温度変化に応じたパワーファクター値を示したグラフである。
【
図11】本発明によって製造した実施例2〜実施例4及び比較例2の化合物半導体の温度変化に応じた熱伝導度値を示したグラフである。
【
図12】本発明によって製造した実施例2〜実施例4及び比較例2の化合物半導体の温度変化に応じたZT値を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0040】
したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明の最も望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0041】
本発明は、以下のような化学式1で表される新規な化合物半導体を提供する。
<化1>
[Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
z]A
c
【0042】
化学式1において、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Cs、K、Na、Cd、Hg、Sn、Pb、Mn、Ga、In、Tl、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素であり、Q1は、S、Se、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素であり、Tは、
遷移金属元素より選択されたいずれか一種または二種以上の元素であり、Aは、
遷移金属元素及び
遷移金属元素と6族元素との化合物からなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上であり、0≦x<1、0.5≦u≦1.5、0≦w≦1、0.2<a<1.5、0≦y<1.5、0≦b<1.5、0≦z<1.5及び0<c<0.2である。
【0043】
望ましくは、化学式1のAは、[Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
z]マトリクス内に位置するとき、相及び形態が熱力学的に安定し、マトリクスの格子熱伝導度を低め、マトリクスよりも高い電気伝導度を有する
遷移金属及び/または
遷移金属−6族化合物を含み得る。または、化学式1のAは、[Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
z]マトリクス内にこのような特徴を有する
遷移金属−6族化合物の生成が誘導できる
遷移金属を含み得る。例えば、化学式1のAは、Ag、Co、Ni
、Au、Pd、Pt、Ag
2Te、CuTe、Cu
2S
e及びCuAgSeからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の粒子を含む。
【0044】
望ましくは、化学式1のcは、0<c<0.05である。
【0045】
特に、本発明による化合物半導体は、Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zで表される物質の他に、Ag、Co、Ni
、Au、Pd、Pt、Ag
2Te、CuTe、Cu
2S
e及びCuAgSeなどを含む
遷移金属及び
遷移金属−6族元素化合物からなる群より選択された少なくともいずれか一種以上の物質がさらに添加されている。そして、このような構成によって、本発明による化合物半導体は、熱電変換性能に優れた熱電変換材料として用いることができる。
【0046】
望ましくは、化学式1において、x=0、y=0、z=0であり得る。この場合、化学式1は、以下のような化学式で表される。
[BiCu
u−wT
wO
aTe
b]A
c
【0047】
より望ましくは、前記化学式において、u=1、w=0、a=1、b=1であり得る。この場合、化学式1は、以下のように化学式で表される。
[BiCuOTe]A
c
【0048】
また望ましくは、化学式1において、w、y、b及びzは、それぞれw=0、y=0、b=0及びz=1であり得る。この場合、化学式1は、次のように化学式で表される。
[Bi
1−xM
xCu
uO
aSe]A
c
【0049】
さらに望ましくは、前記化学式において、u=1、a=1であり得る。この場合、化学式1は、次のように化学式で表される。
[Bi
1−xM
xCuOSe]A
c
【0050】
また望ましくは、化学式1において、0.5≦u−w≦1.5であり得る。
【0051】
このように本発明による化合物半導体は、BiCuOTe系材料またはBiCuOSe系材料に、Ag、Co、Ni
、Au、Pd、Pt、Ag
2Te、CuTe、Cu
2S
e及びCuAgSeなどの
遷移金属、または
遷移金属−6族化合物のうち一つ以上の粒子が含まれた構造で形成され得る。そして、このような構成的特徴によって、本発明による化合物半導体は、フォノン散乱を起こすマトリクスと粒子との界面が存在するため、BiCuOTeまたはBi
1−xM
xCuOSeのみからなる化合物半導体に比べて低い熱伝導度値を有することができる。それとともに、
遷移金属または
遷移金属−6族化合物粒子は、Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zマトリクス内に電荷を導入し、高い電気伝導度を有することができる。また、マトリクスと粒子との界面では、エネルギーバンドギャップとフェルミエネルギーとの差から起因するキャリアフィルタリング効果(carrier filtering effect)が生じ、化合物半導体のゼーベック係数特性が向上できる。本発明による化合物半導体は、前述の効果の複合的な影響によって高いZT値を有することができ、熱電変換性能が効果的に改善できる。
【0052】
なお、本発明による化合物半導体は、Aとして、Ag、Co、Ni
、Au、Pd、Pt、Ag
2Te、CuTe、Cu
2S
e及びCuAgSe以外に、ドーピングされ
たCu
2Seをさらに含み得る。
【0053】
また、本発明による化合物半導体は、Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zで表される化合物に、A粒子が不規則的に分布された化合物半導体である。
【0054】
ここで、Mは、Ba、Sr、Ca、Mg、Cs、K、Na、Cd、Hg、Sn、Pb、Mn、Ga、In、Tl、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素であり、Q1は、S、Se、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素であり、Tは、
遷移金属元素より選択されたいずれか一種または二種以上の元素であり、Aは、
遷移金属元素及び
遷移金属元素と6族元素との化合物、例えば、Ag、Co、Ni
、Au、Pd、Pt、Ag
2Te、CuTe、Cu
2S
e及びCuAgSeからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上であり、0≦x<1、0.5≦u≦1.5、0≦w≦1、0.2<a<1.5、0≦y<1.5、0≦b<1.5及び0≦z<1.5である。
【0055】
一方、A粒子が不規則的に分布されているということは、Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zで表される物質に含まれたA粒子間の距離が一定でないことを意味する。
【0056】
望ましくは、A粒子は、5nm(ナノメートル)〜100μm(マイクロメートル)の粒度を有し得る。
【0057】
図1は、本発明の一面による化合物半導体の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【0058】
図1を参照すれば、本発明の一面による化合物半導体を製造する方法は、化学式Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zで表される材料を準備する段階(S110)、前記準備されたBi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zで表される材料に、Aを添加して混合物を形成する段階(S120)と、前記混合物を焼結する段階(S130)を含み得る。
【0059】
望ましくは、S110段階は、Bi
2O
3、Bi、Cu及びT(
遷移金属元素より選択されたいずれか一種または二種以上の元素)の各粉末を混合し、選択的にM(Ba、Sr、Ca、Mg、Cs、K、Na、Cd、Hg、Sn、Pb、Mn、Ga、In、Tl、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素またはその酸化物)、Q1(S、Se、As及びSbのうち一種以上)、Te及びSeのうち一種以上からなる粉末をさらに混合した後、熱処理する方式に行われ得る。
【0060】
また望ましくは、S120段階で添加されるAは、[Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
z]マトリクス内に位置するとき、相及び形態が熱力学的に安定し、マトリクスの格子熱伝導度を低め、マトリクスよりも高い電気伝導度を有する
遷移金属及び/または
遷移金属−6族化合物を含み得る。または、前記S120段階で添加されるAは、[Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
z]マトリクス内にこのような特徴を有する
遷移金属−6族化合物の生成が誘導できる
遷移金属を含み得る。
【0061】
より望ましくは、S120段階は、Ag、Co、Ni
、Au、Pd、Pt、Ag
2Te、CuTe、Cu
2S
e及びCuAgSeのうち一種以上を、Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zに対し20mol%以下で添加し得る。Ag、Co、Ni
、Au、Pd、Pt、Ag
2Te、CuTe、Cu
2S
e及びCuAgSeは、Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zに、このような範囲で添加されるとき、本発明による化合物半導体の熱電変換性能がさらに向上できる。
【0062】
さらに望ましくは、S120段階は、Ag、Co、Ni
、Au、Pd、Pt、Ag
2Te、CuTe、Cu
2S
e及びCuAgSeのうち一種以上をBi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zに対し5mol%以下で添加し得る。
【0063】
また望ましくは、S120段階は、添加されるAg、Co、Ni
、Au、Pd、Pt、Ag
2Te、CuTe、Cu
2S
e及びCuAgSeなどの初期粒度が5nm〜100μmであり得る。Aとして添加される粒子の粒度が5nmに近づくほど、熱伝導度の低下に比べ電気伝導度の低下効果が小さいため、本発明による化合物半導体の熱電性能の向上に有利である。これに対し、添加粒子の粒度が大きいほど、粒子の結晶相及びその形態が安定的であるため、化合物半導体の性能向上及び制御に有利である。このような点を考慮すれば、最適の性能を有する化合物半導体を製造するためには、[Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
z]A
cの組成に従い添加粒子の粒度を前記の範囲内で選択することが望ましい。
【0064】
なお、S120段階において、Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zとA(Ag、Co、Ni
、Au、Pd、Pt、Ag
2Te、CuTe、Cu
2S
e及びCuAgSe)との混合は、モルタル(mortar)を用いたハンドミル(hand mill)、ボールミル(ball mill)、遊星ボールミル(planetary ball mill)などの方式で行われ得るが、本発明がこのような混合方式によって制限されることではない。
【0065】
また望ましくは、S130段階は、放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering;SPS)方式またはホットプレス(Hot Press;HP)方式によって行われ得る。同一組成の熱電材料であるとしても、焼結方式によって熱電性能に差があり得、本発明による化合物半導体の場合、このような加圧焼結方式で焼結されるとき、熱電性能がより向上できる。
【0066】
加圧焼結段階(S130)は、30MPa〜200MPaの圧力条件下で行うことが望ましい。また、加圧焼結段階(S130)は、400℃〜700℃の温度条件下で行うことが望ましい。そして、加圧焼結段階(S130)は、前記圧力及び温度条件下で1分〜12時間行われ得る。
【0067】
化合物半導体の場合、製造方法によって熱電性能に差があり得、本発明による化合物半導体は、上述の化合物半導体の製造方法によって製造することが望ましい。この場合、化合物半導体に対して高いZT値を確保することができ、特に、100℃〜600℃の温度範囲で高いZT値を確保するのに有利である。
【0068】
但し、本発明が必ずしもこのような製造方法に限定されることではなく、他の製造方法によって化学式1の化合物半導体を製造することができる。
【0069】
図2は、本発明の他面による化合物半導体の製造方法を概略的に示したフローチャートである。
【0070】
図2を参照すれば、本発明の他面による化合物半導体を製造する方法は、Bi
2O
3、Bi、Cu、T(
遷移金属元素より選択されたいずれか一種または二種以上の元素)及びA(
遷移金属元素及び
遷移金属元素と6族元素との化合物からなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上)の各粉末を混合する段階(S210)及び前記混合物を焼結する段階(S220)を含み得る。
【0071】
この際、S210段階では、M(Ba、Sr、Ca、Mg、Cs、K、Na、Cd、Hg、Sn、Pb、Mn、Ga、In、Tl、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素またはその酸化物)、Q1(S、Se、As及びSbからなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の元素)、Te及びSeのうち一種以上の粉末をさらに混合して混合物を形成することができる。
【0072】
本発明のこのような面による製造方法は、Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zで表される焼結体を製造した後、ここにA(Ag、Co、Ni
、Au、Pd、Pt、Ag
2Te、CuTe、Cu
2S
e及びCuAgSeなど)を添加して混合し、これを焼結する形態で製造することではなく、Bi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zを構成する原料自体とAとを混合した後、該混合物を焼結する形態で製造される。即ち、本発明のこのような面によれば、製造工程のうちBi
1−xM
xCu
u−wT
wO
a−yQ1
yTe
bSe
zで表される焼結体を別途に準備する段階を含まなくても良い。
【0073】
本発明による熱電変換素子は、前述の化合物半導体を含み得る。即ち、本発明による化合物半導体は、熱電変換素子の熱電変換材料に用い得る。特に、本発明による熱電変換素子は、前述の化合物半導体をPタイプ熱電材料として含み得る。
【0074】
本発明による化合物半導体は、熱電変換材料の性能指数値であるZTが大きい。また、ゼーベック係数及び電気伝導度が大きく、熱伝導度が低くて熱電変換性能に優れる。したがって、本発明による化合物半導体は、従来の熱電変換材料を代替するか、従来の化合物半導体に加えて熱電変換素子に有用に利用できる。
【0075】
また、本発明による化合物半導体は、バルク型熱電変換材料に適用され得る。即ち、本発明によるバルク熱電材料は、前述の化合物半導体を含む。
【0076】
また、本発明による太陽電池は、前述の化合物半導体を含む。即ち、本発明による化合物半導体は、太陽電池、特に太陽電池の光吸収層として用いることができる。
【0077】
太陽電池は、太陽光が入射する方向から順次に、前面透明電極、バッファー層、光吸収層、背面電極及び基板などが積層された構造で製造することができる。最下部に位置する基板は硝子からなり、その上に全面的に形成される背面電極はMoなどの金属を蒸着することで形成され得る。
【0078】
続いて、背面電極の上部に本発明による化合物半導体を、電子ビーム蒸着法、ゾルゲル(sol−gel)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)などの方法で積層することで、前記光吸収層を形成することができる。このような光吸収層の上部には、前面透明電極として用いられるZnO層と光吸収層との格子定数差及びバンドギャップ差を緩衝するバッファー層が存在し得、このようなバッファー層はCdSなどの材料をCBD(Chemical Bath Deposition)などの方法で蒸着することで形成され得る。その後、バッファー層の上にZnOまたはZnOとITOとの積層膜として前面透明電極がスパッタリングなどの方法で形成され得る。
【0079】
本発明による太陽電池は多様に変形することができる。例えば、本発明による化合物半導体を光吸収層に用いた太陽電池を積層した積層型太陽電池を製造し得る。また、このように積層された他の太陽電池には、シリコンや知られた他の化合物半導体を用いた太陽電池を使い得る。
【0080】
また、本発明の化合物半導体のバンドギャップを変化させることで、互いに異なるバンドギャップを有する化合物半導体を光吸収層として用いる複数の太陽電池を積層することもできる。本発明による化合物半導体のバンドギャップは、この化合物を成す構成元素、例えば、Teの組成比を変化させることで調節することができる。
【0081】
また、本発明による化合物半導体は、赤外線を選択的に通過させる赤外線ウィンドウ(IR window)や赤外線センサーなどにも適用することができる。
【0082】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0083】
(比較例1)
BiCuOTeの合成のために、Bi
2O
3(Aldrich、99.9%、10μm)21.7g、Bi(5N+、99.999%、shot)9.7g、Cu(Aldrich、99.7%、3μm)8.9g、Te(5N+、99.999%、shot)17.8gをめのう乳鉢(agate mortar)を用いてよく混合した。混合された材料は、シリカチューブ(silica tube)に入れて真空密封し、500℃で12時間の加熱を行うことでBiCuOTe粉末を得た。熱処理された試料のx線回折パターンを分析した結果、本比較例1によって得られた物質がBiCuOTeであることが確認された。
【0084】
(比較例2)
Bi
0.95Pb
0.05CuOSeの合成のために、Bi
2O
3(Aldrich、99.9%、10μm)2.589g、Bi(5N+、99.999%、shot)0.987g、Pb(Alfa Aesar、99.9%、200mesh)0.173g、Cu(Aldrich、99.7%、3μm)1.059g、Se(5N+、99.999%、shot)1.316gをめのう乳鉢を用いてよく混合した。混合された材料は、シリカチューブに入れて真空密封し、600℃で12時間の加熱を行うことでBi
0.95Pb
0.05CuOSe粉末を得た。
【0085】
(実施例1)
比較例1と同一の方法で、BiCuOTeを合成した。それから、[BiCuOTe][Ag
0.01]の組成に合わせてそれぞれの粉末を秤量し、12時間の湿式ZrO
2ボールミリングを行うことで混合物を製造した。用いられたAg粒子の粒度は100nmである。
【0086】
(実施例2及び実施例3)
比較例2と同様の方法で、Bi
0.95Pb
0.05CuOSeを合成した。それから、[Bi
0.95Pb
0.05CuOSe][Ag
0.02]の組成に合わせてそれぞれの粉末を秤量して12時間の湿式ZrO
2ボールミリングを行うことで混合物を製造した。実施例2及び実施例3は、組成は同一であるが、それぞれ20nmと45μmとの異なる粒度を有するAgを用いた。
【0087】
(実施例4)
比較例2と同様の方法で、Bi
0.95Pb
0.05CuOSeを合成した。それから、[Bi
0.95Pb
0.05CuOSe][Co
0.03]の組成に合わせてそれぞれの粉末を秤量し、12時間の湿式ZrO
2ボールミリングを行うことで混合物を製造した。この際、用いられたCo粒子の粒度は30μmである。
【0088】
前述の方法で合成した比較例及び実施例の各試料のうち一部を、それぞれ直径12mmの黒鉛モールドに入れた後、SPSを用いて50MPaの圧力で加圧した。続いて、比較例1及び実施例1は500℃で、比較例2及び実施例2〜実施例4は600℃で5分間焼結を行った。
【0089】
次に、このように焼結した各試料に対し、ZEM−3(Ulvac−Rico,Inc製)を用いて所定温度の間隔で電気伝導度(Electrical Conductivity)及びゼーベック係数(Seebeck coefficient)を測定してパワーファクター(Power Factor;PF)を計算し、その結果を
図3〜
図5及び
図8〜
図10に示した。また、LFA457(Netch社製)を用いて各試料の熱伝導度(Thermal Conductivity)を測定し、その結果を
図6及び
図11に示した。その後、得られた測定値から各試料の熱電性能指数ZT値を計算し、その結果を
図7及び
図12に示した。即ち、
図3〜
図7には、比較例1及び実施例1の測定結果及び計算結果を示し、
図8〜
図12には、比較例2及び実施例2〜実施例4の測定結果を示した。
【0090】
先ず、
図3〜
図7を参照すれば、比較例1(BiCuOTe)に比べて実施例1([BiCuOTe][Ag
0.01])の電気伝導度及びゼーベック係数が温度範囲に応じて類似であるか向上し、熱伝導度は全ての測定温度領域において低下したことが分かる。このことから、本発明による実施例1の化合物半導体のZT値が著しく向上したことが分かる。
【0091】
続いて、
図8〜
図12を参照すれば、比較例2(Bi
0.95Pb
0.05CuOSe)に比べて実施例2〜実施例4([Bi
0.95Pb
0.05CuOSe][Ag
0.02]、[Bi
0.95Pb
0.05CuOSe][Co
0.03])の化合物半導体の電気伝導度が著しく向上したことに対し、ゼーベック係数は大幅低下したことが分かる。特に、実施例2及び実施例3の化合物半導体は、200℃以上の温度でPFが著しく向上し、実施例4の化合物半導体は全ての測定温度領域でPFの向上が確認された。また、実施例2〜実施例4の化合物半導体の熱伝導度は、全ての測定温度領域で比較例2の化合物半導体に比べて大幅低下したことが分かる。このことから、本発明の実施例2〜実施例4による化合物半導体のZT値は、比較例2の化合物半導体のZT値よりも著しく向上したことが分かる。
【0092】
したがって、このような結果をまとめれば、本発明による化合物半導体の熱電変換性能が、従来の化合物半導体に比べて様々な面で優れていることが分かる。
【0093】
以上のように、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と以下に記載する特許請求の範囲の均等範囲内で、多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。