特許第6238219号(P6238219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6238219
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】太陽光発電システムの不具合検知回路
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/00 20140101AFI20171120BHJP
【FI】
   H02S50/00
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-162875(P2017-162875)
(22)【出願日】2017年8月25日
【審査請求日】2017年8月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103757
【弁理士】
【氏名又は名称】秋田 修
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大関 崇
【審査官】 嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6061260(JP,B1)
【文献】 特開2014−161203(JP,A)
【文献】 特開2011−152003(JP,A)
【文献】 特許第5864006(JP,B1)
【文献】 特開2014−68509(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/017195(WO,A1)
【文献】 特開2003−259551(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0345667(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の太陽電池モジュールが、正極側出力電路及び負極側出力電路を介して外部負荷と接続され、
前記それぞれの太陽電池モジュールの正極端子と負極端子間を連絡する短絡電路と、前記ぞれぞれの短絡電路に、対応する太陽電池モジュールの正極端子にアノードが、負極端子にカソードが繋がるように組み込まれ、ゲートが、当該太陽電池モジュールの定格開放電圧より高いツェナー電圧を有するツェナーダイオードを介して当該正極端子と繋がれているサイリスタと、前記正極側出力電路と負極側出力電路間に組み込まれ、全てのツェナーダイオードのツェナー電圧の総和を超える電圧のパルス電流を発生することにより、それぞれのサイリスタを点弧し、各短絡電路を一斉に導通させるパルス発生回路と、前記正極側出力電路と負極側出力電路間を短絡して各サイリスタを消弧し、前記各短絡電路を一斉に非導通状態に復帰させるリセット回路とを含む感電防止回路を備えた太陽光発電システムにおいて、
前記それぞれの太陽電池モジュールの短絡電路に流れる電流の有無を検知する検知回路と、前記正極側出力電路と負極側出力電路間を連絡する可変負荷回路を有することを特徴とする太陽光発電システムの不具合検知回路。
【請求項2】
可変負荷回路の負荷を制御して当該可変負荷回路を流れる電流を段階的に増加させ、各段階の電流値毎に、それぞれの太陽電池モジュールの短絡電路の電流の有無の情報を検知回路から取得して、太陽電池モジュール毎に不具合の程度を段階的に識別判定する不具合判定回路をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システムの不具合検知回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムの中に組み込まれている感電防止回路を利用することにより、不具合が生じている太陽電池モジュールを容易に検知できるようにした、太陽光発電システムの不具合検知回路に関する。
【背景技術】
【0002】
長期にわたって稼働している太陽光発電システムでは、太陽電池モジュールに故障や経年劣化等の不具合が発生して発電が不能になったり、発電出力が低下する可能性があり、一部の太陽電池モジュールの不具合によって、システム全体の発電効率が低下してしまう問題がある。
【0003】
そこで、従来では、このようなシステムの出力低下を調べるために、特許文献1に記載されているように、システム全体の電流・電圧特性を測定する方法や、特許文献2に記載されているように、システムを構成している太陽電池モジュールを一枚一枚個別に電流・電圧特性を測定する方法や、特許文献3に記載されているように、太陽電池モジュールの発熱状態を赤外線カメラで遠隔監視する方法等が提案されている。
【0004】
一方、近年では、太陽光発電システムに使用される個々の太陽電池モジュールの性能が向上して高出力のものが製造されているため、太陽光発電システムの設置場所で火災が発生した場合に、発電している太陽電池モジュールへの放水から人体に感電する危険性が高まっている。そこで、本発明者らは、発電中の太陽電池モジュールからの感電を回避するために、特許文献4に記載されているような感電防止回路を組み込んだ太陽光発電システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−64653号公報
【特許文献2】特開2007−311487号公報
【特許文献3】特開2011−146472号公報
【特許文献4】特許第6061260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献4に記載されている感電防止回路を組み込んだ太陽光発電システムにおいては、システムの不具合を検知するために、特許文献1乃至特許文献3に記載されているような、従来技術をシステムに取り入れると、システム全体の構築コストが高くなってしまう問題があった。
【0007】
さらに、特許文献1に記載されているものは、不具合のある太陽電池モジュールをシステム全体の電流・電圧特性から特定することができない問題があり、また、特許文献2に記載されているものは、個々の太陽電池モジュール毎の詳細な測定や不具合箇所の特定は可能となるものの、診断作業には膨大な労力と時間を必要とする問題があった。
【0008】
また、特許文献3に記載されているような、太陽電池モジュールの発熱状態を赤外線カメラで遠隔監視するものは、太陽電池モジュール表面が日射等で高温になっている場合、不具合を生じている太陽電池モジュールの特定が難しくなる問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、前述したような従来技術における問題を解消し、太陽光発電システムに組み込まれている感電防止回路を利用することにより、システム全体の設置コストを低減できるとともに、不具合が生じている太陽電池モジュールを容易且つ的確に特定することができる、太陽光発電システムの不具合検知回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的のために提供される、本発明の太陽光発電システムの不具合検知回路は、直列接続された複数の太陽電池モジュールが、正極側出力電路及び負極側出力電路を介して外部負荷と接続され、前記それぞれの太陽電池モジュールの正極端子と負極端子間を連絡する短絡電路と、前記ぞれぞれの短絡電路に、対応する太陽電池モジュールの正極端子にアノードが、負極端子にカソードが繋がるように組み込まれ、ゲートが、当該太陽電池モジュールの定格開放電圧より高いツェナー電圧を有するツェナーダイオードを介して当該正極端子と繋がれているサイリスタと、前記正極側出力電路と負極側出力電路間に組み込まれ、全てのツェナーダイオードのツェナー電圧の総和を超える電圧のパルス電流を発生することにより、それぞれのサイリスタを点弧し、各短絡電路を一斉に導通させるパルス発生回路と、前記正極側出力電路と負極側出力電路間を短絡して各サイリスタを消弧し、前記各短絡電路を一斉に非導通状態に復帰させるリセット回路とを含む感電防止回路を備えた太陽光発電システムにおいて、前記それぞれの太陽電池モジュールの短絡電路に流れる電流の有無を検知する検知回路と、前記正極側出力電路と負極側出力電路間を連絡する可変負荷回路を有することを特徴としている。
【0011】
可変負荷回路の負荷を制御して当該可変負荷回路を流れる電流を段階的に増加させ、各段階の電流値毎に、それぞれの太陽電池モジュールの短絡電路の電流の有無の情報を検知回路から取得して、太陽電池モジュール毎に不具合の程度を段階的に識別判定する不具合判定回路をさらに備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、太陽光発電システムの設置場所での火災における消防活動時の放水作業を安全に行うためにシステムに設けられる感電防止回路の回路構成を巧みに利用することにより、不具合検知回路の回路構成を簡素化でき、システム全体の設置コストの低減を図ることができる。
【0013】
また、不具合の生じている太陽電池モジュールを容易に特定することができるとともに、可変負荷回路に設定した設定電流値から当該太陽モジュールの不具合の程度についても同時に把握することができる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、太陽光発電システム内の不具合のある太陽電池モジュールを、不具合の程度に応じて自動的に識別判定できるため、緊急に修理や交換を必要とする太陽電池モジュールを多数の太陽電池モジュールの中から容易に発見することができる。
【0015】
また、太陽電池モジュールの不具合の程度を段階的に識別判定できるため、現在は不具合の程度が軽微で継続使用可能なものであっても、将来交換や修理が必要となる太陽電池モジュールの概略の交換時期や数を、将来のメンテナンスに備えて予め把握しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の1実施形態を示す、不具合検知回路が組み込まれた太陽光発電システムの模式的な回路図である。
図2図1に示す太陽光発電システムにおいて、パルス発生回路がパルス電流を出力した状態を示す図である。
図3図1に示す太陽光発電システムにおいて、各太陽電池モジュールが短絡電路により短絡された状態を示す図である。
図4図1に示す太陽光発電システムにおいて、リセット回路により、正極側出力電路と負極側出力電路間を短絡した状態を示す図である。
図5】サイリスタをPNP型トランジスタとNPN型トランジスタで置換した等価回路を示す図である。
図6図1に示す太陽光発電システムの太陽電池モジュールの数を3つの太陽電池モジュールM1、M2、M3に簡略化した図である。
図7図6に示す太陽光発電システムにおける電流電圧特性を示す図である。
図8図6に示す太陽光発電システムにおける、各太陽電池モジュールが短絡電路により短絡された状態を示す図である。
図9図6に示す太陽光発電システムにおける、可変負荷回路の設定電流が太陽電池モジュールM3の短絡電流Is3に達した場合の電流の流れを示す図である。
図10図6に示す太陽光発電システムにおける、可変負荷回路の設定電流が太陽電池モジュールM2の短絡電流Is2に達した場合の電流の流れを示す図である。
図11】不具合判定回路の動作を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の不具合検知回路が組み込まれた太陽光発電システムの模式的な回路図であって、このシステムは、前述の特許文献4(特許第6061260号公報)に記載されている感電防止回路を備えたものである。
【0018】
同図に示す太陽光発電システム1は、直列に接続されたn個の太陽電池モジュールM1、M2、・・・Mnからなる単一のストリング構成であり、これらの太陽電池モジュールM1、M2、・・・Mnのストリングの正極側と負極側はそれぞれ、正極側出力電路2Aと負極側出力電路2Bを介して、パワーコンディショナ等の外部負荷3に接続されている。
【0019】
また、同図に示すように、正極側出力電路2Aと負極側出力電路2Bには、直流開閉器4が組み込まれている。前記直流開閉器4は、正極側出力電路2Aと負極側出力電路2Bをそれぞれ開閉する一対の開閉スイッチ4A、4Bを有している。
【0020】
これらの開閉スイッチ4A、4Bは、互いに連係して同時にON/OFF動作を行うように構成されている。また、正極側出力電路2A側には、外部負荷3と開閉スイッチ4A間に、逆流防止ダイオード5が組み込まれている。
【0021】
太陽電池モジュールM1、M2、・・・Mnのそれぞれの正極端子P1と負極端子P2の間には、バイパスダイオードDが接続されている。なお、以下の説明においては、これらの太陽電池モジュールM1、M2、・・・Mnの1つを太陽電池モジュールMiと表記する。
【0022】
それぞれの太陽電池モジュールMiには短絡回路6が付設されている。これらの短絡回路6は太陽電池モジュールMiの正極端子P1と負極端子P2間を連絡する短絡電路7、サイリスタ8、ツェナーダイオード9、抵抗素子10から構成されている。
【0023】
サイリスタ8は、そのアノードが太陽電池モジュールMiの正極端子P1に、カソードが負極端子P2に繋がるように短絡電路7に組み込まれている。また、そのゲートは当該太陽電池モジュールMiの正極端子P1にツェナーダイオード9を介して接続されているとともに、抵抗素子10を介して負極端子P2に接続されている。
【0024】
ツェナーダイオード9は、ツェナー電圧Vzが太陽電池モジュールMiの定格開放電圧Vmより高いものを用いている。
【0025】
また、正極側出力電路2Aと負極側出力電路2B間には、各太陽電池モジュールMiの短絡回路6のサイリスタ8を点弧にして短絡電路7を導通させるためのパルス発生回路12と、当該サイリスタ8を消弧して短絡電路7を非導通状態に復帰させるためのリセット回路が組み込まれている。なお、本実施形態においては、前記リセット回路としてリセットスイッチ13を用いている。
【0026】
感電防止回路は、前述した各太陽電池モジュールMiに付設されている短絡回路6と、正極側出力電路2Aと負極側出力電路2B間に組み込まれたパルス発生回路12及びリセット回路としてのリセットスイッチ13から構成されている。
【0027】
また、各太陽電池モジュールMiの短絡電路7にはそれぞれ、検知回路11が設けられているとともに、正極側出力電路2Aと負極側出力電路2B間には、可変負荷回路14が組み込まれている。 これらの検知回路11と可変負荷回路14は、本発明における不具合検知回路を構成している。
【0028】
それぞれの検知回路11は、電流センサとしての機能を果たすものであり、より具体的には、短絡電路7に流れる電流の消失を検知する目的で設けられている。また、可変負荷回路14は、ここを流れる電流が設定した電流値となるように負荷抵抗を可変に制御する機能を有する回路である。なお、可変負荷回路14は、太陽光発電システム1の通常稼働時には非導通状態になっている。
【0029】
図1は、太陽光発電システム1の通常稼働状態を示している。この状態においては、リセットスイッチ13はOFF、直流開閉器4の開閉スイッチ4A、4Bは両方ともにONとなっていて、太陽電池モジュールM1、M2、・・・Mnの出力電流Iは外部負荷3に供給されている。
【0030】
一方、太陽光発電システム1の設置場所で火災が発生した場合には、消火放水を行う前に、図2に示すように、直流開閉器4の2つの開閉スイッチ4A、4BをOFFにして、これらの太陽電池モジュールM1、M2、・・・Mnから外部負荷3へ供給される電流を遮断した後、パルス発生回路12により、パルス電流Idを発生させて、各短絡回路6に供給する。
【0031】
その結果、各短絡回路6のツェナーダイオード9は導通状態となり、それぞれのサイリスタ8は、ツェナーダイオード9を通過したゲート電流Igがゲートに流入して点弧されてアノードとカソード間が導通状態となる。
【0032】
なお、パルス発生回路12の出力電圧(パルス電圧)をVp、前記それぞれのツェナーダイオード9のツェナー電圧Vzとすると、Vp>nVzの関係に設定されている。ここでnは太陽電池モジュールの数である。
【0033】
そうすると、それぞれの太陽電池モジュールMiの正極端子P1から出力される電流は、図3に示すように、短絡電流Isとして短絡電路7を通って負極端子P2へ流れるため、放水による太陽電池モジュールMiから外部への漏電が回避され、感電事故を防ぐことができる。
【0034】
消火活動終了後、図4に示すようにリセットスイッチ13をONに切り換えると、直列に接続されている太陽電池モジュールM1、M2、・・・Mnからなるストリングの正極側と負極側は前記リセットスイッチ13で短絡される。
【0035】
その結果、各太陽電池モジュールMiを通して出力される電流は、当該リセットスイッチ13を通過する短絡電流Isとして循環し、図3に示す各短絡電路7を流れる短絡電流Isは消失するため、各短絡回路6のサイリスタ8は消弧されて非導通状態となる。
【0036】
リセットスイッチ13を再びOFFに戻した後、直流開閉器4の開閉スイッチ4A、4BをONにすることで、太陽光発電システム1は、図1に示す通常稼働状態に復帰する。なお、ここで各短絡回路6中に用いられているサイリスタ8は、図5に示すように、PNP型トランジスタ8AとNPN型トランジスタ8Bを組み合わせた等価回路によって置換可能であり、特許請求の範囲中に記載している「サイリスタ」という用語は、同図に示す等価回路も含むものとする。
【0037】
次に、太陽光発電システム1における不具合検知回路の動作について説明する。ここでは、説明を簡略化するために、本システムが図6に示すように太陽電池モジュールM1、M2、M3の3つのモジュールのみで構成されている場合について説明する。
【0038】
これらの太陽電池モジュールM1、M2、M3が全て正常に稼働している場合には、このシステム全体の電流電圧特性は、図7に一点鎖線で示す曲線Xで表される。ここで、曲線X上の点Pmaxは最大出力動作点を示している。また、同図において、Voは、図6中の正極側出力電路2Aと負極側出力電路2B間の開放電圧を示し、Isは、これらの電路2A、2Bを短絡したときの短絡電流を示している。
【0039】
一方、太陽電池モジュールM2と太陽電池モジュールM3に何らかの不具合が生じてこれらの発電出力が低下している場合の電流電圧特性は、図7の曲線Yで表される。なお、この曲線Yは、太陽電池モジュールM2の発電出力よりも太陽電池モジュールM3の発電出力の方がさらに低下している場合を表している。
【0040】
ここで、システムの開放電圧をVo、太陽電池モジュールM1、M2、M3の個別の開放電圧をそれぞれVo1、Vo2、Vo3とすると、Vo=Vo1+Vo2+Vo3となっている。
【0041】
曲線Y上において、図6に示す外部負荷3へ出力される電流Iが0から次第に増加し、これが発電出力が最も低下している太陽電池モジュールM3の最大出力電流である短絡電流値Is3に近づくと、その出力電圧は急激に低下するため、システム全体の出力電圧もVo1+Vo2付近まで低下する。
【0042】
そして、外部負荷3に出力される電流Iが当該電流値Is3からさらに増加すると、太陽電池モジュールM3は短絡電流Is3を超える電流は出力できないため、残りの太陽電池モジュールM1、M2により供給される差分の電流(I−Is3)は、太陽電池モジュールM3に並列接続されているバイパスダイオードDを通過して流れる。
【0043】
外部負荷3へ出力される電流Iがさらに増加し、太陽電池モジュールM2の短絡電流値Is2に近づくと、太陽電池モジュールM2の出力電圧も急激に低下し、システム全体の出力電圧はVo1付近まで低下する。その後、電流Iが当該短絡電流値Is2よりさらに増加すると、太陽電池モジュールM2に並列接続されているバイパスダイオードDにも差分の電流(I−Is2)が流れるようになる。
【0044】
そして、最終的に外部負荷が短絡状態になると、システム全体の短絡電流値Isは、正常に稼働している太陽電池モジュールM1の短絡電流値Is1に一致する。このような理由により、システム内に不具合のある太陽電池モジュールM2、M3が存在すると、電流電圧特性は、図7の曲線Yのように、2つの段差を有する階段状になる。
【0045】
次に、図6に示す3つの太陽電池モジュールM1、M2、M3の中から不具合のモジュールを検知する場合には、先に説明した火災発生時の場合と同様に、直流開閉器4の2つの開閉スイッチ4A、4BをOFFにした後、パルス発生回路12により、パルス電流を発生させて、各短絡回路6のサイリスタ8を導通状態にし、図8に示すように、太陽電池モジュールM1、M2、M3の出力電流がそれぞれ対応する短絡電路7を循環する状態にする。
【0046】
このとき、各太陽電池モジュールM1、M2、M3は短絡状態なので、各短絡電路7にはそれぞれ対応する短絡電流Is1、Is2、Is3が流れる。なお、可変負荷回路14はこのとき非導通状態に設定してある。
【0047】
次に、この状態から、可変負荷回路14を流れる電流を段階的に増加させていく。図9は可変負荷回路14を流れる電流を、最も発電出力が低下している太陽電池モジュールM3の短絡電流Is3まで増加したときの電流の流れを示している。
【0048】
このとき、太陽電池モジュールM3が出力する電流Is3は、可変負荷回路14側へ全て流れるから、その短絡回路6の短絡電路7を流れる電流は消失してサイリスタ8は消弧される。このとき、当該短絡電路7に組み込まれている検出回路11によって電流の消失が検知される。
【0049】
一方、太陽電池モジュールM1の短絡電流はIs1であり、その短絡回路6の短絡電路7へは、可変負荷回路14側へ流れる電流Is3との差分の電流(Is1−Is3)が流れ、そのサイリスタ8は導通状態に保持されている。
また、太陽電池モジュールM2の短絡電流はIs2であり、その短絡回路6の短絡電路7へは差分の電流(Is2−Is3)が流れるから、そのサイリスタ8も導通状態に保持されている。
【0050】
次に、図10は、可変負荷回路14を流れる電流がさらに、太陽電池モジュールM2の短絡電流値Is2まで増加したときの電流の流れを示している。このとき、太陽電池モジュールM2が出力する電流Is2は、可変負荷回路14側へ全て流れるから、その短絡回路6の短絡電路7を流れる電流は消失してそのサイリスタ8は消弧される。このとき、当該短絡電路7に組み込まれている検出回路11によって電流の消失が検知される。
【0051】
太陽電池モジュールM1の出力する短絡電流はIs1であるため、その短絡回路6の短絡電路7には、可変負荷回路14側へ流れる電流Is2との差分の電流(Is1−Is2)が流れ、そのサイリスタ8はなお導通状態に保持されている。
【0052】
一方、太陽電池モジュールM3の出力する短絡電流はIs3であるため、可変負荷回路14側へ流れる電流Is2との差分の電流(Is2−Is3)が当該モジュールM3に並列接続されているバイパスダイオードDを流れる。
【0053】
なお、本実施形態においては、太陽電池モジュールM1、M2、M3のそれぞれの短絡回路6に組み込んである検知回路11は、短絡電路7の流れる電流を検知する電流検知素子と、当該素子の検知信号を反転して出力する回路から構成されており、短絡電路7の電流が消失したときに信号が出力される。
【0054】
不具合のあるモジュールは、例えば、これらの太陽電池モジュールM1、M2、M3の筐体外面の目視可能な位置に、不具合チェック用のLED(発光ダイオード)を取り付けておき、検知回路11が出力する信号で当該LEDを点灯させることにより、これを目視確認して見つけることができる。
【0055】
なお、検知回路11には、短絡電路7に電流が流れると信号が出力されるものを用いてもよい。その場合には、不具合チェック用のLEDが消灯していることを目視確認することによって、不具合のあるモジュールを見つけることができる。
【0056】
しかしながら、図1に示す太陽光発電システム1に用いられている太陽電池モジュールM1〜Mnの数が多くなると、それぞれの太陽電池モジュールのLEDの発光状態を現場で一つずつ目視確認する作業は困難となる。
【0057】
そこで、太陽電池モジュール数が多い場合には、不具合検知回路が、不具合のある太陽電池モジュールを自動的に識別判定する機能を有していることが望ましい。この機能は、前述した不具合検知回路の一部に不具合判定回路を組み込むことで実現できる。
【0058】
この不具合判定回路は、詳細な回路構成の記載や図示は省略するが、不具合判定用の専用プログラムを実行可能なコンピュータ、もしくは専用に設計された回路ユニットによって構成されていて、各検知回路11からの出力信号を受け取るとともに、前述した可変負荷回路14、直流開閉器4の開閉スイッチ4A、4B、パルス発生回路12、及びリセットスイッチ11を、周知の有線又は無線による通信手段を介して制御する機能を有している。
【0059】
前記不具合判定回路は、可変負荷回路14に流れる電流値Iを初期値Is0から段階的δIずつ増加させていき、各段階の電流値I毎に、それぞれの太陽電池モジュールMiについて、各短絡回路6の短絡電路7を流れる電流の有無についての情報を検知回路11から取得して、太陽電池モジュールMi毎に不具合の程度を段階的に識別判定する。
【0060】
図11は、不具合判定回路の動作を説明するフロー図であって、同図のSTEP1に示すように、不具合判定回路を起動すると、最初に太陽電池モジュールM1〜Mnの全ての短絡回路6を短絡状態にする。
【0061】
すなわち、STEP1においては、不具合判定回路によって、図2のように、直流開閉器4の2つの開閉スイッチ4A、4BがOFFに切り換えられた後、パルス発生回路12からは、パルス電流Idが出力され、全ての短絡回路6に組み込まれているサイリスタ8が一斉に導通状態となる。なお、この時点では、可変負荷回路14は非導通状態である。
【0062】
次に、図11のSTEP2において、不具合判定回路は、可変負荷回路14に流す電流Iを初期値Is0に設定する。なお、前記初期値Is0には、この値以下では直ちに太陽電池モジュールの修理や交換が必要と考えられる短絡電流値を設定しておけばよい。
【0063】
次に、STEP3では、可変負荷回路14に前記電流値I(初期値はIs0)を流したときに、検知回路11により電流の消失が検知された太陽電池モジュールMiを全て抽出する。この際、不具合判定回路のメモリには、前記電流値Iと、当該電流値Iにおいて抽出された太陽電池モジュールMiの識別情報とを対応させて記憶する。
【0064】
次に、STEP4で、不具合判定回路は、現時点で可変負荷回路14に設定されている電流値Iが、正常な太陽電池モジュールの短絡電流値(定格短絡電流値)Isn未満であるか否かを判断し、Isn未満であれば、STEP5に移行し、ここで、可変負荷回路14を流れる電流値Iを所定の増分δIだけ増加させた後、STEP3以降の処理を繰り返し実行する。
【0065】
そして、STEP4において、不具合判定回路が可変負荷回路14に流れる電流値Iが前記電流値Isn以上であると判断した場合には、STEP6に移行し、システムを図1に示す通常の稼働状態に復帰させた後、処理を終了する。なお、STEP6においては、不具合判定回路は、可変負荷回路14を非導通状態に戻した後に直流開閉器4の開閉スイッチ4A、4BをONにする。
【0066】
前述したSTEP3において、不具合判定回路が取得した情報は、例えば、不具合判定回路に接続したディスプレイ等の表示装置に、太陽電池モジュールMi毎にそれぞれの不具合の程度を段階的に、例えば色分け等で識別表示することで、システム全体の太陽電池モジュールM1〜Mnの中で、緊急に交換やメンテナンスが必要なモジュールを容易且つ的確に把握することができる。
【0067】
なお、不具合判定回路により、太陽電池モジュールM1〜Mnの中から交換やメンテナンスが緊急に必要な太陽電池モジュールのみ抽出すればよい場合には、前述した図11のSTEP4とSTEP5の処理は省略でき、不具合判定回路を簡略化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の太陽光発電システムの不具合検知回路は、消火活動時等の感電防止対策として、太陽電池モジュールのそれぞれに短絡回路が設けられている太陽光発電システムにおいて利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 太陽光発電システム
2A 正極側出力電路
2B 負極側出力電路
3 外部負荷
4 直流開閉器
4A、4B 開閉スイッチ
5 逆流防止ダイオード
6 短絡回路
7 短絡電路
8 サイリスタ
9 ツェナーダイオード
10 抵抗素子
11 検知回路
12 パルス発生回路
13 リセットスイッチ(リセット回路)
14 可変負荷回路
D バイパスダイオード
I 出力電流
Id パルス電流
Ig ゲート電流
Is 短絡電流
M1、M2、M3、Mi、Mn 太陽電池モジュール
P1 正極端子
P2 負極端子
【要約】
【課題】 太陽光発電システムに組み込まれている感電防止回路を利用することにより、システム全体の設置コストを低減できるとともに、不具合が生じている太陽電池モジュールを容易且つ的確に特定することができる、太陽光発電システムの不具合検知回路を提供する。
【解決手段】 複数の太陽電池モジュールM1、M2、M3の各短絡電路7を短絡させた状態で、正極側出力電路2Aと負極側出力電路2B間を連絡する可変負荷回路14に所定値の電流を流すと、これらのモジュールのうち、短絡電流値Is3が前記所定値以下である太陽電池モジュールM3では、その短絡電路7を流れる電流が消失する。この電流の消失は検知回路11で検知され、短絡電流値がIs3以下に低下している太陽電池モジュールM3が特定される。
【選択図】 図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11