(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の文献に記載されているクリームソースは、冷凍食品に適用した場合において、電子レンジでの良好な調理性と、解凍及び加熱後の良好な食感を兼ね備えている。
しかし、このクリームソースは、バターを用いず、かつルウを作らずに製造しているため、バター特有のコクのある風味や、ルウに独特の焙焼感が不足しており、嗜好性の点で改善の余地があった。
なお、クリームソースの主な材料である小麦粉は、農産物であるため、製造時のロットによる品質のばらつきが大きい。このため、小麦粉を用いて製造されるクリームソースも、品質のばらつきが生じやすい。
本発明は、バターを用い、かつルウを作って製造されるクリームソースであって、バターに特有のコクのある風味、及びルウに独特の焙焼感を有し、しかも、冷凍食品に適用した場合において、電子レンジでの良好な調理性(例えば、加熱ムラがなく、再糊化が容易で戻りが速いこと)、及び、解凍及び加熱後の良好な食感(例えば、離水がなく、滑らかな食感を有すること)を兼ね備えているクリームソース、並びに、このようなクリームソースを調製するためのルウ及びその原料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、バターを撹拌して、クリーム状のバターを得た後、このクリーム状のバターと活性グルテンを混合して、ルウの原料を得ることによって、上記の特長を有するクリームソースを製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1] (A)バターを撹拌して、クリーム状のバターを得る工程と、(B)上記クリーム状のバターと活性グルテンを混合して、ルウの原料を得る工程、を含む、ルウの原料の製造方法。
[2] 工程(B)で用いる活性グルテンの量が、バター100重量部当たり、1〜200重量部である上記[1]に記載のルウの原料の製造方法。
[3] 上記[1]又は[2]に記載のルウの原料の製造方法と、(C)上記ルウの原料と、加工デンプンを混合して、混合物を得る工程と、(D)上記混合物を、上記加工デンプンの糊化温度以上の温度で加熱して、ルウを得る工程、を含む、ルウの製造方法。
[4] 工程(C)で用いる加工デンプンの量が、バター100重量部当たり、10〜500重量部である上記[3]に記載のルウの製造方法。
[5] 上記加工デンプンを含むルウの原料の全量中、バターの含有率が10〜70重量%、活性グルテンの含有率が1〜40重量%、加工デンプンの含有率が10〜89重量%、バター、活性グルテン及び加工デンプンの合計の含有率が70〜100重量%になるように、バター、活性グルテン、及び加工デンプンの各量を定める、上記[3]又は[4]に記載のルウの製造方法。
[6] 上記[3]〜[5]のいずれかに記載のルウの製造方法によって製造されたルウ。
[7] 上記[6]に記載のルウと、牛乳を混合してなるクリームソース。
[8] 上記[7]に記載のクリームソースを含む冷凍食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によって得られるルウの原料を用いれば、バターに特有のコクのある風味、及びルウに独特の焙焼感を有し、しかも、冷凍食品に適用した場合において、電子レンジでの良好な調理性(例えば、加熱ムラがなく、さらに、再糊化が容易で戻りが速いこと)、及び、解凍及び加熱後の良好な食感(例えば、離水がなく、さらに、滑らかな食感を有すること)を兼ね備えているクリームソースを製造することができる。
また、得られるクリームソースは、小麦粉の代替物として、加工デンプンを用いているので、冷凍食品に適用した場合に、冷凍期間中の劣化が生じ難い。
さらに、得られるクリームソースは、主な材料として小麦粉を用いていないので、製造時のロットによる品質のばらつきが少ない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のルウの原料の製造方法は、(A)バターを撹拌して、クリーム状のバターを得る工程と、(B)上記クリーム状のバターと活性グルテンを混合して、ルウの原料を得る工程、を含む。
本発明のルウの製造方法は、工程(A)及び工程(B)に加えて、(C)上記ルウの原料と、加工デンプンを混合して、混合物を得る工程と、(D)上記混合物を、上記加工デンプンの糊化温度以上の温度で加熱して、ルウを得る工程、を含む。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0009】
[工程(A)]
工程(A)は、バターを撹拌して、クリーム状のバターを得る工程である。
バターとしては、特にその種類が限定されず、例えば、無発酵の有塩バター、無発酵の食塩不使用バター(無塩バター)、有塩の発酵バター、食塩不使用の発酵バターのいずれも用いることができる。
工程(A)において、バターの温度を特定の数値範囲内に調整することが望ましい。該温度は、好ましくは0〜35℃、より好ましくは10〜30℃、さらに好ましくは15〜28℃、特に好ましくは20〜27℃である。
該温度が0℃未満では、バターを撹拌して、クリーム状のバターを得るのに長時間を要し、製造の効率が悪くなる。該温度が35℃を超えると、バターが水相と油相に分離するため、工程(B)において、活性グルテンが、バターの水相と接触して吸水し、ダマになり、バターと活性グルテンの混合物の組織の均一性が損なわれ、ルウの物性が悪化することがある。
【0010】
工程(A)における撹拌の対象となるバターは、10℃以下の温度下に冷蔵していたバターを、そのまま用いることもできるし、あるいは、10℃以下の温度下に冷蔵していたバターを、特定の温度に調整した場所(例えば、23〜27℃の温度に保たれた場所)に、特定の時間(好ましくは30分間以上、より好ましくは10時間以上、特に好ましくは20時間以上)で保持(放置)することによって得ることができる。
なお、バターのサイズが小さいときには、放置時間が短く、バターのサイズが大きいときには、放置時間が長くなるのは言うまでもない。
工程(A)におけるクリーム状のバターとは、十分に練って、これ以上に柔らかくならない程度まで柔らかくなったバターをいう。つまり、油中水型のバターが水中油型のクリームに転相する状態とは異なる。
工程(A)におけるバターの撹拌の方法は、クリーム状のバターが得られるものであれば良く、例えば、撹拌翼付きのミキサーを用いて、10〜200rpmで、バターがクリーム状になるまで撹拌する方法が挙げられる。
【0011】
[工程(B)]
工程(B)は、工程(A)で得たクリーム状のバターと、活性グルテンを混合して、ルウの原料を得る工程である。
活性グルテンとは、生のグルテンの性質を変えない条件下で、生のグルテンを乾燥させてなるものをいう。活性グルテンは、吸水することによって、生のグルテンに復元する。
活性グルテンは、霧状の生グルテン溶液を熱風で瞬間的に乾燥させるスプレードライ法や、数mm程度の大きさの生グルテンを乾燥機の中で回転させながら乾燥させるフラッシュドライ法等の方法によって製造することができる。
生グルテンは、グルテンの前駆体であるグリアジンとグルテニンの2種のタンパク質を含む穀物粉(例えば、小麦粉)と、水を混合した後、この混合物を水洗することによって、得ることができる。なお、水洗の過程で、穀物粉から、水溶性のタンパク質やデンプン粒が流出し、生グルテン塊が分離される。
なお、クリームソースの主な材料である小麦粉は、農産物であるため、製造時のロットによる品質のばらつきが大きい。このため、小麦粉を用いて製造されるクリームソースも、品質のばらつきが生じやすい。本発明では、小麦粉を用いて、その小麦粉に含まれるグルテンの前駆体を利用することを意図するものではなく、製造時のロットによる品質のばらつきが小さく、成分が明確な活性グルテンを用いるものである。このため、後述のとおり、小麦粉は、全く用いないか、あるいは、実際に用いるとしても、その使用量を極力少なく抑えることが望ましい。仮に、本発明のルウの原料の製造に際して、小麦粉を用いて、この小麦粉に由来する成分が、活性グルテンと同様のものになったとしても、この小麦粉に由来する活性グルテンは、工程(B)で用いる活性グルテンに該当しないものとする。つまり、工程(B)で用いる活性グルテンは、クリーム状のバターとの混合時に活性グルテンと称し得るもの(換言すると、食品添加物である活性グルテン)を意味する。そのため、工程(B)で小麦粉を用いる場合、小麦粉の量は、バター100重量部当たり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下、特に好ましくは0.5重量部以下である。
【0012】
クリーム状のバターと、活性グルテンを混合する方法としては、クリーム状のバターと活性グルテンとからなる、ほぼ均一な混合物を得ることができれば良く、特に限定されないが、例えば、撹拌翼付きのミキサーを用いて、10〜200rpmで、5〜150分間、撹拌する方法が挙げられる。
工程(B)は、好ましくは0〜35℃、より好ましくは10〜30℃、さらに好ましくは15〜28℃、特に好ましくは20〜27℃の温度下で行なわれる。該温度が0℃未満では、クリーム状のバターと活性グルテンの混合に時間がかかり、製造の効率が悪くなる。該温度が35℃を超えると、バターが水相と油相に分離し、活性グルテンが、バターの水相と接触して吸水し、ダマになり、ルウの物性が悪化することがある。
【0013】
工程(B)で用いる活性グルテンの量は、バター100重量部当たり、好ましくは1〜200重量部、より好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜50重量部、さらに好ましくは15〜30重量部、特に好ましくは18〜28重量部である。該量が1重量部未満では、クリームソースの食感の厚み(ボディー感)が不十分となる。該量が200重量部を超えると、ルウの中のバターの割合が小さくなるため、クリームソースに、バターに特有のコクのある風味を十分に与えることが困難なことがある。
工程(B)によって、バターの中に活性グルテンをほぼ均一に分散させてなる混合物が得られる。この混合物は、活性グルテンが吸水してなるダマを含まず、ほぼ均一な組織の外観(換言すると、バターの組織の中に活性グルテンの粒が見えない程度に、活性グルテンがバターの中に溶け込んだ外観)を有する。この混合物は、ルウの原料として、以下の工程(C)〜(D)で用いることができる。
【0014】
[工程(C)]
工程(C)は、工程(B)で得たルウの原料と、加工デンプンを混合して、混合物を得る工程である。
加工デンプンは、デンプンに物理的、酵素的または化学的に処理を行ったものである。これらの処理によって、デンプンは、アセチル化、エーテル化、エステル化、酸化等の処理が施される。
加工デンプンを用いることによって、本発明のクリームソースを含む冷凍食品に含まれるクリームソースの冷凍期間中の劣化を抑制することができ、また、当該冷凍食品を電子レンジで解凍して加熱する際に、調理時間を短縮することができ、かつ、解凍時の離水を抑制することができる。
加工デンプンの原料としては、小麦、コーンスターチ、ワキシーコーン、馬鈴薯、タピオカ等が挙げられる。
【0015】
加工デンプンの例としては、リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸化架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン等が挙げられる。
中でも、リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸化架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンは、架橋処理が施されているため、糊化の促進によるクリームソースの粘度の過度の増大や、デンプン粒の崩壊に伴うクリームソースの粘度のブレークダウン(低下)を抑制することができ、また、親水基が付加されているため、糊化の開始温度が早くなり、クリームソースの製造の効率の向上、及び、冷凍食品の調理時間の短縮を図ることができる。
加工デンプンは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0016】
工程(C)は、好ましくは0〜35℃、より好ましくは10〜30℃、さらに好ましくは15〜28℃、特に好ましくは20〜27℃の温度下で行なわれる。該温度が0℃未満では、ルウの原料と加工デンプンの混合に時間がかかり、製造の効率が悪くなる。該温度が35℃を超えると、ルウの原料に含まれているバターが水相と油相に分離し、活性グルテンが、バターの水相と接触して吸水し、ダマになり、ルウの物性が悪化することがある。
工程(C)で用いる加工デンプンの量は、バター100重量部当たり、好ましくは10〜500重量部、より好ましくは25〜400重量部、さらに好ましくは50〜300重量部、さらに好ましくは100〜250重量部、さらに好ましくは150〜250重量部、特に好ましくは180〜240重量部である。該量が10重量部未満では、クリームソースを冷凍食品に適用した場合において、電子レンジでの調理性(例えば、調理時間の長さ)、及び、解凍及び加熱後の食感(例えば、離水の有無)が悪化する。該量が500重量部を超えると、ルウの中のバターの割合が小さくなるため、クリームソースに、バターに特有のコクのある風味を十分に与えることが困難なことがある。
【0017】
工程(A)〜工程(C)で用いるルウの原料の好ましい割合(加工デンプンを含むすべての原料の合計量中の割合)を、以下、詳しく説明する。
ルウの原料の全量中のバターの含有率は、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは20〜45重量%、さらに好ましくは25〜40重量%、特に好ましくは25〜35重量%である。該含有率が10重量%未満では、クリームソースに、バターに特有のコクのある風味を十分に与えることが困難であり、また、バターがスターチと一体化しにくい状態となる。該含有率が70重量%を超えると、ルウの中の活性グルテンまたは加工デンプンの割合が小さくなるため、クリームソースの食感の厚み(ボディー感)が不十分となったり、クリームソースを冷凍食品に適用した場合における、電子レンジでの調理性、及び、解凍及び加熱後の食感が悪化することがある。
【0018】
ルウの原料の全量中の活性グルテンの含有率は、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは3〜15重量%、さらに好ましくは4〜10重量%、特に好ましくは5〜9重量%である。該含有率が1重量%未満では、クリームソースの食感の厚み(ボディー感)が不十分となる。該含有率が40重量%を超えると、ルウの中のバターまたは加工デンプンの割合が小さくなるため、クリームソースに、バターに特有のコクのある風味を十分に与えることが困難になったり、クリームソースを冷凍食品に適用した場合における、電子レンジでの調理性、及び、解凍及び加熱後の食感が悪化することがある。
【0019】
ルウの原料の全量中の加工デンプンの含有率は、好ましくは10〜89重量%、より好ましくは30〜79重量%、さらに好ましくは40〜75重量%、さらに好ましくは50〜73重量%、特に好ましくは55〜70重量%である。該含有率が10重量%未満では、クリームソースを冷凍食品に適用した場合において、電子レンジでの調理性、及び、解凍及び加熱後の食感が悪化することがある。該含有率が89重量%を超えると、ルウの中のバターまたは活性グルテンの割合が小さくなるため、クリームソースに、バターに特有のコクのある風味を十分に与えることが困難になったり、クリームソースの食感の厚み(ボディー感)が不十分となることがある。
【0020】
ルウの原料の全量中のバター、活性グルテン及び加工デンプンの合計の含有率は、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%、さらに好ましくは90〜100重量%、特に好ましくは95〜100重量%である。該含有率が70重量%未満では、ルウを用いてクリームソースを調製した場合に、バター、活性グルテンまたは加工デンプンの含有率が小さいときの前述の問題が生じることがある。
【0021】
バター、活性グルテン及び加工デンプン以外のルウの原料としては、小麦粉、各種の調味料(例えば、塩、グルソー、香辛料)等が挙げられる。
ルウの原料の全量中の小麦粉の含有率は、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0〜5重量%、さらに好ましくは0〜3重量%、さらに好ましくは0〜2重量%、さらに好ましくは0〜1重量%、特に好ましくは0重量%である。該含有率が10重量%を超えると、クリームソースを冷凍食品に適用した場合における、電子レンジでの調理性、及び、解凍及び加熱後の食感が悪化することがある。なお、小麦粉を用いる場合、小麦粉は、工程(C)において加工デンプンと共に用いることが好ましい。
【0022】
[工程(D)]
工程(D)は、工程(C)で得た混合物を、工程(C)で用いた加工デンプンの糊化温度以上の温度で加熱して、ルウを得る工程である。
加熱温度は、加工デンプンの糊化温度以上であれば良いが、糊化の促進によって製造の効率を高める観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは105℃以上である。
加熱温度の上限は、過度の高温によるルウの変質を避けるなどの観点から、好ましくは200℃、より好ましくは185℃、さらに好ましくは170℃、さらに好ましくは150℃、さらに好ましくは130℃、特に好ましくは115℃である。
加熱時間は、加工デンプンを糊化し、かつ焙焼感を付与することができれば良く、好ましくは2時間以上、より好ましくは2.5時間以上、特に好ましくは3時間以上である。
加熱時間の上限は、製造の効率、及び、熱エネルギーの節減の観点から、好ましくは6時間である。
加熱の好ましい実施形態の一例として、30分間以上をかけて60℃以上の温度に到達させた後、75分間をかけて90〜100℃の温度に昇温し、次いで、75分間をかけて105〜115℃(例えば、105℃)まで昇温させた後、30分間以上をかけて90℃以下の温度に下げる方法が挙げられる。
【0023】
工程(D)で得られたルウは、クリームソースの原料として用いることができる。
クリームソースの一例としては、工程(D)で得られたルウと、他の原料(例えば、牛乳、水等)を混合してなるものが挙げられる。
この場合、ルウの量は、クリームソースに適度な粘度及びコクを与える観点から、クリームソース100重量部当たり、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは3〜20重量部、さらに好ましくは5〜15重量部、特に好ましくは5〜10重量部である。
また、ルウと共に牛乳を用いることもできる。この場合、牛乳の量は、クリームソースに適度な牛乳の風味を与える観点から、クリームソース100重量部当たり、好ましくは1〜90重量部、より好ましくは10〜80重量部、さらに好ましくは10〜70重量部、特に好ましくは10〜60重量部である。
また、牛乳と共に水を用いることもできる。この場合、水の量は、クリームソースに適度な濃さを与える観点から、クリームソース100重量部当たり、好ましくは80重量部以下、より好ましくは10〜70重量部、特に好ましくは10〜60重量部である。
【0024】
クリームソースには、ルウ、牛乳、水以外に、各種の調味料を配合することができる。
調味料としては、塩、グルソー、香辛料等が挙げられる。
なお、本発明で得られるルウを用いたクリームソースは、クリームソースの通常の定義である「小麦粉をバターで焦がさずに炒めて作られたルウに、牛乳及び調味料を加えてなるもの」を意味するものではなく、「バターと、活性グルテンと、小麦粉の代替物である加工デンプンとを含むルウを含むもの」を意味する。また、本発明で得られるルウを用いたクリームソースは、白色である場合には、ホワイトソースと称することもできる。
【0025】
工程(D)で得られたルウを用いてなるクリームソースは、冷凍食品の材料として用いることができる。
冷凍食品としては、グラタン、シチュー、チャウダー、ピザ等が挙げられる。
例えば、冷凍食品であるグラタンを製造する場合、クリームソースと、茹でたマカロニを混合して、容器に充填し、−20℃で10〜15時間、冷凍すれば、冷凍食品であるグラタンを得ることができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例によって本発明を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に包含される限りにおいて種々の実施形態を採ることができる。
[実施例1]
(a)ルウの製造
無塩バター(食塩不使用バター)を、25±2℃の温度に調整した室内に24時間で保持(放置)し、25℃の均一な温度を有する無塩バターを得た。
この無塩バターを、ミキサー(撹拌翼の回転数:30rpm)内に投入し、25±2℃の温度下にて、20分間で、クリーム状になるまで撹拌し、クリーム状のバターを得た。
このクリーム状のバター:30重量部(ルウの材料100重量部当たりの量;以下、同じ)及び活性グルテン(小麦を材料として製造したもの):6.55重量部を、ミキサー(撹拌翼の回転数:30rpm)内に投入し、25±2℃の温度下にて、20分間で、活性グルテンがバターの中に、ほぼ均一に分散されるまで撹拌し、バターと活性グルテンの混合物(ルウの原料)を得た。
【0027】
この混合物と、加工デンプン(トウモロコシを材料として製造したヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン:22.21重量部、及び、小麦を材料として製造したリン酸架橋デンプン:41.24重量部)を、ミキサー(撹拌翼の回転数:30rpm)内に投入し、25±2℃の温度下にて、20分間で、混合物と加工デンプンが十分に混合されるまで撹拌し、加工デンプンを含む混合物(加工デンプンを含むルウの原料)を得た。
得られた混合物を、徐々に加熱し、30分間で60℃の温度に到達させた後、75分間で100℃に昇温させ、次いで、75分間で105℃に昇温させ、その後、徐々に冷却して、2時間で85℃に降温させた。
降温後の混合物(ルウ)を、冷凍機に入れて、徐々に冷却し、15時間で−20℃に降温させ、固形のルウを得た。
その後、固形のルウを、フローズンカッターを用いてフレーク状に粉砕し、得られた粉砕物を冷凍機(温度:−20℃)の中で保管した。
【0028】
(b)冷凍食品の製造
前記(a)で得たルウ:9重量部と、牛乳:43重量部と、水:40重量部と、調味料:8重量部(以上の合計量:100重量部)を混合して、原料液を得た。この原料液を、90℃、5分間で加熱して、クリームソースを得た。
得られたクリームソースと、茹でたマカロニを、3:1の重量比で混合した後、得られた混合物:250gをポリプロピレン製の容器内に充填し、次いで、この混合物の上にチーズ:10gをトッピングし、冷凍前のグラタンを得た。この冷凍前のグラタンを、−20℃、12時間で冷凍して、冷凍グラタンを得た。
【0029】
(c)冷凍食品の評価
この冷凍グラタンを電子レンジ(出力:600W)で6分間、加熱した。このとき、調理中のクリームソースについて、離水や突沸は認められず、調理後のクリームソースについて、外観(見栄え)は良好であった。
また、調理後のクリームソースについて、ほぼ均等に分散するように定めた10箇所(測定点1〜10)の温度を測定したところ、下記の表1に示す値が得られた。なお、測定点1は、グラタンの上面の中央の点であり、測定点2〜9は、測定点1の周囲に点在させた点である。
表1から、クリームソースが、加熱ムラを生じることなく、ほぼ均等に昇温していることがわかる。
また、加熱後のグラタンを試食したところ、グラタンに含まれるクリームソースについて、冷たいと感じる箇所はなく、全体的に均一な温かさが感じられた。また、クリームソースについて、小麦粉及びバターを主成分として調製されたクリームソース(例えば、後述の比較例1のクリームソース)と同等の良好なボディ感及び風味(バターに特有のコク、及び、ルウに独特の焙焼感)が感じられた。さらに、グラタンに含まれるクリームソースについて、加工デンプンに起因すると思われる滑らかさも感じられた。このように、本発明品であるクリームソースは、風味と食感が優れていた。
【0030】
[比較例1]
(a)ルウの製造
小麦粉:70重量部(ルウの材料:100重量部当たりの量;以下、同じ)をバター:30重量部で焦がさないように炒めて、ルウを得た。
このルウを、冷凍機に入れて、徐々に冷却し、15時間で−20℃に降温させ、固形のルウを得た。
その後、固形のルウを、フローズンカッターを用いてフレーク状に粉砕し、得られた粉砕物を冷凍機(温度:−20℃)の中で保管した。
【0031】
(b)冷凍食品の製造
前記(a)で得たルウ:9重量部と、牛乳:43重量部と、水:40重量部と、調味料:8重量部(以上の合計量:100重量部)を混合して、原料液を得た。この原料液を、90℃、5分間で加熱して、クリームソースを得た。
【0032】
(c)冷凍食品の評価
得られたクリームソースを用いて、実施例1と同様にして、冷凍グラタンを得た。
この冷凍グラタンを、実施例1と同様に、電子レンジで加熱した。このとき、調理中のクリームソースについて、容器の壁に近い環状の部分の突沸が激しく、容器のフランジ部にクリームソースが飛散した。また、加熱の最後に、トッピングしたチーズにおいて、クリームソースへの巻き込みが発生し、調理後のクリームソースについて、外観(見栄え)が著しく悪化した。
調理後のクリームソースについて、実施例1と同様に定めた10箇所(測定点1〜10)の温度を測定したところ、下記の表1に示す値が得られた。
表1から、クリームソースが、加熱ムラを生じていることがわかる。
また、調理後のグラタンを試食したところ、グラタンに含まれるクリームソースに、温かさを十分に感じられない箇所があった。また、グラタンに含まれるクリームソースは、小麦粉を主成分として調製されているため、小麦粉に特有のボディ感は感じられたものの、滑らかさは感じられず、やや重たい食べ応えであった。
【0033】
【表1】
【0034】
[比較例2]
活性グルテンと加工デンプンを分けて用いることに代えて、活性グルテン及び加工デンプンを一括して、クリーム状のバターと共にミキサー(撹拌翼の回転数:30rpm)内に投入し、25±2℃の温度下にて、40分間で撹拌した以外は実施例1と同様にして、実験した。
その結果、活性グルテン及び加工デンプンが十分にバターの中に溶け込まず、ほぼ均一な組織を有する混合物を得ることができなかった。
【0035】
[比較例3]
活性グルテンを先に、加工デンプンを後で用いることに代えて、クリーム状のバターと加工デンプンを混合した後、得られた混合物と活性グルテンを混合した以外は実施例1と同様にして、実験した。
その結果、活性グルテン及び加工デンプンが十分にバターの中に溶け込まず、ほぼ均一な組織を有する混合物を得ることができなかった。