特許第6238251号(P6238251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238251多孔性シリコン系負極活物質及びこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238251
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】多孔性シリコン系負極活物質及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20171120BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01M4/587
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 E
   H01M4/36 D
   H01M4/36 C
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-550345(P2015-550345)
(86)(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公表番号】特表2016-502253(P2016-502253A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】KR2014008624
(87)【国際公開番号】WO2015041450
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2015年6月24日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0111981
(32)【優先日】2013年9月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミ・リム・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・チュル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン・キュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ウー・ユ
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−095306(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/126338(WO,A1)
【文献】 特開2012−084521(JP,A)
【文献】 特開2012−082126(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0147751(US,A1)
【文献】 特開2006−269110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
H01M 4/38
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性シリコン系粒子及び炭素粒子を含み、
前記炭素粒子が、平均粒径が互いに異なる微粒炭素粒子及び粗粒炭素粒子からなり
前記多孔性シリコン系粒子は、多孔性Si粒子であり、平均粒径(D50)が、μmから10μmであり、
前記微粒炭素粒子の平均粒径(D50)が、1μmからμmであり、
前記粗粒炭素粒子の平均粒径(D50)が、10μmから20μmであり、
前記多孔性シリコン系粒子及び炭素粒子の混合比が、重量比で1:1から20であり、
前記微粒炭素粒子及び粗粒炭素粒子の混合比が、重量比で1:4から9であることを特徴とする、負極活物質。
【請求項2】
前記微粒炭素粒子が、前記炭素粒子の全体重量に対して1重量%から30重量%の量で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記多孔性シリコン系粒子の気孔の平均直径が、30nmから500nmであることを特徴とする、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記多孔性シリコン系粒子の比表面積(BET−SSA)が、5m/gから50m/gであることを特徴とする、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記炭素粒子が、人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボン、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、グラフェン、繊維状炭素及び表面が被覆された黒鉛のうち選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項6】
請求項1に記載の負極活物質を含む負極。
【請求項7】
請求項に記載の負極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性シリコン系負極活物質に関し、より具体的に多孔性シリコン系粒子並びに平均粒径が互いに異なる微粒炭素粒子及び粗粒炭素粒子を共に含む多孔性シリコン系負極活物質、及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、情報通信産業の発展に伴う電子機器の小型化、軽量化、薄型化及び携帯化に伴い、このような電子機器の電源として用いられる電池の高エネルギー密度化に対する要求が高まっている。リチウム二次電池は、このような要求を最もよく満たすことができる電池であって、現在、これに対する研究が活発に進められている。
【0003】
リチウム二次電池の負極活物質には、リチウムの挿入/脱離が可能な人造黒鉛、天然黒鉛またはハードカーボンを含む多様な形態の炭素系材料が適用されてきた。これらの炭素系列のうち黒鉛は、リチウム電池のエネルギー密度の面で利点を提供し、かつ優れた可逆性でリチウム二次電池の長寿命を保障して最も広く用いられている。
【0004】
しかし、黒鉛は、電極の単位体積当たりのエネルギー密度の側面で容量が低いとの問題点があり、高い放電電圧では用いられる有機電解液との副反応が起こり易いので、電池の誤動作及び過充電などによって発火或いは爆発の危険性がある。
【0005】
よって、シリコン(Si)のような金属系負極活物質が研究されている。Si金属系負極活物質は、約4200mAh/gの高いリチウム容量を表すものと知られている。しかし、リチウムとの反応前後、すなわち、充放電時に最大300%以上の体積の変化を引き起こす。これによって、電極内の導電性ネットワークが損傷され、粒子間の接触抵抗が増加して電池の性能が低下される現象がある。
【0006】
よって、シリコン負極活物質の周辺を黒鉛系粒子が取り囲んでシリコン系負極活物質の伝導性を向上させた電極が研究されたことがある。
【0007】
しかし、このような負極活物質の場合、充放電時にシリコン系負極活物質の最大300%まで至る体積の変化によって黒鉛系粒子とシリコン系粒子との間の接触性が悪くなるに伴い、電池の性能が低下する欠点がある。特に、多孔性シリコン系負極活物質の場合、表面の多孔構造によって充放電時に多孔性シリコン系粒子と黒鉛粒子との短絡が深化し、電池性能の低下が表れる可能性がある問題が発生し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の技術の問題を解決するために考案されたものである。
【0009】
本発明の解決しようとする第1の技術的課題は、多孔性シリコン系粒子と炭素粒子との混合負極活物質を用いながら、従来の充放電時の負極活物質間の接触性悪化及び短絡の問題を解決することにより、二次電池の寿命特性を向上させることができる負極活物質を提供することにある。
【0010】
本発明の解決しようとする第2の技術的課題は、このような負極活物質を含む負極及びリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、多孔性シリコン系粒子及び炭素粒子を含み、前記炭素粒子が、平均粒径が互いに異なる微粒炭素粒子及び粗粒炭素粒子を含むことを特徴とする負極活物質を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記負極活物質を含む負極を提供する。
【0013】
さらに、本発明は、前記負極を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態に係る負極活物質は、多孔性シリコン系粒子、及び平均粒径が互いに異なる微粒炭素粒子及び粗粒炭素粒子を共に含むことにより、多孔性シリコン系粒子と炭素粒子との接触性を増加させることができ、これによりリチウム二次電池の寿命特性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本明細書の以下の図面等は、本発明の好ましい実施例を例示するものであり、前述した発明の内容と共に本発明の技術的思想をさらに理解させる役割を担うものなので、本発明はそのような図に記載された事柄にのみ限定されて解釈されてはならない。
【0016】
図1a】従来の負極の概路図である。
図1b】従来の充放電時の負極の概路図である。
図2a】本発明の一実施形態に係る負極の概路図である。
図2b】本発明の一実施形態に係る充放電時の負極の概路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に対する理解を助けるため、本発明をさらに詳しく説明する。
【0018】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最良の方法で説明するため、用語の概念を適宜定義することができるとの原則に即し、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0019】
本発明の一実施形態に係る負極活物質は、多孔性シリコン系粒子及び炭素粒子を含み、炭素粒子が、平均粒径が互いに異なる微粒炭素粒子及び粗粒炭素粒子を含むことを特徴とする。
【0020】
図1a及び図1bは、従来の負極(図1a)及び充放電時の負極(図1b)の形態に対する概路図である。
【0021】
一般に、多孔性シリコン系粒子を含む負極活物質の場合、伝導性が低いという欠点がある。よって、図1a及び図1bに示す通り、シリコン系粒子110と炭素粒子120とを混合することにより伝導性を向上させる方法が研究されていた。しかし、図1bに示す通り、充放電時のシリコン系粒子の体積の変化によるシリコン系粒子と炭素粒子との接触性悪化によって短絡が深刻化される問題が発生し得る。
【0022】
よって、本発明では、図2a及び図2bに示す通り、多孔性シリコン系粒子210、及び平均粒径が互いに異なる微粒炭素粒子230及び粗粒炭素粒子220を共に含むことにより、多孔性シリコン系粒子と炭素粒子との接触性を増加させて短絡を防止し、これによりリチウム二次電池の寿命特性をさらに向上させることができる。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、微粒炭素粒子の平均粒径(D50)は、1μmから10μm、好ましくは1μmから5μmであってよい。
【0024】
本発明の一実施形態に基づき、微粒炭素粒子の平均粒径が当該範囲内の平均粒径を有する場合、微粒炭素粒子等が多孔性シリコン系粒子及び粗粒炭素粒子の間に均一に形成され得るので、これにより充放電過程で多孔性シリコン系粒子及び炭素粒子との接触性を向上させ、充放電時の体積の膨張による短絡の問題を解決することができる。
【0025】
さらに、粗粒炭素粒子の平均粒径(D50)は、10μmから30μm、好ましくは10μmから20μmであってよい。
【0026】
粗粒炭素粒子の平均粒径が10μm未満の場合、微粒炭素粒子との大きさの差異が少ないため、異種炭素粒子の混合による伝導性向上の効果が僅かであり得、30μmを超過する場合、粗粒炭素粒子の過度な粒径の大きさによる律速特性低下の問題、及び最適密度において電極の容量低下の問題があり得る。
【0027】
一方、本発明の一実施形態に係る多孔性シリコン系粒子の平均粒径(D50)は、1μmから20μm、好ましくは3μmから12μm、さらに好ましくは5μmから10μmであってよい。
【0028】
多孔性シリコン系粒子の平均粒径が1μm未満の場合、負極活物質スラリー内の分散が困難なことがあり得、平均粒径が20μmを超過する場合、リチウムイオンの充電による粒子の膨張が甚だしくなり、充放電の繰り返しに伴い粒子間の結着性と、粒子と集電体との結着性とが低下されることになるので、寿命特性が大きく減少されることがあり得る。
【0029】
本発明において、粒子の平均粒径は、粒子の粒径分布の50%基準での粒径で定義することができる。本発明の一実施形態に係る前記粒子の平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を利用して測定することができる。前記レーザ回折法は、一般にサブミクロン領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性及び高分解性の結果を得ることができる。
【0030】
本発明の一実施形態に係る負極活物質において、微粒炭素粒子は、炭素粒子の全体重量に対して1重量%から30重量%、好ましくは10重量%から20重量%の量で含まれ得る。微粒炭素粒子が1重量%未満の場合、本発明の目的とする多孔性シリコン系粒子及び炭素粒子の短絡防止効果と、二次電池の寿命特性向上に対する効果とが僅かであり得る。一方、微粒炭素粒子が30重量%を超過する場合、微粒炭素粒子の過多によって比表面積が増加することがあり得、これによる副反応の増加及び寿命特性の劣化などをもたらし得る。
【0031】
本発明の一実施形態に係る負極活物質において、粗粒炭素粒子は、炭素粒子の全体重量に対して70重量%から99重量%、好ましくは80重量%から90重量%であるのが好ましい。粗粒炭素粒子が当該範囲内にある場合、多孔性シリコン系負極活物質の伝導性を十分向上させることができる。
【0032】
粗粒炭素粒子が70重量%未満の場合、微粒炭素粒子の過多によって比表面積が増加することがあり得、これによる副反応の増加及び寿命特性の劣化などをもたらし得る。一方、粗粒炭素粒子が99重量%を超過する場合、混合する微粒炭素の量が少なすぎて、本発明の目的とする多孔性シリコン系粒子及び炭素粒子の短絡防止の効果と、二次電池の寿命特性向上に対する効果とが僅かであり得る。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、多孔性シリコン系粒子及び炭素粒子は互いに混合するか複合化可能であり、さらに具体的には、多孔性シリコン系粒子、微粒炭素粒子及び粗粒炭素粒子は均一に混合するか、機械的ミリングによって複合化可能である。機械的ミリングは、例えば、高エネルギーボールミル(high energy ball mill)装置、遊星ミル(planetary mill)装置、攪拌ボールミル(stirred ball mill)装置、振動ミル(vibrating mill)装置など、通常のミリング装置またはミリング法を利用して均一に混合または複合化させることができる。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、微粒炭素粒子及び粗粒炭素粒子の混合比は、重量比で1:4から9であるのが好ましい。
【0035】
一方、多孔性シリコン系粒子並びに微粒炭素粒子及び粗粒炭素粒子を含む炭素粒子の混合比は、重量比で1:1から20であるのが好ましい。
【0036】
炭素粒子の含量が混合比未満であれば、負極活物質の電気伝導度の改善効果が僅かであり得、混合比を超過すれば、シリコンの含量が減少して高容量化を達成し難いことがあり得る。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、多孔性シリコン系粒子は、多孔性SiO(ここで、0≦x<2)または下記化学式(1)の多孔性シリコン系化合物であってよく、好ましくは多孔性Si粒子がよい:
MySi (1)
前記化学式(1)において、MはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Mg、Ca、B、P、Al、Ge、Sn、Sb、Bi及びLiを含むいずれか一つの元素、またはこれらのうち2種以上の元素を含み、
yは0.001から0.4である。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、負極の好ましい性能発現のため、多孔性シリコン系粒子の気孔の平均直径は、表面で測定する場合、30nmから500nmであるのが好ましい。気孔の平均直径の測定は、例えば、電子顕微鏡(SEM)写真で測定することができる。
【0039】
気孔の平均直径が30nm未満の場合、充放電時の負極活物質の体積膨張抑制の効果が僅かであり得、500nmを超過する場合、負極活物質内に存在する多量の気孔によって機械的強度が低下され、電池製造工程、すなわち、スラリーの混合、コーティング後圧延などの製造工程時に負極活物質が破壊されることがあり得る。
【0040】
多孔性シリコン系粒子の比表面積(BET−SSA)は、5m/gから50m/gであるのが好ましい。多孔性シリコン系粒子の比表面積が5m/g未満の場合、十分な気孔が形成されないため、炭素粒子との接触性向上の効果が僅かであり得、50m/gを超過する場合、広い比表面積によって電解液との副反応を減少させるのに困難があり得る。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、多孔性シリコン系粒子の比表面積はBET(Brunauer−Emmett−Teller;BET)法で測定することができる。例えば、気孔分布測定器(Porosimetry analyzer;Bell Japan Inc、Belsorp−II mini)を用いて窒素ガス吸着流通法によりBET 6点法で測定することができる。
【0042】
さらに、本発明の一実施形態によれば、炭素粒子は人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボン、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、グラフェン、繊維状炭素及び表面が被覆された黒鉛のうち選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物であり得る。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、微粒炭素粒子と粗粒炭素粒子は互いに同一であるか互いに相違し得る。
【0044】
さらに、炭素粒子の形態は、無定形、鱗状、角形、板状形、球形、繊維状、点形またはこれらの混合形態であるのが好ましい。具体的に、微粒炭素粒子の形態は、例えば、球形、角形、鱗状、板状形、点形またはこれらの混合形態であってよく、さらに好ましくは、球形、点形、鱗状またはこれらの混合形態であってよい。さらに、粗粒炭素の形態は、例えば、無定形、鱗状、板状形、繊維状、球形またはこれらの混合形態であってよく、さらに好ましくは、球形、鱗状、板状形またはこれらの混合形態であってよい。
【0045】
本発明の一実施形態に係る負極活物質の製造方法は、(i)多孔性シリコン系粒子を製造する段階、及び(ii)多孔性シリコン系粒子に、平均粒径が互いに異なる微粒炭素粒子及び粗粒炭素粒子を含む炭素粒子を混合する段階を含むことができる。
【0046】
多孔性シリコン系粒子の製造方法は、当分野に周知となった通常の多孔性シリコン系粒子の製造方法を用いることができる。
【0047】
具体的に、多孔性シリコン系粒子の製造方法は、例えば、(i)フッ素系溶液を金属前駆体溶液と混合した後、この混合溶液にシリコン系粒子を投入してシリコン系粒子の表面に金属粒子を電着させる段階;(ii)金属粒子が電着されたシリコン系粒子をエッチング溶液と接触させてエッチングする段階;及び(iii)エッチングされたシリコン系粒子を金属除去溶液と接触させて金属粒子を取り除く段階を含むことができる。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、段階(i)は、フッ素系溶液と金属前駆体溶液とを混合した後、この混合溶液にシリコン系粒子を投入してシリコン系粒子の表面に金属粒子を電着させることができる。
【0049】
このとき、フッ素系溶液によってシリコン系粒子は電子を放出することになり、放出した電子を溶液内の金属イオンが受け取り、金属イオンは還元されてシリコン系粒子の表面に電着される。一応金属粒子がシリコン系粒子の表面に電着されると、金属粒子自体が触媒サイトになって連続的な電着が起こることになる。
【0050】
フッ素系溶液は、フッ化水素(HF)、フッ化ケイ酸及びフッ化アンモニウム(NHF)からなる群より選択される1種以上を用いることができ、金属前駆体溶液は銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)及び銅(Cu)からなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、フッ素系溶液及び金属前駆体溶液は、10から90:90から10の重量比で混合され得る。フッ素系溶液が10重量比未満で混合される場合は、シリコン系粒子の表面に電着される金属粒子の量が少なく反応速度が非常に遅いため、製造時間が長くなる問題があり得る。さらに、フッ素系溶液が90重量比を超過して混合される場合は、シリコン系粒子の表面に金属粒子が電着される速度が非常に速いため、シリコン系粒子上に均一で小さな大きさの金属粒子を電着させることができない問題がある。
【0052】
さらに、フッ素系溶液の濃度及びシリコン系粒子と金属前駆体溶液との接触時間によって、シリコン系粒子に電着される金属粒子の量を調節することができる。シリコン系粒子は、フッ素系溶液及び金属前駆体溶液の混合溶液100重量部に対して0.001から50の重量部の量で投入され得る。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、段階(ii)は、金属粒子が電着されたシリコン系粒子をエッチング溶液と接触させてシリコン系粒子をエッチングし、シリコン系粒子の表面、または表面及び内部に気孔を形成する段階である。このようなエッチング工程を介し、ナノ気孔、メソ気孔及びマクロ気孔が形成され得る。
【0054】
シリコン系粒子のエッチングは次の通りである。例えば、Hによって金属粒子は酸化され金属イオンとなり、シリコン系粒子と金属粒子の境界面でシリコン系粒子は金属粒子へ電子を伝達しながら継続的に溶解され、前述のシリコン系粒子の表面に電着された金属粒子で酸化された金属イオンの還元が発生する。このような方法で、金属粒子と接触するシリコン系粒子は連続的にエッチングされ、少なくとも表面に蜂の巣状の多孔性構造を形成することができ、金属粒子の種類及び反応時間などを制御することにより、最終的にエッチングされた結果物に従って気孔の大きさを調節することができる。
【0055】
エッチング溶液は、フルオロ化水素(HF)溶液及び過酸化水素(H)溶液の混合溶液を用いることができ、エッチング程度に従って含まれるフルオロ化水素溶液の量が多様であり得るが、フルオロ化水素(HF)溶液及び過酸化水素(H)溶液は、10から90:90から10の重量比で混合され得る。このとき、Hの含量は、シリコン系粒子内で気孔の形成に重要な役割を担う。
【0056】
さらに、エッチングは、エッチング溶液の濃度に従って30分から24時間の間行われ得る。エッチングが30分未満で行われる場合は、気孔の生成が僅かであるという問題があり、24時間を超過して行われる場合は、シリコン系粒子が過度にエッチングされて活物質の機械的物性が低下される問題がある。
【0057】
本発明の一実施形態に係る多孔性シリコン系負極活物質の製造方法において、段階(iii)は、気孔が形成されたシリコン系粒子を金属除去溶液と接触させて前記金属粒子を取り除く段階である。
【0058】
金属除去溶液は、硝酸(HNO)、硫酸(HSO)及び塩酸(HCl)からなる群より選択される1種以上を用いることができる。
【0059】
本発明の一実施形態に係る多孔性シリコン系粒子の製造方法において、エッチング方法は、多孔性シリコン系粒子の結晶構造を変化させることなく気孔を形成させることができる。
【0060】
さらに、本発明は前記負極活物質を含む負極を提供する。
【0061】
次に、本発明は正極、負極、正極と負極との間に介在された分離膜及びリチウム塩が溶解されている電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0062】
上述のように製造された負極活物質を用いて、当分野で通常用いられる製造方法で負極を製造することができる。例えば、本発明の一実施形態に係る負極活物質にバインダーと溶媒、必要に応じて導電材と分散剤を混合及び攪拌してスラリーを製造した後、これを集電体に塗布し圧縮して負極を製造することができる。
【0063】
バインダーとしては、ポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF−co−HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)、及びこれらの水素がLi、NaまたはCaなどで置換された高分子、または多様な共重合体などの多様な種類のバインダー高分子が用いられ得る。前記溶媒としては、N−メチルピロリドン、アセトン、水などを用いることができる。
【0064】
導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;炭素ナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられ得る。
【0065】
分散剤は、水系分散剤またはN−メチル−2−ピロリドンなどの有機分散剤を用いることができる。
【0066】
前述した負極の製造と同様に、正極活物質、導電材、バインダー及び溶媒を混合してスラリーを製造した後、これを金属集電体に直接コーティングするか、別途の支持体上にキャストし、該支持体から剥離させた正極活物質フィルムを金属集電体にラミネーションして正極を製造することができる。
【0067】
正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、Li[NiCoMnMv]O(前記式で、MはAl、Ga及びInからなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の元素であり;0.3≦x<1.0、0≦y、z≦0.5、0≦v≦0.1、x+y+z+v=1である)、Li(Lib−a−b’M’b’)O2−c(前記式で、0≦a≦0.2、0.6≦b≦1、0≦b’≦0.2、0≦c≦0.2であり;MはMnと、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Zn及びTiからなる群より選択される1種以上を含み;M’はAl、Mg及びBからなる群より選択される1種以上であり、AはP、F、S及びNからなる群より選択される1種以上である。)などの層状化合物や、1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+yMn2−y(ここで、yは0〜0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1−y(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、y=0.01〜0.3である)で表現されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2−y(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、y=0.01〜0.1である)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表現されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoO等を挙げることができるが、これらだけに限定されるものではない。
【0068】
分離膜は、従来に分離膜として用いられていた通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して用いることができ、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のカラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布、ポリマー分離膜基材の少なくとも一面以上にセラミックをコーティングして用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0069】
本発明の一実施形態で用いられる電解液において、電解質として含まれ得るリチウム塩は、二次電池用電解液に通常用いられるものであれば制限なく用いられてよく、例えば、リチウム塩の陰イオンとしては、F、Cl、I、NO、N(CN)、BF、ClO、PF、(CFPF、(CFPF、(CFPF、(CFPF、(CF、CFSO、CFCFSO、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO、CFCO、CHCO、SCN及び(CFCFSOからなる群より選択される1種を用いることができる。
【0070】
本発明の一実施形態で用いられる電解液において、電解液に含まれる有機溶媒としては、通常用いられるものであれば制限なく用いられてよく、代表的にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(fluoro−ethylene carbonate)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビニレンカーボネート、スルホラン、ガンマ−ブチロラクトン、プロピレンスルファイト、テトラヒドロフラン、メチルホルマート(methyl formate)、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、イソプロピルアセテート(isopropyl acetate)、イソアミルアセテート(isoamyl acetate)、メチルプロピオネート(methyl propionate)、エチルプロピオネート(ethyl propionate)、プロピルプロピオネート(propyl propionate)、ブチルプロピオネート(butyl propionate)、メチルブチレート(methyl butylate)及びエチルブチレート(ethyl butylate)からなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらのうち2種以上の混合物を用いることができる。
【0071】
特に、カーボネート系有機溶媒のうち環状カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒で誘電率が高いため、電解質内のリチウム塩をよく解離させるので好ましく用いられてよく、このような環状カーボネートにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線形カーボネートを適当な割合で混合して用いれば、高い電気伝導率を有する電解液を製造することができるので、さらに好ましく用いられてよい。
【0072】
選択的に、本発明に基づき貯蔵される電解液は、通常の電解液に含まれる過充電防止剤などのような添加剤をさらに含むことができる。
【0073】
正極と負極との間に分離膜を配置して電極組立体を形成し、電極組立体を円筒形電池ケースまたは角形電池ケースまたはアルミニウムパウチに入れた後、電解質を注入すると二次電池が完成する。または、電極組立体を積層した後、これを電解液に含浸させ、得られた結果物を電池ケースに入れて密封するとリチウム二次電池が完成する。
【0074】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに使用可能なだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用可能である。中大型デバイスの好ましい例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これらだけに限定されるものではない。
【0075】
(実施例)
(実施例1)
平均粒径(D50)が5μmであり、比表面積(BET−SSA)が18m/gである多孔性Si粒子(a);及び平均粒径(D50)が20μmである粗粒黒鉛粒子、及び平均粒径(D50)が3μmである微粒黒鉛粒子を重量比80:20で混合した黒鉛粒子(b)を混合して負極活物質を製造した。このとき、Si粒子(a)及び黒鉛粒子(b)の混合比は5:95重量比であった。
【0076】
(比較例1)
黒鉛粒子(b)として平均粒径(D50)が20μmである粗粒黒鉛粒子のみ用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で負極活物質を製造した。
【0077】
(比較例2)
多孔性Si粒子に代えて非多孔性Si粒子を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で負極活物質を製造した。
【0078】
(比較例3)
多孔性Si粒子に代えて非多孔性Si粒子を用いたことを除いては、比較例1と同様の方法で負極活物質を製造した。
【0079】
<コイン形半電池の製造>
(実施例2)
実施例1で製造された負極活物質、導電材としてアセチレンブラック、及びバインダーとしてポリビニリデンフルオリドを用いて、95:1:4の重量比で混合し、これらを溶媒であるN−メチル−2−ピロリドンに混合してスラリーを製造した。製造されたスラリーを銅集電体の一面に30μmの厚さにコーティングし、乾燥及び圧延した後、一定の大きさにパンチングして負極を製造した。
【0080】
エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを30:70の重量比で混合して製造された有機溶媒及び1.0MのLiPFを含む混合溶媒に、電解液の総量を基準に、フルオロエチレンカーボネート10重量%を添加して非水性電解液を製造した。
【0081】
対電極としてリチウム金属ホイルを用い、両電極の間にポリオレフィン分離膜を介在させた後、電解液を注入してコイン形半電池を製造した。
【0082】
(比較例4から6)
負極活物質として、実施例1で製造された負極活物質を用いる代わりに比較例1から3で製造された負極活物質を用いたことを除いては、実施例2と同様の方法でコイン形半電池を製造した。
【0083】
(実験例1:寿命特性及び容量特性の分析)
実施例2、及び比較例4から6で製造されたコイン形半電池の充放電サイクルに伴う容量特性及び寿命特性を調べるため、実施例2、及び比較例4から6で製造されたコイン形半電池を、23℃で定電流/定電圧(CC/CV)条件下、5mV、0.005Cまで0.1Cで充電した後、定電流(CC)条件で1.5Vまで0.1Cで放電し、容量を測定した。
【0084】
以後は、定電流/定電圧(CC/CV)条件で5mV、0.005Cまで0.5Cで充電した後、定電流(CC)条件で1.0Vまで0.5Cで放電し、1から50サイクルで繰り返して行った。その結果を下記表1に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
(寿命特性:(第49サイクルの放電容量/第1サイクルの放電容量)×100)
表1から確認できるところのように、多孔性Si粒子、及び平均粒径が互いに異なる微粒炭素粒子及び粗粒炭素粒子を共に含む炭素粒子を混合した負極活物質を用いた実施例2の二次電池が、多孔性シリコン粒子を粗粒炭素粒子のみ含んだ炭素粒子と混合した比較例4に比べ、寿命特性が約5%程度向上することを確認することができる。
【0087】
一方、非多孔性Si粒子と、平均粒径が互いに異なる微粒炭素粒子及び粗粒炭素粒子を共に含む炭素粒子とを混合した負極活物質を用いた比較例5の二次電池が、非多孔性Si粒子と粗粒炭素粒子のみ含む炭素粒子とを含んだ負極活物質を用いた比較例6に比べ、寿命特性が約3%程度向上することを確認することができる。
【0088】
さらに、本発明の実施例2は、多孔性でない非多孔性Si粒子を用いて炭素粒子と混合した負極活物質を用いた比較例5及び6に比べ、二次電池の寿命特性が約6%〜9%程度まで向上することを確認することができる。
【0089】
つまり、非多孔性Si粒子より多孔性Si粒子を用いたとき、微粒黒鉛と粗粒黒鉛の混合による効果が大きくなることが分かる。
【0090】
さらに、平均粒径が互いに異なる微粒及び粗粒炭素粒子を共に混合した場合、単一炭素粒子を用いた場合に比べて寿命特性が著しく優秀なことを確認することができた。
【0091】
一方、容量特性の場合、実施例2の二次電池の容量特性が比較例より僅かに減少する傾向が見られるが、当該範囲は誤差範囲内で、二次電池への適用時に容量特性に影響を及ぼさない。
【0092】
したがって、優秀な寿命特性を有する本発明の負極活物質は、二次電池に有用に用いられ得る。
【符号の説明】
【0093】
110 シリコン系粒子
120 炭素粒子
210 多孔性シリコン系粒子
220 粗粒炭素粒子
230 微粒炭素粒子
図1a
図1b
図2a
図2b