【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルカリ金属化合物が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ金属炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項2に記載のテトラアルコキシシランの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0010】
<テトラアルコキシシランの製造方法>
本発明の一態様であるテトラアルコキシシランの製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、アルコールと酸化ケイ素を反応させる反応工程(以下、「反応工程」と略す場合がある。)を含む方法であり、反応工程が下記(a)及び(b)の少なくとも1種の条件を満たすことを特徴とする。
(a)金属アルコキシドの存在下で反応させる。
(b)下記一般式(1)で表されるアセタールの存在下で反応させる。
【化2】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜15の炭化水素基を、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を表す。但し、R
1及びR
2の両方が水素原子である場合を除く。)
本発明者らは、金属ケイ素を経由しないテトラアルコキシシランの製造方法としてアルコールと酸化ケイ素を用いる方法に着目し、その検討を進めた結果、アルコールと酸化ケイ素を反応させる上で、チタンアルコキシド等の金属アルコキシド及び/又は一般式(1)で表されるアセタールを共存させることにより、効率良くテトラアルコキシシランが生成することを見出した。
金属アルコキシドや一般式(1)で表されるアセタール(以下、「アセタール」と略す場合がある。)は、反応によって生じた水を適切に除去する脱水剤としての働きをし、生成したテトラアルコキシシランの分解を抑制するものと考えられる。また、金属アルコキシドやアセタールは、水と反応することによってアルコールを生成することになるため、アルコールの供給源としても活用することもできる。
即ち、(a)及び(b)の少なくとも1種の条件を満たす本発明の製造方法は、省エネルギーかつ高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる方法なのである。
なお、反応工程は、
図1の(ア)に示されるように、回分反応器にアルコールと金属アルコキシド(又はアセタール)と酸化ケイ素をそれぞれ投入して反応させた後、テトラアルコキシシランを回収する回分式の反応であっても、
図1の(イ)に示されるように、連続管型反応器にアルコールと金属アルコキシド(又はアセタール)を逐次投入し、酸化ケイ素と反応させて、テトラアルコキシシランを逐次回収する連続式の反応であってもよいことを意味する。
また、「金属アルコキシドの存在下」及び「アセタールの存在下」の「存在下」とは、「金属アルコキシド」や「アセタール」を反応器に直接投入することによって、反応工程中に「金属アルコキシド」や「アセタール」が存在している態様のほか、例えば反応器内に投入されたアルコールと反応することによって「金属アルコキシド」や「アセタール」が生成し、反応工程中に「金属アルコキシド」や「アセタール」が存在している態様も含まれるものとする。従って、例えば四塩化チタンとエタノールを反応器に投入することによって、反応器内でテトラエトキシチタンが生成している場合も、「金属アルコキシド」が存在しているものと言える。
【0011】
反応工程は、アルコールと酸化ケイ素を反応させる工程であるが、アルコールの種類は、特に限定されず、製造目的であるテトラアルコキシシランに応じて適宜選択することができる。例えばアルコールとしてメタノールを用いるとテトラメトキシシランを、エタノールを用いるとテトラエトキシシランを製造することができる。
アルコールは、脂肪族アルコールと芳香族アルコールのどちらでもよく、またアルコール中の炭化水素基は、分岐構造、環状構造、炭素−炭素不飽和結合等のそれぞれを有していてもよい。
アルコールの炭素数は、通常1以上、好ましくは2以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
具体的なアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ベンジルアルコール、フェノール等が挙げられる。中でも、メタノール、エタノールが好ましく、メタノールがより好ましい。なお、アルコールの炭素数が多いものほど、テトラアルコキシシランの収率は低下し易い傾向にあるが、本発明の製造方法を利用することによって、高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。
なお、アルコールの使用量は、酸化ケイ素の物質量(ケイ素基準)に対して、通常0倍より多く、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上であり、通常10000倍以下、好ましくは5000倍以下、より好ましくは3000倍以下である。
【0012】
反応工程は、アルコールと酸化ケイ素を反応させる工程であるが、酸化ケイ素とは、ケイ素原子(Si)と酸素原子(O)を主要な構成元素として含む化合物を意味し、一酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO
2)、或いはゼオライト等の他の金属との複合酸化物であってもよいことを意味する。
具体的な酸化ケイ素としては、ケイ石、ケイ砂、ケイ藻土、石英等の天然鉱物、ケイ素含有植物の焼成灰、火山灰、ケイ酸塩類、シリカゾル由来のシリカゲル、ヒュームドシリカ、シリカアルミナ、ゼオライト等が挙げられる。
【0013】
反応工程は、(a)金属アルコキシドの存在下で反応させることを特徴とするが、金属アルコキシドのアルコキシ基は、アルコールと同一の炭化水素基を有するものであることが好ましい。
金属アルコキシドの金属の種類としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド、アクチノイドを除く金属が好ましく、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、スズ(Sn)等が挙げられる。
具体的な金属アルコキシドとしては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトイソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラ−t−ブトキシジルコニウム、テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトラプロポキシスズ、テトライソプロポキシスズ、テトラブトキシスズ、テトラ−t−ブトキシスズ、テトラペンチルオキシスズ、テトラヘキシルオキシスズ、テトラ−2−エチル−1−ヘキシルオキシスズ、ジメチルジメトキシスズ、ジメチルジエトキシスズ、ジメチルジプロポキシスズ、ジメチルジブトキシスズ、ジメチルジペンチルオキシスズ、ジメチルジヘキシルオキシスズ、ジメチルジシクロヘキシルオキシスズ、ジメチルジ(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)スズ、ジメチルジプロペニルオキシスズ、メチルブチルジメトキシスズ、メチルブチルジエトキシスズ、メチルブチルジプロポキシスズ、メチルブチルジブトキシスズ、メチルブチルジ(2−エチル−1−ブトキシド)スズ、メチルブチルジペンチルオキシスズ、メチルブチルジヘキシルオキシスズ、メチルブチルジシクロヘキシルオキシスズ、メチルブチルジ(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)スズ、メチルブチルジプロペニルオキシスズ、メチルブチルジベンジルオキシスズ、メチル(2−エチル−ヘキシル)ジメトキシスズ、メチル(2−エチル−ヘキシル)スズジエトキシスズ、メチル(2−エチル−ヘキシル)ジプロポキシスズ、メチル(2−エチル−ヘキシル)ジブトキシスズ、メチル(2−エチル−ヘキシル)ジ(2−エチル−1−ブトキシ)スズ、メチル(2−エチル−ヘキシル)ジペンチルオキシスズ、メチル(2−エチル−ヘキシル)ジヘキシルオキシスズ、メチル(2−エチル−ヘキシル)ジシクロヘキシルオキシスズ、メチル(2−エチル−ヘキシル)ジ(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)スズ、メチル(2−エチル−ヘキシル)ジプロペニルオキシスズ、メチル(2−エチル−ヘキシル)ジベンジルオキシスズ、ブチル(2−エチル−ヘキシル)ジメトキシスズ、ブチル(2−エチル−ヘキシル)ジエトキシスズ、ブチル(2−エチル−ヘキシル)ジプロポキシスズ、ブチル(2−エチル−ヘキシル)ジブトキシスズ、ブチル(2−エチル−ヘキシル)ジ(2−エチル−1−ブトキシ)スズ、ブチル(2−エチル−ヘキシル)ジペンチルオキシスズ、ブチル(2−エチル−ヘキシル)ジヘキシルオキシスズ、ブチル(2−エチル−ヘキシル)ジシクロヘキシルオキシスズ、ブチル(2−エチル−ヘキシル)ジ(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)スズ、ブチル(2−エチル−ヘキシル)ジプロペニルオキシスズ、ブチル(2−エチル−ヘキシル)ジベンジルオキシスズ、ジ−n−ブチルジメトキシスズ、ジ−n−ブチルジエトキシスズ、ジ−n−ブチルジプロポキシスズ、ジ−n−ブチルジブトキシスズ、ジ−n−ブチルジ(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)スズ、ジ−n−ブチルジヘキシルオキシスズ、ジ−n−ブチルジ(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)スズ、ジ−n−ブチルジベンジルオキシスズ、ジ−t−ブチルジメトキシスズ、ジ−t−ブチルジエトキシスズ、ジ−t−ブチルジプロポキシスズ、ジ−t−ブチルジブトキシスズ、ジ−t−ブチルジヘキシルオキシスズ、ジ−t−ブチルジシクロオキシスズ、ジ−t−ブチルジプロペニルオキシスズ、ジ−t−ブチルジベンジルオキシスズ、ジフェニルジメトキシスズ、ジフェニルジエトキシスズ、ジフェニルジプロポキシスズ、ジフェニルジブトキシスズ、ジフェニルジ(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)スズ、ジフェニルジペンチルオキシスズ、ジフェニルジヘキシルオキシスズ、ジフェニルジ−(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)スズ、ジフェニルジシクロヘキシルオキシスズ、ジフェニルジプロペニルオキシスズド、ジフェニルジベンジルオキシスズ、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジメトキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジエトキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジプロポキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジブトキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジペンチルオキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジヘキシルオキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジシクロヘキシルオキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1、3−ジ(2−エチル−1−ヘキシルオキシ)ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジベンジルオキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジメトキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジエトキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジプロポキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジブトキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジペンチルオキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジヘキシルオキシジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジシクロヘキシルオキシジスタンオキサン1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジ(2−エチル−1−ブトキシ)ジスタンオキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジベンジルオキシジスタンオキサン、ペンタエトキシニオブ、ペンタプロポキシニオブ、ペンタイソプロポキシニオブ、ペンタブトキシニオブ等が挙げられる。なお、金属アルコキシドは、1種類のみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
金属アルコキシドの使用量(存在量)は、酸化ケイ素(二酸化ケイ素の場合、ケイ素基準)1molに対して、通常0mol以上、好ましくは0.01mol以上、より好ましくは0.1mol以上、さらに好ましくは0.5mol、特に好ましくは1mol以上であり、通常200mol以下、好ましくは100mol以下、より好ましくは50mol以下である。上記範囲内であると、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。
【0014】
反応工程は、(b)下記一般式(1)で表されるアセタールの存在下で反応させることを特徴とするが、アセタールのアルコキシ基は、アルコールと同一の炭化水素基を有するものであることが好ましい。
【化3】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜15の炭化水素基を、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を表す。但し、R
1及びR
2の両方が水素原子である場合を除く。)
アルコキシ基がアルコールと同一であると、下記反応式(2)で示されるように、水と反応してアルコールが生成することになり、このアルコールを反応に利用することができる。また、反応終了後、回収したアルデヒドやケトンは、容易にアセタールに再生し、再利用することができる。
【化4】
具体的な一般式(1)で表されるアセタールとしては、ベンズアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジメチルアセタール、ホルムアルデヒドジメチルアセタール、アセトンジメチルアセタール(2,2−ジメトキシプロパン)、アセトンジエチルアセタール、アセトンジベンジルアセタール、ジエチルケトンジメチルアセタール、ベンゾフェノンジメチルアセタール、ベンジルフェニルケトンジメチルアセタール、シクロヘキサノンジメチルアセタール、アセトフェノンジメチルアセタール、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4,4−ジメトキシ−2,5−シクロヘキサジエン−1−オンアセタール、ジメチルアセトアミドジエチルアセタール等が挙げられる。なお、一般式(1)で表されるアセタールは、1種類のみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
一般式(1)で表されるアセタールの使用量(存在量)は、酸化ケイ素(二酸化ケイ素の場合、ケイ素基準)1molに対して、通常0mol以上、好ましくは0.01mol以上、より好ましくは0.1mol以上であり、通常200mol以下、好ましくは100mol以下、より好ましくは50mol以下である。上記範囲内であると、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。
【0015】
反応工程は、前述の(a)及び(b)の少なくとも1種の条件を満たすものであれば、その他は特に限定されないが、さらに下記(c)の条件を満たすことが好ましい。
(c)アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下で反応させる。
アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物の存在下であると、酸化ケイ素のケイ素−酸素結合の開裂が促進されて、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。
アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物におけるアルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、セシウム(Cs)等が挙げられる。また、対イオンについては、水酸化物、ハロゲン化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、アルコキシド、ケイ酸塩、アルミン酸塩、リン酸塩、有機酸塩、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。中でも水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、炭酸水素塩が好ましく、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩がより好ましい。
具体的なアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等が挙げられる。なお、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物は、1種類のみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
アルカリ金属化合物とアルカリ土類金属化合物の総使用量(総存在量)は、酸化ケイ素(二酸化ケイ素の場合)1molに対して、通常0mol以上、好ましくは1.0mol以上であり、通常50mol以下、好ましくは15mol以下である。
【0016】
反応工程において、アルコールと酸化ケイ素を反応させるための反応器、操作手順、反応条件等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
反応器としては、前述のように回分反応器(
図1の(ア)参照)、連続管型反応器(
図1の(イ)参照)等が挙げられる。なお、回分反応器は、オートクレーブ等の耐圧反応器であることが好ましい。
操作手順は、例えば回分反応器を用いる場合、反応器にアルコール、酸化ケイ素、金属アルコキシド、アセタール、アルカリ金属化合物等を投入し、雰囲気ガス等で反応容器内を掃気した後、雰囲気ガスを充填して密閉し、反応温度まで加熱を行う方法が挙げられる。なお、雰囲気ガスの25℃における充填圧力は、0.1〜10MPaであることが好ましい。上記範囲内であると、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。また、雰囲気ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスや二酸化炭素等が挙げられる。
また、連続管型反応器を用いる場合、酸化ケイ素、アルカリ金属化合物等を反応器に投入しておき、反応容器を反応温度まで加熱した後、アルコール、金属アルコキシド、アセタール等を気体又は液体として、それぞれ連続的に投入する方法が挙げられる。なお、アルコールを投入するためにキャリアーガスを用いてもよい。キャリアーガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスや二酸化炭素が挙げられる。なお、キャリアーガスの供給速度等は、反応器の大きさや反応条件等に応じて適宜選択することができる。
反応温度は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは200℃以上、特に好ましくは220℃以上であり、通常500℃以下、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下である。
反応圧力は、通常0.1MPa以上、好ましくは1.0MPa以上、より好ましくは2.0MPa以上であり、通常20MPa以下、好ましくは15MPa以下、より好ましくは10MPa以下である。
反応時間は、通常1時間以上であり、通常168時間以下、好ましくは120時間以下、より好ましくは100時間以下、さらに好ましくは50時間以下、特に好ましくは24時間以下である。
上記範囲内であると、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。
【実施例】
【0017】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0018】
<実施例1>
磁気撹拌子を入れた20mL容積のSUS製オートクレーブ(日東高圧社製)に、窒素雰囲気下で二酸化ケイ素(富士シリシア化学 CARiACT Q−10)0.18g、メタノール3.0g、アセトンジメチルアセタール(2,2−ジメトキシプロパン)5.0gを加えた。その後、オートクレーブ内を1200rpmに攪拌しつつ242℃まで加熱し、24時間反応させた。冷却後、残存するガスを放出し、反応混合物をガスクロマトグラフィー(島津製作所 GC−2014ATF/SPL)により分析した。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は9%であった。結果を表1に示す。
【0019】
<実施例2>
磁気撹拌子を入れた20mL容積のSUS製オートクレーブ(日東高圧社製)に、二酸化ケイ素(富士シリシア化学 CARiACT Q−10)0.18g、メタノール3.0g、アセトンジメチルアセタール(2,2−ジメトキシプロパン)5.0gを加え、25℃の温度下でボンベからアルゴンガスを、圧力計(スウェージロックFST社 PGI−50M−MG10)が示す圧力でオートクレーブ内が2.0MPaになるよう充填して10分間撹拌しながら保持し、密封した。その後、オートクレーブ内を1200rpmに攪拌しつつ242℃まで加熱し、24時間反応させた。冷却後、残存するガスを放出し、反応混合物をガスクロマトグラフィー(島津製作所 GC−2014ATF/SPL)により分析した。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は18%であった。結果を表1に示す。
【0020】
<実施例3>
実施例1の反応条件に対し、2,2−ジメトキシプロパンを加えず、水酸化カリウム0.02g及びテトラメトキシチタン88質量%(二酸化ケイ素100質量%に対して)を加えた以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は4%であった。結果を表1に示す。
【0021】
<実施例4>
実施例1の反応条件に対し、水酸化カリウム0.02g及びテトラメトキシチタン88質量%(二酸化ケイ素100質量%に対して)を加えた以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は37%であった。結果を表1に示す。
【0022】
<比較例1>
実施例1の反応条件に対し、2,2−ジメトキシプロパンを加えず、水酸化カリウム0.02gを加えた以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は1%未満であった。結果を表1に示す。
【表1】
【0023】
<実施例5>
磁気撹拌子を入れた20mL容積のSUS製オートクレーブ(日東高圧社製)に、二酸化ケイ素(富士シリシア化学 CARiACT Q−10)0.09g、エタノール8.0g、テトラエトキシチタン0.342g、水酸化カリウム0.0084gを加え、密封した。その後、オートクレーブ内を1200rpmに攪拌しつつ260℃まで加熱し、24時間反応させた。冷却後、残存するガスを放出し、反応混合物をガスクロマトグラフィー(島津製作所 GC−2014ATF/SPL)により分析した。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は15%であった。結果を表2に示す。
【0024】
<実施例6>
実施例5の反応条件に対し、用いる二酸化ケイ素をアエロジル300(日本アエロジル社製)0.09gとした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は19%であった。結果を表2に示す。
【0025】
<実施例7>
実施例5の反応条件に対し、水酸化カリウムの量を0.042gとした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は62%であった。結果を表2に示す。
【0026】
<実施例8>
実施例5の反応条件に対し、水酸化カリウムの量を0.042gとし、反応温度を220℃とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は58%であった。結果を表2に示す。
【0027】
<実施例9>
実施例5の反応条件に対し、水酸化カリウムの量を0.042gとし、反応温度を240℃とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は60%であった。結果を表2に示す。
【0028】
<実施例10>
実施例5の反応条件に対し、水酸化カリウムの量を0.042gとし、反応温度を280℃とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は56%であった。結果を表2に示す。
【0029】
<実施例11>
実施例5の反応条件に対し、水酸化カリウムの量を0.042gとし、反応温度を300℃とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は50%であった。結果を表2に示す。
【0030】
<実施例12>
実施例5の反応条件に対し、テトラエトキシチタンの量を0.692g、水酸化カリウムの量を0.083gとし、反応時間を3時間とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は88%であった。結果を表2に示す。
【0031】
<実施例13>
実施例5の反応条件に対し、さらに2,2−ジエトキシプロパンを4.8g加えた以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は8%であった。結果を表2に示す。
【0032】
<実施例14>
実施例5の反応条件に対し、テトラエトキシチタンを加えず、2,2−ジエトキシプロパンを4.8g加えた以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は15%であった。結果を表2に示す。
【0033】
<実施例15>
実施例5の反応条件に対し、テトラエトキシチタンの量を0.692gとし、水酸化カリウムの代わりに水酸化リチウムを0.063g加え、反応時間を3時間とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は10%であった。結果を表2に示す。
【0034】
<実施例16>
実施例5の反応条件に対し、テトラエトキシチタンの量を0.692gとし、水酸化カリウムの代わりに水酸化ナトリウムを0.060g加え、反応時間を3時間とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は96%であった。結果を表2に示す。
【0035】
<実施例17>
実施例5の反応条件に対し、テトラエトキシチタンの量を0.692gとし、水酸化カリウムの代わりに水酸化セシウムを0.249g加え、反応時間を3時間とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は75%であった。結果を表2に示す。
【0036】
<実施例18>
実施例5の反応条件に対し、テトラエトキシチタンの量を0.692gとし、水酸化カリウムの代わりに炭酸カリウムを0.103g加え、反応時間を3時間とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は96%であった。結果を表2に示す。
【0037】
<実施例19>
実施例5の反応条件に対し、テトラエトキシチタンの量を0.692gとし、水酸化カリウムの代わりに炭酸ナトリウムを0.079g加え、反応時間を3時間とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は37%であった。結果を表2に示す。
【0038】
<実施例20>
実施例5の反応条件に対し、テトラエトキシチタンの量を0.692gとし、水酸化カリウムの代わりに炭酸セシウムを0.232g加え、反応時間を3時間とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は96%であった。結果を表2に示す。
【0039】
<実施例21>
実施例5の反応条件に対し、テトラエトキシチタンの量を0.692gとし、水酸化カリウムの代わりにフッ化カリウムを0.089g加え、反応時間を3時間とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は95%であった。結果を表2に示す。
【0040】
<実施例22>
磁気撹拌子を入れた20mL容積のSUS製オートクレーブ(日東高圧社製)に、二酸化ケイ素(富士シリシア化学 CARiACT Q−10)0.09g、n−ブタノール12g、テトラn−ブトキシチタン1.07g、水酸化カリウム0.08gを加え、密封した。その後、オートクレーブ内を1200rpmに攪拌しつつ260℃まで加熱し、24時間反応させた。冷却後、残存するガスを放出し、反応混合物をガスクロマトグラフィー(島津製作所 GC−2014ATF/SPL)により分析した。二酸化ケイ素基準のテトラn−ブトキシシランの収率は83%であった。結果を表2に示す。
【0041】
<実施例23>
実施例5の反応条件に対し、テトラエトキシチタンの代わりにテトラエトキシジルコニウム0.814gとし、窒素雰囲気の代わりにアルゴン雰囲気とし、反応時間を3時間とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は2%であった。結果を表2に示す。
【0042】
<実施例24>
実施例5の反応条件に対し、テトラエトキシチタンの代わりにペンタエトキシニオブ0.955gとし、窒素雰囲気の代わりにアルゴン雰囲気とし、反応時間を3時間とした以外は、実施例5と同様の操作によりテトラエトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラエトキシシランの収率は5%であった。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】