【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一工程が、金属アルコキシド、有機金属酸化物、及び無機金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の金属化合物の存在下で行われる、請求項1に記載のテトラアルコキシシランの製造方法。
前記アルカリ金属化合物が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ金属炭酸水素塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項6に記載のテトラアルコキシシランの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0010】
<テトラアルコキシシランの製造方法>
本発明の一態様であるテトラアルコキシシランの製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、アルコールと酸化ケイ素を用いてテトラアルコキシシランを製造する方法であり、下記の第一工程と第二工程を含むことを特徴とする。
第一工程:アルコールを脱水剤の存在下及び/又は脱水手段を備えた反応器中で二酸化炭素と反応させる工程。
第二工程:第一工程で得られた反応混合物を酸化ケイ素と反応させる工程。
本発明者らは、金属ケイ素を経由しないテトラアルコキシシランの製造方法としてアルコールと酸化ケイ素を用いる方法に着目し、その検討を進めた結果、アルコールと酸化ケイ素を反応させる上で二酸化炭素を共存させることにより、効率良くテトラアルコキシシランが生成することを見出した。これは、アルコールが二酸化炭素と反応して活性化し、これが酸化ケイ素とより効率的に反応とするためであると考えられる。即ち、二酸化炭素が反応加速剤として働いているものと考えられる。また、二酸化炭素は再生して再利用することができるため、不要な排出物を極力減らすことに繋がり、さらにアルコールと酸化ケイ素という安価で有り触れた材料を出発原料として利用することにもなるため、工業的に非常に適した方法と言えるのである。
また、本発明者らは、脱水剤等を利用して反応によって生じた水を適切に除去しなければ、テトラアルコキシシランの収率が著しく低下してしまうことも確認している。
即ち、第一工程と第二工程を含む本発明の製造方法は、省エネルギーかつ高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる方法なのである。
なお、「第一工程」と「第二工程」を含むとは、それぞれ独立して反応が進行する態様に限られず、例えばアルコールと酸化ケイ素と二酸化炭素が1つの反応系に存在することによって、第一工程と第二工程が1つの反応系で進行するものであってもよいことを意味する。従って、
図1の(a)に示されるように、回分反応器にアルコールと酸化ケイ素と二酸化炭素をそれぞれ投入して、第一工程と第二工程を進行させる態様、
図1の(b)に示されるように、回分反応器でアルコールを二酸化炭素と反応させた後、さらに酸化ケイ素を投入して反応混合物を酸化ケイ素と反応させる態様、
図1の(c)に示されるように、連続槽型反応器にアルコールと二酸化炭素を逐次投入し、反応混合物を別の連続槽型反応器に移して酸化ケイ素と反応させて、テトラアルコキシシランを逐次回収する態様、並びに
図1の(d)に示されるように、連続管型反応器にアルコールと二酸化炭素を逐次投入し、酸化ケイ素と反応させて、テトラアルコキシシランを逐次回収する態様等の何れもが本発明の製造方法に含まれる。
【0011】
(第一工程)
第一工程は、アルコールを脱水剤の存在下及び/又は脱水手段を備えた反応器中で二酸化炭素と反応させる工程であるが、アルコールの種類は、特に限定されず、製造目的であるテトラアルコキシシランに応じて適宜選択することができる。例えばアルコールとしてメタノールを用いるとテトラメトキシシランが、エタノールを用いるとテトラエトキシシランを製造することができる。
アルコールは、脂肪族アルコールと芳香族アルコールのどちらでもよく、またアルコール中の炭化水素基は、分岐構造、環状構造、炭素−炭素不飽和結合等のそれぞれを有していてもよい。
アルコールの炭素数は、通常1以上であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
具体的なアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ベンジルアルコール、フェノール等が挙げられる。中でも、メタノール、エタノールが好ましく、メタノールがより好ましい。
【0012】
第一工程は、金属アルコキシド、有機金属酸化物、及び無機金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の金属化合物の存在下で行われることが好ましい。これらの金属化合物の存在下であると、アルコールが二酸化炭素とより反応し易くなり、結果、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。なお、金属アルコキシドのアルコキシ基は、二酸化炭素と反応させるアルコールと同一の炭化水素基を有するものであることが好ましい。
金属化合物の金属元素は、チタン、スズ又はジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
具体的な金属アルコキシドとしては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトラ−t−ブトキシスズ、ジ−n−ブチルジメトキシスズ、ジ−n−ブチルジエトキシスズ、ジ−n−ブチルジブトキシスズ等が挙げられる。
具体的な有機金属酸化物としては、ジメチルスズオキシド、ジエチルスズオキシド、ジイソプロピルスズオキシド、ジ−n−ブチルスズオキシド等が挙げられる。
具体的な無機金属酸化物としては、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン等が挙げられる。
なお、金属化合物は、1種類のみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
金属化合物の使用量は、アルコール1molに対して、通常0mmol以上、好ましくは0.01mmol以上、より好ましくは0.1mmol以上であり、通常1mol以下、好ましくは500mmol以下、より好ましくは100mmol以下である。
【0013】
第一工程において、アルコールを脱水剤の存在下及び/又は脱水手段を備えた反応器中で二酸化炭素と反応させるための反応器、操作手順、反応条件等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
反応器としては、前述のように回分反応器(
図1の(a)、(b)参照)、連続槽型反応器(
図1の(c)参照)、連続管型反応器(
図1の(d)参照)等が挙げられる。なお、回分反応器は、オートクレーブ等の耐圧反応器であることが好ましい。
操作手順は、例えば回分反応器を用いる場合、反応器にアルコール、脱水剤、金属化合物等を投入し、二酸化炭素ガスで反応容器内を掃気した後、二酸化炭素を充填して密閉し、反応温度まで加熱を行う方法が挙げられる。なお、二酸化炭素の25℃における充填圧力は、0.1〜10MPaであることが好ましい。上記範囲内であると、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。
また、連続槽型反応器や連続管型反応器を用いる場合、反応温度に加熱された反応器に、アルコール、脱水剤、二酸化炭素、金属化合物等を気体又は液体として、それぞれ連続的に反応器に投入する方法が挙げられる。なお、アルコール、脱水剤、二酸化炭素、金属化合物等を投入するためにキャリアーガスを用いてもよい。キャリアーガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスや二酸化炭素ガス自体をキャリアーガスとして用いることもできる。なお、キャリアーガスや二酸化炭素等の供給速度等は、反応器の大きさや反応条件等に応じて適宜選択することができる。
第一工程の反応温度は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、通常500℃以下、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下である。
第一工程の反応圧力は、通常0.1MPa以上、好ましくは1.0MPa以上、より好ましくは3.0MPa以上であり、通常60MPa以下、好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下である。なお、二酸化炭素の分圧は、通常0MPa以上、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上であり、通常50MPa以下、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下である。
第一工程の反応時間は、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上であり、通常168時間以下、好ましくは120時間以下、より好ましくは100時間以下である。
上記範囲内であると、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。
【0014】
第一工程における脱水剤とは、水と化学的に反応する又は水を物理的に吸着して水を除去するものを意味し、具体的な種類は特に限定されず、公知のものを適宜選択することができる。
具体的な脱水剤としては、アセタール、酸無水物等の有機脱水剤、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、酸化リン(V)、酸化アルミニウム等の無機脱水剤、モレキュラーシーブ等の吸着剤等が挙げられる。中でも反応系中で均一に作用できるという観点から、有機脱水剤が好ましく、下記一般式(1)で表されるアセタールがより好ましい。
【化2】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜15の炭化水素基を、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を表す。但し、R
1及びR
2の両方が水素原子である場合を除く。)
なお、アセタールのアルコキシ基は、二酸化炭素と反応させるアルコールと同一の炭化水素基を有するものであることが好ましい。脱水剤がアセタールであると、下記反応式(2)で示されるように、水と反応してアルコールが生成することになり、このアルコールを二酸化炭素と反応させるために利用することができる。また、反応終了後、回収したアルデヒドやケトンは、容易にアセタールに再生し、再利用することができる。
【化3】
具体的な一般式(1)で表されるアセタールとしては、ベンズアルデヒドジメチルアセタール、アセトアルデヒドジメチルアセタール、ホルムアルデヒドジメチルアセタール、アセトンジメチルアセタール(2,2−ジメトキシプロパン)、アセトンジエチルアセタール、アセトンジベンジルアセタール、ジエチルケトンジメチルアセタール、ベンゾフェノンジメチルアセタール、ベンジルフェニルケトンジメチルアセタール、シクロヘキサノンジメチルアセタール、アセトフェノンジメチルアセタール、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4,4−ジメトキシ−2,5−シクロヘキサジエン−1−オンアセタール、ジメチルアセトアミドジエチルアセタール等が挙げられる。なお、アセタールは、1種類のみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
アセタールの使用量は、アルコール1molに対して、通常0mol以上、好ましくは0.001mol以上、より好ましくは0.005mol以上であり、通常1mol以下、好ましくは0.8mol以下、より好ましくは0.5mol以下である。上記範囲内であると、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。
【0015】
第一工程における脱水手段を備えた反応器とは、反応器が水を分離することができる材料や装置等を備えることを意味し、具体的な手段は特に限定されず、公知のものを適宜選択することができる。
具体的な脱水手段としては、
図2(a)に示されるような分離膜、
図2(b)に示される蒸留装置等が挙げられる。なお、具体的な分離膜としては、炭素膜、シリカ膜、ゼオライト膜、高分子膜等が挙げられる。
【0016】
(第二工程)
第二工程は、第一工程で得られた反応混合物を酸化ケイ素と反応させる工程であるが、酸化ケイ素とは、ケイ素原子(Si)と酸素原子(O)を主要な構成元素として含む化合物を意味し、一酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO
2)、或いはゼオライト等の他の金属との複合酸化物であってもよいことを意味する。
具体的な酸化ケイ素としては、ケイ石、ケイ砂、ケイ藻土、石英等の天然鉱物、ケイ素含有植物の焼成灰、火山灰、ケイ酸塩類、シリカゾル由来のシリカゲル、ヒュームドシリカ、シリカアルミナ、ゼオライト等が挙げられる。
【0017】
第二工程は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下で行われることが好ましい。アルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物の存在下であると、酸化ケイ素のケイ素−酸素結合の開裂が促進されて、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。
アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物におけるアルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、セシウム(Cs)等が挙げられる。また、対イオンについては、水酸化物、ハロゲン化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、アルコキシド、ケイ酸塩、アルミン酸塩、リン酸塩、有機酸塩、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。中でも水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、炭酸水素塩が好ましく、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ金属炭酸塩、及びアルカリ金属炭酸水素塩がより好ましい。
具体的なアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等が挙げられる。なお、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物は、1種類のみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
アルカリ金属化合物とアルカリ土類金属化合物の総使用量は、酸化ケイ素(二酸化ケイ素の場合)1molに対して、通常0mol以上、好ましくは0.001mol以上であり、通常20mol以下、好ましくは10mol以下である。
【0018】
第二工程において、第一工程で得られた反応混合物を酸化ケイ素と反応させるための反応器、操作手順、反応条件等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
反応器としては、第一工程と同様に回分反応器(
図1の(a)、(b)参照)、連続槽型反応器(
図1の(c)参照)、連続管型反応器(
図1の(d)参照)等が挙げられる。なお、回分反応器は、オートクレーブ等の耐圧反応器であることが好ましい。
操作手順は、例えば回分反応器を用いる場合、反応器に第一工程で得られた反応混合物、酸化ケイ素、アルカリ金属化合物等を投入し、不活性ガスで反応容器内を掃気した後、不活性ガスを充填して密閉し、反応温度まで加熱を行う方法が挙げられる。
また、連続槽型反応器や連続管型反応器を用いる場合、酸化ケイ素、アルカリ金属化合物等を反応器に投入しておき、反応容器を反応温度まで加熱した後、第一工程で得られた反応混合物を気体又は液体として、それぞれ連続的に投入する方法が挙げられる。なお、第一工程で得られた反応混合物を投入するためにキャリアーガスを用いてもよい。
第二工程の反応温度は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、通常500℃以下、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下である。
第二工程の反応圧力は、通常0.1MPa以上、好ましくは1.0MPa以上、より好ましくは3.0MPa以上であり、通常60MPa以下、好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下である。なお、二酸化炭素の分圧は、通常0MPa以上、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上であり、通常50MPa以下、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下である。
第二工程の反応時間は、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上であり、通常168時間以下、好ましくは120時間以下、より好ましくは100時間以下である。
上記範囲内であると、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。
【0019】
本発明の製造方法は、第一工程及び第二工程を含むものであるが、前述のように、第一工程と第二工程がそれぞれ独立して反応が進行するものに限られず、例えばアルコールと酸化ケイ素と二酸化炭素が1つの反応系に存在することによって、第一工程と第二工程が1つの反応系で進行するものであってもよい。なお、かかる態様は、言い換えれば下記の方法と表現することができる。
アルコールと酸化ケイ素を反応させる反応工程を含むテトラアルコキシシランの製造方法であって、前記反応工程が下記の(a)及び(b)の条件を満たす工程である、テトラアルコキシシランの製造方法。
(a)二酸化炭素の存在下で反応させる。
(b)脱水剤の存在下及び/又は脱水手段を備えた反応器中で反応させる。
【0020】
第一工程と第二工程を1つの反応系で進行させる態様においても、金属アルコキシド、有機金属酸化物、及び無機金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の金属化合物の存在下で行われることが好ましい。なお、金属化合物についての詳細は、前述の通りである。
また、第一工程と第二工程を1つの反応系で進行させる態様においても、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下で行われることが好ましい。なお、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物についての詳細は、前述の通りである。
【0021】
第一工程と第二工程を1つの反応系で進行させるための反応器、操作手順、反応条件等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
反応器としては、前述のように回分反応器(
図1の(a)参照)、連続管型反応器(
図1の(d)参照)等が挙げられる。なお、回分反応器は、オートクレーブ等の耐圧反応器であることが好ましい。
操作手順は、例えば回分反応器を用いる場合、反応器にアルコール、酸化ケイ素、脱水剤、金属化合物、アルカリ金属化合物等を投入し、二酸化炭素ガスで反応容器内を掃気した後、二酸化炭素を充填して密閉し、反応温度まで加熱を行う方法が挙げられる。なお、二酸化炭素の25℃における充填圧力は、0.1〜10MPaであることが好ましい。上記範囲内であると、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。
また、連続管型反応器を用いる場合、酸化ケイ素、脱水剤、アルカリ金属化合物等を反応器に投入しておき、反応容器を反応温度まで加熱した後、アルコール、二酸化炭素、金属化合物等を気体又は液体として、それぞれ連続的に投入する方法が挙げられる。なお、アルコール、二酸化炭素、金属化合物等を投入するためにキャリアーガスを用いてもよい。キャリアーガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスや二酸化炭素ガス自体をキャリアーガスとして用いることもできる。なお、キャリアーガスや二酸化炭素等の供給速度等は、反応器の大きさや反応条件等に応じて適宜選択することができる。
反応温度は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であり、通常500℃以下、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下である。
反応圧力は、通常0.1MPa以上、好ましくは1.0MPa以上、より好ましくは3.0MPa以上であり、通常60MPa以下、好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下である。なお、二酸化炭素の分圧は、通常0MPa以上、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.2MPa以上であり、通常50MPa以下、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下である。
反応時間は、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上であり、通常168時間以下、好ましくは120時間以下、より好ましくは100時間以下である。
上記範囲内であると、より高収率でテトラアルコキシシランを製造することができる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0023】
<実施例1>
磁気撹拌子を入れた20mL容積のSUS製オートクレーブ(日東高圧社製)に、二酸化ケイ素(富士シリシア化学 CARiACT Q−10)0.18g、メタノール3.0g、有機脱水剤としてアセトンジメチルアセタール(2,2−ジメトキシプロパン)5.0g、水酸化カリウム0.02gを加え、25℃の温度下でボンベから二酸化炭素を、圧力計(スウェージロックFST社 PGI−50M−MG10)が示す圧力でオートクレーブ内が2MPaになるよう充填して10分間撹拌しながら保持し、密封した。その後、オートクレーブ内を1200rpmに攪拌しつつ242℃まで加熱し、24時間反応させた。冷却後、残存する二酸化炭素を放出し、反応混合物をガスクロマトグラフィー(島津製作所 GC−2014ATF/SPL)により分析した。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は47%であった。結果を表1−1に示す。
【0024】
<実施例2>
実施例1の反応条件に対し、反応時間を96時間とした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は88%であった。結果を表1−1に示す。
【0025】
<実施例3>
実施例1の反応条件に対し、二酸化炭素圧力を0.8MPaとした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は27%であった。結果を表1−1に示す。
【0026】
<実施例4>
実施例1の反応条件に対し、二酸化炭素圧力を1.2MPaとした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は40%であった。結果を表1−1に示す。
【0027】
<実施例5>
実施例1の反応条件に対し、二酸化炭素圧力を0.4MPaとした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は7%であった。結果を表1−1に示す。
【0028】
<実施例6>
実施例1の反応条件に対し、二酸化炭素圧力を3.0MPaとした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は46%であった。結果を表1−1に示す。
【0029】
<実施例7>
実施例1の反応条件に対し、二酸化炭素圧力を4.8MPaとした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は30%であった。結果を表1−1に示す。
【0030】
<実施例8>
実施例1の反応条件に対し、水酸化カリウムの代わりに水酸化ナトリウム(0.013g)とした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は32%であった。結果を表1−1に示す。
【0031】
<実施例9>
実施例1の反応条件に対し、水酸化カリウムの代わりに水酸化セシウム(0.045g)とした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は52%であった。結果を表1−1に示す。
【0032】
<実施例10>
実施例1の反応条件に対し、水酸化カリウムの代わりに水酸化リチウム(0.012g)とした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は8%であった。結果を表1−1に示す。
【0033】
<実施例11>
実施例1の反応条件に対し、水酸化カリウムの代わりに炭酸リチウム(0.022g)とした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は10%であった。結果を表1−1に示す。
【0034】
<実施例12>
実施例2の反応条件に対し、水酸化カリウムの代わりに炭酸ナトリウム(0.029g)とした以外は、実施例2と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は30%であった。結果を表1−1に示す。
【0035】
<実施例13>
実施例1の反応条件に対し、水酸化カリウムの代わりに炭酸カリウム(0.036g)とした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は56%であった。結果を表1−1に示す。
【0036】
<実施例14>
実施例1の反応条件に対し、水酸化カリウムの代わりに炭酸セシウム(0.069g)とした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は60%であった。結果を表1−1に示す。
【0037】
<実施例15>
実施例1の反応条件に対し、水酸化カリウムの代わりにフッ化ナトリウム(0.013g)とした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は17%であった。結果を表1−1に示す。
【0038】
<実施例16>
実施例1の反応条件に対し、水酸化カリウムの代わりにフッ化カリウム(0.018g)とした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は50%であった。結果を表1−2に示す。
【0039】
<実施例17>
実施例1の反応条件に対し、水酸化カリウムの代わりにフッ化セシウム(0.04g)とした以外は、実施例1と同様の操作により、テトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は53%であった。結果を表1−2に示す。
【0040】
<実施例18>
実施例3の反応条件に対し、さらにテトラメトキシチタン1.0mol%(アルコール1molに対して)を加えた以外は、実施例3と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は51%であった。結果を表1−2に示す。
【0041】
<実施例19>
実施例3の反応条件に対し、さらにテトラメトキシチタン1.5mol%(アルコール1molに対して)を加えた以外は、実施例3と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は43%であった。結果を表1−2に示す。
【0042】
<実施例20>
実施例3の反応条件に対し、さらにテトラメトキシチタン0.1mol%(アルコール1molに対して)を加えた以外は、実施例3と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は33%であった。結果を表1−2に示す。
【0043】
<実施例21>
実施例3の反応条件に対し、さらにテトラメトキシチタン0.01mol%(アルコール1molに対して)を加えた以外は、実施例3と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は37%であった。結果を表1−2に示す。
【0044】
<実施例22>
実施例5の反応条件に対し、さらにテトラメトキシチタン0.1mol%(アルコール1molに対して)を加えた以外は、実施例5と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は18%であった。結果を表1−2に示す。
【0045】
<実施例23>
実施例1の反応条件に対し、さらにテトラメトキシチタン0.1mol%(アルコール1molに対して)を加えた以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は48%であった。結果を表1−2に示す。
【0046】
<実施例24>
実施例1の反応条件に対し、さらにテトラエトキシジルコニウム0.1mol%(アルコール1molに対して)を加えた以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は23%であった。結果を表1−2に示す。
【0047】
<実施例25>
実施例1の反応条件に対し、さらにテトラ−t-ブトキシスズ0.1mol%(アルコール1molに対して)を加えた以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は29%であった。結果を表1−2に示す。
【0048】
<実施例26>
実施例1の反応条件に対し、さらにペンタエトキシニオブ0.1mol%(アルコール1molに対して)を加えた以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は66%であった。結果を表1−2に示す。
【0049】
<実施例27>
実施例3の反応条件に対し、さらにジ−n−ブチルジメトキシスズ0.1mol%(アルコール1molに対して)を加えた以外は、実施例3と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は6%であった。結果を表1−2に示す。
【0050】
<実施例28>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を200℃とした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は17%であった。結果を表1−2に示す。
【0051】
<実施例29>
実施例1の反応条件に対し、反応温度を180℃とした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は6%であった。結果を表1−2に示す。
【0052】
<実施例30>
実施例1の反応条件に対し、用いる二酸化ケイ素をアエロジル200(日本アエロジル社製)0.18gとした以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は48%であった。結果を表1−2に示す。
【0053】
<比較例1>
実施例1の反応条件に対し、水酸化カリウム及び2,2−ジメトキシプロパンを加えなかった以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は1%未満であった。結果を表1−3に示す。
【0054】
<比較例2>
実施例1の反応条件に対し、二酸化炭素を導入せず、2,2−ジメトキシプロパンを加えなかった以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は1%未満であった。結果を表1−3に示す。
【0055】
<比較例3>
実施例1の反応条件に対し、2,2−ジメトキシプロパンを加えなかった以外は、実施例1と同様の操作により、テトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は3%であった。結果を表1−3に示す。
【0056】
<比較例4>
実施例1の反応条件に対し、二酸化炭素の導入を行わなかった以外は、実施例1と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は3%であった。結果を表1−3に示す。
【0057】
<比較例5>
実施例20の反応条件に対し、二酸化炭素を導入せず、2,2−ジメトキシプロパンを加えなかった以外は、実施例20と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は1%未満であった。結果を表1−3に示す。
【0058】
<比較例6>
実施例20の反応条件に対し、二酸化炭素の導入を行わなかった以外は、実施例20と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は3%であった。結果を表1−3に示す。
【0059】
<比較例7>
実施例23の反応条件に対し、2,2−ジメトキシプロパンを加えなかった以外は、実施例23と同様の操作によりテトラメトキシシランの製造を行った。二酸化ケイ素基準のテトラメトキシシランの収率は3%であった。結果を表1−3に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】