【文献】
千田重雄,和泉 弘,広田耕作,ウラシル誘導体とその関連化合物について(第10報)Bucolome 関連化合物の合成 その5,薬学雑誌,日本,1969年,Vol.89,p.272-p.278
【文献】
Orazio Nicolotti et.al.,Design, synthesis and biological evaluation of 5-hydroxy, 5-substituted-pyrimidine-2,4,6-triones as potent inhibitors of gelatinases MMP-2 and MMP-9,European Journal of Medicinal Chemistry,ELSEVIER,2012年,Vol.58,p.368-p.376
【文献】
J.W. CLARK-LEWIS and K. MOODY ,HETEROCYCLIC COMPOUNDS FROM ALLOXAN AND AMINES ,AUSTRALIAN JOURNAL OF CHEMISTRY ,1970年,Vol.23,p.1229-p.1248
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セルロースアシレートのアシル基がアセチル基であり、総アセチル置換度をBとすると、Bが、下記式を満足するセルロースアシレートである請求項1〜15のいずれか1項に記載の光学フィルム。
2.0≦B≦3.0
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について、実施の形態を挙げて詳細に説明する。
【0025】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、セルロースアシレートおよび少なくとも1種の一般式(I)で表される化合物を含有する少なくとも1層のセルロースアシレートフィルムからなる。また、セルロースアシレートフィルムは、複数の層で構成されていてもよいが、一般式(I)で表される化合物はいずれの層に含まれていてもよく、全ての層に含まれていてもよい。
【0026】
ここで、セルロースアシレートフィルムもしくは層とは、フィルムもしくは層を構成する樹脂成分において、セルロースアシレートが50質量%以上含有されているものを意味し、樹脂成分中のセルロースアシレートの含有量は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0027】
一方、本発明の光学フィルムは、上記のようなセルロースアシレートフィルム以外に、別の層に樹脂成分として、セルロースアシレートを含まないか、含んだとしても樹脂成分全体の50質量%未満の層とともに複層構成を形成していてもよい。このような層としては、特定の機能に特化した層が挙げられ、例えばハードコート層などが挙げられる。
ハードコート層以外には、例えば、防眩層、クリアハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防汚層等が挙げられる。これらの層は、ハードコート層上に設けるのが本発明においては好ましい態様である。
【0028】
本発明の光学フィルムは、偏光板保護フィルム、画像表示面に配置される表面保護フィルム等種々の用途に有用である。
【0029】
<<セルロースアシレートフィルム>>
本発明において、セルロースアシレートフィルムは上記のように、樹脂構成成分に占めるセルロースアシレートの割合が50質量%以上のフィルムからなるもので、本発明における狭義の光学フィルムである。
セルロースアシレートフィルムは、前述のように、単層であっても、2層以上の積層体であってもよい。セルロースアシレートフィルムが2層以上の積層体である場合は、2層構造または3層構造であることがより好ましく、3層構造であることがさらに好ましい。3層構造の場合は、1層のコア層(すなわち、最も厚い層であり、以下、基層とも言う。)と、コア層を挟むスキン層Aおよびスキン層Bとを有することが好ましい。すなわち、本発明のセルロースアシレートフィルムはスキン層B/コア層/スキン層Aの3層構造であることが好ましい。スキン層Aは、セルロースアシレートフィルムが溶液製膜で製造される際に、後述する金属支持体と接する層であり、スキン層Bは金属支持体とは逆側の空気界面の層である。なお、スキン層Aとスキン層Bを総称してスキン層(または表層)とも言う。
【0030】
本発明において、セルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートと少なくとも1種の下記一般式(I)で表される化合物を含有する。
【0033】
一般式(I)中、R
1aおよびR
3aは各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。R
5aはヘテロ原子、−C(=X)−、−C(R
5x)=Y−もしくはエチニル基を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基、ハロゲン原子またはシアノ基を表す。ここで、Xは酸素原子、硫黄原子またはN(Ra)を表し、Raは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基を表し、R
5xは水素原子または置換基を表し、Yは窒素原子を表す。R
5bは置換基を表す。R
1a、R
3aおよびR
5bの各基は置換基で置換されていてもよい。
なお、上記で規定されるR5aは、言い換えると、ハロゲン原子、シアノ基、バルビツール酸骨格に結合する部位がヘテロ原子である置換基、バルビツール酸骨格に結合する部位が−C(=X)−である置換基、バルビツール酸骨格に結合する部位が−C(R5x)=Y−である置換基、または、バルビツール酸骨格に結合する部位がエチニル基である置換基である。
【0034】
一般式(I)で表される化合物のメカニズムは、定かではないが、以下のように推定される。
一般式(I)で表される化合物は、バルビツール酸の基本骨格を構成する部分構造に3つのカルボニル基と2つの窒素原子を有することに加え、セルロースの基本単位であるβ−グルコースと同じ6員環であり、R
5aは、6員環に結合する原子が極性な原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基のように、ヘテロ原子による電子的効果を受けてδ+となった極性炭素が存在することで、このβ−グルコースのヒドロキシ基、エーテル結合およびその類似した位置に接近して、これらの各々の極性基と相互作用することが可能な構造になっていると思われ、より効果的に、セルロースアシレートと水素結合等による相互作用を生じ、セルロースアシレートの主鎖近傍に存在することができる。この結果、一般式(I)で表わされる化合物がセルロースアシレートの主鎖間に存在するセルロースアシレート中の自由体積を低減することによって、硬度向上または維持に貢献するものと思われる。
【0035】
また、一般式(I)で表される化合物は、5位に水素原子を置換していないためにエノール体を生成しない。このような構造とすることで、一般式(I)で表される化合物の吸収波長が短波長となり、長波紫外領域の光吸収を抑制することができるため、光が当たる環境下での光学フィルムの着色を抑制でき、ひいては表示性能に優れた液晶表示装置の提供に貢献していると考えられる。
さらに、一般式(I)で表される化合物を含むフイルムを偏光板保護フィルムとして用いた偏光板は、高温高湿経時における直交透過率の上昇を抑制できる。これは、セルロースアシレート中の自由体積を低減することで透湿度を低減する効果が著しく大きいためと考えられる。
【0036】
一般式(I)のR
1aおよびR
3aにおけるアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましい。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、n−デシル、n−オクタデシル、イソオクタデシルが挙げられる。
また、アルキル基は置換基を有してもよく、このような置換基としては、下記置換基Sが挙げられる。
【0037】
〔置換基S〕
置換基Sとしては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20で、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数0〜20のヘテロ環基で、環構成ヘテロ原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましく、5員環または6員環でベンゼン環やヘテロ環で縮環していてもよく、環が飽和環、不飽和環、芳香環であってもよく、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20で、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、
【0038】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20で、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、炭素数は20以下が好ましく、例えば、アセチル、ピバロイル、アクリロイル、メタクロリイル、ベンゾイル、ニコチノイル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20で、例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは炭素数0〜20で、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ、1−ピロリジニル、ピペリジノ、モルホニル等)、アルキルもしくはアリールのスルホンアミド基(好ましくは炭素数0〜20で、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、アルキルもしくはアリールのスルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20で、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、アルキルもしくはアリールのカルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルアミノ、アクリロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ニコチンアミド等)、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基またはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
【0039】
これらの置換基はさらに置換基で置換されていてもよく、このような置換基としては上記置換基Sが挙げられる。
例えば、アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基、アルキル基にアルコキシカルボニル基やシアノ基が置換した基などが挙げられる。
【0040】
R
1aおよびR
3aにおけるアルキル基が有する置換基としては、アリール基、アルコキシカルボニル基、シアノ基が好ましい。
このような置換アルキル基としては、アラルキル基(好ましくはベンジル基)、2または3位にアルコキシカルボニル基またはシアノ基が置換したアルキル基〔好ましくは1−アルコキシカルボニルメチル基、2−(アルコキシカルボニル)エチル基、2−シアノエチル基〕が挙げられる。
一般式(I)のR
1aおよびR
3aにおけるアルケニル基の炭素数は、2〜20が好ましく、2〜10がより好ましく、2〜5がさらに好ましい。
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、2−ペンテニル、オレイルが挙げられる。
また、アルケニル基は置換基を有してもよく、このような置換基としては、置換基Sが挙げられる。
【0041】
一般式(I)のR
1aおよびR
3aにおけるシクロアルケニル基の炭素数は、5〜20が好ましく、5〜10がより好ましく、5または6がさらに好ましい。
シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンテニル、シクロヘキセニルが挙げられる。
また、シクロアルケニル基は置換基を有してもよく、このような置換基としては、置換基Sが挙げられる。
【0042】
一般式(I)のR
1aおよびR
3aにおけるアリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜10がより好ましく、6〜8がさらに好ましい。
アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチルが挙げられる。
また、アリール基は置換基を有してもよく、このような置換基としては、置換基Sが挙げられる。
【0043】
一般式(I)のR
1aおよびR
3aにおけるヘテロ環基の炭素数は、0〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、2〜10がさらに好ましく、2〜5が特に好ましい。
ヘテロ環基におけるヘテロ環としては、5員環または6員環のヘテロ環が好ましく、ヘテロ環は、置換基で置換されていてもよく、またベンゼン環や脂環、ヘテロ環で縮環していてもよい。ここで、置換基としては置換基Sが挙げられる。
ヘテロ環基におけるヘテロ環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が挙げられ、ヘテロ芳香環であっても芳香環でないヘテロ環であってもよい。
ヘテロ環基のヘテロ環としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、トリアゾール環、ピロリジン環、ピロリン環、ピラゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環およびこれらのベンゼン縮環した環(例えば、インドール環、ベンズイミダゾール環等)が挙げられる。
【0044】
一般式(I)のR
5aはヘテロ原子、−C(=X)−、−C(R
5x)=Y−もしくはエチニル基を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基、ハロゲン原子またはシアノ基を表す。ここで、Xは酸素原子、硫黄原子またはN(Ra)を表し、Raは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基を表し、R
5xは水素原子または置換基を表し、Yは窒素原子を表す。
【0045】
ここで、一般式(I)のR
5aにおける、ヘテロ原子、−C(=X)−、−C(R
5x)=Y−もしくはエチニル基を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基は、−L−Rzとして表される基が好ましい。ここで、Lは2価の基で、ヘテロ原子、−C(=X)−、−C(R
5x)=Y−、エチニル基もしくはこれらの組み合わせからなる基である。Rzは水素原子または置換基であり、このような置換基としては置換基Sが挙げられる。Rzが置換基である場合は、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、が好ましく、アルキル基、アリール基がより好ましい。
Rzは水素原子または上記の置換基が好ましいが、水素原子がなかでも好ましい。
【0046】
R
5aにおけるヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子または窒素原子が好ましく、酸素原子または窒素原子がより好ましく、酸素原子がさらに好ましい。
ここで、硫黄原子は、−S−、−SO−または−SO
2−が挙げられ、−S−または−SO
2−が好ましく、−S−がより好ましい。
【0047】
R
5aの−C(=X)−におけるXは、酸素原子が好ましい。
なお、R
5aのN(Ra)におけるRaのうち、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基は、置換基Sにおける対応する基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
Raは、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基またはアルコキシ基が好ましい。
【0048】
R
5aの−C(R
5x)=Y−におけるR
5xは、水素原子または置換基を表すが、このような置換基としては、置換基Sが挙げられる。R
5xは、水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基が好ましい。
【0049】
R
5aの酸素原子を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基としては、具体的には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アルキルオキシカルボニルオキシ基、アルキルアミノカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニルオキシ基、ヘテロ環アミノカルボニルオキシ基またはヒドラジノカルボニルオキシ基が挙げられ、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルオキシカルボニルオキシ基、アルキルアミノカルボニルオキシ基またはアリールアミノカルボニルオキシ基がましく、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシルオキシ基がより好ましく、ヒドロキシ基がさらに好ましい。
【0050】
R
5aの窒素原子を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基としては、具体的には、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基またはヒドラジノ基が挙げられ、アルキルアミノ基またはアリールアミノ基が好ましい。
【0051】
R
5aの硫黄原子を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基としては、具体的には、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基またはアシルチオ基が挙げられ、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基またはアルキルもしくはアリールスルホニル基が好ましく、アルキルチオ基、アリールチオ基またはアルキルもしくはアリールスルホニル基がさらに好ましく、アルキルチオ基またはアリールチオ基が特に好ましい。
【0052】
R
5aの−C(=X)−を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基としては、アシル基、チオアシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基またはヒドラジノカルボニル基が挙げられ、アシル基が好ましい。
【0053】
R
5aにおけるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられる。
【0054】
これらのうち、R
5aは、ハロゲン原子、ヘテロ原子または−C(=X)−を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基が好ましく、ハロゲン原子、ヘテロ原子または−C(=O)−を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基がより好ましく、ハロゲン原子またはヘテロ原子を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基がさらに好ましく、ハロゲン原子、酸素原子もしくは窒素原子を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基が特に好ましく、なかでもハロゲン原子または酸素原子を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基が好ましく、酸素原子を介してバルビツール酸骨格に結合する置換基が最も好ましい。
【0055】
一般式(I)のR
5bは、置換基を表すが、このような置換基としては置換基Sが挙げられ、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基またはヘテロ環基が好ましく、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基またはアリール基がより好ましく、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基がさらに好ましい。
【0056】
R
5bのうち、上記のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基およびヘテロ環基は、R
1a、R
3aにおけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基およびヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0057】
R
5bは、これらのうち、環構造を有する置換基が好ましい。
ここで、環としては、飽和炭素環、不飽和炭素環、芳香族炭素環、ヘテロ環のいずれであってもよく、これらの環が直接バルビツール酸骨格に置換していても、連結基を介して置換していてもよい。
これらの環は、R
1aおよびR
3aにおけるシクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環で挙げた基の環が好ましく、シクロヘキサン環またはベンゼン環がより好ましい。
R
5bは、シクロヘキシル基、フェニル基またはベンジル基が、なかでも好ましく、フェニル基またはベンジル基が特に好ましい。
【0058】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、R
1a、R
3a、R
5aおよびR
5bに存在する環構造の合計が、1以上が好ましく、1〜6がより好ましい。また、2以上がさらに好ましく、2〜6が特に好ましい。なかでも2〜4が好ましく、2または3が最も好ましい。
このうち、環構造が3個の場合は、R
1a、R
3aおよびR
5bがそれぞれ環構造を有する化合物が好ましい一形態である。また、環構造が2個の場合は、R
1aおよびR
3aがそれぞれ環構造を有する化合物、R
1aおよびR
5bがそれぞれ環構造を有する化合物が好ましい一形態である。
環構造に関しては、R
5bにおいて記載したものが好ましい。このうち、シクロヘキシル基、フェニル基およびベンジル基から選択される基として環を有するものが好ましい。
【0059】
なお、本発明の一般式(I)で表される化合物は、分子中に、バルビツール酸骨格が1つだけでなく、複数存在してもよい。
バルビツール酸骨格の個数は1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が特に好ましい。
バルビツール酸骨格は、一般式(I)のR
1a、R
3a、R
5aまたはR
5bにおいて、それぞれに規定される基に置換基として含むものが好ましい。
【0060】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、R
5a以外の部分の好ましい構造を具体的に示すと、下記の構造である。
【0062】
ここで、*部分でR
5aに結合する。
ただし、本発明では、一般式(I)中、R1aおよびR3aは各々独立に、水素原子、炭素数1〜25のアルキル基、炭素数6のシクロヘキシル基、炭素数6もしくは7のアリール基または炭素数0〜5で環構成原子に窒素原子を含む6員環のヘテロ芳香環基であり、R5aは、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、炭素数1もしくは2のアルコキシ基、炭素数6のアリールオキシ基、炭素数1〜23のアシルオキシ基、炭素数2〜5のアルキルオキシカルボニルオキシ基、炭素数7のアリールアミノカルボニルオキシ基、メルカプト基、炭素数1〜18のアルキルチオ基、炭素数6もしくは7のアリールチオ基、炭素数1〜6のアルキルもしくはアリールスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルもしくはアリールスルホニル基、炭素数1〜27のアルキルアミノ基、炭素数0〜4で環構成原子に酸素原子もしくは窒素原子を含む6員環の飽和ヘテロ環アミノ基、炭素数1〜7のアシル基、下記式(α1)または式(α2)で表される基である。R5bは炭素数1〜14のアルキル基または炭素数6のアリール基である。
【化5-2】
式中、R5xは水素原子または炭素数1のアルキル基であり、Rz1は炭素数0〜6のアミノ基であり、Rz2は炭素数6のアリール基または炭素数4〜23のピリミジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン−5−イル基(5−バルビツール酸基)である。
【0063】
<一般式(II)で表される化合物>
本発明の一般式(I)で表される化合物のうち、下記一般式(II)で表される化合物が、特に好ましい。
【0065】
一般式(II)中、R
1aおよびR
3aは各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。R
5cはヒドロキシ基を表す。R
5dはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基またはアリール基を表す。R
1a、R
3aおよびR
5dの各基は置換基で置換されていてもよい。ただし、R
1a、R
3aおよびR
5d中に環構造を1つ以上含む。
【0066】
ここで、R
1aおよびR
3aは、一般式(I)におけるR
1aおよびR
3aと同義であり、好ましい範囲も同じである。R
5dは、一般式(I)におけるR
5bにおいて、好ましい基として挙げたアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基またはアリール基と同義であり、好ましい範囲もR
5bの対応する基と同じである。R
1a、R
3aおよびR
5d中の環構造は、2つ以上であることが好ましく、2つまたは3つ含まれることがより好ましい。
【0067】
以下に、本発明の一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明がこれらに限定されるものではない。
【0075】
上記一般式(I)で表される化合物は、尿素誘導体とマロン酸誘導体とを縮合させるバルビツール酸の合成法を用いて合成できることが知られている。N原子上に置換基を2つ有するバルビツール酸は、N,N’−二置換型尿素とマロン酸クロリドを加熱するか、マロン酸と無水酢酸などの活性化剤とを混合して加熱することにより得られ、例えば、Journal of the American Chemical Society,第61巻,1015頁(1939年)、Journal of Medicinal Chemistry,第54巻,2409頁(2011年)、Tetrahedron Letters,第40巻,8029頁(1999年)、国際公開第2007/150011号パンフレットなどに記載の方法を好ましく用いることができる。
【0076】
ここで、縮合に用いるマロン酸は、無置換のものでも置換基を有するものでもよく、R
5に相当する置換基を有するマロン酸を用いれば、バルビツール酸を構築することにより本発明の一般式(I)で表される化合物を合成することができる。また、無置換のマロン酸と尿素誘導体を縮合させて得られる5位が無置換のバルビツール酸に対して、求核置換反応やマイケル付加反応などを行うことにより本発明の一般式(I)で表される化合物を合成することができる。
【0077】
このような方法は、例えば、Organic Letters,第5巻,2887頁(2003年)、Journal of Medicinal Chemistry,第17巻,1194頁(1974年)、Journal of Organic Chemistry,第68巻,4684頁(2003年)などに記載の方法を好ましく用いることができる。
なお、本発明の一般式(I)で表される化合物の合成法は上記に限定されるものではない。
【0078】
一般式(I)で表される化合物の、セルロースアシレートフィルム中の含有量は特に限定されないが、セルロースアシレート100質量部に対して、0.001〜50質量部が好ましく、0.005〜30質量部がより好ましく、0.01〜15質量部が特に好ましい。このような含有量とすることで、本発明の効果である硬度および光学フィルムの着色抑制が十分に発現でき、さらに、フィルムの透明性も維持される。
また、セルロースアシレートフィルム中に一般式(I)で表される化合物を2種類以上含有させる場合も、その合計量が、上記の範囲内であることが好ましい。
【0079】
本発明では、一般式(I)で表される化合物とともに、これ以外の構造のバルビツール酸化合物を併用することも好ましい様態として挙げられる。
このような化合物としては、下記一般式(A)で表される化合物が、なかでも好ましい。
【0081】
一般式(A)中、R
1およびR
3は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R
5は水素原子または置換基を表す。R
1、R
3およびR
5の各基は置換基で置換されていてもよい。
【0082】
R
1、R
3およびR
5は、一般式(I)におけるR
1a、R
3aおよびR
5bとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0083】
一般式(A)で表される化合物は、R
1、R
3およびR
5に存在する環構造の合計が、1個以上が好ましく、1〜6がより好ましい。また、2以上がさらに好ましく、2〜6が特に好ましい。なかでも2〜4が好ましく、3が最も好ましい。
このうち、R
1、R
3およびR
5が、それぞれ環構造を有する化合物は好ましい一形態である。
【0084】
ここで、一般式(I)で表される化合物に、一般式(A)で表される化合物を組み合わせて使用する場合、R
1とR
1aの構造が互いに同一であって、かつR
3とR
3aの構造が互いに同一である組合せが好ましい。
なお、ここで、互いに同一であるとは、例えば、R
1がメチル基の場合、R
1aもメチル基であることを意味する。
本発明においては、上記に加えて、R
5とR
5bの構造も互いに同一である組合せが特に好ましい。
【0085】
以下に、一般式(A)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明がこれらに限定されるものではない。
また、特開2011−118135号公報および特開2011−126968号公報に記載の化合物も、本発明の一般式(I)で表される化合物と組み合わせて使用することが好ましい。
【0086】
ここで、Phはフェニル基、cHexはシクロヘキシル基、C
6H
4は、フェニレン基を表し、C
6H
4(p−CH
3)のような( )の基は、フェニル基への置換基を表し、「p−」は、p位であることを示す。
【0088】
一般式(A)で表される化合物は、一般式(I)で表される化合物の合成方法に準じて合成することができ、一般式(I)で表される化合物の合成方法の説明で挙げた文献がそのまま適用できる。
一般式(I)で表される化合物と一般式(A)で表される化合物の含有量の合計は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、0.2〜30質量部がより好ましく、0.3〜15質量部がさらに好ましく、0.3〜10質量部が特に好ましい。
【0089】
<セルロースアシレート>
本発明において、セルロースアシレートフィルムの主成分となるセルロースアシレートは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。例えば、セルロースアシレートは、アシル置換基としてアセチル基のみからなるセルロースアセテートであっても、複数の異なったアシル置換基を有するセルロースアシレートを用いてもよく、異なったセルロースアシレートの混合物であってもよい。
【0090】
本発明で使用されるセルロースアシレートの原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。原料セルロースは、例えば、丸澤、宇田著,「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」,日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0091】
本発明では、セルロースアシレートのアシル基は、1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。本発明で使用されるセルロースアシレートは、炭素数2以上のアシル基を置換基として有することが好ましい。炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族のアシル基でも芳香族のアシル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基あるいは芳香族カルボニル基、芳香族アルキルカルボニル基などであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、イソブタノイル、tert−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが挙げられる。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、tert−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、さらに好ましくはアセチル、プロピオニル、ブタノイルである。
【0092】
本発明で使用されるセルロースアシレートは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのうち1種類がアセチル基であることが好ましく、その他に用いる炭素数2〜4のアシル基としてはプロピオニル基またはブチリル基が好ましい。これらのセルロースアシレートを用いることにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性のよい溶液の作製が可能となる。
本発明では、特に、セルロースアシレートのアシル基はアセチル基1種であるものが、一般式(I)で表される化合物による硬度改善効果に優れる点で、好ましい。
【0093】
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて、以下に詳細に記載する。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離のヒドロキシ基を有している。セルロースアシレートは、これらのヒドロキシ基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。
アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースのヒドロキシ基のアシル化の度合いを示すものであり、全てのグルコース単位の2位、3位および6位のヒドロキシ基がいずれもアシル化された場合、総アシル置換度は3であり、例えば、全てのグルコース単位で、6位のみが全てアシル化された場合、総アシル置換度は1である。同様に、全グルコースの全ヒドロキシ基において、各々のグルコース単位で、6位か、2位のいずれか一方の全てがアシル化された場合も、総アシル置換度は1である。
すなわち、グルコース分子中の全ヒドロキシ基が全てアシル化された場合を3として、アシル化の度合いを示すものである。
アシル置換度の測定方法の詳細については、手塚他,Carbohydrate.Res.,273,83−91(1995)に記載されており、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。
【0094】
本発明で使用するセルロースアシレートの総アシル置換度をAとすると、Aは、1.5以上3.0以下(1.5≦A≦3.0)が好ましく、2.00〜2.97がより好ましく、2.50以上2.97未満がさらに好ましく、2.70〜2.95が特に好ましい。
【0095】
また、セルロースアシレートのアシル基としてアセチル基のみを用いたセルロースアセテートにおいては、総アセチル置換度をBとすると、Bは、2.0以上3.0以下(2.0≦B≦3.0)が好ましく、2.0〜2.97がより好ましく、2.5以上2.97未満がさらに好ましく、2.55以上2.97未満がなかでも好ましく、2.60〜2.96が特に好ましく、2.70〜2.95が最も好ましい。
なお、本発明の一般式(I)で表される化合物は、総アシル置換度であるAが2.00を超えたセルロースアシレートに対して、特に効果が発現される。
【0096】
本発明の光学フィルムのセルロースアシレートフィルムが積層体(複層構成)である場合、セルロースアシレートフィルムは、各層中におけるセルロースアシレートのアシル基置換度は均一であっても、アシル基置換度やアシル基の異なる複数のセルロースアシレートを一つの層に混在させてもよい。
【0097】
セルロースのアシル化において、アシル化剤として酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、メチレンクロライドや有機酸、例えば、酢酸等が使用される。
【0098】
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH
3CH
2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
【0099】
最も一般的なセルロースの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
【0100】
セルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
【0101】
本発明のフィルム、特に本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムは、全固形分中、セルロースアシレートを5〜99質量%含むことが透湿度の観点から好ましく、20〜99質量%含むことがより好ましく、50〜95質量%含むことが特に好ましい。
【0102】
<その他の添加剤>
本発明の光学フィルム中、特にセルロースアシレートフィルム中には、レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤)や、可塑剤として、重縮合エステル化合物(ポリマー)、多価アルコールの多価エステル、フタル酸エステル、リン酸エステルなど、さらには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などの添加剤を加えることもできる。
なお、本願明細書では、化合物群を標記するのに、例えば、リン酸エステル系化合物のように、「系」を組み込んで記載することがあるが、これは、上記の場合、リン酸エステル化合物と同じ意味である。
【0103】
(レターデーション低減剤)
本発明ではレターデーション低減剤として、リン酸エステル系化合物や、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の非リン酸エステル系の化合物以外の化合物を広く採用することができる。
【0104】
高分子レターデーション低減剤としては、リン酸ポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびアクリル系ポリマーおよびこれらの共重合体から選択され、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含まれることが好ましい。
【0105】
非リン酸エステル系の化合物以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、以下を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はセルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。さらにまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
【0106】
非リン酸エステル系の化合物以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、特に限定されないが、詳細は特開2007−272177号公報の段落番号0066〜0085に記載されている。
【0107】
特開2007−272177号公報の段落番号0066〜0085に記載の一般式(1)で表される化合物は、上記公報に記載のように、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。
【0108】
特開2007−272177号公報に記載の一般式(2)で表される化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、またはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
【0109】
レターデーション低減剤は、Rth低減剤であることが好適なNzファクターを実現する観点からより好ましい。レターデーション低減剤のうち、Rth低減剤としては、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマー、特開2007−272177号公報に記載の一般式(3)〜(7)で表される低分子化合物などを挙げることができ、その中でもアクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーがより好ましい。
【0110】
レターデーション低減剤は、セルロース系樹脂に対し、0.01〜30質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜20質量%の割合で添加することがより好ましく、0.1〜10質量%の割合で添加することが特に好ましい。添加量を30質量%以下とすることにより、セルロース系樹脂との相溶性を向上させることができ、透明性に優れたフィルムを作製することができる。2種類以上のレターデーション低減剤を用いる場合、その合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0111】
(レターデーション発現剤)
本発明の光学フィルムは、レターデーション値を発現するために、少なくとも1種のレターデーション発現剤を含有してもよい。
レターデーション発現剤としては、特に制限はないが、棒状または円盤状化合物からなるものや、上記非リン酸エステル系の化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
【0112】
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がさらに好ましい。
【0113】
円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
レターデーション発現剤の詳細は公開技報2001−1745の49頁に記載されている。
円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がさらに好ましい。
レターデーション発現剤中に含まれる円盤状化合物が、セルロースアシレート100質量部に対して3質量部未満が好ましく、2質量部未満がより好ましく、1質量部未満が特に好ましい。
【0114】
〔可塑剤(疎水化剤)〕
光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムでは、可塑剤をセルロースアシレートに含有させると、セルロースアシレートフィルムの含水率や透湿度が低下し、セルロースアシレートフィルム中の水分によるセルロースアシレートの加水分解反応が抑制される。さらに、可塑剤は、高温高湿条件下におけるセルロースアシレートフィルム中から偏光子層への添加剤の拡散を抑制し、偏光子性能の劣化を改良することができる。
【0115】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムに含有させることにより、可塑剤としても用いることができる。すなわち、前述したようなガラス転移温度の制御、含水率および透湿度の低減を含めた耐久性の改善効果が得られる他、同時にセルロースアシレートフィルムの硬度も高めることができる。さらに、本発明の一般式(I)で表される化合物は、他の汎用されている可塑剤と併用した場合であっても硬度向上効果を奏することができるため、複数の可塑剤を併用して光学フィルム、セルロースアシレートフィルム中に含有させても良い。
【0116】
本発明においては、併用する可塑剤の中でも、分子内で位置的にエステル基が接近して詰まっている多価エステル系の可塑剤が好ましい。多価エステル系の可塑剤として、具体的には、重縮合エステル化合物(以後、重縮合エステル系可塑剤と称す。)、多価アルコールの多価エステル化合物(以後、多価アルコールエステル系可塑剤と称す。)および炭水化物化合物(以後、炭水化物誘導体系可塑剤と称す。)が挙げられ、本発明において、これらの化合物は前述のような可塑剤効果の発現に優れている。
以下に本発明に用いられる可塑剤について説明する。
【0117】
(重縮合エステル系可塑剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、重縮合エステル可塑剤を含むことも好ましい。重縮合エステル可塑剤を含有させることで、湿度安定性、偏光板耐久性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができる。
重縮合エステル系可塑剤は、2価のカルボン酸化合物とジオール化合物を重縮合して得られる。
重縮合エステル系可塑剤は、下記一般式(a)で表される少なくとも1種のジカルボン酸および下記一般式(b)で表される少なくとも1種のジオールを重縮合して得られることが好ましい。
【0119】
一般式(a)、(b)中、Xは2価の炭素数2〜18の脂肪族基、2価の炭素数6〜18の芳香族基または炭素数2〜18の2価のヘテロ環を表し、Zは2価の炭素数2〜8の脂肪族基を表す。
【0120】
一般式(a)で表される2価のカルボン酸化合物は、上記のように脂肪族のカルボン酸、芳香族またはヘテロ環のカルボン酸が挙げられ、好ましくは、脂肪族のカルボン酸または芳香族のカルボン酸である。
一方、ジオール化合物も、上記一般式(b)で表される脂肪族化合物以外にも、芳香族もしくはヘテロ環の化合物が挙げられる。
【0121】
この中でも、重縮合エステル系可塑剤は、少なくとも一種の芳香環を有するジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸とも呼ぶ)と少なくとも一種の平均炭素数が2.5〜8.0の脂肪族ジオールとから得られることが好ましい。また、ジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸と少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸との混合物であって、ジオールが、少なくとも一種の平均炭素数が2.5〜8.0の脂肪族ジオールであって、このジカルボン酸混合物とジオールから得られる重縮合エステル系可塑剤も好ましい。
【0122】
重縮合エステル系可塑剤の数平均分子量は500〜2000が好ましく、600〜1500がより好ましく、700〜1200がさらに好ましい。重縮合エステルの数平均分子量は600以上であれば揮発性が低くなり、セルロースアシレートフィルムの延伸時の高温条件下における揮散によるフィルム故障や工程汚染の抑制に優れる。
また、数平均分子量が2000以下であればセルロースアシレートとの相溶性が高くなり、製膜時および加熱延伸時のブリードアウトの抑制に優れる。
【0123】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物をジカルボン酸成分として用いる場合は、ジカルボン酸成分の炭素数の平均が5.5〜10.0のジカルボン酸が好ましく、より好ましくは5.6〜8.0である。
炭素数の平均が5.5以上であれば耐久性に優れた偏光板を得ることができる。炭素数の平均が10以下であればセルロースアシレートへの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜過程でブリードアウトの抑制に優れる。
【0124】
重縮合エステル系可塑剤の合成に用いることができる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。その中でもフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、フタル酸、テレフタル酸がより好ましく、テレフタル酸がさらに好ましい。
ジオール化合物と、脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルには、脂肪族ジカルボン酸残基が含まれる。
重縮合エステル系可塑剤を合成する脂肪族ジカルボン酸は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合エステル系可塑剤を合成するジオールとしては、芳香族ジオールおよび脂肪族ジオールが挙げられ、本発明においては、少なくとも脂肪族ジオールを用いて合成されることが好ましい。
【0125】
重縮合エステル系可塑剤は、平均炭素数が2.5〜7.0の脂肪族ジオール残基を含むことが好ましく、より好ましくは平均炭素数が2.5〜4.0の脂肪族ジオール残基を含む。
脂肪族ジオール残基の平均炭素数が7.0より小さいとセルロースアシレートとの相溶性が改善され、ブリードアウト、化合物の加熱減量の増大、およびセルロースアシレートウェブ乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生の抑制に優れる。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.5以上であれば合成が容易である。
【0126】
重縮合エステル系可塑剤を合成するために用いる脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールまたは脂環式ジオール類が好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオールのうちの少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコールおよび1,2−プロパンジオールのうちの少なくとも1種である。
【0127】
重縮合エステル系可塑剤の末端は、封止せずにジオールもしくはカルボン酸のまま(すなわち、ポリマー鎖長末端が−OHまたはCO
2H)としてもよく、さらにモノカルボン酸類またはモノアルコール類を反応させて、いわゆる末端の封止を実施してもよい。なお、重縮合エステル系可塑剤の末端を封止することで、常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となり、また湿度安定性、偏光板耐久性に優れたセルロースアシレートフィルムを得ることができるという効果が得られる。
重縮合エステル系可塑剤は、特開2012−234159号公報の段落番号0062〜0064に記載されているJ−1〜J−38が好ましい。
また、これ以外にも下記に記載の重縮合エステル系可塑剤も好ましく用いることができる。
【0129】
表中、PAはフタル酸、AAはアジピン酸をそれぞれ表す。
【0130】
(多価アルコールエステル系可塑剤)
本発明に用いられる多価アルコールエステル系可塑剤は、アルコール部が2個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールから導かれるエステルであり、アルコール部のアルコールとしては、ヒドロキシ基以外に、エーテル結合を介して分断されてもよい飽和炭化水素にヒドロキシ基が2個以上置換したアルコールが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤の原料である多価アルコールは下記一般式(c)で表される。
【0132】
一般式(c)中、Rαはm価の有機基を表し、mは2以上の正の整数を表す。
【0133】
多価アルコールの炭素数は、5以上が好ましく、5〜20がより好ましい。
このような多価アルコールとしては、糖アルコールやグリコール類が挙げられる。
具体的には、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0134】
多価アルコールエステルの酸部(エステルのアシル部)は、モノカルボン酸から誘導される酸部が好ましく、このような酸としては、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸が挙げられる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点でより好ましい。
【0135】
脂肪族モノカルボン酸は、炭素数が、1〜32が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10が特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロース誘導体との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0136】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
【0137】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体が挙げられる。
【0138】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体が挙げられ、特に安息香酸が好ましい。
【0139】
多価アルコールエステル系可塑剤の分子量は特に制限はないが、300〜3000が好ましく、350〜1500がさらに好ましい。分子量が大きい方が光学フィルムからの揮散抑制に優れるため好ましく、透湿性、セルロース誘導体との相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0140】
多価アルコールエステル系可塑剤は、例えば、特開2012−234159号公報の段落番号0045〜0049に記載の化合物が好ましく、本明細書の一部として好ましく取り込まれる。
【0141】
(炭水化物誘導体系可塑剤)
炭水化物誘導体系可塑剤としては、単糖あるいは2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体、中でもアシル化されたものが好ましい。
【0142】
単糖または2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の例としては、例えば、好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
【0143】
炭水化物誘導体系可塑剤の好ましい例としては、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、ソルビトールヘキサベンゾエートなどである。
炭水化物誘導体系可塑剤はピラノース構造あるいはフラノース構造を有することが好ましい。
【0144】
炭水化物誘導体系可塑剤としては、特開2012−234159号公報の段落番号0030〜0039に記載されている化合物が好ましい。
なお、本発明では、可塑剤は、特開2012−234159号公報の段落番号0026〜0068に記載の内容が好ましく適用され、これらの段落番号に記載の内容は、本明細書の一部に、好ましく取り込まれる。
【0145】
これらの可塑剤の添加量は、セルロースアシレートに対して1〜20質量%が好ましい。1質量%以上であれば、偏光子耐久性改良効果が得られやすく、また20質量%以下であれば、ブリードアウトも発生しにくい。さらに好ましい添加量は2〜15質量%であり、特に好ましくは5〜15質量%である。なお、これらの可塑剤は2種類以上添加しても良い。2種類以上添加する場合も、添加量の具体例および好ましい範囲は上記と同一である。
【0146】
これらの可塑剤をセルロースアシレートフィルムに添加するタイミングは、製膜される時点で添加されていれば特に限定されない。例えば、セルロースアシレートの合成時点で添加してもよいし、ドープ調製時にセルロースアシレートと混合してもよい。
【0147】
(酸化防止剤)
本発明の光学フィルムは、酸化防止剤を含むことが好ましい。この酸化防止剤はセルロースアシレート溶液に添加されることができる。本発明において、公知の酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4'−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤を用いることが好ましい。
酸化防止剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.001〜5.0質量部が好ましく、0.01〜5.0質量部がさらに好ましい。
【0148】
(ラジカル捕捉剤)
本発明の光学フィルムは、ラジカル捕捉剤を含むことが好ましい。ラジカル捕捉剤として、HALS(ヒンダードアミン系光安定剤)類、レダクトン類が好ましく用いられる。
HALS類は、特に、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン環を有する化合物が好ましく、ピペリジンの1位が、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、オキシラジカル基(−O・)、アシルオキシ基、アシル基であるものが好ましく、4位は水素原子、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基であるものがより好ましい。また分子中に2〜5個の2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン環を有するものも好ましい。このような化合物としては、特開2012−98698号公報の段落番号0028〜0052に記載の化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、例えば、Sunlizer HA−622(商品名、株式会社ソート製)、CHIMASSORB 2020FDL、TINUVIN 770DF、TINUVIN 152、TINUVIN 123、FLAMESTAB NOR 116 FF〔商品名、いずれもBASF社(旧チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社)製〕、サイアソーブUV−3346、サイアソーブUV−3529(商品名、いずれもサンケミカル株式会社製)、アデカスタブLA−72、アデカスタブLA−81(商品名、いずれも株式会社アデカ製)が挙げられる。
【0149】
レダクトン類としては、特開平6−27599号公報の段落番号0014〜0034に例示の化合物、特開平6−110163号公報の段落番号0012〜0020に例示の化合物、特開平8−114899号公報の段落番号0022〜0031に例示の化合物を挙げることができる。
また、アスコルビン酸、エリソルビン酸の油溶化誘導体は好ましく用いることができ、ステアリン酸L−アスコルビルエステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸L−アスコルビルエステル、パルミチン酸エリソルビルエステル、テトライソパルミチン酸エリソルビルエステルなどが挙げられる。なかでも、アスコルビン酸骨格を有するものが好ましく、L−アスコルビン酸のミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルが特に好ましい。
セルロースアシレートフィルム中のラジカル捕捉剤の含有量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.001〜2.0質量部が好ましく、0.01〜1.0質量部がより好ましい。
【0150】
(その他の劣化防止剤)
セルロースアシレートの劣化防止剤として、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤として知られる添加剤を用いても良い。これらの添加剤としては例えば、特開2006−251746号公報の段落番号0074〜0081、0082〜0117に記載の化合物が挙げられる。
【0151】
上記のラジカル捕捉剤も劣化防止作用を示すが、アミン類も劣化防止剤として知られており、例えば特開平5−194789号公報の段落番号0009〜0080に記載の化合物や、トリ−n−オクチルアミン、トリイソオクチルアミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン、N,N−ジメチルドデシルアミンなどの脂肪族アミンが挙げられる。
また、2個以上のアミノ基を有する多価アミン類を用いることも好ましく、多価アミンとしては、第一級または第二級のアミノ基を2個以上有しているものが好ましい。2個以上のアミノ基を有する化合物としては、含窒素ヘテロ環化合物(ピラゾリジン環、ピペラジン環などを有する化合物)、ポリアミン系化合物(鎖状もしくは環状のポリアミンで、例えば、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、N,N’−ビス(アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン、変性ポリエチレンイミン、シクラムを基本骨格として含む化合物)等が挙げられる。
【0152】
このような多価アミンの具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、アミノエチルエタノ−ルアミン、ポリエチレンイミン、エチレンオキサイド変性ポリエチレンイミン、プロピレンオキサイド変性ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、N’,N'−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン等が挙げられる。また、市販品では、例えば、(株)日本触媒社製エポミンSP−006、SP−012、SP−018、PP−061等が挙げられる。
セルロースアシレートフィルム中の劣化防止剤の含有量は、質量ベースで1ppm〜10%が好ましく、1ppm〜5.0%がより好ましく、10ppm〜1.0%がさらに好ましい。
【0153】
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルムは、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。この紫外線吸収剤はセルロースアシレート溶液に添加されることができる。本発明において、紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤は、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
【0154】
ヒンダードフェノール化合物に特に制限はないが、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンおよびトリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレートから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0155】
ベンゾトリアゾール化合物に特に制限はないが、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールおよび2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0156】
これらの化合物は、市販品ではチヌビン99−2、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン320、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン329、チヌビン343、チヌビン900、チヌビン928、チヌビンP、チヌビンPS等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASF社の製品であり、好ましく使用できる。
【0157】
セルロースアシレートフィルム中の紫外線吸収剤の含有量は、質量ベースで1ppm〜10%が好ましく、1ppm〜5.0%がより好ましく、10ppm〜5.0%がさらに好ましい。
【0158】
(剥離促進剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは公知の剥離促進剤を添加してもよい。
剥離促進剤は、有機酸、多価カルボン酸誘導体、界面活性剤またはキレート剤であることが好ましい。例えば、特開2006−45497号公報の段落番号0048〜0081に記載の化合物、特開2002−322294号公報の段落番号0077〜0086に記載の化合物、特開2012−72348号公報の段落番号0030〜0056に記載の化合物等を、好ましく用いることができる。セルロースアシレートフィルム中の剥離促進剤の含有量は、質量ベースで1ppm〜5.0%が好ましく、1ppm〜2.0%がより好ましい。
【0159】
有機酸としては、特開2002−322294号公報の段落番号0079〜0082に記載の化合物が挙げられ、例えば、クエン酸、シュウ酸、アジピン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸などが挙げられる。
【0160】
さらに有機酸としては、アミノ酸類も好ましく、例えば、アスパラギン、アスパラギン酸、アデニン、アラニン、β−アラニン、アルギニン、イソロイシン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、セリン、チロシン、トリプトファン、トレオニン、ノルロイシン、バリン、フェニルアラニン、メチオニン、リシン、ロイシンなどが挙げられる。
【0161】
有機酸は遊離酸として用いてもよく、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属を含む重金属の塩が挙げられる。各塩の金属のうち、アルカリ金属は、リチウム、カリウム、ナトリウムなどが例示でき、アルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムなどが例示できる。遷移金属を含む重金属は、アルミニウム、亜鉛、スズ、ニッケル、鉄、鉛、銅、銀などが例示できる。また、炭素数5以下の置換、無置換のアミン類の塩も好ましく、このような塩のアミンとしては、例えばアンモニウム、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、ビス(ヒドロキシエチル)アミン、トリス(ヒドロキシエチル)アミンなどが例示できる。好ましい金属は、アルカリ金属ではナトリウム、アルカリ土類金属ではカルシウム、マグネシウムである。これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属はそれぞれ単独もしくは二種以上組み合わせて使用でき、アルカリ金属とアルカリ土類金属とを併用してもよい。
【0162】
多価カルボン酸誘導体としては、エステル化合物とアミド化合物が好ましい。
カルボン酸成分は、多価のカルボン酸で、カルボン酸は、脂肪族または芳香族のいずれのカルボン酸であっても構わないが、脂肪族カルボン酸が好ましい。脂肪族カルボン酸は、飽和、不飽和であっても、直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族のカルボン酸であっても、置換基を有していても構わない。このような置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基が挙げられる。
芳香族カルボン酸は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸などが挙げられ、脂肪族カルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸が挙げられ、置換基を有する脂肪族カルボン酸としては、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸が挙げられる。
【0163】
多価カルボン酸エステルは、アルコール成分である、エステル官能基の−C(=O)−O−の酸素原子に結合する基が、置換、無置換のアルキル基〔例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、−CH
2CH
2O−(CH
2CH
2)n−C
2H
5など〕、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、2−メチル−2−プロペニル、2−ブテニル、オレイルなど)が好ましく、アルコール成分(酸素原子に結合する基)の総炭素数は1〜200が好ましく、1〜100がより好ましく、1〜50がさらに好ましい。上記アルキル基およびアルケニル基が有してもよい置換基は、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。アルコキシ基やアルケニルオキシ基は、(ポリ)オキシアルキレン基を含むものが好ましく、特に、この(ポリ)オキシアルキレン基が、ポリ(オキシエチレン)基、(ポリ)オキシプロピレン基、(ポリ)オキシブチレン基が好ましい。
また、アルコール成分における原料のアルコールは、1価であっても多価であってもよく、多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールが挙げられ、これらのヒドロキシ基部分(−OH)が、ポリオキシアルキレンオキシ基となったもの〔例えば、−(OCH
2CH
2)n−OH、−(OC
3H
6)nOH〕も好ましい。
【0164】
多価カルボン酸アミドは、アミン成分のアミン化合物が、第一級または第二級のいずれでもよく、特に限定されない。アミド官能基の−C(=O)−N<の窒素原子に置換する置換基は、アルキル基〔例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、−CH
2CH
2O−(CH
2CH
2)n−C
2H
5など〕、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、2−メチル−2−プロペニル、2−ブテニルなど)が好ましく、アミン成分であるアミン化合物の総炭素数は1〜200が好ましく、1〜100がより好ましく、1〜50がさらに好ましい。上記アルキル基およびアルケニル基が有してもよい置換基は、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ヒドロキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。アルコキシ基やアルケニルオキシ基は、(ポリ)オキシアルキレン基を含むものが好ましく、特に、この(ポリ)オキシアルキレン基が、ポリ(オキシエチレン)基、(ポリ)オキシプロピレン基、(ポリ)オキシブチレン基であることが好ましい。また、このようなポリオキシアルキレン部分構造が、グリセリンを介して、分岐したポリオキシアルキレン基を含むことも好ましい。
また、アミン成分における原料のアミン化合物は、1価であっても多価であってもよい。
【0165】
多価カルボン酸誘導体のうち、未反応で遊離可能なカルボキシル基を有する有機酸モノグリセリドが特に好ましく、その市販品としては、例えば、理研ビタミン(株)社製ポエムK−37V(グリセリンクエン酸オレイン酸エステル)、花王社製ステップSS(グリセリンステアリン酸/パルミチン酸コハク酸エステル)等が挙げられる。
【0166】
界面活性剤としては、特開2006−45497号公報の段落番号0050〜0051に記載の化合物、特開2002−322294号公報の段落番号0127〜0128に記載の化合物を好ましく用いることができる。ノニオン系の界面活性剤として具体的にはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、ポリエーテルアミンが挙げられる。また、市販品としては、ナイミーンL−202、スタホームDO、スタホームDL(日油)などが挙げられる。
【0167】
キレート剤は、鉄イオンなど金属イオンやカルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンなどの多価金属イオンに配位(キレート)できる化合物であり、アミノポリカルボン酸、アミノポリホスホン酸、アルキルホスホン酸、ホスホノカルボン酸に代表されるような各種キレート剤のいずれを用いてもよい。キレート剤としては、特公平6−8956号、特開平11−190892号、特開2000−18038号、特開2010−158640号、特開2006−328203号、特開2005−68246号、特開2006−306969号の各公報に記載の化合物を用いることができる。
【0168】
具体的には、エチレンジアミンテトラ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)テトラ酢酸、1,3−ジアミノプロパンテトラ酢酸、ホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロ−N,N,N−トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N,N−テトラメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−ジ(o−ヒドロキシフェニル酢酸)、DL−アラニン−N,N−ジ酢酸、アスパラギン酸−N,N−ジ酢酸、グルタミン酸−N,N−ジ酢酸、セリン−N,N−ジ酢酸、ポリアクリル酸、イソアミレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、ケイ酸、グルコン酸、ヒドロキシベンジルイミノジ酢酸、イミノジ酢酸、などが挙げられる。また、油溶性のキレート剤を用いることも好ましい。市販品としては、テークランDO(ナガセケムテックス株式会社)、キレストMZ−2、キレストMZ−8(キレスト株式会社)を用いることができる。
【0169】
(マット剤)
本発明の光学フィルムは、フィルムすべり性、および安定製造の観点からマット剤を加えてもよい。マット剤は、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
無機化合物のマット剤は、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリンおよびリン酸カルシウム等が好ましく、さらに好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。
【0170】
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
有機化合物のマット剤は、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂およびアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120およびトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0171】
これらのマット剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法に限定されず、いずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。
さらにはドープを流延する直前に添加混合する直前添加方法でもよく、その混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましく、また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなものが好ましい。
【0172】
なお、インライン添加に関しては、濃度ムラ、粒子の凝集等をなくすために、特開2003−053752号公報には、セルロースアシレートフィルムの製造方法において、主原料ドープに異なる組成の添加液を混合する添加ノズル先端とインラインミキサーの始端部の距離Lを、主原料配管内径dの5倍以下とすることで、濃度ムラ、マット粒子等の凝集をなくす方法が記載されている。さらに好ましい態様として、主原料ドープと異なる組成の添加液供給ノズルの先端開口部とインラインミキサーの始端部との間の距離(L)を、供給ノズル先端開口部の内径(d)の10倍以下とし、インラインミキサーが、静的無攪拌型管内混合器または動的攪拌型管内混合器であることが記載されている。さらに具体的には、セルロースアシレートフィルム主原料ドープ/インライン添加液の流量比は、10/1〜500/1、好ましくは50/1〜200/1であることが開示されている。さらに、添加剤ブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で透明性に優れた位相差フィルムを目的とした特開2003−014933号公報にも、添加剤を添加する方法として、溶解釜中に添加してもよいし、溶解釜〜共流延ダイまでの間で添加剤や添加剤を溶解または分散した溶液を、送液中のドープに添加してもよいが、後者の場合は混合性を高めるため、スタチックミキサー等の混合手段を設けることが好ましいことが記載されている。
【0173】
マット剤は、0.05〜1.0質量%の割合でフィルム中に含有させることが特に好ましい。このような値とすることで、セルロースアシレートフィルムのヘイズが大きくならず、実際にLCDに使用した場合、コントラストの低下および輝点の発生等の不都合の抑制に寄与し、これに加えて耐擦傷性を実現することができる。
【0174】
<セルロースアシレートフィルムの物性>
(硬度)
【0175】
表面硬度は、ヌープ圧子を使用するヌープ法によるヌープ硬度が高く、また、鉛筆硬度も良好である。ヌープ硬度は、圧子にヌープ圧子を有する硬度計、例えば、フィッシャーインスツルメンツ(株)社製“フィッシャースコープH100Vp型硬度計”で測定できる。
【0176】
鉛筆硬度は、例えば、JIS−S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K5400が規定する鉛筆硬度評価法により、評価できる。
【0177】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、セルロースアシレートフィルムのヌープ硬度等の硬度を高めることができ、一般式(I)で表される化合物の種類または含有量によって調整できる。
【0178】
〔弾性率(引張り弾性率)〕
セルロースアシレートフィルムは実用上十分な弾性率(引張り弾性率)を示す。弾性率の範囲は特に限定されないが、製造適性およびハンドリング性という観点から1.0〜7.0GPaであることが好ましく、2.0〜6.5GPaであることがより好ましい。本発明の一般式(I)で表される化合物は、セルロースアシレートフィルム中に添加されることにより、セルロースアシレートフィルムを疎水化することで弾性率を向上させる作用があり、その点も本発明における利点である。
【0179】
(光弾性係数)
セルロースアシレートフィルムの光弾性係数の絶対値は、好ましくは8.0×10
−12m
2/N以下、より好ましくは6×10
−12m
2/N以下、さらに好ましくは5×10
−12m
2/N以下である。セルロースアシレートフィルムの光弾性係数を小さくすることにより、セルロースアシレートフィルムを含む本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿下におけるムラ発生を抑制できる。光弾性係数は、特に断らない限り、以下の方法により測定し算出するものとする。
光弾性率の下限値は特に限定されないが、0.1×10
−12m
2/N以上が実際的である。
【0180】
セルロースアシレートフィルムを3.5cm×12cmに切り出し、荷重なし、250g、500g、1000g、1500gのそれぞれの荷重におけるReをエリプソメーター(M150[商品名]、日本分光(株))で測定し、応力に対するRe変化の直線の傾きから光弾性係数を算出する。
【0181】
(含水率)
セルロースアシレートフィルムの含水率は一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は上記温湿度に24時間放置した後に、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
セルロースアシレートフィルムの25℃相対湿度80%における含水率は5質量%以下が好ましく、4質量%以下がさらに好ましく、3質量%未満がさらに好ましい。セルロースアシレートフィルムの含水率を小さくすることにより、セルロースアシレートフィルムを含む本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿下における液晶表示装置の表示ムラの発生を抑制することができる。含水率の下限値は特に限定されないが、0.1質量%以上が実際的である。
【0182】
(透湿度)
セルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じ、温度40℃、相対湿度90%の雰囲気中、試料を24時間に通過する水蒸気の質量を測定し、試料面積1m
2あたりの24時間に通過する水蒸気の質量に換算することにより評価することができる。
セルロースアシレートフィルムの透湿度は、500〜2000g/m
2・dayが好ましく、900〜1300g/m
2・dayがより好ましい。
【0183】
(ヘイズ)
セルロースアシレートフィルムは、ヘイズが1%以下が好ましく、0.7%以下がより好ましく、0.5%以下が特に好ましい。ヘイズを上記上限値以下とすることにより、セルロースアシレートフィルムの透明性がより高くなり、光学フィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。ヘイズは、特に断らない限り、下記方法により測定し算出するものとする。ヘイズの下限値は特に限定されないが、0.001%以上が実際的である。
セルロースアシレートフィルム40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%の環境下で、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いて、JIS K7136に従って測定する。
【0184】
(膜厚)
セルロースアシレートフィルムの平均膜厚は、10〜100μmが好ましく、15〜80μmがより好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。15μm以上とすることにより、ウェブ状のフィルムを作製する際のハンドリング性が向上し好ましい。また、70μm以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性を維持しやすい。
また、セルロースアシレートフィルムが3層以上の積層構造を有する場合、コア層の膜厚は3〜70μmが好ましく、5〜60μmがより好ましく、スキン層Aおよびスキン層Bの膜厚は、ともに0.5〜20μmがより好ましく、0.5〜10μmが特に好ましく、0.5〜3μmが最も好ましい。
【0185】
(幅)
セルロースアシレートフィルムは、幅が700〜3000mmが好ましく、1000〜2800mmがより好ましく、1300〜2500mmが特に好ましい。
【0186】
<5 セルロースアシレートフィルムの製造方法>
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、溶融製膜法又は溶液製膜法により製造することが好ましい。溶液製膜法(ソルベントキャスト法)による製造がより好ましい。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,492,078号、同第2,492,977号、同第2,492,978号、同第2,607,704号、同第2,739,069号および同第2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号および同第736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号および同62−115035号等の各公報を参考にすることができる。また、セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法および条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の各公報を参考にすることができる。
【0187】
(流延方法)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルロースアシレート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
【0188】
・共流延
セルロースアシレートフィルムの形成においては共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法が好ましく、特に同時共流延法は、安定製造および生産コスト低減の観点から特に好ましい。
共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でも良い)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ダイからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
図3に、共流延ダイ3を用い、流延用支持体4の上に表層用ドープ1とコア層用ドープ2を3層同時に押出して流延する状態を断面図で示した。
【0189】
逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ダイから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ダイから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に支持体から剥ぎ取って乾燥し、セルロースアシレートフィルムを成形する流延法である。塗布法は、一般的には、コア層を溶液製膜法によりフィルム状に成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、コア層の片面ずつまたは両面同時に塗布液を塗布・乾燥して積層構造のセルロースアシレートフィルムを成形する方法である。
【0190】
セルロースアシレートフィルムを製造するのに使用される、エンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基または2基以上の設置でもよい。好ましくは1基または2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるドープ(樹脂溶液)の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべての溶液温度が同一でもよく、または工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
また、上記金属支持体の材質については特に制限はないが、SUS製(例えば、SUS316)であることがより好ましい。
【0191】
(剥離)
セルロースアシレートフィルムの製造方法は、上記ドープ膜を金属支持体から剥ぎ取る工程を含むことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの製造方法における剥離の方法については特に制限はなく、公知の方法を用いた場合に剥離性を改善することができる。
【0192】
(延伸処理)
セルロースアシレートフィルムの製造方法では、製膜された延伸する工程を含むことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの延伸方向はセルロースアシレートフィルム搬送方向(MD方向)と搬送方向に直交する方向(TD方向)のいずれでも好ましいが、セルロースアシレートフィルム搬送方向に直交する方向(TD方向)が、後に続く、セルロースアシレートフィルムを用いた偏光板加工プロセスの観点から特に好ましい。
【0193】
TD方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。MD方向の延伸の場合、例えば、セルロースアシレートフィルムの搬送ローラーの速度を調節して、セルロースアシレートフィルムの剥ぎ取り速度よりもセルロースアシレートフィルムの巻き取り速度の方を速くするとセルロースアシレートフィルムは延伸される。TD方向の延伸の場合、セルロースアシレートフィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもセルロースアシレートフィルムを延伸できる。セルロースアシレートフィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
【0194】
セルロースアシレートフィルムを偏光子の保護膜として使用する場合には、偏光板を斜めから見たときの光漏れを抑制するため、偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、上記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状のセルロースアシレートフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、セルロースアシレートフィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従ってTD方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。
【0195】
TD方向の延伸は5〜100%の延伸が好ましく、より好ましくは5〜80%、特に好ましくは5〜40%延伸を行う。なお、未延伸とは延伸が0%であることを意味する。延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶剤量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%が、0.05〜50%である場合に好ましく延伸することができる。残留溶剤量が0.05〜5%の状態で5〜80%延伸を行うことが特に好ましい。
【0196】
(乾燥)
セルロースアシレートフィルムの製造方法では、セルロースアシレートフィルムを乾燥する工程と、乾燥後のセルロースアシレートフィルムをガラス転移温度(Tg)−10℃以上の温度で延伸する工程とを含むことが、レターデーション発現性の観点から好ましい。
【0197】
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラムまたはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラムまたはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラムまたはベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何℃でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0198】
セルロースアシレートフィルムの厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0199】
以上のようにして得られた、セルロースアシレートフィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
【0200】
大画面用液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いる場合は、例えば、フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、本発明の偏光板保護フィルムには、液晶表示装置にそのまま組み込むことが、可能な大きさに切断されたフィルム片の態様のフィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様のフィルムも含まれる。後者の態様の偏光板保護フィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられた光学補償フィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
【0201】
<<ハードコート層>>
本発明の光学フィルムにおいて、セルロースアシレートフィルム上に所望により設けられるハードコート層は、本発明の光学フィルムに硬度や耐傷性を付与するための層である。例えば、塗布組成物をセルロースアシレートフィルム上に塗布し、硬化させることによって、上記一般式(I)で表される化合物と相俟ってセルロースアシレートフィルムと密着性の高いハードコート層を形成することができる。ハードコート層にフィラーや添加剤を加えることで、機械的、電気的、光学的などの物理的な性能や撥水・撥油性などの化学的な性能をハードコート層自体に付与することもできる。ハードコート層の厚みは0.1〜6μmが好ましく、3〜6μmがさらに好ましい。このような範囲の薄いハードコート層を有することで、脆性やカール抑制などの物性改善、軽量化および製造コスト低減がなされたハードコート層を含む光学フィルムになる。
【0202】
ハードコート層は、硬化性組成物を硬化することで形成するのが好ましい。硬化性組成物は液状の塗布組成物として調製されるのが好ましい。塗布組成物の一例は、マトリックス形成バインダー用モノマーまたはオリゴマー、ポリマー類および有機溶媒を含有する。この塗布組成物を塗布後に硬化することでハードコート層を形成することができる。硬化には、架橋反応、または重合反応を利用することができる。
【0203】
(マトリックス形成バインダー用モノマーまたはオリゴマー)
利用可能なマトリックス形成バインダー用モノマーまたはオリゴマーの例には、電離放射線硬化性の多官能モノマーおよび多官能オリゴマーが含まれる。多官能モノマーや多官能オリゴマーは架橋反応、または、重合反応可能なモノマーであるのが好ましい。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
【0204】
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等や、エポキシ系化合物等の開環重合型の重合性官能基が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0205】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、
ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;
等が挙げられる。
【0206】
さらには、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類、イソシアヌル酸アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
【0207】
上記の中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーがより好ましい。
具体的には、(ジ)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリレートまたはメタクリレート」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を表す。
【0208】
さらに、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物などのオリゴマーまたはプレポリマー等も挙げられる。
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類の具体化合物としては、特開2007−256844号公報の段落番号0096等を参考にすることができる。
【0209】
ウレタン(メタ)アクリレート類としては、例えば、アルコール、ポリオール、および/またはヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有化合物類とイソシアネート類を反応させ、または必要によって、これらの反応によって得られたポリウレタン化合物を(メタ)アクリル酸でエステル化して得られるウレタン(メタ)アクリレート系化合物を挙げることができる。
具体的な化合物の具体例としては特開2007−256844号公報の段落番号0017等の記載を参考にすることができる。
【0210】
イソシアヌル酸(メタ)アクリレート類を利用すると、カールをより低減できるので好ましい。例えば、イソシアヌル酸ジアクリレート類、イソシアヌル酸トリアクリレート類が挙げられ、具体的な化合物の事例としては特開2007−256844号公報の段落番号0018〜0021等を参考にすることができる。
【0211】
ハードコート層には、さらに硬化による収縮低減のために、エポキシ系化合物を用いることができる。エポキシ基を有するモノマー類としては、1分子中にエポキシ基を2基以上有するモノマーが用いられ、これらの例としては特開2004−264563号、同2004−264564号、同2005−37737号、同2005−37738号、同2005−140862号、同2005−140863号、同2002−322430号等の各公報に記載されているエポキシ系モノマー類が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレートのようなエポキシ系とアクリル系の両官能基を持つ化合物を用いることも好ましい。
【0212】
(高分子化合物)
ハードコート層は、高分子化合物を含有していてもよい。高分子化合物を添加することで、硬化収縮を小さくでき、また、樹脂粒子の分散安定性(凝集性)に関わる塗布液の粘度調整をより優位に行うことができ、さらには、乾燥過程での固化物の極性を制御して樹脂粒子の凝集挙動を変えたり、乾燥過程での乾燥ムラを減じたりすることもでき、好ましい。
【0213】
高分子化合物は、塗布液に添加する時点で既に重合体を形成しており、このような高分子化合物としては、例えばセルロースエステル類(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースナイトレート等)、ウレタン類、ポリエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸メチル等)、ポリスチレン等の樹脂が好ましく用いられる。
【0214】
(硬化性組成物)
ハードコート層の形成に利用可能な硬化性組成物の一例は、(メタ)アクリレート系化合物を含む硬化性組成物である。硬化性組成物は、(メタ)アクリレート系化合物とともに、光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤を含有するのが好ましく、所望により、さらにフィラー、塗布助剤、その他の添加剤を含有していてもよい。硬化性組成物の硬化は、光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により重合反応を進行させることで実行できる。電離放射線硬化と熱硬化の双方を実行することもできる。光および熱重合開始剤としては市販の化合物を利用することができ、それらは、「最新UV硬化技術」(p.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)や、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のカタログに記載されている。
【0215】
ハードコート層の形成に利用可能な硬化性組成物の他の例は、エポキシ系化合物を含む硬化性組成物である。硬化性組成物は、エポキシ系化合物とともに、光の作用によってカチオンを発生させる光酸発生剤を含有しているのが好ましく、所望により、さらにフィラー、塗布助剤、その他の添加剤を含有していてもよい。硬化性組成物の硬化は、光酸発生剤の存在下で、光照射により重合反応を進行させることで実行できる。光酸発生剤の例としては、トリアリールスルホニウム塩やジアリールヨードニウム塩などのイオン性の化合物やスルホン酸のニトロベンジルエステルなどの非イオン性の化合物等が挙げられ、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」ぶんしん出版社刊(1997)などに記載されている化合物等種々の公知の光酸発生剤が使用できる。
【0216】
また、(メタ)アクリレート系化合物とエポキシ系化合物を併用してもよく、その場合は、開始剤は、光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤を併用することが好ましい。
【0217】
ハードコート層の形成に特に好適な硬化性組成物は、後述する実施例にて用いられるように、(メタ)アクリレート系化合物を含有する組成物である。
【0218】
硬化性組成物は、塗布液として調製されるのが好ましい。塗布液は、上述の成分を有機溶媒に溶解および/または分散することで、調製することができる。
【0219】
(ハードコート層の性質)
本発明の光学フィルムのセルロースアシレートフィルム上に形成されるハードコート層は、セルロースアシレートフィルムと高い密着性を有している。特に、一般式(I)で表される化合物を含有するセルロースアシレートフィルム上に上述の好適な硬化性組成物で形成されたハードコート層は、その硬化性組成物が一般式(I)で表される化合物と相俟って、セルロースアシレートフィルムとさらに高い密着性で形成される。したがって、このようなセルロースアシレートフィルムおよびハードコート層を有する本発明の光学フィルムは、光照射等によってもセルロースアシレートフィルムとハードコート層との密着性を維持し、光耐久性に優れる。
【0220】
ハードコート層は、耐擦傷性に優れるのが好ましい。具体的には、耐擦傷性の指標となる鉛筆硬度試験(JIS−S6006)を実施した場合に、3H以上を達成するのが好ましい。
【0221】
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光子と本発明の光学フィルムとを少なくとも有する。本発明の偏光板は、偏光子と偏光子の片面または両面に本発明の光学フィルムを有することが好ましい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明の光学フィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明の光学フィルムのセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。セルロースアシレートフィルムの処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
【0222】
本発明の光学フィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明の光学フィルムの遅相軸が実質的に直交となるように貼り合せることが好ましい。本発明の液晶表示装置において、偏光板の透過軸と本発明の光学フィルムの遅相軸が実質的に直交、平行または45°となるように貼り合わせることが好ましい。
ここで、実質的に直交または平行であるとは、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含む。例えば、平行、直交に関する厳密な角度から±10°未満の範囲内であることを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下が好ましく、3°以下がより好ましい。
偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの遅相軸が平行とは、セルロースアシレートフィルムの主屈折率nxの方向と偏光子の透過軸の方向とのなす角が±10°の範囲内であることを意味する。この角度の範囲は、±5°が好ましく、±3°がより好ましく、±1°がさらに好ましく、±0.5°が最も好ましい。なお、この角度が0°のとき、セルロースアシレートフィルムの主屈折率nxの方向と偏光子の透過軸の方向とは交わらず完全に平行である。
また、偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの遅相軸が直交するとは、セルロースアシレートフィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とが90°±10°の角度で交わっていることを意味する。この角度は、90°±5°が好ましく、90°±3°がより好ましく、90°±1°がさらに好ましく、90°±0.5°が最も好ましい。
貼り合せに際してこのように角度調整することで、偏光板クロスニコル下での光抜けをより低減することができる。遅相軸の測定は、任意の種々の方法で測定することができ、例えば、複屈折計(KOBRA DH、王子計測機器(株)社製)を用いて行うことができる。
【0223】
本発明の偏光板は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、偏光板の幅は1470mm以上が好ましい。本発明の偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008−262161号公報の
図6に記載の構成を採用することができる。
【0224】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと本発明の偏光板とを少なくとも有する。本発明の液晶表示装置において、偏光板、後述する第一偏光板および第二偏光板を有する場合には少なくとも一方が、本発明の偏光板であるIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。
本発明の液晶表示装置は、好ましくは、液晶セルと、液晶セルの両側に積層され、液晶セル側とは反対側の面に光学フィルムを具備する偏光板とを有している。すなわち、本発明の液晶表示装置は、第一偏光板、液晶セルおよび第二偏光板を有し、偏光板それぞれと液晶セルとで挟持される偏光板面と反対面に本発明の光学フィルムを具備しているのが好ましい。このような構成を有する液晶表示装置は、表示ムラの抑制に優れ、高い表示性能を発揮する。
また、本発明の液晶表示装置は、好ましくは、視認側に配置された偏光板が視認側の光学フィルム表面上にハードコート層を有する光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムを有している。このような構成を有する液晶表示装置は、表示ムラの抑制に優れた高い表示性能に加えて、優れた耐擦傷性と光耐久性を発揮する。
【0225】
本発明の液晶表示装置として、典型的な液晶表示装置の内部構成を
図1および
図2に示した。
図1には、セルロースアシレートフィルムからなる本発明の光学フィルム31aおよび31bが偏光子32の両表面に配置された偏光板21Aおよび21Bを有する液晶表示装置が図示されている。また、
図2には、視認側に配置された偏光板21Bが偏光子32の視認側表面にセルロースアシレートフィルム311aを介してハードコート層311bを有する光学フィルム31a’を具備する液晶表示装置が図示されている。
なお、
図1および
図2に、本発明の液晶表示装置の一例についての構成を示したが、本発明の液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できる。また、特開2008−262161号公報の
図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
【実施例】
【0226】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、これにより本発明が限定して解釈されるものではない。
【0227】
〔一般式(I)で表される化合物の合成〕
本発明の一般式(I)で表される化合物を以下のようにして合成した。
代表的な化合物の合成例を以下に示す。
【0228】
Journal of Organic Chemistry,第68巻,4684〜4692頁(2003年)に記載の方法により、例示化合物(A−6)、(A−7)および(D−3)を合成した。
【0229】
【化17】
【0230】
(i)例示化合物(A−7)の合成
1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸を酢酸中、臭素で、臭素化し、例示化合物(A−7)を合成した。
得られた化合物の構造は、
1H−NMRで確認した。
【0231】
(ii)例示化合物(D−3)の合成
例示化合物(A−7)とベンジルアミンを反応させ、例示化合物(D−3)を合成した。
得られた化合物の構造は、
1H−NMRで確認した。
【0232】
(iii)例示化合物(A−6)の合成
例示化合物(A−7)と同様にして、1,5−ジフェニルバルビツール酸を酢酸中、臭素で、臭素化し、例示化合物(A−6)を合成した。
【0233】
(iv)例示化合物(A−4)の合成
【0234】
【化18】
【0235】
例示化合物(A−6)と類似の方法により、N−クロルコハク酸を使用して合成した。
得られた化合物の構造は、
1H−NMRで確認した。
【0236】
(v)例示化合物(B−1)の合成
Organic Chemistry,第68巻,4684頁(2003年)に記載の方法により、1,3−ジメチル−5−ベンジルバルビツール酸を、酢酸中、酢酸マンガンを触媒として酸化し、例示化合物(B−1)を合成した。
得られた化合物の構造は、
1H−NMRで確認した。
【0237】
【化19】
【0238】
例示化合物(B−1)
1H−NMR(300MHz、DMSO−d6):δ 2.50(s、6H)、3.12(s、2H)、6.51(s、1H)、6.92(m、2H)、7.24(m、3H)
【0239】
(vi)例示化合物(B−3)の合成
1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸とメタクロル過安息香酸(mCPBA)を反応させ、例示化合物(B−3)を合成した。得られた化合物の構造は、
1H−NMRで確認した。
【0240】
【化20】
【0241】
(vii)〜(xv)例示化合物(B−4)、(B−5)、(B−6)、(B−7)、(B−13)、(G−7)、(G−8)、(G−9)、(G−10)の合成
【0242】
【化21】
【0243】
例示化合物(B−3)と同様の方法で、原料を、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸から1−フェニル−5−ベンジルバルビツール酸、1−ベンジル−3,5−ジフェニルバルビツール酸、1,5−ジベンジル−3−フェニルバルビツール酸、1,3,5−トリフェニルバルビツール酸、1,3−ジシクロヘキシル−5−フェニルバルビツール酸、1−ベンジル−5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−メチルバルビツール酸、1,5−ジベンジルバルビツール酸に変更して、例示化合物(B−4)、(B−5)、(B−6)、(B−7)、(B−13)、(G−7)、(G−8)、(G−10)をそれぞれ合成した。また、例示化合物(B−1)と同様の方法で、原料を、5−ベンジルバルビツール酸に変更して、例示化合物(G−9)を合成した。
得られた化合物の構造は、
1H−NMRで確認した。
【0244】
なお、代表して、例示化合物(B−5)、(B−6)、(G−7)、(G−8)、(G−9)の
1H−NMRのデータを示す。
【0245】
例示化合物(B−5)
1H−NMR(300MHz、CDCl
3):δ 4.13(br、1H)、5.12(m、2H)、7.08(s、2H)、7.26〜7.46(m、13H)
【0246】
例示化合物(B−6)
1H−NMR(300MHz、CDCl
3):δ 3.33(dd、2H)、3.65(br、1H)、4.94(m、2H)、6.88(m、2H)、7.14〜7.48(m、13H)
【0247】
例示化合物(G−7)
1H−NMR(300MHz、DMSO−d6):δ 0.75(t、3H)、1.04−1.16(m、4H)、1.76(m、2H)、4.87(s、2H)、6.11(s、1H)、7.26−7.33(m、5H)、11.59(s、1H)
【0248】
例示化合物(G−8)
1H−NMR(300MHz、DMSO−d6):δ 1.49(s、3H)、4.87(s、2H)、6.32(s、1H)、7.29(m、5H)、11.50(s、1H)
【0249】
例示化合物(G−9)
1H−NMR(300MHz、DMSO−d6):δ 3.12(s、2H)、6.40(s、1H)、7.03(m、2H)、7.28(m、3H)、11.21(s、2H)
【0250】
(xvi)例示化合物(B−9)の合成
【0251】
【化22】
【0252】
Journal of Medicinal Chemistry,第17巻,1194頁(1974年)に記載の方法により、エトキシ−1−フェニルエチルマロン酸ジエチルと尿素の環化反応により、例示化合物化合物(B−9)を合成した。
得られた化合物の構造は、
1H−NMRで確認した。
【0253】
(xvii)例示化合物(B−11)の合成
【0254】
【化23】
【0255】
Journal of Medicinal Chemistry,第17巻,1194頁(1974年)に記載の方法により、5−(1−フェニルエチル)バルビツール酸から5位ヒドロキシ体を経て、アセチル化し、例示化合物化合物(B−11)を合成した。
得られた化合物の構造は、
1H−NMRで確認した。
【0256】
実施例1
(A)セルロースアシレートフィルム(光学フィルム)の作製および評価−1−
(セルロースアセテートの調製)
総アセチル置換度(B)2.87のセルロースアセテートを下記のようにして調製した。
触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、酢酸を添加し40℃でセルロースのアセチル化反応を行った。またアセチル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアセテートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
【0257】
(光学フィルム:単層のセルロースアシレートセフィルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0258】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテート溶液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
総アセチル置換度(B)2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
下記表2に記載の一般式(I)で表される化合物
10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0259】
セルロースアセテート溶液を、バンド流延機を用いて流延し、100℃で残留溶媒含量40%まで乾燥した後、フィルムを剥ぎ取った。剥ぎ取ったフィルムは、さらに140℃の雰囲気温度で20分乾燥させた。このようにして光学フィルムのNo.101〜103および比較の光学フィルムのNo.c01〜c03をそれぞれ作製した。得られた各光学フィルム(セルロースアセテートフィルム)の膜厚は60μmであった。
なお、以降では、光学フィルムを偏光板保護フィルムとも称す。
【0260】
(フィルム硬度の評価)
作製した各光学フィルムのNo.101〜103および比較の光学フィルムのNo.c01〜c03のフィルム硬度(表面硬度)を測定した。
フィッシャーインスツルメンツ(株)社製“フィッシャースコープH100Vp型硬度計”を用い、圧子の短軸の向きをセルロースアシレートフィルム製膜時の搬送方向(MD方向;鉛筆硬度試験での試験方向)に対して平行に配置したヌープ圧子により、ガラス基板に固定したサンプル表面を負荷時間10秒、クリープ時間5秒、除荷時間10秒、最大荷重50mNの条件で測定した。押し込み深さから求められる圧子とサンプルとの接触面積と最大荷重の関係により、硬度を算出し、この5点の平均値を表面硬度とした。
【0261】
また、フィッシャーインスツルメンツ(株)社製“フィッシャースコープH100Vp型硬度計”を用い、JIS Z 2251の方法に準じて、ガラス基板に固定したサンプル表面を負荷時間10秒、クリープ時間5秒、除荷時間10秒、押し込み荷重50mNの条件で測定し、押し込み深さから求められる圧子とサンプルとの接触面積と最大荷重の関係よりヌープ硬度を算出した。なお、JIS Z 2251はISO4545−1およびISO4545−4を基に作成した日本工業規格である。
【0262】
さらに、同じ押し込み位置においてヌープ圧子を10°ずつ回転させて測定される合計18方位のヌープ硬度の測定を行ない、最小値を求めたところ、上記のヌープ圧子の短軸の向きをセルロースアシレートフィルム製膜時の搬送方向(MD方向;鉛筆硬度試験での試験方向)に対して平行に配置して測定したヌープ硬度と一致した。単位はN/mm
2で表した。
【0263】
添加剤を加えた場合のヌープ硬度の値を、加えなかった場合のヌープ硬度値で割った値を硬度向上効果として算出し、下記基準で評価した。
なお、評価が「C」以上であるとセルロースアセテートフィルムとしての硬度が高く、加工性の観点から十分に実用的である。
【0264】
表面硬度の評価基準
A:添加剤なしのヌープ硬度の値の1.15倍以上
B:添加剤なしのヌープ硬度の値の1.10倍以上1.15倍未満
C:添加剤なしのヌープ硬度の値の1.03倍以上1.10倍未満
D:添加剤なしのヌープ硬度の値の1.03倍未満
【0265】
(フィルム着色の評価)
上記で作製した本発明の各光学フィルムに対して、スーパーキセノンウェザーメーター(スガ試験機(株)製SX75)を用い、放射照度150W/m
2、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件で、120時間光照射を行った。その後島津製作所の分光光度計UV3150を用いて色相b
*を測定した。色相b
*の値がマイナス側に大きくなると透過光は青味が増し、プラス側に大きくなると黄色味が増す。光照射前後のb
*の値の変化をΔb
*とし、これを光着色に対する指標とした。
評価は下記基準で行った。
【0266】
A:Δb
*が0.04未満
B:Δb
*が0.04以上、0.06未満
C:Δb
*が0.06以上、0.08未満
D:Δb
*が0.08以上
【0267】
これらの結果をまとめて下記表2に示す。
【0268】
【表2】
【0269】
ここで、比較化合物(R−1)および(R−2)は、いずれも特開2011−126968号公報に記載の化合物(2)および(19)である。
【0270】
【化24】
【0271】
表2から明らかなように、本発明の光学フィルムのNo.101〜103は、いずれも、光によるフィルムの着色抑制効果に優れ、さらに、良好な硬度を発現することがわかった。
比較化合物(R−2)(比較の光学フィルムのNo.c02)と比べると、本発明の光学フィルムのNo.101〜103はいずれも高い表面硬度を示している。これは、本発明の一般式(I)で表される化合物が環構造あるいは極性基を有することによってセルロースアセテートとの相互作用がより強まっているものと考えられる。
また、比較化合物(R−1)(比較の光学フィルムのNo.c01)と比べると、本発明の光学フィルムのNo.101〜103はいずれも光によるフィルムの着色が抑えられていることを示している。
【0272】
実施例2
(B)セルロースアシレート(光学フィルム)の作製および評価−2−
一般式(I)で表される化合物の種類を下記表3のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして本発明の光学フィルムのNo.111〜120を作製した。各特性の評価は実施例1と同様にして行った。
【0273】
【表3】
【0274】
表3からも明らかなように、本発明の光学フィルムのNo.111〜120は、いずれも表面硬度が高く、光によるフィルム着色が抑制された。従って、一般式(I)で表される化合物は、いずれも硬度発現性およびフィルム着色の抑制に貢献することがわかった。
【0275】
実施例3
(C)セルロースアシレート(光学フィルム)の作製および評価−3−
実施例1と同様にして、セルロースアシレートの置換度、一般式(I)で表される化合物の種類およびセルロースアシレートフィルムの膜厚を下記表4のように変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の光学フィルムのNo.131〜137を作製した。
各特性の評価は実施例1と同様にして行った。
【0276】
【表4】
【0277】
表4から明らかなように、本発明の化合物は、セルロースアシレートの置換度によらず、硬度およびフィルム着色の抑制に効果があることがわかった。
【0278】
実施例4
(D)セルロースアシレート(光学フィルム)の作製および評価−4−
実施例1と同様にして、セルロースアシレートの種類、各添加剤の種類、セルロースアシレートフィルムの膜厚を下記表5のように変更した以外は、実施例1と同様にして、本発明の光学フィルムのNo.141〜145および比較の光学フィルムのNo.c41〜c43をそれぞれ作製した。
各特性の評価は実施例1と同様にして行った。ただし、表面硬度の評価に際しては、下記のとおり、膜厚に応じて押し込み荷重を変更した。
【0279】
(フィルム硬度の評価)
上記で得られたセルロースアシレートフィルムを、押し込み荷重20mNとした以外は実施例1に記載の方法と同様にして、フィルム硬度(表面硬度)を測定した。
それぞれのフィルムのヌープ硬度の値を、添加剤を加えずに作製したフィルムのヌープ硬度の値と比較して、下記の基準で評価した。
【0280】
A:添加剤を加えなかった場合のヌープ硬度の値の1.15倍以上
B:添加剤を加えなかった場合のヌープ硬度の値の1.10倍以上1.15倍未満
C:添加剤を加えなかった場合のヌープ硬度の値の1.03倍以上1.10倍未満
D:添加剤を加えなかった場合のヌープ硬度の値の1.03倍未満
【0281】
【表5】
【0282】
表5から明らかなように、本発明の化合物を含むフィルムでは、薄膜化した際にも好ましい表面硬度向上効果と光着色抑制効果を発現できることがわかった。
【0283】
実施例5
(ハードコート層付き光学フィルムの作製)
実施例1および2で作製した単層の各光学フィルムの表面に下記の組成物のハードコート層溶液を塗布し、紫外線を照射して硬化させ、厚み6μmのハードコート層を形成したハードコート層付き光学フィルムを作製した。
【0284】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ハードコート層溶液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
モノマー ペンタエリスリトールトリアクリレート/
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(混合質量比3/2)
53.5質量部
UV開始剤 Irgacure
TM907
(BASF社製) 1.5質量部
酢酸エチル 45質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0285】
<鉛筆硬度評価>
各ハードコート層付き光学フィルムを、25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、500gのおもりを用いて各硬度の鉛筆でハードコート層表面を5回繰り返し引っ掻き、傷が1本となるまでの硬度を測定した。なお、JIS−K5400で定義される傷は塗膜の破れ、塗膜のすり傷であり、塗膜のへこみは対象としないと記載されているが、本評価では、塗膜のへこみも含めて傷と判断した。その結果、本発明の光学フィルムのNo.101〜103、111〜120に基づくハードコート層付き光学フィルムはいずれも3Hと良好な値を示すことがわかった。
【0286】
実施例6<偏光板としての性能評価>
(偏光板保護フィルムの鹸化処理)
実施例1で作製した本発明の光学フィルムのNo.101からなる偏光板保護フィルムを、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、実施例1〜4で作製した各光学フィルムからなる偏光板保護フィルムに対して表面の鹸化処理を行った。なお、偏光子は前述の<<偏光板>>の項で説明したような常用されているものを用いた。
【0287】
(偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
実施例1で作製し、上記の鹸化処理した偏光板保護フィルムのNo.101を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)も同様の鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化処理した偏光板保護フィルムのNo.101が貼り付けてある側とは反対側の偏光子の面に、鹸化処理済みの上記市販のセルローストリアセテートフィルムを貼り付けた。
この際、偏光子の透過軸と、実施例1で作製した鹸化処理済みの偏光板保護フィルムのNo.101の遅相軸とが平行になるように配置した。また、偏光子の透過軸と鹸化処理済みの市販のセルローストリアセテートフィルムの遅相軸についても、直交するように配置した。
このようにして本発明の偏光板101を作製した。
【0288】
偏光板保護フィルムのNo.102〜103、111〜120、131〜137、141〜145および比較の偏光板保護フィルムのNo.c01〜c03、c41〜c43について、それぞれ上記と同様にして鹸化処理と偏光板の作製を行い、本発明の偏光板102〜103、111〜120、131〜137、141〜145および比較の偏光板c01〜c03、c41〜c43をそれぞれ作製した。
本発明の偏光板は、組み込まれた本発明の光学フィルムの性能を反映して、優れた性能を示した。
この結果、本発明の光学フィルム、それを用いた偏光板を使用することで、以上に示したような優れた性能の液晶表示装置が作製できる。
【0289】
実施例7
(可塑剤との組み合わせ)
【0290】
以下のようにして、偏光板を作製し、偏光板耐久性を評価した。
【0291】
(セルロースアシレート溶液71の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液71を調製した。
【0292】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液71の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
・アセチル置換度(B)2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
・可塑剤: 疎水化剤(1)
フタル酸/エタンジオールの重縮合物
末端は酢酸エステル基で数平均分子量は800
10.0質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 389.8質量部
・メタノール(第2溶媒) 58.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0293】
(マット剤溶液72の調製)
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液72を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液72の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、
日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 75.5質量部
メタノール(第2溶媒) 11.3質量部
セルロースアシレート溶液71 0.9質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0294】
(偏光板耐久性改良剤溶液73の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、偏光子耐久性改良剤溶液73を調製した。
【0295】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
偏光板耐久性改良剤溶液73の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
例示化合物(B−3) 20.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 73.5質量部
メタノール(第2溶媒) 6.4質量部
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【0296】
(紫外線吸収剤溶液74の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、紫外線吸収剤溶液74を調製した。
【0297】
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紫外線吸収剤溶液74の組成
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下記紫外線吸収剤(UV−1) 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 78.3質量部
メタノール(第2溶媒) 11.7質量部
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【0298】
【化25】
【0299】
<流延>
上記マット剤溶液72を1.3質量部、偏光板耐久性改良剤溶液73を3.3質量部および紫外線吸収剤溶液74を4.0質量部、それぞれ濾過後にインラインミキサーを用いて混合し、さらにセルロースアシレート溶液71を91.4質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合した。バンド流延装置を用い、上記で調製したドープをステンレス製の流延支持体(支持体温度22℃)に流延した。ドープ中の残留溶媒量が略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンターで把持し、残留溶媒量が5〜10質量%の状態で、120℃の温度下で幅方向に1.10倍(10%)延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、光学フィルムのNo.701を作製した。得られた光学フィルムの厚みは23μm、幅は1480mmであった。
【0300】
さらに、上記光学フィルムのNo.701において、添加する例示化合物の種類と添加量および可塑剤の種類と添加量を下記表6に記載のように変更した以外は光学フィルムのNo.701と同様にして、本発明の光学フィルムのNo.702〜705、711〜715および比較の光学フィルムのNo.c71、c72を作製した。
また、光学フィルムのNo.701において、偏光板耐久性改良剤溶液73を混合しなかったこと以外は光学フィルムのNo.701と同様にして、比較の光学フィルムのNo.c73を作製した。
【0301】
(添加剤の説明)
疎水化剤1:フタル酸/エタンジオールの重縮合物(末端は酢酸エステル基で数平均分子量は800)
重縮合ポリマー(A):アジピン酸とエタンジオールからなるポリエステル(末端はヒドロキシ基)(数平均分子量=1000)
モノペット(登録商標)SB (可塑剤): 第一工業化学社製
SAIB−100 (可塑剤): イーストマン・ケミカル社製
【0302】
同様に上記光学フィルムのNo.701において、得られる光学フィルムの膜厚が40μm、幅は1480mmになるように流延、乾燥し、本発明の光学フィルムのNo.801を作製した。この光学フィルムのNo.801において、例示化合物(B−3)の代わりに、添加剤の種類と添加量を後述の表6に記載のように変更した以外は光学フィルムのNo.801と同様にして、本発明の光学フィルムのNo.802〜805および比較の光学フィルムのNo.c81〜c83をそれぞれ作製した。同様に上記光学フィルムのNo.711において、得られる光学フィルムの膜厚が40μm、幅は1480mmになるように流延、乾燥し、本発明の光学フィルムのNo.811を作製した。この光学フィルムのNo.811において、添加剤の種類と添加量を後述の表6に記載のように変更した以外は光学フィルムのNo.811と同様にして、光学フィルムのNo.812〜815をそれぞれ作製した。
【0303】
〔フィルム硬度および光によるフィルム着色の耐久性(経時着色)の評価〕
このようにして作製した各光学フィルムを実施例4と同様の評価方法と評価基準で評価した。
【0304】
<偏光板の作製>
上記で作製した本発明の光学フィルムのNo.701〜705、711〜715、801〜805、811〜815および比較の光学フィルムのNo.c71〜c73、c81〜c83の各光学フィルムからなる各偏光板保護フィルムを、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥し、鹸化処理した各偏光板保護フィルムを作製した。
【0305】
(偏光板の作製)
鹸化処理した上記の各偏光板保護フィルムを使用した以外は、実施例2と同様にして、本発明の光学フィルムのNo.701〜705、711〜715、801〜805、811〜815および比較の光学フィルムのNo.c71〜c73、c81〜c83に対応する偏光板を作製した。
【0306】
〔偏光板耐久性の評価〕
偏光板耐久性試験は偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けた形態で次のように行った。
ガラスの上に偏光板を本発明の光学フィルムが空気界面側になるように貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作製する。単板直交透過率測定ではこのサンプルのフィルムの本発明の光学フィルムの側を光源に向けてセットして測定する。2つのサンプルをそれぞれ測定し、その平均値を本発明の偏光板の直交透過率とした。偏光板の直交透過率は、日本分光(株)製、自動偏光フィルム測定装置VAP−7070を用いて380nm〜780nmの範囲で測定し、410nmにおける測定値を採用した。その後、下記条件にて経時保存した後に同様の方法で直交透過率を測定した。経時前後の直交透過率の変化を求め、これを偏光板耐久性として下記基準で評価した。
なお、調湿なしの環境下での相対湿度は、0〜20%の範囲であった。
【0307】
光学フィルムのNo.701〜705、711〜715およびc71〜c73に対応する偏光板の経時条件と評価条件
【0308】
−経時条件−
60℃、相対湿度95%の環境下で500時間
【0309】
A+:経時前後の直交透過率の変化が0.8%未満
A :経時前後の直交透過率の変化が0.8%以上1.0%未満
B :経時前後の直交透過率の変化が1.0%以上1.2%未満
C :経時前後の直交透過率の変化が1.2%以上
【0310】
光学フィルムのNo.801〜805、811〜815およびc.81〜c.83に対応する偏光板の経時条件と評価条件
【0311】
−経時条件−
60℃、相対湿度95%の環境下で500時間
【0312】
A+:経時前後の直交透過率の変化が0.6%未満
A :経時前後の直交透過率の変化が0.6%以上0.7%未満
B :経時前後の直交透過率の変化が0.7%以上0.8%未満
C :経時前後の直交透過率の変化が0.8%以上
【0313】
得られた結果を、まとめて下記表6に示す。
【0314】
【表6】
【0315】
上記表6から明らかなように、本発明の一般式(I)で表される化合物を含有する本発明の光学フィルムである偏光板保護フィルムは、添加剤を加えずに作製した光学フィルムのNo.c73、c83と比べて、いずれも経時での偏光板耐久性に優れ、偏光子の劣化を効果的に抑制しうるものであることがわかった。これに加えて、本発明の光学フィルムである偏光板保護フィルムは、いずれも光による経時着色が少なかった。
【0316】
これに対し、上記の比較化合物R−1やR−2を含む光学フィルムである偏光板保護フィルムでは、偏光板耐久性または光による経時着色抑制の改良効果が得られなかった。
【0317】
本発明の一般式(I)で表される化合物も比較の化合物も含まない比較の光学フィルムである偏光板保護フィルムのNo.c73およびc83では、いずれも、本発明の光学フィルムである偏光板保護フィルムと比較して、偏光板耐久性において劣った。
この結果、本発明の偏光板を使用することで、以上に示したような優れた性能の液晶表示装置が作製できる。
【0318】
実施例8
(一般式(A)で表される化合物との併用)
実施例7と同様にして一般式(I)で表される化合物の種類と添加量を下記表7のように変更し、さらに一般式(A)で表される化合物やその他の添加剤を下表7のように加えた。それ以外は実施例7と同様にして、本発明の光学フィルムのNo.901〜917を作製し、下記の条件で、偏光板の耐久性を評価した。
【0319】
−経時条件−
60℃、相対湿度95%の環境下で500時間
【0320】
A++:経時前後の直交透過率の変化が0.7%未満
A+ :経時前後の直交透過率の変化が0.7%以上0.8%未満
A :経時前後の直交透過率の変化が0.8%以上1.0%未満
B :経時前後の直交透過率の変化が1.0%以上1.2%未満
C :経時前後の直交透過率の変化が1.2%以上
【0321】
得られた結果を、下記表7にまとめて示す。
【0322】
【表7】
【0323】
なお、上記表7で新たに使用した素材は、下記の通りである。
【0324】
IRGANOX(登録商標)1010:BASF社製
レダクトンL:6−O−パルミトイル−L−アスコルビン酸(東京化成工業(株)社製)
TINUVIN(登録商標)123:BASF社製
キレストPH−540:キレスト(株)社製
テークランDO:ナガセケムテックス(株)社製
ポエムK−37V:理研ビタミン(株)社製
エポミンPP−061:(株)日本触媒社製
【0325】
なお、上記表7では、IRGANOX(登録商標)1010は、IRGANOX1010、TINUVIN(登録商標)123は、TINUVIN123として記載している。
【0326】
上記表7から明らかなように、本発明の一般式(I)で表される化合物と一般式(A)で表される化合物を併用することで偏光子耐久性がさらに良化することがわかった。
この結果、本発明の偏光板を使用することで、以上に示したような優れた性能の液晶表示装置が作製できる。