(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光学フィルムが、少なくとも2層からなり、前記セルロースアシレートおよび少なくとも1種の前記一般式(I)で表される化合物を含む層に、さらにハードコート層を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について、実施の形態を挙げて詳細に説明する。
【0028】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、セルロースアシレートおよび少なくとも1種の一般式(I)で表される化合物を含有する少なくとも1層のセルロースアシレートフィルムからなる。また、光学フィルムは、複数の層で構成されていてもよいが、一般式(I)で表される化合物はいずれの層に含まれていてもよく、全ての層に含まれていてもよい。
【0029】
ここで、セルロースアシレートフィルムもしくは層とは、フィルムもしくは層を構成する樹脂成分において、セルロースアシレートが50質量%以上含有されているものを意味し、樹脂成分中のセルロースアシレートの含有量は60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、85質量%がなかでも好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が最も好ましい。
【0030】
一方、本発明の光学フィルムは、上記のようなセルロースアシレートフィルム以外に、樹脂成分として、セルロースアシレートを含まないか、含んだとしても樹脂成分全体の50質量%未満の層とともに複層構成を形成していてもよい。このような層としては、特定の機能に特化した層が挙げられ、例えばハードコート層などが挙げられる。
ハードコート層以外には、例えば、防眩層、クリアハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防汚層等が挙げられる。これらの層は、ハードコート層上に設けるのが本発明においては好ましい態様である。
【0031】
本発明の光学フィルムは、偏光板保護フィルム、画像表示面に配置される表面保護フィルム等種々の用途に有用である。
【0032】
<<セルロースアシレートフィルム>>
本発明において、セルロースアシレートフィルムは上記のように、樹脂構成成分に占めるセルロースアシレートの割合が50質量%以上のフィルムからなるもので、本発明における狭義の光学フィルムである。
セルロースアシレートフィルムは、単層であっても、2層以上の積層体であってもよい。ただし、ここでの層は上述したような機能層を含まず、樹脂成分全体に対してセルロースアシレートを50質量%以上含む層を意味する。セルロースアシレートフィルムが2層以上の積層体である場合は、2層構造または3層構造であることがより好ましく、3層構造であることが好ましい。3層構造の場合は、1層のコア層(すなわち、最も厚い層であり、以下、基層とも言う)と、コア層を挟むスキン層Aおよびスキン層Bとを有することが好ましい。すなわち、本発明のセルロースアシレートフィルムはスキン層B/コア層/スキン層Aの3層構造であることが好ましい。このような積層体は後述する共流延など、各種公知の流延法によって製造することができる。スキン層Bは、セルロースアシレートフィルムが溶液製膜で製造される際に、後述する金属支持体と接する層であり、スキン層Aは金属支持体とは逆側の空気界面の層である。なお、スキン層Aとスキン層Bを総称してスキン層(または表層)とも言う。
【0033】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、各層中におけるセルロースアシレートのアシル置換度は均一であっても、複数のセルロースアシレートを一つの層に混在させてもよい。ただし、各層中におけるセルロースアシレートのアシル置換度は全て一定であることが光学特性の調整の観点から好ましい。また、本発明のセルロースアシレートフィルムが3層構造であるとき、両面の表面層に含まれるセルロースアシレートは同じアシル置換度のセルロースアシレートを用いることが、製造コストの観点から好ましい。
【0034】
本発明において、セルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートと少なくとの1種の下記一般式(I)で表される化合物を含有する。
【0037】
一般式(I)において、R
1は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を表す。R
2はアルキル基またはアリール基を表す。Lは単結合または2価以上の連結基を表し、nはLが単結合の場合は1であり、Lが2価以上の連結基の場合は、Lの価数−1の整数である。sおよびtは各々独立に、1、2または3を表す。Xは−O−または−N(Ra)−を表す。ここで、Raは水素原子またはアルキル基を表す。
【0038】
R
1におけるアルキル基は、炭素数が1〜30が好ましく、1〜24がより好ましく、1〜20がさらに好ましい。
R
1におけるアルケニル基は、炭素数が2〜30が好ましく、2〜24がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。
R
1におけるアリール基は、炭素数が6〜30が好ましく、6〜24がより好ましく、6〜20がさらに好ましい。
R
1におけるヘテロ環基は、5または6員環が好ましく、この環はベンゼン環が縮環していてもよい。またヘテロ環を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選択された原子が好ましく、芳香環であっても芳香環でない不飽和環であっても、飽和環であっても構わない。ヘテロ環の炭素数は、0〜30が好ましく、1〜24がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。
【0039】
R
1におけるアシル基は、アリールカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、ホルミル基のいずれであってもよく、炭素数は1〜30が好ましく、2〜24がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。
R
1におけるアルコキシカルボニル基の炭素数は2〜30が好ましく、2〜24がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。
R
1におけるカルバモイル基は、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基のいずれであってもよく、炭素数は1〜30が好ましく、2〜24がより好ましく、2〜20がさらに好ましい。
R
1におけるアルキルスルホニル基は、炭素数が1〜30が好ましく、1〜24がより好ましく、1〜20がさらに好ましい。
R
1におけるアリールスルホニル基は、炭素数が6〜30が好ましく、6〜24がより好ましく、6〜20がさらに好ましい。
【0040】
R
1における上記各基は置換基を有していてもよい。
このような置換基としては、特に制限はなく、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20で、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数0〜20のヘテロ環基で、環構成ヘテロ原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子が好ましく、5または6員環でベンゼン環やヘテロ環で縮環していてもよく、この環が飽和環、不飽和環、芳香環であってもよく、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、
【0041】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、スルホニル基(好ましくはアルキルもしくはアリールのスルホニル基で、炭素数は1〜20が好ましく、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、炭素数は20以下が好ましく、例えば、アセチル、ピバロイル、アクリロイル、メタクロロイル、ベンゾイル、ニコチノイル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20で、例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは炭素数0〜20で、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ、1−ピロリジニル、ピペリジノ、モルホニル等)、スルホンアミド基(好ましくはアルキルもしくはアリールのスルホンアミド基で、炭素数は0〜20が好ましく、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、スルファモイル基(好ましくはアルキルもしくはアリールのスルファモイル基で、炭素数は0〜20が好ましく、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくはアルキルもしくはアリールのカルバモイル基で、炭素数は1〜20が好ましく、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルアミノ、アクリロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ニコチンアミド等)、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基またはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
【0042】
上記の置換基は、さらに上記の置換基で置換されていてもよい。例えば、トリフルオロメチルのようなパーフルオロアルキル基、アラルキル基、アシル基が置換したアルキル基などが挙げられる。
なお、これらの置換基は、R
1、R
3、R
5、Ra各基が有してもよい置換基のみでなく、Lを含め、本明細書に記載の他の化合物における置換基にも適用される。
【0043】
R
1における上記各基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましい。
R
2、Raにおけるアルキル基は、R
1におけるアルキル基と好ましい範囲は同じであり、R
2におけるアリール基は、R
1におけるアリール基と好ましい範囲は同じである。
【0044】
Lは、単結合または2価以上の連結基を表すが、2価以上の連結基としては、2価のアルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−もしくはこれらが組み合わされた基が好ましく、3価の基としては、アルカントリイル基、アレーントリイル基、−N<が挙げられ、さらに上記の2価の連結基がこれらに組み合わされてもよい。
4価の基としては、アルカンテトライル基、アレーンテトライル基が挙げられる。
Lにおける2価以上の連結基は、置換基を有していてもよい。
【0045】
Lは、単結合、2〜3価の連結基が好ましく、単結合、アルキレン基またはアルカントリイル基がより好ましく、アルキレン基、アルカントリイル基がさらに好ましい。
ここで、アルキレン基は、炭素数1〜6が好ましく、1〜4が好ましく、1または2がさらに好ましく、1が中でも好ましい。具体的にはエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。
Lがアルキレン基の場合、R
1はアシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基が好ましく、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基がより好ましい。
【0046】
アルカントリイル基は、メチリデン基も含み、エタン−1,2,2−トリイル基、プロパン−1,3,3−トリイル基、ブタン−1,4−トリイル基が挙げられ、Lがアルカントリイル基の場合、R
1は水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
Lが単結合の場合、R
1はアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基が好ましく、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基がより好ましい。
【0047】
nはLが単結合の場合は1であり、Lが2価以上の連結基の場合は、Lの価数−1の整数である。すなわち、Lが2価の場合、nは1であり、Lが3価の場合、nは2である。
【0048】
sおよびtは、1または2が好ましく、1がなかでも好ましい。また、sとtがともに同じ整数であるものが好ましい。
【0049】
Xは−O−または−N(Ra)−を表すが、−O−が好ましい。
【0050】
R
2は、アリール基またはシクロアルキル基が置換してもよいアルキル基が好ましく、なかでも下記一般式(1)または(2)が好ましい。
【0052】
一般式(1)、(2)において、lは1〜5の整数を表し、Cy、Cy
1およびCy
2は各々独立にアリール基またはシクロアルキル基を表す。
【0053】
lは、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
Cy、Cy
1およびCy
2はフェニル基またはシクロヘキシル基が好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0054】
一般式(I)で表される化合物は、分子中に、環状の基もしくは環状の部分構造を1〜5個有するのが好ましく、1〜4個有するのがより好ましく、2〜4個有するのがさらに好ましく、2個有するのが特に好ましい。環状の基もしくは環状の部分構造における環状の基は、アレーン環、シクロアルキル環が好ましく、ベンゼン環、シクロヘキサン環がより好ましい。
【0055】
一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(II)で表される化合物が好ましい。
【0057】
一般式(II)において、R
2、X、sおよびtは、一般式(I)におけるR
2、X、sおよびtと同義であり、好ましい範囲も同じである。
uは1、2または3を表し、好ましい範囲はsおよびtと同じである。
R
3はR
2と同義であり、好ましい範囲も同じである。YはXと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0058】
一般式(I)で表される化合物の分子量は、250〜800が好ましく、330〜650がより好ましい。
また、一般式(I)で表される化合物の25℃における、THF/H
20=6/4の体積比の混合溶媒中でのpKaが、5.5を超えるものが好ましく、5.5を超え7.0未満、好ましくは6.5未満が好ましい。
カルボキシ基とアミノ基の1分子中における存在比率を調整することでこのような値とすることが可能となる。pKaを調製した一般式(I)で表される化合物を光学フィルムに組み込むことで、偏光子耐久性改良効果、ヘイズ抑制効果がより優れたものとなる。さらに、セルロースアシレートフィルムの光照射下での着色抑制や、ハードコート層などを設けた場合の密着性の改善効果も得ることができる。詳細な機構は定かではないが、本発明者らは、経時で、カルボキシ基が生じるカルボキシ基のプレカーサーを組み込むことが起因していると考えている。
【0059】
以下に、本発明の一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、例えば、モノエステル体を経由する方法で合成することができる。
【0066】
一般式(I)で表される化合物の、光学フィルム中の含有量は特に限定されないが、セルロースアシレート100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜15質量部がより好ましく、0.5〜10質量部がさらに好ましく、1.0〜5質量部が特に好ましい。
このような含有量とすることで、本発明の効果である偏光子耐久性およびヘイズ上昇の抑制効果が十分に発現することとなる。
また、光学フィルム中に一般式(I)で表される化合物を2種類以上含有させる場合も、その合計量が、上記の範囲内であることが好ましい。
【0067】
<セルロースアシレート>
本発明において、セルロースアシレートフィルムの主成分となるセルロースアシレートは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。例えば、セルロースアシレートは、アシル置換基としてアセチル基のみからなるセルロースアセテートであっても、複数の異なったアシル置換基を有するセルロースアシレートを用いてもよく、異なったセルロースアシレートの混合物であってもよい。
【0068】
本発明で使用されるセルロースアシレートの原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。原料セルロースは、例えば、丸澤、宇田著,「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」,日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0069】
本発明では、セルロースアシレートのアシル基は、1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。本発明で使用されるセルロースアシレートは、炭素数2以上のアシル基を置換基として有することが好ましい。炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族のアシル基でも芳香族のアシル基でもよく、特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基あるいは芳香族カルボニル基、芳香族アルキルカルボニル基などであり、それぞれ、さらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、イソブタノイル、tert−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが挙げられる。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル基、ドデカノイル、オクタデカノイル、tert−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、さらに好ましくはアセチル、プロピオニル、ブタノイルである。
【0070】
本発明で使用されるセルロースアシレートは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのうち1種類がアセチル基が好ましく、残りのアシル基は、プロピオニル基またはブチリル基が好ましい。これらのセルロースアシレートを用いることにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性のよい溶液の作製が可能となる。
本発明では、特に、セルロースアシレートのアシル基はアセチル基1種であるものが、一般式(I)で表される化合物による偏光子耐久性の改善効果に優れる点で、好ましい。
【0071】
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離のヒドロキシ基を有している。セルロースアシレートは、これらのヒドロキシ基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。
アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースのヒドロキシ基のアシル化の度合いを示すものであり、全てのグルコース単位の2位、3位および6位のヒドロキシ基がいずれもアシル化された場合、総アシル置換度は3である。例えば、全てのグルコース単位で、6位のみが全てアシル化された場合、総アシル置換度は1である。同様に、全グルコースの全ヒドロキシ基において、各々のグルコース単位で、6位か、2位のいずれか一方の全てがアシル化された場合も、総アシル置換度は1である。
すなわち、グルコース分子中の全ヒドロキシ基が全てアシル化された場合を3として、アシル化の度合いを示すものである。
アシル置換度の測定方法の詳細については、手塚他,Carbohydrate.Res.,273,83−91(1995)に記載の方法やASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。
【0072】
本発明で使用するセルロースアシレートの総アシル置換度Aは、1.5以上3.0以下(1.5≦A≦3.0)が好ましく、2.00〜2.97がより好ましく、2.50以上2.97未満がさらに好ましく、2.70〜2.95が特に好ましい。
【0073】
また、セルロースアシレートのアシル基としてアセチル基のみを用いたセルロースアセテートにおいては、総アセチル置換度Bは、2.0以上3以下(2.0≦B≦3.0)が好ましく、2.0〜2.97がより好ましく、2.5以上2.97未満がさらに好ましく、2.55以上2.97未満がなかでも好ましく、2,60〜2.96が特に好ましく、2.70〜2.95であることが最も好ましい。
なお、本発明の一般式(I)で表される化合物は、総アセチル置換度Bが2.50を超えたセルロースアシレートに対して、特に効果が発現される。
【0074】
本発明の光学フィルムのセルロースアシレートフィルムが積層体(複層構成)である場合、セルロースアシレートフィルムは、各層中におけるセルロースアシレートのアシル基置換度は均一であっても、複数のセルロースアシレートを一つの層に混在させてもよい。
【0075】
セルロースのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、メチレンクロライドや有機酸、例えば、酢酸等が使用される。
【0076】
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH
3CH
2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
【0077】
最も一般的なセルロースの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
【0078】
セルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
【0079】
本発明のフィルム、特に本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムは、全固形分中、セルロースアシレートを5〜99質量%含むことが透湿度の観点から好ましく、20〜99質量%含むことがより好ましく、50〜95質量%含むことが特に好ましい。
【0080】
<その他の添加剤>
本発明の光学フィルム中、特にセルロースアシレートフィルム中には、レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤)や、可塑剤として、重縮合エステル化合物(ポリマー)、多価アルコールの多価エステル、フタル酸エステル、リン酸エステルなど、さらには、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤などの添加剤を加えることもできる。
なお、本明細書では、化合物群を標記するのに、例えば、リン酸エステル系化合物のように、「系」を組み込んで記載することがあるが、これは、上記の場合、リン酸エステル化合物と同じ意味である。
【0081】
(レターデーション低減剤)
本発明ではレターデーション低減剤として、リン酸エステル系化合物や、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の非リン酸エステル系の化合物以外の化合物を広く採用することができる。
【0082】
高分子レターデーション低減剤としては、リン酸ポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびアクリル系ポリマーおよびこれらの共重合体から選択されたポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーがより好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含有することが好ましい。
【0083】
非リン酸エステル系化合物以外の化合物の低分子量レターデーション低減剤は、以下の化合物を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。赤外吸収染料としては、例えば特開2001−194522号公報に記載されているものが好ましい。
これらを添加する時期は、セルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程のどの工程でもよい。また、ドープ調製工程の最後の調製工程に、添加剤を添加して調製する工程を新たに加えてもよい。
各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
【0084】
非リン酸エステル系化合物以外の化合物の低分子量レターデーション低減剤は、特に限定されないが、詳細は特開2007−272177号公報の段落番号0066〜0085に記載されている。
【0085】
特開2007−272177号公報の段落番号0066〜0085に記載の一般式(1)で表される化合物は、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。
【0086】
特開2007−272177号公報に記載の一般式(2)で表される化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、またはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
【0087】
レターデーション低減剤は、Rth低減剤であることが好適なNzファクターを実現する観点から、より好ましい。ここで、Rthとは、セルロースアシレートフィルムの膜厚方向のレターデーションを意味する。レターデーション低減剤のうち、Rth低減剤としては、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマー、特開2007−272177号公報に記載の一般式(3)〜(7)で表される低分子化合物などを挙げることができる。これらの中でもアクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましく、アクリル系ポリマーがより好ましい。
【0088】
レターデーション低減剤は、セルロース系樹脂に対し、0.01〜30質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜20質量%の割合で添加することがより好ましく、0.1〜10質量%の割合で添加することが特に好ましい。添加量を30質量%以下とすることにより、セルロース系樹脂との相溶性を向上させることができ、透明性に優れたフィルムを作製することができる。2種類以上のレターデーション低減剤を用いる場合、その合計量が、上記範囲内であることが好ましい。
【0089】
(レターデーション発現剤)
本発明の光学フィルムは、レターデーション値を発現するために、少なくとも1種のレターデーション発現剤を含有してもよい。
レターデーション発現剤としては、特に制限はないが、棒状または円盤状化合物からなるものや、上記非リン酸エステル系の化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。棒状または円盤状化合物では、少なくとも二つの芳香環を有する化合物がレターデーション発現剤として好ましい。
【0090】
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましい。
【0091】
円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。また、2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
レターデーション発現剤の詳細は公開技報2001−1745の49頁に記載されている。
円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がさらに好ましい。
【0092】
〔可塑剤(疎水化剤)〕
光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムでは、可塑剤をセルロースアシレートに含有させると、セルロースアシレートフィルムの含水率や透湿度が低下し、セルロースアシレートフィルム中の水分によるセルロースアシレートの加水分解反応が抑制される。さらに、可塑剤は、高温高湿条件下におけるセルロースアシレートフィルム中から偏光子層への添加剤の拡散を抑制し、偏光子性能の劣化を改良することができる。
【0093】
本発明の一般式(I)で表される化合物は、光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムに含有させることにより、可塑剤としても用いることができる。すなわち、前述したようなガラス転移温度の制御、含水率および透湿度の低減を含めた耐久性の改善効果が得られる他、同時にセルロースアシレートフィルムの偏光子耐久性をも高めることができる。さらに、本発明の一般式(I)で表される化合物は、他の汎用されている可塑剤と併用した場合であっても偏光子耐久性向上効果を奏することができる。このため、複数の可塑剤を併用して光学フィルム、セルロースアシレートフィルム中に含有させてもよい。
【0094】
本発明においては、併用する可塑剤の中でも、分子内で位置的にエステル基が接近して詰まっている多エステル系の可塑剤が好ましい。多エステル系の可塑剤として、具体的には、重縮合エステル化合物(以後、重縮合エステル系可塑剤と称す。)、多価アルコールの多価エステル化合物(以後、多価アルコールエステル系可塑剤と称す。)および炭水化物化合物(以後、炭水化物誘導体系可塑剤と称す。)が挙げられ、本発明において、これらの化合物は、上述したような可塑剤効果の発現に優れている。
以下に本発明に用いられる可塑剤について説明する。
【0095】
(重縮合エステル系可塑剤)
重縮合エステル系可塑剤は、2価のカルボン酸化合物とジオール化合物を重縮合して得られる。
重縮合エステル系可塑剤は、下記一般式(a)で表される少なくとも1種のジカルボン酸および下記一般式(b)で表される少なくとも1種のジオールを重縮合して得られるものが好ましい。
【0097】
一般式(a)、(b)中、Xaは2価の炭素数2〜18の脂肪族基、2価の炭素数6〜18の芳香族基または炭素数2〜18の2価のヘテロ環を表し、Zは2価の炭素数2〜8の脂肪族基を表す。ここで、2価の炭素数2〜8の脂肪族基は直鎖でも分岐であってもよい。
【0098】
一般式(a)で表される2価のカルボン酸化合物は、上記のような脂肪族のカルボン酸、芳香族またはヘテロ環のカルボン酸が挙げられ、好ましくは、脂肪族のカルボン酸または芳香族のカルボン酸である。
一方、ジオール化合物も、上記一般式(b)で表される脂肪族化合物以外にも、芳香族もしくはヘテロ環の化合物が挙げられる。
【0099】
この中でも、少なくとも一種の芳香環を有するジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸とも呼ぶ)と少なくとも一種の平均炭素数が2.5〜8.0の脂肪族ジオールとから得られるものが好ましい。また、芳香族ジカルボン酸と少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸との混合物、と少なくとも一種の平均炭素数が2.5〜8.0の脂肪族ジオールとから得られるものも好ましい。
【0100】
重縮合エステル系可塑剤の数平均分子量は、500〜2000が好ましく、600〜1500がより好ましく、600〜1200がさらに好ましい。重縮合エステルの数平均分子量は600以上であれば揮発性が低くなり、セルロースアシレートフィルムの延伸時の高温条件下における揮散によるフィルム故障や工程汚染の抑制に優れる。
また、数平均分子量が2000以下であればセルロースアシレートとの相溶性が高くなり、製膜時および加熱延伸時のブリードアウトの抑制に優れる。
【0101】
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物をジカルボン酸成分として用いる場合は、ジカルボン酸成分の炭素数の平均が5.5〜10.0のジカルボン酸が好ましく、より好ましくは5.6〜8.0である。
炭素数の平均が5.5以上であれば耐久性に優れた偏光板を得ることができる。炭素数の平均が10以下であればセルロースアシレートへの相溶性に優れ、セルロースアシレートフィルムの製膜過程でブリードアウトの抑制に優れる。
【0102】
重縮合エステル系可塑剤の合成に用いることができる芳香族ジカルボン酸は、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。その中でもフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、フタル酸、テレフタル酸がより好ましく、テレフタル酸がさらに好ましい。
ジオール化合物と、脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルには、脂肪族ジカルボン酸残基が含まれる。
重縮合エステル系可塑剤を合成する脂肪族ジカルボン酸は、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合エステル系可塑剤を合成するジオールとしては、芳香族ジオールおよび脂肪族ジオールが挙げられ、本発明においては、少なくとも脂肪族ジオールを用いて合成されることが好ましい。
【0103】
重縮合エステル系可塑剤は、平均炭素数が2.5〜7.0の脂肪族ジオール残基を含むことが好ましく、より好ましくは平均炭素数が2.5〜4.0の脂肪族ジオール残基を含む。
脂肪族ジオール残基の平均炭素数が7.0より小さいとセルロースアシレートとの相溶性が改善され、ブリードアウト、化合物の加熱減量の増大、およびセルロースアシレートウェブ乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生の抑制に優れる。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.5以上であれば合成が容易である。
【0104】
重縮合エステル系可塑剤を合成するために用いる脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールまたは脂環式ジオール類が好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、および1,3−プロパンジオールのうちの少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコールおよび1,2−プロパンジオールのうちの少なくとも1種である。
【0105】
重縮合エステル系可塑剤の末端は、封止せずにジオールもしくはカルボン酸のまま(すなわち、すなわち、ポリマー鎖長末端が−OHまたはCO
2H)としてもよく、さらにモノカルボン酸類またはモノアルコール類を反応させて、いわゆる末端の封止を実施してもよい。なお、重縮合エステル系可塑剤の末端を封止することで、常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となり、また湿度安定性、偏光子耐久性に優れたセルロースアシレートフィルムを得ることができるという効果が得られる。
重縮合エステル系可塑剤は、特開2012−234159号公報の段落番号0062〜0064に記載されているJ−1〜J−38が好ましい。
【0106】
(多価アルコールエステル系可塑剤)
本発明に用いられる多価アルコールエステル系可塑剤は、アルコール部が2個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールから導かれるエステルであり、アルコール部のアルコールとしては、ヒドロキシ基以外の部分が、エーテル結合を介して分断されてもよい飽和炭化水素にヒドロキシ基が2個以上置換したアルコールが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤の原料の多価アルコールは下記一般式(c)で表される。
【0108】
一般式(c)中、Rαはm価の有機基を表し、mは2以上の整数を表す。
【0109】
多価アルコールの炭素数は、5以上が好ましく、5〜20がより好ましい。
このような多価アルコールとしては、糖アルコールやグリコール類が挙げられる。
具体的には、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0110】
多価アルコールエステルの酸部(エステルのアシル部)は、モノカルボン酸から誘導される酸部が好ましく、このような酸としては、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸が挙げられる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0111】
脂肪族モノカルボン酸は、炭素数が、1〜32が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10が特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロース誘導体との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0112】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げられる。
【0113】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げられる。
【0114】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体が挙げられ、特に安息香酸が好ましい。
【0115】
多価アルコールエステル系可塑剤の分子量は特に制限はないが、300〜3000が好ましく、350〜1500がさらに好ましい。分子量が大きい方が光学フィルムからの揮散抑制に優れるため好ましく、透湿性、セルロース誘導体との相溶性の点では分子量は小さい方が好ましい。
【0116】
多価アルコールエステル系可塑剤は、例えば、特開2012−234159号公報の段落番号0045〜0049に記載の化合物が好ましく、本明細書の一部として好ましく取り込まれる。
【0117】
(炭水化物誘導体系可塑剤)
炭水化物誘導体系可塑剤としては、単糖あるいは2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の誘導体、中でもアシル化されたものが好ましい。
【0118】
単糖または2〜10個の単糖単位を含む炭水化物の好ましい例としては、例えば、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
【0119】
炭水化物誘導体系可塑剤の好ましい例としては、マルトースオクタアセテート、セロビオースオクタアセテート、スクロースオクタアセテート、キシローステトラプロピオネート、グルコースペンタプロピオネート、フルクトースペンタプロピオネート、マンノースペンタプロピオネート、ガラクトースペンタプロピオネート、マルトースオクタプロピオネート、セロビオースオクタプロピオネート、スクロースオクタプロピオネート、キシローステトラベンゾエート、グルコースペンタベンゾエート、フルクトースペンタベンゾエート、マンノースペンタベンゾエート、ガラクトースペンタベンゾエート、マルトースオクタベンゾエート、セロビオースオクタベンゾエート、スクロースオクタベンゾエート、キシリトールペンタベンゾエート、ソルビトールヘキサベンゾエートなどが特に好ましい。
炭水化物誘導体系可塑剤はピラノース構造あるいはフラノース構造を有することが好ましい。
【0120】
炭水化物誘導体系可塑剤としては、特開2012−234159号公報の段落番号0030〜0039に記載されている化合物が好ましい。
なお、本発明では、可塑剤は、特開2012−234159号公報の段落番号0026〜0068に記載の内容が好ましく適用され、これらの段落番号に記載の内容は、本明細書の一部に、好ましく取り込まれる。
【0121】
これらの可塑剤の添加量は、セルロースアシレートに対して1〜20質量%が好ましい。1質量%以上であれば、偏光子耐久性改良効果が得られやすく、また20質量%以下であれば、ブリードアウトも発生しにくい。さらに好ましい添加量は2〜15質量%であり、特に好ましくは5〜15質量%である。なお、これらの可塑剤は2種類以上添加しても良い。2種類以上添加する場合も、添加量の具体例および好ましい範囲は上記と同一である。
【0122】
これらの可塑剤をセルロースアシレートフィルムに添加するタイミングは、製膜される時点で添加されていれば特に限定されない。例えば、セルロースアシレートの合成時点で添加してもよいし、ドープ調製時にセルロースアシレートと混合してもよい。
【0123】
(酸化防止剤)
本発明の光学フィルムは、酸化防止剤を含むことが好ましい。この酸化防止剤はセルロースアシレート溶液に添加されることができる。本発明において、公知の酸化防止剤、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4,4'−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤を用いることが好ましい。
酸化防止剤の添加量は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.05〜5.0質量部が好ましい。
【0124】
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルムは、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。この紫外線吸収剤はセルロースアシレート溶液に添加されることができる。本発明において、紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤は、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
【0125】
ヒンダードフェノール系化合物は、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0126】
ベンゾトリアゾール系化合物は、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートフィルムの全固形分中に質量割合で1〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
【0127】
(マット剤)
本発明の光学フィルムは、フィルムのすべり性、および安定製造の観点からマット剤を加えてもよい。マット剤は、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
無機化合物のマット剤は、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリンおよびリン酸カルシウム等が好ましく、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムがより好ましい。このうち、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できることから、二酸化ケイ素が特に好ましい。
【0128】
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
有機化合物のマット剤は、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂およびアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120およびトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0129】
これらのマット剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法に限定されず、いずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。
さらには、ドープを流延する直前に添加混合(いわゆる直前添加方法)してもよい。直前添加方法での混合は、スクリュー式混練をオンラインで設置して行われる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましく、また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなものが好ましい。
【0130】
なお、インライン添加に関しては、濃度ムラ、粒子の凝集等をなくすために、特開2003−053752号公報には、セルロースアシレートフィルムの製造方法において、主原料ドープに異なる組成の添加液を混合する添加ノズル先端とインラインミキサーの始端部の距離Lを、主原料配管内径dの5倍以下とすることで、濃度ムラ、マット粒子等の凝集をなくす方法が記載されている。さらに好ましい態様として、主原料ドープと異なる組成の添加液供給ノズルの先端開口部とインラインミキサーの始端部との間の距離(L)を、供給ノズル先端開口部の内径(d)の10倍以下とすること、インラインミキサーが、静的無攪拌型管内混合器または動的攪拌型管内混合器であること、が記載されている。具体的には、セルロースアシレートフィルム主原料ドープ/インライン添加液の流量比は、10/1〜500/1、好ましくは50/1〜200/1であることが記載されている。
特開2003−014933号公報には、添加剤ブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で、透明性に優れた位相差フィルムを作製することを目的とし、添加剤の添加方法が記載されている。これによれば、添加剤を溶解釜中に添加してもよいし、溶解釜〜共流延ダイまでの間で、添加剤や添加剤を溶解または分散した溶液を、送液中のドープに添加してもよいが、後者の場合は混合性を高めるため、スタチックミキサー等の混合手段を設けることが好ましいことが記載されている。
【0131】
マット剤は、0.05〜1.0質量%の割合でフィルム中に含有させることが特に好ましい。このような範囲とすることで、セルロースアシレートフィルムのヘイズが大きくならず、実際に液晶ディスプレイ(LCD)に使用した場合、コントラストの低下および輝点の発生等の不都合が抑制される。また、耐擦傷性を実現することができる。これらの観点から0.05〜1.0質量%の割合で含めることが特に好ましい。
【0132】
<セルロースアシレートフィルムの物性>
〔弾性率(引張り弾性率)〕
セルロースアシレートフィルムは実用上十分な弾性率(引張り弾性率)を示す。弾性率の範囲は特に限定されないが、製造適性およびハンドリング性という観点から1.0〜7.0GPaが好ましく、2.0〜6.5GPaがより好ましい。本発明の一般式(I)で表される化合物は、セルロースアシレートフィルム中に添加されることにより、セルロースアシレートフィルムを疎水化することで弾性率を向上させる作用があり、その点も本発明における利点である。
【0133】
(光弾性係数)
セルロースアシレートフィルムの光弾性係数の絶対値は、好ましくは8.0×10
−12m
2/N以下、より好ましくは6×10
−12m
2/N以下、さらに好ましくは5×10
−12m
2/N以下である。セルロースアシレートフィルムの光弾性係数を小さくすることにより、セルロースアシレートフィルムを含む本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿下におけるムラ発生を抑制できる。光弾性係数は、特に断らない限り、以下の方法により測定し算出するものとする。
光弾性率の下限値は特に限定されないが、0.1×10
−12m
2/N以上が実際的である。
【0134】
セルロースアシレートフィルムを3.5cm×12cmに切り出し、荷重なし、250g、500g、1000g、1500gのそれぞれの荷重における面内レターデーション(Re)をエリプソメーター(M150[商品名]、日本分光(株))で測定し、応力に対するRe変化の直線の傾きから算出することにより光弾性係数を測定する。
【0135】
(含水率)
セルロースアシレートフィルムの含水率は一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は上記の一定温湿度に24時間放置した後に、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
セルロースアシレートフィルムの25℃、相対湿度80%における含水率は5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下がさらに好ましく、3質量%未満がさらに好ましい。セルロースアシレートフィルムの含水率を小さくすることにより、セルロースアシレートフィルムを含む本発明の光学フィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高温高湿下における液晶表示装置の表示ムラの発生を抑制することができる。含水率の下限値は特に限定されないが、0.1質量%以上であることが実際的である。
【0136】
(透湿度)
セルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じ、温度40℃、相対湿度90%RHの雰囲気中、試料を24時間に通過する水蒸気の質量を測定し、試料面積1m
2あたりの24時間に通過する水蒸気の質量に換算することにより評価することができる。
セルロースアシレートフィルムの透湿度は、500〜2000g/m
2・dayが好ましく、900〜1300g/m
2・dayがより好ましく、1000〜1200g/m
2・dayが特に好ましい。
【0137】
(ヘイズ)
セルロースアシレートフィルムは、ヘイズが1%以下が好ましく、0.7%以下がより好ましく、0.5%以下が特に好ましい。ヘイズを上記上限値以下とすることにより、セルロースアシレートフィルムの透明性がより高くなり、光学フィルムとしてより用いやすくなるという利点がある。ヘイズは、特に断らない限り、下記方法により測定し算出するものとする。ヘイズの下限値は特に限定されないが、0.001%以上が実際的である。
セルロースアシレートフィルム40mm×80mmを、25℃、相対湿度60%の環境下で、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いて、JIS K7136に従って測定する。
【0138】
(膜厚)
セルロースアシレートフィルムの平均膜厚は、10〜100μmが好ましく、15〜80μmがより好ましく、15〜70μmがさらに好ましい。15μm以上とすることにより、ウェブ状のフィルムを作製する際のハンドリング性が向上し、好ましい。また、70μm以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性を維持しやすい。
セルロースアシレートフィルムが3層以上の積層構造を有する場合、コア層の膜厚は3〜70μmが好ましく、5〜60μmがより好ましく、スキン層Aおよびスキン層Bの膜厚は、ともに0.5〜20μmがより好ましく、0.5〜10μmが特に好ましく、0.5〜3μmが最も好ましい。
【0139】
(幅)
セルロースアシレートフィルムの幅は、700〜3000mmが好ましく、1000〜2800mmがより好ましく、1300〜2500mmが特に好ましい。
【0140】
<セルロースアシレートフィルムの製造方法>
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、溶融製膜法または溶液製膜法により製造することが好ましい。溶液製膜法(ソルベントキャスト法)による製造がより好ましい。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同第2,367,603号、同第2,492,078号、同第2,492,977号、同第2,492,978号、同第2,607,704号、同第2,739,069号および同第2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号および同第736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号および同62−115035号等の各公報を参考にすることができる。また、セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法および条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の各公報を参考にすることができる。
【0141】
(流延方法)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があり、本発明では、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があり、いずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルロースアシレート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
【0142】
・共流延
セルロースアシレートフィルムの形成においては共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、同時共流延法を用いることが、安定製造および生産コスト低減の観点から特に好ましい。
共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でもよい)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
【0143】
逐次流延法は、流延用支持体の上に、先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する。ここで、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層する。その後、適当な時期に支持体から剥ぎ取って乾燥し、セルロースアシレートフィルムを成形する流延法である。塗布法は、一般的には、コア層を溶液製膜法によりフィルム状に成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、コア層の片面ずつまたは両面同時に塗布液を、塗布・乾燥して積層構造のセルロースアシレートフィルムを成形する方法である。
【0144】
セルロースアシレートフィルムを製造するのに使用される、エンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基または2基以上設置される。好ましくは1基または2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるドープ(樹脂溶液)の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程の全ての溶液温度が同一でもよく、または工程の各所で異なっていてもよい。溶液温度が異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
また、上記金属支持体の材質については特に制限はないが、SUS製(例えば、SUS316)が好ましい。
【0145】
(剥離)
セルロースアシレートフィルムの製造方法は、上記ドープ膜を金属支持体から剥ぎ取る工程を含むことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの製造方法における剥離の方法については特に制限はなく、公知の方法でも剥離性を改善することができる。
【0146】
(延伸処理)
セルロースアシレートフィルムの製造方法では、製膜された延伸する工程を含むことが好ましい。セルロースアシレートフィルムの延伸方向はセルロースアシレートフィルム搬送方向(MD方向)と搬送方向に直交する方向(TD方向)のいずれでも好ましいが、セルロースアシレートフィルム搬送方向に直交する方向(TD方向)であることが、後に続く、セルロースアシレートフィルムを用いた偏光板加工プロセスの観点から特に好ましい。
【0147】
TD方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。MD方向の延伸の場合、例えば、セルロースアシレートフィルムの搬送ローラーの速度を調節して、セルロースアシレートフィルムの剥ぎ取り速度よりもセルロースアシレートフィルムの巻き取り速度の方を速くすることで、セルロースアシレートフィルムは延伸される。TD方向の延伸の場合、セルロースアシレートフィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもセルロースアシレートフィルムを延伸できる。セルロースアシレートフィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
【0148】
セルロースアシレートフィルムを偏光子の保護膜として使用する場合には、偏光板を斜めから見たときの光漏れを抑制するため、偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行である。このため、上記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状のセルロースアシレートフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、セルロースアシレートフィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従ってTD方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。
【0149】
TD方向の延伸は5〜100%の延伸が好ましく、より好ましくは5〜80%の延伸、特に好ましくは5〜40%の延伸である。なお、未延伸とは延伸が0%であることを意味する。延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には、残留溶媒を含んだ状態で延伸を行ってもよい。ここで、残留溶媒量=(残存揮発分質量/加熱処理後フィルム質量)×100%が、0.05〜50%の場合、好ましく延伸することができる。残留溶媒量が0.05〜5%の状態で5〜80%延伸を行うことが特に好ましい。
【0150】
(乾燥)
セルロースアシレートフィルムの製造方法では、セルロースアシレートフィルムを乾燥する工程と、乾燥後のセルロースアシレートフィルムをガラス転移温度(Tg)−10℃以上の温度で延伸する工程とを含むことが、レターデーション発現性の観点から好ましい。
【0151】
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラムまたはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラムまたはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラムまたはベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあり、本発明では、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何℃でもよい。しかしながら、乾燥を促進させたり、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用する溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。ただし、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0152】
セルロースアシレートフィルムの厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0153】
一方、セルロースアシレートフィルムの長さを、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましい。ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、1〜200μmがより好ましい。これは片押しであっても両押しであっても構わない。
【0154】
大画面用液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いる場合は、例えば、フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、本発明の偏光板保護フィルムには、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様のフィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様のフィルムも含まれる。後者の態様の偏光板保護フィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられた光学補償フィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
【0155】
<<ハードコート層>>
本発明の光学フィルムにおいて、セルロースアシレートフィルム上に所望により設けられるハードコート層は、本発明の光学フィルムに硬度や耐傷性を付与するための層である。例えば、塗布組成物をセルロースアシレートフィルム上に塗布し、硬化させることによって、本発明の一般式(I)で表される化合物と相俟ってセルロースアシレートフィルムと密着性の高いハードコート層を形成することができる。ハードコート層にフィラーや添加剤を加えることで、機械的、電気的、光学的な物理的な性能や撥水・撥油性などの化学的な性能をハードコート層自体に付与することもできる。ハードコート層の厚みは0.1〜6μmが好ましく、3〜6μmがさらに好ましい。このような範囲の薄いハードコート層を有することで、脆性やカール抑制などの物性改善、軽量化および製造コスト低減がなされたハードコート層を含む光学フィルムになる。
【0156】
ハードコート層は、硬化性組成物を硬化することで形成するのが好ましい。硬化性組成物は液状の塗布組成物として調製されるのが好ましい。塗布組成物の一例は、マトリックス形成バインダー用モノマーまたはオリゴマー、ポリマー類および有機溶媒を含有する。この塗布組成物を塗布後に硬化することでハードコート層を形成することができる。硬化には、架橋反応、または重合反応を利用することができる。
【0157】
(マトリックス形成バインダー用モノマーまたはオリゴマー)
利用可能なマトリックス形成バインダー用モノマーまたはオリゴマーの例には、電離放射線硬化性の多官能モノマーおよび多官能オリゴマーが含まれる。多官能モノマーや多官能オリゴマーは架橋反応、または、重合反応可能なモノマーであるのが好ましい。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線で重合するものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
【0158】
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等や、エポキシ系化合物等の開環重合型の重合性官能基が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0159】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;等が挙げられる。
【0160】
さらに、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類、イソシアヌル酸アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
【0161】
上記の中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーがより好ましい。
具体的には、(ジ)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、等が挙げられる。
【0162】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリレートまたはメタクリレート」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」を表す。
【0163】
さらに、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物などのオリゴマーまたはプレポリマー等も挙げられる。
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類の具体化合物としては、特開2007−256844号公報の段落番号0096等を参考にすることができる。
【0164】
ウレタン(メタ)アクリレート類としては、例えば、アルコール、ポリオール、および/またはヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有化合物類とイソシアネート類を反応させ、または必要によって、これらの反応によって得られたポリウレタン化合物を(メタ)アクリル酸でエステル化して得られるウレタン(メタ)アクリレート系化合物を挙げることができる。
具体的な化合物の具体例としては特開2007−256844号公報の段落番号0017等の記載を参考にすることができる。
【0165】
イソシアヌル酸(メタ)アクリレート類を利用すると、カールをより低減できるので好ましい。例えば、イソシアヌル酸ジアクリレート類、イソシアヌル酸トリアクリレート類が挙げられ、具体的な化合物の事例としては特開2007−256844号公報の段落番号0018〜0021等を参考にすることができる。
【0166】
ハードコート層には、さらに硬化による収縮低減のために、エポキシ系化合物を用いることができる。このようなエポキシ基を有するモノマー類としては、1分子中にエポキシ基を2基以上有するモノマーが用いられ、これらの例としては特開2004−264563号、同2004−264564号、同2005−37737号、同2005−37738号、同2005−140862号、同2005−140862号、同2005−140863号、同2002−322430号等の各公報に記載されているエポキシ系モノマー類が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレートのようなエポキシ系とアクリル系の両官能基を持つ化合物を用いることも好ましい。
【0167】
(高分子化合物)
ハードコート層は、高分子化合物を含有していてもよい。高分子化合物を添加することで、硬化収縮を小さくでき、また、樹脂粒子の分散安定性(凝集性)に関わる塗布液の粘度調整をより優位に行うことができる。これに加えて、乾燥過程での固化物の極性を制御して樹脂粒子の凝集挙動を変えたり、乾燥過程での乾燥ムラを減じたりすることもでき、好ましい。
【0168】
高分子化合物は、塗布液に添加する時点で既に重合体を形成している。このような高分子化合物としては、例えばセルロースエステル類(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースナイトレート等)、ウレタン類、ポリエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸メチル等)、ポリスチレン等の樹脂が好ましく用いられる。
【0169】
(硬化性組成物)
ハードコート層の形成に利用可能な硬化性組成物の一例は、(メタ)アクリレート系化合物を含む硬化性組成物である。硬化性組成物は、(メタ)アクリレート系化合物とともに、光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤を含有するのが好ましく、所望により、さらにフィラー、塗布助剤、その他の添加剤を含有していてもよい。硬化性組成物の硬化は、光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により重合反応を進行させることで実行できる。電離放射線硬化と熱硬化の双方を実行することもできる。光および熱重合開始剤としては市販の化合物を利用することができ、それらは、「最新UV硬化技術」(p.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)や、BASF(株)のカタログに記載されている。
【0170】
ハードコート層の形成に利用可能な硬化性組成物の他の例は、エポキシ系化合物を含む硬化性組成物である。硬化性組成物は、エポキシ系化合物とともに、光の作用によってカチオンを発生させる光酸発生剤を含有しているのが好ましく、所望により、さらにフィラー、塗布助剤、その他の添加剤を含有していてもよい。硬化性組成物の硬化は、光酸発生剤の存在下で、光照射により重合反応を進行させることで実行できる。光酸発生剤の例としては、トリアリールスルホニウム塩やジアリールヨードニウム塩などのイオン性の化合物やスルホン酸のニトロベンジルエステルなどの非イオン性の化合物等が挙げられ、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」ぶんしん出版社刊(1997)などに記載されている化合物等種々の公知の光酸発生剤が使用できる。
【0171】
また、(メタ)アクリレート系化合物とエポキシ系化合物を併用してもよく、その場合は、開始剤は、光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤を併用することが好ましい。
【0172】
ハードコート層の形成に特に好適な硬化性組成物は、後述する実施例にて用いられるように、(メタ)アクリレート系化合物を含有する組成物である。
【0173】
硬化性組成物は、塗布液として調製されるのが好ましい。塗布液は、上述の成分を有機溶媒に溶解および/または分散することで、調製することができる。
【0174】
(ハードコート層の性質)
本発明の光学フィルムのセルロースアシレートフィルム上に形成されるハードコート層は、セルロースアシレートフィルムと高い密着性を有している。特に、本発明の一般式(I)で表される化合物を含有するセルロースアシレートフィルム上に上述の好適な硬化性組成物で形成されたハードコート層は、その硬化性組成物が、本発明の一般式(I)で表される化合物と相俟って、セルロースアシレートフィルムとさらに高い密着性で形成される。従って、このようなセルロースアシレートフィルムおよびハードコート層を有する本発明の光学フィルムは、光照射等によってもセルロースアシレートフィルムとハードコート層との密着性を維持し、光耐久性に優れる。
【0175】
ハードコート層は、耐擦傷性に優れるのが好ましい。具体的には、耐擦傷性の指標となる鉛筆硬度試験を実施した場合に、3H以上を達成するのが好ましい。
【0176】
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光子と本発明の光学フィルムとを少なくとも有する。本発明の光学フィルムは光によるフィルムの着色抑制効果に優れるため、偏光板保護膜として用いることが好ましい。本発明の偏光板は、偏光子と、この偏光子の片面または両面に本発明の光学フィルムを有することが好ましい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明の光学フィルムを偏光板保護膜として用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明の光学フィルムのセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。セルロースアシレートフィルムの処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
【0177】
本発明の光学フィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明の光学フィルムの遅相軸が実質的に直交、平行または45°となるように貼り合せることが好ましい。本発明の液晶表示装置において、偏光板の透過軸と本発明の光学フィルムの遅相軸が実質的に直交であることが好ましい。ここで、実質的に直交および平行であるとは、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含む。例えば、平行、直交に関する厳密な角度から±10°未満の範囲内であることを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下が好ましく、3°以下がより好ましい。
偏光子層の透過軸と偏光板保護フィルムの遅相軸についての平行とは、偏光板保護フィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とが±10°の角度で交わっていることを意味する。この角度は、5°以内が好ましく、より好ましくは3°以内、さらに好ましくは1°以内、最も好ましくは0.5°以内である。
また、偏光子層の透過軸と偏光板保護フィルムの遅相軸についての直交とは、偏光板保護フィルムの主屈折率nxの方向と偏光板の透過軸の方向とが90°±10°の角度で交わっていることを意味する。この角度は、90°±5°が好ましく、より好ましくは90°±3°、さらに好ましくは90°±1°、最も好ましくは90°±0.5°である。上記範囲とすることで、偏光板クロスニコル下での光抜けをより低減することができる。遅相軸の測定は、公知の種々の方法で測定することができ、例えば、複屈折計(KOBRADH、王子計測機器(株)製)を用いて行うことができる。
【0178】
本発明の偏光板は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。本発明の偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008−262161号公報の
図6に記載の構成を採用することができる。
【0179】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと本発明の偏光板とを少なくとも有する。本発明の液晶表示装置において、偏光板、第一偏光板および第二偏光板を有する場合には、少なくとも一方が、本発明の偏光板であるIPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。
本発明の液晶表示装置は、好ましくは、液晶セル(液晶層)と、液晶セルの両側に積層され、液晶セル側とは反対側の面に光学フィルムを具備する偏光板とを有している。すなわち、本発明の液晶表示装置は、第一偏光板、液晶セルおよび第二偏光板を有し、偏光板それぞれと液晶セルとで挟持される偏光板面と反対面に本発明の光学フィルムを具備しているのが好ましい。このような構成を有する液晶表示装置は、表示ムラの抑制に優れ、高い表示性能を発揮する。
また、本発明の液晶表示装置は、好ましくは、視認側に配置された偏光板が視認側の光学フィルム表面上にハードコート層を有する光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムを有している。このような構成を有する液晶表示装置は、表示ムラの抑制に優れた高い表示性能に加えて、優れた耐擦傷性と光耐久性を発揮する。
【0180】
本発明の液晶表示装置として、典型的な液晶表示装置の内部構成を
図1および
図2に示した。
図1には、セルロースアシレートフィルムからなる本発明の光学フィルム31aおよび31bが偏光子32の両表面に配置された偏光板21Aおよび21Bを有する液晶表示装置が図示されている。また、
図2には、視認側に配置された偏光板21Bが偏光子32の視認側表面にセルロースアシレートフィルム311aを介してハードコート層311bを有する光学フィルム31a’を具備する液晶表示装置が図示されている。
なお、
図1および
図2に、本発明の液晶表示装置の一例についての構成を示したが、本発明の液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できる。また、特開2008−262161号公報の
図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
【実施例】
【0181】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、これにより本発明が限定して解釈されるものではない。
【0182】
〔一般式(I)で表される化合物の合成〕
本発明の一般式(I)で表される化合物を以下のようにして合成した。
代表的な化合物の合成例を以下に示す。
なお、得られた化合物の構造は、
1H−NMRスペクトル(300MHz)、マススペクトル(MALDI−TOF−MS)で確認した。
【0183】
合成例1
以下の反応スキームで例示化合物(1−1)を合成した。
【0184】
【化13】
【0185】
温度計、還流冷却管および攪拌機を付した1Lの三口フラスコにニトリロ三酢酸38.23g(0.2mol)、アセトニトリル0.3Lを加え50℃に昇温した。ピリジン37.97g(0.48mol)を添加し、50℃で15分攪拌後、無水酢酸24.5g(0.24mol)を10分かけてゆっくり滴下し、75℃にて2時間攪拌した。その後、ベンジルアルコール25.95g(0.24mol)を10分かけて加え、75℃で2時間攪拌した。再度、無水酢酸24.5g(0.24mol)を加え、75℃で2時間攪拌し、ベンジルアルコール25.95g(0.24mol)を10分かけて加え、75℃で2時間攪拌を行った。
【0186】
反応溶液を室温に降温し、酢酸エチル2L、15%塩化ナトリウム水溶液1L、濃塩酸60mLを添加し、水相を除去した。残った有機層を15%塩化ナトリウム水溶液で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。酢酸エチルを減圧除去し、粗体87.9gを得た。その後、ヘキサン/酢酸エチル(200ml/200ml)を添加し、攪拌しながら炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、分液後、有機層を除去した。再度、ヘキサン/酢酸エチル(200ml/200ml)を添加して、攪拌し、炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層の除去を行った。残った水層に濃塩酸37.8mL(0.44mol)を滴下して水層を酸性にし、酢酸エチル0.5Lで抽出後、15%塩化ナトリウム水溶液0.3Lで洗浄した。その後、硫酸マグネシウムにより乾燥を行った。酢酸エチルを減圧留去し、例示化合物(1−1)を61.3g(収率82%)で得た。
【0187】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ=7.4−7.2(m,11H),5.2−5.0(m,4H),3.8−3.5(m,6H)
MS(MALDI) Exact mass calculated for[C
20H
21NO
6+H
+]371.1 Found 371.2
【0188】
実施例で用いた上記以外の化合物は、上記と類似の方法もしくはこれに準じた方法により合成した。
【0189】
〔一般式(I)で表される化合物のpKa値〕
得られた例示化合物のpKaの測定は、25℃で、THF(テトラヒドロフラン)/H
20(水)=6/4の体積比の混合溶媒中でアルカリ滴定法により、電位差自動滴定測定〔AT−610:京都電子工業(株)製〕を用いて行った。
以下に、代表的な化合物のpKa値を示す。
【0190】
(pKa値)
例示化合物(1−1) 6.0
例示化合物(1−7) 6.4
例示化合物(4−1) 6.5, 8.1
【0191】
実施例1
(セルロースアシレートの調製)
総アセチル置換度Bが2.87のセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し、40℃でアシル化反応を行った。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
【0192】
(表層用ドープの調製)
・セルロースアシレート溶液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液101を調製した。
【0193】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液101の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総アセチル置換度(B)2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
下記表1に示す比較化合物(0−1) 4.0質量部
第一工業化学社製モノペット(登録商標)SB(可塑剤)
9.0質量部
イーストマン・ケミカル社製SAIB−100(可塑剤) 3.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 353.9質量部
メタノール(第2溶媒) 89.6質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 4.5質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0194】
なお、第一工業化学社製モノペット(登録商標)SBはショ糖の安息香酸エステルであり、イーストマン・ケミカル社製SAIB−100はショ糖の酢酸およびイソ酪酸エステルである。
【0195】
・マット剤溶液の調製
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液102を調製した。
【0196】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液102の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、
日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 69.3質量部
メタノール(第2溶媒) 17.5質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 0.9質量部
セルロースアシレート溶液101 0.9質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0197】
・紫外線吸収剤溶液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、紫外線吸収剤溶液103を調製した。
【0198】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
紫外線吸収剤溶液103の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記紫外線吸収剤(UV−1) 20.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 61.0質量部
メタノール(第2溶媒) 15.4質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 0.8質量部
セルロースアシレート溶液101 12.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0199】
【化14】
【0200】
上記マット剤溶液102の1.3質量部と、紫外線吸収剤溶液103の3.4質量部をそれぞれ濾過後にインラインミキサーを用いて混合し、さらにセルロースアシレート溶液101を95.3質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合し、表層用溶液を調製した。
【0201】
(基層用ドープの調製)
・セルロースアシレート溶液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、基層用ドープを調製した。
【0202】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液201の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総アセチル置換度(B)2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
第一工業化学社製モノペット(登録商標)SB(可塑剤)
9.0質量部
イーストマン・ケミカル社製SAIB−100(可塑剤) 3.0質量部
下記表1に示す比較化合物(0−1) 4.0質量部
紫外線吸収剤(UV−1) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 297.7質量部
メタノール(第2溶媒) 75.4質量部
n−ブタノール(第3溶媒) 3.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0203】
(流延)
ドラム流延装置を用い、上記のように調製した基層用ドープと、その両側に表層用ドープとを3層同時にステンレス製の流延支持体(支持体温度−9℃)に流延口から均一に流延した。各層のドープ中の残留溶媒量が略70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をピンテンターで固定し、残留溶媒量が3〜5質量%の状態で、TD方向に1.28倍(28%)延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、比較の光学フィルムNo.101を得た。得られた光学フィルムNo.101の厚みは60μm、幅は1480mmであった。
【0204】
光学フィルムNo.101において、表層用および基層用のいずれのセルロースアシレート溶液で使用している比較化合物(0−1)の代わりに、いずれのセルロースアシレート溶液も、化合物の種類および添加量を後述の表1に記載のように変更した以外は光学フィルムNo.101と同様にして、比較の光学フィルムNo.102、103、106および本発明の光学フィルムNo.104、105をそれぞれ作製した。
ここで、これらの光学フィルムは、以後において偏光板保護フィルムとも称す。
【0205】
〔ヘイズ評価〕
このようにして得られた各光学フィルム中のヘイズを測定し、下記A+〜Cの基準で評価した。
ヘイズの測定は、各光学フィルムをヘイズメーター“HGM−2DP”(商品名、スガ試験機(株)製)を用い、JIS K−7136に従って測定した。
【0206】
−評価基準−
A+:ヘイズが0.1%未満
A :ヘイズが0.1%以上0.3%未満
B :ヘイズが0.3%以上0.7%未満
C :ヘイズが0.7%以上
【0207】
(偏光板保護フィルムの鹸化処理)
光学フィルムNo.101〜106を偏光板保護フィルムとして使用し、これらの各偏光板保護フィルムを、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、各偏光板保護フィルムに対して表面の鹸化処理を行った。
【0208】
(偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
鹸化処理した各偏光板保護フィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)も同様の鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、鹸化処理した偏光板保護フィルムが貼り付けてある側とは反対側の偏光子の面に、鹸化処理した市販のセルローストリアセテートフィルムを貼り付けた。
この際、偏光子の透過軸と、鹸化処理済みの偏光板保護フィルムの遅相軸とが平行になるように配置した。また、偏光子の透過軸と鹸化処理済みの市販のセルローストリアセテートフィルムの遅相軸についても、直交するように配置した。
このようにして光学フィルムNo.101〜106に対応する各偏光板を作製した。
【0209】
(偏光子耐久性の評価)
偏光子耐久性試験は偏光板をガラスに粘着剤を介して貼り付けた形態で次のように行った。
ガラスの上に偏光板を本発明のセルロースアシレートフィルムが空気界面側になるように貼り付けたサンプル(約5cm×5cm)を2つ作製した。
単板直交透過率の測定ではこのサンプルのフィルムの本発明のセルロースアシレートフィルムの側を光源に向けてセットして測定した。
2つのサンプルをそれぞれ測定し、その平均値を本発明における偏光板の直交透過率とした。
偏光板の直交透過率は、日本分光(株)製、自動偏光フィルム測定装置VAP−7070を用いて380nm〜780nmの範囲で測定し、410nmにおける測定値を採用した。
その後、下記の条件で各偏光板を経時保存した後に同様の方法で直交透過率を測定した。
経時前後の直交透過率の変化率を、[(経時前の直交透過率と経時後の直交透過率の差分)/(経時前の直交透過率)]×100で、求め、これを偏光子耐久性として、下記基準で評価した。
なお、調湿なしの環境下での相対湿度は、0〜20%の範囲であった。
【0210】
評価方法
−経時条件−
80℃、相対湿度90%の環境下で250時間保存した。
【0211】
−評価基準−
A :経時前後の直交透過率の変化率が0.7%未満
B :経時前後の直交透過率の変化率が0.7%以上0.8%未満
C :経時前後の直交透過率の変化率が0.8%以上1.0%未満
D :経時前後の直交透過率の変化率が1.0%以上
【0212】
〔揮散性の評価法〕
TG/DTA測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製TG/DTA7200)を用い、本発明の一般式(I)で表される化合物を室温から140℃に昇温し、140℃で1時間保持した時の各化合物の質量の変化率(昇温前の質量に対する変化率)を測定し、下記の基準で評価した。
【0213】
−評価基準−
A :質量の変化率が0.2%以下
B :質量の変化率が0.2%以上0.5%未満
C :質量の変化率が0.5%以上
【0214】
〔pKaの測定〕
一般式(I)で表される化合物の合成で測定した方法と同じ方法であり、以下のようにして測定した。
本発明の化合物および比較化合物に対して、25℃で、THF(テトラヒドロフラン)/H
20(水)=6/4の体積比の混合溶媒中でのpKaを、アルカリ滴定法により、電位差自動滴定測定(AT−610:京都電子工業株式会社)を用いて行った。
【0215】
【表1】
【0216】
ここで、比較化合物0−1および0−3は特開2011−118135号公報段落番号0133に記載の有機酸Aおよび有機酸Bである。また、比較化合物0−2は特開2012−72348号公報に記載の化合物である。
【0217】
【化15】
【0218】
表1の結果から、本発明の一般式(I)で表される化合物は、いずれもフィルムからの揮散性抑制効果に優れ、これらを含有する本発明の光学フィルム(偏光板保護フィルム)は、フィルムのヘイズ低減効果も良好であった。さらに、本発明の一般式(I)で表される化合物を含有する本発明の偏光板保護フィルムは、経時での偏光子耐久性に優れ、偏光子の劣化を効果的に抑制しうるものであった。化合物の揮散性抑制効果およびセルロースアシレートとの相溶性が良好であったため、フィルム中におけるこれらの化合物の実効濃度を維持することが可能となり、経時変化に伴う偏光子耐久性が改善したと考えられる。
【0219】
これに対し、比較化合物(0−2)、(0−3)を含有する偏光板保護フィルムは、フィルムのヘイズ値が大きく、偏光子耐久性を経時で保証するのが困難であった。比較化合物(0−2)の揮散性抑制効果およびセルロースアシレートとの相溶性が不十分であったため、これらの性能が悪化したと考えられる。
一方、比較化合物(0−1)を含有する偏光板保護フィルムは、セルロースアシレートとの相溶性は示したが、揮散性抑制効果が不十分であった。
本発明の一般式(I)で表される化合物も比較の化合物も含まない比較の偏光板保護フィルム(フィルムNo.106)では、本発明の光学フィルムである偏光板保護フィルムと比較して、偏光子耐久性において劣っていた。この結果からも、本発明の一般式(I)で表される化合物がヘイズを上昇させることなく、偏光子耐久性を改善できることがわかった。
【0220】
実施例2
(ハードコート層付き光学フィルムの作製)
実施例1で作製した偏光板作製前の各光学フィルムの表面に下記の硬化組成物のハードコート層溶液を塗布し、紫外線を照射して硬化させ、厚み6μmのハードコート層を形成したハードコート層付き光学フィルムを作製した。
なお、下記表2では、単層の光学フィルムNo.と、これに対応するハードコート層付き光学フィルムNo.に共通のフィルムNo.を付けて表している。
【0221】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
ハードコート層溶液の硬化組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
モノマー ペンタエリスリトールトリアクリレート/
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(混合質量比3/2)
53.5質量部
UV重合開始剤 Irgacure
TM907
(BASF(株)製) 1.5質量部
酢酸エチル 45質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0222】
(密着性評価方法)
上記で作製した各ハードコート層付き光学フィルムNo.101〜106について、JIS K 5600に準処した碁盤目試験を行った。具体的には、硬化済みハードコート層付き光学フィルムをXeで48時間照射した。Xeの照射後のハードコート層に1mm間隔で縦横に11本の切れ込みを入れて1mm角の碁盤目を100個作った。この上にセロハンテープおよびマイラーテープを貼り付け、素早く剥がし剥がれた箇所を目視観察により密着評価した。なお、Xeの照射はスガ試験機株式会社製のスーパーキセノンウェザーメーターSX75を用いた。
密着性は下記基準で評価した。評価が「B」以上であると、セルロースアセテートフィルムとハードコート層との密着性が高く、優れた光耐久性を発揮する。
【0223】
密着性の評価基準
A :剥がれ箇所0〜30マス
B :剥がれ箇所31〜50マス
C :剥がれ箇所51〜80マス
D :剥がれ箇所81マス以上
【0224】
得られた結果を下記表2に示す。
【0225】
【表2】
【0226】
本発明のハードコート層付き光学フィルムNo.104および105は、比較化合物を使用した光学フィルムと比べて、密着性に優れる。これは、フィルム中での吸収波長が短波化していること、光照射によるセルロースアセテートの劣化が抑制されているためと考えられる。
【0227】
実施例3
(光学フィルム:セルロースアシレートフィルムの作製および評価)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0228】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテート溶液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――
総アセチル置換度(B)2.87、重合度370のセルロースアセテート
100.0質量部
例示化合物(1−7) 4.0質量部
下記紫外線吸収剤(UV−2) 2.0質量部
第一工業化学(株)製モノペット(登録商標)SB(可塑剤)
9.0質量部
イーストマン・ケミカル社製SAIB−100(可塑剤) 3.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 78.3質量部
メタノール(第2溶媒) 11.7質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0229】
【化16】
【0230】
セルロースアセテート溶液を、バンド流延機を用いて流延し、100℃で残留溶媒含量40%まで乾燥した後、フィルムを剥ぎ取った。剥ぎ取ったフィルムは、さらに140℃の雰囲気温度で20分乾燥させた。得られた光学フィルム(本発明のセルロースアセテートフィルムNo.204)の膜厚は25μmであった。
【0231】
さらに、セルロースアシレートフィルムNo.204において、添加する例示化合物の種類と添加量および可塑剤の種類と添加量を下記表3に記載のように変更した以外はセルロースアシレートフィルムNo.204と同様にして、比較のセルロースアシレートフィルムNo.201および本発明のセルロースアシレートフィルムNo.202、203、205〜211を作製した。
【0232】
添加剤の揮散性と、セルロースアシレートフィルムのヘイズは実施例1と同様にして評価した。
本発明のセルロースアシレートフィルムNo.202〜211および比較のセルロースアシレートフィルムNo.201を使用して、実施例1と同様にして、偏光板を作製し、偏光子の耐久性を評価した。
なお、偏光子の耐久性の評価は、下記の経時条件で行い、得られた結果を下記の評価基準により評価した。
【0233】
−経時条件−
60℃、相対湿度95%の環境下で650時間
【0234】
偏光子耐久性の評価基準
A :経時前後の直交透過率の変化率が0.3%未満
B :経時前後の直交透過率の変化率が0.3%以上0.5%未満
C :経時前後の直交透過率の変化率が0.5%以上0.7%未満
D :経時前後の直交透過率の変化率が0.7%以上
【0235】
得られた結果をまとめて、下記表3に示す。
【0236】
【表3】
【0237】
本発明のセルロースアシレートフィルムNo.202〜211を使用した偏光板は、比較のセルロースアシレートフィルムNo.201を使用した偏光板に対して、経時前後の直交透過率の変化率が低減され、偏光性能の劣化が抑えられていた。
【0238】
実施例4
実施例3におけるセルロースアシレートフィルムNo.202、204、211における可塑剤のモノペットSBおよびSAIB−100に変えて、下記可塑剤Pを、下記配合量用いて以外は実施例3と同様にして、対応するセルロースアシレートフィルムNo.302、304、311を作製し、実施例1と同様にして各偏光板を作製し、評価した。
【0239】
可塑剤P:
フタル酸/エタンジオールの重縮合物
末端は酢酸エステル基で数平均分子量は800 10.0質量部
【0240】
【表4】
【0241】
本発明のセルロースアシレートフィルムNo.302、304および311を使用した偏光板は、実施例3で本発明のセルロースアシレートフィルムNo.201、204および211を使用して作製した偏光板と同様に、経時前後の直交透過率の変化率が低減され、偏光性能の劣化が抑えられていた。また、フィルムのヘイズも見られず良好であった。
【0242】
実施例1〜4で示されたように、本発明の偏光板を使用することで、以上に示したような優れた性能の液晶表示装置が作製できる。
【0243】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0244】
本願は、2013年7月30日に日本国で特許出願された特願2013−158278に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。