(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹部は、観測領域と、液導入部位と、排液部位と、前記観測領域と前記液導入部位とを連絡する液導入経路と、前記観測領域と前記排液部位とを連絡する液排出経路とを有する、請求項8に記載の磁化率測定装置。
前記観測領域は、前記液導入経路および前記液排出経路の少なくとも一方の延びている方向に対して直交する方向に延びている、請求項9から12のいずれかに記載の磁化率測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した装置では粒径の比較的大きな粒子を観測できる一方、粒径の比較的小さい粒子を観測することができなかった。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的小さい粒径の粒子の磁化率を測定可能な磁化率測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による磁化率測定装置は、溶液内の粒子を磁場によって移動させる磁気泳動発生部と、前記溶液にレーザ光を出射するレーザと、前記溶液内の前記粒子によって散乱されたレーザ光を用いて前記粒子の磁化率を取得する磁化率取得部とを備える。
【0008】
ある実施形態において、前記磁化率取得部は、前記溶液内の前記粒子によって散乱されたレーザ光によって前記粒子を観測する観測部と、前記観測部の観測結果から前記粒子の磁化率を求める演算部とを有する。
【0009】
ある実施形態において、前記磁化率測定装置は、前記溶液に光を出射する光源をさらに備える。
【0010】
ある実施形態において、前記観測部は、前記光源から出射され前記溶液を透過した光で前記粒子を観測する。
【0011】
ある実施形態において、前記磁気泳動発生部は、磁場を形成する磁場形成部と、前記磁場形成部を含む筐体とを有し、前記筐体には、前記溶液を保持する溶液保持部材の設置される空隙と、前記筐体の内部を貫通して前記空隙と連絡する孔とが設けられている。
【0012】
ある実施形態において、前記磁化率測定装置は、前記溶液保持部材をさらに備える。
【0013】
ある実施形態において、前記溶液保持部材は測定セルを含む。
【0014】
ある実施形態において、前記測定セルは、主面と、前記主面に設けられた凹部とを有する。
【0015】
ある実施形態において、前記凹部は、観測領域と、液導入部位と、排液部位と、前記観測領域と前記液導入部位とを連絡する液導入経路と、前記観測領域と前記排液部位とを連絡する液排出経路とを有する。
【0016】
ある実施形態において、前記観測領域は、前記溶液に到達する前の前記レーザ光の進行方向に沿って延びている。
【0017】
ある実施形態において、前記排液部位は、前記観測領域に対して前記液導入部位と同じ側に位置している。
【0018】
ある実施形態において、前記液導入経路および前記液排出経路は互いに平行である。
【0019】
ある実施形態において、前記観測領域は、前記液導入経路および前記液排出経路の少なくとも一方の延びている方向に対して直交する方向に延びている。
【0020】
ある実施形態において、前記観測領域は前記筐体の前記空隙内に位置しており、前記液導入部位および前記排液部位の少なくとも一方は前記筐体の前記空隙の外に位置している。
【0021】
ある実施形態において、前記測定セルの少なくとも一部の側面は鏡面加工されている。
【0022】
本発明による測定セルは、主面と、前記主面に設けられた凹部とを有する測定セルであって、前記凹部は、観測領域と、液導入部位と、排液部位と、前記観測領域と前記液導入部位とを連絡する液導入経路と、前記観測領域と前記排液部位とを連絡する液排出経路とを有する。
【0023】
ある実施形態において、前記排液部位は、前記観測領域に対して前記液導入部位と同じ側に位置している。
【0024】
ある実施形態において、前記液導入経路および前記液排出経路は互いに平行である。
【発明の効果】
【0025】
本発明による磁化率測定装置は、比較的小さい粒径の粒子の磁化率を測定できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明による磁化率測定装置の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0028】
まず、
図1を参照して本実施形態の磁化率測定装置100を説明する。磁化率測定装置100は、溶液s内の粒子pを磁場によって移動させる磁気泳動発生部10と、溶液sにレーザ光Lを出射するレーザ20と、溶液s内の粒子pによって散乱されたレーザ光Lを用いて粒子pの磁化率を取得する磁化率取得部30とを備える。溶液sは、粒子pと、粒子pの分散された溶媒mとを有しており、典型的には、粒子pは溶液s内で分散している。なお、
図1は、例示の目的で1つの粒子pのみを示しているが、通常、溶液s内には複数の粒子pが分散している。粒子pの粒径は、ほぼ一定であってもよいし、所定の分布を有していてもよい。
【0029】
磁気泳動発生部10は、磁場により、粒子pを所定の方向に移動させる。このような現象は磁気泳動とも呼ばれる。ここでは、磁気泳動発生部10は、鉛直方向(y方向)に所定の間隔を空けて配置された一対の磁石を有しており、粒子pは、形成される磁場により、x方向に沿って移動する。
【0030】
レーザ20は、溶液sにレーザ光Lを出射する。ここでは、レーザ20は、ほぼ均一な波長のレーザ光Lをx方向に出射する。レーザ光Lは、連続波であってもよく、パルス波であってもよい。なお、レーザ光Lの波長は任意であり、特に限定されない。ただし、レーザ光Lの波長が短いほど、粒子pによる散乱の程度が大きいため、レーザ光Lの波長は比較的短いことが好ましい。
【0031】
磁化率取得部30は、溶液s内の粒子pによって散乱されたレーザ光Lを検出する。ここでは、磁化率取得部30は、磁気泳動発生部10に対してレーザ20の位置する方向とほぼ直交する方向に位置しており、磁化率取得部30は、粒子pによって90度に散乱されたレーザ光Lで粒子pを観測する。
【0032】
本実施形態の磁化率測定装置100では、粒子pによって散乱されたレーザ光Lで粒子pを観測するため、粒子pの粒径が比較的小さくても粒子pの位置を測定することができる。例えば、磁化率取得部30が異なる時刻の粒子pの位置を測定することにより、粒子pの動きが測定される。磁化率測定装置100では、粒子pのx方向の動きから磁気泳動速度が求められる。
【0033】
粒子pの磁気泳動速度vは以下のように表される。
v={2(χ
p−χ
m)r
2}/(9ημ
o)×B(dB/dx)
ここで、χ
pは粒子pの体積磁化率であり、χ
mは溶媒mの体積磁化率であり、rは粒子pの半径であり、ηは溶媒mの粘性率であり、μ
oは真空の透磁率であり、Bは磁束密度であり、(dB/dx)は磁束密度の勾配である。なお、上記式は、x方向に受ける粒子pおよび溶媒mの磁気力の差と、粘性抵抗力とがほぼ等しいことから導かれる。磁化率取得部30は上記関係に基づき粒子pの体積磁化率を取得することができる。
【0034】
例えば、粒子pとして粒径(または半径)の既知の粒子を用いてもよい。あるいは、磁化率測定装置100は、粒子pの粒径を測定してもよい。この場合、磁化率取得部30が粒子pの粒径を測定する。例えば、粒子pの粒径は粒子pの撮像結果から直接的に求めることができる。あるいは、後述するように、粒子pの粒径は、粒子pのブラウン運動の解析結果から求めることができる。このように、本実施形態の磁化率測定装置100では、各粒子pの動きから求めた各粒子pの磁気泳動速度と、粒子pの粒径とから、粒子pの磁化率を測定できる。
【0035】
なお、
図1に示した磁化率測定装置100において、磁化率取得部30は、磁気泳動発生部10に対して、x方向に直交するz方向に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。磁化率取得部30は磁気泳動発生部10に対してz方向以外のxz平面のいずれかに配置されてもよい。あるいは、磁化率取得部30は、粒子sによるレーザ光Lの散乱を観測できれば、磁気泳動発生部10に対して鉛直方向(y方向)に配置されてもよい。
【0036】
ここで、
図2を参照して、溶液s内の粒子pの磁気泳動の挙動を説明する。磁気泳動発生部10は、一対の磁石12a、12bを含む磁場形成部12を有している。例えば、磁石12a、12bはそれぞれ永久磁石である。
【0037】
磁場形成部12が、溶液sに磁場を形成すると、磁場により、溶液s内の粒子pはx方向に移動する。
図2は、時刻とともに移動する粒子pを模式的に示している。なお、粒子pは磁石12a、12bの端部の近傍において特に強い力を受ける。例えば、粒子pは磁石12a、12bの端部の近傍から±200μm程度の範囲で力を受ける。
【0038】
粒子pの体積磁化率が溶媒mの体積磁化率より小さい場合、粒子pは磁場形成部12から離れる方向に移動する。例えば、粒子pとしてポリスチレン粒子を用い、かつ、溶媒としてアセトニトリルを用いた場合、ポリスチレン粒子は磁場形成部12から離れる方向に移動する。ポリスチレン粒子の体積磁化率は−8.21×10
-6であり、アセトニトリルの体積磁化率は−6.74×10
-6である。反対に、粒子pの体積磁化率が溶媒mの体積磁化率よりも大きい場合、粒子pは磁場形成部12に近づく方向に移動する。
【0039】
なお、粒子pの粒径が比較的小さい場合、粒子pはブラウン運動を行う。例えば、粒径が3μm以下の場合、粒子pのブラウン運動が観測される。粒子pは、x方向に磁場の影響を受けるが、y方向には磁場の影響をほとんど受けない。このため、粒子pのy方向の動きはブラウン運動に直接的に対応する。したがって、粒子pのy方向の変位の分散から拡散係数Dを求めることができ、この拡散係数Dから粒子pの粒径を求めることができる。
【0040】
なお、一般的な光学顕微鏡の分解能は、0.61×波長/NA(ここで、NAは対物レンズの開口数)と表され、典型的には1μm以下の粒子の粒径を測定することは困難である。しかしながら、本実施形態の磁化率測定装置100では、レーザ光Lの散乱によって粒子pの動きを測定するため、粒径が1μm以下であっても、粒子pの粒径を測定することができる。例えば、磁化率測定装置100は、粒径が100nm以上1μm以下の粒子pの磁気泳動速度および粒径を容易に測定でき、これにより、磁化率を簡便に測定できる。
【0041】
ここで、
図3を参照して本実施形態の磁化率測定装置100における磁気泳動発生部10の一例を説明する。
図3(a)および
図3(b)は、それぞれ、磁気泳動発生部10の模式的な正面図および側面図である。
図3に示した磁気泳動発生部10には、溶液保持部材として測定セルCが設置されている。ここでは、測定セルCは、粒子pの分散している溶液sの少なくとも一部を露出した状態で保持している。
【0042】
この磁気泳動発生部10は、磁石12a、12bと、磁石12a、12bを含む筐体14とを有している。筐体14には、溶液sを保持する測定セルCの設置される空隙14oと、筐体14の内部を貫通して筐体14の側面部14sと空隙14oとを連絡する孔14hとが設けられている。
【0043】
レーザ20(
図1参照)から出射されたレーザ光Lは、孔14hを通過し、空隙14oに設置された測定セルCの溶液sに到達する。このように、磁気泳動発生部10が孔14hの設けられた筐体14を有することにより、磁化率取得部30からみて溶液sの側方からレーザ光Lを入射させることができ、粒子pによって散乱されたレーザ光を容易に測定できる。
【0044】
ここでは、筐体14は、磁石12aを収容する収容部14aと、磁石12bを収容する収容部14bと、収容部14aおよび収容部14bを連結させる連結部14mおよび連結部14nとを有している。連結部14mと連結部14nとの間には空隙14oが位置している。測定セルCを設置するための設置部位14gは空隙14oに設けられている。なお、側面部14sには、孔14hが設けられるとともに、側面部14sに支持される2つの支持部(図示せず)に磁石12aおよび磁石12bがそれぞれ支持されている。
【0045】
測定セルCは、収納部14aと収納部14bとの間に差し込むようにして空隙14oに挿入され、設置部位14gに設置される。例えば、設置部位14gは、筐体14のうちの磁化率取得部30(
図1参照)と向かい合う面(正面)に設けられた空隙14oに位置しており、測定セルCは、筐体14のうちの磁化率取得部30側から設置および取り出し可能である。
【0046】
なお、空隙14oは筐体14の上記正面の窪みとして非貫通状態で設けられてもよい。あるいは、空隙14oは筐体14を貫通してもよく、筐体14は環状であってもよい。この場合、測定セルCは筐体14の両面のいずれからも取り出し可能であってもよい。
【0047】
図4に、本実施形態の磁化率測定装置100において好適に用いられる測定セルCの模式図を示す。なお、ここでは、測定セルCに保持される溶液sを省略して示している。
【0048】
測定セルCは薄型の矩形状であり、例えば、ガラスまたは樹脂から形成される。あるいは、測定セルCは石英から形成されてもよい。このように測定セルCは透明部材から形成されることが好ましい。
【0049】
測定セルCの主面Csには凹部Coが設けられており、これにより、溶液sは測定セルCの所定の位置に保持される。例えば、測定セルCの厚さCt(y方向の長さ)は0.4mm以上1.0mm以下であり、凹部Coの深さは約0.1mmである。また、凹部Coのx方向の長さはy方向の長さよりも大きい。例えば、凹部Coのx方向の長さは約6mmであり、凹部Coのy方向の長さは約3mmである。
【0050】
なお、レーザ20から出射されたレーザ光Lは、測定セルCの側面CL側から入射する。測定セルCの複数の側面のうち少なくとも側面CLは鏡面加工されていることが好ましい。これにより、測定セルCによるレーザ光Lの散乱を抑制することができる。測定セルCは必要に応じて、磁化率測定装置100に取り付けられてもよい。あるいは、測定セルCは磁化率測定装置100に備えられてもよい。
【0051】
なお、
図3および
図4を参照した説明では、溶液保持部材の一例として測定セルCを説明したが、本発明における溶液保持部材はこれに限定されない。例えば、溶液保持部材としてキャピラリを用いてもよい。この場合、キャピラリは、観測領域を除き、曲がった形状を有していることが好ましい。
【0052】
また、
図3を参照した説明では、磁気泳動発生部10は磁石12a、12bを含む筐体14を有しており、この場合、レーザ光Lは筐体14の孔14hを通過して溶液sに到達するが、本発明はこれに限定されない。レーザ光Lは筐体14の内部を通過することなく溶液sに到達してもよい。または、磁気泳動発生部10は必ずしも磁石12a、12bを含む筐体14を有さなくてもよい。あるいは、磁石12a、12bとして超電導磁石を備える大型の筐体に設けられた孔の中に、測定セルCだけでなく、レーザ20および磁化率取得部30の少なくとも一部が配置されてもよい。
【0053】
また、
図1を参照した説明では、レーザ光Lは、磁化率取得部30の軸方向(z方向)に対して直交するx方向から溶液sに入射したが、本発明はこれに限定されない。レーザ光Lは、xz平面における磁化率取得部30の軸方向に対して斜めの方向から溶液sに入射してもよい。
【0054】
ここで、
図5を参照して、本実施形態の磁化率測定装置100における磁化率取得部30の一例を説明する。
図5に、磁化率取得部30の模式図を示す。磁化率取得部30は、粒子pを観測する観測部32と、観測部32の観測結果から粒子pの磁化率を求める演算部34とを有している。
【0055】
観測部32は、拡大部32aおよび撮像部32bを有している。例えば、拡大部32aは対物レンズを含む。例えば、撮像部32bは電荷結合素子(Charge Coupled Device:CCD)を含む。撮像部32bの各画素は、フォトダイオードまたは光電子増倍管で構成されてもよい。撮像部32bの撮像結果から、粒子pの位置を特定できる。
【0056】
例えば、演算部34としてパーソナルコンピュータが用いられる。演算部34は、撮像部32bの撮像結果に基づいて粒子pの磁気泳動速度および粒径を測定する。
【0057】
具体的には、演算部34は、撮像部32bで撮像された粒子pのx方向の動きから磁気泳動速度vを求める。演算部34は、撮像部32bによって測定された粒子pの位置の時間的な変化から、粒子pの磁気泳動速度を取得する。例えば、撮像部32bは、所定の時間間隔ごとに粒子pを撮像し、演算部34は、それらの撮像結果から粒子pの磁気泳動速度を取得してもよい。
【0058】
また、演算部34は、ブラウン運動から粒子pの粒径を求める。まず、演算部34は、拡散係数Dを求める。拡散係数Dは、ブラウン運動を行う粒子pのy方向の移動距離の2乗を2倍の時間で除算することによって求められる。
【0059】
さらに、演算部34は拡散係数Dから粒径を求める。粒子pの粒径は以下のように表される。
d=kT/(3πηD)
ここで、dは粒子pの粒径であり、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度であり、ηは溶媒の粘性率である。なお、磁場によって移動する粒子pの1回の撮像結果から、粒子pの磁気泳動速度および粒径は同時に測定できる。
【0060】
上述したように、粒子pの磁気泳動速度vおよび粒径の半分(すなわち、半径)の関係は以下のように表される。
v={2(χ
p−χ
m)r
2}/(9ημ
o)×B(dB/dx)
演算部34は上記関係に基づき磁化率を求めることができる。
【0061】
なお、撮像部32bは、粒子pの粒径がある程度大きければ、粒子pの位置だけでなく粒径も併せて測定可能である。このため、必要に応じて、粒子pの粒径は、ブラウン運動に基づく上記演算で取得しなくてもよい。
【0062】
この場合、磁化率取得部30は粒子pを自動的に認識し、粒子pの粒径を取得してもよい。例えば、演算部34が、撮像部32bによって撮像された、粒子pを含む溶液sの画像をモノクロ化し、その輝度を数値化する。次に、演算部34は、位置に応じて輝度値の微分値をしきい値と比較して粒子の境界を設定する。その後、演算部34は、粒子の面積を検出し、その面積に対応する円の半径から粒径を求める。あるいは、粒子の中心を規定し、粒子の中心を通過する複数の直線を引き、各直線において粒子の境界と交わる2つの点の間の距離の平均を求める。
【0063】
なお、磁化率測定装置100は、粒子pの別の特性を取得することができる。例えば、磁化率測定装置100は空隙の設けられた粒子pの空隙率を取得してもよい。あるいは、磁化率測定装置100は、溶液s内の粒子pの濃度の測定に用いられてもよい。
【0064】
また、上述した磁化率測定装置100では、レーザ光Lの散乱によって粒子pの動きを観測することにより、粒径の比較的小さな粒子pの特性を測定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、粒子pを測定する前に粒径が全く分からない状態で粒径を測定した結果、粒径が比較的大きい場合、レーザ光L以外の光で粒子pを観測してもよい。
【0065】
図6に、本実施形態の磁化率測定装置100の模式図を示す。この磁化率測定装置100は、磁気泳動発生部10、レーザ20および磁化率取得部30に加えて光源40をさらに備えている。
図6に示した磁化率測定装置100は、光Laを出射する光源40をさらに備える点を除いて、
図1を参照して上述した磁化率測定装置と同様の構成を有しており、冗長を避ける目的で重複する説明を省略する。
【0066】
光源40は、可視光成分を含む比較的高い強度の光Laを出射する。光源40から出射される光の波長スペクトルは比較的ブロードであってもよい。光源40として、例えば、ハロゲンランプが好適に用いられる。なお、光源40が光Laを出射する場合、レーザ20を停止する。反対に、レーザ20がレーザ光Lを出射する場合、光源40を停止する。
【0067】
光源40は磁化率取得部30と同軸上に配置することが好ましい。磁化率測定装置100において、磁化率取得部30は、光源40から出射され溶液sを透過した光Laで粒子pを観測する。例えば、
図5に示したように磁化率取得部30が観測部32および演算部34を有する場合、観測部32は、光源40から出射されて溶液sを透過した光Laで粒子pを観測し、演算部34は、観測部32の観測結果から粒子pの磁化率を求める。このように、光源40から出射されて溶液sを透過した光Laを利用することにより、粒子pをより鮮明に観測することができ、粒径1μm以上20μm以下の粒子pの測定を容易に行うことができる。このようなレーザ20および光源40を備える磁化率測定装置100は、100nm以上20μm以下もの広範囲の粒径の測定に好適に利用される。また、粒子pの粒径が比較的大きい場合、単純に、磁気泳動発生部10が駆動していない状態で光源40が光Laを出射することにより、粒子pの粒径を測定することができる。
【0068】
上述したように、粒子pの粒径が3μm未満である場合、粒子pのブラウン運動が観測される。粒子pの粒径はブラウン運動と画像解析の両方で測定してもよい。磁化率取得部30が粒子pのブラウン運動を観測するとともに画像解析によって粒子pの粒径を測定できる場合、2つの手法で測定された粒径を補正することができる。ただし、一般的には、ブラウン運動で求めた粒径は画像解析で求めた粒径よりも高精度で得られる。
【0069】
上述の説明から理解されるように、磁化率測定装置100では、粒子pとして蛍光粒子を用いなくても粒径の小さい粒子pを測定できる。ただし、粒子pとして蛍光粒子を用いてもよい。なお、粒子pとして蛍光粒子を用いる場合、レーザ光Lを利用することなく、光源40からの光Laを利用して粒子pを観測できる。
【0070】
図7に、
図6に示した磁化率測定装置100の一例を部分的に拡大して示す。磁気泳動発生部10の筐体14には、空隙14oが貫通孔として設けられており、空隙14oは磁化率取得部30(拡大部32a)の軸方向に沿って筐体14を貫通している。測定セルCは筐体14の空隙14oの中に設置される。例えば、収納部14aと収納部14bとの間の距離(空隙14oのy方向に沿った長さ)は比較的短く、0.4mm以上1.0mm以下である。
【0071】
なお、上述した説明では、測定セルCは筐体14の空隙14oの下平面に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。
【0072】
図8に、本実施形態の磁化率測定装置100における磁気泳動発生部10の模式的な正面図を示す。この磁気泳動発生部10には、空隙14oの上平面に突出したポールピース14pが設けられているとともに、空隙14oの下平面に突出したポールピース14qが設けられている。ポールピース14pとポールピース14qとの間隔は、測定セルCの厚さよりも若干大きく、測定セルCはポールピース14pとポールピース14qとの間に配置される。ポールピース14p、14qはいずれも磁性体から形成されている。ポールピース14pは磁石12aの周囲に巻かれた鉄板(図示せず)と接続し、ポールピース14qは磁石12bの周囲に巻かれた鉄板(図示せず)と接続しており、これにより、磁石12a、12bの磁場が比較的弱くても、測定セルCの溶液sに比較的強い磁場を印加することができる。
【0073】
ここで、
図9〜
図12を参照して本実施形態の磁化率測定装置100において用いられる測定セルCの一例を説明する。
図9(a)および
図9(b)は、それぞれ、測定セルCの模式的な正面図および側面図である。測定セルCは、磁化率取得部30側から空隙14o(
図3、
図7および
図8参照)内に設置される。測定セルCを磁気泳動発生部10に設置する際に、測定セルCを微動させながら移動させて設置してもよい。なお、測定セルCの微動は、振動部材を用いて自動に行ってもよく、あるいは、手動で行ってもよい。なお、ここでも、測定セルCの保持する溶液sを省略して示している。例えば、測定セルCの長さ(z方向の長さ)は約5cmであり、幅(x方向の長さ)は約1cmであり、厚さ(y方向の長さ)は約0.5mmである。
【0074】
測定セルCは、主面Csと、主面Csに設けられた凹部Coとを有している。凹部Coは、観測領域Crと、液導入部位Caと、排液部位Cbと、観測領域Crと液導入部位Caとを連絡する液導入経路C1と、観測領域Crと排液部位Cbとを連絡する液排出経路C2とを有している。ここでは、凹部CoはU字状に形成されており、排液部位Cbは観測領域Crに対して液導入部位Caと同じ側に位置している。
【0075】
観測領域Crは、溶液sに到達する前のレーザ光Lの進行方向(x方向)に沿って延びている。また、液導入経路C1および液排出経路2は互いに平行であり、液導入経路C1および液排出経路C2は溶液sに到達する前の光Laの進行方向(z方向)に沿って延びている。なお、液導入経路C1と液排出経路2は、光Laと重ならないように所定の距離だけ離れていることが好ましい。
【0076】
ここでは、液導入部位Caの幅(x方向の長さ)は液導入経路C1の幅よりも大きく、排液部位Cbの幅(x方向の長さ)は液排出経路C2の幅よりも大きい。例えば、液導入経路C1および液排出経路C2の幅は約1mmであり、液導入部位Caおよび排液部位Cbの幅は約3mmである。
【0077】
また、ここでは、観測領域Cr、液導入部位Ca、排液部位Cb、液導入経路C1および液排出経路C2のそれぞれの深さはほぼ一定である。ただし、観測領域Cr、液導入部位Ca、排液部位Cb、液導入経路C1および液排出経路C2の深さは異なってもよい。例えば、液導入部位Caおよび排液部位Cbの深さは観測領域Cr、液導入経路C1および液排出経路C2の深さよりも大きくてもよい。
【0078】
測定セルCの側面CLは磨かれて鏡面加工されていることが好ましい。これにより、レーザ光Lの入射する測定セルCの側面CLにおけるレーザ光Lの散乱が抑制される。
【0079】
観測領域Crは、液導入経路C1および液排出経路C2のそれぞれの延びている方向に対して直交する方向に延びている。これにより、溶液s界面におけるレーザ光Lの散乱を抑制しつつ、観測領域Crにレーザ光Lを入射させることができる。
【0080】
なお、ここでは、観測領域Crは、液導入経路C1および液排出経路C2のそれぞれの延びている方向に対して直交する方向に延びているが、本発明はこれに限定されない。観測領域Crは、液導入経路C1および液排出経路C2の少なくとも一方の延びている方向に対して直交する方向に延びていてもよい。観測領域Crは、液導入経路C1および液排出経路C2のそれぞれの延びている方向に対して90度以外の角度で交差する方向に延びていてもよい。
【0081】
液導入部位Caに溶液sを導入すると、毛細管現象により、溶液sは、液導入部位Caから液導入経路C1、観測領域Cr、液排出経路C2および排液部位Cbに流れる。レーザ光Lまたは光Laによる粒子pの観測は、溶液sが平衡状態に達した後に行われる。
【0082】
溶液sは排液部位Cbから自然蒸発してもよい。あるいは、排液部位Cbはチューブ(図示せず)に接続されており、排液部位Cbの溶液sは、このチューブによって形成される流路を介して移動してもよい。あるいは、排液部位Cbの溶液sは、紙などの吸収部材を用いて吸収されてもよい。また、排液部位Cbからの溶液sの排出に伴い、溶液sは液導入部位Caから排液部位Cbに向かって流動してもよい。
【0083】
液導入部位Caには溶液sが滴下されてもよい。また、液導入部位Caにガラスチューブを立てて、落下法によって溶液sを導入してもよい。
【0084】
図9(c)に、測定セルCが設置された磁気泳動発生部10の模式的な上面図を示す。
図7および
図9(c)から理解されるように、磁気泳動発生部10の筐体14の空隙14o内に位置しており、液導入部位Caおよび排液部位Cbのそれぞれは筐体14の空隙14oの外に位置している。このため、測定セルCを磁気泳動発生部10に設置したままでも、溶液sの導入および排出を容易に行うことができる。なお、ここでは、液導入部位Caおよび排液部位Cbのそれぞれは筐体14の空隙14oの外に位置していたが、液導入部位Caおよび排液部位Cbの一方が筐体14の空隙14oの外に位置してもよい。
【0085】
また、
図9(a)から理解されるように、測定セルCを磁気泳動発生部10に設置した場合、磁気形成部12は観測領域Crのx方向に沿った長さの中央部分よりも、レーザ光Lを出射するレーザ20の近くに配置されている。これは、磁場によって粒子pが磁気形成部12から離れる方向に移動するためである。反対に、磁場によって粒子pが磁気形成部12に近づく方向に移動する場合、磁気形成部12は観測領域Crのx方向に沿った長さの中央部分よりも、レーザ光Lを出射するレーザ20の遠い側に配置してもよい。
【0086】
なお、上述した説明では、測定セルC上の溶液sは全面的に露出されていたが、本発明はこれに限定されない。測定セルC上の溶液sは部分的に覆われてもよい。
【0087】
図10に、別の測定セルCの模式的な正面図を示す。この測定セルCの排液部位Cbには、封止部材Cfが設けられている。測定セルCの液導入部位Caに溶液sを導入し、溶液sが液導入部位Caから排液部位Cbに移動して、凹部Coの空気が抜かれた後に、測定セルCの排液部位Cbは封止部材Cfで封止される。この場合、排液部位Cbからの蒸発が抑制されるため、観測領域Crにおける溶液sの流れが抑制され、測定を容易に行うことができる。例えば、封止部材Cfとしてテープを用いてもよい。あるいは、封止部材Cfとして油膜形成部材(例えば、接着剤、ワセリン等)を用いてもよい。
【0088】
なお、
図9および
図10に示した測定セルCでは、排液部位Cbは観測領域Crに対して液導入部位Caと同じ側に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。排液部位Cbは観測領域Crに対して液導入部位Caとは反対側に配置されてもよい。
【0089】
図11(a)に、別の測定セルCの模式図を示す。この測定セルCにおいて、
観測領域Crは、それぞれz方向に延びた液導入経路C1および液排出経路C2と連絡してx方向に延びている。排液部位Cbは観測領域Crに対して液導入部位Caとは反対側に配置されている。
【0090】
図11(b)に、測定セルCが設置された磁気泳動発生部10の模式的な上面図を示す。
図7および
図11(b)から理解されるように、測定セルCは磁気泳動発生部10の筐体14の空隙14o内に位置しており、液導入部位Caおよび排液部位Cbのそれぞれは筐体14の空隙14oの外に位置している。このため、測定セルCを磁気泳動発生部10に設置したままでも、溶液sの導入および排出を容易に行うことができる。なお、
図9〜
図11を参照して説明した測定セルCでは、1つの連続する凹部Coが溶液経路として設けられていたが、本発明はこれに限定されない。
【0091】
図12に、別の測定セルCの模式図を示す。この測定セルCには、互いに分離された複数の凹部Coが設けられている。
図12に示した測定セルCでは、凹部Coごとに液導入部位Caおよび排液部位Cbの大きさが異なっている。なお、
図12では、各凹部Coにおける液導入経路C1および液排出経路C2の幅は一定であるが、本発明はこれに限定されない。凹部Coごとに液導入経路C1および液排出経路C2の幅は異なってもよい。
【0092】
上述したように、磁化率測定装置100は、粒子pの空隙率の測定に好適に用いられる。
図13に、空隙を有する粒子pの模式図を示す。
図13に示すように、粒子pには溶媒mの充填された空隙部分oがあり、粒子pは、本体部分bと、空隙部分oとに分けられる。
【0093】
この場合、空隙率Oは、
O=V
o/V
p=V
o/(V
b+V
o)
と表される。ここで、V
pは粒子pの体積であり、V
bは粒子pの本体部分bの体積であり、V
oは粒子pの空隙部分oの体積である。このように、粒子pの体積V
pは、粒子pの本体部分bの体積V
bと、空隙部分oの体積V
oとの和で表される。
V
p=V
b+V
o
【0094】
なお、粒子pの磁化率は、粒子pの本体部分bの磁化率と、粒子pの空隙部分oの磁化率との和で表される。
図13に示すように、粒子pの空隙部分oに溶媒mが充填されている場合、磁化の関係は、
χ
pV
p=χ
bV
b+χ
oV
o
と表される。この場合、上述した式は、
O=V
o/(V
b+V
o)=(χ
p−χ
b)/(χ
o−χ
b)
と表される。なお、粒子pの空隙部分oに溶媒mが充填されている場合、粒子pの空隙部分oの体積磁化率χ
oは溶媒mの体積磁化率χ
mに等しい。
【0095】
なお、化学分析においてしばしば用いられる液体クロマトグラフィーでは、充填剤として一般にシリカゲルが用いられる。本実施形態の磁化率測定装置100を用いてシリカゲルの構成を調べることができる。
【0096】
例えば、粒子pとして直径約5μmのシリカゲル粒子を用い、溶媒mとしてアセトニトリルを用いた測定の結果、磁気泳動速度vが27.4μms
-1である場合、この磁気泳動速度vから、χ
pは−7.20±0.02×10
-6と求められる。また、粒子pがシリカゲルであり、溶媒mがアセトニトリルである場合、χ
bは−1.36×10
-5であり、χ
mは−6.76×10
-6である。この場合、空隙率Oは93.3%である。また、シリカゲル粒子の体積V
pから、V
pは4.65×10
-11cm
3と求められる。