(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
次に、本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態による放送システムの構成と、同システムに含まれる各機器の機能構成の概略とを示すブロック図である。図示するように、本実施形態による放送システムは、受信機1と、放送装置11と、通信サーバ装置21(コンテンツサーバ装置)と、アドレスサーバ装置31とを含んで構成される。放送装置11と通信サーバ装置21は、ともに、テレビ放送局などに設けられる。
【0019】
放送装置11から受信機1へは、放送信号が伝送される。放送信号としては、SDTV(Standard definition television、標準解像度テレビ)、HDTV(High-definition television、ハイ・デフィニション・テレビジョン)、ワンセグ(One seg)、4k解像度(4K Ultra High Definition)、SHV(Super high vision、スーパーハイビジョン)などといった各種方式を適宜用いることができる。また、通信サーバ装置21と受信機との間は、インターネット等の手段を用いて接続されている。また、放送装置11と通信サーバ装置は、ともに放送設備の一部として設けられ、通信線によって相互に接続されている。
【0020】
受信機1は、放送受信部51と、多重分離部52と、放送用デコーダ部53と、受信状況判定部54と、切替制御部55と、通信受信部61と、通信用デコーダ部62と、通信サーバ情報抽出部66と、切替部71とを含んで構成される。放送装置11は、放送用エンコーダ部81と、多重化部82と、放送送信部83と、番組識別情報生成部84と、通信サーバ情報入力生成部85とを含んで構成される。そして、通信サーバ装置21は、通信用エンコーダ部91と、通信送信部92とを含んで構成される。これらの各部は、電子回路を用いて実現される。また、情報を記憶するために、半導体メモリや磁気ディスク装置などの記憶手段を用いるようにする。
【0021】
次に、放送装置11に含まれる各部について説明する。
放送用エンコーダ部81は、外部から入力される放送コンテンツの信号を圧縮符号化(エンコード)する。放送コンテンツの信号には、映像信号や音声信号などが含まれる。
多重化部82は、放送用エンコーダ部81によって符号化された映像および音声のデータや、番組識別情報(PAT、PMT、EITなどの識別情報)や、アプリケーション情報(AIT)や、データ放送などを多重する。多重化部82は、これらのデータを多重化する際に、MPEG−2などの規格を用いる。なお、MPEGは、Moving Picture Experts Groupの略である。また、PATは、Program Association Tableの略である。また、PMTは、Program Map Tableの略である。また、EITは、Event Information Tableの略である。また、AITは、Application Information Tableの略である。
放送送信部83は、多重化部82によって多重されたデータをデジタル変調して、放送信号として送信する。放送信号は、電波を用いて、あるいはケーブルテレビ用のケーブルを介して、伝送される。
【0022】
番組識別情報生成部84は、番組識別情報(PAT、PMT、EITなどに格納され、番組を識別するための情報)を生成する。番組識別情報生成部84は、生成した番組識別情報を、多重化部82に渡す。
通信サーバ情報入力生成部85は、通信サーバ装置21の所在を示すURL(Uniform Resource Locator)などの情報を、通信サーバ装置21の通信送信部92から取得し、そのURLなどを含むデータを多重化部82に渡す。具体的には、通信サーバ情報入力生成部85は、そのURLなど(アドレス情報)を、PMTやAITなどに格納する。
【0023】
次に、通信サーバ装置21に含まれる各部について説明する。
通信用エンコーダ部91は、外部から入力される放送コンテンツの信号を圧縮符号化する。この放送コンテンツの信号は、映像信号や音声信号などを含むものある。これらの映像信号および音声信号は、上述した放送用エンコーダ部81に入力される放送コンテンツと同じ内容のものである。なお、通信用エンコーダ部91による圧縮符号化の方式は、放送用エンコーダ部81による圧縮符号化の方式と異なっていても良い。
通信送信部92は、通信用エンコーダ部91によって符号化されたデータをストリーミングの形態でクライアントに対して送信するサーバの機能を有する。クライアント側からこのストリーミングサーバにアクセスするために必要なアドレス情報(URLなど)は、前述の通り、通信送信部92から、放送装置11の通信サーバ情報入力生成部85に渡される。
【0024】
アドレスサーバ装置31は、複数の放送局の通信サーバ装置21から、通信送信部92(ストリーミングサーバ)のアドレス情報(URLやアドレス等)を受け取り、インターネット等を介して、受信機1に提供する。ここで、アドレスサーバ装置31自身のURLを固定的なものにしておいたり、或いは、固定的なアドレスからたどることによってアドレスサーバ装置31自身のURLを指標できるようにしておいたりする。これにより、受信機1は、アドレスサーバ装置31にアクセスし、所望の放送局(所望の放送サービス)に対応する通信送信部92のアドレス情報を獲得することができる。
【0025】
なお、放送用エンコーダ部81と通信用エンコーダ部91との間で、同一の符号化方式を用いても良いし、異なる符号化方式を用いても良い。同一の符号化方式を用いる場合には、エンコーダの機能を共用できるというメリットがある。後述する受信機側におけるデコーダについても同様であり、デコーダの機能を共用できるというメリットがある。一方、異なる符号化法式を用いる場合には、それぞれの伝送特性に応じて適した符号化方式を採用することも可能となる。なお、両者で同一の符号化方式を用いる場合においても、符号化パラメータまで同一のものを用いる必要はなく、放送と通信のそれぞれの伝送特性に応じたパラメータを適宜選択するようにすれば良い。
【0026】
次に、受信機1に含まれる各部について説明する。
放送受信部51は、放送装置11の放送送信部83から送信された放送信号を受信し、デジタル復調する。また、このとき、放送受信部51は、受信状況を測定し、測定結果の情報を受信状況判定部54に渡す。ここで、受信状況の一例として、放送受信部51は、C/N(搬送波対雑音比)を測定し、その数値情報を受信状況判定部54に渡す。
多重分離部52は、放送受信部51によってデジタル復調された信号から、映像や、音声や、番組識別情報や、アプリケーション情報(AIT)などを分離する。また、このとき、多重分離部52が、分離した情報の一部(例えば、PATや、PMTや、EITなど、所定の周期で繰り返し伝送されてくるテーブルの情報)を受信状況判定部54に渡すようにしても良い。
放送用デコーダ部53は、多重分離部52によって分離された映像および音声を復号(デコード)する。
【0027】
受信状況判定部54は、放送受信部51から取得した受信状況のデータ(C/N等)に基づき、放送信号が受信可能であるか不可能であるかを判定する。具体的には、受信状況判定部54は、取得したC/N値が予め定められた閾値より上であるか下であるかにより、受信可能/不可能を判定する。なお、受信状況判定部54による判定を、C/N値以外の情報に基づいて行うようにしても良い。例えば、C/N値の代わりに、放送信号の電界強度が所定の閾値より上であるか下であるかにより、受信可能/不可能を判定する。あるいは、例えば、PATやPMTやEITなどといったテーブルが、所定の周期ごとに多重分離部52から得られるか否かにより、受信可能/不可能を判定する。これらのPATやPMTやEITは、所定周期ごとに放送装置11側から送られるテーブルであるが、放送信号が届かない場合や受信状況が悪い場合には、多重分離部52がこれらのテーブルを抽出できないため、受信状況の判定に用いることができる。前回のテーブルの受信時点からのタイマがタイムアウトしたときに、受信状況判定部54は、受信不可能と判定する(それ以外の場合には受信可能と判定する)。あるいは、例えば、多重分離部52によって分離される映像や音声といったメディアコンポーネントのパケットを受信状況判定部54が監視するようにしても良い。この場合、所定の時間、パケットを受信できない状態が続いた場合に、受信状況判定部54は、受信不可能と判定する(それ以外の場合には受信可能と判定する)。また、上記の複数の判定方法を組み合わせて、論理和や論理積を用いた論理式により、受信状況を判定するようにしても良い。
【0028】
通信サーバ情報抽出部66は、通信サーバ装置21のアドレス情報(URLなど)を取得する。通信サーバ情報抽出部66がそのアドレス情報を得る方法として、何通りかの方法を取り得る。第1の方法として、通信サーバ情報抽出部66は、多重分離部52から、受信中の放送チャンネルに関連付けられたPMTまたはAITを取得し、それらいずれかのテーブルの中から通信サーバ装置21のアドレス情報を抽出する。第2の方法として、通信サーバ情報抽出部66は、インターネット等を介した通信により、アドレスサーバ装置31にアドレス情報を要求する。この要求の際、通信サーバ情報抽出部66は、現在受信中の放送チャンネルの情報を付けて送信する。この要求に対応して、アドレスサーバ装置31は、当該放送チャンネルに対応したアドレス情報を返送する。第3の方法として、通信サーバ情報抽出部66は、放送チャンネルごとに、通信サーバ装置21のアドレス情報を予め(工場出荷時などに)内部のメモリ(通信サーバ情報記憶部)に保持しておくようにする。
【0029】
なお、通信サーバ情報抽出部66は、取得したアドレス情報を、放送チャンネルに関連付けて内部のメモリに保存する。保存されたアドレス情報は、受信機1の電源がオフされた後も、引き続き保持される。受信機1の電源がオンされたときに放送信号が受信不可能であるときには、そのときの放送チャンネルに応じて、通信サーバ情報抽出部66によって直前に保持されていたアドレス情報を読み出すようにする。このアドレス情報を用いることにより、当該チャンネルに対応した通信サーバ装置21にアクセスできるようになる。
【0030】
通信受信部61は、外部の通信サーバ装置21(コンテンツサーバ装置)から通信によってデータを受信する。具体的には、通信受信部61は、現在受信している(あるいは、受信しようとしている)放送チャンネルに対応したアドレス情報(URLなど)を、通信サーバ情報抽出部66より受け取る。そして、通信受信部61は、そのアドレス情報を用いて、所定の通信プロトコル(例えば、インターネットプロトコル(IP))を用いて、通信サーバ装置21の通信送信部92から、映像や音声のストリーミングデータを受信する。なお、通信受信部61は、電源がオンされている間は常に、現在の放送チャンネルに対応する通信サーバ装置21から、映像および音声のストリーミングデータを受信する。あるいはその代わりに、受信状況判定部54によって判断される放送信号の受信状況が「受信不可能」のときにのみ、通信受信部61が通信サーバ装置21から映像および音声のストリーミングデータを受信するようにしても良い。通信受信部61が常に受信するようにした場合には、放送信号が急に受信不可能になってしまった場合にも、短時間でスムーズに、通信への切替を行なうことができる(切替制御部55による切替については、後述する)。この場合は、放送信号に基づく提示から通信データに基づく提示に切替を行う際の、映像・音声の無提示期間を短くすることができる。放送信号が受信不可になったときにのみ通信受信部61が映像や音声のデータを受信するようにした場合には、通信サーバ装置21との間のネットワークトラフィックや、受信機1の消費電力を、低減させることができる。但し、この場合には、通信によるデータ受信の開始の遅延により、切替制御後のしばらくの間は映像と音声が提示されないこととなる。
【0031】
通信用デコーダ部62は、通信受信部61によって受信された映像および音声のデータ(コンテンツデータ)を復号する。
【0032】
切替制御部55は、受信状況判定部54による判定結果に基づいて、放送用デコーダ部53によってデコードされたコンテンツと通信用デコーダ部62によってデコードされたコンテンツのいずれを切替部71から出力するかを制御する具体的には、受信状況判定部54での判定結果が「受信可能」であるとき、切替制御部55は、放送用デコーダ部53から出力される復号結果(映像、音声)を切替部71から出力するよう、制御する。また、受信状況判定部54での判定結果が「受信不可能」であるとき、切替制御部55は、通信用デコーダ部62から出力される復号結果(映像、音声)を切替部71から出力するよう、制御する。
切替部71は、放送用デコーダ部53によってデコードされたコンテンツと通信用デコーダ部62によってデコードされたコンテンツのいずれか一方を出力するよう切り替える。具体的には、切替部71は、切替制御部55からの制御信号に基づき、出力の切替を行う。切替部71へ入力されるデータは、放送用デコーダ部53によって復号された映像および音声、または通信用デコーダ部62によって復号された映像および音声である。
【0033】
次に、受信機1の動作について説明する。
図2は、放送信号の受信が可能な状態において受信機1によるコンテンツ視聴が開始されたときの動作手順を示すフローチャートである。なお、同図は、コンテンツの視聴開始後、通信受信部61による受信に切り替えるまでの手順を示す。以下、このフローチャートに沿って説明する。
【0034】
まずステップS11において、放送受信部51は放送信号の受信を開始する。また、受信状況判定部54は放送信号の受信状況の判定を開始する。そして、受信状況判定部54は、受信状況の判定結果を切替制御部55等に伝える。前述の通り、このフローチャートは放送信号の受信が可能な状態において受信機によるコンテンツ視聴が開始されたときの処理手順を示すものであり、初期段階では、受信状況判定部54は放送信号が受信可能であると判定する。
次にステップS12において、切替制御部55は、切替部71への入力となる制御信号として、放送側を選択するように制御する。つまりこの結果、切替部71は、放送用デコーダ部53からの信号を外部に出力するよう、スイッチの切替を行う。
【0035】
次にステップS13において、通信サーバ情報抽出部66は、通信サーバ情報を抽出する。既述の通り、通信サーバ情報とはURL等の情報であり、この通信サーバ情報を用いることによって通信サーバ装置21の通信送信部92にアクセスすることが可能となる。一例として、通信サーバ情報抽出部66は、アドレスサーバ装置31から、上記の通信サーバ情報を取得する。なおこのとき、通信サーバ情報抽出部66は、現在受信している放送チャンネルに対応する通信サーバ情報のみを取得するようにしても良いし、すべての放送チャンネルに対応する通信サーバ情報を取得するようにしても良い。
【0036】
次にステップS16において、受信状況判定部54は、その時点での放送信号の受信状況を判定する。ここでは、受信状況判定部54が判定する受信状況は「受信可能」または「受信不可能」のいずれかである。このとき受信状況判定部54は、受信状況の判定結果を切替制御部55等に伝える。受信可能であると受信状況判定部54が判定した場合(ステップS16:YES)、ステップS12の処理に戻る。このとき、必要に応じて、所定の時間だけ待機してからステップS12に戻るようにしても良い。受信不可能であると受信状況判定部54が判定した場合(ステップS16:NO)には、ステップS17の処理に進む。
【0037】
次にステップS17に進んだ場合、通信受信部61は、通信サーバ装置21からのコンテンツの受信を開始する。既に通信サーバ装置21からの受信を開始していた場合には、引き続きその受信を継続して行う。
そしてステップS18において、切替制御部55は、切替部71への入力となる制御信号として、通信側を選択するように制御する。つまりこの結果、切替部71は、通信用デコーダ部62からの信号を外部に出力するよう、スイッチの切替を行う。
【0038】
このフローチャートで説明したように、本実施形態による受信機1は、放送信号の受信中に信号伝搬状況が変化するなどといった理由で受信が不可能になった場合にも、通信経由でのコンテンツの受信に切り替えて、映像および音声の出力を継続して行なうことができる。これにより、そのような状況においても、利用者はコンテンツの視聴を継続することができる。
【0039】
図3は、放送信号の受信が不可能な状態において受信機1によるコンテンツ視聴が開始されたときの動作手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って説明する。
【0040】
まずステップS21において、放送受信部51は放送信号の受信を開始する。また、受信状況判定部54は放送信号の受信状況の判定を開始する。そして、受信状況判定部54は、受信状況の判定結果を切替制御部55等に伝える。前述の通り、このフローチャートは放送信号の受信が不可能な状態において受信機によるコンテンツ視聴が開始されたときの処理手順を示すものであり、受信状況判定部54は放送信号が受信不可能であると判定する。
【0041】
次にステップS22において、通信サーバ情報抽出部66は、通信サーバ情報を抽出する。この通信サーバ情報は、受信機1が受信しようとする放送チャンネルに対応した通信サーバ装置21のURLである。通信サーバ情報抽出部66は、アドレスサーバ装置31から上記の通信サーバ情報を受信する。また、通信サーバ情報抽出部66が、内部のメモリから通信サーバ情報を読み出すようにしても良い。この場合、通信サーバ情報抽出部66は、以前に取得した通信サーバ情報を予めそのメモリに書き込んでおく。
【0042】
次にステップS23において、通信受信部61は、通信サーバ装置21からのコンテンツの受信を開始する。
次にステップS24において、切替制御部55は、切替部71が通信側を選択するように制御する。その結果、切替部71は、通信用デコーダ部62からの信号を外部に出力するよう、スイッチの切替を行う。
【0043】
このフローチャートで説明したように、本実施形態による受信機1は、放送信号の受信が不可能な状態においてコンテンツ視聴が開始されたとき(電源オンされたときなど)にも、通信によって配信されるコンテンツを受信し、デコードし、映像および音声の出力を開始することができる。
【0044】
<変形例> 次に、実施形態1の変形例について説明する。
図2および
図3に示した手順では、受信状況判定部54による判定結果は受信可能または受信不可能のいずれかのみであった。この変形例では、受信状況判定部54は、受信可能な状況において、受信する放送信号のレベルが低下しつつあるか否かを判定する。
【0045】
図4は、この変形例における受信機1の処理手順を示すフローチャートである。同図における、ステップS11からS13までの処理と、ステップS16からS18までの処理は、
図2において説明した処理と同様であるため、説明を省略する。以下では、特にステップS14からS15までの処理を中心に説明する。
【0046】
ステップS13において通信サーバ情報を抽出した後、ステップS14において、受信状況判定部54は、受信する放送信号のレベルが低下しつつあるか否かを判定する。具体的には、受信状況判定部54は、C/N値が予め定めた所定の閾値よりも低下しているか否かを判定する。C/N値が低下している受信状況判定部54が判定した場合(ステップS14:YES)には、次のステップS15の処理に移る。C/N値が低下していないと受信状況判定部54が判定した場合(ステップS14:NO)には、ステップS16の処理に飛ぶ。
【0047】
ステップS15に進んだ場合、同ステップにおいて通信受信部61は通信サーバ装置21からのコンテンツの受信を開始する。
その後、ステップS16に進むと、
図2においても説明したのと同様に、受信状況判定部54は、その時点での放送信号の受信状況が「受信可能」または「受信不可能」のいずれであるかを判定する。
【0048】
このフローチャートで説明したように、この変形例では、受信信号の状況が悪くなり始めた段階で通信によるコンテンツ受信を開始するため、その後受信信号の受信が不可能になった場合に、より短い時間でスムーズに、通信経由でのコンテンツ受信に切り替えることが可能となる。
【0049】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下において、前述の実施形態と同様の事項については説明を省略し、本実施形態に特有の事項を中心に説明する。また、参照する図面において、前述の実施形態と同じ機能を有するブロックには同じ符号を付す。
図5は、第2の実施形態による放送システムの構成と、同システムに含まれる各機器の機能構成の概略とを示すブロック図である。図示するように、本実施形態による放送システムは、受信機2と、放送装置12と、通信サーバ装置22(コンテンツサーバ装置)とを含んで構成される。
【0050】
本実施形態における受信機2は、アプリケーションエンジン部56(切替制御部)と、最新状況記憶部65とを備える。また、放送装置12は、アプリケーション情報生成部86を備える。また、通信サーバ装置22は、アプリケーションサーバ部96(アプリケーションサーバ装置)を備える。
【0051】
受信機2におけるアプリケーションエンジン部56は、アプリケーションプログラム(以下において単に「アプリケーション」と称する場合がある)を実行するための機能およびその環境を有している。アプリケーションエンジン部56は、必要に応じてアプリケーションを取得し、起動する。アプリケーションエンジン部56は、アプリケーションから呼び出すためのAPI(アプリケーション・プログラム・インタフェース)を有している。アプリケーションは、APIの種類およびその引数を指定することにより、APIで規定される機能を呼び出すことができる。APIの一例として、アプリケーションエンジン部56は、切替部71のスイッチを切り替えるためのAPIを備えている。アプリケーションプログラムが、適宜その引数を指定してこのAPIを呼び出すことにより、放送用デコーダ部53によってデコードされた映像および音声を外部に出力するか、通信用デコーダ部によってデコードされた映像および音声を外部に出力するかを、選択的に制御することができる。
【0052】
本実施形態では、アプリケーションエンジン部56上で稼動させるアプリケーションが、受信状況判定部54での判定結果に応じて切替部71の切替を自動的に行う機能を持つようにする。アプリケーションエンジン部56は、APIを介してアプリケーションからの切替指示を受け、その指示を表わす制御信号を切替部71に渡す機能を備える。これにより、切替部71は、映像信号および音声信号の取得先を、放送用デコーダ部53とするか通信用デコーダ部62とするかを切り替える。アプリケーションとしては、例えば、HTML5で既述されたものを用いる。切替部71からの出力を自動的に切り替えるためのアプリケーションを起動する手順の一例は次の通りである。即ち、多重分離部52が、放送信号を分離することにより、アプリケーションエンジン部56は、AITを取得する。そして、アプリケーションエンジン部56は、AIT内の情報に基づいてアプリケーションのコードを取得し、アプリケーションコードをメモリ上に展開して実行する。なお、そのアプリケーションコード自体は、インターネット等の手段を用いた通信により、通信サーバ装置22のアプリケーションサーバ部96から取得できるようにしておく。このとき、通信受信部61が、アプリケーションコードをアプリケーションサーバ部96から受信し、アプリケーションエンジン部56に渡す。そのアプリケーションは、受信状況判定部54からの判定結果情報を所定のタイミングで繰り返し受信し、その判定結果情報に応じて切替部71を切り替える制御を行う。また、上記のAITには、通信サーバ装置22の通信送信部92のURL等の情報を格納するようにしておく。これにより、受信機2の通信受信部61は、通信送信部92から、コンテンツデータのストリーミング配信を受けることができる。
【0053】
また、受信機2がアプリケーションを取得するための別の方法として、固定的なアドレスを有するアドレスサーバ装置(不図示)を設け、受信機2が、このアドレスサーバ装置にアクセスすることによって、アプリケーションコードを取得するための所在情報(URL等)を取得できるようにしても良い。これにより、受信機2は、通信により、アプリケーションコードを取得することができる。
また、アプリケーションコードそのものを、受信機2内のメモリに予め保持しておくようにしても良い。
【0054】
最新状況記憶部65は、アプリケーションエンジン部56が取得したアプリケーションや通信サーバ情報を記憶しておくためのメモリである。最新状況記憶部65のうち、アプリケーションを記憶しておく領域を「アプリケーション記憶部」と呼び、また通信サーバに関する情報(通信サーバの所在情報(URL)など)を記憶しておく領域を「通信サーバ情報記憶部」と呼ぶ。つまり、アプリケーション記憶部は取得されたアプリケーションプログラムを記憶し、通信サーバ情報記憶部は、通信受信部61が通信したコンテンツサーバ装置の所在を表わす通信サーバ情報を記憶する。アプリケーションや通信サーバ情報は、放送チャンネルごと或いは放送事業者ごとに記憶するようにしても良いし、すべての放送チャンネルで共通のアプリケーションまたは通信サーバ情報を記憶するようにしても良い。なお、アプリケーションや通信サーバ情報が新たに書き込まれた場合には、それ以前に最新状況記憶部65が保持していた情報を消去するようにして良い。このように最新状況記憶部65が最新の情報を記憶しておくことにより、受信機2の電源をオンしたときにたとえ放送信号を受信することができない場合にも、最新状況記憶部65に記憶させておいた最新のアプリケーションを読み出して、アプリケーションエンジン部56で実行させるようにすることができる。つまり、最新状況記憶部65は、現在の受信チャンネル、通信サーバ装置のURL、およびアプリケーションを記憶保持し、電源オン時に、アプリケーションエンジン部56からの問い合わせに回答する機能を持つ。なお、最新状況記憶部65は、NVRAM(不揮発性RAM)によって実現するようにして、電源がオフされても情報を保持するようにする。
【0055】
また、本実施形態において、放送装置12が備えるアプリケーション情報生成部86は、受信機2のアプリケーションエンジン部56上でアプリケーションを起動するためのアプリケーション情報(AIT)を生成する。アプリケーション情報生成部86がここで生成したアプリケーション情報に基づき、受信機2側ではHTML5で記述されたアプリケーションを起動する。なお、アプリケーション情報はアプリケーションを識別するためのアプリケーションIDを含む。受信機2における切替部71を切替制御するためのアプリケーションのアプリケーションIDとしては、一例として、予め定められた固定値を用いるようにする。
【0056】
また、本実施形態において、通信サーバ装置22が備えるアプリケーションサーバ部96は、受信機2からの要求に応じて、HTML5で記述されたアプリケーションを送信する。このアプリケーション内には、受信機2が通信経由で番組のコンテンツを取得するためのストリーミングサーバー(通信送信部92)のURLを記述しておく。よって、アプリケーションサーバ部96から提供されたアプリケーションを受信機2で実行させることにより、受信機2は、通信経由でコンテンツのデータを受信することができるようになる。
【0057】
次に、受信機2の動作について説明する。
図6は、放送信号の受信が可能な状態において受信機2によるコンテンツ視聴が開始されたときの動作手順を示すフローチャートである。なお、同図は、コンテンツの視聴開始後、通信受信部61による受信に切り替えるまでの手順を示す。以下、このフローチャートに沿って説明する。
【0058】
まずステップS41において、放送受信部51は放送信号の受信を開始する。また、受信状況判定部54は放送信号の受信状況の判定を開始する。受信状況判定部54は、受信状況の判定結果をアプリケーションエンジン部56等に伝える。これにより、アプリケーションエンジン部56上で稼動するアプリケーションは、APIを介して、受信状況判定部54による判定結果を取得することができる。前述の通り、このフローチャートは放送信号の受信が可能な状態において受信機によるコンテンツ視聴が開始されたときの処理手順を示すものであるため、初期段階では、受信状況判定部54は放送信号が受信可能であると判定する。
【0059】
次にステップS42において、アプリケーションエンジン部56は、通信受信部61を介して、アプリケーションおよび通信サーバ情報(通信送信部92のURLなど)を受信する。このとき、アプリケーションエンジン部56は、まず多重分離部52によって分離されたアプリケーション情報(AIT)を取得し、そのアプリケーション情報内の規定に従ってアプリケーションを取得し、起動する。前述の通り、取得したアプリケーション内に通信サーバ情報が記述されているため、アプリケーションエンジン部56において起動されたアプリケーションは、その通信サーバ情報に基づいて通信送信部92との間の通信を開始するよう制御することができる。また、アプリケーションエンジン部56は、取得した最新のアプリケーションのコードおよび通信サーバ情報を最新状況記憶部65に書き込んでおくようにする。このステップにおけるアプリケーションおよび通信サーバ情報の取得は、受信機の電源がオンされて放送信号の受信を開始したとき、および放送チャンネルが切り替えられたときのみに行うようにする。
【0060】
なお、放送信号から分離されたアプリケーション情報に基づいてアプリケーションを起動することにより、常に最新のアプリケーションおよび通信サーバ情報を取得することができる。その代わりに、状況に応じて、最新状況記憶部65から、アプリケーションまたは通信サーバ情報またはそれらの両方を取得するようにしても良い。切替制御用のアプリケーションとして、すべての放送チャンネルにおいて共通のアプリケーションを用いても良いし、放送チャンネルごと或いは放送事業者ごとに異なるアプリケーションを用いても良い。
【0061】
次にステップS43において、アプリケーションエンジン部56上で稼動するアプリケーションは、APIを介して、切替部71の切替スイッチを制御する。初期状態等において、受信状況判定部54による判定結果が放送信号の受信状況が良好であることを示している場合には、アプリケーションは、放送用デコーダ部53によってデコードされた映像および音声を外部に出力するよう、切替部71を制御する。
【0062】
次にステップS44において、受信状況判定部54は、受信する放送信号のレベルが低下しつつあるか否かを判定する。具体的な例として、受信状況判定部54は、C/N値が予め定めた所定の閾値よりも低下しているか否かを判定する。C/N値が低下している受信状況判定部54が判定した場合(ステップS44:YES)には、次のステップS45の処理に移る。C/N値が低下していないと受信状況判定部54が判定した場合(ステップS44:NO)には、ステップS46の処理に飛ぶ。
ステップS45に進んだ場合、同ステップにおいて通信受信部61は通信サーバ装置22からのコンテンツの受信を開始する。このとき、通信サーバ装置22の通信送信部92のURL等は、アプリケーションエンジン部56から渡され指定される。
【0063】
次にステップS46において、受信状況判定部54は、その時点での放送信号の受信状況を判定する。ここでは、受信状況判定部54は、受信状況が「受信可能」または「受信不可能」のいずれかであるかを判定する。また、受信状況判定部54による判定結果はAPIを介してアプリケーションにも伝えられる。受信可能であると受信状況判定部54が判定した場合(ステップS46:YES)、ステップS42の処理に戻る。このとき、必要に応じて、所定の時間だけ待機してからステップS42に戻るようにしても良い。受信不可能であると受信状況判定部54が判定した場合(ステップS46:NO)には、ステップS47の処理に進む。
【0064】
次にステップS47に進んだ場合、通信受信部61は、通信サーバ装置22からのコンテンツの受信を開始する。既に通信サーバ装置22からの受信を開始していた場合には、引き続きその受信を継続して行う。
そしてステップS48において、アプリケーションエンジン部56上で稼動するアプリケーションは、切替部71への入力となる制御信号として、通信側を選択するように制御する。つまりこの結果、切替部71は、通信用デコーダ部62からの信号を外部に出力するよう、スイッチの切替を行う。
【0065】
このフローチャートで説明したように、本実施形態による受信機2は、放送信号の受信中に信号伝搬状況が変化するなどといった理由で受信が不可能になった場合にも、通信経由でのコンテンツの受信に切り替えて、映像および音声の出力を継続して行なうことができる。
【0066】
図7は、放送信号の受信が不可能な状態において受信機2によるコンテンツ視聴が開始されたときの動作手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って説明する。
【0067】
まずステップS51において、放送受信部51は放送信号の受信を開始する。また、受信状況判定部54は放送信号の受信状況の判定を開始する。前述の通り、このフローチャートは放送信号の受信が不可能な状態において受信機によるコンテンツ視聴が開始されたときの処理手順を示すものであり、受信状況判定部54は放送信号が受信不可能であると判定する。この受信不可能という状況において、アプリケーションエンジン部56は、放送信号に含まれるアプリケーション情報を取得することができない。
【0068】
次にステップS52において、アプリケーションエンジン部56は、最新状況記憶部65に記憶されているアプリケーションを読み出し、起動する。また、アプリケーションエンジン部56において起動されたアプリケーションは、最新状況記憶部65から、通信サーバ情報(URLなど)を読み出す。また、アプリケーションは、APIを介して、受信状況判定部54による受信状況の判定結果を取得する。
【0069】
次にステップS53において、通信受信部61は、通信サーバ装置22からのコンテンツの受信を開始する。このとき、上のステップS52において取得した通信サーバ情報を用いることによって、通信受信部61は通信サーバ装置22の通信送信部92にアクセスする。これにより、通信サーバ装置22から受信機2へ、ストリーミングによるコンテンツデータの配信が開始される。
【0070】
次にステップS54において、アプリケーションエンジン部56で稼動するアプリケーションは、切替部71が通信側を選択するように制御する。その結果、切替部71は、通信用デコーダ部62からの信号を外部に出力するよう、スイッチの切替を行う。
【0071】
このフローチャートで説明したように、本実施形態による受信機2は、放送信号の受信が不可能な状態においてコンテンツ視聴が開始されたとき(電源オンされたときなど)にも、アプリケーションを起動し、通信によって配信されるコンテンツをデコードし、映像および音声の出力を開始することができる。
【0072】
以上において説明したように、本実施形態におけるアプリケーションエンジン部56は、アプリケーションプログラムの実行環境を備えており、放送受信部51が受信した放送信号から分離されたアプリケーション情報に基づいて外部のアプリケーションサーバ装置(アプリケーションサーバ部96)から取得したアプリケーションプログラムを実行させる。そして、このアプリケーションプログラムは、受信状況判定部54による判定結果に基づいて、放送用デコーダ部53によってデコードされたコンテンツと通信用デコーダ部62によってデコードされたコンテンツのいずれを切替部71から出力するかを制御する機能を備えるものである。これにより、アプリケーションエンジン部56は、第1の実施形態における切替制御部55と同等の機能を実現する。
【0073】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態では、放送信号が階層伝送される。なお、以下において、前述の実施形態と同様の事項については説明を省略し、本実施形態に特有の事項を中心に説明する。また、参照する図面において、前述の実施形態と同じ機能を有するブロックには同じ符号を付す。
【0074】
図8は、第3の実施形態による放送システムの構成と、同システムに含まれる各機器の機能構成の概略とを示すブロック図である。図示するように、本実施形態による放送システムは、受信機3と、放送装置13と、通信サーバ装置23(コンテンツサーバ装置)とを含んで構成される。
本実施形態における受信機3は、番組識別情報分離部57と、ネット階層伝送記述子判定部58を備える。なお、番組識別情報分離部57とネット階層伝送記述子判定部58をあわせて通信サーバ情報取得部と呼ぶ。これは、後述するように、放送信号から抽出された情報から、番組識別情報分離部57とネット階層伝送記述子判定部58が通信サーバ情報を取得する役割を果たすためである。言い換えれば、通信サーバ情報取得部は、放送受信部51が受信した放送信号からプログラムマップテーブルを分離し、プログラムマップテーブル内にネット階層伝送記述子が含まれているか否かを判定し、ネット階層伝送記述子が含まれている場合にはそのネット階層伝送記述子内から通信サーバ装置23(コンテンツサーバ装置)の所在を表わす通信サーバ情報を取得する。
【0075】
また、放送装置13は、ネット階層伝送記述子生成部88を備える。
【0076】
なお、ネット階層伝送とは、階層伝送の一種である。階層伝送とは伝送特性の異なる複数の階層を用いて同時に情報を伝送する技術である。階層伝送自体については、参考文献「衛星デジタル放送の伝送方式 ARIB STD-B20 3.0版」(社団法人電波産業会,2001年)の「第3章 階層変調サービスシステム運用ガイドライン」(第42ページから第46ページまで)にも記載されている。階層変調サービスを行うときには、放送装置13の側では、高階層および低階層の各PMTに、その階層が高階層であるか低階層であるかを示す階層レベルと、参照先(低階層、高階層)のエレメンタリーストリームのPID(パケットID)を示す階層伝送記述子を挿入する。受信機3では、放送波が遮断したとき、または復旧したときに参照先のPIDで示されるエレメンタリーストリームを受信することにより階層変調サービスが実現される。
【0077】
本実施形態では、放送番組のコンテンツを伝送するための一つの階層としてネットワーク(インターネット等)による通信を用いるため、これをネット階層伝送と呼ぶ。また、ネット階層伝送に関する情報を伝送するための記述子をネット階層伝送記述子と呼ぶ。なお、ネット階層伝送をすべての放送チャンネルで常時行う必要はなく、特定のチャンネルのみにおいて、あるいは、特定の放送時間帯のみにおいて、ネット階層伝送を行うようにすることもできる。
【0078】
受信機3における番組識別情報分離部57は、多重分離部52から番組識別情報を取得し、PMTを出力する。また、ネット階層伝送記述子判定部58は、番組識別情報分離部57から出力されたPMTを受け取り、PMT内にネット階層伝送記述子の有無を判定するとともに、ネット階層伝送記述子がある場合にはその内部に記述されているURLの情報を出力し、切替制御部55に渡す。ネット階層伝送記述子については、後で詳細に述べる。また、切替制御部55が有する機能は、第1の実施形態において説明した機能と同様のものである。また、最新状況記憶部65が有する機能は、第2の実施形態において説明した機能と同様のものである。
【0079】
つまり、切替制御部55は、受信状況判定部54から受信状況の判定結果を受け取る。また、ネット階層伝送が行われている場合には、切替制御部55は、ネット階層伝送記述子判定部58から、ネット階層伝送記述子に記述されていたURLを受け取る。
【0080】
また、切替制御部55は、受信状況判定部54から受け取った判定結果が放送信号の「受信不可」を示している場合には、ネット階層伝送記述子判定部58から受け取ったURLを通信受信部61に渡して、ネットワーク経由でのコンテンツの受信を開始させる。また、切替制御部55は、放送信号を受信できているか否かに応じて、切替部71のスイッチを切り替える制御を行う。これにより、切替部71において、放送信号で受信された映像・音声を外部に出力するか、ネットワーク経由の通信で受信された映像・音声信号を外部に出力するかを切り替えることができる。
【0081】
放送装置13におけるネット階層伝送記述子生成部88は、通信サーバ装置23からネットワーク経由でコンテンツデータの伝送を行うときのサーバ情報(URLなど)を含んだネット階層伝送記述子を生成して、番組識別情報生成部84に渡す。放送装置13は、ネット階層伝送を行っているか否かに応じて、即ち、通信サーバ装置23がコンテンツデータをストリーミング配信しているか否かに応じて、番組識別情報のPMTにネット階層伝送記述子を挿入するか否かを制御する。ネット階層伝送が開始されると、ネット階層伝送記述子生成部88がネット階層伝送記述子を出力する。また、ネット階層伝送が終了されると、ネット階層伝送記述子生成部88はネット階層伝送記述子の出力を停止する。
このような構成により、通信サーバ装置23からコンテンツのストリーミング配信が行われている間は、放送装置13の放送送信部83は、上記のようなネット階層伝送記述子を含んだ放送信号を配信する。
【0082】
図9は、ネット階層伝送記述子のデータ構成を示す概略図である。図示するように、ネット階層伝送記述子は、記述子タグと、記述子長と、参照先URL長と、参照先URLの各データ項目を含んで構成される。また、図示する例では、ネット階層伝送記述子は、将来の使用のためにリザーブされている未使用領域をも含んでいる。記述子タグおよび記述子長は、PMT内の他の記述子にも含まれるデータ項目である。記述子タグは、当該記述子の種別を表わす8ビット長のデータであり、具体的には、ネット階層伝送記述子に対応する値を適宜定めて使用する。記述子長は、当該記述子のデータの長さを表わす8ビット長の数値データである。未使用領域は、将来の利用のためにリザーブされている8ビット長の領域である。参照先URL長は、後続する参照先URLを表わす文字列の長さをバイト単位で表わす、10ビット長の数値データである。参照先URL長が表わす数値の範囲は、0から1023まで、または1から1024までとする。参照先URLは、参照先のURLを表わす文字列のデータである。受信機側で放送信号の受信が遮断された際には、受信機は、ここに示す参照先URLを用いて、通信コンテンツを配信するサーバ装置にアクセスすることができるようにしている。なお、各データ項目の長さは、一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【0083】
次に、受信機3の動作について説明する。
図10は、放送信号の受信が可能な状態において受信機2によるコンテンツ視聴が開始されたときの動作手順を示すフローチャートである。なお、同図は、コンテンツの視聴開始後、通信受信部61による受信に切り替えるまでの手順を示す。以下、このフローチャートに沿って説明する。
【0084】
まずステップS71において、放送受信部51は放送信号の受信を開始する。また、受信状況判定部54は放送信号の受信状況の判定を開始する。受信状況判定部54は、受信状況の判定結果を切替制御部55等に伝える。前述の通り、このフローチャートは放送信号の受信が可能な状態においてコンテンツ視聴が開始されたときの処理手順を示すものであるため、初期段階では、受信状況判定部54は放送信号が受信可能であると判定する。
【0085】
次にステップS72において、受信機3は、放送信号から抽出したPMTを取得し、PMT内にネット階層伝送記述子が存在する場合には、ネット階層伝送記述子に含まれる通信サーバ情報(URL)を最新状況記憶部65に書き込む。このステップにおける通信サーバ情報の取得は、受信機の電源がオンされて放送信号の受信を開始したとき、および放送チャンネルが切り替えられたときのみに行うようにする。なお、放送信号に含まれるネット階層伝送記述子から通信サーバ情報を取得することにより、受信機3は、常に最新の通信サーバ情報を取得することができる。
また、放送信号が受信可能であると受信状況判定部54が判断した場合には、切替制御部55は、放送用デコーダ部53でデコードした映像および音声を切替部71から出力するよう、スイッチの切替を制御する。
【0086】
次にステップS73において、切替制御部55は、最新の放送チャンネルの情報を最新状況記憶部65に書き込む。このステップの処理は、直前に放送チャンネルの切替(例えば、受信機3のリモコン装置の操作による)が行われたときにみに実行するようにする。
【0087】
次にステップS74において、受信状況判定部54は、受信する放送信号のレベルが低下しつつあるか否かを判定する。具体的な例として、受信状況判定部54は、C/N値が予め定めた所定の閾値よりも低下しているか否かを判定する。C/N値が低下している受信状況判定部54が判定した場合(ステップS74:YES)には、次のステップS75の処理に移る。C/N値が低下していないと受信状況判定部54が判定した場合(ステップS74:NO)には、ステップS76の処理に飛ぶ。
ステップS75に進んだ場合、同ステップにおいて通信受信部61は通信サーバ装置23からのコンテンツの受信を開始する。このとき、通信サーバ装置23の通信送信部92の通信サーバ情報(URL等)は、切替制御部55から通信受信部61に渡される。通信受信部61は、渡された通信サーバ情報を用いて、通信サーバ装置23にアクセスする。
【0088】
次にステップS76において、受信状況判定部54は、その時点での放送信号の受信状況を判定する。ここでは、受信状況判定部54は、受信状況が「受信可能」または「受信不可能」のいずれかであるかを判定する。また、受信状況判定部54による判定結果は切替制御部55にも伝えられる。受信可能であると受信状況判定部54が判定した場合(ステップS76:YES)、ステップS72の処理に戻る。このとき、必要に応じて、所定の時間だけ待機してからステップS72に戻るようにしても良い。受信不可能であると受信状況判定部54が判定した場合(ステップS76:NO)には、ステップS77の処理に進む。
【0089】
次にステップS77に進んだ場合、通信受信部61は、通信サーバ装置22からのコンテンツの受信を開始する。既に通信サーバ装置22からの受信を開始していた場合には、引き続きその受信を継続して行う。
そしてステップS78において、切替制御部55は、切替部71への入力となる制御信号として、通信側を選択するように制御する。つまりこの結果、切替部71は、通信用デコーダ部62からの信号を外部に出力するよう、スイッチの切替を行う。
【0090】
このフローチャートで説明したように、本実施形態による受信機3は、放送信号の受信中に信号伝搬状況が変化するなどといった理由で受信が不可能になった場合にも、通信経由でのコンテンツの受信に切り替えて、映像および音声の出力を継続して行なうことができる。
【0091】
図11は、放送信号の受信が不可能な状態において受信機3によるコンテンツ視聴が開始されたときの動作手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って説明する。
【0092】
まずステップS81において、放送受信部51は放送信号の受信を開始する。また、受信状況判定部54は放送信号の受信状況の判定を開始する。前述の通り、このフローチャートは放送信号の受信が不可能な状態において受信機によるコンテンツ視聴が開始されたときの処理手順を示すものであり、受信状況判定部54は放送信号が受信不可能であると判定する。この受信不可能という状況において、番組識別情報分離部57は、PMTを取得することができない。つまり、切替制御部55は、PMTの中のネット階層伝送記述子に含まれるURLを取得することができない。
【0093】
次にステップS82において、切替制御部55は、最新状況記憶部65に記憶されている通信サーバ情報(URLなど)を読み出す。また、切替制御部55は、受信状況判定部54による受信状況の判定結果を取得する。ここでは、切替制御部55は、受信状況判定部54による「受信不可能」という判定結果を取得する。
【0094】
次にステップS83において、通信受信部61は、通信サーバ装置22からのコンテンツの受信を開始する。このとき、通信受信部61は、上のステップS82において切替制御部55が取得した通信サーバ情報を用いることによって、通信受信部61は通信サーバ装置23の通信送信部92にアクセスする。これにより、通信サーバ装置22から受信機2へ、ストリーミングによるコンテンツデータの配信が開始される。
【0095】
次にステップS84において、切替制御部55は、切替部71が通信側を選択するように制御する。その結果、切替部71は、通信用デコーダ部62からの信号を外部に出力するよう、スイッチの切替を行う。
【0096】
このフローチャートで説明したように、本実施形態による受信機3は、放送信号の受信が不可能な状態においてコンテンツ視聴が開始されたとき(電源オンされたときなど)にも、通信によって配信されるコンテンツをデコードし、映像および音声の出力を開始することができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、新たにネット階層伝送記述子を規定し、放送信号内にネット階層伝送記述子が含まれている場合にも含まれていない場合にも受信機側では正常な動作をすることができるため、既存のデジタルテレビ受信機には影響を及ぼさず、放送と通信を融合したサービスを受信するための新規の受信機に対して、放送信号が受信不可となった場合にも通信によるコンテンツ配信に引き継いでコンテンツの配信を継続することのできるサービスを提供できる。
【0098】
<変形例> 次に、第3の実施形態の変形例について説明する。この変形例では、第2の実施形態において示したように、切替制御部55の機能を、アプリケーションプログラムによって実現する。具体的には、
図8に示した構成において、受信機3の中の切替制御部55の代わりに、アプリケーションエンジン部56を設ける。このアプリケーションエンジン部56は、第2の実施形態において説明したアプリケーションエンジン部56と同様の機能を有し、同様の処理手順によって動作する。なお、アプリケーションプログラムのコード自体については、受信機3は、外部に設けられたアプリケーションサーバ装置(
図5におけるアプリケーションサーバ部96の機能に相当する装置)から取得するようにする。あるいは、受信機3が予めアプリケーションを記憶部に保持しておくようにする。
【0099】
なお、第3の実施形態においては番組識別情報分離部57とネット階層伝送記述子判定部58とが設けられており、アプリケーションエンジン部56において稼動するアプリケーションは、ネット階層伝送記述子判定部58によって取得された通信サーバ情報(URL)を受け取る。そして、そのアプリケーションはその通信サーバ情報を通信受信部61に渡し、通信受信部61はその通信サーバ情報を用いて通信サーバ装置23の通信送信部92にアクセスする。このように、本変形例においても、送信装置側から送られてくるPMTに含まれているネット階層伝送記述子を用いて、代替伝送手段である通信サーバ装置23からのコンテンツ配信が行われる。なお、本変形例においても、アプリケーションは、ネット階層伝送記述子から取得された通信サーバ情報を、最新状況記憶部65に書き込んでおくようにする。これにより、受信機3の電源オンの時点で放送信号を受信できないような状況においても、最新状況記憶部65から読み出した通信サーバ情報を用いて、通信によるコンテンツ配信を受信することが可能となる。
【0100】
なお、上述した複数の実施形態における受信機、放送装置、通信サーバ装置の機能の一部をコンピューターで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピューター読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピューターシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0101】
<さらなる変形例> 第1〜第3の実施形態では、放送信号が受信不可となったときに切替部71を切り替えて通信経由で受信したコンテンツを出力するようにしたが、逆に、受信状況判定部54の判定により、放送信号の受信状況が受信不可から受信可能に回復した場合に、切替制御部55またはアプリケーションエンジン部56がその通知を受けて、切替部71が放送により受信したコンテンツを出力するようにスイッチを切り替えても良い。
【0102】
以上、この発明の実施形態およびその変形例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。