(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238533
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ガス処理装置の運転方法およびガス処理装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20171120BHJP
B01D 53/72 20060101ALI20171120BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
B01J19/08 EZAB
B01D53/72
H05H1/24
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-49587(P2013-49587)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-172022(P2014-172022A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 和伸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛仁
(72)【発明者】
【氏名】クリニッチ セルゲイ
【審査官】
関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−021384(JP,A)
【文献】
特開平11−300159(JP,A)
【文献】
特開2001−190926(JP,A)
【文献】
特開2008−168284(JP,A)
【文献】
特開平04−244216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/08
B01D 53/72
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス電源を設けて、ガス流通部に流通する原料ガスにパルス電圧を印加してガス処理を行うガス処理装置の運転方法であって、
前記パルス電源が、パルス生成周波数を変更自在に構成され、
前記原料ガスがメタン含有ガスであり、
生成ガス中のメタン濃度が上昇するのに従って前記パルス生成周波数が大きくなるように変更制御するとともに、生成ガス中のメタン濃度が上昇した場合に、前記ガス流通部に供給される前記原料ガスにエア供給して、原料ガスのメタン濃度を適正領域にまで希釈するガス処理装置の運転方法。
【請求項2】
前記パルス電源が、パルス生成電圧を変更自在に構成され、
生成ガス中のメタン濃度が上昇するのに従って前記パルス生成電圧が大きくなるように変更制御する請求項1に記載のガス処理装置の運転方法。
【請求項3】
パルス電源を設けて、原料ガス供給部からガス流通部に供給される原料ガスにパルス電圧を周期的に印加して生成ガス排出部に生成ガスを排出するガス処理装置であって、
前記パルス電源が、パルス生成周波数を変更自在に構成され、
前記原料ガスがメタン含有ガスであり、
前記生成ガス排出部にガス分析部を設けるとともに、
生成ガス中のメタン濃度が上昇するのに従って前記パルス生成周波数が大きくなるように変更制御するとともに、生成ガス中のメタン濃度が上昇した場合に、前記ガス流通部に供給される前記原料ガスにエア供給して、原料ガスのメタン濃度を適正領域にまで希釈する制御装置を設けたガス処理装置。
【請求項4】
前記パルス電源が、パルス生成電圧を変更自在に構成され、
前記制御装置が、生成ガス中のメタン濃度が上昇するのに従って前記パルス生成電圧が大きくなるように変更制御可能に設けられている請求項3に記載のガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス電源を設けて、ガス流通部に流通する原料ガスにパルス電圧を印加してガス処理を行うガス処理装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年排ガス中に含まれる二酸化炭素が地球温暖化ガスとして注目されているが、燃焼排ガス中に含まれる可燃性ガスも地球温暖化ガスとして知られているため、排ガス中から除去することが望まれている。
このようなガス処理にパルス放電技術を使用することが特許文献1に提案されている。
【0003】
特許文献1では、ボイラー、自動車のディーゼルエンジンの排出ガス処理や、脱臭を目的としている。この処理では、例えば、特にアンモニアにプラズマを印加したNH,NH2,NH3ラジカルを形成し、煙道中に注入して排ガス中のNOxをN2に還元する。
【0004】
特許文献1に開示の技術は非平衡プラズマを利用する。非平衡プラズマは電子温度が高く、ガス温度は電子温度と比較して極端に低い状態であり、常温、常圧での利用が可能である。すなわち触媒反応のような高温度が必要な反応機構であっても、非平衡プラズマを用いることにより、反応場の温度上昇を抑制しつつ、反応を進行させることができる。排ガス処理能力や燃料改質効率を向上させるために、非平衡プラズマの生成方法の検討がなされており、特に近年では電源回路技術の発展により、様々は電源を用いたプラズマ技術が研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−029862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、パルス高電圧電源、交流高電圧電源、直流高電圧電源、矩形波高電圧電源等を用いて反応器内でプラズマを生成し、排ガス処理や燃料改質などを行うものであり、たとえば、数nsで電圧が立ち上がり、パルス幅100ns未満の高電圧パルス電源が使用される。パルス周波数(本願にいう「パルス生成周波数」)は1KHzと一定である。しかし、一般に、投入エネルギーと変換効率はトレードオフの関係にあり、このようなパルス電源では、投入エネルギー当たりの変換効率を高めることが困難で、この変換効率を向上すること、すなわち、少ないエネルギーでより変換効率をあげることが求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ガス流通部に流通する原料ガスにパルス電圧を用いて、より効率よく、生成ガスを得る技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔構成1〕
上記目的のための本発明のガス処理装置の運転方法の特徴構成は、
パルス電源を設けて、ガス流通部に流通する原料ガスにパルス電圧を印加してガス処理を行うガス処理装置の運転方法であって、
前記パルス電源が、パルス生成周波数を変更自在に構成され、
前記原料ガスがメタン含有ガスであり、
生成ガス中のメタン濃度が上昇するのに従って前記パルス生成周波数が大きくなるように変更制御する
とともに、生成ガス中のメタン濃度が上昇した場合に、前記ガス流通部に供給される前記原料ガスにエア供給して、原料ガスのメタン濃度を適正領域にまで希釈する点にある。
【0009】
〔作用効果1〕
パルス電源を設けて、ガス流通部に流通する原料ガスにパルス電圧を印加してガス処理を行うガス処理装置は、プラズマを生成することで、多量の化学活性種を効率良く生成することが可能となる。
【0010】
ここで、化学活性種の量を増加させるために、電圧を上げることが考えられるが、エネルギーがガスの温度上昇分に消費される割合が多くなり、エネルギー効率が低下するおそれがある。しかし、近年、パルス電圧を上げるのに変えて、パルス生成周波数を変更することによっても、効率よくプラズマを発生させて、多量の化学活性種を発生させられることが明らかになってきている。
【0011】
そこで、前記パルス電源として、パルス生成周波数を変更自在に構成したものを採用すると、パルス生成周波数を変更して、適正量の化学活性種を発生させる条件を選択できるようになる。パルス生成電圧を上げることなくパルス生成周波数のみ変更すると、ガス温度を上げることなく電子温度の高いプラズマを高頻度で生成することになるから、時間当たりのプラズマ供給量が増えることになり、プラズマの生成に消費された電力が、効率よく化学活性種の生成に用いられるようになる。
【0012】
そして、この化学活性種を前記原料ガスとしてのメタン含有ガスに作用させると、原料ガス中のメタンを酸化して原料ガス中から二酸化炭素として除去することが可能になる。この場合、環境温度、原料ガス中のガス成分の濃度の変動などによって、適正な化学活性種の量が不足し、十分なメタン酸化除去ができなくなる場合が考えられる。メタンの酸化除去が不十分になり始めると、生成ガス中のメタン濃度が上昇する。そこで、上昇したメタン濃度にしたがって前記パルス生成周波数が大きくなるように変更制御すると、前記パルス電源による化学活性種発生量を増加させ、メタン酸化除去能力を回復させることができる。例えば、メタン濃度を一定以下に抑えたい場合、メタン濃度が当該一定値を越えた状態で、現行で採用しているパルス生成周波数より予め定めておいた一定値だけ増大させる(なお、一定値以下とならない場合は、さらに増大させる)ことで、メタン濃度を所望の濃度に保つことができる。
また、加えて、原料ガス中のメタン濃度が高すぎるなどして、排出される生成ガス中のメタン濃度が上昇した場合に、エア供給して、原料ガスのメタン濃度を適正領域にまで希釈する制御を行うことにより、メタンの変換能力を向上させることもできる。
【0013】
したがって、メタン含有ガス中のメタンを酸化除去するようなガス処理装置において、必要最小限のエネルギー量で、ガス処理を行う状態を維持できるようになった。
【0014】
〔構成2〕
また、上記構成に加えて、前記パルス電源が、パルス生成電圧を変更自在に構成され、
生成ガス中のメタン濃度が上昇するのに従って前記パルス生成電圧が大きくなるように変更制御するようにしてもよい。
【0015】
〔作用効果2〕
上記構成によると、パルス電圧の供給エネルギーに対して、高い効率でメタン含有ガス中のメタンを酸化除去するガス処理が可能になるが、さらに応答性良くパルス電源による化学活性種発生量を増加させるには、前記パルス生成周波数に加えて、パルス電圧も併せて変更制御することができる。この場合、ガス温度の上昇を伴うが、ガス温度の上昇により触媒反応の進行度合いを調整したり、反応速度を向上させたりする効果が期待できるので、ガス処理装置の反応環境に応じて採用することができる。この構成を採用する場合も、例えば、メタン濃度を一定以下に抑えたい場合、メタン濃度が当該一定値を越えた状態で、現行で採用しているパルス生成周波数より予め定めておいた一定値だけ増大させる、その操作に加えて、現行で採用しているパルス生成電圧より予め定めておいた一定値だけ増大させる(なお、一定値以下とならない場合は、さらに増大させる)ことで、メタン濃度を所望の濃度に保つことができる。
【0016】
〔構成3〕
また、上記目的のための本発明のガス処理装置の特徴構成は、
パルス電源を設けて、原料ガス供給部からガス流通部に供給される原料ガスにパルス電圧を周期的に印加して生成ガス排出部に生成ガスを排出するガス処理装置であって、
前記パルス電源が、パルス生成周波数を変更自在に構成され、
前記原料ガスがメタン含有ガスであり、
前記生成ガス排出部にガス分析部を設けるとともに、
生成ガス中のメタン濃度が上昇するのに従って前記パルス生成周波数が大きくなるように変更制御する
とともに、生成ガス中のメタン濃度が上昇した場合に、前記ガス流通部に供給される前記原料ガスにエア供給して、原料ガスのメタン濃度を適正領域にまで希釈する制御装置を設けた点にある。
【0017】
〔作用効果3〕
上記構成によると、前記パルス電源が、パルス生成周波数を変更自在に構成されているから、原料ガスにパルス電圧を印加して生成ガスを得るガス処理装置の運転が可能となる。ここで、前記原料ガスがメタン含有ガスであるから、原料ガス中のメタンガスを酸化除去する処理反応を行うことができる。また、前記生成ガス排出部にガス分析部を設けると、その分析部におけるメタン濃度により、前記処理反応の進行度合いを知ることができる。メタン濃度が上昇すると、この進行度合いが低下していることを意味しているから、生成ガス中のメタン濃度が上昇するのにしたがって、前記制御装置が、前記パルス生成周波数が大きくなるように変更制御することにより、前記処理反応の進行を促進して、反応効率を高めることができる。
また、加えて、原料ガス中のメタン濃度が高すぎるなどして、生成ガス排出部より排出される生成ガス中のメタン濃度が上昇した場合に、ガス流通部に供給される原料ガスにエア供給して、原料ガスのメタン濃度を適正領域にまで希釈する制御を行うことにより、メタンの変換能力を向上させることもできる。
【0018】
〔構成4〕
また、上記構成に加えて、前記パルス電源が、パルス生成電圧を変更自在に構成され、
前記制御装置が、前記生成ガス中のメタン濃度が上昇するのに従って前記パルス生成電圧が大きくなるように変更制御可能に設けられてもよい。
【0019】
〔作用効果4〕
上記構成によると、パルス電圧の供給エネルギーに対して、高い効率でメタン含有ガス中のメタンを酸化除去するガス処理が可能になるとともに、応答性良くパルス電源による化学活性種発生量を増加することができる。
【発明の効果】
【0020】
したがって、ガス流通部に流通する原料ガスにパルス電圧を用いて、より効率よくメタンガスを酸化除去した生成ガスを得るガス処理装置およびその運転方法を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】メタンが酸化されるパルス生成周波数とパルス生成電圧との関係を示すグラフ
【
図3】分析部における各種ガス検知出力のパルス生成周波数依存性を示すグラフ
【
図4】本発明のガス処理装置の異なる制御を行う場合の概略図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明のガス処理装置を説明する。なお、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0023】
〔ガス処理装置〕
ガス処理装置は、
図1に示すように、パルス電源1を設けて、原料ガス供給部2からガス流通部3に供給される原料ガスにパルス電圧を周期的に印加して生成ガス排出部4に生成ガスを排出する構成としてある。ここで、前記パルス電源1は、パルス生成周波数を変更自在に構成されている。
【0024】
このガス処理装置は、前記原料ガスとして排ガス等に含まれるメタン含有ガスを酸化除去自在に構成され、前記生成ガス排出部4にガス分析部5を設けてあるとともに、生成ガス中のメタン濃度が上昇するのにしたがって前記パルス生成周波数が大きくなるように変更制御する制御装置6を設けてある。即ち、メタン濃度が一定値を越えた場合に、現行で採用しているパルス生成周波数より予め定めておいた一定値だけ増大させる(なお、一定値以下とならない場合は、さらに増大させる)構成とされている。
【0025】
また、加えて、原料ガス供給部2には、希釈用ガス供給部21を設けて構成することもでき、原料ガス中のメタン濃度が高すぎるなどして、生成ガス排出部4より排出される生成ガス中のメタン濃度が上昇した場合に、希釈用ガス供給部21にエア供給して、前記原料ガスのメタン濃度を適正領域にまで希釈する制御を行うことや、酸素や希ガス(Ar,Heなど)を供給してプラズマを生成することにより、メタンの変換能力を向上させることもできる構成となっている。
【0026】
〔ガス流通部〕
ガス流通部3としては、ガス流通部3として、同軸円筒式のものや、触媒を併用する形態のものや水膜式のものなど、種々公知の形態のガス流通部3を採用することができる。
【0027】
図1に示すガス処理装置におけるガス流通部3はガス流通管31の一方面に銅箔を付設して、接地電極32を設けるとともに、他方面に棒状の放電極33を設けて、前記放電極33から、高電圧パルスを印加して、前記ガス流通管31内部に、非平衡プラズマを発生させる構造としてある。
【0028】
そして、前記ガス流通管31の一端部側には、前記原料ガス供給部2を接続するとともに、ガス流通管31内部に発生した非平衡プラズマを前記原料ガスに接触させ、前記非平衡プラズマにより発生したOH,O,HO
2などのラジカルに代表される活性化学種により、原料ガスに含まれるメタンを酸化して、二酸化炭素に変換することができる構成とし、他端部側は生成ガス排出部4に接続してあり、ガス流通管31内部に生成したメタン濃度の低減された生成ガスを排出可能に構成してある。
【0029】
〔パルス電源〕
また、前記パルス電源1は、交流電源を用いて、方形波電圧パルスを発生可能にするパルス電源回路を備え、制御装置6からの制御信号にしたがって、発生パルスの電圧およびパルス生成周波数を変更可能に設けてある。メタン濃度が一定値を越えた場合に、現行で採用しているパルス生成周波数より予め定めておいた一定値だけ増大させる、その操作に加えて、現行で採用しているパルス生成電圧より予め定めておいた一定値だけ増大させる(なお、一定値以下とならない場合は、さらに増大させる)構成とされている。
【0030】
〔ガス分析部〕
前記ガス分析部5は、前記生成ガス排出部4に排出される生成ガスのメタンを検知するメタンセンサ51を備え、生成ガス中のメタン濃度に対応する出力を、前記制御装置6に出力可能に設けてある。メタンセンサ51としては種々公知のものが用いられ、生成ガス中のメタン濃度を、電気出力等として制御装置6に出力可能な構成であれば好適に用いられる。
【0031】
〔制御装置〕
前記制御装置6は、前記ガス分析部5からの出力を受け、前記出力生成ガス中のメタン濃度が所定以上になったものと判定されるときは、前記パルス電源1のパルス生成周波数を増加させる制御を行う。また、前記メタン濃度の上昇速度に応じて前記パルス電源1のパルス生成周波数を増加させる制御を行うこともでき、これらに加えて、前記パルス電源1のパルス生成電圧を増加させる制御を行うこともできる。これにより、非平衡プラズマによるメタン酸化反応を、より完全に進行できるようになる(
図2参照)。
【0032】
具体的には、放電エネルギーを1パルス当たりの電圧と周波数の関数として表し、電圧と周波数の関数である放電エネルギーをエネルギーマップとしてあらかじめ前記制御装置6に設けられる演算部61に記憶させておく。ここで、印加した電圧値が同じ場合は、1パルスあたりの放電エネルギーは同じである。また、周波数が変化しても、1パルス当たりの放電エネルギーは一定と仮定できるから、印加電圧(v)と周波数(f)の関数として放電エネルギー(E)を算出することができる。
そこで前記制御装置6は、前記出力生成ガス中のメタン濃度が所定以上になったものと判定されるときは、前記エネルギーマップを参照して、パルス発生周波数(f)を増加させ、前記放電エネルギー(E)を増加させる制御を行う。
【0033】
〔メタンの酸化条件〕
図2にパルス生成周波数(横軸)およびパルス生成電圧(パルスのピーク電圧:縦軸)が可変なパルス電源1を用い、メタンが酸化されるパルス生成周波数とパルス生成電圧との関係を調べたグラフを示す。この条件でパルス幅は10nsと一定とした。
図2によると、所定のパルス生成周波数のパルス電圧を供給したときにパルス電圧が増加するにつれて、発生するプラズマによるメタン酸化能力が強くなることがわかった。このグラフの見方を変えると、所定のパルス生成電圧のパルス電圧を供給した場合に、パルス電源1のパルス生成周波数を増加させるにつれて、発生するプラズマによるメタン酸化能力が強くなることも読み取れ、ガス分析部5におけるメタン濃度の上昇にしたがって、パルス生成周波数を増加させることにより、ガス流通部3におけるメタン酸化処理能力を高められ、ガス分析部5において酸化しきれずに残留するメタンを、確実に酸化処理可能な非平衡プラズマを発生させられることがわかる。
【0034】
〔メタン除去性能〕
図3に所定濃度のメタンを含有する空気を、希釈することなく、原料ガスとしてガス流通部3に供給し、前記非平衡プラズマによりメタンが酸化されて生成する生成ガスの組成の変動を示す。この
図3によると、上記ガス処理装置により、所定流量で前記原料ガスを処理すると、ある程度の周波数のパルス電圧により、非平衡プラズマが生成し、ガス流通部内に流通するメタンは酸化を始めるが、初期的には、二酸化炭素と一酸化炭素とが同時に発生し、メタン濃度も大きくは低下しないものの、パルス生成周波数を増加するにしたがって、メタン濃度が低下するとともに、二酸化炭素濃度が上昇し、ある程度以上の周波数でパルス電圧を供給すれば、メタンをほぼ完全に酸化除去できる最低周波数(
図3に矢示する)として設定することができる。
【0035】
そこで、パルス電源1としては、前記最低周波数近傍でパルス電源1を駆動制御しておき、生成ガス中のメタン濃度増加に伴って、パルス生成周波数を増加させる制御を行うと、最も効率よく、少ないエネルギー供給でメタンの酸化除去を行えることがわかる。
【0036】
また、前記最低周波数近傍でパルス電源1を駆動制御しておき、生成ガス中のメタン濃度増加に伴って、パルス生成電圧を増加させる制御を行うことにより、エネルギー供給量の増加を抑制した状態で、メタンの酸化除去を行える条件を迅速に維持変更できることがわかる。
【0037】
〔別実施形態〕
上記制御装置に関して、エネルギーマップを参照してパルス電源を駆動制御するのに代え、
図4に示すように、前記パルス電源に設けられる電圧プローブ11、電流プローブ12からの電圧値(v)、電流値(i)をモニタする構成として、実際に放電されたエネルギー(E)は、電圧値(v)、電流値(i)の積の単位時間あたりの積分値として求められるから、前記制御装置は、電流プローブからの電圧値(v)、電流値(i)をモニタして、放電エネルギーを増加させる制御を行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、排ガス中に含まれるメタンガスの除去等、種々のガス中に含まれるメタンガスを酸化して二酸化炭素として除去するのに用いられる。
【符号の説明】
【0039】
1 :パルス電源
2 :原料ガス供給部
21 :希釈用ガス供給部
3 :ガス流通部
31 :ガス流通管
32 :接地電極
33 :放電極
4 :生成ガス排出部
5 :ガス分析部
51 :メタンセンサ
6 :制御装置