特許第6238748号(P6238748)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238748
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】表面修飾された顔料調製物
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20171120BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20171120BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171120BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20171120BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 5/23 20060101ALI20171120BHJP
   C07D 213/79 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C09B67/20 FCSP
   C09B67/20 A
   C09D201/00
   C09D7/12
   C09D11/02
   C08L101/00
   C08K5/23
   C07D213/79
【請求項の数】11
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2013-546652(P2013-546652)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2014-508191(P2014-508191A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】EP2011072862
(87)【国際公開番号】WO2012089516
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年12月12日
(31)【優先権主張番号】61/428,237
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10197355.0
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ブニオン
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ネスファドバ
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−226726(JP,A)
【文献】 特開2001−187764(JP,A)
【文献】 特開2009−132848(JP,A)
【文献】 特開2009−235337(JP,A)
【文献】 特開平11−323229(JP,A)
【文献】 特開平02−149551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/00
C07D 213/00
C08K 5/00
C08L 101/00
C09D 7/00
C09D 11/00
C09D 201/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)発色基Q1を含む有機顔料;および
(b)100モルの有機顔料(a)基準で0.1〜30モルの式
【化1】
(式中、Q2は発色基Q1のm価残基である;
1およびR2は互いに独立して、C1〜C6アルキルである;
3は、式
【化2】
の基である、
pが1であり、qが1である;
Xは、−CONR6−または−C(=NR7)NR8−である;
Yは、C1〜C25アルキレンであり;
ZはOR9、OCOR9、COOR9またはOCO−ヘテロアリール環系であり、その際、該ヘテロアリールは、ピリジルまたはそれらの4級形態から選択される;
6、R7、R8互いに独立してそれぞれの場合で、Hまたは1〜Cアルキルでり、
9はC〜C18アルキルであり、
mは1〜の整数である)の化合物
を含む顔料調製物。
【請求項2】
発色基Q1を含む有機顔料が、ビス(アントラキノン−1−イル−アミノ)、ビス(アントラキノン−1−イル−オキシ)、1,1’−ジアントラキノリル、ジケトピロロピロール、インダントロン、イソインドリン、イソインドリノン、ペリレン、1−フェニルヒドラゾノ−2−オキシ−3−カルバモイル−1,2−ジヒドロナフタレン、フタロシアニン、キナクリドン顔料、または前記顔料の混合物からなる群から選択される顔料であり、固溶体または混晶を含む、請求項1記載の顔料調製物。
【請求項3】
が1である、請求項1または2記載の顔料調製物。
【請求項4】
1およびR2が互いに独立して、メチルまたはエチルであり、
3が式
【化4】
の基であり、
pが1であり、qが1であり;
Xが−CONR6−または−C(=NR7)NR8−であり;
YがC1〜C6アルキレンであり;
Zが、OR9またはOCOR9あり;
6、R7、R8およびR9が請求項1で定義されるとおりである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項5】
1およびR2が、メチルまたはエチルであり、
3が式
【化5】
の基であり、
pが1であり、qが1であり;
Xが、−CONR6−または−C(=NR7)NR8−であり;
Yが、C1〜C25アルキレンであり;
Zが、OCO−ヘテロアリール環系であり、その際、該ヘテロアリールは、ピリジルまたはそれらの4級形態から選択される;
6、R7、R8およびR9が請求項1で定義されるとおりである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料調製物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかで定義される顔料調製物の製造方法であって、発色基Q1を含む有機顔料の懸濁液を式
【化9】
(式中、R1、R2およびR3は請求項1で定義するとおりである)
のラジカルで処理するステップを含む前記方法。
【請求項7】

【化10】
(式中、
1およびR2は互いに独立して、C1〜C6アルキルである;
3は式
【化11】
の基である、
pが1であり、qが1である;
Xは、−CONR6−である;
Yは、C1〜C25アルキレンであり;
Zは、OCO−ヘテロアリールであり、その際、該ヘテロアリールは、ピリジルまたはそれらの4級形態から選択される;
6は、互いに独立してそれぞれの場合で、Hまたは1〜C18アルキルである)
のアゾ化合物。
【請求項8】
高分子量有機材料、および
前記高分子量有機材料の質量基準で、0.01〜70質量%の請求項1〜5のいずれか1項に記載の顔料調製物
を含む着色組成物。
【請求項9】
組成物がコーティング組成物であり、有機材料が有機皮膜形成バインダーである、請求項記載の組成物。
【請求項10】
基体上に請求項で定義されるコーティング組成物を硬化させることによって製造されるコーティング。
【請求項11】
プラスチック、コーティング組成物または印刷インクを着色するための、請求項1〜5のいずれか1項で定義される顔料調製物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常、高濃度で不十分な分散性および/またはレオロジーの傾向がある有機顔料、および脂肪族炭素原子、すなわち非芳香族炭素原子により結合した1以上の特定の有機置換基を含むそれらの誘導体を含む顔料調製物、その製造の方法、ならびにコーティング、プラスチックおよびインクなどの有機材料の着色におけるその使用に関する。
【0002】
多くの用途では、性能、例えば、分散性、分散安定性および相溶性を増強するために、顔料表面を修飾することが要求され、これによって不溶性顔料のより良好な加工が可能になる。様々な技術、例えば、ポリマーの吸着、レジネーション、顔料誘導体の吸着、無機化合物での処理および、そして最近では顔料上への特定の反応物質のグラフティングが開発されている。
【0003】
US6,398,858は、着色顔料を製造し、ジアゾ化可能な化合物を使用し、そして少なくとも1つの芳香族および/またはC1〜C20アルキル基ならびに少なくとも1つのイオン性、イオン化可能および/または非イオン性基を含む基によって置換された顔料をもたらす方法を開示する。非イオン性基は、親水性基、疎水性基、アルキルおよびアリール基、エーテル、ポリエーテル、アルキル、フッ素化アルキルなどを含んでもよい。実施例はスルファニル酸またはp−アミノ安息香酸のみを使用する。
【0004】
US6,494,943およびUS6,506,245は、顔料がジアゾ化剤の存在下で流体力学的キャビテーションによって表面修飾された、着色顔料を含有するインクジェットインクおよび他の組成物を開示する。表面修飾は、アリールおよびヘテロアリール基、例えば、イミダゾリルおよびインドリルを含む芳香族基を連結することによって得られる。表面修飾のために例示される特定の試薬は、スルファニル酸、p−アミノ−安息香酸、N−p−アミノ−フェニルピリジニウムクロリド、3,5−ビス(トリフルオロメチル)アニリンおよびC.I.ダイレクトブルー71である。
【0005】
WO02/04564は、式−X−Sp−Alk(式中、Xは、アリーレン、ヘテロアリーレンまたはアルキレンであってよく、Spはスペーサー、例えば、スクシンイミジレンであり、Alkは長鎖アルキルまたはアルケニルである)の少なくとも1つの有機基によって置換された無機および有機顔料について言及している。アリール置換されたカーボンブラックの唯一の例が開示される。
【0006】
US6,896,726は、直線状分散剤基でさらに置換されているフェニルまたはナフチル基で部分的に置換された、表面処理された有機顔料、例えば、ジアゾ化プロカインで置換されたC.I.ピグメントレッド255またはジアゾ化4−ヘキサデシル−スルホニルアニリンで置換されたC.I.ピグメントブルー15:3を開示する。
【0007】
EP−A−1790698は、ジケトピロロピロール部分の窒素原子と、CH2連結基により結合した少なくとも1つのカルボキシル基を含有するDPP誘導体を用いた非水性ジケトピロロ−ピロール(DPP)顔料分散液を開示する。
【0008】
US−A−2005/0235874は、とりわけ有機顔料のトリメリット(モノアミド)メチルまたは4’,6’−ビス(ジカルボキシメチルアミノ)−s−トリアジニルアミノメチル誘導体を含む画像記録親水性着色剤を開示する。
【0009】
DE−A−102007031354は、イミダゾリルで置換された顔料誘導体を含むジオキサジンに基づく顔料調製物を開示する。
【0010】
WO2010/146034は、特に高固形分系で改善されたレオロジー特性を有する複素環とアニーリングしたアニリンのジアゾ化による表面修飾顔料組成物を開示する。
【0011】
表面修飾された顔料調製物は引き続き必要とされている。したがって、特に高固形分コーティング系において改善されたレオロジーおよび分散特性を有する、および/または部分結晶性プラスチックの着色において反りを示さない、表面修飾された顔料調製物を提供することが本発明の目的であり、顔料の色特性は、顔料表面の前記修飾によってはっきりとは影響を受けてはならない。
【0012】
最近、機能化された多層カーボンナノチューブは、水溶性アゾ開始剤の1段階フリーラジカル付加によって得られることが示された(Y. Yang et al., Appl. Surface Science 256, 2010, 3286)。結合したカルボキシル基を、Ag+イオンをキレートするためのスカフォールドとして使用し、還元剤の存在下でAg/ナノチューブナノハイブリッドを得ることができる。
【0013】
フリーラジカルを添加してカーボンナノチューブを機能化する類似の方法は、ジアシルペルオキシドを(V. N. Khabashesku et al., J. Am. Chem. Soc. 125, 2003, 15175)もしくは過酸化ジベンゾイルをヨウ化アルキルの存在下で分解することによって、またはジアルキルスルホキシドを過酸化水素およびFe2+イオンと反応させることによって生成するアルキルラジカルを使用する(W. E. Billups et al., Org. Lett. 5(9), 2003, 1471)。
【0014】
所望の特性を有する顔料調製物は、フリーラジカルのグラフトによって顔料表面の発色基に有機基を共有結合させることによって得られ、顔料の色特性は、顔料表面の修飾によってはっきりとは影響を受けないことが判明した。
【0015】
したがって本発明の第一の態様は、(a)発色基Q1を含む有機顔料;および
(b)100モルの有機顔料(a)基準で0.1〜30モルの式
【化1】
(式中、Q2は発色基Q1のm価残基である;
1およびR2は互いに独立して、CN、C1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル(前記アルキルもしくはシクロアルキルは置換されていない、またはDで置換されている)、C6〜C18アリール(前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている)である;あるいは
1およびR2は連結炭素原子と一緒になって5〜12員環を形成し、前記環は置換されていない、またはEで置換され、前記環は、−O−、−NR4−、−N(−OR4)−、または−N+45An-−から選択される1以上の基をさらに含んでもよい;
3は、C1〜C25アルキル、C3〜C25アルケニル(前記アルキルもしくはアルケニルは置換されていない、またはDで置換されている)、C7〜C25アラルキル(C7〜C18アラルキルの前記アリール基は、置換されていない、またはEで置換されている)、または式
【化2】
の基である、
pおよびqは互いに独立して0または1である;
Xは、−O−、−S−、−NR6−、−CONR6−、−COO−、または−C(=NR7)NR8−である;
Yは、C1〜C25アルキレンであり、前記アルキレンは、末端または鎖内に−O−、−S−、−CO−、−COO−、−CONR6−、−NR6−、−N+65An-−、脂環式もしくは芳香環から選択される1以上の基を含んでもよく、前記アルキレンは、Zで1回以上置換されていてもよい;
Zは、H;OR9;OCOR9;CN;NR910;−N+9105An-;C6〜C18アリール(前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている);COOR9;CONR910
【化3】
;SO29;SO39;SO2NR910;SO3-Cat+;もしくはPO(OR92;または複素環式C2〜C20環系(前記環系は、O、S、N、NR4、NOR4、N+45An-またはN+5An-から選択される1以上の基を含み;そして前記環系は置換されていない、またはEで置換されている)である;
4は、HまたはC1〜C4アルキルであり、前記アルキルは置換されていない、またはDで置換されている;
5は、H、C1〜C4アルキル、C7〜C10アラルキルまたはC3〜C5アルケニルである;
6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13は互いに独立してそれぞれの場合で、H、C1〜C18アルキル、C3〜C18アルケニル、C5〜C12シクロアルキル(前記アルキル、アルケニルもしくはシクロアルキルは置換されていない、またはDで置換されている);C6〜C18アリール、C7〜C18アラルキル(C6〜C18アリールまたはC7〜C18アラルキルの前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている)である;あるいは
9およびR10は連結窒素原子と一緒になって5〜7員複素環を形成し、前記環は置換されていない、またはEで置換され、前記環は、−O−、−NR4−または−N+45An-−からなる群から選択される1以上の基を更に含んでもよい;あるいは
12およびR13は連結窒素原子と一緒になって5〜7員複素環を形成し、前記環は置換されていない、またはEで置換され、そして前記環は、O、N、NR4、N+45An-もしくはN+5An-から選択される1以上の基をさらに含んでもよい;あるいは
11およびR12は連結NCN基と一緒になって、5〜7員環状アミジンを形成し、前記アミジンは置換されていない、またはEで置換されている;
Eは、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、COOH、OH、ハロゲン、NR910、−N+9105An-、SO39、SO2NR910またはSO3-Cat+である;
Dは、C1〜C4アルコキシ、OH、COOH、またはハロゲンである;
An-は好適なアニオンの等価物である;
Cat+は好適なカチオンの等価物である;
mは1〜4の整数である;そして

【化4】
の各基は互いに独立して選択される)の化合物
を含む顔料調製物に関する。
【0016】
発色基Q1を含む有機顔料(a)は、典型的には、式
【化5】
(式中、Z1およびZ2は互いに独立してOまたはN−であり、各C・は全ての他のC・から独立してp軌道に1つの電子を有する炭素原子であり、そしてnは1〜4の整数である)
の少なくとも1つの基を含む発色基Q1またはそのシス/トランス異性体を含む有機顔料が好ましい。
【0017】
mが1または2であり、さらに好ましくはmが1である顔料調製物である。
【0018】
共役ケトまたはアゾメチン基を含む有機顔料は、一般的に、高濃度で、特にいわゆる「高固形分」コーティングであまり十分ではない分散性および/またはレオロジーをもたらす。これは、点対称および/または鏡面対称性発色基に基づく有機顔料について特に当てはまる。本発明のために、発色基の対称性は、ハロゲン、アルキルおよび/またはアルコキシなどの色に対して全く影響を及ぼさない、またはごくわずかしか影響を及ぼさない一価周辺置換基を除外して考慮すべきである。そのような技術的に要求の厳しい有機顔料の典型的な例として、アントアントロン、1,1’−ジアントラキノリル、ビス(アントラキノン−1−イル−アミノ)、ビス(アントラキノン−1−イル−オキシ)、BONAジスアゾ縮合、BONAモノアゾ(いくつかのベンズイミダゾロン顔料を含む)、ジケトピロロピロール、ジオキサジン、フラバントロン、インダントロン、イソインドリン、イソインドリノン、イソビオラントロン、ナフタロシアニン、ペリレン、フタロシアニン、ピラントロンおよびキナクリドン顔料が挙げられる。前記顔料の多くは点対称発色基を有し、[ナ]フタロシアニンは鏡面対称性発色基を有するが、さらなる顔料クラスからの2、3の特別な非対称性顔料も本発明を利用する。
【0019】
好適な有機顔料は、式
【化6】
(式中、Z1およびZ2はそれぞれ互いに独立して、OまたはN−であり、各C・は他の全てのCから独立して、p軌道中に1つの電子を有する炭素原子であり、nは1〜4の整数、好ましくは1または2、最も好ましくは1である)の少なくとも1つの基を含む発色基またはそのシス/トランス異性体である。オキソ/イミドで置換されたC原子(C1、C2)の両方の上の数字は、それらを区別するためだけのものである。C・、C1、C2、Z1およびZ2はすべて好ましくは本質的に同じ平面(すなわち、これらの原子の核の周りのすべての仮想の共有結合球を切断する平面を描くことができ、その直径は1.5・10-10m{=1.5Å}、好ましくは1・10-10m{=1Å})にあり、それらは最も好ましくは、拡張された芳香族またはヘテロ芳香族系の一部である。p軌道に1つの電子を有する炭素原子(C・)は、3つの原子に結合する(2つの単結合および1つの二重結合)はずであり、その共有結合球(前記定義のとおり)は、それが結合する3つの原子の核を通って伸びる仮想の平面を切断する。式(X)のシス/トランス異性体は、
【化7】
間の1以上の結合の周りを180°回転することから得られる式として理解すべきである。したがって、例えば各
【化8】

【化9】
(それぞれ互いに独立したC・−C・についてn≧2の場合)
であり得る。
【0020】
式(X)において、破線は、それによって好ましくは芳香族または不飽和環を形成する発色基の他の原子との結合を示す。本発明の顔料の発色基において、場合によって、C1とC2との間に追加の類似または異なる連結があってよい(すなわち、特に多環式顔料の場合)が、これは、少なくとも1つの好ましくは式(X)の平面基(式中、最短の可能な経路についてn=1〜4)が存在する限り、これは必ずしも必要でない。しかしながら、さらなる芳香族または不飽和連結は、全ての原子が同じ平面にあることを必要とせず、nは、C1とC2との間でどの経路が選択されるかによって4より大きくてよい。
【0021】
化合物(b)は、一般的に有機顔料(a)の誘導体である。
【0022】
発色基Q1の残基Q2は、m個の周辺H原子がそれから引き抜かれ、したがってm個の置換基に対する結合の形成を可能にする発色基Q1である(すなわち、Q1
【化10】
と同じである)。周辺H原子は、好ましくは芳香族C原子上にある。発色基Q1および残基Q2は、場合によって、ハロゲン、アルキルおよび/またはアルコキシなどの色に対して大きな影響を及ぼさない1以上の同一または異なる一価周辺置換基で置換されていてもよい。NH、N−M−NおよびNH2基、ならびに色に対して大きな影響を及ぼす他の置換基(すなわち、水素と比べて、主な吸収ピークを400〜700nmの範囲で≧50nm、好ましくは≧30nm移動させる置換基)は、それぞれ発色基Q1および残基Q2の一部と見なされるべきである。発色基Q1が置換されている場合、その残基Q2は、最も適切には、顔料が固溶体でない限り、適切に同じように置換され、後者の場合、発色基Q1および残基Q2は、固溶体の化学的に異なる分子から生じてよい(より反応性が高いものが置換された残基Q2となり、より反応性が低いものが残りの非置換発色基Q1となる)。
【0023】
顔料(a)は原則として任意の所望の有機顔料であってよい。ただし、その表面は本発明の方法によって修飾することができるものとする。通常、顔料は、アントアントロン、ビス(アントラキノン−1−イル−アミノ)、ビス(アントラキノン−1−イル−オキシ)、1,1’−ジアントラキノリル、アントラピリミジン、キナクリドン、キナクリドンキノン、キノフタロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジン、フラバントロン、インダントロン、インディゴ、イソインドリン、イソインドリノン、イソビオラントロン、ペリノン、ペリレン、フタロシアニン、ピラントロンまたはチオインディゴシリーズの顔料である。
【0024】
「顔料」という用語は、前記顔料の混合物ならびに前記顔料と他の顔料との混合物(固溶体および混晶を含む)も含むと理解すべきであり、この混合物は、通例、2〜5、好ましくは2または3の成分からなる。キナクリドンの固溶体および混晶は、例えば、US3,160,510に記載されている。例としては、C.I.(カラーインデックス)ピグメントレッド202、207、209および206ならびにC.I.ピグメントオレンジ48および49が挙げられる。ジケトピロロ[3,4−c]ピロール(DPP)の固溶体および混晶は、例えば、US4,783,540、US5,529,623、US5,708,188およびUS6,036,766に記載されている。DPPタイプの顔料および非DPPタイプの顔料、例えば、キナクリドンまたはキナクリドンキノンの固溶体および混晶は、US4,810,304、US5,472,496、US4,810,304およびUS5,821,373に記載されている。一例として、C.I.ピグメントレッド254およびC.I.ピグメントバイオレット254(γ−修飾)の混合相が挙げられる。不斉ピロロ[3,4−c]ピロールをホストとして含む単相固溶体がUS5,756,746に記載されている。C.I.ピグメントレッド264またはC.I.ピグメントレッド255の固溶体および混晶が好ましい。
【0025】
本明細書中で用いられる「グラフティング」という用語は、顔料表面上の顔料の発色基に有機基を共有結合させ、その機能化をおこなうことを意味する。
【0026】
好ましくは、有機基は、発色基の炭素原子、特に、発色基の芳香族炭素原子と共有結合する。
【0027】
式(X)の基に加えて、本発明の顔料の発色基は、好ましくは、1以上のNH、N−M−NまたはNH2基を含み、Mは二価金属、オキソ−金属またはハロゲノ−金属、例えばCu、Ni、Zn、Al−Cl、Ti=OまたはV=Oである。
【0028】
NH、N−M−NまたはNH2基を含む好ましい発色基は、ビス(アントラキノン−1−イル−アミノ)、ビス(アントラキノン−1−イル−オキシ)、1,1’−ジアントラキノリル、ジケトピロロピロール、インダントロン、イソインドリン、イソインドリノン、ペリレン、1−フェニルヒドラゾノ−2−オキシ−3−カルバモイル−1,2−ジヒドロナフタレン、フタロシアニンおよびキナクリドン顔料の発色基である。1,1’−ジアントラキノリル、ジケトピロロピロール、インダントロン、イソインドリン、イソインドリノン、ペリレン、フタロシアニンおよびキナクリドン顔料の発色基が最も好ましい。
【0029】
好適な顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー24、99、108、109、110、123、138、139、147、173、175、177、179、182、185、193、199および257;C.I.ピグメントオレンジ22、24、31、32、38、40、43、48、49、51、61、66、69、71、73および81;C.I.ピグメントレッド2、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、21、22、23、31、32、83:1、88、90、95、112、114、119、122、123、136、144、146、147、148、149、150、164、166、168、170、174、175、176、177、178、179、180、181、184、185、187、188、190、192、194、202、204、206、207、208、209、210、212、213、214、216、220、221、222、223、224、226、238、242、245、248、253、254、255、256、258、260、261、262、264、270および272;C.I.ピグメントブラウン1、23、25、38、41および42;C.I.ピグメントバイオレット5:1、13、19、23、25、29、31、32、37、42、44および50;C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、25、26、60、63、64および66;C.I.ピグメントグリーン8、12、37、47、54および58;C.I.ピグメントブラック6、20、21、31および32;Vat Red41および74;3,6−ジ(3’,4’−ジクロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン、3,6−ジ(4’−シアノ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−ピロロ[3,4−c]ピロール−1,4−ジオン、ビスベンズイミダゾ[2,1−a:2’,1’−a’]アントラ[2,1,9−def:6,5,10−d’e’f’]ジイソキノリン−10,21−ジオン[CAS55034−79−2]、アントラ[2'',1'',9'':4,5,6;6'',5'',10'':4’,5’,6’]ジイソキノ[2,1−a:2’,1’−a’]ジペルイミジン−12,25−ジオン[CAS6859−32−1]およびWO00/24736の実施例12bによる、またはWO2010/081625の方法(特に、WO2010/08125(参考として本明細書で援用される)の請求項10、11または12に係るもの)にしたがって得られる化合物;ならびに同じ化学式の任意の成分を含む、および/または場合によって同じ結晶格子を有する、混合物、混晶および固溶体が挙げられる。
【0030】
したがって、好ましい態様において、本発明は、発色基Q1を含む有機顔料が、ビス(アントラキノン−1−イル−アミノ)、ビス(アントラキノン−1−イル−オキシ)、1,1’−ジアントラキノリル、ジケトピロロピロール、インダントロン、イソインドリン、イソインドリノン、ペリレン、1−フェニルヒドラゾノ−2−オキシ−3−カルバモイル−1,2−ジヒドロナフタレン、フタロシアニン、キナクリドン顔料、または固溶体もしくは混晶を含む前記顔料の混合物から選択される顔料である、顔料調製物に関する。
【0031】
前記顔料に加えて、本発明の調製物は、前記顔料の誘導体を含んでよく、この誘導体は、顔料と同じ発色基を有する。これらの誘導体は、顔料を適切な試薬と部分的に反応させることによって都合よく製造することができ、かくして、好ましくはその表面上に誘導体の連続もしくは不連続層またはスポットが存在する顔料を形成する。
【0032】
アルキル、例えば、C1〜C4アルキル、C1〜C6アルキル、C1〜C18アルキル、C6〜C18アルキルまたはC1〜C25アルキルは、可能ならば、直線状または分枝炭素原子の所定の範囲内であり得る。例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、1,1,3,3−テトラメチルペンチル、n−ヘキシル、1−メチルヘキシル、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、1−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、テトラコシルおよびペンタコシルが挙げられる。アルコキシ、例えばC1〜C4アルコキシはアルキル−O−である。各アルキルは、置換されていなくてもよい、または前記定義のDで1回以上置換されていてもよい。
【0033】
アルキレン、例えばC1〜C25アルキレン、またはC1〜C18アルキレン、好ましくはC1〜C4アルキレン、C1〜C6アルキレンまたはC6〜C18アルキレンは、アルキルの任意の末端炭素原子から水素原子を除去することによって前記定義のアルキルから誘導することができる。例として、メチレン,エチレン、n−、イソプロピレン、n−、イソ−、s−、t−ブチレン、n−ペンチレン、n−ヘキシレン、n−ヘプチレン、n−オクチレン、n−ノニレン、n−デシレン、n−ウンデシレン、n−ドデシレン、n−トリデシレン、n−テトラデシレン、n−ペンタデシレン、n−ヘキシデシレン、n−ヘプチデシレン、n−オクタデシレン、エイコシレン、ヘンエイコシレン、ドコシレン、テトラコシレンおよびペンタコシレンが挙げられる。
アルキレン基が、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−CONR6−、−NR6−、−N+65An-−、脂環式または芳香環から選択される1以上の基を含有する場合、これらの基は、独立して、一端もしくは両端および/または鎖内に存在してよい。−COO−および−CONR6−基は、−OCO−および−NR6CO−としても結合することができる。好ましくは、1、2または3つの基が含まれ、さらに好ましくは、1または2つの基である。前記基の2つは直接連結されていてもよい。R6は、好ましくはC1〜C18アルキル、C3〜C5アルケニル、C5〜C7シクロアルキル(前記アルキル、アルケニルまたはシクロアルキルは、置換されていない、またはDで1回以上置換されている);C6〜C12アリール、C7〜C10アラルキル(C6〜C18アリールまたはC7〜C18アラルキル中の前記アリールは、置換されていない、またはEで1回以上置換されている)であってよい。
アルキレン基中に存在する脂環式基は、C5〜C7シクロアルキレン、例えば、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、またはシクロヘプチレン、好ましくは1,4−もしくは1,3−シクロヘキシレンであってよい。アルキレン基中に存在する芳香族基は、フェニレンまたはナフチレン、例えば、o−フェニレン、m−フェニレン、p−フェニレン、1,4−ナフチレン、1,5−ナフチレンまたは2,6−ナフチレン、好ましくはp−フェニレンであってよい。さらに、前記アルキレンは、前記定義のZで1回以上、好ましくは1、2または3回、特に1回置換されていてもよい。
【0034】
アルケニル、例えば、C3〜C25アルケニル、C3〜C18アルケニルまたはC3〜C5アルケニルは、可能ならば、直鎖または分枝の炭素原子の所定の範囲内にあり得る。例として、アリル、メタリル、イソプロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、イソブテニル、n−ペンタ−2,4−ジエニル、3−メチル−ブト−2−エニル、n−オクト−2−エニル、n−ドデク−2−エニル、イソドデセニル、オレイル、またはn−オクタデク−4−エニルが挙げられる。「アルケニル」という用語は、共役または非共役であり得る、例えば1つの二重結合を含み得る2以上の二重結合を有する残基も含む。各アルケニルは、置換されていなくても、Dで1回以上置換されていてもよい。
【0035】
シクロアルキル、例えば、C3〜C7シクロアルキル、C5〜C12シクロアルキル、またはC5〜C7シクロアルキルは、炭素原子の所定の範囲内で、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、およびジメチルシクロヘキシル、好ましくはシクロヘキシルであってよい。各シクロアルキルは、置換されていなくても、Dで1回以上置換されていてもよい。
【0036】
アリール、例えばC6〜C18アリールまたはC6〜C12アリールは、炭素原子の所定の範囲内で、フェニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、ナフチル、ビフェニリル、ターフェニリル、as−インダセニル、s−インダセニル、アセナフチレニル、フェナンスリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、クリセニル、ナフタセニル、ピセニル、ペリレニル、ペンタフェニル、ヘキサセニル、ピレニル、またはアントラセニル、好ましくはフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−フェナンスリル、2−もしくは9−フルオレニル、3−もしくは4−ビフェニリル、好ましくは前述の単環式もしくは二環式基であってよい。各アリールは、置換されていなくても、Eで1回以上置換されていてもよい。
【0037】
アラルキル、例えばC7〜C25アラルキル、C7〜C10アラルキル、またはC7〜C18アラルキルは、所定の炭素原子の範囲内で、ベンジル、2−ベンジル−2−プロピル、β−フェニル−エチル(フェネチル)、α,α−ジメチルベンジル、ω−フェニルブチル、ω,ω−ジメチル−ω−フェニル−ブチル、ω−フェニル−ドデシル、ω−フェニル−オクタデシルであってよく、脂肪族および芳香族炭化水素基はどちらも、置換されていなくても、置換されていてもよい。芳香族部分は、Eで1回以上置換されていてもよい;脂肪族部分はDで置換されていてもよい。好ましい例として、ベンジル、フェネチル、α,α−ジメチルベンジル、ω−フェニル−ブチル、ω−フェニル−ドデシルおよびω−フェニル−オクタデシルが挙げられる。
【0038】
例えば、R1およびR2が連結C原子と一緒になって形成する5〜12員環、好ましくは飽和環の例として、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシルおよびシクロドデシルが挙げられる。前記環は、置換されていなくても、Eで1回以上、好ましくは1〜4回置換されていてもよく、さらに、前記環は、−O−、−NR4−、−N(−OR4)−、または−N+45An-−の1以上の部分、好ましくは1つの−NR4−または−N(−OR4)−を含んでいてもよい。
【0039】
前記環の好適な例として、
【化11】
(式中、Eは、互いに独立して、メチルまたはエチルであり、rは、0、1、2、3または4であり、R4は、例えばH、メチル、エチル、プロピル、またはブチルである)、式
【化12】
(式中、R4はHまたはC1〜C4アルキルである)の環、または式
【化13】
(式中、R4はC1〜C4アルキルであり、星印*はR3および式(I)のQ2と連結する炭素原子を意味する)が挙げられる。
【0040】
連結N原子と一緒にR9およびR10によって形成される5〜7員複素環の例は、飽和複素環、例えばイミダゾリジン、ピロリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、アゼパン由来であり得る。前記環は、置換されていなくても、Eで1回以上置換されていてもよい。
【0041】
飽和複素環の好適な例として
【化14】
(式中、Eは、互いに独立して、メチルまたはエチルであり、rは、0、1、2、3または4であり、R4は、H、メチル、エチル、プロピルまたはブチルである)
が挙げられる。
【0042】
連結N原子と一緒にR12およびR13によって形成される5〜7員複素環の例は、飽和複素環、例えばイミダゾリジン、ピロリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、アゼパン、また不飽和複素環、例えばピロール、ピロリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、トリアゾール由来であり得る。それらのうち、環が−O−または−NR4−をさらに含有し得、置換されていないまたはEで1回以上置換された飽和環が好ましい。
【0043】
Zが飽和または不飽和複素環式C2〜C20環系である場合、単環式もしくは多環式であってよい前記環系は、O、S、N、NR4、NOR4、N+45An-またはN+5An-から選択される1以上の基を含有し、置換されていなくても、Eで1回以上置換されていてもよい。好ましくは、C2〜C20環系は、1〜4つの環付加された環と、O、S、N、NR4、NOR4、N+45An-またはN+5An-から選択される5つまでの基とを含む。さらに好ましくは、C2〜C20環系は1〜3つ、例えば1または2つの環付加された環と、1〜3つ、例えば1または2つの基を含む。
【0044】
特に、Zは飽和C2〜C20環系またはC2〜C18ヘテロアリール環系である。
【0045】
環系Zは、典型的には、O、S、N、またはN+5An-から選択される基を含有し、典型的には少なくとも6つの共役π−電子を有する5〜18の原子を有する不飽和複素環式基であるC2〜C18ヘテロアリール、例えば、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ジベンゾ[b,d]チエニル、チアントレニル、フリル、フルフリル、2H−ピラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、2H−クロメニル、キサンテニル、ジベンゾフラニル、フェノキシチエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ビピリジル、トリアジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1H−ピロリジニル、イソインドリル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、3H−インドリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、チノリル、イソチノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、チノキサリニル、チナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フェナンスリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソキサゾリル、フラザニルまたはフェノキサジニルであってよい。各ヘテロアリールは、置換されていなくても、Eで1回以上置換されていてもよい。
【0046】
環系Zはさらに、飽和複素環式C2〜C20環系、好ましくは、O、S、NR4、NOR4、もしくはN+45An-から選択される基を含有する単環式もしくは二環式系、より好ましくは−NR4−もしくは−N(OR4)−を含有する単環式もしくは二環式系、例えば
【化15】
(式中、Eは互いに独立して、メチルまたはエチルであり、rは0、1、2、3または4であり、R4は、H、メチル、エチル、プロピル、またはブチルである)、例えば式
【化16】
(式中、R4はC1〜C4アルキルである)
の環または式
【化17】
(式中、R4はHまたはC1〜C18アルキルであり、星印*は連結炭素原子を示す)
の環であってもよい。
【0047】
Zについて上記で定義したように、複素環内の各窒素原子は可能ならば、好適なカウンターアニオンと結合した4級形態であってもよい。4級窒素を含むヘテロ芳香族基の例として、
【化18】
が挙げられる。
【0048】
好適なアニオンAn-の等価物は、例えば、F-、Cl-、Br-またはI-などのハロゲン化物、あるいはテトラフルオロホウ酸塩、ホウ酸塩、過塩素酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、硫酸塩などの無機酸由来のアニオン、あるいはモノもしくはポリC1〜C18カルボン酸、またはC1〜C18アルコキシ硫酸塩、芳香族もしくは脂肪族スルホン酸塩などの有機酸由来のアニオン、またはそれらの混合物である。
【0049】
Zが、SO29;SO39;SO2NR910;またはPO(OR92である場合、R9およびR10は、好ましくはHまたはC1〜C4アルキルであり、好ましくはHである。
【0050】
例えば、WO02/48268およびWO02/48269に記載されているように、ZがSO3-Cat+である場合、Cat+は好適なカチオンの等価物、例えば、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオン、例えばNa+、K+、1/2Ca2+、またはアンモニウムイオンN+17181920(式中、R17、R18、R19およびR20は互いに独立して、H、C1〜C25アルキル、C3〜C25アルケニル、C7〜C25アラルキルまたは1、2、もしくは3つの構成要素からなる鎖であり、各構成要素は、互いに独立して、−(CH22O−、−(CH23O−、−CH(CH3)CH2O−、−CH2CH(CH3)O−または−CH2CH(CH2O−)O−であり、鎖の末端はH、CH3、C25またはC(=O)CH3である。
例として、アンモニウム、テトラメチル、テトラブチル、メチル−トリ(2−オクチル)アンモニウム、ジ(2−ヒドロキシエチル)−メチル−(シス−9−オクタデセニル)−アンモニウム、オレイル−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチル−アンモニウム、およびココ−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムが挙げられる。
【0051】
ハロゲンは、I、Br、CI、またはF、好ましくはアルキル上Fおよびアリール上ClまたはBrを意味する。
【0052】
「置換された」という用語は、「〜で1回以上置換されている」こと、即ち、可能ならば1〜6回、好ましくは1〜4回、さらに好ましくは1、2または3回置換されていることを意味する。置換基が1つの基中に2回以上出現する場合、それぞれの場合で異なっていてもよい。
【0053】

【化19】
の基の共有結合した炭素原子は、脂肪族炭素原子、特に第3炭素原子であってよい。有利には、本発明は、式(III)の基の共有結合した炭素原子が第3炭素原子である顔料調製物に関する。
【0054】
好ましくは、R1およびR2は互いに独立して、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、n−ブチル、またはCNであり、最も好ましくは、R1およびR2は互いに独立して、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、n−ブチルである、またはR1はメチルであり、R2はCNである。R1およびR2がメチルである顔料調製物が特に興味深い。
【0055】
さらなる好ましい態様において、本発明は、
1およびR2が互いに独立して、C1〜C6アルキル、好ましくはメチルもしくはエチルである、または
1およびR2が連結炭素原子と一緒になって5〜12員環を形成し、前記環は置換されていない、またはEで置換され、前記環は、−O−、−NR4−、−N(−OR4)−、または−N+45An-−から選択される1以上の基をさらに含んでもよい;
3が式
【化20】
の基である、
pおよびqが0である、
Zが、OR9;OCOR9;CN;NR910;N+9105An-;C6〜C18アリール(前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている);COOR9;CONR910
【化21】
;SO29;SO39;SO2NR910;SO3-Cat+;もしくはPO(OR92;または複素環式C2〜C20環系であり、前記環系は、O、S、N、NR4、NOR4、N+45An-またはN+5An-から選択される1以上の基を含み、前記環系は置換されていない、またはEで置換されている;
9、R10、R11、R12およびR13は互いに独立してそれぞれの場合で、H、C1〜C18アルキル、C3〜C8アルケニル、C5〜C7シクロアルキル(前記アルキル、アルケニルもしくはシクロアルキルは置換されていない、またはDで置換されている);C6〜C18アリール、C7〜C18アラルキル(C6〜C18アリールもしくはC7〜C18アラルキル中の前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている)である;あるいは
9およびR10は連結窒素原子と一緒になって5または6員複素環を形成し、前記環は置換されていないか、Eで置換され、そして前記環は、−O−、−NR4−または−N+45An-−から選択される1以上の基をさらに含んでもよい;あるいは
12およびR13は連結窒素原子と一緒になって5または6員複素環を形成し、前記環は置換されていないか、Eで置換され、そして前記環は、O、N、NR4、N+45An-もしくはN+5An-から選択される1以上の基をさらに含んでもよい;または
11およびR12は連結NCN基と一緒になって5または6員環状アミジンを形成し、前記アミジンは置換されていないか、Eで置換されている;そして
4、R5、D、E、An-およびCat+は前記定義のとおりである、顔料調製物に関する。R4は、好ましくはH、メチル、エチルまたは2−ヒドロキシエチルもしくは2−カルボキシエチルである。
【0056】
本明細書中で前述した顔料調製物において、R9、R10、R11、R12、およびR13のさらに好ましい基は、H、C1〜C8アルキル(前記アルキルは置換されていてもよい)、およびフェニル(前記フェニルは置換されていてもよい)である。R9およびR10、またはR12およびR13と、それらが結合している窒素原子が一緒になって形成する5または6員複素環のさらに好ましい例は、イミダゾリジン、ピロリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンなどの飽和複素環由来であってよく、これらは置換されていない、またはEで1回以上置換されている。
【0057】
Zが
【化22】
である場合、好ましくは、R11はHまたはメチルであり、R12およびR13は互いに独立して、HまたはC1〜C4アルキルであり、前記アルキルは、OH、COOHもしくはNH2、またはNMe2で置換されていてよい、あるいはR12およびR13は本明細書中以下で定義するような複素環式基を形成する。
【0058】
あるいは、Zは環状アミジンであり得、R11およびR13は連結NCN基と一緒になって5または6員環を形成する。環状アミジンの例として、
【化23】
(式中、R12はHまたはC1〜C4アルキルであり得、これは、OHもしくはCOOHで置換されていてもよく、例えば、Rは、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、2−ヒドロキシエチルまたは2−カルボキシエチルである;そしてEはC1〜C4アルキルまたはメトキシであり得る)
が挙げられる。
【0059】
さらなる好ましい態様において、本発明は、
1およびR2が互いに独立して、C1〜C6アルキル、好ましくはメチル、またはCNであり、
3が式
【化24】
の基である、
pおよびqが互いに独立して0または1であり、pおよびqの合計は1または2である;
Xが、−O−、−S−、−NR6−、−CONR6−、−COO−、または−C(=NR7)NR8−である;
Yが、C1〜C25アルキレン(前記アルキレンは、末端または鎖内に、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−CONR6−、−NR6−、−N+65An-−、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフチレンから選択される1以上の基を含んでもよく、前記アルキレンは、Zで1回以上置換されていてもよい)であり;
Zが、H;OR9;OCOR9;CN;NR910;−N+9105An-;C6〜C18アリール(前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている);COOR9;CONR910
【化25】
;SO29;SO39;SO2NR910;SO3-Cat+;もしくはPO(OR92;または飽和もしくは不飽和複素環式C2〜C20環系(前記環系はO、S、N、NR4、NOR4、N+45An-またはN+5An-から選択される1以上の基を含み、前記環系は置換されていない、またはEで置換されている)である;
6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13は互いに独立してそれぞれの場合で、H、C1〜C18アルキル、C3〜C8アルケニル、C5〜C7シクロアルキル(前記アルキル、アルケニルまたはシクロアルキルは置換されていない、またはDで置換されている)、C6〜C18アリール、C7〜C18アラルキル(C6〜C18アリールもしくはC7〜C18アラルキル中の前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている)である;あるいは
9およびR10、またはR12およびR13は連結窒素原子と一緒になって5もしくは6員複素環を形成し、前記環は置換されていない、またはEで置換され、そして前記環は、−O−、−NR4−または−N+45An-−をさらに含んでもよい;あるいは
11およびR12は連結NCN基と一緒になって5または6員環状アミジンを形成し、前記アミジンは置換されていない、またはEで置換されている;そして
4、R5、D、E、An-およびCat+は前記定義のとおりである、顔料調製物に関する。R4は、好ましくは、H、メチル、エチル、2−ヒドロキシエチルまたは2−カルボキシエチルである。
【0060】
本明細書中で前述した顔料調製物において、より好ましいR1はCNであり、R2はメチルであり、
3は式
【化26】
の基である、
pは0であり、qは1である;
Yは、C1〜C25アルキレン(前記アルキレンは、末端または鎖内に−CO−、−COO−、−CONR6−、−NR6−、−N+65An-−、フェニレン、またはナフチレンから選択される1以上の基を含んでもよい)である;
Zは、OR9;OCOR9;NR910;−N+9105An-;フェニル、ビフェニリル、1−ナフチルもしくは2−ナフチル(前記フェニル、ビフェニリル、1−ナフチルもしくは2−ナフチルは置換されていない、またはEで置換されている);COOR9;CONR910;SO39;SO2NR910;SO3-Cat+;もしくはPO(OR92;または飽和もしくは不飽和複素環式C2〜C20環系であり、前記環系は、O、S、N、NR4、NOR4、N+45An-またはN+5An-から選択される1以上の基を含み;置換されていない、またはEで置換されている;
6、R9、およびR10は互いに独立してそれぞれの場合で、H、C1〜C4アルキル、C3〜C5アルケニル、C5〜C7シクロアルキル(前記アルキル、アルケニルもしくはシクロアルキルは置換されていない、またはDで置換されている);フェニル、ナフチル、ベンジル、フェネチルである;あるいは
9およびR10は連結窒素原子と一緒になって5または6員複素環を形成し、前記環は置換されていない、またはEで置換され、そして前記環は、−O−、−NR4−または−N+45An-−をさらに含んでもよい;そして
4、R5、D、E、An-およびCat+は前記定義のとおりである。
【0061】
1およびR2がメチルであり、
3が式
【化27】
の基である、
pおよびqが1である;
Xが、−NR6−、−CONR6−、または−COO−である;
YがC1〜C25アルキレンであり、前記アルキレンは末端または鎖内に−CO−、−COO−、−CONR6−、−NR6−、−N+65An-−、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフチレンから選択される1以上の基を含んでもよく、前記アルキレンは、Zで1回以上置換されていてもよい;
Zが、OR9;OCOR9;CN;NR910;−N+9105An-;フェニル、ナフチル(前記フェニルまたはナフチルは置換されていない、またはEで置換されている);COOR9;CONR910
【化28】
;SO39;SO2NR910;SO3-Cat+;もしくはPO(OR92;または飽和もしくは不飽和複素環式C2〜C20環系(前記環系は、O、S、N、NR4、NOR4、N+45An-またはN+5An-から選択される1以上の基を含み、前記環系は置換されていない、またはEで置換されている)である;
6、R9、R10、R11、R12およびR13が互いに独立して、それぞれの場合で、H、C1〜C18アルキル、C3〜C8アルケニル、C5〜C7シクロアルキル(前記アルキル、アルケニルもしくはシクロアルキルは置換されていない、またはDで置換されている)、フェニル、ナフチル、ベンジル、フェネチル(フェニル、ナフチル、ベンジルもしくはフェネチル中の前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている)である;あるいは
9およびR10、またはR12およびR13は連結窒素原子と一緒になって5または6員複素環を形成し、前記環は置換されていない、またはEで置換され、そして前記環は、−O−、−NR4−または−N+45An-−をさらに含んでもよい;あるいは
11およびR12が連結NCN基と一緒になって5または6員環状アミジンを形成し、前記アミジンは置換されていない、またはEで置換されている;そして
4、R5、D、E、An-およびCat+が前記定義のとおりである、本明細書で前述の顔料調製物がさらに好ましい。
【0062】
さらに好ましいのは、R1およびR2が互いに独立して、メチルまたはエチルであり、好ましくはメチルである、
3が式
【化29】
の基である、
pが1であり、qが1である;
Xが−CONR6−、−COO−または−C(=NR7)NR8−である;
YがC1〜C6アルキレンであり、好ましくはエチレン、1,3−プロピレンまたは1,4−ブチレンである;
Zが、OR9;OCOR9;NR910または−N+9105An-である;
6、R7、R8、R9、およびR10が互いに独立してそれぞれの場合で、H、C1〜C18アルキル、C3〜C8アルケニル、C5〜C7シクロアルキル(前記アルキル、アルケニルもしくはシクロアルキルは置換されていない、またはDで置換されている)、C6〜C18アリール、C7〜C18アラルキル(前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている)である;あるいは
9およびR10が連結窒素原子と一緒になって5または6員複素環を形成し、前記環は置換されていない、またはEで置換され、前記環は、−O−、−NR4−またはN+45An-−をさらに含んでもよい;そして
4、R5、D、E、およびAn-が前記定義のとおりである、顔料調製物である。
【0063】
さらに好ましいのは、
1およびR2がメチルまたはエチルであり、好ましくはメチルである、
3が式
【化30】
の基である、
pが1であり、qが1である;
Xが−CONR6−、−COO−、または−C(=NR7)NR8−である;
Yが、C1〜C25アルキレンであり、前記アルキレンは、末端または鎖内に−O−、−CO−、−COO−、−CONR6−、−NR6−、−N+65An-−から選択される1以上の基を含んでもよい;
Zが、フェニル、ナフチル(前記フェニルもしくはナフチルは置換されていない、またはEで置換されている);または飽和複素環式C2〜C20環系もしくはC2〜C18ヘタリール環系であり、前記環系は、O、S、N、NR4、NOR4、N+45An-またはN+5An-から選択される1以上の基を含み、そして前記環系は置換されていない、またはEで置換されている;
6、R7およびR8が互いに独立して、それぞれの場合で、HまたはC1〜C18アルキルである;そしてR4、R5、E、およびAn-が前記定義のとおりである、顔料調製物である。
【0064】
特に好ましいのは、
1およびR2がメチルまたはエチルであり、好ましくはメチルである、
3が式
【化31】
の基である、
pが1であり、qが1である;
Xが、−CONR6−、−COO−、または−C(=NR7)NR8−である;
Yが、C1〜C6アルキレンであり、前記アルキレンは末端で−CO−、−COO−もしくは−CONR6−の基を含む;
Zが、フェニル、ナフチル(前記フェニルもしくはナフチルは置換されていない、またはEで置換されている);または飽和複素環式C2〜C20環系もしくはC2〜C18ヘタリール環系、好ましくは−NR4−もしくは−N(OR4)−、または4−ピリジルもしくは
【化32】
を含む単環系もしくは二環系である;
4、R5、R6、R7およびR8は互いに独立してそれぞれの場合で、HまたはC1〜C18アルキルである;そして
An-が前記定義のとおりである、顔料調製物である。
【0065】
1およびR2が互いに独立して、メチルである、
3が式
【化33】
の基である、
pが1であり、qが1である;
Xが、−CONR6−、−COO−または−C(=NR7)NR8−である;
YがC1〜C6アルキレンであり、好ましくはエチレン、1,3−プロピレンまたは1,4−ブチレンである;
Zが、OR9;OCOR9;NR910または−N+9105An-である;
6、R7、R8、R9、およびR10が互いに独立して、それぞれの場合で、H、C1〜C18アルキル、またはフェニルであり、前記フェニルは置換されていない、またはEで置換されている;そして
5およびAn-が前記定義のとおりである、顔料調製物も特に好ましい。
【0066】
Zが、SO29;SO3R9;SO2NR910;SO3-Cat+;またはPO(OR92であり、
9およびR10が、互いに独立して、HまたはC1〜C18アルキルであり、そして
An-およびCat+が前記定義のとおりである、前記の任意の態様で記載した顔料調製物がさらに好ましい。
【0067】

【化34】
の好適な基は、例えば、顔料調製物により高い疎水性特性を付与する基であり得る。
【0068】
したがって、さらなる好ましい態様において、本発明は、
1およびR2が互いに独立してC1〜C6アルキルである、または
1およびR2が、連結炭素原子と一緒になって5〜12員脂環式環を形成し、前記環は置換されていない、またはEで置換されている;
3は、C1〜C25アルキル、C3〜C25アルケニル(前記アルキルもしくはアルケニルは置換されていない、またはDで置換されている)、C7〜C25アラルキルである(C7〜C25アラルキル中の前記アリール基は置換されていない、またはEで置換され、そしてDおよびEは互いに独立してC1〜C4アルキルである)、顔料調製物に関する。
【0069】
所望により、成分(b)の化合物は、反応混合物から好適な溶媒で抽出することができ、再沈殿させることができるが、一般的に、得られたままの顔料調製物の形態で使用することがより有効である。
【0070】
したがって、本発明はさらに、式
【化35】
(式中、Q2は、ビス(アントラキノン−1−イル−アミノ)、ビス(アントラキノン−1−イル−オキシ)、1,1’−ジアントラキノリル、ジケトピロロピロール、インダントロン、イソインドリン、イソインドリノン、ペリレン、1−フェニルヒドラゾノ−2−オキシ−3−カルバモイル−1,2−ジヒドロナフタレン、キナクリドン顔料、または固溶体もしくは混晶を含む前記顔料の混合物から選択される有機顔料中に含まれる発色基Q1のm価残基である;
1およびR2は互いに独立して、CN、C1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル(前記アルキルもしくはシクロアルキルは置換されていない、またはDで置換されている)、C6〜C18アリール(前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている)である;あるいは
1およびR2は連結炭素原子と一緒になって5〜12員環を形成し、前記環は置換されていない、またはEで置換され、前記環は、−O−、−NR4−、−N(−OR4)−、または−N+45An-−から選択される1以上の基をさらに含んでもよい;
3は、C1〜C25アルキル、C3〜C25アルケニル(前記アルキルもしくはアルケニルは置換されていない、またはDで置換されている)、C7〜C25アラルキル(C7〜C18アラルキル中の前記アリール基は置換されていない、またはEで置換されている)、あるいは式
【化36】
の基である、
pおよびqは互いに独立して0または1である;
Xは、−O−、−S−、−NR6−、−CONR6−、−COO−、または−C(=NR7)NR8−である;
Yは、C1〜C25アルキレン(前記アルキレンは、末端または鎖内に−O−、−S−、−CO−、−COO−、−CONR6−、−NR6−、−N+65An-−、脂環式もしくは芳香環から選択される1以上の基を含んでもよく、そして前記アルキレンは、Zで1回以上置換されていてもよい)である;
Zは、H;OR9;OCOR9;CN;NR910;N+9105An-;C6〜C18アリール(前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている);COOR9;CONR910
【化37】
;SO29;SO39;SO2NR910;SO3-Cat+;もしくはPO(OR92;または複素環式C2〜C20環系(前記環系はO、S、N、NR4、NOR4、N+45An-またはN+5An-から選択される1以上の基を含み、前記環系は置換されていない、またはEで置換されている)である;
4は、HまたはC1〜C4アルキルであり、前記アルキルは置換されていない、またはDで置換されている;
5は、H、C1〜C4アルキル、C7〜C10アラルキルまたはC3〜C5アルケニルである;
6、R7、R8、R9、R10、R11、R12およびR13は互いに独立してそれぞれの場合で、H、C1〜C18アルキル、C3〜C18アルケニル、C5〜C12シクロアルキル(前記アルキル、アルケニルもしくはシクロアルキルは置換されていない、またはDで置換されている);C6〜C18アリール、C7〜C18アラルキル(C6〜C18アリールもしくはC7〜C18アラルキル中の前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている)である;あるいは
9およびR10は連結窒素原子と一緒になって5〜7員複素環を形成し、前記環は置換されていない、またはEで置換され、そして前記環は、−O−、−NR4−または−N+45An-−から選択される1以上の基をさらに含んでもよい;あるいは
12およびR13は連結窒素原子と一緒になって5〜7員複素環を形成し、前記環は置換されていない、またはEで置換され、そして前記環は、O、N、NR4、N+45An-またはN+5An-から選択される1以上の基をさらに含んでもよい;または
11およびR12は連結NCN基と一緒になって、5〜7員環状アミジンを形成し、前記アミジンは置換されていない、またはEで置換されている;
Eは、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、COOH、OH、ハロゲン、NR910、−N+9105An-、SO39、SO2NR910またはSO3-Cat+である;
Dは、C1〜C4アルコキシ、OH、COOH、またはハロゲンである;
An-は好適なアニオンの等価物である;
Cat+は好適なカチオンの等価物である;
mは1〜4の整数である;そして

【化38】
の各基は互いに独立して選択される)
の化合物に関する。
【0071】
典型的には、発色基Q2は、式
【化39】
(式中、Z1およびZ2は互いに独立してOまたはN−であり、各C・は全ての他のC・から独立してp軌道に1つの電子を有する炭素原子であり、そしてnは1〜4の整数である)の少なくとも1つの基またはそのシス/トランス異性体を含む。
【0072】
本発明の顔料調製物は、式
【化40】
のラジカルで発色基Q1を含む有機顔料の懸濁液を処理することによって製造することができる。
【0073】
したがって、本発明は、発色基Q1を含む有機顔料の懸濁液を式
【化41】
(式中、R1、R2およびR3は前記定義のとおりである)
のラジカルで処理するステップを含む方法に関する。
【0074】
通常、式(IV)のラジカルを、好適な処理剤を熱または照射、好ましくは熱によって分解することによりその場で生成することができる。
【0075】
好適な処理剤は、アゾもしくはペルオキシ化合物または好適なヨウ化物と過酸化ベンゾイルとの組み合わせ、好ましくはアゾまたはペルオキシ化合物であり得る。例えば、式(IV)のラジカルは、以下のアゾ化合物を分解することによって製造することができる:
【化42】
【0076】
好適なアゾ化合物は、式
【化43】
であってよく、式中、Rは、式
【化44】
の基、フェニル、トリフェニルメチル、またはCONR1516であり、ここで、R15およびR16は互いに独立して、H、C1〜C4アルキルまたは
【化45】
である;
【化46】
の各基は、互いに独立して選択される;そして
1、R2、およびR3は互いに独立して前記定義のとおりである。
【0077】

【化47】
の対称性アゾ化合物が好ましい。
【0078】
あるいは、ペルオキシ化合物、例えばジアシルペルオキシド(R−CO−O−O−CO−R)またはパーエステル(R−CO−O−O−R’、式中、Rは発色基に連結される有機基に相当する)は、フリーラジカル(IV)の供給源として使用することができる。特に好適なペルオキシ化合物は、式(XI)のジアシルペルオキシドであり、式中、R1、R2およびR3は互いに独立して、前記定義のとおりである。
【0079】
【化48】
【0080】
さらに、過酸化ベンゾイルは、式
【化49】
の有機ヨウ化物と関連して用いることができ、式中、ヨウ化物は、結合されるラジカルの供給源である。
【0081】
【化50】
【0082】
同様に、式(IV)のラジカルは、式(XII)のヨウ化物から、ジメチルスルホキシドと酸化鉄(II)および過酸化水素から生成するメチルラジカルを用いて製造することができる。
【0083】
【化51】
【0084】
様々なアゾ化合物は市販されている。例えば、Overberger, H. et al., J. Am. Chem. Soc., 71 (8), 1949, 2661に記載の方法にしたがって製造することもでき、ここでは、対称性アゾ開始剤が記載されている。不斉アルキル−アシルアゾ開始剤は、例えば、Lynch, T.R., et al., Canad. J. Chem., 49(10), 1971 , 1598に記載されている。不斉アルキル−アミノカルボニルアゾ開始剤は、Comanita, E., et al., Polymer Bulletin, 31 (1), 1993, 15と同様に製造することができる。不斉アルキル−アリールアゾ開始剤は、例えば、Okimoto, M. et al., Synthesis, 13, 2003, 2057に記載のように製造することができる。
【0085】
これらの材料の全ての態様の包括的処理、例えば、合成、分解の機序は、"Handbook of Free Radical Initiators"(E. T. Denisov, T.G. Denisova, T.S. Pokidova, Wiley−lnterscience, 2003)に記載されている。
【0086】
さらに、本発明は、式
【化52】
(式中、
1およびR2は連結炭素原子と一緒になって8〜12員環(前記環は置換されていない、またはEで置換される)、または5〜7員環(前記環は置換されていない、またはEで置換され、そして前記環は−N(−OR4)−の1以上の基を含む)を形成する;
3はCNである;そして
14は、フェニル、トリフェニルメチル、またはCONR1516であり、R15およびR16は互いに独立して、H、C1〜C4アルキルまたは
【化53】
である)
のアゾ化合物;
あるいは
式(V)のアゾ化合物
(式中、
1およびR2は互いに独立して、CN、C1〜C6アルキル、またはC3〜C7シクロアルキル(前記アルキルもしくはシクロアルキルは置換されていない、またはDで置換されている)、C6〜C18アリール(前記アリールは置換されていない、またはEで置換されている)である;
3は式
【化54】
の基である、
pおよびqは互いに独立して0または1である;
Xは、−CONR6−、−COO−、または−C(=NR7)NR8−である;
YはC1〜C25アルキレン(前記アルキレンは、末端または鎖内に−O−、−S−、−CO−、−COO−、−CONR6−、−NR6−、−N+65An-−、脂環式もしくは芳香環から選択される1以上の基を含んでもよい、そして前記アルキレンは、Zで1回以上置換されていてもよい)である;
Zは、SO29;SO39;SO2NR910;SO3-Cat+;PO(OR92;飽和複素環式C2〜C20環系(前記環系は、NR4、NOR4、N+45An-またはN+5An-から選択される1以上の基を含み、そして前記環系は置換されていない、またはEで置換されている);あるいはC2〜C18ヘテロアリールである;
4は、HまたはC1〜C4アルキルであり、前記アルキルは置換されていない、またはDで置換されている;
5は、H、C1〜C4アルキル、C7〜C10アラルキルまたはC3〜C5アルケニルである;
6、R7、R8、R9、およびR10は互いに独立してそれぞれの場合で、H、C1〜C18アルキル、C3〜C18アルケニル、C5〜C12シクロアルキルであり、前記アルキル、アルケニルまたはシクロアルキルは、置換されていない、またはD、C6〜C18アリール、C7〜C18アラルキルで置換され、前記アリールは、置換されていない、またはEで置換されている;
Eは、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、COOH、OH、ハロゲン、NR910、−N+9105An-、SO39、SO2NR910またはSO3-Cat+である;
Dは、C1〜C4アルコキシ、OH、COOH、またはハロゲンである;
An-は好適なアニオンの等価物である;そして
Cat+は好適なカチオンの等価物である)に関する。
【0087】
本発明の顔料調製物の製造のためのアゾ化合物の好適な例を第1表に記載する。
【0088】
第1表:アゾ化合物の例
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
多くのペルオキシドは市販されている、または例えば、Rappoport, Z., (ed), The Chemistry of Peroxides. Vol. 2, Parts 1−2, John Wiley & Sons Ltd, Chichester、UK, 2006に記載の方法にしたがって製造することができる。ジアシルペルオキシドまたはパーエステルの好適な例を第2表および第3表に示す。
【0094】
第2表:ジアシルペルオキシド(R−CO−O−O−CO−R)の例
【表6】
【0095】
第3表:パーエステル(R−CO−O−O−R’)(Rは発色基に連結される有機基に相当する)の例
【表7】
【0096】
通常、懸濁液の合計質量基準で5〜15質量%懸濁液、好ましくは5〜10質量%の水性または有機媒体中有機顔料(a)は、顔料の粒子サイズ分布を所望のサイズまで減少させるために、顔料を、粉末または水中プレスケーキとして、通常、高剪断に付すことによって得られる。前記懸濁液を次いで好適な処理剤、例えば、アゾまたはペルオキシ化合物で処理してもよく、これにより、懸濁液を照射に暴露することによって、または懸濁液をあらかじめ決められた温度で処理することによって、式
【化55】
のラジカルが生じてよい。もちろん、アゾ化合物の混合物またはペルオキシ化合物の混合物を使用してもよい。処理剤を、単独または通常は反応媒体中に溶解させて、懸濁液に1回以上添加することも好適であってよい。結果として得られる顔料調製物は、当業者に公知の技術、例えば、ろ過、遠心分離またはそれらの組み合わせを用いて未反応原材料、副生成物および他の反応不純物を除去して、精製することができる。
【0097】
温度は特に制限されないが、低すぎると処理剤の分解が遅いために表面修飾の過程が遅れ、一方、高すぎる温度はラジカル前駆体の急速過ぎる分解の原因となり、これは反応制御不能またはフリーラジカルの組み合わせなどの望ましくない副反応のために非効率的なグラフティングに至りうる。したがって、温度は通常、20〜150℃、好ましくは30〜100℃である。
【0098】
反応時間は、温度および処理剤の種類または濃度などの反応条件に依存し、通常、0.5時間以下から約24時間以上までである。
【0099】
アゾ開始剤またはペルオキシドの熱分解は一次速度則(−d[l]/dt=/kd[l])(式中、kdは開始剤分解の速度定数である)に従う。kdの温度依存性は、アレニウスの関係(kd=Ae-(Ea/RT))に従う。t1/2=ln2/kdにしたがって、半減期(t1/2)を計算することができる。
【0100】
好ましくは、時間および温度は、アゾ化合物またはペルオキシ化合物の半減期(t1/2)(所定の温度で開始剤のもとの量を50%減少させるために必要な時間)の関数として選択される。このように、反応時間を(t1/2)の倍数、例えば3〜10倍として選択することにより、フリーラジカル源のほぼ完全または完全な変換が確実になる。開始剤の半減期は、例えば、 "Polymer Handbook", 4th ed., Editors: J . Brandrup, E. A. Immergut, A. Abe, D. R. Bloch, (C) 1999; 2005 John Wiley & Sons)の一覧表に示されている。
【0101】
水性媒体は、水または水と水混和性溶媒との混合物であり得る。好適な水混和性溶媒は、アセトニトリル、アルコール、例えばエタノール、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ピリジン、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、またはジメチルアセトアミド(DMA)である。溶媒の混合物も用いることができる。当然ながら、他の溶媒も、反応と負の干渉をしないかぎり用いることができる。処理剤が水中に可溶性である場合、水が好ましい。
【0102】
有機媒体は、有機溶媒または有機溶媒の混合物であり得る。任意の有機溶媒、例えば、前記定義の水混和性溶媒、または炭化水素、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ドデカン、トルエンを使用することができる。
【0103】
処理剤は、所望の量の式(I)の化合物基準で、化学量論量の半分の量または若干過剰もしくは大過剰、例えば、化学量論量の5倍まで、好ましくは化学量論量の約2〜3倍で適切に使用される。最適量は、置換される顔料によって幾分代わり、いずれの場合でも、実験で容易に決定することができる。
【0104】
有機基を様々な量で顔料に結合させることができる。所望の性能属性、例えば炭化水素溶媒中の分散性および/またはポリマー樹脂もしくはバインダー中の分散性を得るために、結合される量を変えることができる。加えて、修飾顔料調製物は、複数の結合した有機基を含んでもよく、これによって特性が改善されうる。
【0105】
一般的に、式(I)の化合物の量は、100モルの有機顔料(a)基準で、0.1〜30モル、好ましくは0.5〜25モル、さらに好ましくは0.8〜15モル、そして最も好ましくは1〜10モルである。
【0106】
本発明の顔料調製物をさらに続いて官能化してもよい。成分(b)の好適な基、例えば、OH基、NH2基、COOH基、ハロゲンは、塩化チオニルおよび長鎖アミンとの反応などによって、エーテル化、アルキル化、エステル化などさらに誘導化してもよい。さらなる機能化の結果、式
【化56】
の1以上の化合物が存在する顔料調製物が得られる可能性がある。
【0107】
本発明の顔料調製物を、自由流動性、粉状の堅さの固体系として、顆粒として、または水性プレスケーキとして、好ましくは粉末または顆粒として用いることができる。
【0108】
本発明の顔料調製物は、好適な添加剤、例えば、界面活性剤、分散剤、樹脂、ワックス、フィラー、消泡剤、防塵剤、エキステンダー、シェーディング着色剤、防腐剤、乾燥遅延剤、レオロジー制御添加剤、湿潤剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤またはそれらの組み合わせ混合物をさらに含んでもよい。
【0109】
好ましい顔料調製物は、基本的に、成分(a)および(b)からなる。添加剤は、成分(a)および(b)の合計質量基準で、0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%の量で存在し得る。
【0110】
本発明の顔料調製物は、通常の顔料と同じ用途に用いることができる。しかしながら、顔料表面に結合した基を用いて、特定の使用のための所定の顔料の特性を修飾および改善することができる。本発明の顔料調製物は多くの用途で使用することができる。
【0111】
本発明による顔料調製物は、一般的に、例えば、
a)例えば、繊維を含む樹脂またはプラスチックの形態の原液着色ポリマー用;
b)例えば、自動車コーティング用の塗料調製物、塗料系、コーティング組成物、紙用顔料、印刷用顔料、インクジェット用途および筆記目的を含むインク用、ならびに電子写真術におけるトナー用、例えばレーザープリンター用;
c)カラーフィルター(ディスプレー、電子用途用ポリマー/塗料配合物)用のフォトレジスト用;
d)顔料および染料などの着色剤に対する添加剤として;
など、高分子量有機材料においてそれ自体公知の方法によって用いられる。
【0112】
例えば、本発明の顔料調製物は、プラスチック、表面コーティングおよび印刷インクの着色のため、特にコーティングおよびインク用途で特に好適である。したがって、本発明は、プラスチック、コーティング組成物および印刷インクの着色のための本発明の顔料調製物の使用に関する。
【0113】
さらなる態様において、本発明は、有機材料、好ましくは高分子量有機材料、および高分子量有機材料の質量基準で、0.01〜70質量%の本明細書中で前述した任意の態様で記載する顔料調製物を含む有色または着色組成物に関する。
【0114】
好ましくは、本発明は、
高分子量有機材料、および
高分子量有機材料の質量基準で、0.01〜70質量%の任意の前記態様で記載された顔料調製物を含む原液着色された高分子量有機材料に関する。
【0115】
本発明にしたがって着色される有機材料、好ましくは、高分子量有機材料は天然または合成起源であり得、通常、103〜108g/molの分子量を有する。例えば、天然樹脂もしくは乾性油、ゴムもしくはカゼイン、または修飾された天然物質、例えば塩化ゴム、油修飾アルキド樹脂、ビスコース、またはセルロースエーテルもしくはエステル、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセトブチレートもしくはニトロセルロースであり得るが、特に、重合、重縮合もしくは重付加によって得られる完全合成有機ポリマー(熱硬化性プラスチックまたは熱可塑性プラスチックのいずれか)であり、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、例えばポリエチレン(HDPE、HDPE−HMW、HDPE−UHMW、LDPE、LLDPE、VLDPE、ULDPE)、ポリプロピレン、またはポリイソブチレン、置換されたポリオレフィン、例えば塩化ビニル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルもしくはアクリル酸および/またはメタクリル酸エステル、あるいはブタジエンの重合生成物、ポリスチレンまたはポリメチルメタクリレート、ならびに前記モノマー、特にアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)、スチレン/アクリロニトリル(SAN)またはEVAの共重合生成物である。
【0116】
重付加樹脂および重縮合樹脂は、ホルムアルデヒドとフェノールとの縮合産物、いわゆるフェノール樹脂、ならびにホルムアルデヒドと尿素、チオ尿素およびメラミンとの縮合産物、いわゆるアミノプラスト、コーティング樹脂として用いられるポリエステル(アルキド樹脂などの飽和、またはマレイン樹脂などの不飽和のいずれか)、ならびに直線状ポリエステルおよびポリアミドまたはシリコーンであり得る。
【0117】
前記高分子量材料は、個別に、または混合物で、プラスチック組成物、溶液または溶融物の形態で存在してよく、これを、所望により、紡いで繊維にすることができる。そのモノマーの形態または煮沸アマニ油、ニトロセルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂などの表面コーティングまたは印刷インク用皮膜形成剤またはバインダーとして溶解した形態で重合された状態であってもよい。多層系も可能である。
【0118】
高分子量有機材料の本発明の顔料調製物での着色は、例えば、前記顔料調製物を、場合によってマスターバッチの形態で、ロールミルまたは混合もしくは粉砕装置を用いて基体と混合することによって実施される。着色された材料を次いで一般的に、カレンダー仕上げ、圧縮成形、押出成形、スプレッド塗装、鋳造または射出成形などそれ自体公知の方法によってその望ましい最終形態にする。非剛性成形品を製造するため、またはそれらの脆弱性を低減するために、成形前に高分子材料中にいわゆる可塑剤を組み入れることが多くの場合望ましい。可塑剤の例として、リン酸、フタル酸またはセバシン酸のエステルが挙げられる。本発明の方法では、可塑剤を、顔料調製物の前または後にポリマー中に組み入れることができる。異なる色合いを得るためにはさらに、高分子量有機材料にフィラーまたは他の色を付与する構成要素、例えば白色、有色または黒色顔料ならびにエフェクト顔料を、それぞれの場合において望ましい量で添加することができる。
【0119】
本発明の顔料調製物は、特に、部分結晶性プラスチック、特に射出成形によって加工されるものを着色する際、反りを起こすことなく用いることができる。プラスチック加工産業で、「反り」は、射出成形後、さらに詳細には有機顔料の存在下の部分結晶性プラスチックにおいて観察される公知の重大な問題である。
【0120】
「部分結晶性プラスチック」は、凝固によって小さな結晶核または凝集体を形成するプラスチック(例えば、スフェルライトまたはクアドライト)、例えば核形成剤(例えば、有機顔料)の存在下でのみそのような挙動を示すプラスチックを意味すると理解されるべきである。部分結晶性プラスチックは一般的に、104〜108g/mol、特に105〜107の分子量(Mw)および10〜99.9%、好ましくは40〜99%、特に80%〜99%の結晶化度(Xc)を有する熱可塑性高分子量有機材料である。好ましい部分結晶性プラスチックは、エチレン、プロピレン、ブチレン、スチレンおよび/またはジビニルベンゼン、特にα−オレフィンのホモポリマー、ブロックまたはランダムコポリマーならびにターポリマー、例えばHDPE、LDPE、ポリプロピレンおよびポリスチレン、ならびにポリエステル、例えばPET、ポリアミド、例えばナイロン6およびナイロン66、ならびに熱可塑性イオノマーである。特に好ましい部分結晶性プラスチックはポリオレフィン、特に高密度のポリエチレンおよびポリプロピレンである。部分結晶性プラスチックは、場合によって、慣例的量の添加剤、例えば、安定剤、光学的光沢剤、フィラーおよび/または潤滑剤を含んでもよい。
【0121】
本発明はしたがって、前述のように、部分結晶性プラスチックおよび顔料調製物を含む組成物にも関する。
【0122】
顔料調製物によるポリオレフィンの反り傾向に対する影響を、DIN EN ISO294−4:2003にしたがってパネルの形態の既製の射出成形品によって試験する。老化後、パネルの寸法(長さ、幅)を測定し、反りの程度を測定する。
【0123】
慣例的方法にしたがって,例えば、本発明の顔料調製物をプラスチック顆粒または粉末と混合し、混合物を押し出して、繊維、フィルムまたは顆粒を形成することによって、製造する。後者を次いで、例えば射出成形によって物品に成形することができ、そのような物品は、凝固によってほとんど反りを示さない、または多くの場合、全く反りを示さない。適切な場合には、もちろん、添加剤もさらなる追加成分として慣例的方法で使用してよい。
【0124】
本発明の顔料調製物は、好ましくは、表面コーティングで、特に溶媒系自動車仕上げで使用され、より高い顔料含有量を可能にする。
【0125】
表面コーティング、塗料系および印刷インクを着色するために、高分子量有機材料および本発明の顔料調製物は、場合によって、安定剤、分散剤、光沢改善剤、フィラー、他の顔料もしくは染料、乾燥剤または可塑剤などの添加剤とともに、一般的には、有機および/もしくは水性溶媒または溶媒混合物中に微細分散または溶解させる。個々の成分はさらに、別々に分散もしくは溶解させることができる、または複数を一緒に分散または溶解させ、その後に全成分を組み合わせる。
【0126】
したがって、好ましい実施形態は組成物であり、組成物はコーティング組成物であり、高分子量有機材料は有機皮膜形成バインダーである。
【0127】
組成物の合計質量基準で0〜50質量%、好ましくは5〜30質量%の揮発性部分、
組成物の合計質量基準で10〜50質量%の不揮発性で基本的に無色の部分、および
組成物の合計質量基準で5〜85質量%の、発色基Q1を含む有機顔料を含む着色剤部分
を含むコーティング組成物がさらに好ましく、前記コーティング組成物はさらに、100モルの前記有機顔料基準で0.1〜30モル、好ましくは0.5〜25モル、さらに好ましくは0.8〜15モル、最も好ましくは1〜10モルの、式
【化57】
の発色基を含む化合物を含む
(式中、Q2は発色基Q1のm価残基である;
そして、m、R1、R2、およびR3は前記定義の任意の態様で定義される)。
【0128】
コーティング組成物の揮発性部分は、硬化によってコーティングから消滅する部分である。不揮発性部分はバインダーおよび/またはバインダー前駆体、ならびに所望により添加剤、例えば光開始剤、安定剤(例えば、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、レオロジー修飾剤、つや出し剤)、無機白色もしくはエフェクト顔料(例えば、二酸化チタン、マイカもしくはアルミニウムフレーク)および/またはフィラーを含む。バインダー前駆体は、硬化によって反応しバインダーを形成する化合物である(一般的に、不飽和モノマーおよびテロマー)。基本的に、無色とは、400〜700nmの任意の波長でモル吸収係数Kn≧5000l-1モル・-1・cm-1を有する化合物、特にカラーインデックスで列挙されている着色剤を除くと理解されるべきである。
【0129】
着色剤部分は、基本的に、発色基Q1を含む1以上の有機顔料からなってよい、あるいは部分的もしくは完全可溶性染料などのさらなる着色剤あるいは異なる発色基を有する特に好ましい無機黒色もしくは有色顔料および/または有機顔料をさらに含んでもよい。さらなる着色剤を場合によって添加する目的は、一般的に、色合い、彩度および/または透明性もしくは不透明性を調節すること、特殊効果(ゴニオクロマティシティーおよび/または角度反射性など)を生じること、またはコーティング組成物の費用効果を最適化することである。
【0130】
コーティング組成物は、典型的には、原則として業界で慣例的な任意のバインダーであり得るポリマーバインダーを含む。一般的に、熱可塑性または熱硬化性樹脂、例えば熱硬化性樹脂に基づく皮膜形成バインダーである。
【0131】
有機皮膜形成バインダーの例として、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、アクリルコポリマー樹脂、ポリビニル樹脂、フェノール樹脂、スチレン/ブタジエンコポリマー樹脂、ビニル/アクリルコポリマー樹脂、ポリエステル樹脂、UV硬化性樹脂もしくはアルキド樹脂、または2以上のこれらの樹脂の混合物、あるいはこれらの樹脂またはこれらの樹脂の混合物の水性塩基性もしくは酸性分散液、あるいはこれらの樹脂またはこれらの樹脂の混合物の水性エマルジョンが挙げられる。バインダーが硬化性バインダーであれば、通常、硬化剤および/または促進剤とともに使用される。
【0132】
例えば、アクリレートポリマーを含むコーティングまたはフィルム用組成物は本発明で有用である。水中に分散可能なアクリル、メタクリルおよびアクリルアミドポリマーおよびコポリマーも本発明においてバインダーとして容易に使用することができる。
【0133】
コーティング組成物は、さらなる成分も含んでよく、例として、溶媒、顔料、染料、可塑剤、安定剤、チキソトロープ剤、乾燥触媒および/またはレベリング剤が挙げられる。可能な成分の例は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition, Vol. A18, pp. 429−471, VCH, Weinheim 1991に記載されているものである。
【0134】
コーティング組成物は放射線硬化性コーティング組成物であってよい。この場合、バインダーは基本的に、エチレン性不飽和結合を含有するモノマーまたはオリゴマー化合物を含み、これらを施用後、化学線によって硬化させる、即ち、架橋した高分子形態に変換させる。系がUV硬化性である場合、系は一般的に、光開始剤も含む。好適な光開始剤は当業者に周知であり、好ましくは、ハロメチルオキサジアゾール、ハロメチル−s−トリアジン、3−アリール置換されたクマリン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄複合体、オキシムエステルおよびオキシムから選択される。
【0135】
コーティング組成物は、バインダーが可溶性である有機溶媒または溶媒混合物を含んでよい。コーティング組成物は、そうでなければ、水溶液または分散液であってよい。ビヒクルは、有機溶媒および水の混合物であってもよい。コーティング組成物は、高固形分塗料であり得る、または無溶媒(例えば、粉末コーティング材料)であり得る。無溶媒配合物の実例として、アクリレートもしくはメタクリレートの混合物、不飽和ポリエステル/スチレン混合物または他のエチレン性不飽和モノマーもしくはオリゴマーの混合物が挙げられる。粉末コーティングは、例えば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition, Vol. A18, pages 438−444に記載されているものである。粉末コーティング材料は、粉末−スラリーの形態であってもよい(好ましくは粉末の水中分散液)。
【0136】
コーティングで使用する場合、本顔料調製物を分散粒子として当該技術において通常の技術によりコーティング中に組み入れる。分散は、適切な溶媒の使用によるコーティング組成物中への組み入れと組み合わせてもよい。
【0137】
本発明によるコーティング組成物は、任意の所望の基体、例えば、金属、木材、プラスチック、複合材料、ガラスまたはセラミック材料基体に、慣例的方法によって、例えば、ディッピング、ナイフ塗布、フィルム展伸、ブラッシング、噴霧、鋳込み、ドローダウン、スピンコーティング、ディッピングまたは電気泳動によって施用することができ、本発明によるコーティングは、乾燥および、有利には熱的または照射による硬化後に形成される。
【0138】
コーティングおよび印刷インクを着色するために、高分子量有機材料および本発明による顔料調製物を、場合によっては、安定剤、分散剤、光沢改善剤、フィラー、他の顔料、乾燥剤または可塑剤などの添加剤とともに、一般的には有機および/もしくは水性溶媒または溶媒混合物中に微細分散または溶解させる。個々の成分を別々に、または複数の成分を一緒に分散もしくは溶解させた後に全成分を組み合わせる手順を使用することが可能である。
【0139】
着色される高分子量材料がコーティングである場合、それは慣例的コーティングであっても、特殊コーティング、例えば自動車の仕上げ塗装であってもよい。コーティングは、多層仕上げの構成要素であってよい。エフェクトフィニッシュは、金属フレーク、非コートもしくはコートマイカおよび/または干渉顔料の添加によって得られる。本発明による顔料調製物の利点は、コーティング用途で特に顕著である。
【0140】
一般的に公知の組成物の印刷インクは、慣例的方法、例えば、活版印刷(フレキソ印刷)、平版印刷(オフセット印刷、リソグラフ印刷)、凹版印刷(輪転グラビア、鋼板彫刻)、スクリーン印刷またはインクジェット印刷(圧電または蒸気泡法)によって、例えば、紙、カード、金属、木材、皮革、プラスチックまたは布地に、出版物、図、梱包材料、紙幣、ロジスティック文書または装飾のために施用される。さらなるインク組成物は、ボールペンおよびフェルトペンならびにインクパッド、インクリボンおよびインクカートリッジで使用することができる。
【0141】
加えて、本発明の顔料調製物は、例えば、固形トナー、ワックス型転写リボンの製造にも好適である、または好ましいカラーフィルターである。カラーフィルターは、通例、赤、青および緑色ピクセル、さらにほとんどの場合、透明なキャリア材料上に黒色マトリックスも有する。黒色有機顔料ベースの本顔料調製物は、一般的に、カラーフィルターで黒色マトリックスを形成するために使用され、一方、特に赤色、青色または緑色有機顔料ベースの本顔料調製物は一般的にカラーフィルターで1以上の透明な層を形成するために使用され、有利には驚くほど高い透明性、高いコントラスト、高い色純度(彩度)および更に広く達成可能な色域をもたらす。
【0142】
本顔料調製物または化合物は、カラーフィルターならびに少なくとも3色および場合によって黒色マトリックスの像点(ピクセル)を含むカラーフィルターの製造に使用することもでき、像点および/または任意の黒色マトリックスのフラクションは本発明の顔料調製物を含む。したがって、本発明は、カラーフィルターの製造ための本顔料調製物または化合物の使用、ならびに少なくとも3色および場合によって黒色マトリックスの像点(ピクセル)を含むカラーフィルターに関し、像点および/または任意の黒色マトリックスのフラクションは本発明の顔料調製物を含む。
【0143】
カラーフィルターは、通常、好ましくは無色成分を更に含み、これらは、カラーフィルター配合物、例えば溶媒または、特に、添加剤、例えば、安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、光安定剤、湿潤剤、界面活性剤、消泡剤、可塑剤、テクスチャー改善剤、バインダー、分散剤および、好ましくは、重合性モノマーまたはオリゴマー、解重合性ポリマーおよび/または光開始剤においても慣例的である。その種類のさらなる成分を有利には本顔料調製物基準で0〜2000質量%の合計量で添加する。
【0144】
放射線によって修飾可能な組成物は、レジストとしても知られている(例えば、WO2007/113107に記載のとおり)。放射線(例えば、UV光)は、例えば、組成物のコーティング上にマスクを通して向けられ、その過程の照射位置は、さらに不溶性になり得る、またはさらに可溶性になり得る。所望の像点が残るように、可溶性のままである、または可溶性になる層の部分をその後除去する。後者を次いで通常、熱硬化させる。
【0145】
放射線によって修飾可能な任意の所望の組成物を使用することができる。放射線によって修飾可能な組成物が好ましく、続いて場合により40〜320℃、特に180〜300℃、特に詳細には200〜250℃で硬化させる。
【0146】
別の態様において、本発明は、基体上で前記定義のコーティング組成物を硬化させることによって製造されるコーティングに関する。
【0147】
さらに、式(I)の本発明の化合物は、好ましくは着色されたコーティング組成物のためのレオロジー修飾剤として用いることができる。最も好ましいのは、中、特に高固形分コーティング組成物であり、通常、硬化後に約1:1〜約10:1の顔料:バインダー比を有するものである。ごくわずかなブリーディングや特に良好なレオロジー、高光沢、高着色力および優れたオーバーコーティング耐性などのコーティング特性のように、光、風化および熱安定性が優れている。
【0148】
したがって、さらなる態様において、本発明は式(I)の化合物のレオロジー修飾剤としての使用に関する。
【0149】
さらに、式(I)の本化合物は、成長調節物質として、例えば、再結晶または粉砕などの顔料の後処理中に使用することができる。
【0150】
したがって、さらなる態様において、本発明は式(I)の化合物の成長調節物質としての使用に関する。
【0151】
顔料表面の多種多様な有機修飾は、顔料の様々な使用に適用可能な、開示された方法によって得られる。1段階修飾方法だけを、例えば、環境的理由から望ましい水などの任意の液体媒体中で実施する必要がある。直接またはリンカーを介して結合される、顔料表面に対する多目的有機官能基の結合は、さらなる修飾のための多くのチャンスをもたらす。
【0152】
本発明の顔料調製物、とりわけ、極性基を有する有機基を有する調製物は、改善されたレオロジー特性を示す。これらの有機基は、立体障害を有する顔料にさえ容易に結合することができる。さらに、本発明の顔料調製物の前記極性顔料表面は、分散剤としてのポリマー分散剤、いわゆる超分散剤、例えば、EFKA(登録商標)4046、4047、4060、4300、4330、8512、Disperbyk(登録商標)161、162、163、164、165、166、168、169、170、2000、2001、2050、2090、2091、2095、2096、2105、2150、PB(登録商標)711、821、822、823、824、827、Solsperse(登録商標)24000、31845、32500、32550、32600、33500、34750、36000、36600、37500、39000、41090、44000、53095、ALBRITECT(登録商標)CP30およびそれらの組み合わせとの増大した相互作用をもたらす。
【0153】
本発明の顔料調製物は、例えば、着色される有機材料の極性に応じて好適な極性の基を結合させることによって、改善された分散性および分散安定性を示す。顔料調製物の極性は、例えば、プラスチックの種類に応じた原液着色において、必要とされる用途に対応して好適な基を結合させることによって容易に得られる。長鎖置換基は、好ましくは極性顔料に容易に結合させることができる。これは、長鎖置換アニリンまたはアミノ−ナフタリンを使用することによってのみ可能であった。疎水性基はさらに、多くの場合、疎水性顔料調製物が必要とされるインク系、例えば、電子写真術で使用するための乳化重合によって作製されるトナー系において有利であってよい。さらに、塗料、特に超分散剤がしばしば用いられる高固形分系では、より高い極性が望ましい。顔料の表面修飾の結果、特に、顔料分散液の粘度が減少し、これによって、分散液にさらに多量の顔料をロードすることが可能になる。
【0154】
本発明の顔料調製物は、特に極性基自体を含む顔料に疎水性特性を付与することによって、反ることなく部分結晶性プラスチックの原液着色を可能にする。
【0155】
顔料の色特性は前記表面修飾によって悪影響を受けない。表面修飾された顔料調製物は、特に、光および移動に対する非常に良好な堅牢度によって区別される。
【0156】
以下の実施例は、本発明をその範囲を限定することなく説明する(%は他に規定のない限り質量基準である)。
【0157】
実施例
A)ラジカル生成剤
実施例1:2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ドデカノイルオキシエチル)プロピオンアミド]
【化58】
【0158】
23.0g(110ミリモル)の塩化ラウリルを、14.4g(50ミリモル)の2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA−086;Wako Pure Chemical Ind., Ltd)および250mgの4−ジメチルアミノピリジンの170mlの無水ピリジン中溶液に7〜9℃でゆっくりと添加する。溶液を室温で4時間撹拌し、次いで1500mlの氷冷水中に注ぐ。沈殿をろ過し、アセトニトリル/ジクロロメタンから再結晶して、28.7gの1を白色粉末(m.p.69〜72℃)として得る。
【0159】
【0160】
実施例2:2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−オクタデカノイルオキシエチル)プロピオンアミド]
【化59】
【0161】
27.9g(90ミリモル)の塩化ステアリルを、11.5g(40ミリモル)の2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA−086; Wako Pure Chemical Ind., Ltd)および200mgの4−ジメチルアミノピリジンの225mlの無水ピリジン中溶液に7〜9℃でゆっくりと添加する。溶液を室温で6時間撹拌し、次いで2200mlの氷冷水中に注ぐ。沈殿をろ過し、酢酸エチル/ジクロロメタンから再結晶して、25.1gの2を白色粉末(m.p.78〜83℃)として得る。
【0162】
【0163】
実施例3:2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−(ピリジン−4−カルボニルオキシ)エチル)プロピオンアミド]
【化60】
【0164】
40.9g(198ミリモル)のジシクロヘキシルカルボジイミドを、25.95g(90ミリモル)の2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA−086; Wako Pure Chemical Ind., Ltd)、2.3gの4−ジメチルアミノピリジンおよび24.38g(198ミリモル)のピリジン−4−カルボン酸の600mlのジクロロメタン中懸濁液に添加する。混合物を室温で18時間撹拌し、ジシクロヘキシル尿素の沈殿をろ過する。ろ液を蒸発させ、残留物を酢酸エチルから2回再結晶して、37.5gの3を白色粉末(m.p.125〜128℃)として得る。
【0165】
【0166】
実施例4:2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−((1−メチルピリジン−1−イウム−4−カルボニルオキシ)エチル)プロピオン−アミド]二ヨウ化物
【化61】
【0167】
17.9g(126ミリモル)のヨウ化メチルを、20.94g(42ミリモル)の3の120mlのアセトニトリル中懸濁液に添加する。混合物を室温にて100時間、暗所で撹拌する。オレンジ色結晶性沈殿をろ過し、真空中で乾燥して、32.65gの4をオレンジ色粉末(m.p.150〜165℃;分解)として得る。
【0168】
【0169】
B)顔料表面の修飾
実施例101
20gのC.I.ピグメントレッド264(Irgazin DPP Rubin TR)を、高速スターラー(IKA−Ultra−Turrax(登録商標)T45)そしてその後インペラーを用いて300mlの水中に分散させて、顔料スラリーを形成する。1.2gの2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物(VA−057; Wako Pure Chemical Ind., Ltd.)の100mlの水中溶液を撹拌しながら添加し、続いて希HClでpH3.5に調節する。スラリーを90℃まで3時間加熱する。室温まで冷却した後、生成物をろ過によって単離し、80℃にて真空下で乾燥する。最終生成物のMALDI−TOF質量スペクトルは595m/zでのピークによって置換発色基の存在を示す。出発物質はこの質量対電荷比で対応するピークを有さない。
【0170】
実施例102
20gのC.I.ピグメントレッド254(Irgazin Red 2030)をC.I.ピグメントレッド264の代わりに使用する以外は、実施例101を繰り返す。
【0171】
実施例103
20gのC.I.ピグメントブルー15.1(Heliogen Blue L6950)をC.I.ピグメントレッド264の代わりに使用する以外は、実施例101を繰り返す。
【0172】
実施例104
20gのC.I.ピグメントレッド254(Irgazin Red 2030)を、高速スターラー(IKA−Ultra−Turrax(登録商標)T45)そしてその後インペラーを用いて200mlの水中に分散させて、顔料スラリーを形成する。1.2gの2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](VA−086; Wako Pure Chemical Ind., Ltd.)の100mlの水中溶液を撹拌しながら添加し、続いて希HClでpH3.5に調節する。スラリーを24時間加熱還流する。室温まで冷却した後、生成物をろ過によって単離し、80℃にて真空下で乾燥する。最終生成物のMALDI−TOF質量スペクトルは487m/zでのピークによって置換発色基の存在を示す。出発物質はこの質量対電荷比で対応するピークを有さない。
【0173】
実施例105
20gのC.I.ピグメントブルー15.1をC.I.ピグメントレッド254の代わりに使用する以外は、実施例104を繰り返す。
【0174】
実施例106
13gのC.I.ピグメントレッド264(Irgazin DPP Rubin TR)を、高速スターラー(IKA−Ultra−Turrax(登録商標)T45)そしてその後インペラーを用いて300mlの水中に分散させて、顔料スラリーを形成する。0.6gの2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ヒドロクロリド(VA−044; Wako Pure Chemical Ind., Ltd.)の100mlの水中溶液を撹拌しながら添加する。スラリーを80℃まで2時間加熱する。室温まで冷却した後、生成物をろ過によって単離し、80℃にて真空下で乾燥する。
【0175】
最終生成物のMALDI−TOF質量スペクトルは549m/zでのピークによって置換発色基の存在を示す。出発物質はこの質量対電荷比で対応するピークを有さない。
【0176】
実施例107
10gのC.I.ピグメントブルー15.3(Cromophtal Blue 4GNP)を150gの2−プロパノール中に分散させる。実施例1で製造した2gのラジカル生成剤を添加した後、スラリーを30時間還流加熱する。冷却後、生成物をろ過によって回収し、2−プロパノール、続いて水で洗浄し、真空オーブン中で60℃にて乾燥する。
【0177】
実施例108
実施例2で製造したラジカル生成剤を実施例1で製造したラジカル生成剤の代わりに使用する以外は、実施例107を繰り返す。
【0178】
実施例109
46gのC.I.ピグメントレッド202の21.8%フィルターケーキ(10gの顔料に相当)を150gの水中に分散させる。実施例3で製造した2gのラジカル生成剤を添加した後、スラリーを27時間還流加熱する。次いで、生成物をろ過によって回収し、水で洗浄し、真空オーブン中で60℃にて乾燥する。
【0179】
実施例110
実施例4で製造したラジカル生成剤を実施例3で製造したラジカル生成剤の代わりに使用する以外は、実施例109を繰り返す。
【0180】
C)適用例
実施例201および202:反り挙動
実施例201
0.7gの実施例107の乾燥生成物および700gのポリマー(HDPE Sabic M80063S Powder)をタンブルミキサー中で10分間乾式混合する。混合物を二軸スクリュー押出機中で200℃にて2回押し出す。結果として得られるペレットを射出成形機で240℃にて加工し、100×100×2mmのパネルを得る。次いで、パネルを水浴中90℃にて30分間熱的に調整し、室温(23℃)で少なくとも15時間保存する。パネルをDIN EN ISO294−4:2003に正確にしたがって測定する。
【0181】
得られたパネルの寸法安定性は、非修飾C.I.ピグメントブルー15:3である参照の寸法安定性よりも明らかに良好である。
【0182】
実施例202
実施例108の生成物を実施例107の生成物の代わりに使用する以外は、実施例201を繰り返す。
得られたパネルの寸法安定性は、参照の寸法安定性より良好である。
【0183】
実施例203および204:低固形分CAB−PES塗料の製造
実施例203
a)7.50gの実施例109で製造された顔料
b)98.90gの:
41.00gのセルロースアセトブチレートCAB−531−1(ブタノール/キシレン2:1中20%(Eastman Chem.))
1.50gのジルコニウムオクトアート、
18.50gのSolvesso(登録商標)150(芳香族溶媒、ExxonMobil Chemicals)、
21.50gの酢酸ブチル、および
17.50gのキシレン
からなるCAB溶液;
c)36.50gのポリエステル樹脂DYNAPOL(登録商標)H700(Dynamit Nobel)、
d)4.60gのメラミン樹脂MAPRENAL(登録商標)MF650(Hoechst)、および
e)2.50gの分散剤DISPERBYK(登録商標)160(BykChemie)。
【0184】
成分a)〜e)を合わせて、シェーカーマシーン(合計コーティング材料:150g;5%顔料)を用いて90分間分散させる。
【0185】
ベースコート配合物について、26.67gの結果として得られるマストーンラッカーを、
12.65gのSILBERLINE(登録商標)SS 3334AR、60%(Silberline Ltd)、
56.33gのCAB溶液(前述の組成)、
20.81gのポリエステル樹脂DYNAPOL H700、
2.60gのメラミン樹脂MAPRENAL MF650、および
7.59gのSolvesso 150
からなる17.31gのAlストック溶液(8%)と混合し、
アルミニウムパネル(湿潤フィルム約20μm)上に噴霧することによって施用する。30分間室温で蒸発させた後、
29.60gのアクリル樹脂URACRON(登録商標)2263XB、キシレン/ブタノール中50%(Chem Fabr. Schweizer−halle)、
5.80gのメラミン樹脂CYMEL(登録商標)327、メタノール中90%、
2.75gのブチルグリコールアセテート、
5.70gのキシレン、
1.65gのn−ブタノール、
0.50gのシリコーン溶液、キシレン中1%、
3.00gの光安定剤TINUVIN(登録商標)900、キシレン中10%(BASF)、および
1.00gの光安定剤TINUVIN 292、キシレン中10%(BASF)
からなる熱硬化性アクリルワニスをトップコート配合物(湿潤フィルム約50μm)として噴霧によって塗布する。空気中でさらに30分間室温で乾燥した後、配合物を130℃で30分間焼成する。非常に良好な耐性特性を有する赤−マゼンタコーティングが得られる。
【0186】
実施例204
実施例110の生成物を実施例109の生成物の代わりに使用する以外は実施例203を繰り返す。非常に良好な耐性特性を有する赤−マゼンタコーティングが得られる。
【0187】
実施例205および206:高固形分溶剤型顔料ペーストの製造
実施例205
実施例109の顔料調製物を後述する高固形分系で試験する。
【0188】
連続相は、
a)55質量部の芳香族ナフサ系溶媒(Solvesso 100, ExxonMobil Chemicals)、
b)28質量部の高固形分アクリル樹脂(Joncryl(登録商標)902, BASF)、および
c)5質量部の顔料分散剤(Efka(登録商標)4310、BASF)
の組み合わせを、Cowlesブレード(歯付きブレード)を備えた分散機を用いて撹拌(500〜800rpm)することによって混合し製造する。均一になったら、12質量部の実施例109(修飾C.I.ピグメントレッド202)を撹拌下で添加する。
【0189】
スラリーを、前述の同じ分散機/Cowlesブレードの組み合わせを用いて30分間2000rpmであらかじめ分散して、確実に、大きな顔料凝集体が連続相で適切に「湿る」ようにする。「湿潤」スラリーを、ジルコニア粉砕媒体を充填した再循環分散ミルに移し、次いで分散させ、この場合、冷却水を使用することにより、ミルチャージの温度を≦60℃に維持する。分散された顔料の最大粒子サイズが、Hegmann粒ゲージによると≦5μmになるまで分散を継続する。分散したら、ミルの内容物を好適な再密封可能な容器に装入する。
【0190】
前記練り顔料は、33.5%の全固形分、1:2の顔料:バインダー比、および12%の顔料含有量を有する。
【0191】
練り顔料のレオロジー的挙動は、Haakeコーン/プレート装置を23℃で使用して測定する。
【0192】
「レットダウン」クリアを製造する:40質量部のアクリルバインダー(Joncryl 500、BASF)および30質量部の溶媒混合物(1:1のn−酢酸ブチル:キシレン)を、オーバーヘッドスターラー装置に取り付けられた通常のプロペラスターラーブレードを用いて一緒に撹拌する。17.5質量部のメラミンホルムアルデヒドバインダー(Luwipal(登録商標)066LF、BASF)を制御した速度で撹拌下に添加する。別に、1.5質量部のアミンで中和したドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)触媒(Nacure(登録商標)5225、King Industries)と11質量部の溶媒混合物(1:1 n−酢酸ブチル:キシレン)との混合物を撹拌下で製造する。均一化したら、混合物を撹拌されたバインダー混合物に添加する。撹拌をさらに30分間続けて、全ての成分を確実に均一に混合する。
【0193】
50質量部の着色された練り顔料を撹拌下で50質量部の「レットダウン」クリアに添加する。
【0194】
結果として得られる塗料は42%の全固形分を有し、1:6の顔料:バインダー比および6%の顔料含有量を有する。
【0195】
均一な塗料を、n−酢酸ブチル:キシレンの1:1混合物を用いる粘度に調節することができ、DIN4粘度カップ中で17secsの噴霧粘度に調節することができる。噴霧適用は、HVLPスプレーガン(SATA 90またはSATA Jet RP)を使用する。
【0196】
練り顔料のレオロジー(レットダウン前)を測定したところ、参照(非表面修飾C.I.ピグメントレッド202を含む練り顔料)から大幅に改善した。
【0197】
実施例206
実施例110の生成物を実施例109の生成物の代わりに使用する以外は、実施例205を繰り返す。
【0198】
練り顔料のレオロジー(レットダウン前)を測定したところ、参照(非表面修飾C.I.ピグメントレッド202を含む練り顔料)から大幅に改善した。