特許第6238932号(P6238932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238932ヨウ素化合物吸着剤及びその製造方法並びにヨウ素化合物吸着剤を用いる放射性廃液の処理方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238932
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ヨウ素化合物吸着剤及びその製造方法並びにヨウ素化合物吸着剤を用いる放射性廃液の処理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/06 20060101AFI20171120BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20171120BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B01J20/06 A
   G21F9/12 501B
   G21F9/12 501J
   G21F9/12 501K
   B01J20/06 B
   B01J20/28 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-114113(P2015-114113)
(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公開番号】特開2017-909(P2017-909A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年6月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000191135
【氏名又は名称】株式会社日本海水
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 貴志
(72)【発明者】
【氏名】小松 誠
(72)【発明者】
【氏名】出水 丈志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智彦
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 徹
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−330012(JP,A)
【文献】 特開2014−213233(JP,A)
【文献】 特開2012−250198(JP,A)
【文献】 特開2008−024912(JP,A)
【文献】 特開2012−251912(JP,A)
【文献】 特開2016−055211(JP,A)
【文献】 特開2016−055212(JP,A)
【文献】 小松崎優子他,N37 多核種汚染水のワンスルー浄化のための吸着剤の開発(2)セリア担持活性炭のアンチモン・ヨウ素酸,日本原子力学会「2013年秋の大会」予稿集(CD−ROM),日本原子力学会,2013年,648頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00− 20/34
G21F 9/12
C02F 1/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子樹脂と、
当該高分子樹脂100重量部あたり10重量部以上600重量部以下の含水希土類元素水酸化物と、
を含み、
当該含水希土類元素水酸化物は、乾燥物100重量部あたり1重量部以上30重量部以下の含水量を有し、ヨウ素酸イオンを吸着することを特徴とする、ヨウ素化合物吸着剤。
【請求項2】
平均粒径が0.2mm以上5.0mm以下である、請求項1に記載のヨウ素化合物吸着剤。
【請求項3】
前記含水希土類元素水酸化物は、二次粒子の平均粒径が0.2μm以上25μm以下となる凝集体である、請求項1又は2に記載のヨウ素化合物吸着剤。
【請求項4】
前記高分子樹脂は、フッ素系樹脂又はポリビニル系樹脂であり、
前記含水希土類元素水酸化物を構成する希土類元素は、スカンジウムSc、イットリウムY、ランタノイド元素、ランタンLa、セリウムCe、プラセオジムPr、ネオジムNd、プロメチウムPm、サマリウムSm、ユウロピウムEu、ドリニウムGd、テルビウムTb、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、エルビウムEr、ツリウムTm、イッテルビウムYb、ルテチウムLu及びこれらの組み合わせから選択される、
請求項1〜3のいずれか1に記載のヨウ素化合物吸着剤。
【請求項5】
前記含水希土類元素水酸化物は、水酸化セリウム(IV)・n水和物(Ce(OH)4・nH2O)である、請求項4に記載のヨウ素化合物吸着剤。
【請求項6】
前記含水希土類元素水酸化物の含有量は、前記高分子樹脂100重量部あたり400重量部以上600重量部以下である、請求項1〜5のいずれか1に記載のヨウ素化合物吸着剤。
【請求項7】
前記高分子樹脂100重量部あたり10重量部以上の銀ゼオライトをさらに含む、請求項1〜6のいずれか1に記載のヨウ素化合物吸着剤。
【請求項8】
前記銀ゼオライトは、A型、X型、Y型、β型、モルデナイト型、チャバサイト型又はこれらの1種以上の組み合わせから選択されるゼオライトに銀を担持してなる、平均粒径が1μm以上10μm以下の凝集体である、請求項7に記載のヨウ素化合物吸着剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のヨウ素化合物吸着剤を0cm以上200cm以下の層高で充填した吸着塔に、放射性廃液を通水線流速(LV)1.9m/h以上40m/h以下且つ空間速度(SV)10h−1以上200h−1以下で通水することを含む、放射性廃液の処理方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のヨウ素化合物吸着剤を10cm以上200cm以下の層高で充填した吸着塔を具備する、放射性廃液の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なヨウ素化合物用吸着剤及びその製造方法並びにヨウ素化合物用吸着剤を用いる放射性廃液の処理方法及び装置に関する。本願明細書及び特許請求の範囲において「ヨウ素化合物吸着剤」とは、ヨウ化物イオン(I)及び/又はヨウ素酸イオン(IO)を含む物質を吸着する吸着剤を意味する。
【背景技術】
【0002】
世界的に広く普及している原子力発電所に於いては、原子炉内の核分裂により放射性物質が生成する。副産物として生成する放射性物質は放射性ヨウ素、放射性ストロンチウム、放射性セシウム、放射性アンチモン、放射性ルテニウム等があり、人体への影響が懸念される。生成する放射性物質の一部は原子炉格納容器内の蒸気及び冷却水にも含まれることになる。通常、生成する放射性物質は原子力発電所内で処理されるが、核燃料取扱い時の事故や原子炉暴走事故等の不慮の事由、又、2011年3月11日に発生した福島第一原子力発電所事故の様な場合、生成した放射性物質が排出される恐れがある。
【0003】
中でも放射性ヨウ素及び放射性セシウムは気化温度が低く、放射性ヨウ素の場合は184℃、放射性セシウムの場合は680℃と、他の放射性物質と比較し、気化しやすい為、放射能汚染の主要三核種として位置付けられている。放射性ヨウ素としてはヨウ素129とヨウ素131が主である。ヨウ素129の半減期は10年と極めて長いが、排出量が少量、且つエネルギーも低いという特徴がある。一方、ヨウ素131は半減期が8日と短いが、排出量が多く、エネルギーが高いという特徴を有する。
【0004】
ヨウ素は体内で甲状腺ホルモンを合成する為に必要であり、人体に必須の微量元素である。人体に摂取、吸収されると、ヨウ素は血液中から甲状腺に集まり、蓄積される。このため、放射性ヨウ素を摂取、吸収した場合、通常のヨウ素と同じように甲状腺に集められ、放射能の内部被爆を起こす危険性がある。水中に於けるヨウ素の形態はオキソ酸であるヨウ素酸の形態をとることも多く、水中から放射性ヨウ素を除去する為にはヨウ素及びヨウ素オキソ酸を処理対象とする必要がある。
【0005】
これまで水中の放射性ヨウ素の処理方法として、銀ゼオライトを添加した電解凝集沈殿処理が検討されている(特許文献1参照)。また水中に還元剤を添加することにより、従来の凝集沈殿法では沈殿し難かったヨウ素酸イオン(IO)をヨウ素イオン(I)に還元し、これに硝酸銀を添加することでヨウ化銀(AgI)を生成させ沈殿させる処理が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、これら凝集沈殿にて処理する方法は凝集沈殿処理の際に発生する汚泥の産業廃棄物処理も考慮しなければならず、ランニングコストが増加する傾向にある。また、処理装置を構成する機器が、各種薬品注入装置、沈殿槽、及び固液分離等の多岐に及び、設備設置スペースも多く要する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−142573
【特許文献2】特許第2540401
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、原子力発電所から漏洩等の事由に於いて発生する放射性ヨウ素を含む冷却水、汚染水等からヨウ素及びヨウ素オキソ酸などのヨウ素化合物を処理できる有効な除去技術を提供するにあたり、従来技術の問題点を解決し、経済性に優れ、且つ通水処理という省スペースの設備で吸着処理する吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を鋭意研究し、樹脂に特定の希土類元素を多量に含有させた吸着剤(以下「ヨウ素化合物吸着剤」という。)がヨウ素酸などのヨウ素オキソ酸に対して高い吸着性能を発揮すること、さらに銀ゼオライトを含有させるとヨウ素に対しても高い吸着性能を発揮することを知見した。かかる知見に基づいて、当該ヨウ素化合物吸着剤を吸着塔に充填し、放射性ヨウ素及びヨウ素オキソ酸などのヨウ素化合物を含んだ汚染水を通液するだけで吸着除去できる処理方法も提供する。
【0010】
本発明によれば下記態様のヨウ素化合物吸着剤及びその製造方法、放射性廃液の処理方法及び装置が提供される。
[1]高分子樹脂と、当該高分子樹脂100重量部あたり10重量部以上600重量部以下の含水希土類元素水酸化物と、を含み、当該含水希土類元素水酸化物は、乾燥物100重量部あたり1重量部以上30重量部以下の含水量を有し、ヨウ素酸イオンを吸着することを特徴とする、ヨウ素化合物吸着剤。
[2]平均粒径が0.2mm以上5.0mm以下である、[1]に記載のヨウ素化合物吸着剤。
[3]前記含水希土類元素水酸化物は、二次粒子の平均粒径が0.2μm以上25μm以下となる凝集体である、[1]又は[2]に記載のヨウ素化合物吸着剤。
[4]前記高分子樹脂は、フッ素系樹脂又はポリビニル系樹脂であり、
前記含水希土類元素水酸化物を構成する希土類元素は、スカンジウムSc、イットリウムY、ルテチウムLu、ランタンLa、セリウムCe、プラセオジムPr、ネオジムNd、プロメチウムPm、サマリウムSm、ユウロピウムEu、ドリニウムGd、テルビウムTb、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、エルビウムEr、ツリウムTm、イッテルビウムYb及びこれらの組み合わせから選択される、[1]〜[3]のいずれか1に記載のヨウ素化合物用吸着剤。
[5]前記含水希土類元素水酸化物は、水酸化セリウム(IV)・n水和物(Ce(OH)4・nH2O)である、[1]〜[4]のいずれか1に記載のヨウ素化合物吸着剤。
[6]前記含水希土類元素水酸化物の含有量は、前記高分子樹脂100重量部あたり400重量部以上600重量部以下である、[1]〜[5]のいずれか1に記載のヨウ素化合物吸着剤。
[7]前記高分子樹脂100重量部あたり10重量部以上の銀ゼオライトをさらに含む、[1]〜[6]のいずれか1に記載のヨウ素化合物吸着剤。
[8]前記銀ゼオライトは、A型、X型、Y型、β型、モルデナイト型、チャバサイト型
又はこれらの1種以上の組み合わせから選択されるゼオライトに銀を担持してなる、平均粒径が1μm以上10μm以下の凝集体である、[7]に記載のヨウ素化合物吸着剤。
[9]前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載のヨウ素化合物吸着剤を10cm〜200cmの層高で充填した吸着塔に、放射性廃液を通水線流速1.9m/h以上40m/h以下且つ空間速度(SV)10h−1以上200h−1以下で通水することを含む、放射性廃液の処理方法。
[10]前記[1]〜[8]のいずれか1項に記載のヨウ素化合物吸着剤を10cm〜200cmの層高で充填した吸着塔を具備する、放射性廃液の処理装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原子力発電所から漏洩等の事由に於いて発生する放射性ヨウ素を含む冷却水、汚染水等からヨウ素及びヨウ素オキソ酸などのヨウ素化合物を処理できる有効なヨウ素化合物吸着剤が提供される。本発明のヨウ素化合物吸着剤は、経済性に優れ、且つ通水処理という省スペースの設備で放射性廃液中のヨウ素化合物を吸着除去することができ
る。
【0012】
また、本発明のヨウ素化合物吸着剤を充填した吸着塔を用いることにより、通常の放射性廃液処理設備において、簡易な通水処理によって放射性廃液中のヨウ素化合物を吸着除去することができる。このため、複雑あるいは大型の特殊設備を設けることなく、容易に放射性廃液の除染処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1におけるヨウ素化合物吸着剤によるヨウ素酸イオン吸着挙動を示すグラフである。
図2】実施例2におけるヨウ素化合物吸着剤によるヨウ化物イオン吸着挙動を示すグラフである。
図3】実施例3におけるヨウ素化合物吸着剤によるヨウ素酸イオン吸着挙動を示すグラフである。
図4】実施例4におけるヨウ素化合物吸着剤によるヨウ素酸イオン及びヨウ化物イオンの吸着挙動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のヨウ素化合物吸着剤は、高分子樹脂と、当該高分子樹脂100重量部あたり100重量部以上の含水希土類元素水酸化物と、を含む組成物であり、当該含水希土類元素水酸化物は、乾燥物100重量部あたり1重量部以上30重量部以下の含水量を有することを特徴とする。
【0015】
高分子樹脂としては、アニオン交換樹脂やキレート系樹脂よりも耐熱性が良好で、水に溶出しない耐水性を持つ有機高分子重合体樹脂又はこれら樹脂の誘導体であることが好ましい。例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂などのフッ素系樹脂、ポリビニル系樹脂、又はアルギン酸塩などの天然高分子及びこれらの誘導体を挙げることができる。これらのなかでも、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン6フッ化プロピレン共重合樹脂は、含水希土類元素水酸化物を高濃度に含有させ易く、耐水性、耐薬品性に優れるため好ましい。また、有機高分子樹脂の数平均分子量は500以上が好ましく、2000以上がより好ましい。なお、水溶性親水性樹脂は被処理水中に溶出し易く、特に被処理水が放射性廃液である場合には廃液の温度が高く、更に溶出し易くなるため、好ましくない。
【0016】
含水希土類元素水酸化物を構成する希土類元素としては、スカンジウムSc、イットリウムY、ルテチウムLu、ランタンLa、セリウムCe、プラセオジムPr、ネオジムNd、プロメチウムPm、サマリウムSm、ユウロピウムEu、カドリニウムGd、テルビウムTb、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、エルビウムEr、ツリウムTm、イッテルビウムYbの水酸化物を好ましく用いることができる。なかでも本発明の目的に合致して好ましい元素はCeであり4価のCeが好ましく、特に好ましい含水希土類元素水酸化物はCe(OH)4・nH2Oである。これら希土類元素水酸化物の混合物も有用である。
【0017】
含水希土類元素水酸化物は、乾燥物100重量部あたり1重量部以上30重量部以下の含水量を有することが好ましく、5重量部以上15重量部以下の含水量を有することがより好ましい。上記含水量が好適である理由は定かではないが、含水希土類元素水酸化物の流動性を良好に維持し高分子樹脂との混合が適切に行われること、2次凝集している含水希土類元素水酸化物粒子を適度な粒径に維持し含水希土類元素水酸化物の二次粒子同士の間に生じる空隙によって被処理水との適度な接触が達成されること、及び水酸化物が酸化物に戻ることを防止し、水酸化物として吸着作用を発揮することで、結果として放射性ヨウ
素及びヨウ素オキソ酸吸着能が高まっているものと推定される。
【0018】
尚、含水希土類元素水酸化物の含水率は、ヨウ素化合物吸着剤を構成する樹脂を樹脂溶解剤で除き、残った含水希土類元素水酸化物を採取し、800℃にて1時間放置した後の重量差を、採取した含水希土類元素水酸化物の重量で除した値で示すことができる。
【0019】
含水希土類元素水酸化物は、二次粒子の平均粒径が好ましくは0.2μm以上25μm以下、より好ましくは0.5μm以上10μm以下となる凝集体であることが望ましい。凝集体を構成する一次粒子の平均粒径は0.01μm以上0.1μm以下であることが好ましい。二次粒子の平均粒径が0.2μm未満では高分子樹脂に包まれてしまい、被処理水との接触が不足することがあり、二次粒子の平均粒径が25μmを超えると高分子樹脂との均一な混合が達成されないことがある。
【0020】
含水希土類元素水酸化物の含有量は、高分子樹脂100重量部あたり10重量部以上、好ましくは400重量部以上、より好ましくは600重量部以上である。含有量の上限については、吸着能の観点から基本的に制限はない。しかし、ヨウ素化合物吸着剤の耐久性の観点から5000重量部以下が好ましく、より好ましくは1000重量部以下、更に好ましくは800重量部以下である。
【0021】
また、本発明のヨウ素化合物吸着剤は、銀ゼオライトをさらに含有してもよい。銀ゼオライトの含有量は、高分子樹脂100重量部当たり10重量部以上、好ましくは40重量部以上である。上限は、吸着剤の吸着能の観点から基本的に制限はない。しかし、ヨウ素化合物吸着剤の耐久性の観点から400重量部以下が好ましく、より好ましくは300重量部以下である。吸着対象物がヨウ素である場合には、銀ゼオライトの含有量は10重量部以上であることが好ましい。吸着対象物がヨウ素オキソ酸である場合には、銀ゼオライトを含まなくても良い。
【0022】
銀ゼオライトは、A型、X型、Y型、β型、モルデナイト型、チャバサイト型又はこれらの1種以上の組み合わせから選択されるゼオライトに銀を担持してなる、平均粒径が1μm以上10μm以下の凝集体であることが好ましい。
【0023】
本発明のヨウ素化合物吸着剤の形状はどのような形でもよいが、吸着塔に充填して用いることから球状が特に好ましく、吸着剤内部を被処理水が通過できる多孔性成形体や網目構造を有する成形体であることが好ましい。
【0024】
本発明のヨウ素化合物吸着剤がほぼ均一な球状粉末である場合、平均粒径は0.2mm以上5.0mm以下が好ましく、0.5mm以上2.0mm以下がより好ましい。平均粒径0.2mm未満では充填密度が高くなり過ぎて被処理水の通水抵抗が高くなるため、吸着塔の処理能力が低下し、逆に、平均粒径5.0mmを超えると、被処理水と吸着剤との単位時間当たりの接触面積が低下するため、やはり処理能力が低下する。
【0025】
次に、本発明のヨウ素化合物吸着剤の製造方法を説明する。
【0026】
まず、希土類元素水酸化物粒子の水分含有量を希土類元素水酸化物(乾燥物)100重量部に対して1〜30重量部に調整する。希土類元素水酸化物としては、市販のケーキ状の希土類元素水酸化物を用いることができる。ケーキ状の希土類元素水酸化物は水を過剰に含んでいるので、通常の加熱装置を用いて50℃以上70℃以下の低温で水分を蒸発させて、希土類元素水酸化物の乾燥重量100重量部に対して1重量部以上30重量部以下の水分量に調整する。
【0027】
得られた特定量の水分を含有する含水希土類元素水酸化物を高分子樹脂と混合する。まず、高分子樹脂を有機溶媒に溶解させて高分子樹脂溶液を調製する。次に、高分子樹脂100重量部あたり400重量部以上、好ましくは600重量部以上800重量部以下の含水希土類元素水酸化物粒子、及び場合によっては高分子樹脂100重量部当たり10重量部以上の銀ゼオライト粒子を分散させて、分散体を得る。調製した分散体から溶融造粒法もしくは滴下造粒法を用いて球状粒子を得る。尚、前記分散体を調製する際には、高分子樹脂を有機溶媒にあらかじめ溶解させずに、希土類元素水酸化物及び場合によっては銀ゼオライト粒子とともに有機溶媒に混合してもよい。有機溶媒は高分子樹脂を溶解できるものであれば特に限定されない。
【0028】
次に、本発明のヨウ素化合物吸着剤を使用した放射性廃液の処理装置について説明する。本発明の放射性廃液の処理装置は、本発明のヨウ素化合物吸着剤を0cm以上200cm以下の層高で充填した吸着塔を具備することを特徴とする。吸着塔の構成及び放射性廃液の導入及び排出に関連する設備構成は、通常の放射性廃液処理装置と同様でよい。
【0029】
次に、本発明のヨウ素化合物吸着剤を使用した放射性廃液の処理方法について説明する。本発明の放射性廃液の処理方法は、本発明のヨウ素化合物吸着剤を0cm以上200cm以下の層高で充填した吸着塔に、放射性廃液を通水線流速1.9m/h以上40m/h以下、空間速度(SV)10h−1以上200h−1以下で通水して、ヨウ素化合物吸着剤と放射性廃液とを十分に接触させることを特徴とする。通水は、下向流又は上向流のいずれでもよい。これにより放射性廃液中に残存する放射性ヨウ素及びヨウ素オキソ酸は、本発明のヨウ素化合物吸着剤に吸着され、廃液から除去することができる。
本発明は以下の態様を含む。
(1)高分子樹脂と、当該高分子樹脂100重量部あたり10重量部以上の含水希土類元素水酸化物と、を含み、当該含水希土類元素水酸化物は、乾燥物100重量部あたり1重量部以上30重量部以下の含水量を有することを特徴とする、ヨウ素化合物吸着剤。
(2)平均粒径が0.2mm以上5.0mm以下である、(1)に記載のヨウ素化合物吸着剤。
(3)前記含水希土類元素水酸化物は、二次粒子の平均粒径が0.2μm以上25μm以下となる凝集体である、(1)又は(2)に記載のヨウ素化合物吸着剤。
(4)前記高分子樹脂は、フッ素系樹脂又はポリビニル系樹脂であり、
前記含水希土類元素水酸化物を構成する希土類元素は、スカンジウムSc、イットリウムY、ルテチウムLu、ランタンLa、セリウムCe、プラセオジムPr、ネオジムNd、プロメチウムPm、サマリウムSm、ユウロピウムEu、カドリニウムGd、テルビウムTb、ジスプロシウムDy、ホルミウムHo、エルビウムEr、ツリウムTm、イッテルビウムYb及びこれらの組み合わせから選択される、(1)〜(3)のいずれか1に記載のヨウ素化合物用吸着剤。
(5)前記含水希土類元素水酸化物は、水酸化セリウム(IV)・n水和物(Ce(OH)4・nH2O)である、(1)〜(4)のいずれか1に記載のヨウ素化合物吸着剤。
(6)前記含水希土類元素水酸化物の含有量は、前記高分子樹脂100重量部あたり400重量部以上である、(1)〜(5)のいずれか1に記載のヨウ素化合物吸着剤。
(7)前記高分子樹脂100重量部あたり10重量部以上の銀ゼオライトをさらに含む、(1)〜(6)のいずれか1に記載のヨウ素化合物吸着剤。
(8)前記銀ゼオライトは、A型、X型、Y型、β型、モルデナイト型、チャバサイト型又はこれらの1種以上の組み合わせから選択されるゼオライトに銀を担持してなる、平均
粒径が1μm以上10μm以下の凝集体である、(7)に記載のヨウ素化合物吸着剤。
(9)前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載のヨウ素化合物吸着剤を20〜200cmの層高で充填した吸着塔に、放射性廃液を通水線流速5m/h以上40m/hで通水することを含む、放射性廃液の処理方法。
(10)前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載のヨウ素化合物吸着剤を20〜200cmの層高で充填した吸着塔を具備する、放射性廃液の処理装置。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明のヨウ素化合物吸着剤の吸着処理能力を説明する。
吸着剤の吸着処理能力は、吸着剤を所定容積のカラム内に充填し、所定濃度のヨウ素イオン及び/又はヨウ素酸イオンを含む被処理水を吸着剤の容量に対して1〜10,000倍となるように通水し、カラム流入水中及びカラム流出水中のヨウ素濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)で分析し、及びヨウ素127濃度を誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)で分析した濃度の比率で評価した。
尚、被処理水の通水量は、通水倍率(B.V.:ヨウ素化合物吸着剤の容量当たり、何倍容量の水を流したかを表す)で示す。例えば、1Lの吸着剤で通水倍率200B.V.は、被処理水を200L流したことを意味する。
【0031】
[製造例1]実施例1で用いる吸着剤の製造
市販の含水セリウム水酸化物粒子の水分含有量を希土類元素水酸化物(乾燥物)100重量部に対して14〜16重量部に調整した。次に、高分子樹脂を有機溶媒に溶解させて高分子樹脂溶液を調製し、高分子樹脂100重量部あたり600重量部の含水希土類元素水酸化物粒子を分散させ、分散体を得た。得られた分散体を溶融造粒法にて二次粒子平均粒子径が0.2mm〜5.0mmである凝集体に成形した。成形後はよく洗浄を行い、篩にて水と吸着剤を分離し、粒径が0.35〜1.18mmのヨウ素化合物吸着剤1を分級した。
【0032】
[製造例2]実施例2〜3で用いる吸着剤の製造
市販の含水セリウム水酸化物粒子の水分含有量を希土類元素水酸化物(乾燥物)100重量部に対して14〜16重量部に調整した。次に、高分子樹脂を有機溶媒に溶解させて高分子樹脂溶液を調製し、高分子樹脂100重量部あたり425重量部の含水希土類元素水酸化物粒子と、高分子樹脂100重量部あたり50重量部の銀ゼオライト粒子を分散させ、分散体を得た。得られた分散体を溶融造粒法にて二次粒子平均粒子径が0.2mm〜5.0mmである凝集体に成形した。成形後はよく洗浄を行い、篩にて水と吸着剤を分離し
、粒径が0.35〜1.18mmのヨウ素化合物吸着剤2を分級した。
【0033】
[製造例3]実施例4で用いる吸着剤の製造
市販の含水セリウム水酸化物粒子の水分含有量を希土類元素水酸化物(乾燥物)100重量部に対して14〜16重量部に調整した。次に、高分子樹脂を有機溶媒に溶解させて高分子樹脂溶液を調製し、高分子樹脂100重量部あたり390重量部の含水希土類元素水酸化物粒子と、高分子樹脂100重量部あたり40重量部の銀ゼオライト粒子を分散させ、分散体を得た。得られた分散体を溶融造粒法にて二次粒子平均粒子径が0.2mm〜5.0mmである凝集体に成形した。成形後はよく洗浄を行い、篩にて水と吸着剤を分離し、粒径が0.35〜1.18mmのヨウ素化合物吸着剤3を分級した。
【0034】
[比較製造例1]
市販の含水セリウム水酸化物粒子の含水量(乾燥物100重量部あたり32〜36重量部の水分含有量)を調整せずに用いた以外は製造例1と同様の手順で行い、球形粒子を製造しようとしたが、安定した球形粒子を得ることができなかった。
【0035】
[実施例1]
製造例1にて製造したヨウ素化合物吸着剤1(高分子樹脂100重量部当たり600重量部の含水セリウム水酸化物粒子を含有する、粒径0.35〜1.18mmの粒子)を用い、ヨウ素酸イオンが存在する系にてカラム試験を行った。
<原水>
(1)純水にヨウ素酸ナトリウムを溶解してヨウ素酸イオンが50mg/Lになるように調整し、pH=7.0であることを確認した(以下「純水ヨウ素酸含有液」という。)。(2)10倍に希釈した海水にヨウ素酸ナトリウムを溶解してヨウ素酸イオンが50mg/Lになるように調整し、pH=7.2であることを確認した(以下「海水ヨウ素酸含有液」という。)。
<通水試験>
内径10mmのガラスカラムにヨウ素化合物吸着剤1を15ml充填し、19cmの層高を形成した。そこに原水として純水ヨウ素酸含有液を2.5mL/minの流量で通水(通水線流速LV=1.9m/h、空間速度SV=10h−1)し、出口水を定期的に採取してヨウ素濃度をICP−AES分析(Rigaku CIROSccd)にて測定した。海水ヨウ素酸含有液についても同様に通水処理及びヨウ素濃度分析を行った。
結果を図1に示す。図1の横軸はB.V.、縦軸はカラム出口のヨウ素濃度(C)をカラム入口のヨウ素濃度(C0)で除した値(C/C0)であり、C/C0が1.0未満であればヨウ素酸イオンが吸着されたことを示す。図1から、本発明のヨウ素化合物吸着剤を用いた通水処理により、純水ヨウ素酸含有液及び海水ヨウ素酸含有液のいずれについてもヨウ素酸イオンが除去可能であることがわかる。
【0036】
[実施例2]
製造例2にて製造したヨウ素化合物吸着剤2(高分子樹脂100重量部当たり425重量部の含水セリウム水酸化物粒子と、高分子樹脂100重量部当たり50重量部の銀ゼオライト粒子を含む、粒径0.35〜1.18mmの粒子)を用い、ヨウ化物イオンが存在する系にてカラム試験を行った。
<原水>福島第一原発の汚染水の模擬水
並塩の濃度が0.3wt%になるように模擬海水を調製した。次に、模擬海水に、塩化セシウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ヨウ化ナトリウムを添加して、セシウム濃度が1mg/L、ストロンチウム濃度が10mg/L、カルシウム濃度が400mg/L、マグネシウム濃度が400mg/L、ヨウ化物イオンが1mg/Lとなるように原水を調製した。
<通水試験>
内径16mmのガラスカラムにヨウ素化合物吸着剤2を20ml充填し、10cmの層高を形成した。そこに原水を67mL/minの流量で通水(通水線流速LV=20m/h、空間速度SV=200h−1し、出口水を定期的に採取してヨウ素濃度を測定した。ヨウ素濃度の分析は、ICP−MS分析(Agilent 7700x)を用いて、ヨウ
素127の定量分析を実施した。
結果を図2に示す。図2の横軸はB.V.、縦軸はカラム出口のヨウ素127濃度(C)をカラム入口のヨウ素127濃度(C0)で除した値(C/C0)であり、C/C0が1.0未満であればヨウ化物イオンが吸着されたことを示す。図2から、本発明のヨウ素化合物吸着剤を用いた通水処理により、ヨウ化物イオンが除去可能であることがわかる。
【0037】
[実施例3]
製造例2にて製造したヨウ素化合物吸着剤2(高分子樹脂100重量部当たり425重量部の含水酸化セリウム粒子、及び、高分子樹脂100重量部当たり50重量部の銀ゼオライト粒子を含む、粒径0.35〜1.18mmの粒子)を用い、ヨウ素酸イオンが存在する系にてカラム試験を行った。
<原水>福島第一原発の汚染水の模擬水
並塩の濃度が0.3wt%になるように模擬海水を調製した。次に、模擬海水に、塩化セシウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ヨウ素酸ナトリウムを添加して、セシウム濃度が1mg/L、ストロンチウム濃度が10mg/L、カルシウム濃度が400mg/L、マグネシウム濃度が400mg/L、ヨウ素酸イオンが10mg/Lとなるように原水を調製した。
<通水試験>
内径16mmのガラスカラムにヨウ素化合物吸着剤3を20ml充填し、10cmの層高を形成した。そこに原水を67mL/minの流量で通水(通水線流速LV=20m/h、空間速度SV=200h−1し、出口水を定期的に採取してICP−MSAgilent 7700x)分析によりヨウ素127濃度を測定した。
結果を図3に示す。図3の横軸はB.V.,縦軸はカラム出口のヨウ素127濃度(C)をカラム入口のヨウ素127濃度(C0)で除した値(C/C0)であり、C/C0が1.0未満であればヨウ素酸イオンが吸着されたことを示す。図3から、本発明のヨウ素化合物吸着剤を用いた通水処理により、ヨウ素酸イオンが除去可能であることがわかる。従って、実施例2と併せると、ヨウ化物イオンとヨウ素酸イオンの両方を吸着可能であるといえる。
【0038】
[実施例4]
製造例3で製造したヨウ素化合物吸着剤3(高分子樹脂100重量部当たり390重量部の含水セリウム水酸化物粒子、及び、高分子樹脂100重量部当たり40重量部の銀ゼオライト粒子を含む、粒径0.35〜1.18mmの粒子)を用い、ヨウ化物イオン及びヨウ素酸イオンが混在する系にてカラム試験を行った。
<原水>福島第一原発の汚染水の模擬水
並塩の濃度が0.3wt%になるように模擬海水を調製した。次に、模擬海水に、塩化セシウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ素酸ナトリウムを添加して、セシウム濃度が1mg/L、ストロンチウム濃度が10mg/L、カルシウム濃度が400mg/L、マグネシウム濃度が400mg/L、ヨウ化物イオンが1mg/L、ヨウ素酸イオンが1mg/Lとなるように原水を調製した。
<通水試験>
内径16mmのガラスカラムにヨウ素化合物吸着剤2を20ml充填し、100cmの層高を形成した。そこに原水を67mL/minの流量で通水(通水線流速LV=20m/h、空間速度SV=20h−1し、出口水を定期的に採取して、ICP−MS分析(Agilent 7700x)を用いて、ヨウ素127濃度を測定した。
結果を図4に示す。図4の横軸はB.V.、縦軸はカラム出口のヨウ素127濃度(C)をカラム入口のヨウ素127濃度(C0)で除した値(C/C0)であり、C/C0が1.0未満であればヨウ化物イオン及びヨウ素酸イオンが吸着されたことを示す。図4から、本発明のヨウ素化合物吸着剤を用いた通水処理により、ヨウ化物イオン及びヨウ素酸イオンが除去可能であることがわかる。
【0039】
[実施例5]
製造例1と同様にして製造したヨウ素化合物吸着剤4−1〜4−9(高分子樹脂100重量部当たり0、50、80、125、200、300、400、500又は600重量部の含水セリウム水酸化物粒子を含有する、粒径0.35〜1.18mmの粒子)を用い、ヨウ素酸イオンが存在する系にてバッチ試験を行った。
<原水>
純水にヨウ素酸ナトリウムを溶解してヨウ素酸イオンが50mg/Lになるように調整し、pH=7.0であることを確認した(以下「純水ヨウ素酸含有液」という。)。
<バッチ試験>
専用容器に純水ヨウ素酸含有液1Lを充填し、ヨウ素化合物吸着剤を2ml添加し、スターラーにて300rpmにて撹拌した。専用容器から純水ヨウ素酸含有液を24時間後と48時間後に採取してヨウ素濃度をICP−AES分析(Rigaku CIROSccd)にて測定した。
ヨウ素酸の除去結果を表1に示す。表1から、本発明のヨウ素化合物吸着剤を用いたバッチ処理により、ヨウ素酸イオンが除去可能であることがわかる。
【表1】
【0040】
[実施例6]
実施例5で用いたヨウ素化合物吸着剤4−8(高分子樹脂100重量部当たり500重量部の含水酸化セリウム粒子を含有する、粒径0.35〜1.18mmの粒子)、表2に示すヨウ素化合物吸着剤と同様の手順にて製造した希土類元素水酸化物以外の異種金属元素含有吸着剤1〜4、及び市販のオキソ酸吸着剤1〜6、活性炭1、陰イオン吸着剤1〜6を用い、ヨウ素酸イオンが存在する系にてバッチ試験を行い、ヨウ素酸イオンの24時間後除去率を比較した。
<原水>福島第一原発の汚染水の模擬水
大阪薬研株式会社の人工海水製造用薬品であるマリンアートSF−1を用い、模擬海水を調製した。次に、模擬海水を10倍希釈した水溶液に、ヨウ素酸ナトリウムを添加して、ヨウ素酸イオンが10mg/Lとなるように原水を調製した。
<バッチ試験>
200ml三角フラスコに原水100mlを充填し、吸着剤1gを添加し、スターラーに
て300rpmにて撹拌した。200ml三角フラスコから原水を24時間後に採取してICP−MS分析(Agilent 7700x)を用いて、ヨウ素127の定量分析を実施した。
ヨウ素酸イオンの除去結果を表2に示す。表2から、本発明のヨウ素化合物吸着剤が市販のオキソ酸吸着剤、陰イオン吸着剤及び活性炭に比べてヨウ素酸イオンの除去性能が顕著に高いことがわかる。
【表2】
図1
図2
図3
図4