(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238976
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】レーザー結晶劣化補償
(51)【国際特許分類】
G02F 1/37 20060101AFI20171120BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20171120BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
G02F1/37
H01L21/66 J
H01S3/00 F
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-518460(P2015-518460)
(86)(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公表番号】特表2015-527602(P2015-527602A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】US2013045696
(87)【国際公開番号】WO2013192012
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年6月2日
(31)【優先権主張番号】61/662,484
(32)【優先日】2012年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/905,346
(32)【優先日】2013年5月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー−テンカー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェニス パトリック シー
【審査官】
野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−022946(JP,A)
【文献】
特開2010−128119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125
1/21−7/00
H01S 3/00−3/02
3/04−3/0959
3/098−3/102
3/105−3/131
3/136−3/213
3/23−4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー結晶劣化を補償するための方法であって、
周波数変換結晶に複数のサイトを規定することと、
前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた劣化率を決定することと、
少なくとも1つのビームパラメータの許容変動量の範囲内でサイトが連続的に動作可能である時間の量Tであって、前記少なくとも1つのビームパラメータの許容変動量と前記劣化率とに基づいて決定される、時間の量Tを決定することと、
Tの一部である時間の量tを決定することと、
前記複数のサイト間で反復的にシフトさせることと、
を含み、
前記複数のサイトのそれぞれは、反復ごとに時間tの間、連続的に使用され、前記時間tの間は劣化を補償する最適化が必要とされない、方法。
【請求項2】
Tは、劣化を補償するために必要な最適化を促すことなくサイトが連続的に動作可能である時間の量を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
同一の劣化率が、前記複数のサイトのそれぞれについて使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記劣化率が、少なくとも1つの実質的に同じ結晶の観察に基づいて予め決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた初期動作状態を決定することと、
前記複数のサイトを反復的にシフトさせるためのランク付けを確立することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ランク付けは、前記複数のサイトのそれぞれに関連する初期動作状態に基づいて、降順または昇順のいずれかで確立される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた初期動作状態を決定することと、
前記複数のサイトに関連付けられた前記初期動作状態に基づいて複数のグループを確立することと、
前記複数のグループのランク付けを確立することと、
最高順位グループに属するサイトに関連した動作状態が、次の順位のグループに属するサイトに関連した動作状態と実質的に同じになるまで、前記最高順位グループに属するシフト間で反復的にシフトさせることと、
前記最高順位グループに属するサイトと前記次の順位のグループに属するサイトとを結合することと、
前記結合されたグループに属するサイト間で反復的にシフトさせることと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
全てのグループを1つのグループに結合するまで、前記複数のグループの残りの部分と再帰的に結合することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
レーザー結晶劣化を補償するための方法であって、
周波数変換結晶に複数のサイトを規定することと、
前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた初期動作状態を決定することと、
前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた前記初期動作状態に基づいてランク付けを確立することと、
前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた劣化率を決定することと、
少なくとも1つのビームパラメータの許容変動量の範囲内でサイトが連続的に動作可能である時間の量Tであって、前記少なくとも1つのビームパラメータの許容変動量と前記劣化率とに基づいて決定される、時間の量Tを決定することと、
Tの一部である時間の量tを決定することと、
前記確立されたランク付けに従って前記複数のサイト間で反復的にシフトさせることと、
を含み、
前記複数のサイトのそれぞれは、反復ごとに時間tの間、連続的に使用され、前記時間tの間は劣化を補償する最適化が必要とされない、方法。
【請求項10】
Tは、劣化を補償するために必要な最適化を促すことなくサイトが連続的に動作可能である時間の量を表す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
同一の劣化率が、前記複数のサイトのそれぞれについて使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記劣化率が、少なくとも1つの実質的に同じ結晶の観察に基づいて予め決定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ランク付けは、前記複数のサイトのそれぞれに関連する前記初期動作状態に基づいて、降順または昇順のいずれかで確立される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のサイトに関連付けられた前記初期動作状態に基づいて複数のグループを確立することと、
前記複数のグループのランク付けを確立することと、
最高順位グループに属するサイトに関連した動作状態が、次の順位のグループに属するサイトに関連した動作状態と実質的に同じになるまで、前記最高順位グループに属するシフト間で反復的にシフトさせることと、
前記最高順位グループに属するサイトと前記次の順位のグループに属するサイトとを結合することと、
前記結合されたグループに属するサイト間で反復的にシフトさせることと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
全てのグループを1つのグループに結合するまで、前記複数のグループの残りの部分と再帰的に結合することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
レーザー源と、
前記レーザー源からのレーザー光を受け、出力として周波数変換されたビームを提供する結晶と、
を備える照明装置であって、
前記結晶はその規定された複数のサイトを含み、該複数のサイトの各々の特定のサイトは、劣化率と、少なくとも1つのビームパラメータの許容変動量の範囲内で該特定のサイトが連続的に動作可能である時間の量Tとに関連付けられており、前記複数のサイトのそれぞれが反復ごとに時間tの間、連続的に使用されるように、前記結晶が前記複数のサイト間で反復的にシフトされ、tがTの一部であり、前記時間tの間は劣化を補償する最適化が必要とされない、照明装置。
【請求項17】
同一の劣化率および同一のTの値が、前記複数のサイトのそれぞれに使用される、請求項16に記載の照明装置。
【請求項18】
前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた初期動作状態が決定され、前記複数のサイト間で反復的にシフトさせるためにランク付けが確立される、請求項16に記載の照明装置。
【請求項19】
前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた初期動作状態が決定され、前記複数のサイトは、前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた前記初期動作状態に基づいて複数のグループに分割され、ランク順は、
最高順位グループに属するサイトに関連した動作状態が、次の順位のグループに属するサイトに関連した動作状態と実質的に同じになるまで、前記最高順位グループに属するシフト間で反復的にシフトさせることと、
前記最高順位グループに属するサイトと前記次の順位のグループに属するサイトとを結合することと、
前記結合されたグループに属するサイト間で反復的にシフトさせることと、
のために確立される、請求項16に記載の照明装置。
【請求項20】
全てのグループが1つのグループに結合されるまで、グループが再帰的に結合される、請求項19に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)のもとで、2012年6月21日に出願された米国仮出願第61/662,484号の利益を主張するものである。米国仮出願第61/662,484号は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、検査システムの分野に関し、特に検査システム用のレーザー源に関する。
【背景技術】
【0003】
シリコンウェハなどの薄い研磨プレートは、現代技術の非常に重要な部分である。例えば、ウェハは、集積回路および他のデバイスの製造に使用される半導体材料の薄片を指すことがある。薄い研磨プレートの他の例としては、磁気ディスク基板、ゲージブロック等が挙げられる。ここで記載された技術は、主にウェハに関するものであるが、当該技術は、他の種類の研磨プレートにも適用できることを理解されたい。用語「ウェハ」および「薄い研磨プレート」は、本開示において交換可能に使用されてもよい。
【0004】
半導体材料は、例えば、表面欠陥、粒子、凹凸、薄膜コーティングの厚み等の、半導体材料の性能を阻害する可能性のある欠陥について検査することができる。一部の既存の検査システムは、半導体材料の表面上にビームを放射し、表面からの反射光および/または散乱光を集光して分析することにより、この表面の特性を定量化する。
【0005】
より具体的には、既存のシステムは、一般に、結晶上にレーザー源を集光することによって生成されたビームスキャナを使用している。現在露光されている領域が望ましくないレベルまで劣化した場合(すなわち、寿命末期)、結晶は新領域へシフトされる。寿命の末期に不連続結晶サイトからシフトすることは、レーザーサブシステムの寿命に規定された限界には適している。しかしながら、システムの観点からは、寿命末期まで劣化している露光領域から新しい領域にシフトすることは、再校正または再配列を必要とし、これらは非常に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0144678号
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0222565号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した欠点のない、検査システム用レーザー源を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、レーザー結晶劣化を補償するための方法に関する。この方法は、周波数変換結晶に複数のサイトを規定することと、前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた劣化率を決定することと、少なくとも1つのビームパラメータの許容変動量の範囲内でサイトが連続的に動作可能である時間の量Tであって、前記少なくとも1つのビームパラメータの許容変動量と前記劣化率とに基づいて決定される、時間の量Tを決定することと、Tの一部である時間の量tを決定することと、前記複数のサイト間で反復的にシフトさせることと、を含み、前記複数のサイトのそれぞれは、反復ごとに時間tの間、連続的に使用される。
【0009】
本開示のさらなる実施形態もまた、レーザー結晶劣化を補償するための方法に関する。この方法は、周波数変換結晶に複数のサイトを規定することと、前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた初期動作状態を決定することと、前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた初期動作状態に基づいてランク付けを確立することと、前記複数のサイトのそれぞれに関連付けられた劣化率を決定することと、少なくとも1つのビームパラメータの許容変動量の範囲内でサイトが連続的に動作可能である時間の量Tであって、前記少なくとも1つのビームパラメータの許容変動量と前記劣化率とに基づいて決定される、時間の量Tを決定することと、Tの一部である時間の量tを決定することと、前記確立されたランク付けに従って前記複数のサイト間で反復的にシフトさせることと、を含み、前記複数のサイトのそれぞれは、反復ごとに時間tの間、連続的に使用される。
【0010】
本開示のさらなる実施形態は、照明装置に関する。この照明装置は、レーザー源と結晶とを備えている。結晶は、レーザー源からのレーザー光を受け、出力として周波数変換されたビームを提供するように構成される。結晶はその規定された複数のサイトを含み、該複数のサイトの各々の特定のサイトは、劣化率と、少なくとも1つのビームパラメータの許容変動量の範囲内で該特定のサイトが連続的に動作可能である時間の量Tとに関連付けられており、前記複数のサイトのそれぞれが反復ごとに時間tの間、連続的に使用されるように、前記結晶が前記複数のサイト間で反復的にシフトされ、tはTの一部である。
【0011】
上述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方が例示的かつ説明的なものであり、本開示を必ずしも限定するものではないことを理解されたい。添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成しており、本開示の主題を説明するものである。詳細な説明および図面は、合わせて本開示の原理を説明する役割を果たす。
【0012】
本開示の多くの利点は、添付の図面を参照することによって当業者にはよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】経時的な周波数変換結晶のシフトを示す一連の断面図である。
【
図3】ビームパラメータの劣化を示す説明図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る、結晶が反復的にシフトする際のビームパラメータの劣化を示す説明図である。
【
図5】不均一な初期状態の結晶サイトを有する結晶が反復的にシフトする際の、ビームパラメータの劣化を示す説明図である。
【
図6】
図5の結晶が確立された順序に従って反復的にシフトする際の、ビームパラメータの劣化を示す説明図である。
【
図7】非線形劣化が生じた結晶の反復シフトを示す説明図である。
【
図8】非線形劣化が生じた結晶の別の反復シフトを示す説明図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る、レーザー結晶劣化を補償するための方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
開示された主題について以下で詳しく説明するが、この主題は添付図面に示されている。
【0015】
図1を参照すると、例示的な照明システム100のブロック図が示されている。照明システム100は、レーザーを周波数変換結晶104に照射するように構成されたレーザー源102を含む。結晶104は、光学/検査システム106用の照明を提供するために特定の波長(例えば紫外線または遠紫外線出力)のビームを生成する。寿命を延ばすために、結晶104は、位置を変えるように構成することが考えられる。
【0016】
図2は、レーザービームを受光する結晶サイト(領域またはスポットと呼ばれることもある)の、経時的なシフトを示す一連の断面図である。シフト機構は、レーザー源102と結晶104との相対的な位置を変更するために使用されてもよい。この変更動作は、T
endまで継続してもよい。T
endにおいては、T
1に示す位置から再び変更を繰り返すことができる場合や、結晶104が寿命に達しており交換する必要がある場合がある。
【0017】
使用されると、各所定の結晶サイトが時間とともに劣化することに留意されたい。より具体的には、所定の結晶サイトによって生成された出力ビームに関連するパラメータ(例えば、ウエスト位置、ウエスト直径、非点収差、ビーム形状、電力、ノイズ、Mの2乗等)が経時的に低下する。
図3は、継続して使用したときの結晶サイトの劣化を示す簡略化された説明図を示している。例示目的のために、時間T1で観察されたビームパラメータがT0において観察された初期レベルから相当に離れたレベルまで劣化すると、この劣化を補償するために光学系を最適化する必要がある、と仮定する。さらに、この劣化は、その特定の結晶サイトの寿命末期まで続いてもよく、その場合この結晶は、新しいサイトにシフトする必要がある。寿命末期のサイトのビームパラメータは、新たなサイトのそれとは大きく異なるため、主要なシステム再校正または再配列が一般に必要である。システム最適化および再校正プロセスは、時間がかかり、可能であれば回避する必要があることに留意されたい。
【0018】
本開示は、レーザービームのパラメータ変動による光学系への悪影響を緩和するシステムおよび方法に関する。本開示によれば、必要なシステム最適化および/または再校正処理の回数を減らすために、結晶を適当な間隔でおよび特定の方法で再帰的/反復的にシフトさせる。
【0019】
より具体的には、一実施形態では、結晶104中の各所定の結晶サイトは、その初期動作状態を決定するため、および、各特定の結晶サイトで生成されるビームパラメータが特定の照明要件の範囲内か否かを判定するために、予め特徴がある。また、結晶サイトの代表的な劣化率は、同様のまたは実質的に同一の結晶の分析に基づいて予め決めておくことができる。例えば、特定の結晶サイトの劣化が経時的に観察される場合があるが、この劣化を、その後の使用における同種の結晶に対する代表的な劣化率として用いてもよい。あるいは、1つ以上の異なる結晶から選択された1組の結晶サイトは、経時的に観察することができ、全体平均を得ることができる。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、結晶サイトの代表的な劣化率を得るために、他の様々な統計および/または分析技術を使用できると考えられる。
【0020】
ここで
図4を参照すると、本開示の一実施形態による再帰的シフト結晶サイトの劣化を示す簡略化された図が示されている。
図4に示す例では、使用される結晶は、同じ初期ビームパラメータおよび同じ劣化率を有する20の個別のサイト/スポットを有している。
図4に示されているように、20サイトの各々は、短い間隔tのみで使用され、次のサイトに移行される。20サイトの各々が1回だけアクセスされると完全なパス(すなわち、繰り返し)が行われ、同図に示すようにこのシフト処理を再帰的に繰り返す。
【0021】
より具体的には、
図3に示すように、各結晶サイトがその寿命末期まで継続して使用され、続いて次のサイトに移行した場合、サイトごとに5回(例えば、T1〜T5)の最適化が必要となる。これと比較して、
図4に示すように結晶サイトが再帰的にシフトする場合には、各サイトは、所与の反復中に短い間隔tのみで使用され、システムの最適化は、
図4に示した例では4回の反復後のみ必要となる(すなわち、全20サイトが低いレベルまで劣化する場合)。本開示による短い間隔tの後に結晶を再帰的にシフトさせると、この例では、必要なシステム最適化の回数を20分の1にまで効果的に減らす。また、主要な再校正または再整列は、単一サイト連続法の場合と同様に必要とされない。すなわち、寿命末期のサイトから新しいサイトへとシフトする際に主要なシステム再校正または再配列が一般に必要であるが、本開示のこの実施形態によれば、結晶は、短い時間t後にのみ1つのサイトから別のサイトにシフトされ、寿命末期のサイトから新しいサイトにシフトされることはない。したがって、このようなシフトの結果として導入されるビームパラメータの差が大幅に低減され、大きなシステム再校正または再配列は必要とされない。最終パスが完了すると(
図4に示す例では20パス)、全てのサイトは、システムの要件に対しても同様に規格外であろうと考えられ、結晶全体を交換することができる。
【0022】
上述の例では、参照された間隔tは時間間隔Tの一部であると考えられる(例えば、t=T/n)。以上説明したように、時間間隔Tは、ビームパラメータがビームパラメータ変動の許容量を超えるレベルにまで劣化している場合を意味し、この場合は劣化を補償するためにシステムを最適化する必要がある。特定の光学/検査システムによって許容されるパラメータの変動量は、特定の要件に基づいて変化し得るため、時間間隔Tはそれに応じて変更してもよいことが理解される。上述の例ではt=T/4だが、Tはtで割り切れなくてもよいと考えられる。間隔tは、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、時間間隔T未満であればどのような継続時間でもよい。
【0023】
また、上述した技術を実現するために結晶サイトを予め特徴付ける必要はないと考えられる。すなわち、各サイトは、当該サイトを初めて使用する際にオンザフライで特徴付けることができる。このようなオンザフライでの特徴付けプロセスは、新たな結晶を使用する際に必要なセットアップ時間を短縮することができる。
【0024】
さらに、同じ結晶内の異なるサイト/スポットの初期状態を僅かに変化させることができると考えられる。例えば、一部の結晶サイトで観察された初期のビームパラメータは、同じ結晶内であっても、他のサイトで観察されたものと異なっていてもよい。このような結晶が照明システムに使用される場合、結晶の一方の端部に配置された結晶サイトから他方の端部に配置された結晶サイトへ順にシフトすることは、ある望ましくない結果をもたらす場合がある。
図5は、同じ結晶内の異なるサイトの初期状態が異なる場合、および結晶を一端から他端へ順次シフトする場合の、ビームパラメータの違いを示す簡略化された説明図を示している。一部の例では、必要な最適化をせずに変化するためのシステムの許容値を超えて、ビームパラメータに大きな不連続が生じることがある。
【0025】
異なるサイトに関連するこのような差の悪影響を軽減するために、本開示のある実施形態によれば、結晶は、結晶サイトの所定のランキングに基づいて順序付けられてシフトされる。より具体的には、同じ結晶内の結晶サイトは、1つ以上のビームパラメータに従ってランク付けされる。ランキングが確立されると、(単に、一端から他端へのシフトとは違い)ランク順に応じて結晶がシフトして、急激な変化を低減/緩和する。
【0026】
図6は、確立されたランク順に応じてシフトした、
図5に示すのと同じ結晶を示す説明図である。本実施例では、異なるサイトを、観察されたビームパラメータに基づいて降順にランク付けする。より具体的には、それら結晶サイトを、左から右へサイト#1からサイト#20までインデックス付けして、サイト#11と関連する観察されたビームパラメータが最も高い値を持ち、その次にサイト#5、サイト#4等が続くと仮定する(
図5参照)。このランキングに基づいて、サイト#11(最高ランクのサイト)が時間tの最初に使用され、続いてサイト#5(第2位のサイト)、その後サイト#4などのようにシフトすることにより第1のパスを完成させてもよい。以降のパスは同じランク順で実行されるので、劣化の増分だけ下方にオフセットされた類似の曲線を有している。このようにして、急激な変化が抑制されるように結晶をシフトする。
【0027】
確立されたランク順は、上述した例に示すような降順に限定されるものではないと考えられる。例えば、一部のビームパラメータは劣化したときに増加する可能性がある。このような場合においては、異なるサイトは、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、昇順にランク付けすることができる。また、ランキングは、予想される劣化率または初期ビームパラメータ値に基づいて、可変間隔に拡張することができると考えられる。
【0028】
さらに、代替的な実施形態では、同様のビームパラメータを生成するサイトは、ビン/グループに配置されてもよい。例えば、図示の20個の結晶サイトは、10個ずつ2つのグループ、または4個ずつ5つのグループにグループ化することができる。1つの特定のグループに、寿命が尽きるまで再帰的にアクセスすることができる。その特定のグループの寿命が尽きた時点で、次のグループにアクセスすることができ、プロセスは継続される。しかしながら、各グループを同一サイズとする必要はないと考えられる。
【0029】
別の代替的な実施形態では、最高順位グループのビームパラメータが次の順位のグループと実質的に同じレベルに低下するまで、当該最高順位グループの結晶サイトのみに再帰的にアクセスすることができる。これら2つのグループのビームパラメータが次のグループと実質的に同じレベルに低下するまで、当該2つのグループは1つのまとまったグループとして一緒に動作することができる。2つのグループのビームパラメータが次のグループと実質的に同じレベルに低下した時点で、グループが再び結合してより大きなグループを形成してもよい。全サイトが1つのグループに結合されるという状態が達成されるまでこのプロセスを続けてもよく、その場合、全ての結晶サイトは、実質的に同様のビームパラメータを有することになり、
図4に記載されたのと同じ技術を使用することができる。
【0030】
また、本開示による方法は、結晶サイトが非線形的に劣化する場合であっても適用可能であると考えられる。例えば、
図7に示すように、劣化曲線を、相対的に一定の線形劣化を有する複数の領域に細分化することができる。本実施例では、劣化の速度は、第8パスの後に以前の速度の半分に減速しているものの、サイトシフト間の間隔(例えば、t)を同じに保つことができる。これにより、システムを最適化する必要なく行うことができるパス数が、第8パスの後に倍になる場合がある。あるいは、
図8に示すように、傾きの変化に対してサイトシフトの間隔(例えば、t)を調整することもでき、この場合結晶の1つのパスは、例えば、2倍の長さを必要とする。いずれの場合も、劣化率の減少によって最適化のための努力が少なくてすみ、それによりシステムの利用を増大させることになる。
【0031】
以上の例に示すように、本開示による方法は、レーザーの劣化率にもかかわらず、より均一なシステム性能を提供する。必要なシステム最適化の回数をかなり減らし、寿命が尽きたスポットのシフトによる主要な再配列要件を除去することによって、システム利用が最大化される。
【0032】
本開示で参照されるビームパラメータは、限定的ではないが、ウエスト位置、ウエスト直径、非点収差、ビーム形状、電力、ノイズ、Mの2乗などを含み得ると考えられる。そのようなパラメータのいずれか1つ、または2つ以上の組合せが、前述したように結晶サイト/スポットを評価またはランク付けするために使用され得ると考えられる。特定パラメータの選択と各パラメータに割り当てられた重み(例えば、加重平均を使用する場合)は、システムの要件に基づいて決定されてもよく、本開示の精神および範囲から逸脱することなく変えることができると考えられる。
【0033】
さらに、結晶サイトは完全に離間している必要はないと考えられる。つまり、サイト間の重なりが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく可能であってもよい。
【0034】
図9は、本開示に従った、レーザー結晶劣化を補償するための方法900を示すフローチャートである。一実施形態では、複数のサイト/スポットは、ステップ902で周波数変換結晶上に規定することができる。ステップ904は、各サイトに関連する劣化率を決定してもよい。劣化率は、1つ以上の実質的に同一の結晶の観察に基づいて予め決定され得るものと考えられる。劣化率に基づいて、ステップ906は時間の量(Tとする)の量を決定することができ、この時間において、サイトは少なくとも1つのビームパラメータの許容変動量の範囲内で連続的に動作可能である。すなわち、ウエストサイズ、配列変化等のビームパラメータを所定のしきい値内で許容することができるが、同じサイトを連続的に使用する場合、その関連するビームパラメータは、許容量を超えて劣化する場合がある。この際、このような劣化を補償するために、システムに最適化を行うように促すことができる。すなわち、Tの値は、必要な最適化を促すことなくサイトが連続して動作することができる時間の量を表す。
【0035】
前述したようにステップ908では、時間の量tを決定してもよいし、ステップ910は、決定されたt値に基づいて複数のサイトを反復的にシフトさせてもよい。すなわち、各サイトは、反復ごとに時間tの期間だけ連続的に使用されるべきである。
【0036】
ランク付けは、上述したように確立されてもよいと考えられる。一実施形態では、各サイトに対してランク付けが確立され、結晶は、確立された順序に基づいて、1つのサイトから別のサイトにシフトされる。代替実施形態では、様々なサイトが複数のグループに配置されている。最高順位グループのビームパラメータが次の順位のグループと実質的に同じレベルに低下するまで、当該最高順位グループの結晶サイトのみに再帰的にアクセスすることができる。この場合、これらグループが結合してより大きなグループを形成してもよい。全サイトが1つのグループに結合されるという状態が達成されるまでこのプロセスを続けてもよく、その場合、全ての結晶サイトは、実質的に同様のビームパラメータを有することになり、上述されたのと同じ技術を使用することができる。
【0037】
開示された方法は、単一の製造装置を介して、および/または複数の製造装置を介して、命令のセットとして実現されてもよい。また、開示された方法におけるステップの特定の順序または階層は、例示的な手法の例であることを理解されたい。設計優先項目に基づいて、本開示の範囲および精神から逸脱することなく、当該方法におけるステップの特定の順序または階層を再編成することができることを理解されたい。添付の方法クレームは、様々なステップの要素を1つの例示的な順序で示しており、必ずしも示された特定の順序または階層に限定するものではない。
【0038】
本開示のシステムおよび方法、ならびにそれらに付随する利点の多くは、以上の説明によって理解されるであろう。開示された主題から逸脱することなく、かつその実質的な利点を犠牲にすることなく、様々な変更が構成要素の形態、構造、および配置に対してなされ得ることが明らかであろう。説明された形態は単に説明的なものである。