特許第6239052号(P6239052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6239052
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20171120BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61F13/494 111
   A61F13/49 312A
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-130208(P2016-130208)
(22)【出願日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年9月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(72)【発明者】
【氏名】坂口 智
(72)【発明者】
【氏名】舟塲 真衣香
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−183364(JP,A)
【文献】 特開平7−255774(JP,A)
【文献】 特開2013−75106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 〜 13/84
A61L 15/16 〜 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、吸収性本体と、前記吸収性本体の前記幅方向の両外側に延出する一対のサイドフラップと、前記吸収性本体に配置された一対の防漏壁と、を備え、前記幅方向における前記吸収性本体の長手方向中心軸線に対して近づく方向及び遠ざかる方向をそれぞれ内側の方向及び外側の方向とする、吸収性物品であって、
前記吸収性本体における前記一対のサイドフラップの間に接合され、前記幅方向に伸縮可能な伸縮部材、を備え、
前記一対の防漏壁の各々は、
前記幅方向の前記外側の端が固定端とされ、前記幅方向の前記内側の端が自由端とされた起立部と、
前記起立部の前記長手方向の一方の端部に隣接し、前記伸縮部材と前記厚さ方向に重なる支持部と、を含み、
前記支持部は、
前記幅方向の前記内側に位置し、前記吸収性本体に固定されていない内側部と、
前記幅方向の前記外側に位置し、前記吸収性本体に熱溶着部で固定される外側部と、を含み、
前記内側部は、前記幅方向の外側に引っ繰り返った状態で前記外側部の前記熱溶着部の少なくとも一部を覆っている、
吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性本体は、表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体と、を含み、
前記伸縮部材は前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置し、前記表面シートに接合されており、
前記外側部の前記熱溶着部は、前記表面シートのうちの前記伸縮部材の前記長手方向の一部分に対応する部分を前記外側部に固定する、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記外側部の前記熱溶着部は、前記表面シートのうちの前記伸縮部材における前記長手方向の両端部に対応する部分を前記外側部に固定し、中央部に対応する部分を前記外側部に固定しない、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記一対の防漏壁の各々は、前記幅方向の前記内側の端部に、前記長手方向に沿って延びる線状弾性体を更に含み、
前記線状弾性体は、前記伸縮部材と前記厚さ方向で重ならない、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収性本体は、表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体と、を含み、
前記伸縮部材は、前記表面シートと前記裏面シートとの間における前記吸収体よりも前記表面シート側に位置し、前記吸収体と前記厚さ方向に重なり、前記吸収体と接合されていない、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記外側部の前記熱溶着部は、前記内側部に隣接して、前記長手方向に沿って延びる長手方向熱溶着部を含み、
前記内側部の前記幅方向及び前記長手方向の寸法は、前記長手方向熱溶着部の前記幅方向及び前記長手方向の寸法よりも大きい、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記伸縮部材は、前記幅方向の中央に位置する高伸長部と、前記幅方向の両側に位置し、前記高伸長部よりも低伸長な一対の低伸長部と、を含み、
前記外側部は、前記高伸長部又は前記高伸長部が接合された前記吸収性本体のシートに前記熱溶着部で固定される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつのような吸収性物品が知られている。このような吸収性物品には、排泄物、例えば尿が外部へ漏洩することを防止するために一対の防漏壁(立体ギャザー)が設けられる場合がある。一対の防漏壁は、吸収性物品の吸収性本体の一面における幅方向の中央部の両脇に、長手方向に沿って延設される。防漏壁では、長手方向の両端部及び幅方向の一方の側(外側)の端部が吸収性本体に固定される。一方、幅方向の他方の側(内側)の端部は非固定とされ、厚さ方向に起立して、起立部(壁)を形成する。
【0003】
そのような吸収性物品として、特許文献1に使い捨ておむつが開示されている。特許文献1の使い捨ておむつは、立体ギャザー用の撥水性シート(防漏壁)の長手方向の両端部が、吸収性本体のトップシート(表面シート)の表面に対して固定されている。固定方法としては、接着剤、ヒートシール(熱溶着)、超音波溶着などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−095636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の使い捨ておむつにおいて、防漏壁を吸収性本体に固定する方法として、熱溶着(ヒートシール)が用いられる場合がある。この場合、熱溶着された固定箇所はその周辺の周辺箇所と比較して硬くなる。ここで、防漏壁は吸収性本体に対して肌側にあるので肌に当接することになり、特にウェストギャザー用の伸縮部材が位置する領域では、伸縮部材の収縮により強く肌に押し当てられる。そうなると、防漏壁の硬い固定箇所が肌に強く押し当てられることになり、着用者に違和感を与えたり、着用者の肌に一時的に跡をつけたりするなど、快適な装着ができないおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、吸収性本体に熱溶着で固定された防漏壁を備える吸収性物品において、防漏壁における熱溶着による固定箇所が着用者の肌に当接することを抑制可能な吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸収性物品は次のとおりである。(1)互いに直交する長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、吸収性本体と、前記吸収性本体の前記幅方向の両外側に延出する一対のサイドフラップと、前記吸収性本体に配置された一対の防漏壁と、を備え、前記幅方向における前記吸収性本体の長手方向中心軸線に対して近づく方向及び遠ざかる方向をそれぞれ内側の方向及び外側の方向とする、吸収性物品であって、前記吸収性本体における前記一対のサイドフラップの間に接合され、前記幅方向に伸縮可能な伸縮部材、を備え、前記一対の防漏壁の各々は、前記幅方向の前記外側の端が固定端とされ、前記幅方向の前記内側の端が自由端とされた起立部と、前記起立部の前記長手方向の一方の端部に隣接し、前記伸縮部材と前記厚さ方向に重なる支持部と、を含み、前記支持部は、前記幅方向の前記内側に位置し、前記吸収性本体に固定されていない内側部と、前記幅方向の前記外側に位置し、前記吸収性本体に熱溶着部で固定される外側部と、を含み、前記内側部は、前記幅方向の外側に引っ繰り返った状態で前記外側部の前記熱溶着部の少なくとも一部を覆っている、吸収性物品。
【0008】
本吸収性物品では、防漏壁が、長手方向の一方の側(背側)に、伸縮部材と厚さ方向に重なり、互いに隣接する内側部と外側部とを含んでいる。外側部は吸収性本体に熱溶着部で固定されているが、内側部は吸収性本体に固定されていない(ドライエッジ)。ここで、伸縮部材は、伸縮可能となるように高伸長な状態で吸収性本体のシート(例示:表面シート)に取り付けられると、その吸収性本体のシートと共に幅方向の内側に収縮し、それにより外側部も幅方向の内側に収縮する。ここで、内側部は、吸収性本体に固定されているため、外側部との境界を支点として幅方向の内側及び外側のどちらにでも傾倒し得る状態にある。したがって、外側部が幅方向の内側に収縮することにより、内側部も幅方向の内側に引っ張られる。そのため、内側部は、外側部との境界を支点として幅方向の外側へ回転し、幅方向の外側に引っ繰り返って外側部の上に覆い被さることができる。それと共に、伸縮部材の収縮力により、内側部で外側部が覆された状態を維持することができる。すなわち、内側部は外側部の熱溶着部の少なくとも一部を覆う状態を維持できる。よって、本吸収性物品では、外側部における硬くなった熱溶着部の少なくとも一部を内側部で覆うことができ、外側部の熱溶着部を直接肌に接触させないようにできる。その結果、快適な装着が可能となる。
【0009】
本発明の吸収性物品は(2)前記吸収性本体は、表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体と、を含み、前記伸縮部材は前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置し、前記表面シートに接合されており、前記外側部の前記熱溶着部は、前記表面シートのうちの前記伸縮部材の前記長手方向の一部分に対応する部分を前記外側部に固定する、上記(1)に記載の吸収性物品であってもよい。
本吸収性物品では、表面シートのうちの伸縮部材の長手方向の全部ではなく一部分に対応する部分を熱溶着部で外側部に固定する、すなわち伸縮部材は長手方向Lの一部しか固定されていないので、伸縮部材が幅方向の内側に容易に収縮できる。それにより、内側部がより容易に回転して引っ繰り返ることができると共に、伸縮部材の収縮力により内側部で外側部を覆う状態を維持できる。すなわち、外側部の熱溶着部の少なくとも一部を直接肌に接触させないようにできる。
【0010】
本発明の吸収性物品は(3)前記外側部を固定する前記熱溶着部は、前記表面シートのうちの前記伸縮部材における前記長手方向の両端部に対応する部分を前記外側部に固定し、中央部に対応する部分を前記外側部に固定しない、上記(2)に記載の吸収性物品であってもよい。
本吸収性物品では、表面シート2のうちの伸縮部材の長手方向の両端部に対応する部分を熱溶着部で外側部に固定し、中央部を固定していない。すなわち、伸縮部材は長手方向の広い範囲で固定されていないので、伸縮部材が幅方向の内側に、より容易に収縮できる。それにより、内側部が更に容易に回転して引っ繰り返ることができると共に、伸縮部材の収縮力により内側部で更に容易に外側部を覆う状態を維持できる。すなわち、外側部の熱溶着部の少なくとも一部を直接肌に接触させないようにできる。
【0011】
本発明の吸収性物品は(4)前記一対の防漏壁の各々は、前記幅方向の前記内側の端部に、前記長手方向に沿って延びる線状弾性体を更に含み、前記線状弾性体は、前記伸縮部材と前記厚さ方向で重ならない、上記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の吸収性物品であってもよい。
本吸収性物品では、線状弾性体は、伸縮部材と厚さ方向で重ならないため、外側部に線状弾性体の弾性力が及び難くなる。そのため線状弾性体の弾性力に影響されずに、伸縮部材の収縮力を外側部に及ぼすことができる。それにより、内側部がより容易に回転して引っ繰り返ることができると共に、伸縮部材の収縮力により内側部でより容易に外側部を覆う状態を維持することができる。それにより、外側部の熱溶着部の少なくとも一部を直接肌に接触させないようにできる。
【0012】
本発明の吸収性物品は(5)前記吸収性本体は、表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に位置する吸収体と、を含み、前記伸縮部材は、前記表面シートと前記裏面シートとの間における前記吸収体よりも前記表面シート側に位置し、前記吸収体と前記厚さ方向に重なり、前記吸収体と接合されていない、上記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の吸収性物品であってもよい。
本吸収性物品では、伸縮部材が吸収体よりも表面シート側に位置し、吸収体と厚さ方向に重なるが、吸収体とは接合されていない。そのため、伸縮部材は、吸収体の影響を受けずに容易に収縮が可能となる。その結果、伸縮部材がより容易に収縮が可能となることで、内側部がより容易に回転して引っ繰り返ることができると共に、伸縮部材の収縮力により内側部でより容易に外側部を覆う状態を維持することができる。それにより、外側部の熱溶着部の少なくとも一部を直接肌に接触させないようにできる。
【0013】
本発明の吸収性物品は(6)前記外側部の前記熱溶着部は、前記内側部に隣接して、前記長手方向に沿って延びる長手方向熱溶着部を含み、前記内側部の前記幅方向及び前記長手方向の寸法は、前記長手方向熱溶着部の前記幅方向及び前記長手方向の寸法よりも大きい、上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の吸収性物品であってもよい。
長手方向に沿って延びる熱溶着部(長手方向熱溶着部)は、着用者に違和感をより与え易いなど、快適な装着をより困難にするおそれがある。しかし、本吸収性物品では、内側部に隣接する長手方向熱溶着部の縁が内側部の回転の支点(又は折り支点)となり、かつ、内側部の幅方向及び長手方向の寸法が外側部の長手方向熱溶着部の幅方向及び長手方向の寸法よりも大きいので、内側部が幅方向の外側に引っ繰り返って外側部の全面を覆うことができる。それにより、外側部の長手方向熱溶着部を直接肌に接触させないようにでき、内側部が外側部を覆う状態を維持することができる。すなわち外側部の熱溶着部の少なくとも一部を直接肌に接触させないようにできる。
【0014】
本発明の吸収性物品は(7)前記伸縮部材は、前記幅方向の中央に位置する高伸長部と、前記幅方向の両側に位置し、前記高伸長部よりも低伸長な一対の低伸長部と、を含み、前記外側部は、前記高伸長部又は前記高伸長部が接合された前記吸収性本体のシートに前記熱溶着部で固定される、上記(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の吸収性物品であってもよい。
本吸収性物品では、外側部が、伸縮部材における高伸長部又は高伸長部が接合された吸収性本体のシート(例示:表面シート)に固定されている。高伸長部は、伸縮部材が吸収性本体のシートに貼り付けられるとき高伸長状態で貼り付けられた部分であり、自然状態ではシートと共に収縮することで、蛇腹状になり多数の皺を有する。すなわち、高伸長部は低伸長部と比較して剛性が高くなっている。したがって、外側部が伸縮部材で内側に引っ張られるとき、極めて強い力で引っ張られる。そのため、内側部がより確実に回転して引っ繰り返ることができると共に、伸縮部材の収縮力により外側部を覆う状態を維持することができる。すなわち外側部の熱溶着部の少なくとも一部を直接肌に接触させないようにできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、吸収性本体に熱溶着で固定された防漏壁を備える吸収性物品において、防漏壁における熱溶着による固定箇所が着用者の肌に当接することを抑制可能な吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態に係る吸収性物品を示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る吸収性物品を示す図である。
図3】第1の実施の形態に係る吸収性物品の防漏壁の接合を示す図である。
図4】第1の実施の形態に係る吸収性物品の作用を説明するための模式図である。
図5】第1の実施の形態に係る吸収性物品の作用を説明するための模式図である。
図6】第1の実施の形態に係る吸収性物品の作用を説明するための模式図である。
図7】第1の実施の形態に係る吸収性物品の別の作用を説明するための模式図である。
図8】第1の実施の形態に係る吸収性物品の製造装置の概略全体図である。
図9】第2の実施の形態に係る吸収性物品を示す図である。
図10】第2の実施の形態に係る吸収性物品の製造装置の概略全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施の形態に係る吸収性物品について、テープ型(オープンタイプ)の使い捨ておむつを例として、図面を参照して説明する。ただし、本発明の吸収性物品の種類及び用途はその例に限定されるものではなく、本発明の主題の範囲を逸脱しない範囲で他の吸収性物品、例えばパンツ型の使い捨ておむつなどに対しても適用可能である。
【0018】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態について説明する。図1及び図2は本実施の形態に係る吸収性物品1(使い捨ておむつ)を示す図である。ただし、図1は吸収性物品1を展開して拡げた状態での平面図を示し、図2(a)は図1のIIa−IIa’の断面図を示し、図2(b)は図1のIIb−IIb’の断面図を示す。吸収性物品1は、長手方向Lと、長手方向Lに直交する幅方向Wと、長手方向L及び幅方向Wに直交する厚さ方向Tとを有し、幅方向Wの中心を通り長手方向Lに延びる中心軸線(長手方向中心軸線)CLと、長手方向Lの中心を通り幅方向Wに延びる中心軸線(幅方向中心軸線)CWとを有する。また、展開して平坦に拡げた吸収性物品1を上面側から厚さ方向に見ることを「平面視」という。「肌側」及び「非肌側」とは吸収性物品1の着用時に、吸収性物品1の厚さ方向において相対的に着用者の肌面に近い側及び肌面から遠い側をそれぞれ意味する。中心軸線CLに向かう方向及び遠ざかる方向を、それぞれ幅方向Wの内側の方向及び外側の方向とする。中心軸線CWに向かう方向及び遠ざかる方向を、それぞれ長手方向Lの内側の方向及び外側の方向とする。これらの定義は、吸収性物品1を構成する資材や部材にも共通に適用される。なお、図1は吸収性物品1を肌面側から見た図である。
【0019】
吸収性物品1は、長手方向Lにおいて、着用者の背側の胴回りに対応する背側胴回り領域S2と、着用者の腹側の胴回りに対応する腹側胴回り領域S1と、着用者の股間に対応し、背側胴回り領域S2と腹側胴回り領域S1との間に位置する股間領域S3とを有する。吸収性物品1は、背側胴回り領域S2から腹側胴回り領域S1まで長手方向Lに延びる吸収性本体ABと、背側胴回り領域S2において吸収性本体ABの幅方向Wの両端部から外側に延出する一対のサイドフラップ7、7と、吸収性本体ABの一面に位置する一対の防漏壁5、5と、を備える。吸収性物品1は、例えば背側胴回り領域S2の一対のサイドフラップ7、7の一対のファスニングテープ7a、7aが腹側胴回り領域S1の吸収性本体ABの幅方向W中央部の接合対象部材12と連結されることでおむつとして装着される。股間領域S3は幅方向Wの内側にくびれていてもよい。長手方向Lにおける背側胴回り領域S2に向かう方向及び腹側胴回り領域S1に向かう方向をそれぞれ後側(又は背側)方向及び前側(又は腹側)方向ともいう。
【0020】
吸収性物品1の吸収性本体ABは、表面シート2と裏面シート3と吸収体4とを備える。表面シート2は、着用者の肌側に位置する液透過性のシートである。表面シート2としては、例えば液透過性の不織布や織布、液透過孔が形成された合成樹脂フィルム、これらの複合シートなど、任意の液透過性シートが挙げられる。裏面シート3は、着用者の非肌側に位置する液不透過性のシートである。裏面シート3としては、例えば液不透過性の不織布や合成樹脂フィルム、これらの複合シート、SMS不織布など、任意の液不透過性シートが挙げられる。吸収体4は、表面シート2と裏面シート3との間に位置する液吸収性及び液保持性の材料であり、本実施の形態では吸収体コア4aと吸収体コア4aを包摂するコアラップ4b、4cとを含んでいる。吸収体4としては、パルプ繊維、合成繊維、吸収性ポリマなどが挙げられる。吸収体4と表面シート2及び裏面シート3とはそれぞれ接着剤により接合され、表面シート2と裏面シート3とはそれらの周縁部分において接着剤により接合される。表面シート2、吸収体4及び裏面シート3の間の接合用の接着剤は、吸収性物品1で一般的に使用される公知の材料、例えば熱可塑性接着剤を使用できる。
【0021】
吸収性物品1は、さらに一対の防漏壁5、5と脚部伸縮部材6、6と外装シート9とを備える。一対の防漏壁5、5は、表面シート2の一方の面における幅方向Wの中央部の両脇に配置される液不透過性のシートであり、幅方向Wの液漏れを防止する。一対の防漏壁5、5は、長手方向Lに沿って延び、幅方向Wに互いに離間している。一対の防漏壁5、5の各々は、幅方向Wの外側の部分が吸収性本体ABに熱溶着などにより固定されて固定端とされ、幅方向Wの内側の端部が伸縮可能なギャザー部を形成する自由端とされる。一対の防漏壁5、5の各々の自由端の近傍には、それぞれ長手方向Lに沿って延びるゴムのような線状の弾性体5aが例えば2本ずつ配置される。脚部伸縮部材6は、着用者の大腿部に当接する股間領域S3の幅方向Wの両側をそれぞれ長手方向Lに伸縮させるゴムのような弾性材である。外装シート9は、裏面シート3の非肌側に配置される疎水性のシートであり、裏面シート3を補強し、手触りを改善する。外装シート9は、裏面シート3の非肌側に接合された状態で一対の防漏壁5、5とその周縁部分にて接着剤等により相互に接合される。防漏壁5、外装シート9の材料に特に制限はなく、例えば防漏壁5及び外装シート9として裏面シート3の材料が挙げられる。
【0022】
吸収性物品1は、背側胴回り領域S2に、伸縮部材11を更に備える。伸縮部材11は、幅方向Wに伸縮性を有するシート状の部材であり、一対のサイドフラップ7、7の幅方向Wの間に配置され、例えばウェストギャザーとして機能する。伸縮部材11は、背側胴回り領域S2の表面シート2と裏面シート3との間、表面シート2の肌側の表面及び裏面シート3の非肌側の表面のいずれかの位置に、表面シート2又は裏面シート3と接着剤で接合される。本実施の形態では表面シート2と裏面シート3との間に接合されている。伸縮部材11の材料としては、伸縮可能であれば特に制限はなく、材質で伸縮可能であってもよいし、形状で伸縮可能であってもよいし、弾性部材との組み合わせで伸縮可能であってもよい。伸縮部材11の材料としては、例えば、ポリウレタンフィルムやポリスチレンフィルム等のフィルム伸縮部材や、スチレン系ゴムやオレフィン系ゴムやウレタン系ゴム等と不織布や紙等とを複合したシート状伸縮部材或いは伸縮性不織布等が挙げられる。また、伸縮性シート以外にも糸ゴム状の伸縮部材であってもよい。
【0023】
本実施の形態では、伸縮部材11は、厚さ方向Tにおいて、吸収体4と表面シート2との間に配置され、その少なくとも一部分が吸収体4と重なり接触している。すなわち、平面視で、長手方向Lにおいて、吸収体4の後側方向の端部4E2は、伸縮部材11の前側方向の端部11E1と後側方向の端部11E2との間に位置する。そして、伸縮部材11は、端部11E1と端部4E2との間に位置する前側部分11aと、端部11E2と端部4E2との間に位置する後側部分11bとを含む。前側部分11aは、長手方向Lの前側の部分であって、厚さ方向Tにおいて、吸収体4と重なり接触し(幅方向Wの両端部を除く)、吸収体4よりも肌側に位置する。一方、後側部分11bは、長手方向Lの後側の部分であって、厚さ方向Tにおいて、吸収体4とは重ならず裏面シート3と重なり接触する。ここで、伸縮部材11では、前側部分11aの非肌側の面11p21は吸収体4と接しているが、吸収体4と接合されておらず非接合であり、したがって例えば接着剤等で接着されていない。一方、後側部分11bの非肌側の面11p22は吸収体4と接していないが、裏面シート3と接しており、裏面シート3と接合されており、したがって例えば接着剤等で接着されている。また、前側部分11a及び後側部分11bの肌側の面11p1は表面シート2と接しており、表面シート2と接合されており、したがって例えば接着剤等で接着されている。このように、伸縮部材11と吸収体4とは厚さ方向Tに重なっているが、両者は互いに非接合であり、すなわち両者は接着剤等により接合されていない。そのため、伸縮部材11と吸収体4とは相対的に互いに動くことができる。それにより伸縮部材11が幅方向Wの外側に容易に伸長でき、それに応じて内側に容易に収縮することができる。なお、前側部分11aにおける幅方向Wの両端部(厚さ方向Tで吸収体4と重なっていない部分)については、肌側の面は表面シート2と接しており、表面シート2と接合されており、非肌側の面は裏面シート3と接しており、裏面シート3と接合されている。なお、本実施の形態は上述のように伸縮部材11と吸収体4との間で部分的に非接合(前側部分11aの非肌側の面11p21とが吸収体4と非接合)の場合を示しているが、その反対に、伸縮部材11と吸収体4との間で非接合の箇所が無くてもよい。
【0024】
吸収性本体ABの幅方向Wの両端部から外側に延出する一対のサイドフラップ7、7の各々は、幅方向Wに伸縮性を有するシート状の部材であり、一対のサイドフラップ7、7の一方及び他方は、それぞれ吸収性本体ABの幅方向Wの一端部及び他端部に形成される。一対のサイドフラップ7、7は、例えば着用時に背側胴回り領域S2を腹側胴回り領域S1に連結するための伸縮性のサイドフラップとして機能する。また、幅方向Wに伸縮性を有するので、吸収性本体ABの幅方向Wの両端部を伸長することができ、吸収性本体AB内の吸収体4を肌側に押し付けることができる。一対のサイドフラップ7、7の各々の材料としては、伸縮可能であれば特に制限はなく、材質で伸縮可能であってもよいし、形状で伸縮可能であってもよいし、弾性部材との組み合わせで伸縮可能であってもよい。一対のサイドフラップ7、7の各々の材料としては、例えば伸縮部材11と同様のものを用いることができる。一対のサイドフラップ7、7の各々は、幅方向Wから見て、吸収体4に重なる。本実施の形態では一対のサイドフラップ7、7の各々の一部が吸収体4と幅方向Wから見て重なる。それにより一対のサイドフラップ7、7の各々の収縮しようとする力を吸収体4により伝達させ易くでき、吸収体4を肌側により押し付けることができる。
【0025】
一対のサイドフラップ7、7の各々は、背側胴回り領域S2の幅方向Wの両外側に向かって突出するように配置されており、背側胴回り領域S2の表面シート2(又は防漏壁5)と裏面シート3(又は外装シート9)との間、表面シート2(又は防漏壁5)の肌側の表面及び裏面シート3(又は外装シート9)の非肌側の表面のいずれかの位置に、接着剤で取り付けられている。ただし、一対のサイドフラップ7、7の各々は、表面シート2(又は防漏壁5)及び裏面シート3(又は外装シート9)の少なくとも一方の延出部分で形成されていてもよい。本実施の形態では、一対のサイドフラップ7、7の各々は、表面シート2、防漏壁5、裏面シート3及び外装シート9とは別の部材で、防漏壁5と外装シート9との間に配置されている。
【0026】
一対のサイドフラップ7、7の各々は、着用時に腹側胴回り領域S1の接合対象部材12と連結するためのファスニングテープ7aを備えている。本実施の形態では、幅方向Wから見てファスニングテープ7a全体が伸縮部材11に重なる。そのため、一対のサイドフラップ7、7が引き伸ばされて、各サイドフラップ7のファスニングテープ7aが接合対象部材12に付着されたとき、ファスニングテープ7a間では、サイドフラップ7の収縮しようとする力と伸縮部材11の収縮しようとする力とが協調して、吸収体4を肌側により強く押し付けることができる。
【0027】
伸縮部材11は、一対のサイドフラップ7、7の間に配置されている。すなわち伸縮部材11と一対のサイドフラップ7、7とは幅方向Wから見て少なくとも一部で重なるように配置されている。言い換えると、伸縮部材11における幅方向Wの外側の長手方向Lに沿った端辺11eの中心軸線CLへの射影と、一対のサイドフラップ7、7の各々における幅方向Wの内側の長手方向Lに沿った端辺7eの中心軸線CLへの射影とは、少なくとも一部で重なっている。それにより、吸収性物品1の着用時に背側胴回り領域S2のフィット性を向上できる。また、幅方向Wにおいて、伸縮部材11と一対のサイドフラップ7、7の各々とは離間していてもよいし、部分的に重なってもよい。本実施の形態では、幅方向Wにおいて、伸縮部材11と一対のサイドフラップ7、7の各々とは離間している。そのため、伸縮部材11と一対のサイドフラップ7、7の各々との間の伸縮しない積層体の部分が積層体の幅方向Wの両端部を伸長せずに引っ張るので、吸収体4を肌側により強く押し付けることができる。
【0028】
吸収性物品1は、さらに、腹側胴回り領域S1に、接合対象部材12と、一対の突出部8とを備えている。接合対象部材12は、一対のサイドフラップ7、7のファスニングテープ7aを連結される対象となるシートであり、例えばファスニングテープ7aが面ファスナーのフックの場合には接合対象部材12は面ファスナーのループであり、ファスニングテープ7aが粘着テープの場合には接合対象部材12は粘着テープが粘着可能なシートである。接合対象部材12は、腹側胴回り領域S1の外装シート9の非肌側の表面の位置に、例えば接着剤で取り付けられている。一対の突出部8、8は、着用時に腹側胴回り領域S1を背側胴回り領域S2に連結するためのシートであり、サイドフラップとして機能する。一対の突出部8は、腹側胴回り領域S1の幅方向Wの両外側に向かって突出するように配置されており、腹側胴回り領域S1の表面シート2(又は防漏壁5)と裏面シート3(又は外装シート9)との間、表面シート2(又は防漏壁5)の肌側の表面及び裏面シート3(又は外装シート9)の非肌側の表面のいずれかの位置に、接着剤で取り付けられている。ただし一対の突出部8、8は、表面シート2(又は防漏壁5)及び裏面シート3(又は外装シート9)の少なくとも一方の延出部分で形成されてもよい。本実施の形態では、突出部8は、表面シート2、防漏壁5、裏面シート3及び外装シート9とは別部材で、防漏壁5と外装シート9との間に配置されている。突出部8の材料に特に制限はないが、例えば表面シート2や裏面シート3の材料が挙げられる。突出部8は無くてもよい。
【0029】
次に、一対の防漏壁5、5について更に説明する。図3は、吸収性本体ABと一対の防漏壁5、5との接合を説明する図であり、具体的には図3図1における一対の防漏壁5、5に関する構成を詳細に示している。防漏壁5は、起立部5cと、一対の支持部5bと、接合部5dとを含む。起立部5cは、防漏壁5の幅方向Wの内側の中央の部分であり、幅方向Wの外側が固定端とされ、幅方向Wの内側が自由端とされる。起立部5cは、幅方向Wの内側の端部に長手方向Lに沿って延びる線状の弾性体5aを有し、吸収性物品1の着用時に弾性体5aの収縮により肌側に起立して、立体ギャザーとなる。一対の支持部5bは、それぞれ起立部5cの長手方向Lの一方及び他方の端部に隣接する部分である。一対の支持部5bは、吸収性本体ABに少なくとも熱溶着部50で固定される。したがって、一対の支持部5bは、起立部5cの長手方向Lの一方及び他方の端部において起立部5cを保持する。一対の支持部5bのうちの背側の支持部は、伸縮部材11と厚さ方向Tで重なっている。支持部5bは、内側部5SIと外側部5SOとを含む。内側部5SIは、幅方向Wの内側に位置する部分であり、吸収性本体AB及び伸縮部材11に固定されていない。したがって、内側部5SIは、吸収性本体ABと接しているが、接合されておらず、離間(移動)可能な状態である。外側部5SOは、幅方向Wの外側に位置する部分であり、吸収性本体ABに少なくとも熱溶着部50で固定される。よって、支持部5bは、外側部5SOによって起立部5cを保持する。本実施の形態では、内側部5SIの幅方向W及び長手方向Lの寸法は、熱溶着部50aの幅方向W及び長手方向Lの寸法よりも大きい。接合部5dは、起立部5c及び一対の支持部5bの幅方向Wの外側の端部に隣接する部分である。接合部5dは、吸収性本体ABに少なくとも熱溶着部50で固定される。したがって、接合部5dは、起立部5cの幅方向Wの外側の端部において起立部5cを保持する。接合部5dは、更に吸収性本体AB及び外装シート9の周縁部分に接着剤で固定される。
【0030】
次に、一対の支持部5b及び接合部5dにおける熱溶着で形成された熱溶着部50について説明する。熱溶着部50は、防漏壁5を少なくとも吸収性本体ABと接合する部分であり、防漏壁5と吸収性本体ABとを厚さ方向Tに熱溶着して形成される。熱溶着部の形態(形状)としては、線(曲線を含む)状の連続的な形態であってもよいし、円形、楕円形、矩形、平行四辺形、多角形などのパターンが複数個、縦方向及び/又は横方向に間欠的に線(曲線を含む)状に並んだ形態であってもよいし、略格子状のパターンであってもよい。本実施の形態では、熱溶着部として矩形又は平行四辺形のパターンが複数個、間欠的に線状に並んだ形態とする。
【0031】
本実施の形態では、熱溶着部50は、少なくとも熱溶着部(長手方向熱溶着部)50aと、熱溶着部(幅方向熱溶着部)50bと、熱溶着部(外側熱融着部)50cとを含む。熱溶着部50aは、外側部5SOにおける、略長手方向Lに沿って(長手方向Lに対して斜めでも可)連続的又は間欠的に延びる熱溶着部であり、例えば内側部5SIに隣接する。熱溶着部50bは、外側部5SOにおける、略幅方向Wに沿って(幅方向Wに対して斜めでも可)連続的又は間欠的に延びる熱溶着部であり、例えば外側部5SOの長手方向Lの略両端部に位置する。熱溶着部50cは、接合部5dにおける、略長手方向Lに沿って(長手方向Lに対して斜めでも可)連続的又は間欠的に延びる熱溶着部であり、例えば接合部5dの幅方向Wの内側に位置する。熱溶着部50a、50bは防漏壁5の主に支持部5bを吸収性本体ABに固定する。本実施の形態では、伸縮部材11の長手方向Lの一部分と外側部5SOとは表面シート2を挟んで互いに反対側にあり、熱溶着部50bは、表面シート2のうちの伸縮部材11の長手方向Lのその一部分に対応する部分を外側部5SOに固定している。好ましくは、伸縮部材11の長手方向Lの両端部と外側部5SOとは表面シート2を挟んで互いに反対側にあり、熱溶着部50bは、平面シート2のうちの伸縮部材11の長手方向Lのその両端部に対応する部分を外側部5SOに固定し、中央部に対応する部分を外側部5SOに固定しない。
【0032】
ここで、本実施の形態では、伸縮部材11は幅方向Wの中央に位置する高伸長部11Hと、幅方向Wの両側に位置し、高伸長部11Hよりも低伸長な一対の低伸長部11Lと、を含む。高伸長部11Hは、伸縮部材11が吸収性本体ABのシートに貼り付けられるとき高伸長状態で貼り付けられた部分であり、自然状態ではシートと共に収縮することで、蛇腹状になり多数の皺11Sを有する。すなわち、高伸長部11Hは、坪量が相対的に増加して、低伸長部11Lと比較して剛性が高くなっている。外側部5SOは、高伸長部11Hに熱溶着部50((長手方向)熱溶着部50a、(幅方向)熱溶着部50b)で固定される。
【0033】
次に、図4図6を参照して、吸収性物品1の作用について説明する。図4は吸収性物品1を幅方向Wについて仮想的に自然状態にした場合の平面図を示し、図5は吸収性物品1を幅方向Wについて実際に自然状態にした場合の平面図を示し、図6は防漏壁の変化を説明する断面模式図である。図4及び図5の吸収性物品は例えば包装直前の状態と見ることができる。
【0034】
図3に示すような展開して拡げた状態の吸収性物品1を幅方向Wについて自然状態に戻すと、すなわち伸縮部材11を幅方向Wの外側へ伸長させた状態から解放して自然状態に戻すと、主に背側胴回り領域S2の幅方向Wの寸法が小さくなる。すなわち、図4に示すように、伸縮部材11の収縮により、背側胴回り領域S2の幅方向Wの寸法が、図3の吸収性物品1の場合と比較して小さくなる。ただし、本実施の形態では、更に、図5に示すように、一対の防漏壁5、5の各々において、主に背側の支持部5bの内側部5SIが、幅方向Wの外側に引っ繰り返った状態で外側部5SOの熱溶着部50の少なくとも一部、例えば熱溶着部50aを覆っている。それにより、外側部5SOの熱溶着部50を直接肌に接触させないようにでき、快適な装着が可能となっている。図4の状態とならず、図5の状態になる理由は、以下のとおりである。
【0035】
図6(a)は図3のVIa−VIa’の断面を示し、図6(b)は図5のVIb−VIb’の断面を示す。ただし、図6において、防漏壁5、表面シート2及び伸縮部材11以外の部材は記載を省略している。まず、図3の吸収性物品1では、図6(a)に示すように、防漏壁5の支持部5bの内側部5SIは、吸収性本体ABの表面シート2と厚み方向Tに接しているが固定(接合)されていない(ドライエッジ)。したがって、内側部5SIは、表面シート2から厚み方向Tに離間可能な状態にあり、外側部5SOとの境界P0を支点として幅方向Wの内側及び外側のどちらにでも傾倒し得る状態にある。一方、支持部5bの外側部5SOは、熱溶着部50aなどで表面シート2と厚み方向Tに接合している。
【0036】
ここで、伸縮部材11は、伸縮可能となるように高伸長な状態で表面シート2に取り付けられると、表面シート2と共に幅方向Wの内側に収縮し、それにより外側部5SOも幅方向Wの内側に収縮する。外側部5SOが幅方向Wの内側に収縮することにより、内側部5SIも幅方向Wの内側に引っ張られる(白矢印で表示)。したがって、図5の吸収性物品1では、図6(b)に示すように、内側部5SIの幅方向Wの内側の端部P1が実質的に静止した状態で、内側部5SIの他の部分、外側部5SO、表面シート2及び伸縮部材11が幅方向Wの内側へ移動する。その結果、内側部5SIは、外側部5SOとの境界P0を支点として幅方向Wの外側へ回転し、幅方向Wの外側に引っ繰り返って外側部5SOの上に覆い被さることができる。それにより、その内側部5SIで外側部5SOの少なくとも一部の熱溶着部50a、50bなどを覆い隠すことができる。それと共に、伸縮部材11の収縮力により、その内側部5SIで外側部5SOの少なくとも一部の熱溶着部50a、50bなどが覆い隠された状態を維持することができる。すなわち、本吸収性物品では、外側部5SOにおける硬くなった熱溶着部50の少なくとも一部を内側部5SIで覆うことができ、外側部5SOの熱溶着部50を直接肌に接触させないようにできる。その結果、快適な装着が可能となる。
【0037】
本実施の形態における好ましい態様では、伸縮部材11の長手方向Lの全体ではなく一部分を熱溶着部50b、50aで固定しているので、伸縮部材11が幅方向Wの内側に容易に収縮することができる。それにより、内側部5SIがより容易に回転し、引っ繰り返ることができる。すなわち、内側部5SIでより容易に外側部5SOを覆うことができる。それにより、外側部の熱溶着部の少なくとも一部を直接肌に接触させないようにできる。更に好ましい態様として、伸縮部材11における長手方向Lの両端部を固定し、中央部を固定していないようにすると、伸縮部材11が長手方向Lの広い範囲で幅方向Wの内側に、より容易に収縮することができる。それにより、内側部5SIが更に容易に回転し、引っ繰り返ることができる。すなわち、内側部5SIで更に容易に外側部5SOを覆うことができる。それにより、外側部5SOの熱溶着部50の少なくとも一部を直接肌に接触させないようにできる。
【0038】
ただし、本実施の形態において、熱溶着部50は、防漏壁5と表面シート2とが熱で溶けて互いに接合された部分を示すが、防漏壁5と表面シート2と伸縮部材11とが熱で溶けて互いに接合された部分であってもよい。
【0039】
また、長手方向Lに沿って延びる熱溶着部50(すなわち熱溶着部50a)は、着用者に違和感をより与え易いなど、快適な装着をより困難にするおそれがある。しかし、本実施の形態の好ましい態様では、内側部5SIに隣接するその熱溶着部50aの縁が内側部5SIの回転の支点(又は折り支点)となり、かつ、内側部5SIの幅方向W及び長手方向Lの寸法が外側部5SOの熱溶着部50aの幅方向W及び長手方向Lの寸法よりも大きいことで、内側部5SIが幅方向Wの外側に引っ繰り返って外側部SOの全面を覆うことができる。それにより、外側部SOの熱溶着部50を直接肌に接触させないようにできる。
【0040】
また、本実施の形態の好ましい態様では、外側部5SOが、伸縮部材11における高伸長部11Hに固定されている。高伸長部11Hは、伸縮部材11が吸収性本体ABの表面シート2に貼り付けられるとき高伸長状態で貼り付けられた部分であり、自然状態では表面シート2と共に収縮することで、蛇腹状になり多数の皺11Sを有する。すなわち、高伸長部11Hは低伸長部11Lと比較して剛性が高くなっている。したがって、外側部5SOが伸縮部材11で内側に引っ張られるとき、極めて強い力で引っ張られる。そのため、内側部5SIがより確実に回転して引っ繰り返り、外側部5SOを覆うことができる。すなわち、外側部5SOの熱溶着部50の少なくとも一部を直接肌に接触させないようにできる。
【0041】
また、本実施の形態の好ましい態様では、防漏壁5の線状の弾性体5aは、伸縮部材11と厚さ方向Tで重ならない。そのため、外側部5SOに弾性体5aの弾性力が及び難くなる。それにより、弾性体5aの弾性力に影響されることなく、伸縮部材11の収縮力を外側部5SOに及ぼすことができる。それにより、内側部5SIがより容易に回転し、引っ繰り返ることができる。すなわち、内側部5SIでより容易に外側部5SOを覆うことができる。それにより、外側部5SOの熱溶着部50の少なくとも一部を直接肌に接触させないようにできる。
【0042】
次に、図7を参照して、吸収性物品1の他の作用について説明する。図7は吸収性物品1の他の作用を説明するための模式図である。図7(a)は一般的な吸収性物品を示し、図7(b)は本実施の形態の吸収性物品1を示す。図7(a)に示す吸収性物品では、背側の伸縮部材611は表面シート602と裏面シート603との間に配置され、厚さ方向おいて吸収体604に重なっておらず、よって吸収体604には接合されない。言い換えると、表面シート602と裏面シート603の積層体において、伸縮部材611と吸収体604とは長手方向Lに離間している。このような場合、伸縮部材611が収縮して着用者の背面BLに密着するように近づくと、伸縮部材611に対応する表面シート602の部分FP01は着用者の背面BLに密着できる。
【0043】
しかし、吸収体604は、伸縮性を有さないので収縮せず、かつ伸縮部材611から離間しているので伸縮部材611の動きに追随できないため、逆に着用者の背面BLから離れてしまう。したがって、吸収体604に対応する表面シート602の部分FP02は着用者の背面BLから離れてしまう。加えて、吸収体604と伸縮部材611との間の表面シート602及び裏面シート603も、伸縮性を有さないので収縮せず、かつ伸縮部材611と厚さ方向において重ならず、接合されていないので伸縮部材611の動きに追随できないため、着用者の背面BLから離れてしまう。したがって、吸収体604と伸縮部材611との間の表面シート602の部分FP03も着用者の背面BLから離れてしまう。その結果、着用者の背面側において、伸縮部材611と吸収体604との間で段差ST0が形成されることになる。このような段差ST0が形成されると、実質的に着用者の身体への適合性が低下し、吸収性物品の装着快適性が低下したり、着用者の背面側の吸収体604の部分が排泄液を十分に吸収できなくなったりするおそれがある。
【0044】
このような段差ST0の形成を抑制するべく、吸収性物品1では、伸縮部材11及び一対のサイドフラップ7、7を用いる図1及び図2に示すような上記構成により、着用時の身体への適合性を高めつつ、吸収体の吸収性能の低下や装着快適性の低下を抑制できる。具体的には、以下に示すとおりである。
【0045】
図7の(b)に示すように、伸縮部材11と吸収体4とは厚さ方向Tに重なり接触しているが、伸縮部材11と表面シート2との間には吸収体4が介在しないので、伸縮部材11が肌側に押し付けられる作用は肌側の表面シート2に直接働き、吸収体4により弱められることはない。したがって、伸縮部材11による吸収性物品1の着用時の身体への適合性を向上できる。また、伸縮部材11と吸収体4とは厚さ方向Tに重なり接触しており、伸縮部材11の非肌側の面11p21は吸収体4と接しているが、伸縮部材11と吸収体4とは接合されておらず非接合であり、したがって例えば接着剤等で接着されていない。このように伸縮部材11と吸収体4とは互いに非接合であり、接着剤等により接着されていないので、互いの動きにあまり影響されない。すなわち伸縮部材11と吸収体4とは相対的に互いに動くことができる。そのため、伸縮部材11は、吸収体4の影響を受けずに収縮できる。その伸縮部材11の収縮により、内側部5SIがより容易に回転し、引っ繰り返ることができる。すなわち、内側部5SIでより容易に外側部5SOを覆うことができる。それにより、外側部5SOの熱溶着部50の少なくとも一部を直接肌に接触させないようにできる。
【0046】
一方、着用時に身体への適合性を高めるように伸縮部材11が幅方向Wに収縮した場合でも、吸収体4はほとんど収縮せず、よって吸収体4に変形がほとんど生じないので、吸収体4の吸収性能の低下や吸収体4の装着快適性の低下を抑制できる。その結果、吸収体4を装着者へより密着させることができるので、吸収性能を向上できると共に、着用時の身体への適合性を高めることができる。ただし、伸縮部材11と吸収体4とは互いに非接合のため、伸縮部材11が肌側に押し付けられるとき、吸収体4が伸縮部材11と離れ気味になり、吸収体4の肌側への押し出しが弱くなるとも考え得る。しかし、本実施の形態では、伸縮部材11における吸収体4と厚さ方向Tに重ならない後側部分11bが裏面シート3に接合されている。そのため、伸縮部材11が肌側に押し付けられるとき、吸収体4よりも非肌側の裏面シート3により吸収体4を肌側に押し付けることができ、肌から離れ難くできる。更に、本実施の形態では、前側部分11aにおける幅方向Wの両端部において、肌側の面が表面シート2と接合され、非肌側の面が裏面シート3と接合されている。そのため、吸収性物品1の着用時に、伸縮部材11を幅方向Wに引き伸ばすことで、裏面シート3及び表面シート2の積層体を幅方向Wに引き伸ばすことができ。それにより積層体内の吸収体4を幅方向Wに引き伸ばすことができ、吸収体4を肌にフィットさせ易くできる。更に、本実施の形態では、一対のサイドフラップ7、7の収縮しようとする力が、表面シート2と裏面シート3との積層体の幅方向Wの両端部に働くので、それにより、積層体、特に裏面シート3が一対のサイドフラップ7、7に引っ張られることで、吸収体4の幅方向Wの端部が裏面シート3により肌面に押し付けられて、吸収体4の肌面への押し出しが弱くなることを抑制でき、肌面から離れることがなくなる。よって上記の伸縮部材11と共に吸収体4を肌側に密着させることができる。
【0047】
このように、本実施の形態では、表面シート2や裏面シート3や一対のサイドフラップ7、7により吸収体4の肌面への密着性を維持しつつ、伸縮部材11を吸収体40よりも肌側に配置し、吸収体40と伸縮部材11とを非接合にし、伸縮部材11の収縮の容易性を高めて内側部5SIで熱溶着部50を覆っている。したがって、吸収性物品の吸収性能と装着の快適性とを両立させることができる。
【0048】
次に本実施の形態に係る吸収性物品の製造方法について説明する。図8は吸収性物品1の製造装置200の構成例を示している。製造装置200は、表面シート形成ユニット200A、吸収体形成ユニット200B、裏面シート形成ユニット200C、伸縮部材接合ユニット200D、一体接合ユニット200E及び折り畳みユニット200Fを備える。また、製造装置200を用いた吸収性物品の製造方法は、表面シート形成工程と、伸縮部材接合工程と、吸収体形成工程と、裏面シート形成工程と、一体接合工程と、収縮工程と、押圧工程と、折り畳み工程とを備える。
【0049】
吸収性物品1やそれを構成する資材などの搬送に関し、搬送方向MD、搬送方向MDに直交し搬送面に沿う横断方向CD及び搬送方向MDと横断方向CDとに直交する上下方向TDを有する。ただし、吸収性物品1やそれを構成する資材の長手方向、幅方向及び厚さ方向はいずれも搬送方向MD、横断方向CD及び上下方向TDと同じである。したがって吸収性物品1やそれを構成する資材においても、長手方向、幅方向及び厚さ方向についてそれぞれ搬送方向MD、横断方向CD及び上下方向TDを用いる。
【0050】
表面シート形成工程では、表面シート形成ユニット200Aにより、連続防漏壁シート105、105が接合された連続表面シート102が形成される。すなわち、表面シート2用の連続シートである連続表面シート102は、複数の搬送ロールに搬送されつつ接着剤塗布装置201によって一方の面に接着剤を塗布され、接合ロール210に供給される。一方、一対の防漏壁用の連続シートである一対の連続防漏壁シート105、105は、複数の搬送ロールに搬送されて接合ロール210に供給される。そして、接合ロール210では、互いに対面配置された一対の接合ロールの間に連続表面シート102と一対の連続防漏壁シート105、105とが供給される。次いで、連続表面シート102における接着剤を塗布された面に、一対の連続防漏壁シート105、105が押し付けられて両者が貼り合わされることにより、横断方向CDの両側に一対の連続防漏壁シート105、105が接合された連続表面シート102が形成される。その後、一対の連続防漏壁シート105、105付きの連続表面シート102は、ヒートロール211の互いに対面配置された一対のヒートロールの間に供給され、加熱され、熱溶着される。この場合、一対の連続防漏壁シート105、105に所定パターンの熱溶着部(吸収性物品1の熱溶着部50)が形成されるように、ヒートロールに所定パターンが形成されており、当該所定パターンの箇所について加熱、溶着が行われるようになっている。その後、連続表面シート102は、複数の搬送ロールに搬送されつつ、連続防漏壁シート105、105が接合された面とは反対側の他方の面に、接着剤塗布装置202によって接着剤を塗布された後、一体接合ユニット200E(接合ロール240)に供給される。
【0051】
伸縮部材接合工程では、伸縮部材接合ユニット200Dにより、伸縮部材11が貼付された連続裏面シート103が形成される。すなわち、伸縮部材11用の連続シートである連続伸縮部材シート111が、複数の搬送ロールに搬送されつつ切断装置230に供給され、切断装置230のカッター(切断機)により、搬送方向MDの先端部が所定の長さに切断される。切断片、すなわち伸縮部材11は、横断方向CDの両端部が拡幅貼付装置400に保持され、拡幅貼付装置400に受け取られる。伸縮部材11は、拡幅貼付装置400により横断方向CDの両端部を横断方向に引き伸ばされつつ、約180°回転されて、表面シート形成工程後の接合ロール240上の連続表面シート102における接着剤塗布面に伸長状態で押し付けられ、連続表面シート102に貼付される。それにより、伸縮部材11が貼付された連続表面シート102が形成される。ここで、伸長部材11のうち、拡幅貼付装置400に把持された両端部そのものはほとんど伸長されていないので低伸長部ということができ、拡幅貼付装置400に把持されていない中央部は強く伸長されているので高伸長部ということができる。このとき、連続表面シート102には搬送方向に張力が掛かっていて、横断方向CDに引き伸ばされ伸長状態にある伸縮部材11が貼付されても、連続表面シート102はほとんど減幅しない。その後、伸縮部材11が貼付された連続表面シート102は接合ロール240上を一体接合ユニット200E(接合ロール250)に移動して、一体接合ユニット200E(接合ロール240)に供給される。このとき、連続表面シート102では接着剤を塗布された面に伸縮部材11が貼付され、伸縮部材11上には接着剤が無く、伸縮部材11の周辺には接着剤が塗布された状態となっている。
【0052】
吸収体形成工程では、吸収体形成ユニット200Bにおける図示しない吸収体形成装置により吸収体104が形成される。その後、吸収体104は搬送ベルトにより一体接合ユニット200E(接合ロール240、250)に供給される。
【0053】
裏面シート形成工程では、裏面シート形成ユニット200Cにより、連続外装シート109が接合された連続裏面シート103が形成される。すなわち、裏面シート3用の連続シートである連続裏面シート103は、複数の搬送ロールに搬送され、接合ロール220に供給される。一方、外装シート9用の連続シートである連続外装シート109(脚部伸縮部材6、サイドフラップ7、突出部8、接合対象部材12を付加済み)は、複数の搬送ロールに搬送されつつ接着剤塗布装置203によって一方の面に接着剤を塗布され、接合ロール220に供給される。接合ロール220では、互いに対面配置された一対の接合ロールの間に連続外装シート109と連続裏面シート103とが供給される。そして、連続外装シート109における接着剤を塗布された面に、連続裏面シート103が押し付けられて両者が貼り合わされることにより、裏面側に連続外装シート109が接合された連続裏面シート103が形成される。その後、連続裏面シート103は、複数の搬送ロールに搬送されつつ、連続外装シート109が接合された面とは反対側の他方の面に、接着剤塗布装置204によって接着剤を塗布された後、一体接合ユニット200E(接合ロール240、250)に供給される。
【0054】
一体接合工程では、一体接合ユニット200Eにより、連続表面シート102と吸収体104と連続裏面シート103とを備える吸収性物品の半製品の連続体101aが形成される。すなわち、連続防漏壁シート105、105が接合され、接着剤が塗布され、伸縮部材11が貼付された連続表面シート102が伸縮部材接合工程から、吸収体104が吸収体形成工程から、連続外装シート109が接合され、接着剤が塗布された連続裏面シート103が裏面シート形成工程から、それぞれ互いに対面配置された一対の接合ロール240、250の間に搬送される。そして、連続表面シート102と、吸収体104と、連続裏面シート103とが一対の接合ロール240、250に間に挟持、圧縮され、接合される。それにより連続表面シート102と吸収体104と連続裏面シート103とを備える吸収性物品の半製品の連続体101aが形成される。このとき、伸縮部材11が貼付された連続表面シート102のうち、伸縮部材11上には接着剤が塗布されていないので、伸縮部材11と吸収体104との間には接着剤が存在せず、したがって伸縮部材11と吸収体104とは接するが接合しない。なお、表面シート2に対する接着剤の塗工パターンや裏面シート3に対する接着剤の塗工パターンは、例えば接着剤塗布装置202や接着剤塗布装置203によって適宜調整され得る。例えば、この半製品の連続体101aのうちの一つ分の吸収性物品が図3の吸収性物品1ということができる。
【0055】
収縮工程では、半製品の連続体101aは接合ロール240から離され、複数の搬送ロールに搬送されつつ、搬送方向MDの張力を低下される(例えば、搬送ロールの回転数を低下させるなど)。それにより、横断方向CDに伸長された状態の伸縮部材11が収縮可能になるので、伸縮部材11を横断方向CDに収縮させることができる。それに対応して、半製品1aにおける伸縮部材11を含む部分も横断方向CDに収縮させることができる。その結果、伸縮部材11を含む部分が横断方向CDに収縮した半製品の連続体101bが形成される。例えば、この半製品の連続体101bのうちの一つ分の吸収性物品が図5の吸収性物品1ということができる。
【0056】
次いで、押圧工程では、折り畳みユニット200Fの搬送ロール303により、押圧部材301及び搬送装置310に、伸縮部材11が収縮された半製品の連続体101bが供給される。続いて、搬送装置310により、半製品の連続体101bが搬送方向MDに搬送されつつ、伸縮部材11の横断方向CDの長さよりも横断方向CDの長さが小さい押圧部材301により、半製品1bの横断方向CDの中央領域が半製品1bの載置面に向かう方向へ押圧される。それにより、伸縮部材11の複数の皺がある領域が押圧される。
【0057】
折り畳み工程では、搬送装置310により、半製品の連続体101bが搬送方向MDに搬送されながら、折り畳み部材302により、半製品1bにおける中央領域よりも横断方向CDの外側の一対の側部領域が、搬送方向MDに沿って延びる一対の折り線の位置で、半製品1bの載置面に向かう方向とは反対の方向に持ち上げられ、中央領域の上方にそれぞれ折り畳まれる。それにより半製品の連続体101cが形成される。なお、押圧工程と折り畳み工程とは時間的に重複して行われてもよいし、押圧工程の後に折り畳み工程が行われてもよい。半製品の連続体101cは、その後、例えば一製品分の吸収性物品に切り離され、更に折り畳まれて、吸収性物品1として包装される。
【0058】
以上のようにして、吸収性物品1が製造される。
【0059】
本吸収性物品1により、熱溶着で吸収性本体ABに固定された防漏壁5を備える吸収性物品1において、防漏壁5における熱溶着の固定箇所、すなわち熱溶着部50が着用者の肌に当接することを抑制することが可能となる。
【0060】
また、本実施の形態に係る吸収性物品では好ましい形態として、長手方向Lにおいて、伸縮部材11が吸収体4よりも長手方向Lの後側方向にずれている。したがって、伸縮部材11が吸収体4と厚さ方向Tで完全に重なる場合と比較して、伸縮部材11と吸収体4との摩擦等が低減されて、伸縮部材11を幅方向Wにより伸縮し易くできる。それにより、伸縮部材11の収縮により、内側部5SIがより容易に回転し、引っ繰り返ることができる。すなわち、内側部5SIでより容易に外側部SOを覆うことができる。
【0061】
本吸収性物品の他の好適な実施の形態では、平面視で伸縮部材11と吸収体4とが重なる領域の外側の周縁にも接着剤を配置しない。それゆえ、伸縮部材11と吸収体4とは相対的に互いにより動くことができる。それにより、伸縮部材11は、吸収体4の影響を受けずに収縮できる。その伸縮部材11の収縮により、内側部5SIがより容易に回転し、引っ繰り返ることができる。すなわち、内側部5SIでより容易に外側部5SOを覆うことができる。
【0062】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、伸縮部材11の位置が吸収体4に対して非肌面側、すなわち裏面シート3側に位置する点で、吸収体4に対して肌面側、すなわち表面シート2側に位置する本実施の形態と相違する。以下、主に相違点について説明する。図9は本実施の形態に係る吸収性物品を示す図であり、図9(a)は図1のIIa−IIa’の断面図を示し、図9(b)は図1のIIb−IIb’の断面図を示す。
【0063】
まず、本実施の形態に係る吸収性物品1の構成の相違点について説明する。本実施の形態では、伸縮部材11において、前側部分11aは、長手方向Lの前側の部分であって、厚さ方向Tにおいて、吸収体4と重なり(幅方向Wの両端部を除く)、吸収体4よりも非肌側に位置する。一方、後側部分11bは、長手方向Lの後側の部分であって、厚み方向Tにおいて、吸収体4とは重ならず表面シート2と重なる。ここで、伸縮部材11では、前側部分11aの肌側の面11p11は吸収体4と接し、接着剤等で接着されている。一方、後側部分11bの肌側の面11p12は吸収体4と接していないが、表面シート2と接し、接着剤等で接着されている。また、前側部分11a及び後側部分11bの非肌側の面11p2は裏面シート3と接し、接着剤等で接着されている。吸収体4は表面シート2と接し、接着剤等で接合されている。したがって、伸縮部材11と表面シート2と吸収体4とは厚さ方向Tに重なり、接着剤等により接合されている。そのため、伸縮部材11の前側部分11aは表面シート2と直接接合していないが、伸縮部材11の伸縮により、表面シート2が伸縮するので、熱溶着部50a、50bを介して防漏壁5も伸縮部材11の動作に追随できる。
【0064】
次に、本実施の形態に係る吸収性物品1の製造方法の相違点について説明する。図10は本実施の形態に係る吸収性物品1の製造装置200の構成例を示している。本実施の形態では、製造装置200において、伸縮部材接合ユニット200Dが裏面シート形成ユニット200Cの直後に配置されている点で、表面シート形成ユニット200Aの直後に配置されている第1の実施の形態と相違する。すなわち、製造方法において、伸縮部材接合工程が裏面シート形成工程の直後に実施されて、連続裏面シート103(裏面シート3)に伸縮部材11を貼り付ける点で、表面シート形成工程の直後に実施されて、連続裏面シート102(裏面シート2)に伸縮部材11を貼り付ける第1の実施の形態と相違する。
【0065】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。また、伸縮部材11が吸収体4より非肌側にあるので、伸縮部材11と支持部5bとの距離が大きくなる。それにより、伸縮部材11の収縮に伴って生じる、内側部5SIが外側部5SOとの境界P0を支点として幅方向Wの外側へ回転する力を大きくすることができる。それにより、より確実に、内側部5SIが幅方向Wの外側に引っ繰り返って外側部5SOの上に覆い被さることができる。
【0066】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 吸収性物品
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
7 サイドフラップ
11 伸縮部材
5 防漏壁
5c 起立部
5b 支持部
5SI 内側部
5SO 外側部
50 熱溶着部
AB 吸収性本体
【要約】
【課題】防漏壁における熱溶着による固定箇所が着用者の肌に当接することを抑制する。
【解決手段】吸収性物品1は、吸収性本体ABと、一対のサイドフラップ7、7と、一対の防漏壁5、5と、を備え、吸収性本体における一対のサイドフラップの間に接合され、幅方向に伸縮可能な伸縮部材11、を備える。一対の防漏壁の各々は、幅方向の外側が固定端とされ、幅方向の内側が自由端とされた起立部5cと、起立部の長手方向の一方の端部に隣接し、伸縮部材と厚さ方向に重なる支持部5bと、を含む。支持部5bは、幅方向の内側に位置し、吸収性本体に固定されていない内側部5SIと、幅方向の外側に位置し、吸収性本体に熱溶着部50で固定される外側部5SOと、を含む。
【選択図】図3
図1
図2
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図10