【実施例1】
【0014】
本発明の硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造方法を実現する硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置を
図1ないし
図4に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例の硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置1は、
図3に示すように、一端側に設けられた硫黄成分等主原料投入口2と他端側に設けられた硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口3とを備えたハウジング本体4と、ハウジング本体4を加熱するための加熱手段5とを有し、ハウジング本体4内には、一端側から他端側に向かって硫黄成分等主原料を搬送するための搬送用スクリュー6が設けられ、スクリュー羽根7のピッチが一端側から他端側に向かって徐々に小さくなるように構成され、硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口3の周囲には加温手段9が設けられている。以下、各構成について順次詳述する。
【0015】
硫黄成分等主原料投入口2は、硫黄成分等主原料をハウジング本体4内に投入するための部位であり、この実施例では、一端側(
図1または
図2中右側)の上部に開口して設けられている。
【0016】
硫黄成分等主原料投入口2には、ロータリーバルブ(図示しない)などの開閉手段が装着されていることが好ましく、これにより、硫黄臭が外部により漏れない硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置が構成され、硫黄臭の少ない良好な作業環境で硫黄系硝酸性窒素浄化材を作製することができる。
【0017】
硫黄成分等主原料としては、硫黄粉末の他、例えばアルカリ(土類)金属炭酸塩または砕石の粒状体などが含まれ、これらが混合機を用いてプレミックスされた後、硫黄成分等主原料投入口2へ投入される。
【0018】
硫黄粉末は、硫黄系硝酸性窒素浄化材に担持された硫黄酸化脱窒細菌が食することにより、NO
3を無害なN
2へ変換するように作用して地下水を浄化させるものである。硫黄粉末としては、例えば石油脱硫や石炭脱硫プラントの回収硫黄や天然硫黄などが挙げられるが特に限定されるものではない。
【0019】
アルカリ(土類)金属炭酸塩は、硫黄酸化細菌の炭素源となる炭酸を有した化合物であり、例えばカルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の炭酸塩あるいは重炭酸塩またはそれらの混合物などが挙げられる。中でも、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムは自然界に石灰石やドロマイトとして豊富に存在し、かつ適度な水不溶性を有していることから、硫黄系硝酸性窒素浄化材の寿命という面から有用である。
【0020】
砕石は透過壁の崩れを防止し、長期にわたって透過壁内の間隙を確保するために混合されるものである。脱窒反応で硫黄成分等が溶出して体積が微減するが、透過壁が強固な砕石を有することにより、間隙が安定的に確保され窒素ガスおよび汚泥を排出しやすくすることができる。
【0021】
硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口3は、ハウジング本体4内で製造された硫黄系硝酸性窒素浄化材を外部に排出する部位であり、この実施例では、一端側(
図1中左側)の下部において下方に向かって開口するように設けられている。
【0022】
ハウジング本体4は、硫黄系硝酸性窒素浄化材を製造するための部位であり、この実施例では、軸方向が略水平方向に沿って延在するように配置された円筒体4aにて構成され、両端部4ba,4cが略密閉された形状に構成されている。これにより、硫黄臭が外部により漏れない硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置が構成され、硫黄臭の少ない良好な作業環境で硫黄系硝酸性窒素浄化材を作製することができる。
【0023】
なお、この実施例のハウジング本体4は、支柱8a,8bにより略水平方向に延在するように支持されているが、一端側より他端側が若干低くなるように斜めに支持されていてもよく、これにより、硫黄系硝酸性窒素浄化材が重力の影響を受けて硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口3からより排出されやすくなる。
【0024】
加熱手段5は、ハウジング本体4を加熱して、硫黄成分等主原料のうちの硫黄粉末を溶融するためのものである。この実施例の加熱手段5は、ハウジング本体4を一端側から他端側に向かって徐々に高温となるように加熱するよう構成されている。
【0025】
具体的には、この実施例の加熱手段5はハウジング本体4の外面に沿って張設されたシート状ヒーターで構成されており、
図1に示すように、第1加熱手段5a、第2加熱手段5b、第3加熱手段5cが一端側から他端側に向かって徐々により高温でハウジング本体4を加熱するように構成されており、それらの上部にそれぞれ張設された第4加熱手段5d、第5加熱手段5e、第6加熱手段5fも、一端側から他端側に向かって徐々により高温でハウジング本体4を加熱するように構成されている。
【0026】
より具体的には、例えば、第1加熱手段5aは115℃、第2加熱手段5bは125℃、第3加熱手段5cは145℃でハウジング本体4を加熱することにより、一端側から他端側に向かって徐々に高温となるように加熱することができ、また、第4加熱手段5dは105℃、第5加熱手段5eは115℃、第6加熱手段5fは135℃でハウジング本体4を加熱することにより、一端側から他端側に向かって徐々に高温となるように加熱することができる。なお、具体的な温度設定は、硫黄成分等主原料の種類やハウジング本体の材質または大きさ等に応じて適宜選択決定される。
【0027】
このように、加熱手段5がハウジング本体4を一端側から他端側に向かって徐々に高温となるよう加熱することで、硫黄粉末を他端側に搬送されるにつれて飴状を経て液状に徐々に溶融させることができ、急激に硫黄粉末が液状化してハウジング本体4の下部内に溜まってしまうことがなく、硫黄成分が他の主原料(例えばアルカリ(土類)金属炭酸塩または砕石の粒状体など)の周りに均等に分散して固着し硫黄成分等主原料同士の結合力がより強い硫黄系硝酸性窒素浄化材を製造できる。
【0028】
また、加熱手段5は、ハウジング本体4の上部と下部を略同一温度に加熱するように構成されている。これは、加熱手段5によりハウジング本体4が加熱されると、熱は上部に移動するため上部が下部より高い温度となる。上部が高くなると、搬送用スクリュー6によって上部に掻き上げられた硫黄粉末は下部より液状化が進むため、下部に落下して溜まってしまう。この現象を抑制するために、加熱手段5がハウジング本体4の上部と下部を略同一温度に加熱すると、硫黄成分が他の主原料(例えばアルカリ(土類)金属炭酸塩または砕石の粒状体など)の周りに均等に分散して固着し硫黄成分等主原料同士の結合力がより強い硫黄系硝酸性窒素浄化材が製造される。
【0029】
具体的には、前述したように、第1加熱手段5aは例えば115℃で加熱し、その上部に配された第4加熱手段5dは105℃で加熱することで、ハウジング本体4の上部と下部を略同一温度に加熱するように構成されており、また、第2加熱手段5bは125℃で加熱し、その上部に配された第5加熱手段5eは115℃で加熱することで、ハウジング本体4の上部と下部を略同一温度に加熱するように構成されており、さらに、第3加熱手段5cは145℃で加熱し、その上部に配された第6加熱手段5fは135℃で加熱することで、ハウジング本体4の上部と下部を略同一温度に加熱するように構成されている。なお、具体的な温度設定は、硫黄成分等主原料の種類やハウジング本体の材質または大きさ等に応じて適宜選択決定される。
【0030】
搬送用スクリュー6は、ハウジング本体4の一端側から他端側に向かって硫黄成分等主原料を搬送するためのものであり、
図3に示すように、ハウジング本体4内の中央付近に軸方向に沿ってシャフト6aが回転可能に支持され取り付けられている。
【0031】
搬送用スクリュー6は、駆動手段(図示しない)によりシャフト6aが回転(1回転7〜15分程度の低速で回転)するように構成されており、硫黄成分等主原料投入口2から投入された硫黄成分等主原料がスクリュー羽根7間に配され、シャフト6aの回転に伴ってスクリュー羽根7が回転することで、硫黄成分等主原料がハウジング本体4の一端側から他端側に向かって順次搬送されるように構成されている。
【0032】
また、搬送用スクリュー6は、スクリュー羽根7のピッチが一端側から他端側に向かって徐々に小さくなるように構成されている。具体的には、この実施例では、
図3に示すように、硫黄成分等主原料投入口2付近のスクリュー羽根7のピッチ(スクリュー羽根7間の長さ)はmであるが、徐々に小さくなって硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口3付近では、mの略1/2の長さのnとなるように構成されている。なお、一端側から他端側に向かって徐々に小さくなるスクリュー羽根7のピッチは、これに限定されるものではなく、ハウジング本体4の大きさや硫黄成分等主原料の種類等に応じて適宜設定される。
【0033】
このように、硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置1は、加熱手段5によってハウジング本体4の一端側から他端側に向かって徐々に高い温度で加熱され、徐々に溶融化が進行して粉体から飴状体、飴状体から液体へ変化する硫黄成分の体積減にもかかわらず、スクリュー羽根7のピッチが小さくなってスクリュー羽根7間の空間も狭くなるように構成されることで、硫黄成分等主原料がハウジング本体4の一端側から他端側に向かうにつれて圧縮されて、硫黄成分が他の主原料の周りに均等に分散して固着し硫黄成分等主原料同士の結合力が非常に強い硫黄系硝酸性窒素浄化材を連続的に量産できるように構成されている。
【0034】
また、硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口3の周囲には加温手段9が設けられている。これにより、外気と装置内との温度差によって、硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口3付近で硫黄系硝酸性窒素浄化材が急激に冷却して硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口3を詰まらせることを抑止できる。
【0035】
つぎに、本発明の硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置1における製造方法について説明する。
硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置1を使用するには、加熱手段5にてハウジング本体4を加熱し、搬送用スクリュー6を1回転7〜15分程度の低速で回転させた状態で、硫黄成分等主原料投入口2から予め混合機にてプレミックスした硫黄成分等主原料をハウジング本体4内に投入する。
【0036】
ハウジング本体4内に投入された硫黄成分等主原料は、スクリュー羽根7間に配され回転させられながら攪拌され、ハウジング本体4の一端側から他端側に向かって搬送される。この間、硫黄成分等主原料は、スクリュー羽根7のピッチが徐々に小さくなりスクリュー羽根7間の空間が狭くなる中で加熱されると共に、硫黄成分が粉体から飴状体、飴状体から液体へ変化して体積が減少する中で、ハウジング本体4の一端側から他端側に向かうにつれて次第に圧縮されて、硫黄成分が他の主原料の周りに均等に分散して固着し硫黄成分等主原料同士の結合力が非常に強い硫黄系硝酸性窒素浄化材が製造される。
【0037】
ハウジング本体4内の他端側で製造された硫黄系硝酸性窒素浄化材は、硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口3から、径が約30mmほどの粒状体として外部に順次排出される。この粒状体を冷却して常温化し、脱窒細菌が棲息している液体や固体粉末を用いて脱窒細菌を硫黄系硝酸性窒素浄化材に担持させ、脱窒細菌入り硫黄系硝酸性窒素浄化材として地中に埋設し、透過壁の形成材等として使用する。
【0038】
さらに、
図5に示した本発明の硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置の他の実施例について説明する。
この実施例の硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置10と前述した硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置1との基本的な相違は、硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口の位置のみであり、他は同様である。硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置1と同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0039】
具体的には、硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置10は、ハウジング本体4が他端側に向かって縮径する縮径部11を有し、この縮径部11の端部に硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口12が設けられている。このように、本発明の硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置には、下方に向かって開口した硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口ではなく、硫黄系硝酸性窒素浄化材の製造装置の他端側に向かって開口した硫黄系硝酸性窒素浄化材排出口を有するものも含まれる。