【実施例1】
【0013】
図1は、スラリーの充填量を制御するため、スラリー吸引量を決定する実施例1に係る分析装置の一構成例を示す図である。同図に示すように、実施例1に係る分析装置1は、固相抽出処理部10、試料セット部20、試薬供給部30、試料分析部40を含んで構成され、制御部である制御ユニット50で制御される。なお、この分析装置1の固相抽出処理部10は、分析装置1の前処理部の一部を構成し、前処理段階として、いわゆる固相抽出(Solid Phase Extraction:SPE)を行う。この固相抽出(SPE)は、固相抽出材と呼ばれる粒子径数μm〜数十μmの微粒子の表面に、分析・測定対象である化学物質を相互作用により捕捉させることで、試料容器中に存在する他の物質と分離精製する方法である。
【0014】
試料セット部20は、分析対象の測定成分が溶解した溶液である試料液Liq2が分注された試料容器21を周回に搬送する試料搬送テーブル22、試料搬送テーブル22によって所定位置まで搬送された試料容器21から試料液Liq2を固相抽出処理部10に移す試料分注機構23を含んで構成される。そして、試料搬送テーブル22の周囲の所定位置には、例えば試料液Liq2を試料容器21に注入する、図示を省略した注入機構が備わり、この注入機構によって試料液Liq2が試料容器21に分注される。
【0015】
また、試料搬送テーブル22の周囲の所定位置には、試料分注機構23が設置される。試料分注機構23には、試料セット部20と固相抽出処理部10の間を移動可能に構成される試料分注アーム23aが備わる。試料分注アーム23aは試料搬送テーブル22の上方(
図1の垂直方向)に備わり、その端部には試料液Liq2を吸い上げる試料用ノズル23a1が備わる。そして、試料分注機構23は、試料搬送テーブル22によって所定位置まで搬送された試料容器21に分注されている試料液Liq2を試料用ノズル23a1で吸い上げ、吸い上げた試料液Liq2を試料分注アーム23aによって固相抽出処理部10に移動可能に構成される。
【0016】
前処理部の一部を構成する固相抽出処理部10は、複数の固相抽出容器11が取り付けられ、この固相抽出容器11を周回に搬送する抽出容器テーブル12と、抽出処理部13と、固相抽出容器11に固相抽出材を充填する固相抽出材充填機構14と、固相抽出容器11から固相抽出材を排出する排出機構15と、試薬注入機構16と、容器洗浄機構17と、を含んで構成される。抽出容器テーブル12は、例えば円形の円盤状に形成され、中心部が分析装置1に回転可能に取り付けられて、複数の固相抽出容器11を周回に搬送するように構成される。本実施例の固相抽出容器11は、試料液Liq2に含まれる測定成分を吸着する固相抽出材が充填される容器として機能する。
【0017】
固相抽出材充填機構14は、測定成分が含まれる試料液からゴミなどを除去するフィルタを固相抽出容器11に供給するフィルタ供給機構14aと、固相抽出容器11におけるフィルタの位置を決定するフィルタ位置決め機構14bと、測定成分を吸着する固相抽出材を固相抽出容器11に供給する固相抽出材供給機構14cと、スラリー供給部14dと、スラリー容器14eを含んで構成される。
【0018】
固相抽出材供給機構14cには、抽出容器テーブル12とスラリー供給部14dの間を移動可能に構成されるスラリー分注アーム14c1が備わる。スラリー分注アーム14c1はスラリー供給部14dのスラリー容器14eの上方に備わり、その端部にはスラリーを吸い上げるスラリー用ノズル14c2が備わる。そして、固相抽出材供給機構14cは、スラリー供給部14dのスラリー容器14e内のスラリーLiq1をスラリー用ノズル14c2で吸い上げ、吸い上げたスラリーLiq1をスラリー分注アーム14c1によって抽出容器テーブル12に移動可能に構成される。
【0019】
また、フィルタ供給機構14aは分析装置1に取り付けられた抽出容器テーブル12の上方に配置され、例えば球形のフィルタを固相抽出容器11に落下するように構成される。また、固相抽出材供給機構14cは分析装置1に取り付けられた抽出容器テーブル12の上方に配置される。フィルタ位置決め機構14bは分析装置1に取り付けられた抽出容器テーブル12の上方に配置され、14aのフィルタ供給後フィルタの位置決めを行う。
【0020】
分析装置1に取り付けられた抽出容器テーブル12は試料分注機構23の試料分注アーム23aの下方(
図1の垂直方向)に配置されて、試料分注アーム23aの直下に固相抽出容器11を搬送するように備わる。そして、試料分注アーム23aの試料用ノズル23a1が試料セット部20で試料容器21から吸い上げた試料液Liq2が、固相抽出容器11中に吐出されるように構成される。
【0021】
また、抽出容器テーブル12は固相抽出材供給機構14cのスラリー分注アーム14c1の下方に配置されて、スラリー分注アーム14c1の直下に固相抽出容器11を搬送するように備わる。そして、スラリー分注アーム14c1のスラリー用ノズル14c2がスラリー供給部14dでスラリー容器14eから吸い上げたスラリーLiq1が固相抽出容器11に吐出されるように構成される。
【0022】
更に、抽出処理部13、排出機構15、試薬注入機構16、容器洗浄機構17、および抽出機構洗浄部18は、抽出容器テーブル12の周囲の所定位置に適宜配置される。抽出処理部13には、高圧空気を出力する加圧ノズル13aが備わり、高圧空気を固相抽出容器11内に吐出して固相抽出容器11を加圧する機能を有する。
【0023】
排出機構15は使用済みの固相抽出材を固相抽出容器11から排出する機能を有する。抽出機構洗浄部18は、使用済みの固相抽出材を固相抽出容器11から排出した後の排出機構15を洗浄する。なお、符号15aは排出機構15の作業アームである。試薬注入機構16は、試薬供給部30から供給される試薬である固相抽出容器11を洗浄する洗浄用試薬Liq3や、測定成分を固相抽出する溶出用試薬Liq4を固相抽出容器11に注入する機能を有する。また、容器洗浄機構17は、固相抽出に使用された固相抽出容器11を洗浄する。
【0024】
次に試料分析部40は、固相抽出容器11から抽出される、測定成分を含む溶出液を収容する容器である溶出液収容容器41を周回に搬送する溶出液搬送テーブル42と、溶出液収容容器41に収容された溶出液を分析実施部43に送液する送液部44と、質量分析法(Mass Spectrometry:MS)を用いた分析実施部43が溶出液中の測定成分を測定して取得した測定値である測定データに対し、所定の分析処理プログラムを実行、演算する演算システム部45と、演算システム部45が演算して得た分析結果を、図示を省略したモニタ、プリンタ等の出力装置に出力する外部通信インタフェース45aと、溶出液収容容器41を保管する容器保管部46と、を含んで構成される。
【0025】
溶出液収容容器41は、分析装置1に取り付けられた抽出容器テーブル12の固相抽出容器11から滴下する、測定成分を含む溶出液を収容する構成であることが好ましく、溶出液搬送テーブル42は抽出容器テーブル12の下方に備わる構成が好ましい。分析実施部43は、固相抽出処理部10で抽出された、溶出液中の測定成分を測定してデータを取得する装置であって、分析装置1の目的に適した、上述したMSなどを使った装置で構成される。分析実施部43における、測定成分の測定方法は、液体クロマトグラフィ、質量分析などであるがこれは限定されない。
【0026】
そして、分析実施部43で取得された測定値は演算システム部45に入力される。演算システム部45は入力された測定値に基づいて測定成分の分析結果を演算する。また、演算システム部45は必要に応じて演算した分析結果を外部通信インタフェース45a経由で出力する。ここで、演算システム部45として通常のコンピュータを用いることができる。
【0027】
すなわち、演算システム部45は、分析実施部43からの各種の測定データが入力され、測定データを演算処理する中央処理部(Central Processing Unit:CPU)や、測定データや処理結果のデータや各種の制御、処理プログラムを記憶するメモリや、入出力部や、入出力インタフェース部等を備えたコンピュータで構成できる。その場合、上記の外部通信インタフェース45a、出力装置として、コンピュータの入出力インタフェース部や入出力部を用いることができる。また、このコンピュータを、上述した制御ユニット50を構成するコンピュータと兼用することも可能であり、この場合、演算システム部45と制御ユニット50を総称して制御部と呼ぶ。必要に応じて、制御ユニット50の制御用プログラム、演算システム部45の演算プログラム、更には分析結果データを図示しない記憶媒体(Hard Disk Drive:HDD)に記憶することもできる。
【0028】
なお、使用されない溶出液収容容器41は容器保管部46に保管され、必要に応じて図示しない搬送アーム等の搬送装置で溶出液搬送テーブル42にセットされる構成とすればよい。
【0029】
試薬供給部30は、固相抽出容器11を洗浄する洗浄用試薬Liq3や試料液に含まれる測定成分を固相抽出する溶出用試薬Liq4が充填される試薬容器31を周回に搬送する試薬搬送テーブル32を備える。試薬搬送テーブル32は試薬注入機構16の試薬注入アーム16aの下方に配置され、試薬容器31を試薬注入アーム16aの直下に搬送する。試薬注入アーム16aには試薬容器31から洗浄用試薬Liq3や溶出用試薬Liq4を吸い上げる試薬用ノズル16a1が備わり、試薬容器31から吸い上げた洗浄用試薬Liq3や溶出用試薬Liq4を分析装置1に取り付けられた抽出容器テーブル12の固相抽出容器11に吐出する。このため、試薬注入アーム16aは抽出容器テーブル12より上方に備わる。
【0030】
また、試薬供給部30には、洗浄用試薬Liq3や溶出用試薬Liq4が吸い上げられて空の状態になった試薬容器31に洗浄用試薬Liq3や溶出用試薬Liq4を補充する補充機構(図示せず)が備わっている。なお、洗浄用試薬Liq3や溶出用試薬Liq4を補充する方法は、試薬容器31ごと取り替える方法や、溶液である洗浄用試薬Liq3,溶出用試薬Liq4のみを試薬容器31に供給する方法などがあるが、これらの方法に限定されない。以上のような本実施例の分析装置の構成によって、試薬供給部30は連続的に洗浄用試薬Liq3や溶出用試薬Liq4を供給できる。
【0031】
また、例えば、外部通信インタフェース45aに接続されるパーソナルコンピュータ等のコンピュータの入出力部から、試薬搬送テーブル32にセットされた試薬容器31の試薬である洗浄用試薬Liq3,溶出用試薬Liq4などの情報が、試薬搬送テーブル32における試薬容器31の位置情報とともに入力されて演算システム部45に書き込まれる構成が好ましい。
【0032】
更に、制御ユニット50は演算システム部45から試薬容器31の位置情報と補充される試薬の情報を取得することによって、試薬容器31に補充される試薬と、その試薬容器31がセットされている試薬搬送テーブル32の位置を識別できる。または、試薬容器31に、充填された試薬の情報を示すバーコードが添付され、バーコードリーダ33が試薬容器31のバーコードから読み取った情報を制御ユニット50に送信する構成であってもよい。制御ユニット50は試薬注入アーム16aがバーコードから読み取った情報に基づいて試薬容器31の試薬を識別できる。
【0033】
または、情報を書き込み自在なRFID(Radio Frequency Identification)などのチップが試薬容器31に備わり、バーコードリーダ33に、チップに書き込まれた情報を読み取るリーダが備わる構成としてもよい。そして、バーコードリーダ33が当該チップから読み取った情報を制御ユニット50に送信する構成としてもよい。さらに、図示しない補充機構が試薬容器31に補充した試薬である洗浄用試薬Liq3や溶出用試薬Liq4を識別する情報をこのチップに書き込む構成とすれば、バーコードリーダ33がチップに書き込まれた情報を読み取って制御ユニット50に送信することで、制御ユニット50は試薬容器31の試薬を識別できる。
【0034】
以上、
図1に示すように、本実施例に係る分析装置1は、固相抽出処理部10、試料セット部20、試薬供給部30等の前処理部と、試料分析部40を含んで構成され、制御部を構成する制御ユニット50で制御される。そして、制御ユニット50は、以下で詳述する固相抽出容器11に固相抽出材を充填する工程(固相抽出材充填工程)と、固相抽出材が充填された固相抽出容器11で試料液に含まれる測定成分を固相抽出する工程(固相抽出工程)と、固相抽出後の固相抽出容器11を洗浄する工程(容器洗浄工程)を適宜実行し、固相抽出材の充填量を制御し、試料液に含まれる測定成分を固相抽出し、測定成分を分析する。
【0035】
<固相抽出材の充填動作>
図2は、本実施例の分析装置1の制御ユニット50が固相抽出材充填機構14を制御して固相抽出容器11に固相抽出材M1を充填する固相抽出材充填工程を示している。すなわち、制御部である制御ユニット50は、本工程を実行することにより、固相抽出容器11に充填する固相抽出材M1の充填量を制御する。
【0036】
図2に示すように、固相抽出材充填工程では7つの工程(第1工程SA1〜第7工程SA7)で固相抽出容器11に固相抽出材M1が充填される。なお、
図2には、粉末状の固相抽出材M1を固相抽出容器11に充填する固相抽出材充填工程を示す。以下、
図2を参照して本実施例における固相抽出材充填工程を説明する。
【0037】
第1工程SA1で制御ユニット50は、抽出容器テーブル12を制御して固相抽出容器11をフィルタ供給機構14aの直下に搬送する。そして制御ユニット50はフィルタ供給機構14aを制御して、固相抽出容器11にフィルタとして下フィルタF1を供給する。本実施例において下フィルタF1は球形であって伸縮性を有し、フィルタ供給機構14aは直下に搬送された固相抽出容器11に球形の下フィルタF1を落下する機能を有する。
【0038】
そして、フィルタ供給機構14aから球形の下フィルタF1が固相抽出容器11の胴体部11aに投入される。フィルタの径は排出路11bの内面の径より大きく形成され、下フィルタF1は縮径部11cと排出路11bの境界で停止する。
【0039】
なお、この下フィルタF1の形状は球形に限定されるものではない。円柱形状、テーパの付いた円柱形状、段の付いた円柱形状、などであってもよい。また、断面形状が、台形、菱形、正方形、長方形等を呈する角柱形状のフィルタであってもよい。
【0040】
第2工程SA2で制御ユニット50は、抽出容器テーブル12を制御して下フィルタF1が投入された固相抽出容器11をフィルタ位置決め機構14bの直下に搬送する。さらに制御ユニット50はフィルタ位置決め機構14bの位置決めロッド14b1を下方に移動する。下フィルタF1が投入された固相抽出容器11に位置決めロッド14b1が入り込み、さらに、位置決めロッド14b1は下フィルタF1を排出路11bに押し込んで進行させながら自身も排出路11bに進入する。下フィルタF1が凸部11dに当接すると、位置決め機構14bは進行を停止し、下フィルタF1の位置決めを完了する。
【0041】
第3工程SA3で制御ユニット50は、抽出容器テーブル12を制御して下フィルタF1が充填された固相抽出容器11を固相抽出材供給機構14cの直下に搬送する。そして制御ユニット50は固相抽出材供給機構14cを制御して、固相抽出材M1を固相抽出容器11に充填する。
【0042】
具体的に固相抽出材供給機構14cは粉末状の固相抽出材M1が溶液に分散しているスラリーLiq1を固相抽出容器11の胴体部11aに注入するように構成される。なお、スラリーは、エタノール、メタノールなどの有機溶媒と固相抽出材の微粒子の混合液、あるいは水と微粒子の混合液、水と有機溶媒と微粒子の混合液などを用いるが、それに限るものではない。固相抽出容器11の胴体部11aに注入されたスラリーLiq1は排出路11bに流れ込み下フィルタF1によって堰き止められて下フィルタF1の上方に溜まる。
【0043】
第4工程SA4で制御ユニット50は、抽出容器テーブル12を制御してスラリーLiq1が注入された固相抽出容器11を抽出処理部13の直下に搬送する。そして制御ユニット50は抽出処理部13を制御して、抽出処理部13に備わる加圧ノズル13aを固相抽出容器11の胴体部11aに嵌め込む。そして制御ユニット50は抽出処理部13を制御して加圧ノズル13aの先端部から高圧空気を固相抽出容器11に送り込む。固相抽出容器11は加圧され、スラリーliq1の液体成分Liq1aは加圧によって下フィルタF1を通って排出され、スラリーliq1に分散していた粉末状の固相抽出材M1が下フィルタF1の上方に残存する。つまり、固相抽出材M1は下フィルタF1で係止される。
【0044】
第5工程SA5で制御ユニット50は、抽出容器テーブル12を制御して固相抽出材M1が充填された固相抽出容器11をフィルタ供給機構14aの直下に搬送する。そして制御ユニット50はフィルタ供給機構14aを制御して、固相抽出容器11の胴体部11aにフィルタである上フィルタF2を供給する。上フィルタF2は縮径部11cと排出路11bの境界で停止する。
【0045】
第6工程SA6で制御ユニット50は、抽出容器テーブル12を制御して上フィルタF2が投入された固相抽出容器11をフィルタ位置決め機構14bの直下に搬送する。そして、制御ユニット50はフィルタ位置決め機構14bを制御して、下フィルタF1の位置決めと同様に上フィルタF2を位置決めする。
【0046】
位置決めロッド14b1で排出路11bに押し込まれた上フィルタF2は適宜固相抽出材M1を圧縮した位置で停止する。このように、フィルタ位置決め機構14bで上フィルタF2の位置が決定されることによって固相抽出材M1の位置が決定され、固相抽出材M1が固相抽出容器11に充填される。
【0047】
このような第1工程SA1から第7工程SA7を含んでなる固相抽出材充填工程によって、固相抽出容器11の排出路11bに下フィルタF1と上フィルタF2に挟まれて固相抽出材M1が充填される。
【0048】
<抽出材の充填(第3工程SA3)>
図3は、本実施例の分析装置1の制御ユニット50により制御される、上述した
図2の第3工程SA3の固相抽出材の供給・充填動作の一例の詳細を示す図である。固相抽出材の供給動作が開始(S01)で、制御ユニット50から測定成分毎に応じて固相抽出材の充填量を読み込み(S02)、スラリー容器14e内の吸光度測定を開始する(S03)。測定した吸光度と固相抽出材の充填量からスラリー吸引量Xμl(0.01≦X≦2000)を演算システム部45により算出し(S04)、スラリー用ノズル14c2からスラリー容器14e内のスラリー(liq1)を上記の充填量に対応するスラリー吸引量Xμl吸引する(S05)。なお、本実施例における光学式検出部を用いて吸光度の測定方法は、後で
図4を用いて詳述する。充填量に対応するスラリー吸引量Xμlのスラリー吸引後、スラリー供給アーム14C1が回転移動し、抽出容器テーブル12の固相抽出容器11内にスラリー(liq1)を供給し(S06)、固相抽出材の供給動作を完了する(S07)。
【0049】
<スラリーの吸光度の測定方法>
図4は、
図3の吸光度測定S03に対応し、スターラなどにより常時攪拌されているスラリーの吸光度を、光学式検出部を用いて測定する方法を説明する図である。本実施例においては、スラリーの吸光度測定は、スラリー容器14eに対し、直交座標系xyzの3軸方向で実施する。
図4の構成において、光源Xと受光部X、光源Yと受光部Y、光源Zと受光部Zは、それぞれ光学式検出部を構成する。
【0050】
図4上段の(a)は、透過光方式および透過光散乱方式、
図4下段の(b)は、散乱光方式の吸光度の測定例を示している。x方向、y方向、z方向の吸光度は、それぞれの光源からの入射光強度I
ox、I
0y、I
0z、受光部で検出される透過光強度I
x、I
y、I
zとし、A
λx=−log
10(I
x/I
0x)、A
λy=−log
10(I
y/I
0y)、A
λz=−log
10(I
z/I
0z)から算出する。各軸の吸光度は、測定開始からy秒(10
−6≦y≦10
2)の積算値、あるいは微分値、平均値などの演算を演算システム部45で行い算出する。
【0051】
なお、吸光度の測定箇所、測定方向が1方向の場合、スラリーの吸引位置はライン上に複数個所存在するため、吸引位置によって、スラリー吸引量がばらつく可能性が高い。そのため、吸光度は、
図4の示すように、相異なる2軸方向以上から交点を持つように測定し、その交点で、スラリーを吸引することが望ましいが、これに限るものではない。図中は、x軸、y軸、z軸の3軸方向の測定を実施しているが、最低で1軸方向以上測定すれば良い。また光学式検出部による吸光度測定方法は、透過光方式、散乱光方式、透過光散乱方式に限定されるものではなく、表面散乱光方式、積分急測定方式などを始めとする他の方式を用いてもよい。
【0052】
<吸引量の決定方法>
図5は、制御ユニット50による
図3のS04のスラリー吸引量の決定方法を説明するために示したグラフである。縦軸は吸光度、横軸は、スラリー吸引量を示す。吸光度は、
図4の3軸方向の吸光度A
λx、A
λy、A
λzのうち少なくとも1軸方向以上の吸光度あるいは吸光度を演算した値を用いる。吸光度が低い場合、スラリー吸引量を少なくし(A
1)、吸光度が高い場合多くする(A
2)。なお、図中の縦軸は、3軸方向の吸光度の積を記載したが、3軸方向の和、差、商、2軸方向の吸光度の積(A
λx・A
λy、A
λx・A
λz、A
λy・A
λz)、和(A
λx+A
λy、A
λx+A
λz、A
λy+A
λz)、差、商、1軸方向の吸光度(A
λx、A
λy、A
λz)などでもよい。また、本実施例では、スラリーの充填量を制御するためにスラリー吸引量を決定する条件であるスラリーの物理量として吸光度を用いたが、吸光度のかわりにスラリーの濃度や濁度をスラリーの物理量として用いても良いことは先に述べた通りである。
【実施例2】
【0053】
次に、実施例2として、上述した実施例1の
図2中の抽出材の充填(第3工程SA3)の変形を示す実施例を説明する。本実施例においては、スラリーの充填量を制御するため、光学式検出部でスラリーの物理量を計測する測定位置を調整するアクチュエータを備え、制御部は、スラリーの吸光度に基づき、スラリーを吸引する吸引位置を決定し、この位置でスラリーを吸引する吸引位置を決定する演算システム部を含む。よなお、第3工程SA3以外の分析装置1の実施例1の装置と同様の構成動作については、ここでは説明を省略する。
【0054】
図6は、本実施例における、
図2の第3工程SA3の固相抽出材の供給動作の詳細である。固相抽出材の供給動作が開始(S21)で、制御ユニット50から測定成分毎に応じて固相抽出材の充填量を読み込み(S22)、スラリー容器14e内のスラリーの物理量である吸光度の測定を開始する(S23)。本実施例では、スラリー吸引量を一定とする。次に、固相抽出材M1の充填量の正確性を±0.05mg以下(1mgの固相抽出材の充填にて、分析性能に影響を与えない重量の範囲)にするため、充填量から±0.05mgに該当する吸光度の許容範囲(A
l1≦吸光度≦A
h1)を設け、範囲内か否かを判定する。(S24)。なお、A
l1およびA
h1は、充填量毎に演算システム部45にて算出する。あるいは、予め設定した許容範囲をメモリ中のテーブルから読みだすことも可能である。
【0055】
許容範囲内(A
l1≦吸光度≦A
h1)の場合、スラリー用ノズル14c2からスラリー容器14e内のスラリーliq1を吸引する(S26)。スラリー吸引後、スラリー供給アーム14C1が回転移動し、抽出容器テーブル12の固相抽出容器11内にスラリーliq1を供給し(S27)、固相抽出材M1の供給動作を完了する(S28)。
【0056】
許容範囲外(吸光度<A
l1、A
h1<吸光度 )の場合、吸光度の測定位置を変更し(S25)、再度スラリーの吸光度を測定する(S23)。
【0057】
吸光度の測定位置である光学式検出部である光源および受光部の位置制御は、制御ユニット50を介して、2軸のアクチュエータで行う。2軸のアクチュエータの詳細を、後で、
図10を用いて説明する。なお、測定位置の調整は、光学式検出部である光源および受光部の駆動に限るものではなく、スラリー供給部14dに設置した図示されていないxyzの直交座標軸系を利用した3軸のアクチュエータにより、スラリー容器の位置を調整してもよい。なお、
図6のフローには図示を省略したが、本実施例においては、許容範囲外が連続で30回検出された場合、装置は異常停止する。
【0058】
<吸光度の測定位置変更>
図7は、
図6のS24の吸光度の許容範囲を示したグラフである。縦軸は吸光度、横軸は測定位置を示す。吸光度の定義は、
図5と同じである。許容範囲内にあるA
O1は、スラリー吸引の動作(S26)へ移り、許容範囲外のA
N1およびA
N2は、測定位置を変更し(S25)、吸光度を再測定する(S23)。再測定の結果、吸光度が許容範囲内となったら、その位置を吸引位置としてスラリー吸引を行う(S26)。なお、本実施例ではスラリー測定位置を決定する条件に、吸光度を用いているが、吸光度のかわりにスラリーの濃度や濁度を用いても良いことは実施例1と同様である。
【実施例3】
【0059】
実施例3として、上述した実施例1、2の変形の実施例を説明する。本実施例では、スラリーの充填量を制御するため、スラリー容器内のスラリーの回転速度を制御するスターラを備え、制御部は、スラリーの吸光度に基づき演算システム部が決定した回転速度に従い、このスターラを制御する。本実施例においても、
図2の第3工程SA3以外の実施例1と同様の構成・処理については、ここでは説明を省略する。
【0060】
図8は、
図2の第3工程SA3の固相抽出材の供給動作例の詳細を示す図である。同図において、固相抽出材の供給動作が開始(S31)で、制御ユニット50から測定成分毎に応じて固相抽出材の充填量を読み込み(S32)、スラリー容器14e内の吸光度測定を開始する(S33)。本実施例では、上述した実施例と異なり、スラリー吸引量を一定、吸光度の測定位置を固定とする。次に、固相抽出材M1の充填量の正確性を±0.05mg以下、すなわち、1mgの固相抽出材の充填にて、分析性能に影響を与えない重量の範囲にするため、充填量から±0.05mgに該当する吸光度の許容範囲(A
l2≦吸光度≦A
h2)を設け、範囲内か否かを判定する(S34)。なお、A
l2およびA
h2は、充填量毎に演算システム部45にて算出する。あるいは、予め用意して、図示を省略したメモリに蓄積したテーブルの内容を読み出すよう構成することもできる。
【0061】
許容範囲内(A
l2≦吸光度≦A
h2)の場合、スラリー用ノズル14c2からスラリー容器14e内のスラリーliq1を吸引する(S38)。スラリー吸引後、スラリー供給アーム14C1が回転移動し、抽出容器テーブル12の固相抽出容器11内にスラリーliq1を供給し(S39)、固相抽出材M1の供給動作を完了する(S40)。
【0062】
図8に示すように、許容範囲外(吸光度<A
l2)の場合、制御ユニット50から、電気信号をスターラへ送り、スラリーの回転速度を10rpm上げ(S36)、再度スラリー溶液の吸光度を測定する(S33)。許容範囲外(A
h2<吸光度)の場合、制御ユニットから、電気信号をスターラへ送り、スラリーの回転速度を10rpm下げ(S37)、再度スラリー溶液の吸光度を測定する(S33)。許容範囲内となった場合、先の実施例同様スラリー吸引(S38)を行う。なお、
図8のフローでは省略したが、許容範囲外が連続で20回検出された場合、装置は異常停止する。
【0063】
<スラリーの回転速度の決定方法>
図9は、
図8のS34の吸光度の許容範囲を示したグラフである。縦軸は吸光度、横軸は、スラリーの回転速度を示す。吸光度の定義は、
図5と同じである。許容範囲内のA
O2は、スラリー吸引(S38)の動作へ移り、許容範囲外(吸光度<A
l2)のA
N3は、スラリーの回転速度を10rpm上げ(S36)、再度スラリー溶液の吸光度を測定する(S33)。許容範囲外(A
h2<吸光度)のA
N3は、スラリーの回転速度を10rpm下げ(S37)、再度スラリー溶液の吸光度を測定する(S33)。スラリーの回転速度の制御は、制御ユニット50を介して、スラリー供給部14dに設置したスターラが行う。このスターラの構成については、後で説明する
図10の充填装置に示した。スラリーliq1の攪拌方法としてスターラを用いるのは一例であり、これに限るものではなく他の攪拌手段を用いてもより。また、本実施例では、スラリーの充填量を制御するためのスラリー回転数を決定する条件に、吸光度を用いているが、吸光度のかわりにスラリーの濃度や濁度を用いても良いことは先の実施例同様である。
【0064】
<充填装置の構成>
図10は、以上説明した各実施例における
図1の分析装置1中の固相抽出材充填機構14である充填装置の構成の一例を示す図である。充填機構は、スラリー用ノズル14c2、スラリーを吸引するシリンジポンプ51、配内の洗浄用の洗浄用電磁弁52、溶媒を送液するポンプ53、溶媒循環用電磁弁54、制御ユニット50、演算システム部45、スターラ55、y方向、z方向アクチュエータ56、57で構成される。光学式検出部を構成する光源Xおよび受光部Xの位置決めは、演算システム部45で算出した測定位置情報に基づき、制御ユニット50を介して、鉛直方向(z方向)および奥行き方向(y方向)のアクチュエータにより行う。
【0065】
制御ユニット50は、スラリーliq1の吸光度から演算システム部45により算出したシリンジポンプの吸引量、吸光度の測定位置、或いはスターラの回転数により、シリンジポンプの吸引量、吸光度測定位置、スターラの回転数の制御を行う。
【0066】
なお、本図は、図示の関係上、3軸方向の吸光度測定のうちの1軸方向、すなわち、
図4のYZ平面の光学式検出部である光源Xおよび受光部Xのみを記載している。XZ平面の光学式検出部を構成する光源Yおよび受光部Y、XY平面の光学式検出部を構成する光源Zおよび受光部Zに関しても同様に吸光度の測定位置を制御することが可能であることは言うまでもない。
【0067】
以上、本発明の種々の実施例を図面に従い説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。例えば、上述したスラリー吸引量、吸光度測定位置の測定値の変更、スラリーの回転速度の変更を組み合わせて充填量を制御しても良い。
【0068】
更に、上述した各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を実現するプログラムを作成する例を説明したが、それらの一部又は全部を例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良いことは言うまでもない。