【実施例1】
【0017】
図1は、マイクロ波ECRプラズマエッチング装置に適用した第1の実施例の装置の全体構成の一例を示している。
図2および
図3は、第1の実施例のプラズマ処理装置に適用した要部の概要を示している。
図4は本実施例のステージの製造手順を示している。
【0018】
プラズマ15を生成して被処理基板となるウエハ4に処理を行う処理室7には、ウエハ4を載置するためのステージ6が配置されている。ステージ6には、プラズマ処理中にウエハ4に高周波電圧を印加するためのインピーダンスマッチング回路13と高周波電源14が接続されている。処理室7の真空を保持するために、処理室7の上部にセラミックプレート3が備えられており、セラミックプレート3の下方に間隙8を形成するような位置に複数の貫通穴9が設けられたセラミックプレート2が備えられている。処理ガスはガス供給部として機能するガス流量制御部10で流量制御され、間隙8を介して貫通穴9から処理室7に均一に供給される。処理室7の圧力を制御するために、処理室7の下部には圧力検出部11と圧力調整部16と排気部12が備えられている。処理室7の周囲には、マイクロ波を出力するマグネトロン発振器20と、マイクロ波を処理室7まで伝搬させるための導波管21が備えられている。また、処理室7の上方と側方に磁場発生手段であるソレノイドコイル22と23が備えられている。マグネトロン発振器20から発振されたマイクロ波は導波管21内を伝搬し、セラミックプレート3およびセラミックプレート2を介して処理室7に放射される。マイクロ波によって生じる電界とソレノイドコイル22、23により発生する磁界との相互作用によってECR(Electron Cyclotron Resonance:電子サイクロトロン共鳴)を生じさせることにより、プラズマ15が生成される。
【0019】
図2は処理室7に配置された、本実施例に係るステージ6の断面の一例を拡大したものである。ステージ6は、AlあるいはTi等の金属基材30と、ブラスト処理が施された金属基材30の上面に、例えばAl
2O
3やY
2O
3等の溶射膜で形成された絶縁体層32が備えられており、例えばAl
2O
3やY
2O
3等の焼結体で形成された誘電体層34は、接着層35を介して絶縁体層32と接合されている。ウエハ4を載置する誘電体層34の表面には、化学気相成長法あるいは物理気相成長法で成膜されたY
2O
3膜40が備えられている。
【0020】
本実施例においては、化学気相成長法あるいは物理気相成長法を用いることによって、高純度のY
2O
3膜40を成膜する。このY
2O
3膜40は、誘電体層34と絶縁体層32を接着層35を介して接合する前でも形成可能であるし、接合した後でも形成可能である。金属基材30の内部には、ステージ6上に載置したウエハ4の温度を調節するための温度調整部として機能する冷媒流路51が設けられており、冷媒流路51と冷媒の温度制御機能を備えた冷媒循環装置50は配管を介して接続されている。絶縁体層32の内部にはステージ6上に載置したウエハ4を加熱するための温度調整部として機能するヒータ54が設けられており、ヒータ54の温度はヒータ出力調整器53によって制御される。ステージ6上に載置したウエハ4は、温度調整部として機能するヒータ54と冷媒の温度を制御することによって最適な温度を維持することができる。誘電体層34の内部には、ステージ6上に載置したウエハ4を保持するために、TiやW等の導電体で形成された静電吸着用の電極38が設けられており、電極38に印加する電圧は静電吸着用の直流電源55によって制御される。
【0021】
図3は処理室7に配置された、本実施例のステージ6の断面の別の一例を拡大したものである。ステージ6は、AlあるいはTi等の金属基材30と、ブラスト処理が施された金属基材30の上面に、例えばAl
2O
3やY
2O
3等の溶射膜で形成された絶縁体層32が備えられており、絶縁体層32の上面には例えばAl
2O
3やY
2O
3等の溶射膜で形成された誘電体層34が備えられている。
図2に記載のステージ6と異なる個所は、絶縁体層32と誘電体層34が接着層を介して接合していないところである。
【0022】
ウエハ4を載置する誘電体層34の表面には、化学気相成長法あるいは物理気相成長法で成膜された、本実施例に係るY
2O
3膜40が備えられている。化学気相成長法あるいは物理気相成長法を用いることによって、高純度のY
2O
3膜40を成膜することができる。Y
2O
3膜40は、絶縁体層32上面に誘電体層34を形成した後に成膜する。金属基材30の内部には、ステージ6上に載置したウエハ4の温度を調節するための冷媒流路51が設けられており、冷媒流路51と冷媒の温度制御機能を備えた冷媒循環装置50は配管を介して接続されている。絶縁体層32の内部にはステージ6上に載置したウエハ4を加熱するためのヒータ54が設けられており、ヒータ54の温度はヒータ出力調整器53によって制御される。ステージ6上に載置したウエハ4は、
図2の構成と同様、ヒータ54と冷媒の温度を制御することによって最適な温度を維持することができる。誘電体層34の内部には、ステージ6上に載置したウエハ4を保持するために、TiやW等の導電体で形成された静電吸着用の電極38が設けられており、電極38に印加する電圧は静電吸着用の直流電源55によって制御される。
なお、上述した本実施例に示したステージ6の構造は一例であり、他の異なる構造においてもウエハ4を載置する誘電体層34の表面に、化学気相成長法あるいは物理気相成長法でY
2O
3膜を成膜できることは明らかである。
【0023】
次に本実施例のY
2O
3膜40の形成方法について
図4を用いて説明する。
図4の(a)は、Y
2O
3膜を成膜する前の誘電体層34の断面の拡大図である。誘電体層34の表面は、例えば表面粗さRaが0.1μm以下の面であり、Y
2O
3膜を成膜する前に形成する。表面粗さRaを0.1μm以下にする手段としては、砥石や砥粒やバフ等を用いた研磨方法や、薬液によって表面をエッチングするような研磨方法、高温アニールによって表面を滑らかにする方法、あるいはこれらの方法を組み合わせて行う方法がある。
【0024】
図4の(b)は、化学気相成長法あるいは物理気相成長法により誘電体層34の表面全体にY
2O
3膜60を均一に成膜した状態である。化学気相成長法としては、例えば熱CVD(Chemical Vapor Deposition)方法やプラズマCVD方法等がある。物理気相成長法としては、例えばスパッタリング方法や蒸着方法がある。これらの方法を用いることにより、高純度のY
2O
3膜60を成膜することができる。
【0025】
図4の(c)は、誘電体層34の表面全体に成膜したY
2O
3膜60の上に、突起を成膜するためのマスク80を設置した状態であり、マスク80には突起を成膜するための開口部81が設けられている。開口部81の高さをh、開口径をdとした場合、開口部81のアスペクト比(h/d)は、少なくとも1以上が望ましい。マスク80として使用可能な材質としては、例えば石英等のガラス、ポリイミドフィルム等の樹脂、酸化膜やレジスト等の半導体デバイスの形成に用いられるような膜が挙げられる。一方、ステンレスやアルミ等の金属製のマスクは、Y
2O
3膜の表面に接することにより汚染の原因になる可能性が高いため使用することはできないが、金属の表面にコーティングがなされて、金属が露出しない状態のものであれば使用することができる。マスク80の開口部81は、ドリルやビームやブラスト等の穴加工方法や、薬液やプラズマを用いたエッチングによって形成することができる。例えばガラスや樹脂のマスクであれば、誘電体層34に設置する前に開口部81を設けることが可能であり、酸化膜やレジスト等のマスクの場合は、誘電体層34上のY
2O
3膜上にマスクとなる酸化膜やレジストを成膜した後に開口部81を形成することが可能である。
【0026】
図4の(d)−1、
図4の(d)−2は、
図4の(c)で成膜したY
2O
3膜60の上に、化学気相成長法あるいは物理気相成長法によりY
2O
3からなる突起61を成膜した状態である。マスク80の開口部81のアスペクト比(h/d)を1以上に調整することにより、化学気相成長法あるいは物理気相成長法におけるカバレッジ効果を出現させて、開口部81のボトムに成膜される突起61の上面に曲面62あるいは、突起61の上面の外周部にラウンド形状64を有する突起61を成膜することができる。開口部81のアスペクト比(h/d)の調整で開口部81のボトムに成膜される突起61の形状を制御することができるため、例えば突起61の径を大きくしたい場合は、開口径dを大きくするとともに、開口部81の高さhをアスペクト比(h/d)が少なくとも1以上になるように調整すれば良い。一方で、突起61の径を小さくしたい場合は、開口径dを小さくするとともに、開口部81の高さhをアスペクト比(h/d)が少なくとも1以上になるように調整すれば良い。
【0027】
また、マスク側壁83に成膜されるY
2O
3膜65と開口部81のボトムに成膜されるY
2O
3膜の突起61が接する場合あるいは、ボトムに成膜されたY
2O
3膜の突起61がマスク側壁83まで連なって成膜された場合は、マスク80を除去した際にY
2O
3膜に切断面が生じて、これが異物の原因となる可能性があるため、マスク80の開口部81のアスペクト比(h/d)は、開口部81のボトムに成膜されるY
2O
3膜の突起61の形状に加えて、ボトムに成膜されるY
2O
3膜の突起61とマスク側壁83に成膜されるY
2O
3膜65が独立して成膜されるように調整すれば良い。
【0028】
図4の(e)−1、
図4の(e)−2は、マスク80を除去した後のY
2O
3膜40の状態である。上述したように、開口部81のボトムに成膜されるY
2O
3膜の突起61は、マスク側壁83に成膜されるY
2O
3膜65と独立しているため、マスク80を除去した際にY
2O
3膜40に切断面は生じない。
【0029】
本実施例では、開口部81のアスペクト比(h/d)によりY
2O
3膜で成膜した突起61の形状や突起61の径を調整するように述べたが、例えば、成膜時の圧力やガス流量、成膜温度、高周波電力等の成膜条件を変更しても突起形状や突起径を変更することができるのは明らかである。
【0030】
マスク80上に成膜されたY
2O
3膜65の除去方法について説明する。マスク80として例えば石英を用いた場合、Y
2O
3膜65は硝酸や塩酸等のフッ酸以外の酸性薬液に溶解するが、石英は溶解しないため、これらの薬液で洗浄することにより、石英マスク80上に成膜されたY
2O
3膜65を除去することができ、かつ、石英マスクの再利用が可能となる。マスク80に酸化膜を用いた場合は、フッ酸洗浄によって酸化膜を除去できるため、酸化膜と共にY
2O
3膜65の除去も可能である。マスクにレジスト膜を用いた場合は、レジスト剥離液等の薬液やオゾン水等の機能水を用いることによってレジストを除去できるため、レジストと共にY
2O
3膜65の除去も可能である。マスク80にポリイミドフィルムを用いた場合は、ポリイミドフィルムを取り除けば、Y
2O
3膜65も同時に除去が可能である。
【実施例2】
【0031】
次にY
2O
3膜の形成方法について第2の実施例を、
図5を用いて説明する。
図4で示した実施例と異なる点は、Y
2O
3膜の突起61の成膜順序にある。
図5の(a)は、Y
2O
3膜を成膜する前の誘電体層34の断面の拡大図である。誘電体層34の表面は、例えば表面粗さRaが0.1μm以下の面であり、Y
2O
3膜を成膜する前に形成する。表面粗さRaを0.1μm以下にする手段としては、砥石や砥粒やバフ等を用いた研磨方法や、薬液によって表面をエッチングするような研磨方法、高温アニールによって表面を滑らかにする方法、あるいはこれらの方法を組み合わせて行う方法がある。
【0032】
図5の(b)は、誘電体層34の上に、突起を成膜するためのマスク80を設置した状態であり、マスク80には突起を成膜するための開口81が設けられている。開口部81の高さをh、開口径をdとした場合、開口部81のアスペクト比(h/d)は、実施例1と同様、少なくとも1以上が望ましい。マスク80として使用可能な材質等は、実施例1と同様、石英等のガラス、ポリイミドフィルム等の樹脂、酸化膜やレジスト等の半導体デバイスの形成に用いられるような膜が挙げられる。一方、ステンレスやアルミ等の金属製のマスクは、Y
2O
3膜の表面に接することにより汚染の原因になる可能性が高いため使用することはできないが、金属の表面にコーティングがなされて、金属が露出しない状態のものであれば使用することができる。マスク80の開口部81は、ドリルやビームやブラスト等の穴加工方法や、薬液やプラズマを用いたエッチングによって形成することができる。例えばガラスや樹脂のマスクであれば、誘電体層34に設置する前に開口部81を設けることが可能であり、酸化膜やレジスト等のマスクの場合は、誘電体層34に成膜した後に開口部81を形成することが可能である。
【0033】
図5の(c)−1、
図5の(c)−2は、誘電体層34の上に、化学気相成長法あるいは物理気相成長法によりY
2O
3からなる突起61を成膜した状態である。マスク80の開口部81のアスペクト比(h/d)を1以上に調整することにより、化学気相成長法あるいは物理気相成長法におけるカバレッジ効果を出現させることは、上述の実施例と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0034】
図5の(d)−1、
図5の(d)−2は、
図5の(c)−1、
図5の(c)−2においてY
2O
3からなる突起61を成膜した後に、マスク80を除去した状態である。実施例1と同様に、開口部81のボトムに成膜されるY
2O
3膜の突起61は、マスク側壁83に成膜されるY
2O
3膜65と独立しているため、マスク80を除去した際にY
2O
3膜に切断面は生じない。
【0035】
図5の(e)−1、
図5の(e)−2は、
図5の(d)−1、
図5の(d)−2においてマスク80を除去した後に突起61と誘電体層34を覆うように化学気相成長法あるいは物理気相成長法により高純度のY
2O
3膜40を成膜した状態である。
【0036】
このように、Y
2O
3膜の形成順序を変更しても、突起61の成膜は可能である。
本実施例では、開口部81のアスペクト比(h/d)によりY
2O
3膜で成膜した突起61の形状や突起61の径を調整するように述べたが、例えば、成膜時の圧力やガス流量、成膜温度、高周波電力等の成膜条件を変更しても突起形状や突起径を変更することができるのは明らかである。
【実施例3】
【0037】
次にY
2O
3膜の形成方法について第3の実施例を、
図6を用いて説明する。
図6の(a)−1、
図6の(a)−2は、Y
2O
3膜を成膜する前の誘電体層34の断面の拡大図である。ブラスト法、砥石や砥粒やバフ等を用いた研磨方法、薬液によって表面をエッチングするような研磨方法、高温アニールによって表面を滑らかにする方法、あるいはこれらの方法を組み合わせて行う方法によって、誘電体層34の表面に、曲面72を有した突起70あるいは、突起70の上面外周部にラウンド形状74を有する突起が形成された状態である。突起70の表面および突起70の下面(凹部)75は、例えば表面粗さRaが0.1μm以下の面である。
【0038】
図6の(b)−1、
図6の(b)−2は、化学気相成長法あるいは物理気相成長法により誘電体層34の表面全体にY
2O
3膜60を均一に成膜した状態である。誘電体層34の表面全体にY
2O
3膜60を成膜するためマスク80を用いなくて良い。また、Y
2O
3膜を成膜することで突起70の形成時におけるブラスト、砥石や砥粒やバフ等を用いた研磨によって生じた微小な異物を封止することが可能となる。
【0039】
このように、誘電体層34にあらかじめ突起70が形成されている場合は、Y
2O
3膜を誘電体層34の表面全体に成膜することで、突起70の表面にもY
2O
3膜を成膜することができ、
図5および
図6で示したようなY
2O
3からなる曲面72を有した突起70あるいは、突起70の上面外周部にラウンド形状74を有する突起を形成することが可能である。
【0040】
このように、以上説明した各実施例に係るプラズマ処理装置では、ステージの表面に化学気相成長法あるいは物理気相成長法で高純度のY
2O
3膜を成膜し、且つ、化学気相成長法あるいは物理気相成長法のカバレッジ効果によってステージ表面に曲面を有した突起あるいは、突起の上面外周部にラウンド形状を有する突起を形成することで、ブラスト処理や研磨処理を行わずに、プラズマによるエッチングレートが小さい高純度のY
2O
3膜を成膜できるため、プラズマ照射やブラストおよび研磨に起因する金属汚染や異物の発生を低減することが可能となり、デバイス性能や歩留まりを向上させることができる。
【0041】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。