特許第6239296号(P6239296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239296
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置のステージ製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20171120BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   H01L21/68 R
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-150548(P2013-150548)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-23168(P2015-23168A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】池永 和幸
(72)【発明者】
【氏名】小山 光
(72)【発明者】
【氏名】大橋 智宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩之
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−308075(JP,A)
【文献】 特開2001−351966(JP,A)
【文献】 特開2000−216233(JP,A)
【文献】 特開2012−113146(JP,A)
【文献】 特開2011−100844(JP,A)
【文献】 特開2009−054723(JP,A)
【文献】 特開2008−160097(JP,A)
【文献】 特開平10−233434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置の被処理体を戴置するためのステージ製造方法であって、
前記ステージ表面に、化学気相成長法あるいは物理気相成長法で、膜を形成する第1の成膜工程と、
前記Y 膜表面に、複数の貫通した開口部を有するマスクを設置する工程と、
前記マスクを設置した前記ステージ表面に、化学気相成長法あるいは物理気相成長法で、Yを成膜する第2の成膜工程と、
前記開口部の内周壁表面に形成された膜と前記開口部の底面の前記Y膜上に形成された突起とが連なる前に前記第2の成膜工程を停止した後に、前記マスクを除去する工程とを、含む
ことを特徴とするステージ製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のステージ製造方法であって、
前記開口部の高さをh、径をdとした場合のアスペクト比(h/d)を調整することにより、前記開口部内に前記化学気相成長法あるいは物理気相成長法のカバレッジ効果を出現させる
ことを特徴とするステージ製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のステージ製造方法であって、
前記アスペクト比(h/d)を1以上とする
ことを特徴とするステージ製造方法。
【請求項4】
請求項に記載のステージ製造方法であって、
前記マスクが除去された前記ステージ表面に、化学気相成長法あるいは物理気相成長法で、Y膜を形成する工程とを、含む
ことを特徴とするステージ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置、特に、半導体デバイス、フラットパネルディスプレイ用基板等の製造に用いられる処理室内に設置されるステージの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやフラットパネルディスプレイなどの製造工程では、所望のパターンを形成するために、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)やプラズマエッチング等の加工技術が用いられている。このようなプラズマ処理装置では、ウエハ等の被処理基板を処理室内に配置されたステージに設置し、例えば、Ar、O、N、CHF、CH、C、C、CF、SF、NF、HBr、Cl、BCl等の処理ガスを処理室に供給して処理ガスをプラズマ化し、ステージに高周波電圧を印加することによって被処理基板に成膜やエッチングを行う。成膜やエッチング時に生成され処理室の内壁に付着する反応生成物は、異物やCD(Critical Dimension)寸法の経時変化の原因となるため、被処理基板を処理室内から搬出した後に処理室内をクリーニングすることによって除去される。処理室内のクリーニングは、製造コスト削減のためステージ上にSiダミーウエハを設置せずに実施されている。処理室内のクリーニングが終了した後に、次の被処理基板が処理室内に搬入されて再び成膜やエッチングが行われる。
【0003】
このように、半導体デバイスやフラットパネルディスプレイなどの製造工程では、被処理基板の処理と、処理室内のクリーニングが交互に行われているが、被処理基板の加工寸法の微細化と共に、デバイス性能の劣化や歩留まりの低下の原因となるアルカリ金属や重金属の汚染量や、被処理基板上に付着する異物および、被処理基板裏面に付着する異物である裏面異物の許容値が厳しくなっており、処理室内のプラズマクリーニングによるステージ表面のわずかな消耗も抑制する必要がある。
【0004】
従来、被処理基板を設置するステージの材料として、アルミナ溶射膜やアルミナ焼結体が用いられていたが、プラズマによるステージ表面の消耗や被処理基板の接触によって生じる裏面異物を抑制するため、プラズマによるエッチングレートがアルミナ(Al)よりも小さいイットリア(Y)を用いた材料やステージ表面に突起を設ける方法が提案されている。例えば、特許文献1に記載のように、エアロゾルデポジション法を用いてステージ表面にイットリアを含有した突起物を形成する方法がある。また、特許文献2に記載のように、化学的気相成長法を用いてステージ表面に設けた被処理基板の支持用突起に炭化珪素を主成分とする保護膜を形成する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−160093号公報
【特許文献2】特開2009−54723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラズマ処理装置における被処理基板の加工工程において、許容できるアルカリ金属や重金属の汚染量として、例えば1×10E8(atoms/cm)が要求されている。被処理基板上に付着する異物サイズの許容値は配線幅の1/2であり、例えば配線幅が30nmである場合、許容できる異物サイズは15nmとなる。また、被処理基板の裏面に関しても、80nmといったナノレベルの異物サイズが管理値として要求されている。このように、被処理基板の加工寸法の微細化と共に汚染量、異物サイズともに管理値が厳しくなっている。
【0007】
特許文献1に記載の技術では、被処理基板と接触する誘電体基板の表面に、エアロゾルデポジション法によりイットリア膜を成膜した後に、ブラスト法を用いて被処理基板を支持する突起部を形成している。さらにイットリア膜(凹部)および突起部をバフ研磨することで突起部の頂部に凸状の曲面を形成しつつ、突起部の頂部の表面粗さRaよりも、凹部の表面粗さRaが粗くなるようにしている。
【0008】
しかしながら、エアロゾルデポジション法によって成膜したイットリア膜は不純物濃度が高いため、プラズマによるエッチングレートが小さいイットリア膜であっても汚染の原因となる可能性がある。すなわち、今後ますます厳しくなる金属汚染量や異物サイズに対しては十分な配慮がなされていない。また、突起部や突起部の頂部の曲面を構成するために、ブラストやバフ研磨を用いているが、ブラストおよび研磨に起因する異物が誘電体基板の表面(凹部)に付着する。発明者の知見によれば、凹部の表面粗さRaが粗いと、例えば超音波洗浄等の洗浄方法を用いても表面に付着した異物の除去は困難である。一方、誘電体基板の表面(凹部)の表面粗さがRa0.1μm以下と滑らかな表面状態であっても、例えば粒径が80nm以下の微小な異物は洗浄によって除去されにくい。洗浄によっても除去できない異物はステージ表面に残留することになり、被処理基板の裏面異物増加や処理室内の汚染の原因となる可能性がある。つまり、ブラストおよび研磨は微小な異物を生じさせる原因となるため、突起部や突起部の頂部の曲面を形成する手段として好ましくない。
【0009】
一方、特許文献2に記載の従来技術では、被処理基板を支持する突起部を被処理基板と接触する誘電体基板の表面に設けて、突起部の上面中央部に小凸部を構成するように炭化珪素を主成分とする保護層を形成している。また、誘電体基板自体に突起部と突起部の上面中央部に小凸部を施した場合あるいは、突起部と小凸部が連続的に形成されて突起部下部が円錐状に広がる形状を施した後に炭化珪素を主成分とする保護層を成膜する方法が開示されている。
【0010】
しかしながら、炭化珪素を主成分とする保護膜は、プラズマによるエッチングレートが大きくプラズマクリーニング中に保護膜が消耗するため、汚染や異物の原因となる可能性がある。また、保護膜の消耗によって被処理基板の接触面積が変化するため、エッチング性能の経時変化を引き起こす原因となる可能性がある。また、保護膜の消耗が進むと誘電体基板が露出するため、汚染や異物が更に悪化する可能性もある。保護層を成膜した後に、ブラストや研磨によって小凸部を形成する方法では、突起部の上面中央部に小凸部を形成するためのマスクの位置合わせに精度が必要であるため、製造工程が複雑になりコストが増加する。また、ブラストおよび研磨に起因する異物が保護層の表面(凹部)に付着し、これが被処理基板の裏面異物増加や処理室内の汚染の原因となる可能性があるため、突起部や突起部の頂部の曲面を形成する手段として好ましくない。
【0011】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、ステージ表面の金属汚染および異物の発生を抑制することが可能なプラズマ処理装置、及びステージ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明においては、プラズマ処理装置の被処理体を戴置するためのステージ製造方法であって、ステージ表面に、化学気相成長法あるいは物理気相成長法で、Y膜を形成する第1の成膜工程と、Y 膜表面に、複数の貫通した開口部を有するマスクを設置する工程と、マスクを設置したステージ表面に、化学気相成長法あるいは物理気相成長法で、Yを成膜する第2の成膜工程と、開口部の内周壁表面に形成された膜と開口部の底面のY膜上に形成された突起とが連なる前に第2の成膜工程を停止した後に、マスクを除去する工程とを、含むことを特徴とするステージ製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、被処理体が設置されるステージの表面に化学気相成長法あるいは物理気相成長法でY膜を形成することにより、化学気相成長法あるいは物理気相成長法のカバレッジ効果によってステージ表面に曲面を有した突起あるいは、突起の上面外周部にラウンド形状を有する突起を形成することができ、ブラスト処理や研磨処理を行わずに、プラズマによるエッチングレートが小さい高純度のY膜を成膜できるため、金属汚染や異物の発生を低減することが可能となり、デバイス性能や歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施例に係るプラズマ処理装置の概要構成を示す図である。
図2】第1の実施例を適用するステージ構造の一例を示す図である。
図3】第1の実施例を適用する別のステージ構造の一例を示す図である。
図4】第1の実施例に係るステージの製造工程を示す図である。
図5】第2の実施例に係るステージの製造工程を示す図である。
図6】第3の実施例に係るステージの製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各種の実施の形態を図面に従い説明する。本発明は、半導体デバイスの製造や検査の分野に限定されるものではなく、フラットパネルディスプレイの製造工程などを含め、プラズマを用いるプラズマ処理装置の様々な形態に適用可能であるが、ここでは、半導体デバイス製造用のプラズマエッチング装置を例にとって実施例を説明ことにする。
【実施例1】
【0017】
図1は、マイクロ波ECRプラズマエッチング装置に適用した第1の実施例の装置の全体構成の一例を示している。図2および図3は、第1の実施例のプラズマ処理装置に適用した要部の概要を示している。図4は本実施例のステージの製造手順を示している。
【0018】
プラズマ15を生成して被処理基板となるウエハ4に処理を行う処理室7には、ウエハ4を載置するためのステージ6が配置されている。ステージ6には、プラズマ処理中にウエハ4に高周波電圧を印加するためのインピーダンスマッチング回路13と高周波電源14が接続されている。処理室7の真空を保持するために、処理室7の上部にセラミックプレート3が備えられており、セラミックプレート3の下方に間隙8を形成するような位置に複数の貫通穴9が設けられたセラミックプレート2が備えられている。処理ガスはガス供給部として機能するガス流量制御部10で流量制御され、間隙8を介して貫通穴9から処理室7に均一に供給される。処理室7の圧力を制御するために、処理室7の下部には圧力検出部11と圧力調整部16と排気部12が備えられている。処理室7の周囲には、マイクロ波を出力するマグネトロン発振器20と、マイクロ波を処理室7まで伝搬させるための導波管21が備えられている。また、処理室7の上方と側方に磁場発生手段であるソレノイドコイル22と23が備えられている。マグネトロン発振器20から発振されたマイクロ波は導波管21内を伝搬し、セラミックプレート3およびセラミックプレート2を介して処理室7に放射される。マイクロ波によって生じる電界とソレノイドコイル22、23により発生する磁界との相互作用によってECR(Electron Cyclotron Resonance:電子サイクロトロン共鳴)を生じさせることにより、プラズマ15が生成される。
【0019】
図2は処理室7に配置された、本実施例に係るステージ6の断面の一例を拡大したものである。ステージ6は、AlあるいはTi等の金属基材30と、ブラスト処理が施された金属基材30の上面に、例えばAlやY等の溶射膜で形成された絶縁体層32が備えられており、例えばAlやY等の焼結体で形成された誘電体層34は、接着層35を介して絶縁体層32と接合されている。ウエハ4を載置する誘電体層34の表面には、化学気相成長法あるいは物理気相成長法で成膜されたY膜40が備えられている。
【0020】
本実施例においては、化学気相成長法あるいは物理気相成長法を用いることによって、高純度のY膜40を成膜する。このY膜40は、誘電体層34と絶縁体層32を接着層35を介して接合する前でも形成可能であるし、接合した後でも形成可能である。金属基材30の内部には、ステージ6上に載置したウエハ4の温度を調節するための温度調整部として機能する冷媒流路51が設けられており、冷媒流路51と冷媒の温度制御機能を備えた冷媒循環装置50は配管を介して接続されている。絶縁体層32の内部にはステージ6上に載置したウエハ4を加熱するための温度調整部として機能するヒータ54が設けられており、ヒータ54の温度はヒータ出力調整器53によって制御される。ステージ6上に載置したウエハ4は、温度調整部として機能するヒータ54と冷媒の温度を制御することによって最適な温度を維持することができる。誘電体層34の内部には、ステージ6上に載置したウエハ4を保持するために、TiやW等の導電体で形成された静電吸着用の電極38が設けられており、電極38に印加する電圧は静電吸着用の直流電源55によって制御される。
【0021】
図3は処理室7に配置された、本実施例のステージ6の断面の別の一例を拡大したものである。ステージ6は、AlあるいはTi等の金属基材30と、ブラスト処理が施された金属基材30の上面に、例えばAlやY等の溶射膜で形成された絶縁体層32が備えられており、絶縁体層32の上面には例えばAlやY等の溶射膜で形成された誘電体層34が備えられている。図2に記載のステージ6と異なる個所は、絶縁体層32と誘電体層34が接着層を介して接合していないところである。
【0022】
ウエハ4を載置する誘電体層34の表面には、化学気相成長法あるいは物理気相成長法で成膜された、本実施例に係るY膜40が備えられている。化学気相成長法あるいは物理気相成長法を用いることによって、高純度のY膜40を成膜することができる。Y膜40は、絶縁体層32上面に誘電体層34を形成した後に成膜する。金属基材30の内部には、ステージ6上に載置したウエハ4の温度を調節するための冷媒流路51が設けられており、冷媒流路51と冷媒の温度制御機能を備えた冷媒循環装置50は配管を介して接続されている。絶縁体層32の内部にはステージ6上に載置したウエハ4を加熱するためのヒータ54が設けられており、ヒータ54の温度はヒータ出力調整器53によって制御される。ステージ6上に載置したウエハ4は、図2の構成と同様、ヒータ54と冷媒の温度を制御することによって最適な温度を維持することができる。誘電体層34の内部には、ステージ6上に載置したウエハ4を保持するために、TiやW等の導電体で形成された静電吸着用の電極38が設けられており、電極38に印加する電圧は静電吸着用の直流電源55によって制御される。
なお、上述した本実施例に示したステージ6の構造は一例であり、他の異なる構造においてもウエハ4を載置する誘電体層34の表面に、化学気相成長法あるいは物理気相成長法でY膜を成膜できることは明らかである。
【0023】
次に本実施例のY膜40の形成方法について図4を用いて説明する。
図4の(a)は、Y膜を成膜する前の誘電体層34の断面の拡大図である。誘電体層34の表面は、例えば表面粗さRaが0.1μm以下の面であり、Y膜を成膜する前に形成する。表面粗さRaを0.1μm以下にする手段としては、砥石や砥粒やバフ等を用いた研磨方法や、薬液によって表面をエッチングするような研磨方法、高温アニールによって表面を滑らかにする方法、あるいはこれらの方法を組み合わせて行う方法がある。
【0024】
図4の(b)は、化学気相成長法あるいは物理気相成長法により誘電体層34の表面全体にY膜60を均一に成膜した状態である。化学気相成長法としては、例えば熱CVD(Chemical Vapor Deposition)方法やプラズマCVD方法等がある。物理気相成長法としては、例えばスパッタリング方法や蒸着方法がある。これらの方法を用いることにより、高純度のY膜60を成膜することができる。
【0025】
図4の(c)は、誘電体層34の表面全体に成膜したY膜60の上に、突起を成膜するためのマスク80を設置した状態であり、マスク80には突起を成膜するための開口部81が設けられている。開口部81の高さをh、開口径をdとした場合、開口部81のアスペクト比(h/d)は、少なくとも1以上が望ましい。マスク80として使用可能な材質としては、例えば石英等のガラス、ポリイミドフィルム等の樹脂、酸化膜やレジスト等の半導体デバイスの形成に用いられるような膜が挙げられる。一方、ステンレスやアルミ等の金属製のマスクは、Y膜の表面に接することにより汚染の原因になる可能性が高いため使用することはできないが、金属の表面にコーティングがなされて、金属が露出しない状態のものであれば使用することができる。マスク80の開口部81は、ドリルやビームやブラスト等の穴加工方法や、薬液やプラズマを用いたエッチングによって形成することができる。例えばガラスや樹脂のマスクであれば、誘電体層34に設置する前に開口部81を設けることが可能であり、酸化膜やレジスト等のマスクの場合は、誘電体層34上のY膜上にマスクとなる酸化膜やレジストを成膜した後に開口部81を形成することが可能である。
【0026】
図4の(d)−1、図4の(d)−2は、図4の(c)で成膜したY膜60の上に、化学気相成長法あるいは物理気相成長法によりYからなる突起61を成膜した状態である。マスク80の開口部81のアスペクト比(h/d)を1以上に調整することにより、化学気相成長法あるいは物理気相成長法におけるカバレッジ効果を出現させて、開口部81のボトムに成膜される突起61の上面に曲面62あるいは、突起61の上面の外周部にラウンド形状64を有する突起61を成膜することができる。開口部81のアスペクト比(h/d)の調整で開口部81のボトムに成膜される突起61の形状を制御することができるため、例えば突起61の径を大きくしたい場合は、開口径dを大きくするとともに、開口部81の高さhをアスペクト比(h/d)が少なくとも1以上になるように調整すれば良い。一方で、突起61の径を小さくしたい場合は、開口径dを小さくするとともに、開口部81の高さhをアスペクト比(h/d)が少なくとも1以上になるように調整すれば良い。
【0027】
また、マスク側壁83に成膜されるY膜65と開口部81のボトムに成膜されるY膜の突起61が接する場合あるいは、ボトムに成膜されたY膜の突起61がマスク側壁83まで連なって成膜された場合は、マスク80を除去した際にY膜に切断面が生じて、これが異物の原因となる可能性があるため、マスク80の開口部81のアスペクト比(h/d)は、開口部81のボトムに成膜されるY膜の突起61の形状に加えて、ボトムに成膜されるY膜の突起61とマスク側壁83に成膜されるY膜65が独立して成膜されるように調整すれば良い。
【0028】
図4の(e)−1、図4の(e)−2は、マスク80を除去した後のY膜40の状態である。上述したように、開口部81のボトムに成膜されるY膜の突起61は、マスク側壁83に成膜されるY膜65と独立しているため、マスク80を除去した際にY膜40に切断面は生じない。
【0029】
本実施例では、開口部81のアスペクト比(h/d)によりY膜で成膜した突起61の形状や突起61の径を調整するように述べたが、例えば、成膜時の圧力やガス流量、成膜温度、高周波電力等の成膜条件を変更しても突起形状や突起径を変更することができるのは明らかである。
【0030】
マスク80上に成膜されたY膜65の除去方法について説明する。マスク80として例えば石英を用いた場合、Y膜65は硝酸や塩酸等のフッ酸以外の酸性薬液に溶解するが、石英は溶解しないため、これらの薬液で洗浄することにより、石英マスク80上に成膜されたY膜65を除去することができ、かつ、石英マスクの再利用が可能となる。マスク80に酸化膜を用いた場合は、フッ酸洗浄によって酸化膜を除去できるため、酸化膜と共にY膜65の除去も可能である。マスクにレジスト膜を用いた場合は、レジスト剥離液等の薬液やオゾン水等の機能水を用いることによってレジストを除去できるため、レジストと共にY膜65の除去も可能である。マスク80にポリイミドフィルムを用いた場合は、ポリイミドフィルムを取り除けば、Y膜65も同時に除去が可能である。
【実施例2】
【0031】
次にY膜の形成方法について第2の実施例を、図5を用いて説明する。図4で示した実施例と異なる点は、Y膜の突起61の成膜順序にある。
図5の(a)は、Y膜を成膜する前の誘電体層34の断面の拡大図である。誘電体層34の表面は、例えば表面粗さRaが0.1μm以下の面であり、Y膜を成膜する前に形成する。表面粗さRaを0.1μm以下にする手段としては、砥石や砥粒やバフ等を用いた研磨方法や、薬液によって表面をエッチングするような研磨方法、高温アニールによって表面を滑らかにする方法、あるいはこれらの方法を組み合わせて行う方法がある。
【0032】
図5の(b)は、誘電体層34の上に、突起を成膜するためのマスク80を設置した状態であり、マスク80には突起を成膜するための開口81が設けられている。開口部81の高さをh、開口径をdとした場合、開口部81のアスペクト比(h/d)は、実施例1と同様、少なくとも1以上が望ましい。マスク80として使用可能な材質等は、実施例1と同様、石英等のガラス、ポリイミドフィルム等の樹脂、酸化膜やレジスト等の半導体デバイスの形成に用いられるような膜が挙げられる。一方、ステンレスやアルミ等の金属製のマスクは、Y膜の表面に接することにより汚染の原因になる可能性が高いため使用することはできないが、金属の表面にコーティングがなされて、金属が露出しない状態のものであれば使用することができる。マスク80の開口部81は、ドリルやビームやブラスト等の穴加工方法や、薬液やプラズマを用いたエッチングによって形成することができる。例えばガラスや樹脂のマスクであれば、誘電体層34に設置する前に開口部81を設けることが可能であり、酸化膜やレジスト等のマスクの場合は、誘電体層34に成膜した後に開口部81を形成することが可能である。
【0033】
図5の(c)−1、図5の(c)−2は、誘電体層34の上に、化学気相成長法あるいは物理気相成長法によりYからなる突起61を成膜した状態である。マスク80の開口部81のアスペクト比(h/d)を1以上に調整することにより、化学気相成長法あるいは物理気相成長法におけるカバレッジ効果を出現させることは、上述の実施例と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0034】
図5の(d)−1、図5の(d)−2は、図5の(c)−1、図5の(c)−2においてYからなる突起61を成膜した後に、マスク80を除去した状態である。実施例1と同様に、開口部81のボトムに成膜されるY膜の突起61は、マスク側壁83に成膜されるY膜65と独立しているため、マスク80を除去した際にY膜に切断面は生じない。
【0035】
図5の(e)−1、図5の(e)−2は、図5の(d)−1、図5の(d)−2においてマスク80を除去した後に突起61と誘電体層34を覆うように化学気相成長法あるいは物理気相成長法により高純度のY膜40を成膜した状態である。
【0036】
このように、Y膜の形成順序を変更しても、突起61の成膜は可能である。
本実施例では、開口部81のアスペクト比(h/d)によりY膜で成膜した突起61の形状や突起61の径を調整するように述べたが、例えば、成膜時の圧力やガス流量、成膜温度、高周波電力等の成膜条件を変更しても突起形状や突起径を変更することができるのは明らかである。
【実施例3】
【0037】
次にY膜の形成方法について第3の実施例を、 図6を用いて説明する。
図6の(a)−1、図6の(a)−2は、Y膜を成膜する前の誘電体層34の断面の拡大図である。ブラスト法、砥石や砥粒やバフ等を用いた研磨方法、薬液によって表面をエッチングするような研磨方法、高温アニールによって表面を滑らかにする方法、あるいはこれらの方法を組み合わせて行う方法によって、誘電体層34の表面に、曲面72を有した突起70あるいは、突起70の上面外周部にラウンド形状74を有する突起が形成された状態である。突起70の表面および突起70の下面(凹部)75は、例えば表面粗さRaが0.1μm以下の面である。
【0038】
図6の(b)−1、図6の(b)−2は、化学気相成長法あるいは物理気相成長法により誘電体層34の表面全体にY膜60を均一に成膜した状態である。誘電体層34の表面全体にY膜60を成膜するためマスク80を用いなくて良い。また、Y膜を成膜することで突起70の形成時におけるブラスト、砥石や砥粒やバフ等を用いた研磨によって生じた微小な異物を封止することが可能となる。
【0039】
このように、誘電体層34にあらかじめ突起70が形成されている場合は、Y膜を誘電体層34の表面全体に成膜することで、突起70の表面にもY膜を成膜することができ、図5および図6で示したようなYからなる曲面72を有した突起70あるいは、突起70の上面外周部にラウンド形状74を有する突起を形成することが可能である。
【0040】
このように、以上説明した各実施例に係るプラズマ処理装置では、ステージの表面に化学気相成長法あるいは物理気相成長法で高純度のY膜を成膜し、且つ、化学気相成長法あるいは物理気相成長法のカバレッジ効果によってステージ表面に曲面を有した突起あるいは、突起の上面外周部にラウンド形状を有する突起を形成することで、ブラスト処理や研磨処理を行わずに、プラズマによるエッチングレートが小さい高純度のY膜を成膜できるため、プラズマ照射やブラストおよび研磨に起因する金属汚染や異物の発生を低減することが可能となり、デバイス性能や歩留まりを向上させることができる。
【0041】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
2、3 セラミックプレート
4 ウエハ
6 ステージ
7 処理室
8 間隙
9 貫通穴
10 ガス流量制御部
11 圧力検出部
12 排気部
13 インピーダンスマッチング回路
14:高周波電源
15:プラズマ
16:圧力制御部
20:マグネトロン発振器
21:導波管
22、23 ソレノイドコイル
30 金属基材
32 絶縁体層
34 誘電体層
35 接着層
40、60、65 Y
61 突起
64 ラウンド部
80 マスク
81 マスク開口部
83 マスク側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6