特許第6239359号(P6239359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239359液相エピタキシャル成長装置及び液相エピタキシャル成長方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239359
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】液相エピタキシャル成長装置及び液相エピタキシャル成長方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20171120BHJP
   H01L 21/208 20060101ALI20171120BHJP
   C30B 19/04 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C30B29/38 D
   H01L21/208 D
   C30B19/04
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-249928(P2013-249928)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-105228(P2015-105228A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敦史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寿弘
(72)【発明者】
【氏名】赤松 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】谷 典明
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 一也
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−194146(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/103341(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/38
C30B 19/04
H01L 21/208
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属とガリウムとを少なくとも含有する融液を収容する坩堝が内部に配置されるチャンバと、
坩堝を加熱する加熱手段と、
チャンバ内に窒素原子含有ガスを導入するガス導入手段と、
ガス導入手段により導入された窒素原子含有ガスの電離を促進する放電手段とを備え、
前記放電手段は、チャンバの外面に立設され、当該チャンバに開設した透孔を通してチャンバ内に連通する絶縁製の筒状部材と、筒状部材を挿通してチャンバ内まで突出する電極とを備え、
窒素原子含有ガスの電離により生成した窒素イオン及び窒素ラジカルの少なくとも一方を融液に供給することを特徴とする液相エピタキシャル成長装置。
【請求項2】
アルカリ金属とガリウムとを少なくとも含有する融液を収容する坩堝が内部に配置されるチャンバと、
坩堝を加熱する加熱手段と、
チャンバ内に窒素原子含有ガスを導入するガス導入手段と、
ガス導入手段により導入された窒素原子含有ガスの電離を促進する放電手段とを備え、
前記放電手段は、前記チャンバに開設した透孔を通して当該チャンバ内に突出する針状の第1電極と、坩堝に対向配置される板状の第2電極とを備え、
窒素原子含有ガスの電離により生成した窒素イオン及び窒素ラジカルの少なくとも一方を融液に供給することを特徴とする液相エピタキシャル成長装置。
【請求項3】
ャンバ内に突出する電極の部分に、筒状部材の外径より大きい径のバッフル板が外挿され、バッフル板と、当該バッフル板が対面するチャンバ内面との間に所定の隙間を設けることを特徴とする請求項1記載の液相エピタキシャル成長装置。
【請求項4】
第2電極の第1電極側の面を防着板で覆うことを特徴とする請求項2記載の液相エピタキシャル成長装置。
【請求項5】
前記加熱手段により坩堝を加熱することで蒸発したアルカリ金属を捕捉し、液化して坩堝内に戻すトラップ手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の液相エピタキシャル成長装置。
【請求項6】
チャンバ内に配置された坩堝内にアルカリ金属とガリウムとを少なくとも収容し、坩堝を加熱することにより融液を生成し、この融液にIII族窒化物からなる種結晶が形成された基材を浸漬すると共にチャンバ内に窒素原子含有ガスを導入して種結晶を結晶成長させる液相エピタキシャル成長方法において、
チャンバ内に導入した窒素原子含有ガスを誘電体バリア放電又はコロナ放電により電離して窒素イオン及び窒素ラジカルの少なくとも一方を生成しつつ、これらの窒素イオンや窒素ラジカルを融液内に供給されるようにしたことを特徴とする液相エピタキシャル成長方法。
【請求項7】
前記窒素原子含有ガスの圧力を、種結晶の結晶成長に必要な量のアルカリ金属が融液に含まれるように設定することを特徴とする請求項記載の液相エピタキシャル成長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相エピタキシャル装置及び液相エピタキシャル成長方法に関し、詳細には、III属窒化物半導体を結晶成長させるために好適に用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物半導体は、青色LEDの材料として用いられている。III属窒化物半導体の製造方法の1つとして、液相エピタキシャル成長法(NaフラックスLPE法)が例えば、非特許文献1で知られている。このものでは、坩堝にアルカリ金属とガリウムとを少なくとも収容し、坩堝を加熱することにより融液を生成し、この融液にIII族窒化物からなる種結晶が形成された基材を浸漬すると共にチャンバ内に窒素原子含有ガスを導入して種結晶を結晶成長させている。
【0003】
ここで、種結晶を結晶成長させるには、窒素を融液に効率よく供給する必要があり、上記従来例では、高圧(例えば、35気圧)の窒素含有ガスを処理チャンバ内に導入している。この場合、処理チャンバ内の圧力が大気圧よりも高くなるため、耐圧性を考慮してチャンバ壁の厚さを厚くする必要があり、これでは、種結晶を結晶成長させる液相エピタキシャル成長装置のコスト高を招来する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Japan Journal of Applied Physics, Vol.45, No.4A, 2006, pp. 2528-2530
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、融液に効率よく窒素を供給できる低コストの液相エピタキシャル成長装置及び液相エピタキシャル成長方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の液相エピタキシャル成長装置は、アルカリ金属とガリウムとを少なくとも含有する融液を収容する坩堝が内部に配置されるチャンバと、坩堝を加熱する加熱手段と、チャンバ内に窒素原子含有ガスを導入するガス導入手段と、ガス導入手段により導入された窒素原子含有ガスの電離を促進する放電手段とを備え、窒素原子含有ガスの電離により生成した窒素イオン及び窒素ラジカルの少なくとも一方を融液に供給することを特徴とする。尚、本発明において、融液から蒸発したアルカリ金属が窒化アルカリ金属のイオンやラジカルとなり、これらのイオンやラジカルの少なくとも一方が融液に供給される場合も含むこととする。
【0007】
本発明によれば、放電手段を備えて、ガス導入手段から導入された窒素原子含有ガスを電離させて窒素イオンや窒素ラジカルを生成しつつ、これら窒素イオンや窒素ラジカルを融液内に供給されるようにしたため、上記従来例のような大気圧より高圧の窒素原子含有ガスを用いることなしに、例えば大気圧の窒素原子含有ガスを用いて種結晶を効果的に結晶成長させることができる。その結果、耐圧性を持つようにチャンバ壁を厚くする必要はなく、液相エピタキシャル成長装置の低コスト化を図ることができる。
【0008】
本発明において、前記加熱手段により坩堝を加熱することで蒸発したアルカリ金属を捕捉し、液化して坩堝内に戻すトラップ手段を更に備えることが好ましい。これによれば、結晶成長中の融液の組成変化を抑えることができる。
【0009】
本発明において、前記放電手段としては、チャンバの外面に立設され、当該チャンバに開設した透孔を通してチャンバ内に連通する絶縁製の筒状部材と、筒状部材を挿通してチャンバ内まで突出する電極とを備えるものを用いることができる。この場合、チャンバ内に突出する電極の部分に、筒状部材の外径より大きい径のバッフル板が外挿され、バッフル板と、当該バッフル板が対面するチャンバ内面との間に所定の隙間を設けるようにすれば、蒸発したアルカリ金属が電極に付着することを抑制できてよい。
【0010】
本発明において、前記放電手段としては、チャンバに開設した透孔を通して当該チャンバ内に突出する針状の第1電極と、坩堝に対向配置される板状の第2電極とを備えるものを用いることができる。この場合、第2電極の坩堝側の面を防着板で覆うようにすれば、蒸発したアルカリ金属が第2電極に付着することを抑制できてよい。
【0011】
チャンバ内に配置された坩堝内にアルカリ金属とガリウムとを少なくとも収容し、坩堝を加熱することにより融液を生成し、この融液にIII族窒化物からなる種結晶が形成された基材を浸漬すると共にチャンバ内に窒素原子含有ガスを導入して種結晶を結晶成長させる本発明の液相エピタキシャル成長方法は、チャンバ内に導入した窒素原子含有ガスを放電により電離して窒素イオン及び窒素ラジカルの少なくとも一方を生成し、これらの窒素イオンや窒素ラジカルが融液内に供給されるようにしたことを特徴とする。
【0012】
これによれば、上述の如く電離により生成した窒素イオンや窒素ラジカルを融液内に供給するようにしたため、上記従来例のような大気圧より高圧の窒素原子含有ガスを用いることなしに、例えば大気圧の窒素原子含有ガスを用いて種結晶を効果的に結晶成長させることができる。
【0013】
本発明において、前記窒素原子含有ガスの圧力を、種結晶の結晶成長に必要な量のアルカリ金属が融液に含まれるように設定することが好ましい。この場合、窒素原子含有ガスを従来例の如く大気圧よりも高圧に加圧する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態の液相エピタキシャル成長装置の概略断面図。
図2】本発明の第二実施形態の液相エピタキシャル成長装置の概略断面図。
図3】本発明の実験結果を示す図。
図4】本発明の実験結果を示すSEM写真。
図5】本発明の実験結果を示すSEM写真。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照して、EM1は、本発明の第1実施形態の液相エピタキシャル成長装置であり、液相エピタキシャル成長装置EM1は、金属製(例えばSUS製)のチャンバ1と、チャンバ1内に配置される坩堝2と、坩堝2を加熱する加熱手段3たるヒータと、チャンバ1内に窒素原子含有ガスを導入するガス導入手段4と、ガス導入手段4により導入された窒素原子含有ガスの電離を促進する放電手段5と、融液Lを撹拌する撹拌手段6とを備える。
【0016】
坩堝2は、ヒータ3により例えば600〜900℃に加熱されるため、耐熱性を有する材料(例えば、アルミナ)で作製されている。坩堝2には、アルカリ金属とガリウムとを少なくとも含有する融液Lを収容する。アルカリ金属としては、Naが好適に用いられる。融液Lに、アルカリ土類金属(例えば、Ca)が更に添加されていてもよい。融液Lには、組成式AlGaIn1−x−yN(式中、0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表されるIII属窒化物からなる種結晶が形成された基材SBが浸漬される。ヒータ3としては、公知の構造を有するものを用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、撹拌手段6としては、例えば、融液Lに浸漬されるプロペラ62を回転軸61により回転させるものを用いることができる。
【0017】
本発明の液相エピタキシャル成長装置EM1は、放電手段5を備える点に特徴を有する。放電手段5としては、例えば、誘電体バリア放電手段を用いることができる。誘電体バリア放電手段5は、チャンバ1の外面11に立設され、チャンバ1に開設した透孔11aを通してチャンバ1内に連通する絶縁製の筒状部材51と、筒状部材51を挿通してチャンバ内まで突出する電極52とを備える。電極52は、筒状部材51の開口を閉塞する基端部52aと、この基端部52aから上下にのびる柱状部52bとで構成される。筒状部材51の下端には径方向外側に延出するフランジ51aが一体的に形成され、このフランジ51aがチャンバ1にビス止めされている。筒状部材51の外側には電極53が設けられ、この電極53と柱状部52bとの間の電位差が例えば600Vとなるように電源E1から交流電力が投入される。誘電体バリア放電手段5としては、公知の構造のものを用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。筒状部材51の側壁には、上記ガス導入手段4たるガス供給管が接続されている。ガス供給管4の他端はガス源に連通する。ガス導入手段4により導入される窒素原子含有ガスとしては、窒素ガス、アンモニアガス等を用いることができる。
【0018】
また、液相エピタキシャル成長装置EM1は、窒素原子含有ガスをチャンバ1から排気する排気手段7たる排気管を更に備え、排気手段7には、坩堝2を加熱することで蒸発したアルカリ金属を捕捉し、液化して坩堝2内に戻すトラップ手段8を備える。トラップ手段8としては、公知の構造のものを用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0019】
チャンバ1内に突出する電極52の部分(柱状部52b)には、筒状部材51の外径よりも大きい径のバッフル板9が上下に間隔を存して2枚外挿され、上側のバッフル板9と、当該バッフル板9が対面するチャンバ内面との間に所定の隙間を設けることで、蒸発したアルカリ金属が電極52に付着することを抑制するようにしている。尚、バッフル板9の枚数は2枚必要ではなく、少なくとも1枚あればよい。以下、上記液相エピタキシャル成長装置EM1を用いた液相エピタキシャル成長方法について、GaNを結晶成長させる場合を例に説明する。尚、基材SBとしては、サファイア基板に公知のMOCVD法等により種結晶たるGaNを形成したものを用いることができる。
【0020】
先ず、チャンバ1内に配置された坩堝2内にナトリウムとガリウムとを少なくとも収容し、ヒータ3により坩堝2を600℃〜900℃に加熱して融液Lを生成する。この融液Lに基材SBを浸漬させ、融液Lを撹拌手段6により撹拌すると共に、ガス導入手段4によりチャンバ1内に窒素ガスを導入する。これと共に、電源E1から交流電力を投入し、上記導入される窒素ガスの電離を促進して窒素イオン及び窒素ラジカルの少なくとも一方を生成しつつ、これらの窒素イオンや窒素ラジカルを融液L内に供給する。ここで、チャンバ1内に導入される窒素ガスの圧力は、種結晶の結晶成長に必要な量のナトリウムが融液Lに含まれるように設定することが好ましく、例えば、大気圧に設定することができる。本発明において、「大気圧」とは厳密な1気圧を言うものではなく、耐圧性を持たせるためにチャンバ壁を厚くする必要がないような圧力範囲を言うものとする。これら窒素イオンや窒素ラジカルが融液L内に供給されると、基材SBの種結晶が効果的に結晶成長してバルクのGaNが得られる。尚、融液Lから蒸発したナトリウムが窒化ナトリウムのイオンやラジカルとなり、これらのイオンやラジカルが融液L内に供給されても、基材SBの種結晶が結晶成長する。結晶成長中、チャンバ1への窒素ガスの導入は連続して行われ、チャンバ1から排気管7を介して排気される。このとき、排気管7に介設されたトラップ手段8により、蒸発したナトリウム蒸気を捕捉し、液化して坩堝2内に戻すようにしたため、融液Lの組成変化を抑制でき、より一層効果的に結晶成長させることができる。所定時間結晶成長させた後、窒素ガスの導入、電力投入、ヒータ3による加熱を停止し、融液Lから基材SBを取り出す。成長時間は、所望するバルクGaNの厚みと予め求めた結晶成長速度とを考慮して適宜設定することができる。
【0021】
以上説明したように、本実施形態によれば、放電手段5を備えて、ガス導入手段4から導入された窒素原子含有ガスを電離し、電離により生成した窒素イオンや窒素ラジカルが融液L内に供給されるようにしたため、上記従来例の如く大気圧より高圧の窒素含有ガスを用いることなしに、例えば、大気圧の窒素原子含有ガスを用いて種結晶を効果的に結晶成長させることができる。その結果、耐圧性を持つようにチャンバ壁を厚くする必要はなく、液相エピタキシャル成長装置EM1の低コスト化を図ることができる。
【0022】
また、坩堝2を加熱することで蒸発したナトリウムをトラップ手段8によって捕捉し、液化して坩堝2内に戻すようにしたため、結晶成長中の融液Lの組成変化を抑えることができ、より一層効率よく結晶成長させることができる。
【0023】
次に、本発明の第2実施形態の液相エピタキシャル成長装置EM2について説明する。液相エピタキシャル成長装置EM2は、放電手段50としてコロナ放電手段を用いる点で上記第1実施形態と相違する。放電手段50は、チャンバ1に開設された透孔11aを通して、フランジ55a付の絶縁部材55を介して挿通される針状の第1電極(負極)54と、第1電極54の先端54aから離間させて坩堝2に対向配置される板状の第2電極(正極)56と、これら2つの電極54,56間の電位差が例えば30kVとなるように直流電力を投入する電源E2とを備える。コロナ放電手段50としては、公知の構造のものを用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。第2電極56の坩堝側の面は防着板10で覆われており、蒸発したアルカリ金属が第2電極56に付着することを抑制できるようになっている。
【0024】
尚、本実施形態では、ガス導入手段4からチャンバ1内に窒素原子含有ガスを導入して大気圧にした後、ガス導入手段4からのガス導入が停止される。このため、上記排気手段が設けられていない。
【0025】
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様に、放電手段50を備えて、ガス導入手段4から導入された窒素原子含有ガスを電離し、電離により生成した窒素イオンや窒素ラジカルが融液L内に供給されるようにしたため、上記従来例の如く大気圧より高圧の窒素含有ガスを用いることなしに、例えば、大気圧の窒素原子含有ガスを用いて種結晶を効果的に結晶成長させることができる。その結果、耐圧性を持つようにチャンバ壁を厚くする必要はなく、液相エピタキシャル成長装置EM2の低コスト化を図ることができる。
【0026】
本発明者らは、本発明の効果を確認するために次の実験を行った。基材SBとしては、φ50mmのサファイア基板の表面にMOCVD法により種結晶たるGaN層を2μmの厚みで形成したものを用いた。実験1として、上記液相エピタキシャル成長装置EM1の坩堝2内にナトリウム12gとガリウム9gとを収容し、ヒータ3により坩堝2を800℃に加熱し融液Lを得た。この融液Lに上記基材SBを浸漬させ、撹拌手段6により融液Lを撹拌し、ガス導入手段4により窒素原子含有ガスとして1気圧の窒素ガスを導入すると共に(このとき、チャンバ1内圧力は1気圧)、電極53と柱状部52bとの間の電位差が600Vとなるように電源E1から交流電力を投入して放電した。放電による発光スペクトルを図3(a)に示す。これによれば、誘電体バリア放電では、電離により窒素イオンが生成することが確認された。5時間結晶成長させた後、坩堝2から基材SBを取り出した(この取り出したものを「発明品1」という)。図4は、発明品1のSEM写真であり、種結晶の表面にGaNが液相成長していることが確認された。また、放電手段5による電離を行わない以外は、上記発明品1と同じ条件で成長させることにより得られたものを「比較品1」とした。そして、種結晶、発明品1及び比較品1を夫々X線回折法(XRD)により解析し、(0002)面のロッキングカーブの半値幅を求めた結果を表1に示す。これによれば、発明品1は種結晶よりも半値幅が減少した一方で、比較品1は種結晶よりも半値幅が増大した。半値幅の減少は結晶性の向上を意味することから、発明品1の液晶成長分のGaNは、種結晶よりも結晶性が良好であることが判った。一方、比較品1にて半値幅が増大したのは、GaN分子生成よりもアルカリ金属へのGaNの融解が主となり、GaN表面が荒れて結晶性が低下したためであると考えられる。以上より、放電により得られた高い反応性を有する窒素イオンや窒素ラジカルの供給が、GaNの液晶成長に寄与することが判った。
【0027】
【表1】
【0028】
次に、実験2として、上記液相エピタキシャル成長装置EM2を用いて結晶成長させた。この場合、負極54と正極56との間の電位差が30kVとなるように電源E2から電力投入して放電した。放電による発光スペクトルを図3(b)に示す。これによれば、コロナ放電では、電離により窒素イオンと窒素ラジカルの両方が生成することが確認された。5時間結晶成長させた後、坩堝2から基材SBを取り出した(この取り出したものを「発明品2」という)。図5は、発明品2のSEM写真であり、種結晶の表面にGaNが液相成長していることが確認された。また、放電手段50による電離を行わない以外は、上記発明品2と同じ条件で成長させることにより得られたものを「比較品2」とした。そして、種結晶、発明品2及び比較品2を夫々X線回折法(XRD)により解析し、(0002)面のロッキングカーブの半値幅を求めた結果を表2に示す。これによれば、発明品2は種結晶よりも半値幅が減少しており、発明品2の液晶成長分のGaNは種結晶よりも結晶性が良好であることが判った。一方、比較品2は種結晶よりも半値幅が増加しており、結晶性が低下したことが判った。
【0029】
【表2】
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1及び第2実施形態では、チャンバ1の外側にヒータ3を配置する場合について説明したが、チャンバ1内にヒータ3を配置するようにしてもよい。
【0031】
また、第1実施形態では、トラップ手段8を排気管7に設ける場合について説明したが、トラップ手段8をチャンバ1内に設けてもよい。また、液相エピタキシャル成長装置EM1と同様の構造を有し、コロナ放電を実施するように構成してもよい。
【0032】
また、第2実施形態の液相エピタキシャル成長装置EM2において、排気管7を設け、ガス導入手段4からチャンバ1内に窒素原子含有ガスを連続して導入するように構成してもよい。この場合、第1実施形態と同様に、排気管7にトラップ手段8を設けることが好ましい。また、負極54へのアルカリ金属の付着を抑制するためにバッフル板を配置してもよい。液相エピタキシャル成長装置EM2と同様の構造を有し、誘電体バリア放電を実施するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0033】
SB…基材、1…チャンバ、11…チャンバ外面、11a…透孔、2…坩堝、L…融液、3…ヒータ(加熱手段)、4…ガス導入手段、5…誘電体バリア放電手段(放電手段)、50…コロナ放電手段(放電手段)、51…筒状部材、52…電極、52a…基端部、52b…柱状部、53…電極、54…負極、54a…負極先端、55…正極、8…トラップ手段、9…バッフル板、10…防着板。
図1
図2
図3
図4
図5